JP5762814B2 - リン酸基含有ポリアルキレングリコール系重合体 - Google Patents
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Description
そして近年では、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に添加されるセメント混和剤用途が検討されている。このようなセメント混和剤は、通常、減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を発揮させることを目的として使用される。減水剤としては、従来、ナフタレン系等の減水剤が使用されていたが、ポリアルキレングリコール鎖がその立体反発によりセメント粒子を分散させる分散基として作用することができるため、ポリアルキレングリコール鎖を含有するポリカルボン酸系減水剤が高い減水作用を発揮するものとして新たに提案され、最近では高性能AE減水剤として多くの使用実績を有するに至っている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、セメント分散性やスランプ保持性等の性能をより高いレベルで発揮することができ、各種用途、特にセメント混和剤用途に有用なポリアルキレングリコール系重合体、それを用いたセメント混和剤及びセメント組成物を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、上記ポリアルキレングリコール系重合体を含むセメント混和剤でもある。
本発明はまた、上記セメント混和剤を含むセメント組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明のポリアルキレングリコール系重合体について説明する。
以下では、本発明のポリアルキレングリコール系重合体を「ポリアルキレングリコール系重合体(i)」又は「重合体(i)」、本発明のポリアルキレングリコール系重合体が有するポリアルキレングリコール鎖が直接又は有機残基を介して結合することになるビニル系単量体成分由来の構成単位を含む重合体(上記一般式(1)中のZで表される残基を形成する重合体)を「重合体(ii)」ともいう。
重合体(i)をセメントなどの分散剤として用いる場合、リン酸基には静電的親和力により分散質に吸着する効果と、吸着することで分散質に親水性や静電的反発力を付与し、分散質を安定に分散させる効果とがある。リン酸基は例えばカルボキシル基と比較してこのような効果が高いため、より分散性に優れたポリアルキレングリコール系重合体を得ることができる。
上記リン酸基を有する単量体(A)は、ビニル系単量体であって、リン酸基を分子内に1つ以上有する化合物、すなわち、1分子中に重合性二重結合とリン酸基とを夫々1つ以上有する化合物であればよく、1種又は2種以上を用いることができる。
上記リン酸基を有する単量体(A)の詳細については後述する。
上記重合体(i)は、下記一般式(1):
上記一般式(1)において、m=1かつp=1のとき、上記重合体(i)は、多分岐構造を有しない非多分岐(直鎖)構造のポリアルキレングリコール系重合体である。また、m+p≧3であるとき、上記重合体(i)は、多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系重合体である。
ここでいう多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系重合体とは、活性水素を3個以上有する化合物の、活性水素を有する部位の少なくとも3つ以上に、ポリアルキレングリコール鎖を含有する重合鎖が結合し、該活性水素を3個以上有する化合物の残基を基点として、該重合鎖が放射線状に枝分かれした構造を意味する。一方、非多分岐(直鎖)構造のポリアルキレングリコール系重合体とは、このような活性水素を3個以上有する化合物の残基を基点として放射線状に枝分かれした上記重合鎖を有さない構造を意味する。
なお、非多分岐構造のポリアルキレングリコール系重合体は、活性水素を3個以上有する化合物の残基を基点として上記重合鎖が放射線状に枝分かれした構造を有さないものであれば、例えば、ビニル系単量体成分由来の構造単位を含む重合体(ii)が、ポリアルキレングリコール鎖を有する不飽和単量体を原料として用いて形成されたものである場合のように、主鎖から枝分かれした分岐構造を有するものであってもよい。
Q1−Y2−(PAG)−Y1−Z (a)
(式中、Y1、Y2、Z及びQ1は、上記一般式(1)におけるものと同じである。)のように表すことができる。
また、上記一般式(a)におけるQ1−Y2−が全体として水素原子を表す場合には、上記重合体(i−a)の構造は、下記一般式(b):
(PAG)−Y1−Z (b)
(式中のY1及びZは、上記一般式(a)におけるものと同じである。)のように表すことができる。
Q1−Y2−(PAG)−X’−(PAG)−Y1−Z (c)
(式中、Y1、Y2、Z及びQ1は、上記一般式(1)におけるものと同じである。)のように表すことができる。
また、上記一般式(c)におけるQ1−Y2−が全体として水素原子を表す場合には、上記重合体(i−b)の構造は、下記一般式(d):
(PAG)−X’−(PAG)−Y1−Z (d)
(式中のY1及びZは、上記一般式(c)におけるものと同じである。)のように表すことができる。
また上記式(B)は、活性水素を3個以上有する化合物の残基がソルビトール残基(多価アルコール残基)であり、ソルビトールが有する活性水素全てに、ポリアルキレングリコール鎖と、硫黄原子を含む有機残基とが結合し、更に硫黄原子のいくつかにビニル系単量体成分由来の構造単位が結合した構造を模式的に示したものである。
m=1かつp=1である場合、すなわち、上記重合体(i)が、多分岐構造を有しない非多分岐(直鎖)構造のポリアルキレングリコール系重合体である場合には、Xは、酸素原子、及び、活性水素を2個以上有する化合物の残基のいずれであってもよい。
一方、m+p≧3である場合、すなわち、上記重合体(i)が多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系重合体である場合には、Xは、活性水素を3個以上有する化合物の残基であることが必要である。
上記活性水素を有する化合物が、本発明のポリアルキレングリコール系重合体(i)の製造において、上記一般式(1)中のXで表される構造部位を形成するために用いられる場合、活性水素を有する化合物の活性水素数は、Xで表される活性水素を有する化合物の残基に結合するポリアルキレングリコール鎖の数以上であればよい。すなわち、上記活性水素数は、上記一般式(1)におけるmとpとの合計値以上であればよい。
例えば、上記活性水素を有する化合物が、多分岐構造を有しない非多分岐(直鎖)構造のポリアルキレングリコール系重合体(i)の製造において、上記一般式(1)中のXで表される構造部位を形成するために用いられる場合、活性水素を有する化合物の活性水素数は2個であればよい。
