JP2012131997A - リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リン原子と(ポリ)アルキレングリコール鎖とを必須として有する重合体であって、該重合体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖と、ビニル系単量体由来の構造単位とを有し、該(ポリ)アルキレングリコール鎖の末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が、有機残基を介してリン原子と結合し、かつ該有機残基と該リン原子とはリン−炭素結合で結合し、かつ該リン原子が、該ビニル系単量体由来の構造単位の主鎖に結合した構造を有するリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体。
【選択図】なし
Description
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、セメント組成物等における減水性や作業性等の性能をより高いレベルで発揮することができ、各種用途、特にセメント混和剤用途に有用な重合体、及び、そのような重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造できる方法を提供することを目的とする。
更に本発明者は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有し、該(ポリ)アルキレングリコール鎖の末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が有機残基を介して次亜リン酸(塩)のリン原子と結合し、かつ該有機残基と該リン原子とはリン−炭素結合で結合した構造を有する新規な化合物が、ラジカル重合反応の連鎖移動剤としての機能を有し、この化合物を連鎖移動剤として用いてビニル系単量体成分をラジカル重合することで、このような重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造できることも見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到したものである。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖(PAG)の末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が、有機残基(Y)を介して次亜リン酸(塩)(SHP)のリン原子と結合し、かつ有機残基とリン原子とはリン−炭素結合で結合し、かつ該リン原子がビニル系単量体単位を含む重合体の主鎖に結合した構造を有するものである。このような構造を少なくとも1つ有する限り、その他の構造を有するものであってもよい。また、このような構造を2つ以上含む場合、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
なお、ビニル系単量体単位を含む重合体の主鎖とは、ビニル系単量体のビニル基を形成していた2つの炭素原子が隣のビニル系単量体の炭素原子と連続的に結合することによって形成される重合鎖である。
以下においては、(ポリ)アルキレングリコール鎖(PAG)の末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が、有機残基(Y)を介して次亜リン酸(塩)(SHP)のリン原子と結合し、かつ有機残基とリン原子とはリン−炭素結合で結合し、かつ該リン原子がビニル系単量体単位を含む重合体の主鎖に結合した構造を重合体の主鎖に有する本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体を「重合体(i)」ともいい、リン原子が結合する、ビニル系単量体単位を含む重合体を「重合体(ii)」ともいう。
なお、本発明において「(ポリ)アルキレングリコール」とは、後述の一般式(3)において、n=1の場合はアルキレングリコールを意味し、n>1の場合はポリアルキレングリコールを意味するものであり、両者の場合をまとめて記載した表現である。
また、本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体を、リンPAG重合体ともいう。
なお、上記重合体(i)に求められる用途によっては、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含まない態様が好ましい場合もある。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基、アルキルグリシジルエーテル残基等が挙げられる。中でも、製造の容易さからオキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基の導入量としては、求められる耐加水分解性の程度によるが、(ポリ)アルキレングリコール鎖の両末端に対して、導入量が50モル%以上であることが好ましくい。より好ましくは100モル%以上であり、更に好ましくは150モル%以上であり、特に好ましくは200モル%以上である。
付加反応に用いる前記の触媒の量は、副反応を防ぐため、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有化合物の生成量に対して、質量で50万ppm以下であることが好ましい。より好ましくは20万ppm以下、更に好ましくは10万ppm以下、更により好ましくは1万ppm以下、特に好ましくは5000ppm以下、最も好ましくは2000ppm以下である。また良好な生産性を得るために十分な反応速度を得るため、10ppm以上であることが好ましい。より好ましくは50ppm以上、更に好ましくは100ppm以上、特に好ましくは200ppm以上である。原料として(ポリ)アルキレングリコール鎖含有化合物を用いてアルキレンオキシド付加反応を行う場合は、原料となる(ポリ)アルキレングリコール鎖含有化合物に含有される触媒のみを用いて付加反応を行ってもよいが、必要に応じて触媒を追加・除去してもよい。
また付加反応の際の反応温度は、二級アルコール基の導入率を高めるために50〜200℃であることが好ましい。より好ましくは70〜170℃、更に好ましくは90〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。以上の条件は、二級アルコール基を導入しない際にも、副反応を防ぐ観点から好ましい。
なお、上記アルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物が有する(ポリ)アルキレングリコール鎖1モル中において付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値を意味する。
これらの中でも、より好ましくは、炭素数2〜18の2価の有機残基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものであり、更に好ましくは、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状アルキレン基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものである。
これにより、重合体の親水性が向上され、各種の用途により有用なものとすることが可能となる。また、セメント混和剤等の用途に使用する場合には、分散性能をより高めるため、上記ビニル系単量体成分は、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体を含むことが好適である。特に、リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物が多分岐構造を有するものである場合には、多分岐構造に起因する立体反発に、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体に由来する(ポリ)アルキレングリコール鎖の立体反発が加わって、その相乗効果により、セメント粒子を分散させる性能が飛躍的に向上するものと考えられる。より好ましくは、上記ビニル系単量体成分が、不飽和カルボン酸系単量体(a)と不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体(b)とを含む形態である。
