JP2016069269A - コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法 - Google Patents

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茂樹 岡田
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幸信 由良
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Nobuyuki Kobayashi
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Abstract

【課題】高い歩留りで平坦なコバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法の提供。【解決手段】(a)Co3O4粒子を含む厚さ100μm以下のグリーンシートを用意し、(b)グリーンシートを焼成して、Co3O4粒子の全部又は一部が、(h00)面をシート面と平行に配向したCoOに変化した焼成中間体とし、(c)焼成中間体を、CoOを部分的に残留させつつCo3O4に戻すように降温して、Co3O4相及びCoO相を含む配向焼結板を得、(d)配向焼結板を平坦面でプレスしながら熱処理して配向焼結板の反り及び/又はうねりを除去又は低減し、(e)平坦化されたCo3O4配向焼結板にリチウムを導入して、LiCoO2からなるコバルト酸リチウム配向焼結板を形成する工程を含み、(c)工程において残留させるCoOの量が(d)工程において配向焼成板の割れを防止するのに有効な量である、コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法。【選択図】図2

Description

本発明は、コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法に関する。
リチウム二次電池(リチウムイオン二次電池と称されることもある)における正極活物質として、層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物(リチウム遷移金属酸化物)を用いたものが広く知られている。この種の正極活物質においては、その内部でのリチウムイオン(Li)の拡散が(003)面の面内方向(すなわち(003)面と平行な平面内の任意の方向)で行われる一方、(003)面以外の結晶面(例えば(101)面や(104)面)でリチウムイオンの出入りが生じることが知られている。
そこで、この種の正極活物質において、リチウムイオンの出入りが良好に行われる結晶面((003)面以外の面、例えば(101)面や(104)面))をより多く電解質と接触する表面に露出させることで、リチウム二次電池の電池特性を向上させる試みがなされている。例えば、特許文献1(国際公開第2010/074304号)には、Coを含むグリーンシートを焼成して(h00)面がシート面と平行に配向したCo粒子を含むシートを形成し、その後Liを導入することにより、(104)面がシート面と平行に配向したLiCoOセラミックスシート(正極活物質膜)を製造することが開示されている。また、Coを含むグリーンシートに粒成長促進材としてBiをさらに添加することもこの文献には記載されている。
国際公開第2010/074304号
ところで、特許文献1に開示されるようなCo含有グリーンシートの焼成においては、配向を促すべくCoを大きく粒成長させるため、シートには反りやうねりが生じやすくなる。かかる反りやうねりを有した正極活物質板を用いて電池を作製した場合、正極活物質板を集電箔に接着する際や、正極活物質板を電解質膜や負極と積層する際に、正極活物質板に割れやクラックが生じ、ショート等の不具合を引き起こすという問題がある。
本発明者らは、今般、Co含有グリーンシートの焼成等を経てCo相のみならずCoO相をもある程度含んだ配向焼結板を作製し、この配向焼結板を平坦な面でプレスしながら所定条件下で熱処理することで、割れを生じさせることなく、配向焼結板の反り及び/又はうねりを効果的に除去又は低減することができ、その結果、高い歩留りで平坦なコバルト酸リチウム配向焼結板を製造できるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、高い歩留りで平坦なコバルト酸リチウム配向焼結板を製造することにある。
本発明の一態様によれば、コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法であって、
