JP6823597B2 - リチウム二次電池用配向正極板 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム二次電池用配向正極板に関する。
リチウム二次電池(リチウムイオン二次電池と称されることもある)における正極活物質として、層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物(リチウム遷移金属酸化物)を用いたものが広く知られている。この種の正極活物質においては、その内部でのリチウムイオン(Li)の拡散が(003)面の面内方向(すなわち(003)面と平行な平面内の任意の方向)で行われる一方、(003)面以外の結晶面(例えば(101)面や(104)面)でリチウムイオンの出入りが生じることが知られている。
そこで、この種の正極活物質において、リチウムイオンの出入りが良好に行われる結晶面((003)面以外の面、例えば(101)面や(104)面))をより多く電解質と接触する表面に露出させることで、リチウム二次電池の電池特性を向上させる試みがなされている。例えば、特許文献1(国際公開第2010/074304号)には、Coを含むグリーンシートを焼成して(h00)面がシート面と平行に配向したCo粒子を含むシートを形成し、その後Liを導入することにより、(104)面がシート面と平行に配向したLiCoOセラミックスシート(正極活物質膜)を製造することが開示されている。また、Coを含むグリーンシートに粒成長促進材としてBiをさらに添加することもこの文献には記載されている。
国際公開第2010/074304号
特許文献1に開示されるような、結晶方位を配向させた正極板(以下、配向正極板という)をリチウムイオン二次電池に適用した場合には、配向方位が揃っているためにリチウムイオンが取り出しやすく、高い出力特性を得ることができる。しかし、その一方で、結晶方位が揃っているために特定の方向へクラックが進展しやすく、板形状とした製品において、ハンドリング時や電池材料としての使用時に外部からの応力によって割れやすいという問題があった。
本発明者らは、今般、配向正極板内部の配向を敢えてランダム化して表面のみを高度に配向させた構造(以下、表面配向構造という)とすることで、配向正極板表面での配向によるリチウムイオンの取り出し易さ及びそれによる高い出力特性(特に高いレート特性)を維持しながら、外部応力が加わった際のクラックの進展を抑制でき、それ故使用時の板形状での割れを防止できるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、配向正極板表面での配向によるリチウムイオンの取り出し易さ及びそれによる高い出力特性(特に高いレート特性)を維持しながら、外部応力が加わった際のクラックの進展を抑制可能な(それ故使用時の板形状での割れを防止可能な)、リチウム二次電池用配向正極板を提供することにもある。
本発明の一態様によれば、リチウム二次電池用配向正極板であって、
前記配向正極板が、層状岩塩構造を有する複数のコバルト酸リチウム結晶粒で構成される焼結体からなり、前記複数のコバルト酸リチウム結晶粒の少なくとも一部が、層状岩塩構造の(003)面が前記配向正極板の板面と交差する方向に配向されており、
前記配向正極板の少なくとも一方の側の表面に対するX線回折により測定される、(104)面の回折ピーク強度に対する(003)面の回折ピーク強度の比率である、表面XRDピーク比RS(003)/(104)が、前記配向正極板の板厚方向の中央位置に対するX線回折により測定される、(104)面の回折強度に対する(003)面の回折強度の比率である、内部XRDピーク比RI(003)/(104)よりも低く、前記内部XRDピーク比RI(003)/(104)に対する前記表面XRDピーク比RS(003)/(104)の比であるR/R比が0.5以下である、配向正極板が提供される。
本発明による表面配向正極板の配向状態を概念的に示す模式断面図である。 無配向正極板の無配向状態を概念的に示す模式断面図である。 内部まで配向された配向正極板の配向状態を概念的に示す模式断面図である。 EBSD画像における配向正極板の高配向領域の判定手法を説明するための模式図である。 例1(比較)において作製された配向正極板の表面に対するX線回折により取得されたXRDプロファイルである。 例1(比較)において作製された配向正極板の内部に対するX線回折により取得されたXRDプロファイルである。 例2において作製された配向正極板の表面に対するX線回折により取得されたXRDプロファイルである。 例2において作製された配向正極板の内部に対するX線回折により取得されたXRDプロファイルである。
定義
本発明による配向正極板を特定するために用いられるパラメータの定義を以下に示す。
本明細書において「表面XRDピーク比RS(003)/(104)」とは、配向正極板の少なくとも一方の側の表面に対するX線回折により測定される、(104)面の回折ピーク強度(回折ピークの最大高さ)に対する(003)面の回折ピーク強度(回折ピークの最大高さ)の比率である。このX線回折による測定は、XRD装置を用い、焼結板の表面に対してX線を照射したときのXRDプロファイルを取得することにより行うことができる。
本明細書において「内部XRDピーク比RI(003)/(104)」とは、配向正極板の板厚方向の中央位置に対するX線回折により測定される、(104)面の回折ピーク強度(回折ピークの最大高さ)に対する(003)面の回折ピーク強度(回折ピークの最大高さ)の比率である。このX線回折による測定は、配向正極板をその厚みが1/2になるように片面から研磨し、配向正極板の中央断面を露出させた上で、XRD装置を用い、焼結板の中央断面に対してX線を照射したときのXRDプロファイルを取得することにより行うことができる。
配向正極板