なお、上記単量体(a)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(1)で示される単量体(a)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
なお、上記単量体(b)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(2)で示される単量体(b)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記R7で表される末端基としては、セメント混和剤用途に用いる場合には、セメント粒子の分散性の観点から親水性基であることが好適であり、具体的には、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子又はメチル基である。
ここで、「主として」とは、例えば、(ポリ)アルキレングリコール鎖を構成する全オキシアルキレン基(アルキレングリコール単位)100モル%中のオキシエチレン基をモル%で表すとき、50〜100モル%となるものであることが好ましい。50モル%未満であると、オキシアルキレン基の親水性が充分とはならず、セメント粒子の分散性能を充分に付与することができないおそれがある。より好ましくは60モル%以上であり、更に好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは90モル%以上である。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、製造の容易さの観点から、プロピレンオキシド基及びブチレンオキシド基が好ましく、中でも、プロピレンオキシド基がより好適である。
上記不飽和アルコール(ポリ)アルキレングリコール付加物としては、不飽和基を有するアルコールに(ポリ)アルキレングリコール鎖が付加した構造を有する化合物であればよい。
上記(ポリ)アルキレングリコールエステル系単量体としては、不飽和基と(ポリ)アルキレングリコール鎖とがエステル結合を介して結合された構造を有する単量体であればよく、不飽和カルボン酸(ポリ)アルキレングリコールエステル系化合物が好適であり、中でも、(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好適である。
上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数1〜30の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の炭素数3〜30の脂環族アルコール類;(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の炭素数3〜30の不飽和アルコール類等が挙げられる。
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、
また、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系単量体(b)の含有量は、必要とされる性能に応じて適宜調整すればよい。単量体(b)由来の性能を充分に発揮する観点から、全ビニル系単量体100質量%に対し、1質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、60質量%以上が最も好ましい。また他のビニル系単量体の性能を充分に発揮する観点から、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましく、80質量%以下が最も好ましい。
この場合、重合体(i)は、更に上記単量体(c)由来の構成単位を含むことになるが、上記単量体(c)由来の構成単位とは、重合反応によって単量体(c)の有する重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記単量体(c)を用いる場合、その含有量としては、全ビニル系単量体成分100質量%に対し、30質量%以下とすることが好適である。より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
なお、本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物と上記単量体(c)とによって重合体を製造してもよい。
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数23〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数23〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸系単量体とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数5〜18のグリコール若しくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500の(ポリ)アルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;マレアミン酸と炭素原子数5〜18のグリコール若しくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500の(ポリ)アルキレングリコールとのハーフアミド類;
また、数平均分子量(Mn)が、50万以下であることが好ましい。より好ましくは25万以下、更に好ましくは15万以下、特に好ましくは10万以下、最も好ましくは、75000以下である。また、1000以上であることが好ましい。より好ましくは2500以上であり、更に好ましくは5000以上であり、特に好ましくは10000以上であり、最も好ましくは、15000以上である。
なお、化合物の重量平均分子量、数平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
上記一般式(3)において、AOで表されるオキシアルキレン基の具体例、及び、好ましいものは、上述した(ポリ)アルキレングリコール鎖(PAG)を構成する炭素数2〜18のアルキレンオキシドと同様である。また、Y1で表される有機残基としては、上述したYと同様であり、Mの金属原子、有機アミン基としては、上述した次亜リン酸(塩)を形成する金属原子、有機アミン基と同様である。Zは、上述した重合体(ii)と同様である。nの好ましい値は、上述した(ポリ)アルキレングリコール鎖(PAG)におけるアルキレンオキシドの平均繰り返し数の好ましい値と同様である。
なお、非多分岐構造のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体は、活性水素を3個以上有する化合物の残基を基点として上記重合鎖が放射線状に枝分かれした構造を有さないものであれば、例えば、上記一般式(3)におけるY1が分岐構造を有するアルキレン基である場合のように、重合体の構造全体の中に分岐構造を有していてもよい。
上記多分岐リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体は、多分岐構造を有するが、上述したように、多分岐構造とは、活性水素を3個以上有する化合物の残基を基点として放射線状に枝分かれした構造であることを意味する。すなわち、活性水素を3個以上有する化合物の残基を基点として、そこから(ポリ)アルキレングリコール鎖及び有機残基を介して、次亜リン酸(塩)のリン原子と結合し、かつ該有機残基と該リン原子とはリン−炭素結合で結合し、かつ該リン原子がビニル系単量体単位を含む重合体の主鎖に結合した構造を意味する。
このような多分岐リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体は、この多分岐構造に起因する立体反発により、セメント粒子を分散させる性能が飛躍的に向上し、セメント混和剤として好適に用いることができるものとなる。
活性水素を1又は2個以上有する化合物の残基としては、具体的には、例えば、1価又は多価アルコールの水酸基から活性水素を除いた構造を有するアルコール残基、1価又は多価アミンのアミノ基から活性水素を除いた構造を有するアミン残基、1価又は多価イミンのイミノ基から活性水素を除いた構造を有するイミン残基、1価又は多価アミド化合物のアミド基から活性水素を除いた構造を有するアミド残基等が好適である。中でも、アミン残基、イミン残基及びアルコール残基が好ましい。これによって、各種用途に好適な化合物とすることが可能となる。