(a)Co粒子を含んでなる、厚さ100μm以下のグリーンシートを用意する工程と、
(b)前記グリーンシートを900〜1350℃で焼成して、Co粒子の全部又は一部が、(h00)面をシート面と平行に配向したCoOに変化した焼成中間体とする工程と、
(c)前記焼成中間体を、CoOを部分的に残留させつつCoに戻すように降温して、Co相及びCoO相を含む配向焼結板を得る工程と、
(d)前記配向焼結板を平坦な面でプレスしながら、酸化雰囲気中、900℃未満の温度で熱処理して前記配向焼結板の反り及び/又はうねりを除去又は低減し、それにより平坦化されたCo配向焼結板を得る工程と、
(e)前記平坦化されたCo配向焼結板にリチウムを導入して、LiCoOからなるコバルト酸リチウム配向焼結板を形成する工程と、
を含んでなり、前記(c)工程において残留させるCoOの量が前記(d)工程において前記配向焼成板の割れを防止するのに有効な量である、方法が提供される。
例1(比較)においてLi導入前の配向焼結板について得られたXRDプロファイルである。 例4においてLi導入前の配向焼結板について得られたXRDプロファイルである。
コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法
本発明は、コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法に関する。本発明により製造される配向焼結板はLiCoOからなるものである。LiCoOは層状岩塩構造を有するものであるが、本発明のコバルト酸リチウム配向焼結板は、典型的には、LiCoOの(104)面及び(101)面の少なくともいずれか一方が板面と平行に配向してなるものである。もっとも、コバルト酸リチウム配向焼結板は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi等の元素が1種以上更にドーピング又はそれに準ずる形態(例えば結晶粒子の表層への部分的な固溶、偏析、コーティング、又は付着)で微量含んでいてもよい。
本発明の方法によるコバルト酸リチウム配向焼結板の製造は、(a)Co粒子を含んでなるグリーンシートを用意し、(b)このグリーンシートを900〜1350℃で焼成して焼成中間体とし、(c)この焼成中間体を降温してCo相及びCoO相を含む配向焼結板とし、(d)この配向焼結板をプレスしながら熱処理して反り及び/又はうねりを除去又は低減し、(e)こうして平坦化されたCo配向焼結板にリチウムを導入することにより行われる。そして、(c)工程において残留させるCoOの量を(d)工程において配向焼成板の割れを防止するのに有効な量とする。このように、Co含有グリーンシートの焼成等を経てCo相のみならずCoO相をもある程度含んだ配向焼結板を作製し、この配向焼結板を平坦な面でプレスしながら所定条件下で熱処理することで、割れを生じさせることなく、配向焼結板の反り及び/又はうねりを効果的に除去又は低減することができる。すなわち、工程(b)では900〜1350℃の焼成温度でグリーンシート中のCoがCoOに相変態した状態(これは900℃付近で生じる)で焼結が進行し、工程(c)の降温時にCoOがCoに再び相変態しうる。このとき、CoOがある程度残留した状態にすることで、配向焼結板に柔軟性ないし強度を付与することができる。その結果、反りやうねりがあっても、後続の工程(d)のプレス及び熱処理の同時適用により、割れを生じさせることなく反りやうねりを修正することができる。こうして、高い歩留りで平坦なコバルト酸リチウム配向焼結板を製造することが可能となる。なお、CoOからLiCoOは合成されにくいが、上記のようにして配向焼成板に残留させたCoOは、反り及び/又はうねりの修正の際に熱処理に伴いCoに変態することから、リチウム導入には何ら支障は無く、コバルト酸リチウム(LiCoO)を良好に合成することができる。なお、CoOの残留によって得られる柔軟性ないし強度は、室温においても発揮されるため、工程(d)のプレスは、室温で配向焼結板に平坦な面を持つ重しを載せ、熱処理することにより行えばよい。
以下、本発明の製造方法の各工程の詳細について説明する。
(a)グリーンシートの用意