本発明は、リチウム二次電池用配向正極板に関するものであり、特に好ましくは全固体リチウム二次電池用配向正極板に関する。本発明の配向正極板は、層状岩塩構造を有する複数のコバルト酸リチウム結晶粒で構成される焼結体からなる。したがって、配向正極板は配向焼結板と称することもできる。コバルト酸リチウム(LiCoO)結晶は層状岩塩構造を有するものであるが、本発明の配向正極板においては、複数のコバルト酸リチウム結晶粒の少なくとも一部が、層状岩塩構造の(003)面が配向正極板の板面と交差する方向に配向されている。前述のとおり、(003)面の面内方向(すなわち(003)面と平行な平面内の任意の方向)がリチウムイオンの伝導方向であるため、この面内方向を配向正極板の板面と交差するようにすることで(すなわち(003)面の表面への露出を少なくすることで)、リチウムイオンの出入りが良好に行われる結晶面(例えば(101)面や(104)面))をより多く表面に露出させることができる。典型的には、LiCoOの(101)面及び(104)面の少なくともいずれか一方が板面と平行に配向してなる(但しコバルト酸リチウム配向正極板の厚さが厚くなると(101)面の配向が優勢となる)。いずれにしても、こうして、リチウム二次電池に組み込まれた際に、配向正極板表面での配向によるリチウムイオンの取り出し易さ及びそれによる高い出力特性(特に高いレート特性)を実現することができる。
そうでありながら、本発明の配向正極板は、表面XRDピーク比RS(003)/(104)が内部XRDピーク比RI(003)/(104)よりも低い。これは、配向正極板の表面で配向正極板の内部よりもリチウムイオンを取り出し易い高度な配向を備えていることこと、換言すれば、配向正極板の表面にリチウムイオン伝導性の高い結晶面(例えば(101)面や(104)面)が多くリチウムイオンを露出していることを意味する。すなわち、表面XRDピーク比RS(003)/(104)は、配向正極板の少なくとも一方の側の表面に対するX線回折により測定される、(104)面の回折ピーク強度(回折ピークの最大高さ)に対する(003)面の回折ピーク強度(回折ピークの最大高さ)の比率であるため、この比が低いほど、リチウムイオン伝導性の高い(101)面や(104)面が表面により多く露出する配向状態(換言すればリチウムイオン伝導性に乏しい(003)面が表面により少なく露出する配向状態)であることを意味する。また、内部XRDピーク比RI(003)/(104)についても、配向正極板の板厚方向の中央位置に対するX線回折により測定されることを除いて、上記同様に考えることができる。したがって、上記のとおり、表面XRDピーク比RS(003)/(104)が内部XRDピーク比RI(003)/(104)よりも低いことで、表面の方が内部よりもリチウムイオンをより取り出し易い高度な配向状態が実現される一方、内部の方が表面よりもそのような配向状態に劣るもの(例えば無配向)となっている。この傾向を更に二極化すべく、本発明においては、内部XRDピーク比RI(003)/(104)に対する表面XRDピーク比RS(003)/(104)の比であるR/R比が0.5以下と限定している。このように、内部XRDピーク比RI(003)/(104)を表面XRDピーク比RS(003)/(104)に対してかなり高くすることで、配向正極板内部の配向をむしろ積極的にランダム化させることができる。このように、配向正極板内部の配向を敢えてランダム化して表面のみを高度に配向させた表面配向構造とすることで、配向正極板表面での配向によるリチウムイオンの取り出し易さ及びそれによる高い出力特性(特に高いレート特性)を維持しながら、外部応力が加わった際のクラックの進展を抑制して使用時の板形状での割れを効果的に防止することができる。
本発明の配向正極板の理解を促進するために、図1〜3には各種配向形態の正極板が概念的に例示される。前提として、従来のコバルト酸リチウム(LiCoO)正極板の典型的な形態として、図2に示されるような無配向形態のものや図3に示されるような配向形態のものが知られている。図2に示される無配向正極板20にあっては、多数の結晶粒22がそれぞれリチウムイオンの移動可能方向Aがランダムとなるように焼結されてなる。一方、図3に示される配向正極板30にあっては、多数の結晶粒32がそれらのリチウムイオンの移動可能方向Aを配向正極板30の板面と交差する方向(例えば板面に対して垂直方向)となるように焼結されてなる。これに対し、図1に示される本発明による表面配向正極板10では、表面では図3と同様に結晶粒12が高度に配向する一方、内部では図2と同様に無配向であるか又は配向が低いものとなっている。このように配向正極板30を表面配向構造とすることで、内部のランダム配向性により外部応力が加わった際のクラックの進展を抑え、ハンドリング時や使用時における板形状での割れを防止することができる。その一方、配向正極板30表面にリチウムイオンを取り出しやすい面が揃っていることから、高い出力特性(特に高いレート特性)を維持することができる。
このような表面と内部で配向レベルが二極化した本発明の表面配向形態は、前述のとおり、表面XRDピーク比RS(003)/(104)は内部XRDピーク比RI(003)/(104)よりも低いことによって特定されており、さらに内部XRDピーク比RI(003)/(104)に対する表面XRDピーク比RS(003)/(104)の比であるR/R比によってより効果的な表面配向形態として特定されている。このR/R比は0.5以下であり、好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.03〜0.25、特に好ましくは0.03〜0.20である。また、表面XRDピーク比RS(003)/(104)が0.4以下であるのが好ましく、より好ましくは0.05〜0.35さらに好ましくは0.05〜0.25、特に好ましくは0.05〜0.20である。一方、内部XRDピーク比RI(003)/(104)が0.8〜1.6であるのが好ましく、より好ましくは1.0〜1.6、さらに好ましくは1.2〜1.6、特に好ましくは1.4〜1.6である。