なお、活性水素を有する化合物残基の形態としては、鎖状、分岐状、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。
これらの中でも、ポリアルキルアミンを用いることが好ましく、ポリアルキルアミンを構成するアルキルアミンとしては、ラウリルアミン等の炭素数8〜18のアルキルアミンが好適である。
これらの中でも、上記リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体が奏する性能の観点から、エチレンイミンが主体を占めるポリアルキレンイミンであることがより好適である。
多価アミン及びポリアルキレンイミンの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により測定することができる。
これらの中でも、工業的な生産効率の観点から、より好ましくは、トリメチロールプロパンやソルビトールである。
下記式(A)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がグリセリン残基(多価アルコール残基)であり、グリセリンが有する活性水素全てに、(ポリ)アルキレングリコール鎖と、有機残基を介して次亜リン酸(塩)のリン原子と結合し、かつ該有機残基と該リン原子とはリン−炭素結合で結合し、かつ該リン原子がビニル系単量体単位を含む重合体の主鎖に結合した構造を模式的に示したものである。
また下記式(B)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がソルビトール残基(多価アルコール残基)であり、ソルビトールが有する活性水素に、(ポリ)アルキレングリコール鎖と、有機残基を介して次亜リン酸(塩)のリン原子と結合し、かつ該有機残基と該リン原子とはリン−炭素結合で結合し、かつ該リン原子のいくつかがビニル系単量体単位を含む重合体の主鎖に結合した構造を模式的に示したものである。
このような(ポリ)アルキレングリコール鎖の末端(活性水素を2個以上有する化合物の残基とは反対側の末端)は、例えば、水素原子、1価金属原子、2価金属原子、アンモニウム基、有機アミン基、炭素数1〜30の炭化水素基、オキソ炭化水素基、アミド炭化水素基、カルボキシル炭化水素基、炭素数0〜30のスルホニル(炭化水素)基等のいずれかに結合した構造を有することが好適であり、1分子内に2つ以上の当該(ポリ)アルキレングリコール鎖を有する場合には、その末端構造が同一であってもよく異なっていてもよい。このような末端構造の中でも、汎用性の点から、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基、より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基に結合した構造であり、炭素数1〜10の炭化水素基の中でもアルキル基やアルキレン基、アルケニル基が好適である。
すなわち、例えば、本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物が、下記一般式(4):
上記一般式(4)のY2における有機残基としては、Y1と同様のものが挙げられる。
上記pは、Xで表される活性水素を2個以上有する化合物の活性水素数及びmの数に依存して最大数が決まる数であるが、有機残基を介して次亜リン酸(塩)に結合する(ポリ)アルキレングリコール鎖に起因した効果を充分に発揮させるため、活性水素を2個以上有する化合物が結合する該(ポリ)アルキレングリコール鎖の数が2以上となるように、pが、〔(活性水素を2個以上有する化合物の全活性水素数)−2〕以下の数であることが好適である。
上述したように、本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖を有し、該(ポリ)アルキレングリコール鎖の末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が有機残基を介して次亜リン酸(塩)のリン原子と結合し、かつ該有機残基と該リン原子とはリン−炭素結合で結合した構造を有するリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物を用いてビニル系単量体成分をラジカル重合することで、製造することが好ましい。このようなリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物は、下記一般式(5):
上記一般式(5)中、X、AO、Y1、M、n及びmは、上述した一般式(3)におけるものと同様である。
以下では、本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物を、リンPAG化合物ともいう。
また、数平均分子量(Mn)が、50万以下であることが好ましい。より好ましくは30万以下、更に好ましくは10万以下、特に好ましくは5万以下、最も好ましくは、3万以下である。また、100以上であることが好ましい。より好ましくは300以上であり、更に好ましくは500以上であり、特に好ましくは1000以上であり、最も好ましくは、2000以上である。
なお、化合物の重量平均分子量、数平均分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
特に、上記リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物を連鎖移動剤として用いて、ビニル系単量体成分をラジカル重合することにより、セメント分散性(減水性)やスランプ保持性に優れ、セメント混和剤として好適に用いることができる重合体を簡便かつ効率的に、低コストで製造することができる。
上記式(6)中、X、AO、Y1、M、n及びmは、上述した一般式(3)におけるものと同様である。
上記一般式(6)においてmが1である場合、上記化合物Aは、上記式(2)で表される不飽和(ポリ)アルキレングリコール系化合物(b)であってもよく、このような形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
例えばエステル化の場合は、不飽和基とカルボキシル基を持つ化合物が好適であり、上記式(1)で表される不飽和カルボン酸系単量体(a)を好適に用いることができる。
またアミド化の場合は、(メタ)アリルアミンなどを好適に用いることができる。
これらの中でも、より好ましくは、炭素数2〜18の1価の直鎖状又は分岐状アルケニル基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものであり、更に好ましくは、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状アルケニル基及びそれらの一部が水酸基で置換されたものである。
上記付加反応工程の反応時間は、用いる触媒の種類や量、溶液濃度等に応じて適宜設定すればよい。
精製溶媒は適宜選べばよいが、例えばTHF、アセトニトリル、クロロホルム、イソプロピルアルコール等が好ましい。
抽出溶媒は適宜選べばよいが、高極性溶媒として水、メタノール、アセトニトリル、ジオキサンなどを用いて行うことが好ましい。低極性溶媒としてジエチルエーテル、シクロヘキサン、クロロホルム、メチレンクロライドなどを用いて行うことが好ましい。
本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体は、下記一般式(7):
このような本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記単量体(a)が主成分である場合の使用量の好ましい範囲は、単量体(c)が主成分である場合に、単量体(a)を単量体(c)に置き替えて適用することができる。
上記単量体(a)が主成分である場合、上記単量体(b)が主成分である場合、上記単量体(c)が主成分である場合の使用量の好ましい範囲はそれぞれ、ビニル系単量体成分として単量体(a)だけを用いる場合、単量体(b)だけを用いる場合、単量体(c)だけを用いる場合にも適用することができる。