この工程(a)では、Co粒子を含んでなる、厚さ100μm以下のグリーンシートを用意する。グリーンシートは粒成長促進材としてビスマス酸化物(典型的にはBi粒子)をさらに含んでなるのが好ましい。グリーンシートは、Co粒子及び所望によりビスマス酸化物(典型的にはBi粒子)を含む原料をシート状に成形することにより作製すればよい。Bi粒子の添加量は特に限定されないが、Co粒子及びBi粒子の全体量に対して、0.1〜30重量%とするのが好ましく、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。また、Co粒子の体積基準D50粒径は、0.1〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.3〜1.2μmである。Bi粒子の体積基準D50粒径は、0.1〜1.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5μmである。また、グリーンシートの厚さは100μm以下であり、好ましくは1〜60μm、より好ましくは5〜40μmである。なお、グリーンシートは、Co粒子の全部又は一部に代えて、CoO粒子及び/又はCo(OH)粒子を含んでなるものであってもよく、この場合においても、工程(b)の焼成に付することで、(h00)面をシート面と平行に配向したCoO焼成中間体とすることができ、その結果、Co粒子を含んでなるグリーンシートを用いる場合と同様にコバルト酸リチウム配向焼結板を製造することができる。
グリーンシートを形成する方法の例としては、(i)原料粒子を含むスラリーを用いたドクターブレード法、(ii)熱したドラム上へ原料を含むスラリーを塗布し、乾燥させたものをスクレイパーで掻きとる、ドラムドライヤーを用いた手法、(iii)熱した円板面へスラリーを塗布し、これを乾燥させてスクレイパーで掻きとる、ディスクドライヤーを用いた手法、(iv)原料粒子を含む坏土を用いた押出成形法等が挙げられる。特に好ましいシート形成方法はドクターブレード法である。ドクターブレード法を用いる場合、可撓性を有する板(例えばPETフィルム等の有機ポリマー板)にスラリーを塗布し、塗布したスラリーを乾燥固化して成形体とし、この成形体と板とを剥離することにより、グリーンシートを作製すればよい。成形前にスラリーや坏土を調製するときには、無機粒子を分散媒に分散させ、バインダーや可塑剤等を適宜加えてもよい。また、スラリーは、粘度が500〜4000cPとなるように調製するのが好ましく、減圧下で脱泡するのが好ましい。グリーンシートの形状としては、焼成収縮による皺が入りにくくする観点から、円形としてもよい。
(b)焼成中間体の作製(焼成工程)
この工程(b)では、グリーンシートを900〜1350℃で焼成して、Co粒子の全部又は一部(望ましくは全部)が、(h00)面(hは任意の整数、例えばh=2である)をシート面と平行に配向したCoOに変化した焼成中間体とする。すなわち、Coの酸化物は、900℃以上(例えば920℃以上)では、室温におけるCoで表されるスピネル構造からCoOの岩塩構造に相変態する。この焼成によりCoの全部又は一部が還元されてCoOに相変態するとともに、シートが緻密化される。焼成前のCo粒子は等方的な形態を有し、それ故グリーンシートは配向性を当初は有しないが、焼成によりCo粒子がCoOに相変態して粒成長する段階で配向が生じる(以下、CoOの配向粒成長という)。特に、ビスマス酸化物(典型的にはBi)の共存下ではCoOの配向粒成長が促進される。もっとも、グリーンシートがビスマス酸化物を含む場合には、この焼成時にビスマスは揮発してシートから除去される。グリーンシートの焼成温度は900〜1350℃であり、好ましくは1000〜1300℃、より好ましくは1100〜1300℃である。グリーンシートは上記焼成温度で1〜20時間焼成されるのが好ましく、より好ましくは2〜10時間である。
CoOの配向粒成長には、100μm以下というグリーンシートの厚さが寄与している。すなわち、厚さ100μm以下のグリーンシートにおいては、シート面内方向(厚さ方向と直交する方向)に比べて、厚さ方向に存在する材料の量が極めて少ない。このため、厚さ方向に複数個の粒子がある初期段階には、ランダムな方向に粒成長する。一方、粒成長が進行して厚さ方向の材料が消費されると、粒成長方向はシート面内の二次元方向(以下、面方向という)に制限されることになる。これにより、面方向への粒成長が確実に促進される。特に、グリーンシートを可能な限り薄く形成したり(例えば数μm以下)、あるいはグリーンシートが比較的厚め(最大で100μm程度、例えば20μm程度)の場合であっても粒成長を可能な限り大きく促進したりすることで、面方向への粒成長を確実に促進させることができる。いずれにしても、焼成の際、表面エネルギーの最も低い結晶面をグリーンシートの面内に持つ粒子のみが選択的に面方向へ扁平状(板状)に粒成長することになる。その結果、グリーンシートの焼成により、アスペクト比が大きく、(h00)面が粒子の板面と平行となるように配向したCoO板状結晶粒子が、その(h00)面をシート面と平行に配向し、粒界部にて面方向に結合してなる焼成中間体が得られる。