配向正極板の厚さは20μm以上であるのが好ましく、より好ましくは20〜100μmであり、さらに好ましくは20〜90μm、特に好ましくは20〜70μmであり、最も好ましくは20〜60μmである。このように配向正極板が厚いことでエネルギー密度の高い全固体リチウム電池を作製することが可能となる。この配向正極板は上記のとおり表面部において高い配向性を有するのでリチウムイオンを脱挿入しやすく、ある程度厚くしても、配向正極板の厚さ全体にわたった高効率なリチウムイオンの脱挿入がしやすく、厚い配向正極板によってもたらされる容量向上効果を最大限に引き出すことができる。この厚さ全体にわたるリチウムイオン脱挿入のしやすさは、後述する結晶粒径の制御との組み合わせにより望ましく向上されうる。例えば固体電解質と組み合わせて全固体リチウム電池を構成した場合において、厚い配向正極板の固体電解質から離れた側に存在するリチウムも十分に充放電に活用することができる。かかる容量の向上によって、全固体リチウム電池のエネルギー密度をも大いに向上することができる。
配向正極板のサイズは、好ましくは5mm×5mm平方以上、より好ましくは10mm×10mm〜100mm×100mm平方であり、さらに好ましくは10mm×10mm〜50mm×50mm平方であり、別の表現をすれば、好ましくは25mm以上、より好ましくは100〜10000mmであり、さらに好ましくは100〜2500mmである。
配向正極板である焼結体を構成するコバルト酸リチウム結晶粒の平均一次粒子径は4μm以上であるのが好ましく、より好ましくは4〜20μmであり、さらに好ましくは4〜15μmであり、特に好ましくは4〜10μmである。このように粒子径を適度に大きくすることで、内部で配向がランダム化(例えば無配向化)することによって起こりうる影響(例えばリチウムイオン伝導度の低下)を低減して、内部まで十分に配向したものと同等の出力特性を発揮させることができる。また、結晶粒が大きすぎないことで、望ましい強度を実現しやすくなる。
本発明の配向正極板は、少なくとも配向正極板の表面から深さ2μmまでの厚さ領域が、配向正極板の板面と垂直な研磨断面に対するEBSD(Electron Back Scatter Diffraction)法により測定される、(003)面と板面との角度が30°以下の粒子が占める板面と平行方向の長さが30%以下となる高配向領域であるのが好ましく、より好ましくは少なくとも配向正極板の表面から深さ5μm又は7μmまでの厚さ領域が上記高配向領域である。上記高配向領域の特定は、好ましくは以下のように行うことができる。すなわち、図4の右下に模式的に示されるように配向正極板の研磨断面を観察面としてEBSD画像を取得し、図4の中央に模式的に示されるように取得した研磨断面のEBSD画像において(003)面と板面との角度が30°以内の粒子を着色表示させる。そして、図4に示されるように、板表面より深さ1μm間隔で板面と平行にラインを引き、そのライン上で着色部分の占める長さが測定長さ全体の30%以下である深さにおいて高配向領域であると判定する。例えば、図4に示される例の場合、板面から0、1、2、3、4及び5μmの深さの6本のラインにおいては着色部分の占める長さが測定長さ全体の30%以下であり、かつ、板面から6μmの深さのライン(一番下のライン)では着色部分の占める長さが測定長さ全体の30%超であることから、板表面から深さ5μmまでの厚さ領域が高配向領域であるものと判定することができる。
ところで、本発明における配向正極板に対するX線回折は、リチウムイオン伝導面に関し、(104)面に着目して行われている。これは、本発明の配向正極板は、表面X線回折測定において検出される回折ピークにおいて、典型的には、(104)面の回折ピークのピーク強度が最大になることが多いとの事情を考慮したためである。しかしながら、本発明の配向正極板は、表面X線回折測定において検出される回折ピークにおいて、(101)面の回折ピークのピーク強度が最大であるのもまた好ましい。特に、前述のとおり、本発明の配向正極板にあっては、LiCoOの(101)面及び(104)面の少なくともいずれか一方が板面と平行に配向してなるのが典型的であるが、コバルト酸リチウム配向正極板の厚さが厚くなると(101)面の配向が優勢となる。
本発明によるコバルト酸リチウム配向正極板は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi,Ni,Mn等の元素が1種以上更にドーピング又はそれに準ずる形態(例えば結晶粒子の表層への部分的な固溶、偏析、コーティング、又は付着)で微量含んでいてもよい。
製造方法
本発明のによる配向正極板の製造は、(a)Co粒子を含んでなるグリーンシートを用意し、(b)このグリーンシートを900〜1450℃で焼成して焼成中間体とし、(c)この焼成中間体を降温してCo相を含むCo配向焼結板とし、(d)Co配向焼結板にリチウムを導入することにより行うことができる。
以下、製造方法の各工程の詳細について説明する。
(a)グリーンシートの用意
この工程(a)では、Co粒子を含んでなる、厚さ100μm以下のグリーンシートを用意する。グリーンシートは粒成長促進材としてビスマス酸化物(典型的にはBi粒子)をさらに含んでなるのが好ましい。グリーンシートは、Co粒子及び所望によりビスマス酸化物(典型的にはBi粒子)を含む原料をシート状に成形することにより作製すればよい。Bi粒子の添加量は特に限定されないが、Co粒子及びBi粒子の全体量に対して、0.1〜30重量%とするのが好ましく、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。また、Co粒子の体積基準D50粒径は、0.1〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.3〜1.2μmである。Bi粒子の体積基準D50粒径は、0.1〜1.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5μmである。また、グリーンシートの厚さは100μm以下であり、好ましくは1〜90μm、より好ましくは5〜60μmである。なお、グリーンシートは、Co粒子の全部又は一部に代えて、CoO粒子及び/又はCo(OH)粒子を含んでなるものであってもよく、この場合においても、工程(b)の焼成に付することで、(h00)面をシート面と平行に配向したCoO焼成中間体とすることができ、その結果、Co粒子を含んでなるグリーンシートを用いる場合と同様にコバルト酸リチウム配向焼結板を製造することができる。