なお、上記リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系化合物の使用量は、ビニル系単量体成分をNaOHでの完全中和換算(カルボン酸をNaOHで完全中和した場合)したビニル系単量体成分100質量部に対する量である。
なお、上記促進剤(還元剤)の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、併用する重合開始剤の総量を100モルとすると、好ましくは10モル以上、より好ましくは20モル以上、更に好ましくは50モル以上であり、また、好ましくは1000モル以下、より好ましくは500モル以下、更に好ましくは400モル以下である。
更に水と低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、又は、上記ラジカル重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して用いることができる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くする。その際、窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
その一方で、重合反応をpH7以上で行うと、重合率が低下すると同時に、共重合性が充分とはならず、例えば、セメント混和剤用途に用いた場合に分散性能を充分に発揮できないおそれがある。そのため、重合反応においては、酸性から中性(好ましくはpH6未満、より好ましくはpH5.5未満、更に好ましくはpH5未満)のpH領域で重合反応を行うことが好適である。このように重合系が酸性から中性となる好ましい重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物等の水溶性アゾ開始剤、過酸化水素、過酸化水素と有機系還元剤との組み合わせ等を用いることが好ましい。なお、より好ましくは、過硫酸系開始剤を少なくとも使用することである。
pHの調整は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質を用いて行うことができる。また、pHを下げる場合、特に重合の際にpHの調整が必要な場合、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸等の酸性物質を用いてpHの調整を行うことができ、これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある点等からリン酸や少量の添加でpHを下げることができる硫酸が好ましい。また、反応終了後、必要に応じて濃度調整を行うこともできる。
このような本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体を含む無機粒子用添加剤もまた、本発明の1つである。
中でも、本発明のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体は、上述したように極めて高度のセメント分散性能を発揮できることから、セメント混和剤用途に用いることが好適である。このように、上記リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体を含むセメント用添加剤もまた、本発明の1つである。更に、上記リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体を含むセメント混和剤もまた、本発明の1つである。
上記セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような上記セメント混和剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
なお、セメント添加剤の添加割合としては、上記重合体(i)の固形分100質量部に対し、0.0001〜10質量部とすることが好適である。
(3)遅延剤:グルコン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸並びにその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
(20)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
反応を均一に進行させるために、単位体積あたりの撹拌動力(Pv)が0.1Kw/m3以上であることが好ましい。より好ましくは0.2Kw/m3以上、更により好ましくは0.4Kw/m3以上、特に好ましくは0.6Kw/m3以上である。
反応槽、撹拌に用いる装置、撹拌翼、バッフル、スタティックミキサー等は必要に応じて公知のものを適宜選択すればよい。それらの材質は反応に応じて、ステンレス、グラス、ハステロイ、フロン樹脂等、公知のものを適宜選択すればよい。ステンレスの場合はSUS304、SUS316(L)等が好適である。
<1H−NMR、31P−NMR>
装置:VARIAN社製 Varian 400−MR
<LC−MS>
装置:サーモクエスト社 LC−Q DECA XP
(株)資生堂 NANOSPACE−2
方式:イオントラップ型
測定条件
イオン化法:ESI法 正・負イオン検出 M/z=50〜2000
溶離液:0.1%ギ酸aq/AcCN=5/5
温度:40℃
流速:100μl/分
カラム:CapcelPAKMG II
試料調製:試料を超純水で1000ppmに希釈し、オートサンプラーで5μl注入した。
<GPC>
リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体の数平均分子量、重量平均分子量は、以下の測定条件により測定した。
(条件1)
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
使用カラム:昭和電工株式会社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ,GF−710−HQ、GF−1G 7B
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
検量線:創和科学株式会社製 POLYETHYLENEGLYCOL STANDARD
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/分
装置:Waters Alliance(e2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnα+TSKgel α5000+α4000+α3000
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、紫外/可視(UV/Vis)検出器(Waters 2489)
溶離液:水14215gにホウ酸を89.0gと水酸化ナトリウム28.8gを溶解した。更にアセトニトリル3600gを加えて調製した混合溶液。
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)300000、200000、101000、50000、27700、11840、6450、4020、1470、1010、400)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:60分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
下記の合成例及び比較合成例で得られた重合体及び比較重合体の重量平均分子量は、以下のような測定条件を用いて測定した。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製
TSKguardcolumnSWXL+TSKgelG4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率系(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470]
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した
流量:0.8ml/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5wt%の溶離液溶液)