また、上記活性水素を有する化合物が、多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系重合体(i)の製造において、上記一般式(1)中のXで表される構造部位を形成するために用いられる場合、活性水素を有する化合物の活性水素数は3個以上であることが必要である。また、後述するポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物を用いて重合を行う際の重合性の観点から、50個以下であることが好適である。多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系重合体(i)を製造する場合の、上記活性水素数の下限値としては、好ましくは4個であり、より好ましくは5個である。また、上限値としては、より好ましくは20個であり、更に好ましくは10個である。
なお、活性水素を有する化合物残基の構造としては、鎖状、分岐状、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。
更に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の2価以上のアミン化合物や、それらの1種又は2種以上を重合して得られるポリアミンであってもよい。このようなポリアミンは、通常、構造中に第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。
これらの中でも、上記ポリアルキレングリコール系重合体が奏する性能の観点から、エチレンイミンがより好適である。
これらの中でも、工業的な生産効率の観点から、より好ましくは、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタンである。
上記活性水素を2個以上有する化合物が結合する上記ポリアルキレングリコール鎖の数は、上記一般式(1)におけるmとpとの合計値に相当する。従って、mとpとの合計値が上記活性水素を2個以上有する化合物中の活性水素数に等しいことが好ましい。
以下では、ビニル系単量体成分由来の構造単位を含む重合体(ii)の主鎖末端と直接結合又は有機残基を介して結合するポリアルキレングリコール鎖、すなわち、上記一般式(1)において(AO)n又は(AO)n’で表されるポリアルキレングリコール鎖を「ポリアルキレングリコール鎖(I)」ともいう。また、ビニル系単量体成分由来の構造単位を含む重合体(ii)における当該ビニル系単量体成分が、後述するように不飽和ポリアルキレングリコール系単量体を含む場合の、該不飽和ポリアルキレングリコール系単量体の有するポリアルキレングリコール鎖を「ポリアルキレングリコール鎖(II)」ともいう。なお、ポリアルキレングリコール鎖(I)及び(II)は、実質的に直鎖状であることが好適である。
重合体(i)をセメントなどの分散剤として用いる場合、ポリアルキレングリコール鎖(I)には分散質に親水性や立体的反発力を付与し、分散質を安定に分散させる効果がある。また特長的な効果として、分離抵抗性、降伏応力といった分散系のレオロジー特性に大きな影響を与える。目的に応じてポリアルキレングリコール鎖(I)の構造や導入量を調節することにより、分散性やレオロジー特性が極めて良好な、重合体(i)を得ることができる。
なお、上記重合体(i)に求められる用途によっては、炭素数3以上のアルキレンオキシドを含まない態様が好ましい場合もある。
nとn’との合計は、便宜上、ポリアルキレングリコール鎖(I)の直径とみなすことができる。上記重合体(i)のセメント粒子の分散性能をより充分に発揮させる観点からは、nとn’との合計が10〜1500であることが好ましい。nとn’との合計の下限値としては、より好ましくは30、更に好ましくは50、特に好ましくは100、最も好ましくは200であり、上限値としては、より好ましくは1000、更に好ましくは800、特に好ましくは600、最も好ましくは400である。
また上記重合体(i)が、ビニル系単量体成分として後述する不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(b)を用いて形成される場合、上記nとn’との合計は、上記不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(b)におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数r以上であることが好ましい。すなわち、n及びn’は、n+n’≧rを満たすことが好ましい。n、n’及びrが上記関係を満たすことにより、ポリアルキレングリコール鎖(I)に起因する立体反発による効果と、ポリアルキレングリコール鎖(II)に起因する立体反発による効果とがバランスよく発揮され、その結果、本発明のポリアルキレングリコール系重合体(i)が極めて良好なセメント分散性を発揮するものとなる。より好ましくは、n+n’≧2rを満たすことであり、更に好ましくは、n+n’≧3rであり、特に好ましくは、n+n’≧4rである。n及びn’はまた、10r≧n+n’を満たすことが好ましい。より好ましくは、8r≧n+n’を満たすことであり、更に好ましくは、6r≧n+n’である。
なお、m+p≧3である場合、すなわち、上記重合体(i)が多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系重合体である場合においては、該重合体(i)の構造中に、(AO)nで表されるポリアルキレングリコール鎖、及び、(AO)n’で表されるポリアルキレングリコール鎖の少なくとも一方が複数種類存在することになる。この場合には、合計値が上記数値範囲内となるnとn’との組合せが少なくとも1組存在することが好ましい。
なお、上記アルキレンオキシドの平均繰り返し数(オキシアルキレン基の平均付加モル数)とは、上記重合体(i)が有するポリアルキレングリコール鎖1モル中において付加しているアルキレンオキシドのモル数の平均値を意味する。
このように上記有機残基が硫黄原子を有する場合には、該硫黄原子を介して上記重合体(ii)の主鎖末端と結合することが好適である。この場合、後述するように、本発明のポリアルキレングリコール系重合体の製造時に、硫黄原子の反応性に起因して硫黄原子を介して単量体が次々にポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物に付加し、重合体(ii)の残基、すなわち一般式(1)においてZで表される部位を形成することになるため、製造に有利である。
この場合、上記有機残基とポリアルキレングリコール鎖との結合部位においては、カルボニル基(アミド基中の−CO基を含む)に含まれる炭素原子と、ポリアルキレングリコール鎖の末端酸素原子とが隣接することが好適である。すなわち、上記重合体(i)は、ポリアルキレングリコール鎖とY3とがエステル結合又はアミド結合を介して結合したものであることが好ましい。
上記単量体(A)は、ビニル系単量体であって、リン酸基を分子内に1つ以上有していればよいが、1分子中に重合性二重結合と水酸基とを有する化合物と、リン酸とのエステル化物であることが好ましい。
上記1分子中に重合性二重結合と水酸基とを有する化合物としてはまた、不飽和カルボン酸と1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物とのエステル化物を挙げることができる。このようなエステル化物は、例えば、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物が有する水酸基のうち、少なくとも1個の水酸基を除く残りの水酸基と、不飽和カルボン酸とを反応させることによって得ることができる。