グリーンシートを形成する方法の例としては、(i)原料粒子を含むスラリーを用いたドクターブレード法、(ii)熱したドラム上へ原料を含むスラリーを塗布し、乾燥させたものをスクレイパーで掻きとる、ドラムドライヤーを用いた手法、(iii)熱した円板面へスラリーを塗布し、これを乾燥させてスクレイパーで掻きとる、ディスクドライヤーを用いた手法、(iv)原料粒子を含む坏土を用いた押出成形法等が挙げられる。特に好ましいシート形成方法はドクターブレード法である。ドクターブレード法を用いる場合、可撓性を有する板(例えばPETフィルム等の有機ポリマー板)にスラリーを塗布し、塗布したスラリーを乾燥固化して成形体とし、この成形体と板とを剥離することにより、グリーンシートを作製すればよい。成形前にスラリーや坏土を調製するときには、無機粒子を分散媒に分散させ、バインダーや可塑剤等を適宜加えてもよい。また、スラリーは、粘度が500〜4000cPとなるように調製するのが好ましく、減圧下で脱泡するのが好ましい。
(b)焼成中間体の作製(焼成工程)
この工程(b)では、グリーンシートを900〜1450℃で焼成して、Co粒子の全部又は一部(望ましくは全部)が、(h00)面(hは任意の整数、例えばh=2である)をシート面と平行に配向したCoOに変化した焼成中間体とする。すなわち、Coの酸化物は、900℃以上(例えば920℃以上)では、室温におけるCoで表されるスピネル構造からCoOの岩塩構造に相変態する。この焼成によりCoの全部又は一部が還元されてCoOに相変態するとともに、シートが緻密化される。焼成前のCo粒子は等方的な形態を有し、それ故グリーンシートは配向性を当初は有しないが、焼成によりCo粒子がCoOに相変態して粒成長する段階で配向が生じる(以下、CoOの配向粒成長という)。特に、ビスマス酸化物(典型的にはBi)の共存下ではCoOの配向粒成長が促進される。もっとも、グリーンシートがビスマス酸化物を含む場合には、この焼成時にビスマスは揮発してシートから除去される。グリーンシートの焼成温度は900〜1450℃であり、好ましくは1000〜1300℃、より好ましくは1100〜1300℃である。グリーンシートは上記焼成温度で1〜20時間焼成されるのが好ましく、より好ましくは2〜10時間である。
CoOの配向粒成長には、100μm以下というグリーンシートの厚さが寄与している。すなわち、厚さ100μm以下のグリーンシートにおいては、シート面内方向(厚さ方向と直交する方向)に比べて、厚さ方向に存在する材料の量が極めて少ない。このため、厚さ方向に複数個の粒子がある初期段階には、ランダムな方向に粒成長する。一方、粒成長が進行して厚さ方向の材料が消費されると、粒成長方向はシート面内の二次元方向(以下、面方向という)に制限されることになる。これにより、面方向への粒成長が確実に促進される。特に、グリーンシートを可能な限り薄く形成したり(例えば数μm以下)、あるいはグリーンシートが比較的厚め(最大で100μm程度、例えば20μm程度)の場合であっても粒成長を可能な限り大きく促進したりすることで、面方向への粒成長を確実に促進させることができる。いずれにしても、焼成の際、表面エネルギーの最も低い結晶面をグリーンシートの面内に持つ粒子のみが選択的に面方向へ扁平状(板状)に粒成長することになる。その結果、グリーンシートの焼成により、アスペクト比が大きく、(h00)面が粒子の板面と平行となるように配向したCoO板状結晶粒子が、その(h00)面をシート面と平行に配向し、粒界部にて面方向に結合してなる焼成中間体が得られる。
焼成時にグリーンシートは、エンボス加工を施したセッターに載置されるのが好ましい。こうすることで、配向正極板表面のみを高度に配向させ、配向正極板内部の配向をランダム化させやすい点で特に好ましい。エンボス加工を施したセッターが有する突起の高さは50〜500μmが好ましく、より好ましくは100〜400μm、さらに好ましくは100〜300μmである。セッターは、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、アルミナ、ムライト及びコーディエライトからなる群から選択される少なくとも1種のセラミックス材料製であるのが好ましく、より好ましくはジルコニア製である。
(c)配向焼結板の作製(降温工程)
この工程(c)は工程(b)の焼成に引き続き(すなわち焼成温度から)行われる降温工程である。すなわち、工程(c)では、焼成中間体を(工程(b)の焼成温度から)Coに戻すように降温して、Co相を含むCo配向焼結板を得る。Co配向焼結板は部分的に残留したCoOを含むようにするのが、配向正極板表面のみを高度に配向させ、配向正極板内部の配向をランダム化させやすい点で特に好ましい。この目的のためには、焼成中間体を、比較的高い速度で降温させるのが好ましく、より好ましくは200℃/h以上、さらに好ましくは200〜500℃/h、特に好ましくは250〜400℃/h、最も好ましくは250〜350℃/hの速度で降温させる。
この工程(c)では焼成中間体の温度が下がる過程でCoOがCoに酸化される。その際、CoOの配向方位がCoに引き継がれることで、(h00)面が粒子の板面と平行となるように配向したCo結晶粒子が得られる。その結果、(h00)面がシート面と平行となるように配向された多数のCo粒子からなる、独立した板状のシートが形成される。「独立した」シートとは、焼成後に他の支持体から独立して単体で取り扱い可能なシートのことをいう。すなわち、「独立した」シートには、焼成により他の支持体(基板等)に固着されて当該支持体と一体化された(分離不能あるいは分離困難となった)ものは含まれない。こうして(h00)面が粒子の板面と平行となるように配向した多数の粒子が結合した自立した配向焼結板が得られる。この自立板は、上述のような多数の粒子が隙間なく結合した、緻密なセラミックスシートとなり得る。