得られたRIクロマトグラムにおいて、ポリマー溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、ポリマーを検出・解析した。ただしモノマーやモノマー由来の不純物のピークがポリマーピークに一部重なって測定された場合、それらとポリマーの重なり部分の最凹部において垂直分割してポリマー部とモノマー部を分離し、ポリマー部のみの分子量・分子量分布を測定した。ポリマー部とそれ以外が完全に重なり分離できない場合はまとめて計算した。
またポリマーの収率の目安として、RI検出器によるピーク面積の比より、「ポリマー純分(以下、「P%」と略すことがある)」を下記のようにして計算した。
ポリマー純分=(ポリマーピーク面積)/(ポリマーピーク面積+モノマーや不純物のピーク面積)
サンプル約0.5gをアルミ皿に量り採り、水約1gで希釈して均一に広げた。窒素雰囲気下130℃で1時間乾燥し、デシケーター中で放冷した後、乾燥後重量を量った。乾燥前後の重量差により固形分(不揮発分)濃度を計算した。
合成したリンPAG化合物やリンPAG重合体の水溶液の濃度としては、特に断りの無い限り、上記の手順で測定した固形分を用いた。
合成例1(RR−19)
(1)合成工程
単量体溶液として、次亜リン酸ナトリウム一水和物(和光純薬社製 SHP・1H2O、35.2g)、3−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加物(平均エチレンオキシド付加数10モル、87.5g)にイオン交換水を加えて合計232.0gにした溶液を調製した。
開始剤溶液として、過硫酸ナトリウム(和光純薬社製 NaPS、0.6g)にイオン交換水を加えて合計51.0gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に上記の単量体溶液を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃に加温した。
続いて上記の開始剤溶液を3.5時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、70℃に保って反応を完結して室温まで冷却して、目的化合物の水溶液を得た。
(2)精製工程
得られた目的化合物の水溶液をロータリーエバポレーターにより減圧留去した後、50℃に加温した真空オーブンにて一晩乾固して、白濁したスラリーを得た。
スラリーを300mlのTHFに懸濁して減圧濾過を行った。濾液をロータリーエバポレーターにより減圧留去した後、真空オーブンにて一晩乾固して、無色のオイルを得た。
得られたオイルを150gのイオン交換水に溶解して、合計90mlのシクロヘキサンで6回抽出を行った。水相のみを分液して、ロータリーエバポレーターにより減圧留去した後、50℃に加温した真空オーブンにて一晩乾固して、目的の化合物を得た。
得られた目的化合物の構造はNMRとLC−MSにより同定された。
1H−NMR(400MHz,D2O):δ=1.07(d,3H),1.48(m,1H),1.57(m,2H),1.72(m,1H),1.97(m,1H),3.64(t,2H),3.66〜3.75(m,40H),6.43(s,0.5H),7.69(s,0.5H)。
31P−NMR(160MHz,D2O)(リン酸をδ=0として):δ=28.97。
LC−MS(イオン化法:ESI法)(M+H)+ 593.35。
(1)合成工程
合成例1において原料化合物や反応条件を表1に記載のように変更した他は、合成例1と同様にして目的化合物(リンPAG化合物(2)〜(8))を得た。用いた原料PAG化合物A〜Gの内容は表2に記載した。
(2)精製工程
合成例1において精製溶媒を表1に記載のように変更した他は、合成例1と同様にして目的化合物(リンPAG化合物(2)、(3)、(5)〜(7))を得た。
単量体溶液として、次亜リン酸ナトリウム一水和物(和光純薬社製 SHP・1H2O、5.6g)、3−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物として3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加物(平均エチレンオキシド付加数50モル、130.0g)にイオン交換水を加えて合計205.4gにした溶液を調製した。
開始剤溶液として、過硫酸ナトリウム(和光純薬社製 NaPS、0.4g)にイオン交換水を加えて合計44.6gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に上記の単量体溶液を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら90℃に加温した。
続いて上記の開始剤溶液を2.75時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、90℃に保って反応を完結して室温まで冷却して、目的化合物(リンPAG化合物(9))の水溶液を得た。仕上がりpHは5.48であった。
合成例9において原料化合物や反応条件を表1に記載のように変更した他は、合成例9と同様にして目的化合物(リンPAG化合物(10)〜(12))を得た。用いた原料PAG化合物の内容は表2に記載した。
実施例1
単量体溶液として、アクリル酸(AA、15.1g)にイオン交換水を加えて合計37.7gにした溶液を調製した。
開始剤溶液として、過硫酸ナトリウム(和光純薬社製 NaPS、5.2g)にイオン交換水を加えて合計40.0gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、合成例1で得たリンPAG化合物(1)(4.9g)とイオン交換水(117.4g)を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を2時間、開始剤溶液を3時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、目的重合体(リンPAG重合体(1))の水溶液を得た。仕上がりpHは1.30であった。
GPC分析の結果、重合体はMn=4723、Mw=7360であった。またポリマー純分は94.02%であった。なお以下で、リンPAG化合物を釜に仕込み、単量体溶液を滴下して重合するこの方法を、重合体製法1と表すことがある。
実施例1において組成を表3に記載のように変更した他は、実施例1と同様にして目的重合体(リンPAG重合体(2))の水溶液を得た。
GPC分析結果を表3に示す。
単量体溶液として、アクリル酸(AA、15.1g)、合成例1で得たリンPAG化合物(1)(4.9g)にイオン交換水を加えて合計133.3gにした溶液を調製した。
開始剤溶液として、過硫酸ナトリウム(和光純薬社製 NaPS、5.2g)にイオン交換水を加えて合計20.0gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水(46.7g)を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を2時間、開始剤溶液を3時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、目的重合体(リンPAG重合体(3))の水溶液を得た。仕上がりpHは1.29であった。
GPC分析結果を表3に示す。
なお以下で、釜に水を仕込み、単量体溶液およびリンPAG化合物溶液を滴下して重合するこの方法を、重合体製法2と表すことがある。
実施例1において組成を表3に記載のように変更した他は、実施例1と同様にして目的重合体(リンPAG重合体(4))の水溶液を得た。
GPC分析結果を表3に示す。なお、表3中の重合体の組成(SAA/リンPAG化合物(1))は、NaOHでの完全中和換算(カルボン酸をNaOHで完全中和した場合)の質量比で表している。
単量体溶液として、アクリル酸(AA、32.9g)にイオン交換水を加えて合計41.1gにした溶液を調製した。
開始剤溶液として、過硫酸ナトリウム(和光純薬社製 NaPS、11.4g)にイオン交換水を加えて合計36.0gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、合成例9で得たリンPAG化合物(9)(57.1g)とイオン交換水(65.8g)を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を2時間、開始剤溶液を3時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、仕上がりpHは1.01であった。30%NaOH水溶液でpH6に調製して、目的重合体(リンPAG重合体(5))の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMn=19070、Mw=27921であった。またポリマー純分は81.08%であった。