上記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸;これらのカルボン酸の無水物が好適である。
上記1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物としては、炭素原子数1〜30のジオール;炭素原子数1〜30のジオールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜300モル付加させたヒドロキシ(ポリ)アルキレングリコール;炭素原子数1〜30のポリオール;炭素原子数1〜30のポリオールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜300モル付加させたポリオール(ポリ)アルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
より好ましくは、例えば、下記一般式(8):
リン酸基含有単量体もしくはその混合物は、公知の方法で合成したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。市販品はユニケミカル社、城北化学社、共栄社化学社、アルドリッチ社などから入手可能である。
リン酸基の特長を十分に発揮するには、リン酸モノエステル型が最も好ましいが、リン酸モノ、ジ、トリエステルのうち二種以上を含むリン酸エステル混合物の方が経済性に優れる場合がある。リン酸エステル混合物を用いる場合、リン酸モノエステル型単量体の好ましい含有量としては、リン酸エステル型単量体の全量に対するモル比として、20mol%以上が好ましく、40mol%以上がより好ましく、60mol%以上がさらに好ましく、80mol%以上が最も好ましい。
またリン酸エステル混合物を用いる場合、ジエステル型単量体、トリエステル型単量体の含有量が多すぎると、重合反応中に架橋反応を生じてゲル化が生じたり、重合体の分子量調整に不具合が生じることがある。リン酸ジエステル型およびトリエステル型単量体の好ましい合計含有量としては、リン酸エステル型単量体の全量に対するモル比として、80mol%以下が好ましく、60mol%以下がより好ましく、40mol%以下がさらに好ましく、30mol%以下が最も好ましい。目的により重合体の分子量を高くしたい場合には、分子量の調節の容易さから、1mol%以上が好ましく、5mol%以上がより好ましく、10mol%以上がさらに好ましく、20mol%以上が最も好ましい。
更に、リン酸エステル混合物を用いる重合反応を水溶液中で行う場合、水溶性の低いトリリン酸エステル型単量体の含量が多すぎると、反応液に分離を生じて反応に不具合が生じることがある。トリリン酸エステル型単量体の好ましい含有量としては、リン酸エステル型単量体の全量に対するモル比として、50mol%以下が好ましく、30mol%以下がより好ましく、20mol%以下がさらに好ましく、10mol%以下が最も好ましい。目的により重合体の分子量を高くしたい場合には、分子量の調節の容易さから、1mol%以上が好ましく、5mol%以上がより好ましく、10mol%以上がさらに好ましく、15mol%以上が最も好ましい。
重合体(i)をセメントなどの分散剤として用いる場合、カルボキシル基には静電的親和力により分散質に吸着する効果と、吸着することで分散質に親水性や静電的反発力を付与し、安定に分散させる効果とがある。カルボキシル基は例えばリン酸基と比較してこのような効果が低いが、吸着力や静電反発力を調節したい場合、これら二種を併用すると効果的である。
このように、上記ビニル系単量体成分が不飽和カルボン酸系単量体(a)を必須に含むことは、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、上記ビニル系単量体成分が上記単量体(a)を含む場合、上記重合体(ii)は単量体(a)由来の構成単位を含むことになる。単量体(a)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(3)で示される単量体(a)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
なお、上記不飽和カルボン酸系単量体(a)は、1分子中に重合性二重結合と、カルボキシル基とを有する化合物であればよいが、上述した単量体(A)と区別するため、リン酸基を有する化合物は含まないものとする。
重合体(i)をセメントなどの分散剤として用いる場合、重合体(ii)中のポリアルキレングリコール鎖(II)には分散質に親水性や立体的反発力を付与し、分散性を飛躍的に向上する効果がある。
なお、上記ビニル系単量体成分が上記単量体(b)を含む場合、上記重合体(ii)は単量体(b)由来の構成単位を含むことになる。単量体(b)由来の構成単位とは、重合反応によって一般式(4)で示される単量体(b)の重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
上記R7で表される末端基としては、セメント混和剤用途に用いる場合には、セメント粒子の分散性の観点から親水性基であることが好適であり、具体的には、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。より好ましくは、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子又はメチル基である。
上記不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物としては、不飽和基を有するアルコールにポリアルキレングリコール鎖が付加した構造を有する化合物であればよい。
上記ポリアルキレングリコールエステル系単量体としては、不飽和基とポリアルキレングリコール鎖とがエステル結合を介して結合された構造を有する単量体であればよく、不飽和カルボン酸ポリアルキレングリコールエステル系化合物が好適であり、中でも、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ヒドロキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好適であり、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが最も好適である。
この場合、上記重合体(ii)は、更に上記単量体(c)由来の構成単位を含むことになるが、上記単量体(c)由来の構成単位とは、重合反応によって単量体(c)の有する重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
またポリアルキレングリコール鎖(I)の特長を十分に発揮するために、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が最も好ましい。
単量体(c)の特長を十分に発揮するための含有量は、ポリアルキレングリコール鎖(I)100質量%に対する重量比として、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上が最も好ましい。また30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が最も好ましい。