(d)リチウムの導入
この工程(d)では、Co配向焼結板にリチウムを導入して、LiCoOからなるコバルト酸リチウム配向焼結板を形成する。リチウム導入は、Co配向焼結板をリチウム化合物と反応させることにより行われるのが好ましい。リチウム導入のためのリチウム化合物の例としては、(i)水酸化リチウム、(ii)炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、シュウ酸リチウム、クエン酸リチウム等の各種リチウム塩、(iii)リチウムメトキシド、リチウムエトキシド等の各種リチウムアルコキシド等が挙げられ、特に好ましくは炭酸リチウム及び水酸化リチウムである。リチウム導入する際の条件、例えば、混合比、加熱温度、加熱時間、雰囲気等は、リチウム源として用いる材料の融点や分解温度、反応性等を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、(h00)配向したCo配向焼結板上に所定量の炭酸リチウムを載置し、加熱することにより、Co配向焼結板にリチウムを導入することができる。炭酸リチウムの載置は、炭酸リチウムを含んでなるリチウム含有シートの形態で成形体シート上に載置することにより行われてもよいが、Co配向焼結板を上下からリチウム含有シートで挟み込むことにより行われるのが厚い配向焼結板を作製する場合に十分にリチウムを導入できることのみならず、配向正極板表面のみを高度に配向させ、配向正極板内部の配向をランダム化させやすい点で特に好ましい。リチウム含有シートは、炭酸リチウムをスラリー化してテープ成形に付することにより得られたものであるのが好ましく、テープ成形の手法については前述した工程(a)で述べた手法と同様にして行えばよい。リチウム含有シートの厚さは上記Li/Co比が所望の値となるような量の炭酸リチウムを与えるように適宜決定すればよく、例えば20〜60μmである。あるいは、他の手法として、(h00)配向したCo配向焼結板に、LiOH粉末の分散したスラリーを所定量塗布して乾燥させた後、加熱することにより、Co粒子にリチウムを導入してもよい。いずれの手法においても、加熱温度は700〜900℃が好ましく、この範囲内の温度で2〜30時間加熱を行うのが好ましい。また、Co配向焼結板に付着させるリチウム化合物の量はLi/Co比(すなわちCo配向焼結板に含まれるCo量に対する、リチウム化合物に含まれるLi量のモル比)で1.0以上とするのが好ましく、より好ましくは1.0〜4.0、さらに好ましくは1.2〜3.0である。Liが多すぎる場合であっても余剰分のLiは加熱に伴い揮発して消失するため問題は無い。このリチウム導入工程は複数回繰り返して行われてもよい。こうして得られるコバルト酸リチウム配向焼結板は、LiCoOの(101)面及び(104)面の少なくともいずれか一方が板面と平行に配向してなるものである。
こうして得られるコバルト酸リチウム配向焼結板は、LiCoOの(101)面及び(104)面の少なくともいずれか一方が板面と平行に配向してなるものである。したがって、リチウムイオンの出入りが良好に行われる(101)面や(104)面が配向焼結板の板面と平行となるように配向する。このため、この配向焼結板を正極活物質として用いて電池を構成した場合に、電解質に対する当該面の露出(接触)がより多くなるとともに、当該板の表面における(003)面(リチウムイオンの出入りに適さない面)の露出割合が極めて低くなる。したがって、例えば、コバルト酸リチウム配向焼結板を固体型リチウム二次電池の正極材料として用いた場合に、高容量と高レート特性とを同時に達成することができる。
(e)Mg被覆処理
所望により、Mg被覆処理をさらに行ってもよい。この工程(e)は、配向焼結板にMg含有化合物を付着させ、必要に応じて焼成する工程であり、(d)工程に先立ち行われる工程(e1)としてもよいし、(d)工程の後に行われる工程(e2)としてもよい。具体的には、(d)工程に先立ちMg含有化合物の付着を行った場合には、その後の焼成は(d)工程の焼成により行うことができる。一方、(d)工程後にMg含有化合物の付着を行った場合には、その後に焼成を別途行うことになる。すなわち、工程(e)は、(d)工程に先立ちCo配向焼結板にMg含有化合物を付着させる工程(e1)、又は(d)工程後にコバルト酸リチウム配向焼結板にMg含有化合物を付着させ、該Mg含有化合物が付着された前記コバルト酸リチウム配向焼結板を焼成する工程(e2)のいずれにより行えばよい。このように、LiCoO配向焼結板又はその前駆体であるCo配向焼結板(以下、両者をまとめて「配向焼結板」ということがある)にMg含有化合物を付着させて焼成等を施すことで、板厚方向に介在する粒界が有意に低減されたLiCoO配向焼結板を提供することができる。すなわち、配向焼結板にMg含有化合物を付着させて焼成することで、結晶成長が、整合性の高いドメイン間の粒界が移動するような形で起こり、板厚方向に単結晶化するか又はそれに近い結晶構造が実現される。こうして板厚方向に介在する粒界を有意に低減する(望ましくはそのような粒界を無くす)ことができる。板厚方向に粒界が介在すると板厚方向のリチウムイオン伝導性が低下しうるが、そのような粒界が有意に低減されることで板厚方向のリチウムイオン伝導性が向上する。したがって、そのようなLiCoO配向焼結板を正極活物質としてリチウム二次電池に用いることで、電池性能(特にレート特性)を向上することができる。
Mg含有化合物は、焼成によりMgOを与えうる化合物であるのが好ましい。Mg含有化合物の好ましい例としては、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、及びマグネシウムジエトキシド、及びこれらの任意の組合せが挙げられ、特に好ましくは酢酸マグネシウムである。