実施例5において組成を表4に記載のように変更した他は、実施例5と同様にして目的重合体(リンPAG重合体(6)〜(21))の水溶液を得た。
GPC分析結果を表4に示す。なお、表4中の重合体の組成(S(M)AA/リンPAG化合物)は、NaOHでの完全中和換算(カルボン酸をNaOHで完全中和した場合)の質量比で表している。
以下の実施例22では、リン酸基を有する単量体(A)として、共栄社化学社製ライトエステルP−1M<リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸トリ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物>を使用した。分析結果より、モノエステル(Mw:210.12)、ジエステル(Mw:322.25)、トリエステル(Mw:434.37)のモル組成比はそれぞれ60、30、10(mol%)であったため、平均分子量を266.18として計算を行った。
また表5の単量体に関する略号は、SPMP(Aldrich社製 スルホプロピルメタクリレート、カリウム塩)、AAM(和光純薬社製 アクリルアミド)、MA(和光純薬社製 マレイン酸)、HEA(2−ヒドロキシエチルアクリレート)を表す。
単量体溶液として、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸トリ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物(共栄社化学社製 ライトエステルP−1M)(15.5g)と合成例9で得たリンPAG化合物(9)(24.5g)にイオン交換水を加えて合計74gにした溶液を調整した。
開始剤溶液として、過硫酸ナトリウム(和光純薬社製 NaPS、1.6g)にイオン交換水を加えて合計26.0gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、イオン交換水(100g)を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を2時間、開始剤溶液を3時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液でpH6に調製して、目的重合体(リンPAG重合体(22))の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMn=48740、Mw=73196であった。またポリマー純分は42.75%であった。
単量体溶液として、スルホプロピルメタクリレート、カリウム塩(SPMP、Aldrich社製 33.3g)にイオン交換水を加えて合計55.5gにした溶液を調整した。
開始剤溶液として、過硫酸ナトリウム(和光純薬社製 NaPS、3.79g)にイオン交換水を加えて合計30.0gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、合成例9で得たリンPAG化合物(9)(56.7g)とイオン交換水(57.8g)を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を2時間、開始剤溶液を3時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液でpH6に調製して、目的重合体(リンPAG重合体(23))の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMn=23113、Mw=29364であった。またポリマー純分は61.59%であった。
実施例23において組成を表5に記載のように変更した他は、実施例23と同様にして目的重合体(リンPAG重合体(24)〜(26))の水溶液を得た。
GPC分析結果を表5に示す。なお、表5中のMA、AA、HEAに関しての重合体の組成(モノマー/リンPAG化合物)は、NaOHでの完全中和換算(カルボン酸をNaOHで完全中和した場合)の質量比で表している。
滴下溶液として、アクリル酸(AA、15.1g)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(平均エチレンオキシド付加数9モル:新中村化学工業社製 NKエステルAM−90G、12.6g)にイオン交換水を加えて合計46.2gにした溶液を調製した。
開始剤溶液として、過硫酸ナトリウム(和光純薬社製 NaPS、6.2g)にイオン交換水を加えて合計30.0gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、合成例9で得たリンPAG化合物(9)(62.3g)とイオン交換水(61.5g)を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を2時間、開始剤溶液を3時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液でpH6に調製して、目的重合体(リンPAG重合体(27))の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMn=14312、Mw=19667であった。またポリマー純分は79.13%であった。
実施例27において組成を表6に記載のように変更した他は、実施例27と同様にして目的重合体(リンPAG重合体(28)〜(38))の水溶液を得た。用いた原料PAG化合物の内容は表2に記載した。
GPC分析結果を表6に示す。なお、表6中の重合体の組成(SAA/リンPAG化合物)は、NaOHでの完全中和換算(カルボン酸をNaOHで完全中和した場合)の質量比で表している。
合成例A1:TMP→TMP−30
トリメチロールプロパン(和光純薬社製、200g、以下では「TMP」ともいう。)、30%水酸化ナトリウム水溶液(3.62g)を、撹拌器を備えた耐圧反応容器に仕込んだ。オイルバスを用いて反応系内を100℃に加温し、系内に窒素をゆっくりとバブリングしながら、真空ポンプで1時間100mmTorrに減圧し、水2.53gを留去した。更に真空ポンプで1時間100mmTorrに減圧した後、反応器内を130℃に加温し、窒素を導入して内圧を0.5MPaに調整した。反応器内温を130±2℃に保ちながら、エチレンオキシド(1969.9g、TMPに対して30モル倍)を添加した。ただし反応器内圧は0.8MPaを越えないようにした。エチレンオキシドの添加終了後、反応器内を1時間130℃に保ち、反応を完結させた。反応前後の質量から、収率は99.7%であり、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド29.9モル付加物(以下では「TMP−30」ともいう。)が得られた。
原料をTMP−30(300g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(2.97g)、エチレンオキシド(1784.7g、TMP−30に対して196モル倍)としたこと以外は、合成例A1と同様の手順で反応を行った。収率は99.6%であり、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド225モル付加物(以下では「TMP−225」ともいう。)が得られた。
ソルビトール(和光純薬社製、250g、以下では「SB」ともいう。)、30%水酸化ナトリウム水溶液(3.44g)を、撹拌器を備えた耐圧反応容器に仕込んだ。オイルバスを用いて反応系内を130℃に加温し、系内に窒素をゆっくりとバブリングしながら、真空ポンプで1時間100mmTorrに減圧し、水を留去した。更に真空ポンプで1時間100mmTorrに減圧した後、窒素を導入して内圧を0.5MPaに調整した。反応器内温を130±2℃に保ちながら、エチレンオキシド(1813.6g、SBに対して30モル倍)を添加した。ただし反応器内圧は0.8MPaを越えないようにした。エチレンオキシドの添加終了後、反応器内を1時間130℃に保ち、反応を完結させた。反応前後の質量から、収率は99.7%であり、ソルビトールのエチレンオキシド29.9モル付加物(以下では「SB−30」ともいう。)が得られた。