またポリアルキレングリコール鎖(I)の特長を十分に発揮するために、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が最も好ましい。
単量体(a)の特長を十分に発揮するための含有量は、ポリアルキレングリコール鎖(I)100質量%に対する質量比として、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が最も好ましい。
またポリアルキレングリコール鎖(I)の特長を十分に発揮するために、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が最も好ましい。
単量体(c)の特長を十分に発揮するための含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上が最も好ましい。また30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が最も好ましい。
単量体(b)の特長を十分に発揮するための含有量は、全単量体100モル%に対するモル比として、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上が最も好ましい。
単量体(c)の特長を十分に発揮するための含有量は、全単量体成分100モル%に対するモル比として、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、5モル%以上が最も好ましい。また30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下が最も好ましい。
ポリアルキレングリコール鎖(I)の特長を十分に発揮するための含有量は、全ビニル系単量体成分100質量%に対する質量比として、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が最も好ましい。また50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が最も好ましい。
単量体(a)の特長を十分に発揮するための含有量は、全単量体成分100モル%に対するモル比として、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、35モル%以上が最も好ましい。また95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下がさらに好ましく、80モル%以下が最も好ましい。
単量体(b)の特長を十分に発揮するための含有量は、全単量体成分100モル%に対するモル比として、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上がさらに好ましく、20モル%以上が最も好ましい。また80モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらにより好ましく、30モル%以下が最も好ましい。
単量体(c)の特長を十分に発揮するための含有量は、全単量体100モル%に対するモル比として、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、5モル%以上が最も好ましい。また30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下が最も好ましい。
ポリアルキレングリコール鎖(I)の特長を十分に発揮するための含有量は、全ビニル系単量体成分100質量%に対する質量比として、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が最も好ましい。また50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が最も好ましい。
本発明のポリアルキレングリコール系重合体(i)が有する、Q1で表される構造部位の全てが、Zで表されるビニル系単量体成分由来の構成単位を含む重合体(ii)の残基である場合には、該重合体(i)が有するポリアルキレングリコール鎖(上記一般式(1)において(AO)n又は(AO)n’で表されるポリアルキレングリコール鎖)の全てが重合体(ii)に結合していることになる(例えば、上記式(A)参照。)。
一方、上記重合体(i)が有する、Q1で表される構造部位のうち少なくとも1つが、Zで表されるビニル系単量体成分由来の構成単位を含む重合体(ii)の残基以外の構造部位である場合には、該重合体(i)が有するポリアルキレングリコール鎖(上記一般式(1)において(AO)n又は(AO)n’で表されるポリアルキレングリコール鎖)のうち少なくとも1つは重合体(ii)に結合していないことになる(例えば、上記式(B)参照。)。
このように、本発明のポリアルキレングリコール系重合体(i)は、ビニル系単量体成分由来の構成単位を含む重合体(ii)に結合しないポリアルキレングリコール鎖を有していてもよい。
Zで表される、ビニル系単量体成分由来の構成単位を含む重合体の残基については上述したとおりである。
このように、上記重合体(i)が多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系重合体であること、すなわち、上記一般式(1)において、m+p≧3であり、かつXが活性水素を3個以上有する化合物の残基であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記ポリアルキレングリコール系重合体はまた、数平均分子量(Mn)が50万以下であることが好適である。より好ましくは25万以下、更に好ましくは15万以下、更により好ましくは10万以下、特に好ましくは75000以下である。Mnはまた、1000以上であることが好ましい。より好ましくは2500以上であり、更に好ましくは5000以上であり、更により好ましくは10000以上であり、特に好ましくは15000以上である。
上記ポリアルキレングリコール系重合体はまた、ピークトップ分子量(Mp)が100万以下であることが好適である。より好ましくは50万以下、更に好ましくは30万以下、特に好ましくは20万以下である。Mpはまた、1000以上であることが好ましい。より好ましくは5000以上であり、更に好ましくは10000以上であり、特に好ましくは2万以上である。
なお、重合体の重量平均分子量、数平均分子量及びピークトップ分子量は、後述するゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により求めることができる。
次に、本発明におけるポリアルキレングリコール系重合体の製造方法について説明する。
本発明におけるポリアルキレングリコール系重合体は、ポリアルキレングリコール鎖とラジカル発生部位とを有する高分子開始剤及び/又はポリアルキレングリコール鎖を有する高分子連鎖移動剤の存在下で、上記ビニル系単量体成分を重合させることによって、製造することができる。上記高分子開始剤及び/又は高分子連鎖移動剤を使用することによって、本発明におけるポリアルキレングリコール系重合体にポリアルキレングリコール鎖が導入されることとなる。