(c)配向焼結板の作製(降温工程)
この工程(c)は工程(b)の焼成に引き続き(すなわち焼成温度から)行われる降温工程である。すなわち、工程(c)では、焼成中間体を(工程(b)の焼成温度から)CoOを部分的に残留させつつCoに戻すように降温して、Co相及びCoO相を含む配向焼結板を得る。このとき、(c)工程において残留させるCoOの量を後続の(d)工程において配向焼成板の割れを防止するのに有効な量とする。すなわち、工程(b)ではCoがCoOに相変態した状態で焼結が進行したが、工程(c)の降温時にCoOがCoに再び相変態しうる。このとき、降温速度等の諸条件を制御してCoOがある程度残留した状態にすることで、配向焼結板に柔軟性ないし強度を付与することができる。その結果、反りやうねりがあっても、後続の工程(d)のプレス及び熱処理の同時適用により、割れを生じさせることなく反りやうねりを修正することができる。この目的のためには、焼成中間体を、比較的高い速度で降温させるのが好ましく、より好ましくは170℃/h以上、さらに好ましくは200〜500℃/h、特に好ましくは220〜400℃/h、最も好ましくは250〜350℃/hの速度で降温させる。
配向焼成板中に残留させるCoOの量は、後続の工程(d)において配向焼成板の割れを防止するのに有効な量とすればよい。この量は、例えば、配向焼結板を粉砕した粉末のXRDプロファイルを測定することにより評価することができる。具体的には、(c)工程で得られる配向焼結板におけるCo相及びCoO相の含有比率が、配向焼結板を粉砕した粉末のXRDプロファイルで、Coの最強ピークである37°付近に現れる(311)回折ピークの面積強度I(311)に対する、CoOの最強ピークである42°付近に現れる(200)回折ピークの面積強度I(200)の比、すなわちI(200)/I(311)が0.5〜7.0となる比率であるのが好ましく、より好ましくは0.8〜5.0、さらに好ましくは1.5〜4.5、特に好ましくは2.0〜4.0である。このような範囲内であると配向焼結板に反りやうねりの修正がしやすくなるとともに、後続の工程(d)の熱処理に伴う酸素導入によるCoOからCoへの層変態が十分に進行するため、最終的に得られる正極活物質の放電容量を向上することができる。
ところで、この工程(c)では焼成中間体の温度が下がる過程でCoOがCoに酸化される。その際、CoOの配向方位がCoに引き継がれることで、(h00)面が粒子の板面と平行となるように配向したCo結晶粒子が得られる。その結果、(h00)面がシート面と平行となるように配向された多数のCo粒子からなる、独立した板状のシートが形成される。「独立した」シートとは、焼成後に他の支持体から独立して単体で取り扱い可能なシートのことをいう。すなわち、「独立した」シートには、焼成により他の支持体(基板等)に固着されて当該支持体と一体化された(分離不能あるいは分離困難となった)ものは含まれない。こうして(h00)面が粒子の板面と平行となるように配向した多数の粒子が結合した自立した配向焼結板が得られる。この自立板は、上述のような多数の粒子が隙間なく結合した、緻密なセラミックスシートとなり得る。
(d)反りやうねりの修正
この工程(d)では、配向焼結板を平坦な面でプレスしながら、酸化雰囲気中、900℃未満の温度で熱処理して配向焼結板の反り及び/又はうねりを除去又は低減し、それにより平坦化されたCo配向焼結板を得る。上述のとおり、配向焼結板には残留したCoOに起因して柔軟性ないし強度を有するため、プレス及び熱処理を施すことで、割れを生じさせることなく反りやうねりを修正することができる。この熱処理は、900℃未満の温度、好ましくは780〜880℃、より好ましくは800〜850℃で行われる。この範囲内の温度であると、反り及び/又はうねりを効率よく除去又は低減しながら、熱処理に伴う酸素導入によるCoOからCoへの層変態が十分に進行するため、最終的に得られる正極活物質の放電容量を向上することができる。この熱処理は酸化雰囲気中にて上記範囲内の温度で2時間以上、好ましくは2〜20時間行われるのが好ましい。酸化雰囲気は例えば大気雰囲気や酸素雰囲気であってよい。