原料をSB−30(600g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(2.66g)、エチレンオキシド(1595.4g、SB−30に対して90.5モル倍)としたこと以外は、合成例A3と同様の手順で反応を行った。収率は99.7%であり、ソルビトールのエチレンオキシド120モル付加物(以下では「SB−120」ともいう。)が得られた。
原料をSB−120(550g)、30%水酸化ナトリウム水溶液(2.44g)、エチレンオキシド(1462.1g、SB−30に対して330モル倍)としたこと以外は、合成例A3と同様の手順で反応を行った。収率は99.6%であり、ソルビトールのエチレンオキシド450モル付加物(以下では「SB−450」ともいう。)が得られた。
合成例B1
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、合成例A5で得たSB−450(236.3g)と48%NaOHaq(0.79g)を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を1000mL/分でバブリングしながら120℃で3時間加熱撹拌した。
窒素バブリングを止めて撹拌を続けながら、アリルグリシジルエーテル(和光純薬社製 AGE、8.1g)を滴下して加えた。300rpmで撹拌下、窒素を20mL/分で導入しながら120℃で3.5時間過熱撹拌した。その後2時間、300rpmで撹拌下、窒素を1000mL/分でバブリングを行い未反応のAGEを除去して、目的の化合物(多分岐単量体(1))を得た。
反応終了後のLC分析結果から、SB−450の消費率97%、SB−450一分子に対する平均AGE導入数は2.97個であることを確認した。
合成例B1において原料化合物や反応条件を表7に記載のように変更した他は、合成例B1と同様にして目的化合物(多分岐単量体(2)〜(5))を得た。
合成例13(RR−86)
単量体溶液として、次亜リン酸ナトリウム一水和物(和光純薬社製 SHP・1H2O、3.6g)と合成例B1の多分岐単量体(1)(208.0g)にイオン交換水を加えて合計320.0gにした溶液を調製した。
開始剤溶液として、過硫酸ナトリウム(和光純薬社製 NaPS、0.3g)にイオン交換水を加えて合計76.4gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に上記の単量体溶液を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら90℃に加温した。
続いて上記の開始剤溶液を2.75時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、90℃に保って反応を完結して室温まで冷却して、目的化合物(多分岐リンPAG化合物(1))の水溶液を得た。
合成例13において原料化合物や反応条件を表8に記載のように変更した他は、合成例13と同様にして目的化合物(多分岐リンPAG化合物(2)〜(5))を得た。
実施例39
単量体溶液として、アクリル酸(AA、5.0g)にイオン交換水を加えて合計20.1gにした溶液を調製した。
開始剤溶液として、過硫酸ナトリウム(和光純薬社製 NaPS、1.8g)にイオン交換水を加えて合計30.0gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、合成例13で得た多分岐リンPAG化合物(1)(RR−86)(75.0g)とイオン交換水(74.9g)を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を2時間、開始剤溶液を3時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液でpH6に調製して、目的重合体(多分岐リンPAG重合体(1))の水溶液を得た。仕上がりpHは3.54であった。
GPC分析の結果、重合体はMn=61832、Mw=127735であった。またポリマー純分は59.17%であった。
結果を表9に示す。
実施例1〜9、14〜39で製造した重合体の水溶液を用いて、以下のようにしてモルタルを調製し、初期空気量、並びに初期及び15分後の15打フローを測定した。また比較のため、プレーン(水のみ)についても、初期空気量及び初期の15打フローを測定した。結果をそれぞれ表10〜14に示す。なお、モルタル試験ではプレーンを除き、消泡剤としてMA−404(BASFポゾリス社製)を有姿で10質量%対重合体固形分となる量、重合体水溶液に添加した。
モルタル試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±10%の環境下で行った。
モルタル配合は、C/S/W=550/1350/220(g)とした。ただし、
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:本発明重合体又は比較重合体、及び、消泡剤のイオン交換水溶液
Wとして、表10〜14に示した添加量の重合体水溶液を量り採り、消泡剤MA−404を有姿で重合体固形分に対して10質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一溶解させた。表10〜14において重合体の添加量は、セメント質量に対する重合体固形分の質量%で表されている。
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50;ホバート社製)にステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付け、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2連で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落としを行い、その後、75秒間静置した。75秒間静置後、更に60秒間2速で混練を行い、モルタルを調製した。
<モルタル空気量(初期空気量)測定>
モルタルを500mLのガラス製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。更にモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。
<15打フロー値測定>
モルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移し、スパチュラで20回撹拌した後、直ちにフローテーブル(JIS R5201−1997に記載)に置かれたフローコーン(JIS R5201−1997に記載)に半量詰めて15回つき棒で突き、更にモルタルをフローコーンのすりきりいっぱいまで詰めて15回つき棒で突き、最後に不足分を補い、フローコーンの表面をならした。その後、直ちにフローコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)及び前記長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値を0打フロー値とした。0打フロー値を測定後、直ちに15秒間に15回の落下運動を与え、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)及び前記長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値を15打フロー値とした。また、必要に応じてモルタル空気量の測定も行った。
なお、0打フロー値及び15打フロー値は、数値が大きいほど、分散性能が優れている。
モルタル比較例1でプレーン(水のみ)の試験を行なったところ、15打フロー値は140mmであった。モルタル比較例2では、実施例1〜4の重合体の原料であるPAG化合物(A)を0.5wt%/C添加したが、プレーンに比較して15打フロー値の向上はほとんど見られなかった。いずれの比較例でも、15分後はまったく流動性が得られなかったため、フロー値を測定しなかった。
それに対し、リンPAG重合体を添加したモルタル実施例1〜4では、いずれも15打フロー値が著しく向上し、リンPAG重合体は顕著なセメント分散効果があることが明確であった。