ポリアルキレングリコール鎖とラジカル発生部位とを有する高分子開始剤の存在下で、ビニル系単量体成分を重合させる方法としては、後述するポリアルキレングリコール鎖とラジカル発生部位とを有する高分子アゾ開始剤を用いることで、該高分子アゾ開始剤中のアゾ基が熱で分解し、ラジカルが発生して、そこからビニル系単量体成分の重合が開始される、という機構により製造する方法が挙げられる。
−[Y―N=N−Y−(PAG)]− (e)
で表される繰り返し単位を有する高分子アゾ開始剤の存在下で、ビニル系単量体成分を重合させる方法、
下記一般式(f):
(PAG)−Y−N=N−Y−(PAG) (f)
で表される高分子アゾ開始剤の存在下で、ビニル系単量体成分を重合させる方法等。上記一般式(e)〜(f)における「PAG」はポリアルキレングリコール鎖を表し、「Y」は直接又は有機残基を表す。
なお、これら(e)〜(f)の高分子アゾ開始剤において、ポリアルキレングリコール鎖(PAG)が重合体の構造の末端に位置する場合、該ポリアルキレングリコール鎖(PAG)は、末端(上記Yと結合している末端の反対側に位置する末端)に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基若しくはアルキレン基、又は、活性水素を1若しくは2個以上有する化合物の残基が直接又は有機残基を介して結合した構造を有することになる。
上記一般式(e)で表される繰り返し単位を有する高分子アゾ開始剤の好ましい形態としては、下記一般式(5):
また、qは、活性水素を2個以上有する化合物の残基に結合するポリアルキレングリコール鎖の数を表し、2〜50の整数である。q=2である高分子アゾ開始剤を用いることで、上記非多分岐構造のポリアルキレングリコール系重合体を製造することができる。また、X1が活性水素を3個以上有する化合物の残基であり、かつq≧3である高分子アゾ開始剤を用いた場合に、上記多分岐構造を有するポリアルキレングリコール系重合体を製造することができる。qの好ましい範囲は、上記一般式(1)におけるmとpとの合計値について述べたのと同様である。
このような製造方法としては、例えば、下記一般式(2):
上記一般式(2)におけるX、AO、n、n’、Y1、Y2、m及びpは、上記一般式(1)におけるものと同様である。また、Q2で表される構造部位については、上記一般式(1)におけるQ1について説明した基のうち、ビニル系単量体成分由来の構造単位を含む重合体の残基Z以外の基と同様である。
上記脱水縮合工程において、カルボキシル基を有するチオール化合物とは、1分子中にカルボキシル基(カルボン酸基)とメルカプト基とを有するメルカプトカルボン酸基含有化合物であればよい。
このようなメルカプトカルボン酸基含有化合物としては、例えば、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトイソブチル酸、チオリンゴ酸、メルカプトステアリン酸、メルカプト酢酸、メルカプト酪酸、メルカプトオクタン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトニコチン酸、システイン、N−アセチルシステイン、メルカプトチアゾール酢酸等が挙げられる。中でも、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプトイソブチル酸が好適である。
例えば、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物の存在下で重合反応を行った場合には、上述したように末端の硫黄原子(S)を介して単量体が次々にポリアルキレングリコール鎖含有化合物に付加して上記重合体(ii)が形成され、よって、本発明の重合体(i)が主成分として生成することになるが、上記重合体(ii)の構造が2以上繰り返されている形態や、単量体(A)、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)のうち1以上の単量体に由来する構成単位を有する重合体が副次的に生成することもある。
上記重合反応において、上記一般式(5)で表される繰り返し単位を有する高分子アゾ開始剤、又は、上記一般式(6)で表される高分子アゾ開始剤の使用量、又は、上記ポリアルキレングリコール鎖含有化合物(好ましくはポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物)の使用量と、上記ビニル系単量体成分の単量体(A)、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)の使用量との関係は、上記ポリアルキレングリコール鎖(I)の特長を十分に発揮するための好ましい含有量について上述したものと同様である。
上記溶液重合のうち、水溶液重合では、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが、重合後に不溶成分を除去する必要がないので好適である。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物、2,4’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)と(アルコキシ)ポリエチレングリコールとのエステル等のマクロアゾ化合物等の水溶性アゾ系開始剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
更に水と低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、又は、上記ラジカル重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して用いることができる。
上記連鎖移動剤の使用量は、上記ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物の態様や量に応じて適宜設定すればよいが、ビニル系単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.25モル以上、更に好ましくは0.5モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、更に好ましくは10モル以下である。
このような製造方法において、上記活性水素を有する化合物としては、上述したように、アルコール、アミン、イミン、アミド化合物等が好ましく、中でも、アミン、(ポリ)アルキレンイミン及びアルコールが好適である。これらについては、上述したとおりである。
上記アルキレンオキシドもまた、上述したとおりである。
また上記活性水素を有する化合物と、アルキレンオキシドとの反応モル比としては、上述したポリアルキレングリコール鎖におけるアルキレンオキシドの平均繰り返し数の好適範囲になるよう、適宜設定することが好ましい。
また、このようにして得られるポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物に代表されるポリアルキレングリコール鎖含有化合物の存在下で、ビニル系単量体成分の重合反応を行うことにより、上記ポリアルキレングリコール系重合体(i−b)及び(i−c)を得ることができる。上記ビニル系単量体成分の重合反応については、上述したとおりである。
上記セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができ、このような上記セメント混和剤を含んでなるセメント組成物もまた、本発明の1つである。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