Mg含有化合物は、Mg含有化合物を含む溶液又はスラリー、Mg含有化合物を含むシート、及びMg含有化合物の粉末からなる群から選択される少なくとも1種の形態で供されるのが好ましく、より好ましくはMg含有化合物を含む水溶液(例えば酢酸マグネシウム水溶液)の形態である。したがって、Mg含有化合物の配向焼結板への付着は、Mg含有化合物の供給形態に応じた公知の手法で適宜行えばよい。例えば、溶液又はスラリーの形態の場合には、Mg含有化合物を含む溶液又はスラリーへの配向焼結体の浸漬及びその後の乾燥、あるいはそのような溶液又はスラリーの配向焼結体への塗布及びその後の乾燥により行えばよい。この場合、Mg含有化合物を含む水溶液(例えば酢酸マグネシウム水溶液)の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.01〜2mol/L、より好ましくは0.05〜1mol/Lである。シートの形態の場合には、Mg含有化合物を含むシートを配向焼結体に載置すればよい。粉末形態の場合には、Mg含有化合物の粉末をそのまま又はペースト化して配向焼結体に載置すればよい。いずれの手法にしても、配向焼結体に対するMg含有化合物の付着量は特に限定されないが、例えば、配向焼結体を構成するLiCoOの基本組成を損なうことなく所望の効果が得られる程度の微小量とするのが好ましく、例えばLiCoOに対して0.01〜5mol%とするのが好ましく、より好ましくは0.05〜2mol%である。また、Mg含有化合物を加える際に同時にその他の化合物を同時に添加してもよく、例えばLiを同時に加えると効果がより促進される。Liの存在形態は特に限定されないが、例えば、水酸化リチウムや炭酸リチウムを水溶液、粉末、又はテープ形状のいずれかの形態で供することが挙げられる。
工程(d2)における焼成は、400〜950℃の焼成温度で行われるのが好ましく、好ましくは500〜950℃、より好ましくは500〜900℃、さらに好ましくは600〜900℃である。この焼成は上記焼成温度で1〜20時間行われるのが好ましく、より好ましくは2〜10時間である。この焼成雰囲気は特に限定されないが、大気雰囲気等の酸化雰囲気で行えばよい。
上述したように、コバルト酸リチウム配向焼結板は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi,Ni,Mn,W等の元素が1種以上含まれていてもよく、そのような元素の添加は上述した工程(a)〜(e)のいずれか(典型的には工程(a)又は工程(d))において行えばよい。添加元素を板の表面のみに偏析させたり、付着のみさせるような場合には、例えば工程(d)又は(e2)の後に、さらに添加元素を被覆し、熱処理するようにして行えばよい。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例1(比較)
(1)LiCoO配向焼結板の作製
比較のため、以下の手順により、内部まで配向した約40μm厚のLiCoO配向焼結板を作製した。
(1a)グリーンシートの作製
Co原料粉末(体積基準D50粒径0.3μm、正同化学工業株式会社製)に5wt%の割合でBi(体積基準D50粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を添加して混合粉末を得た。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調製した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが35μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
(1b)配向焼結板の作製
PETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで40mm角に切り出し、突起の高さが300μmのエンボス加工を施したジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、1300℃で5時間焼成後、降温速度50℃/hにて降温し、セッターに溶着していない部分をCo配向焼結板として取り出した。
(1c)リチウムの導入
LiOH・HO粉末(和光純薬工業株式会社製)をジェットミルで1μm以下に粉砕し、エタノールに分散したスラリーを作製した。このスラリーを上記配向焼結板にLi/Co=1.3になるように塗布し、乾燥した。その後、ジルコニアセッター上に載せ、大気中にて840℃で20時間加熱処理してLiCoO配向焼結板を得た。
(2)各種評価
こうして作製されたLiCoO配向焼結板について以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
(2a)XRD測定による表面での配向性の確認
LiCoO配向焼結板の表面において、狙いとする結晶面((104)面)が板面に平行に配向していることを確認すべく、XRD(X線回折)測定を行った。具体的には、XRD装置(株式会社リガク製、ガイガーフレックスRAD−IB)を用い、焼結板の表面に対してX線を照射したときのXRDプロファイルを測定した。得られたXRDプロファイルは図5Aに示されるとおりであった。このXRDプロファイルから(104)面による回折強度(ピーク高さ)に対する(003)面による回折強度(ピーク高さ)の比率I(003)/I(104)を求め、これを表面XRDピーク比RS(003)/(104)とした。
(2b)XRD測定による内部での配向性の確認
LiCoO配向焼結板の内部において、狙いとする結晶面((104)面)が板面に平行に配向していることを確認すべく、XRD(X線回折)測定を行った。具体的には、配向焼結板をその厚みが1/2になるように片面から研磨し、配向焼結板の中央断面を露出させた。XRD装置(株式会社リガク製、ガイガーフレックスRAD−IB)を用い、焼結板の中央断面に対してX線を照射したときのXRDプロファイルを測定した。得られたXRDプロファイルは図5Bに示されるとおりであった。このXRDプロファイルから(104)面による回折強度(ピーク高さ)に対する(003)面による回折強度(ピーク高さ)の比率I(003)/I(104)を求め、これを内部XRDピーク比RI(003)/(104)とした。
(2c)平均一次粒子径の確認