本工程におけるプレスは、配向焼結板を1枚、若しくは複数枚重ねた状態で、その上下面をセラミックス製の平坦な面で挟むことにより行われるのが好ましい。セラミックス製の平坦な面を与える部材(以下、平坦部材という)の好ましい例としては、セラミックス製のセッターが挙げられる。また、上下で合計2枚のセッターの間にスペーサーを介在させて過度なプレスによる癒着を防止するように構成してもよく、このスペーサーもセラミックス製であるのが好ましい。平坦部材やスペーサーを構成するセラミックスの材質はジルコニア、アルミナ、マグネシア等が好ましい。また、酸素導入が進行しやすくなるよう、平坦部材は多孔質のセッターや、穴の開いたセッター(例えばハニカム状のセッター)を用いてもよい。
(e)リチウムの導入
この工程(e)では、平坦化されたCo配向焼結板にリチウムを導入して、LiCoOからなるコバルト酸リチウム配向焼結板を形成する。リチウム導入は、平坦化されたCo配向焼結板をリチウム化合物と反応させることにより行われるのが好ましい。リチウム導入のためのリチウム化合物の例としては、(i)水酸化リチウム、(ii)炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、シュウ酸リチウム、クエン酸リチウム等の各種リチウム塩、(iii)リチウムメトキシド、リチウムエトキシド等の各種リチウムアルコキシド等が挙げられ、特に好ましくは水酸化リチウム、炭酸リチウム、又はそれらの混合物である。リチウム導入する際の条件、例えば、混合比、加熱温度、加熱時間、雰囲気等は、リチウム源として用いる材料の融点や分解温度、反応性等を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、(h00)配向したCo配向焼結板に、LiOH粉末の分散したスラリーを所定量塗布して乾燥させた後、加熱することにより、Co粒子にリチウムを導入することができる。このときの加熱温度は700〜900℃が好ましく、この範囲内の温度で2〜20時間加熱を行うのが好ましい。他の方法としては、(h00)配向したCo配向焼結板上に所定量の炭酸リチウムを載置し、加熱することにより、Co粒子にリチウムを導入することができる。炭酸リチウムの載置は、炭酸リチウムを含んでなるリチウム含有シートの形態で成形体シート上に載置することにより行われてもよいが、Co配向焼結板を上下からリチウム含有シートで挟み込むことにより行ってもよい。また、Co配向焼結板に付着させるリチウム化合物の量はLi/Co比で1.0以上とするのが好ましく、より好ましくは1.0〜4.0、さらに好ましくは1.2〜3.0である。Liが多すぎる場合であっても余剰分のLiは加熱に伴い揮発して消失するため問題は無い。なお、工程(d)と工程(e)は同時に行ってもよいが、この場合、CoOが残留した状態でリチウム導入が進むため、LiCoOが合成されにくいことがある。コバルト酸リチウム配向焼結板の平坦性を上げる(例えば、板面の凹凸の度合いを小さく抑える)ために、Co配向焼成板を加重をかけた状態で加熱してもよい。合成に必要な酸素をCo配向焼成板の板面に十分に供給するため、多孔質のセッターや、穴の開いたセッター(例えばハニカム状のセッター)で加重してもよい。コバルト酸リチウム配向焼結板が比較的厚い場合(例えば厚さ30μm以上)、付着させるLi原料が嵩高くなり、加熱中に溶融したLi原料の一部が、合成に使われずに流れ出してしまい、合成不良になりやすい。このような場合には、Li原料を付着させ、加熱する工程(すなわち、Liを導入する工程)を繰り返してもよい。
こうして得られるコバルト酸リチウム配向焼結板は、LiCoOの(104)面及び(101)面の少なくともいずれか一方が板面と平行に配向してなるものである。したがって、リチウムイオンの出入りが良好に行われる(104)面や(101)面が配向焼結板の板面と平行となるように配向する。このため、この配向焼結板を正極活物質として用いて電池を構成した場合に、電解質に対する当該面の露出(接触)がより多くなるとともに、当該粒子や板の表面における(003)面(リチウムイオンの出入りに適さない面)の露出割合が極めて低くなる。したがって、例えば、コバルト酸リチウム配向焼結板を固体型リチウム二次電池の正極材料として用いた場合に、高容量と高レート特性とを同時に達成することができる。コバルト酸リチウム配向焼結板の厚さは、好ましくは5〜75μmであり、より好ましくは10〜60μmであり、さらに好ましくは20〜50μm、特に好ましくは20〜40μmである。また、コバルト酸リチウム配向焼結板のサイズは、好ましくは5mm×5mm平方以上、より好ましくは10mm×10mm〜100mm×100mm平方であり、さらに好ましくは10mm×10mm〜50mm×50mm平方であり、別の表現をすれば、好ましくは25mm以上、より好ましくは100〜10000mmであり、さらに好ましくは100〜2500mmである。