まず、ポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物やその重合体及び比較用重合体の分析方法として、液体クロマトグラフィー(LC)分析条件・解析条件、及び、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)分析条件・解析条件について説明する。また、これらの固形分を求める測定法についても説明する。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:Waters社製 Atlantis dC18 ガードカラム+カラム(粒径5μm、内径4.6mm×250mm×2本)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:アセトニトリル/100mM酢酸イオン交換水溶液=40/60(質量%)の混合物に30%NaOH水溶液を加えてpH4.0に調整したもの
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
試料液注入量:100μL(試料濃度1〜2質量%の溶離液溶液)
原料成分であるアルコール(付加物)の消費率は、以下のようにして概算した。
LC分析により、メルカプト基が全く導入されなかったもの(未反応原料)、メルカプト基が1つ導入されたポリアルキレングリコール鎖含有チオール化合物(「PAGチオール化合物」ともいう。)、・・・、メルカプト基が(m+p)個導入されたPAGチオール化合物のピークが分離される。これらのRI(示差屈折率計)面積比(%)をS0、S1、・・・Sm+pとし、原料成分のアルコールの消費率は、以下の式(1)により概算した。
ポリアルキレングリコール鎖含有チオール系重合体や比較用重合体の重量平均分子量、数平均分子量及びピークトップ分子量は、以下の測定条件により測定した。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に酢酸でpH6.0に調整したもの
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(PAG、PAGチオール化合物は試料濃度0.4質量%、重合体は試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
RIクロマトグラムにおいて、溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、ピークを検出・解析した。多量体や不純物が目的ピークに一部重なって測定された場合は、ピークの重なり部分の最凹部において垂直分割し、目的物の分子量を測定した。
単量体純分量及び多量化物量の計算;
RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算した。
単量体純分量=(PAGチオール化合物面積)/(多量化物ピーク面積+PAGチオール化合物面積)
多量化物量=(多量化物ピーク面積)/(多量化物ピーク面積+PAGチオール化合物面積)
得られたRIクロマトグラムにおいて、重合体溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、重合体を検出・解析した。ただし、単量体や単量体成分由来の不純物のピークが重合体ピークに一部重なって測定された場合、それらと重合体の重なり部分の最凹部において垂直分割して重合体部と単量体部とを分離し、重合体部のみの分子量・分子量分布を測定した。重合体部とそれ以外が完全に重なり分離できない場合はまとめて計算した。
重合体純分の計算:
RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算した。
重合体純分=(重合体ピーク面積)/(重合体ピーク面積+単量体や不純物のピーク面積)
サンプル約0.5gをアルミ皿に量り採り、水約1gで希釈して均一に広げた。窒素雰囲気下、130℃で1時間乾燥させ、デシケーター中で放冷した後、乾燥後質量を量った。乾燥前後の質量差により固形分(不揮発分)濃度を計算した。
PAGチオール化合物や重合体の水溶液の濃度としては、特に断りがない限り、上記の手順で測定した固形分を用いた。
製造例1
(1)脱水エステル化反応工程
ジムロート冷却管付のディーン・スターク装置、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えたガラス製反応器内に、エチレンオキシドの付加モル数100のポリアルキレングリコール(PEG−100、日本触媒社製、1500.00g)、3−メルカプトプロピオン酸(3−MPA、和光純薬工業社製、80.34g)、p−トルエンスルホン酸一水和物(PTS・1H2O、和光純薬工業社製、31.61g)、フェノチアジン(PTZ、和光純薬工業社製、0.7902g)、シクロへキサン(CyH、79.02g)を仕込んだ。ディーン・スターク装置をシクロへキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。また、加温用オイルバスの温度は120±5℃とした。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロヘキサンを加えながら、40.0時間加温還流して反応終了とした。
(2)脱溶媒工程
反応終了後、固化しないように撹拌しながら60℃まで放冷した後、30%NaOH水溶液(21.05g)に水(1507.51g)を加えた水溶液を、速やかに反応器内に投入した。続いて徐々に約100℃まで加温し、シクロへキサンを留去した。加温を停止し、放冷しながら窒素を30mL/分で90分バブリングして残存シクロへキサンを除去し、目的化合物(PAGチオール化合物(1))の水溶液を得た。
得られた目的化合物のLC分析結果は、PEG−100の消費率100.0%、PEG−100一分子に対する平均SH導入数は1.95個であった。ここから分子量を4532とした。またGPC分析結果は、単量体量94.2%、残りが多量体であった。
(1)脱水エステル化反応工程
ジムロート冷却管付のディーン・スターク装置、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、ガラス保護管付温度センサーを備えたガラス製反応器内に、ソルビトール1モルにエチレンオキシドを450モル付加したポリアルキレングリコール鎖含有ヘキサオール(SB−450、日本触媒社製、1500.00g)、3−メルカプトプロピオン酸(3−MPA、52.53g)、p−トルエンスルホン酸一水和物(PTS・1H2O、31.05g)、フェノチアジン(PTZ、0.7763g)、シクロへキサン(CyH、77.63g)を仕込んだ。ディーン・スターク装置をシクロへキサンで満たした後、反応系内を撹拌しながら、還流するまで加温した。また、加温用オイルバスの温度は120±5℃とした。反応系内の温度が110±5℃になるように途中でシクロヘキサンを加えながら、42.0時間加温還流して反応終了とした。
(2)脱溶媒工程