実施例1、3及び2、4の重合体は、アクリル酸(AA)とリンPAG化合物の組成がそれぞれ80/20(wt%)及び50/50(wt%)であるが、モルタル試験の結果、どの重合体においてもモルタル流動性はプレーンよりも向上する結果となった。これらの結果を表10に示す。
モルタル比較例3でプレーン(水のみ)の試験を行ったところ、15打フロー値は141mmであった。それに対し、リンPAG重合体を添加したモルタル実施例5〜17では、いずれも15打フロー値が著しく向上し、リンPAG重合体は顕著なセメント分散効果があることが明確であった。これらの結果を表11に示す。
モルタル比較例4でプレーン(水のみ)の試験を行ったところ、15打フロー値は147mmであった。それに対し、リンPAG重合体を添加したモルタル実施例18〜23では、いずれも15打フロー値が向上し、リンPAG重合体はセメント分散効果があることが明確であった。さらにモルタル実施例22(リンPAG重合体(26))とモルタル実施例23(リンPAG重合体(7))では、モルタルは注水から15分後も良好な流動性を示した。他方で比較例4では、15分後はまったく流動性が得られなかったため、フロー値を測定しなかった。以上より本願発明のリンPAG重合体は、セメント分散効果を発揮するのみならず、セメント分散効果を経時的に維持しうるものであることが明確であった。これらの結果を表12に示す。
モルタル比較例5でプレーン(水のみ)の試験を行ったところ、15打フロー値は144mmであった。それに対し、リンPAG重合体を添加したモルタル実施例24〜35では、いずれも15打フロー値が著しく向上し、リンPAG重合体は顕著なセメント分散効果があることが明確であった。これらの結果を表13に示す。
モルタル比較例6でプレーン(水のみ)の試験を行ったところ、15打フロー値は143mmであった。それに対し、多分岐リンPAG重合体(1)を添加したモルタル実施例36では、15打フロー値が向上し、多分岐リンPAG重合体(1)はセメント分散効果があることが明確であった。これらの結果を表14に示す。
コンクリート試験例1〜6
次に、実施例で得た本発明重合体及び比較例で得た比較重合体のコンクリート試験による性能評価の結果について説明する。
<コンクリート試験方法>
コンクリート配合:
実施例で得た本発明重合体をセメント混和剤として用いて、表15に示す配合でコンクリートを調合・混練した。
なお、セメント混和剤としては、実施例で得た本発明重合体又は比較例で得た比較重合体を用いた。混和剤の配合量は、混和剤の固形分量で計算し、セメント質量に対する%(質量%)表示で表16に示した。消泡剤はMA404(BASFポゾリス社製)をセメント質量に対して0.008%配合し、コンクリート中の空気量を2%以下に調整した。
コンクリート混練方法:
表15に示す配合で、容量50Lの強制練りパン型ミキサーにセメント(C)及び砂(S)を仕込み、10秒間空練を行った後、水及びセメント混和剤(W)を添加し、モルタルが均一になるまで混練した。モルタル均一化後、石(G)を添加して90秒間混練し、コンクリートを調製した。ここでモルタル混練にかかった秒数を「混練時間」とした。ただしモルタル混練時間は最大120秒とした。
評価方法:
日本工業規格(JIS A1101−2005年、A1128−2005年、A6204−2006年)に準拠し、各コンクリート配合で得たコンクリートのスランプフロー値の測定を行った。
なお、スランプフロー値は大きいほど、コンクリートの流動性が高いことを示す。スランプフロー値が同等であれば、添加量が少ない混和剤ほど、セメント分散性能が良好であり、減水性能が高いことを示す。
表16にコンクリート比較例1、コンクリート試験例1〜6の結果を示した。
水だけで混練したコンクリート比較例1では、コンクリートに流動性が得られず、フロー値などの測定は行わなかった。
他方、本発明重合体を添加したコンクリート試験例1〜6では、コンクリートに十分な流動性を得ることができた。
以上から、本発明の重合体はコンクリートに流動性を与えるコンクリート混和剤としての性能を持つことが明確であった。
実施例7で得た重合体について、以下のようにして加水分解性能(保存安定性能)を評価した。
<加水分解性能(60℃)試験方法>
実施例7で得た重合体(リンPAG重合体(7))を30質量%含む水溶液を準備し、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH値を、4、7又は9の3水準に調整した。それぞれの重合体水溶液について、液温60℃にて0〜91日間保存した場合の重量平均分子量(Mw)及びポリマー純分を経時的に測定した。また、pH調整直後(保存0日)を基準とする重量平均分子量(Mw)比を算出した。同様に粘度についてもB型粘度計をもちいて、pH調整直後(保存0日)を基準とする粘度比を算出した。さらに、各pHそれぞれについて、0週、2週、4週のサンプルについてモルタル試験による性能評価を行った。保存期間中、重合体水溶液の液温は60℃に維持した。結果を表17〜19に示す。また、表17に記載のMw比をpH値ごとに対比したグラフを図1に、粘度比をpH値ごとに対比したグラフを図2に、モルタルの試験による性能評価のグラフを図3示す。
更に加水分解性能比較のため、WO2010/029924A1に記載の、PAGチオール化合物を用いて得られた重合体BPT−127(実施例P−38)、BPT−128(実施例P−39)をそれぞれ比較例1、比較例2として、pH7に調整直後(保存0日)を基準とする重量平均分子量(Mw)比を表20に示した。
評価方法を以下に示す。
<流動性>
直径50mm×高さ50mmのコーンに水硬性材料組成物(石膏スラリー)を充填し、引き抜き後の広がり(mm)を測定する。
<水硬性材料組成物(石膏スラリー)の調製>
半水石膏(吉野石膏販売(株)製、彫塑美術用石膏B級)266gと、消泡剤、実施例7、18、27、33で得られた重合体と、イオン交換水とからなる水溶液426gとをJIS R9112−1978に準じて混合して、石膏スラリーを調製した。得られた石膏スラリーを用いて、流動性(フロー値)を測定した。結果を表21に示す。
石膏比較例1でプレーン(水のみ)の試験を行ったところ、フロー値は185mmであった。それに対し、リンPAG重合体を添加した石膏実施例1〜4ではいずれもフロー値が向上し、本発明のリンPAG重合体は石膏分散効果があることが明確であった。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において、とりわけセメントや石膏に代表される無機微粒子の分散について本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
Claims (6)
- リン原子と(ポリ)アルキレングリコール鎖とを必須として有する重合体であって、
該重合体は、(ポリ)アルキレングリコール鎖と、ビニル系単量体由来の構造単位とを有し、
該(ポリ)アルキレングリコール鎖の末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が、有機残基を介してリン原子と結合し、かつ該有機残基と該リン原子とはリン−炭素結合で結合し、
かつ該リン原子が、該ビニル系単量体由来の構造単位の主鎖に結合した構造を有する
ことを特徴とするリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体。 - 前記リン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体は、下記一般式(3):
ことを特徴とする請求項1に記載のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体。 - 前記ビニル系単量体単位は、不飽和カルボン酸単位を必須として含むことを特徴とする請求項1または2に記載のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、下記一般式(5):
ことを特徴とするリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体を含む無機粒子用添加剤。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のリン原子含有(ポリ)アルキレングリコール系重合体を含むセメント用添加剤。
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