上述したように、コバルト酸リチウム配向焼結板は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi等の元素が1種以上含まれていてもよく、そのような元素の添加は上述した工程(a)〜(e)のいずれか(典型的には工程(a)又は工程(e))において行えばよい。添加元素を板の表面のみに偏析させたり、付着のみさせるような場合には、例えば工程(e)の後に、さらに添加元素を被覆し、熱処理するようにして行えばよい。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例1〜6
(1)LiCoO配向焼結板の作製
例1〜6の各例について、以下の手順によりLiCoO配向焼結板を作製した。
(1a)グリーンシートの作製
Co原料粉末(体積基準D50粒径0.8μm、正同化学工業株式会社製)に、10wt%の割合でBi(体積基準D50粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を添加して混合粉末を得た。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調製した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが24μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
(1b)焼成中間体の作製(焼成工程)
PETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで50mm角に切り出し、ジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に2枚重ねて載置し、1300℃で5時間焼成して、焼成中間体とした。
(1c)配向焼結板の作製(降温工程)
上記焼成に引き続き(すなわち上記焼成温度1300℃から)、焼成中間体を表1に示される降温速度にて降温した後、セッターへの溶着のない、上層の1枚の配向焼結板を取り出した。
(Li導入前の板のCoO含有量評価)
このとき、CoO含有量評価用の配向焼結板も上記同様にして得た。この評価用配向焼結板を乳鉢で解砕し、XRD装置(株式会社リガク製ガイガーフレックスRAD−IB)を用い、X線を照射したときのXRDプロファイルを測定した。Coに対するCoOの含有量として、Coの最強ピークである37°付近に現れる(311)回折ピークの面積強度に対する、CoOの最強ピークである42°付近に現れる(200)回折ピークの面積強度の比I(200)/I(311)がを算出した。その結果、I(200)/I(311)比は表1に示されるとおりであった。例1(比較)で得られたXRDプロファイルを図1に示す一方、例4で得られたXRDプロファイルを図2に示す。
(1d)反りやうねりの修正
ジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に配向焼結板1枚を載置し、このセッターの4隅に高さ150μmのジルコニア製スペーサーを載置し、さらにその上に上記同様のセッターを載置した。こうしてスペーサーを介して2枚のセッターで挟持された配向焼結板を大気中840℃で10時間熱処理した。
(1e)リチウムの導入
LiOH・HO粉末(和光純薬工業株式会社製)をジェットミルで1μm以下に粉砕し、エタノールに分散したスラリーを作製した。このスラリーを上記配向焼結板にLi/Co=1.3になるように塗布し、乾燥した。その後、大気中にて840℃で10時間加熱処理してLiCoO配向焼結板を得た。
(XRD測定による配向性の確認)
LiCoO配向焼結板において(104)面が板面に平行に配向していることを確認すべく、XRD(X線回折)測定を行った。具体的には、XRD装置(株式会社リガク製、 ガイガーフレックスRAD−IB)を用い、焼結板の表面に対してX線を照射したときのXRDプロファイルを測定した。このXRDプロファイルから(104)面による回折強度(ピーク高さ)に対する(003)面による回折強度(ピーク高さ)の比率I[003]/I[104]を求めたところ、例1〜6のいずれにおいても、0.3であった。一方、同じ板を乳鉢で十分に粉砕して粉末状にしたうえで、粉末XRDのプロファイルを測定したところ、例1〜6のいずれにおいても、I[003]/I[104]は1.6であった。このことから、(104)面が板面に平行に多数存在している、すなわち配向していることを確認した。