反応終了後、固化しないように撹拌しながら60℃まで放冷した後、30%NaOH水溶液(20.68g)に水(1487.45g)を加えた水溶液を、速やかに反応器内に投入した。続いて徐々に約100℃まで加温し、シクロへキサンを留去した。加温を停止し、放冷しながら窒素を30mL/分で90分バブリングして残存シクロへキサンを除去し、目的化合物(PAGチオール化合物(2))の水溶液を得た。
得られた目的化合物のLC分析結果は、SB−450の消費率100%、SB−450一分子に対する平均SH導入数は5.05個であった。ここから分子量を20450とした。またGPC分析結果は、単量体量84.2%、残りが多量体であった。
以下の実施例では、リン酸基を有する単量体(A)として、共栄社化学社製ライトエステルP−1M<リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸トリ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物>を使用した。分析結果より、モノエステル(Mw:210.12)、ジエステル(Mw:322.25)、トリエステル(Mw:434.37)のモル組成比はそれぞれ60、30、10(mol%)であったため、平均分子量を266.18として計算を行った。
単量体溶液としてメタクリル酸(MAA、1.30g)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ME23E、平均エチレンオキシド付加数23モル:新中村化学工業社製 NKエステルM230G、50.50g)、製造例1で得たPAGチオール化合物(1)(4.17g、ただし固形分換算)、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸トリ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物(共栄社化学社製 ライトエステルP−1M)(4.02g)にイオン交換水を加えて合計100gにした溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’-azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride(和光純薬工業社製 V−50、0.041g)にイオン交換水を加えて合計50gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水100gを仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃まで加温した。
続いて上記の単量体溶液を4時間、開始剤溶液を5時間かけて反応容器中に滴下した。滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却して、目的重合体(重合体8)の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMw=38600、Mp=38300、Mn=23200であった。また重合体純分は95.5%であった。
重合体実施例8において原料化合物や使用量を表1及び2に記載のように変更した他は、重合体実施例8と同様にして合成を行い、目的重合体(重合体1〜4、9、10)の水溶液を得た。
得られた重合体のGPC分析結果を表2に示す。
単量体溶液として、アクリル酸(AA、0.85g)、イオン交換水(6.15g)の溶液を調製した。
開始剤溶液として、2,2’-azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride(和光純薬工業社製 V−50、0.0641g)にイオン交換水を加えて合計37.5gにした溶液を調製した。
ジムロート冷却管、テフロン(R)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にリン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸トリ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物(共栄社化学社製 ライトエステルP−1M)(3.15g)、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加物(MB−E50、平均エチレンオキシド付加数50モル、54.12g)、製造例1で得たPAGチオール化合物(1)(4.38g、ただし固形分換算)、イオン交換水(143.85g)を仕込み、300rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら80℃に加温した。
続いて上記の単量体溶液を1時間、開始剤溶液を2時間かけて反応容器中に滴下した。
滴下完了後1時間、80℃に保って重合反応を完結させた。室温まで冷却後、30%NaOH水溶液を加えてpHを6.0に調整し、目的重合体(重合体5)の水溶液を得た。
GPC分析の結果、重合体はMw=18700、Mp=22100、Mn=10800で
あった。また重合体純分は29.6%であった。
重合体実施例5において原料化合物や使用量を表1及び2に記載のように変更した他は、重合体実施例5と同様にして合成を行い、目的重合体(重合体6、7)の水溶液を得た。
得られた重合体のGPC分析結果を表2に示す。
重合体実施例8において、原料化合物や反応条件等を表1及び2に記載のように変更した。ここではリン酸基を有する単量体(A)を使用せず、代わりに等モル量のカルボン酸系単量体(a)を使用した。他は、重合体実施例8と同様にして合成を行い、目的重合体(比較重合体1)の水溶液を得た。
得られた重合体のGPC分析結果を表2に示す。
それぞれ重合体実施例9、10において、リン酸基を有する単量体(A)を使用せず、代わりにモル当量のカルボン酸系単量体(a)を用いた他は、重合体実施例9、10と同様にして合成を行い、それぞれ目的重合体(比較重合体2、3)の水溶液を得た。
得られた重合体のGPC分析結果を表2に示す。
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
P−1M:リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸トリ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物
ME23E:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(平均エチレンオキシド付加数23モル)
MB−E50:3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加物(平均エチレンオキシド付加数50モル)
PAG−SH:PAGチオール化合物
P100S2:PAGチオール化合物(1)
S450S6:PAGチオール化合物(2)
V−50:2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩
なお、表2においては、PAGチオール化合物の配合割合を外割で考慮しているため合計は100%になっていない。
モルタル試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±10%の環境下で行った。
モルタル配合は、C/S/W=550/1350/220(g)とした。ただし、
C:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:本発明重合体又は比較重合体、及び、消泡剤のイオン交換水溶液
である。
Wとして、表3−1〜3−3に示した添加量の重合体水溶液を量り採り、消泡剤MA−404(ポゾリス物産製)を有姿で重合体固形分に対して10質量%加え、更にイオン交換水を加えて所定量とし、充分に均一な溶液とした。表3−1〜3−3において重合体の添加量は、セメント質量に対する重合体固形分の質量%で表されている。
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50;ホバート社製)にステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付け、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2速で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落としを行い、その後、75秒間静置した。75秒間静置後、更に60秒間2速で混練を行い、モルタルを調製した。
なお、15打フロー値は、数値が大きいほど、分散性能が優れている。
モルタルを500mLのガラス製メスシリンダーに約200mL詰め、径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。更にモルタルを約200mL加えて同様に気泡を抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。結果を表3−1〜3−3に示す。
リン酸基を有する単量体(A)、PAG(ポリアルキレングリコール)系単量体(b)及びPAGブロック鎖(I)(ポリアルキレングリコール鎖(I))からなる重合体(i)である重合体1〜4を用いて、モルタル試験により性能評価を行なった。比較例として、プレーン(重合体を添加しない)モルタル試験を行なった。結果を表3−1に示す。
重合体を添加しないモルタル比較例1の15打フロー値が143mmであるのに対し、重合体1〜4を各0.18wt%/セメント添加したモルタル実施例1−1〜1−4では、15打フロー値が172〜202mmと高い値を示した。このことより、リン酸基を有する単量体(A)、PAG系単量体(b)及びPAGブロック鎖(I)からなる重合体(i)がセメント分散性を有することが明確である。
リン酸基を有する単量体(A)、カルボン酸系単量体(a)、PAG系単量体(b)及びPAGブロック鎖(I)からなる重合体(i)である重合体実施例5〜7を用いて、モルタル試験により性能評価を行なった。比較例として、プレーン(重合体を添加しない)モルタル試験を行なった。結果を表3−2に示す。
重合体を添加しないモルタル比較例2の15打フロー値が142mmであるのに対し、重合体5〜7を各0.22wt%/セメント添加したモルタル実施例2−1〜2−3では、15打フロー値が154〜157mmと高い値を示した。このことより、リン酸基を有する単量体(A)、カルボン酸系単量体(a)、PAG系単量体(b)及びPAGブロック鎖(I)からなる重合体(i)がセメント分散性を有することが明確である。
リン酸基を有する単量体(A)、カルボン酸系単量体(a)、PAG系単量体(b)及びPAGブロック鎖(I)からなる重合体(i)である重合体実施例8〜10を用いて、モルタル試験により性能評価を行なった。比較例として、単量体(A)を有しない比較重合体1〜3用いた試験を行なった。また比較例として、プレーン(重合体を添加しない)モルタル試験を行なった。結果を表3−3に示す。
比較重合体1のカルボン酸系単量体(a)のうち、モル量で半分をリン酸基を有する単量体(A)に置換したものが重合体8に相当する。重合体8を用いたモルタル実施例3−1の15打フロー値は155mmであり、重合体を添加しないモルタル比較例3−4の15打フロー値144mmよりも高いことから、重合体8はセメント分散性を有することが明確である。さらにモルタル実施例3−1の15打フロー値は、同一添加量の比較重合体1を用いた、モルタル比較例3−1の15打フロー値135mmよりも高いことから、単量体(A)を用いた重合体(i)が、単量体(A)を用いない重合体よりも高いセメント分散性を有することが明確である。
同様に、比較重合体2、3のカルボン酸系単量体(a)のうち、モル量で半分をリン酸基を有する単量体(A)に置換したものが、それぞれ重合体9、10に相当する。重合体9、10を用いたモルタル実施例3−1、2の15打フロー値は、重合体を添加しないモルタル比較例3−4よりも著しく高い値を示し、重合体9、10はセメント分散性を有することが明確である。さらに、それぞれ対応する比較重合体2、3を用いたモルタル比較例3−2、3−3の15打フロー値よりも、同一添加量で著しく高い値を示すことから、単量体(A)を用いた重合体(i)が、単量体(A)を用いない重合体よりも高いセメント分散性を有することが明確である。
Claims (9)
- ポリアルキレングリコール鎖の末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が、ビニル系単量体成分由来の構成単位を含む重合体の主鎖末端と直接又は有機残基を介して結合した構造を有するポリアルキレングリコール系重合体であって、
該重合体は、下記一般式(1):
該ビニル系単量体成分は、リン酸基を有する単量体を必須に含む
ことを特徴とするポリアルキレングリコール系重合体。 - 前記ビニル系単量体成分は、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体を必須に含む
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアルキレングリコール系重合体。 - 前記ビニル系単量体成分は、不飽和カルボン酸系単量体を必須に含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアルキレングリコール系重合体。 - 前記ビニル系単量体成分は、不飽和カルボン酸系単量体を含まない
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアルキレングリコール系重合体。 - ポリアルキレングリコール鎖の末端の少なくとも1つにおける末端酸素原子が、ビニル系単量体成分由来の構成単位を含む重合体の主鎖末端と直接又は有機残基を介して結合した構造を有するポリアルキレングリコール系重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、下記一般式(2):
該ビニル系単量体成分は、リン酸基を有する単量体を必須に含む
ことを特徴とするポリアルキレングリコール系重合体の製造方法。 - 請求項5に記載の製造方法によって得られることを特徴とするポリアルキレングリコール系重合体。
- 請求項1〜4、6のいずれかに記載のポリアルキレングリコール系重合体を含む
ことを特徴とするセメント分散剤。 - 請求項1〜4、6のいずれかに記載のポリアルキレングリコール系重合体を含む
ことを特徴とするセメント混和剤。 - 請求項8に記載のセメント混和剤を含む
ことを特徴とするセメント組成物。
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