LiCoO配向焼結板について、その破断面を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用い、加速電圧は15kV、破断面全体が視野に入る倍率で観察を行った。得られたSEM観察画像において、観察される一次粒子のそれぞれについて、外接円を描いたときの当該外接円の直径を求めた。そして、得られた外接円の直径の平均値を、平均一次粒子径とした。
(2d)断面方向への配向範囲の確認
LiCoO配向焼結板について、クロスセクションポリッシャ(CP)により焼結板の断面が観察できるように研磨し、その研磨断面(板面と垂直な断面)についてEBSD法を用いて一次粒子の結晶方位を観察した。この観察結果より、板表面より深さ1μm間隔で板面と平行にラインを引き、そのライン上で(003)面と板面との角度が30°以下の粒子が占める長さが30%以下である場合は配向していると規定し、表面からの配向範囲の深さを求めた。この一連の手法は図4を参照しながら前述した好ましい手法と同様の手順で行った。
(2e)曲げ強度の確認
LiCoO配向焼結板について、簡易的な曲げ試験により行い強度を測定した。具体的には、配向焼結板を10mm×3mmのサイズに切り出し、8mmの間隔を空けて設置した台座の上に乗せて、中央部に荷重をかけて破断する荷重量を求めた。5回試験を行い、その平均値を耐荷重量とした。
(2f)電池の作製及び評価
(2f−1)正極の作製
LiCoO配向焼結板を、導電性カーボンを分散させたエポキシ系の導電接着剤でステンレス集電板に固定して正極を作製した。
(2f−2)固体電解質層の作製
直径4インチ(約10cm)のリン酸リチウム焼結体ターゲットを準備した。このターゲットを用いてスパッタリング装置(キャノンアネルバ製、SPF−430H)を用いてRFマグネトロン方式にてガス種Nを0.2Pa、出力0.2kWにて膜厚3μmとなるようにスパッタリングを行なった。こうして、厚さ3μmのLiPON系固体電解質スパッタ膜を正極板上に形成した。
(2f−3)全固体リチウム電池の作製
イオンスパッタリング装置(日本電子製、JFC−1500)を用いたスパッタリングにより、固体電解質層上に厚さ500ÅのAu膜を形成した。次に、真空蒸着装置(サンユー電子製、カーボンコーターSVC−700)を用いて、Au膜上にLi薄膜を設ける蒸着を行った。こうして、固体電解質スパッタ膜上に、膜厚3.5μmのLi蒸着膜を形成した単電池を作製した。上記単電池のLi負極層上に、負極集電体としてステンレスを載置し、200℃のホットプレートを用いて加圧圧着し、Ar雰囲気中でAlラミネートフィルムからなる外装材に封入することで全固体リチウム電池を得た。
(2f−4)電池評価
得られた全個体リチウム電池を(i)0.1Cレートの電流値で電池電圧が4.0Vとなるまで定電流充電し、その後(ii)電池電圧を4.0Vに維持する電流条件で、その電流値が1/10(0.01C)に低下するまで定電圧充電した後10分間休止した。続いて(iii)0.02Cレートの電流値で電池電圧が3.0Vになるまで定電流放電した後10分間休止した。この時に得られた放電容量をWとした。再度、放電レートを0.1Cレートとしたこと以外は上記(i)〜(iii)と同じ充放電を繰り返し、その際の放電容量をWとし、WをWで除することで、レート特性を得た。なお、この測定は25℃の条件下で行った。
例2
(1)LiCoO配向焼結板の作製
以下の手順により、表面のみが高度に配向した約40μm厚のLiCoO配向焼結板を作製した。
(1a)グリーンシートの作製
Co原料粉末(体積基準D50粒径0.3μm、正同化学工業株式会社製)に5wt%の割合でBi(体積基準D50粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を添加して混合粉末を得た。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調製した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが35μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
(1b)配向焼結板の作製
PETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで40mm角に切り出し、突起の高さが300μmのエンボス加工を施したジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、1300℃で5時間焼成後、降温速度300℃/hにて降温し、セッターに溶着していない部分をCo配向焼結板として取り出した。
(1c)リチウムの導入
(1c―1)リチウムシートの作製
LiCO原料粉末(体積基準D50粒径2.5μm、本荘ケミカル製)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)5重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)2重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調製した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
(1c―2)リチウムの導入
(1b)にて作製したCo配向焼結板を、(1c―1)で作製したリチウムシートで、Li/Co比が1.3になるように上下挟み込み、ジルコニアセッター上に載せ、大気中にて840℃で20時間加熱処理してLiCoO配向焼結板を得た。
(2)各種評価