(2)電池の作製及び評価
得られたLiCoO配向焼結板に集電層としてAuスパッタ(1000Å)して正極とした。この正極、Li金属板からなる負極、及びセパレータを、正極−セパレータ−負極の順に配置し、この集積体を電解液で満たすことでコインセルを作製した。電解液は、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を等体積比で混合した有機溶媒に、LiPFを1mol/Lの濃度となるように溶解させることで調製した。
上述のようにして作製した電池(コインセル)を用いて、放電容量の評価を行った。(i)0.1Cレートの電流値で電池電圧が4.2Vとなるまで定電流充電し、その後(ii)電池電圧を4.2Vに維持する電流条件で、その電流値が1/20に低下するまで定電圧充電した後10分間休止し、続いて(iii)0.1Cレートの電流値で電池電圧が3.0Vになるまで定電流放電し、このときの値を放電容量とした。
Figure 2016069269

Claims (10)

  1. コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法であって、
    (a)Co粒子を含んでなる、厚さ100μm以下のグリーンシートを用意する工程と、
    (b)前記グリーンシートを900〜1350℃で焼成して、Co粒子の全部又は一部が、(h00)面をシート面と平行に配向したCoOに変化した焼成中間体とする工程と、
    (c)前記焼成中間体を、CoOを部分的に残留させつつCoに戻すように降温して、Co相及びCoO相を含む配向焼結板を得る工程と、
    (d)前記配向焼結板を平坦な面でプレスしながら、酸化雰囲気中、900℃未満の温度で熱処理して前記配向焼結板の反り及び/又はうねりを除去又は低減し、それにより平坦化されたCo配向焼結板を得る工程と、
    (e)前記平坦化されたCo配向焼結板にリチウムを導入して、LiCoOからなるコバルト酸リチウム配向焼結板を形成する工程と、
    を含んでなり、前記(c)工程において残留させるCoOの量が前記(d)工程において前記配向焼成板の割れを防止するのに有効な量である、方法。
  2. 前記(c)工程で得られる配向焼結板におけるCo相及びCoO相の含有比率が、該配向焼結板を粉砕した粉末のXRDプロファイルで、Coの最強ピークである37°付近に現れる(311)回折ピークの面積強度I(311)に対する、CoOの最強ピークである42°付近に現れる(200)回折ピークの面積強度I(200)の比、すなわちI(200)/I(311)が0.5〜7.0となる比率である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記比I(200)/I(311)が、0.8〜5.0である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記(c)工程が前記焼成中間体を170℃/h以上の速度で降温させることを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記(c)工程が前記焼成中間体を200〜500℃/hの速度で降温させることを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記(d)工程における熱処理が、780〜880℃で行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記(d)工程におけるプレスが前記配向焼結板を1枚、若しくは複数枚重ねた状態で、その上下面をセラミックス製の平坦な面で挟むことにより行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記グリーンシートがビスマス酸化物をさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記コバルト酸リチウム配向焼結板は、LiCoOの(104)面及び(101)面の少なくともいずれか一方が板面と平行に配向してなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記(e)工程におけるリチウム導入が、前記平坦化されたCo配向焼結板をリチウム化合物と反応させることにより行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
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