こうして作製されたLiCoO表面配向焼結板について例1と同様の評価を行った。その結果を表1、図6A及び6Bに示す。結果として、表面でのXRDピーク比は例1(比較例)と同程度だが、内部のXRDピーク比の値が大きく、表面のみが高度に配向した焼結板となっていることが分かる。この表面配向焼結板では、電池化した際のレート特性は例1(比較例)とほぼ同等の高い値を維持しており、加えて物理的な強度が大きく向上していることが確認できた。物理強度の向上は電池作製時のハンドリング容易さに大きく影響し、ハンドリング機器の簡素化による効率向上や焼結板の破損による不良発生率の低減に良い効果が得られる。また、この実施例ではXRD回折プロファイルにおいて(101)面の回折ピーク強度が最大となっている。これは(101)面が最も多く露出していることを示しており、(101)面は(104)面と比べてさらにリチウムイオンが出入りしやすい面であるため、レート特性向上に良い影響を与えているものと考えられる。
例3
(1)LiCoO配向焼結板の作製
以下の手順により、表面のみが高度に配向し、かつ一次粒子径の大きい約40μm厚のLiCoO配向焼結板を作製した。
(1a)グリーンシートの作製
Co原料粉末(体積基準D50粒径0.3μm、正同化学工業株式会社製)に5wt%の割合でBi(体積基準D50粒径0.3μm、太陽鉱工株式会社製)を添加して混合粉末を得た。この混合粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調製した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが35μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
(1b)配向焼結板の作製
PETフィルムから剥がしたグリーンシートを、カッターで40mm角に切り出し、突起の高さが300μmのエンボス加工を施したジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置し、1300℃で5時間焼成後、降温速度300℃/hにて降温し、セッターに溶着していない部分をCo配向焼結板として取り出した。
(1c)リチウムの導入
(1c―1)リチウムシートの作製
LiCO原料粉末(体積基準D50粒径2.5μm、本荘ケミカル製)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)重量部とを混合した。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱泡するとともに、4000cPの粘度に調製した。なお、粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。上記のようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルムの上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように、シート状に成形してグリーンシートを得た。
(1c―2)リチウムの導入
(1b)にて作製したCo配向焼結板を、(1c―1)で作製したリチウムシートで、Li/Co比が1.3になるように上下挟み込み、ジルコニアセッター上に載せ、大気中にて840℃で20時間加熱処理してLiCoO配向焼結板を得た。
(1c−3)マグネシウム添加熱処理
(1c−2)にて作製したLiCoO配向焼結板を、0.5mol/Lの酢酸マグネシウム水溶液に浸漬させた後、乾燥させた。こうして酢酸マグネシウムが付着されたLiCoO配向焼結板を大気中にて700℃で5時間加熱処理を行った。
(2)各種評価
こうして作製されたLiCoO表面配向焼結板について例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。表1に示されるように、表面のみが高度に配向した焼結板となっていることが分かる。さらにこの水準では平均一次粒子径が大きくなっていることが確認できた。この表面配向焼結板では、電池化した際のレート特性も例1(比較例)と同等の高い値を維持しており、加えて物理的な強度も大きく向上していることが確認できた。また、この実施例でも(101)面の回折ピーク強度が最大となっていることが確認できた。
例4(比較)
(1)LiCoO配向焼結板の作製
比較のため、グリーンシートの乾燥後の厚さが18μmとなるようにした以外は例1(比較例)と同様の手順により、約20μm厚の内部まで配向したLiCoO配向焼結板を作製した。
(2)各種評価
こうして作製されたLiCoO表面配向焼結板について例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
例5
(1)LiCoO配向焼結板の作製
グリーンシートの乾燥後の厚さが18μmとなるようにした以外は例2と同様の手順により、約20μm厚の表面のみが高度に配向したLiCoO配向焼結板を作製した。
(2)各種評価
こうして作製されたLiCoO表面配向焼結板について例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。表1に示されるように、表面のみが高度に配向した焼結板となっていることが分かる。この表面配向焼結板では、電池化した際のレート特性は例4(比較例)とほぼ同等の高い値を維持しており、加えて物理的な強度が大きく向上していることが確認できた。
例6
(1)LiCoO配向焼結板の作製
グリーンシートの乾燥後の厚さが50μmとなるようにし、かつ、(1c―2)リチウムの導入工程を2回繰り返した以外は例2と同様の手順により、約50μm厚の表面のみが高度に配向したLiCoO配向焼結板を作製した。
(2)各種評価
こうして作製されたLiCoO表面配向焼結板について例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。表1に示されるように、表面のみが高度に配向した焼結板となっていることが分かる。この表面配向焼結板でも、電池化した際のレート特性は高い値を維持しており、加えて物理的な強度が高くなっていることが確認できた。
例7
(1)LiCoO配向焼結板の作製
例6と同様の手順により、表面のみが高度に配向した約50μm厚のLiCoO配向焼結板を作製した。
(2)イオン液体を用いた電池の作製
こうして作製されたLiCoO配向焼結板を用いて電解質にイオン液体を使用した電池を以下のとおり作製した。すなわち、市販のコインセルケースを用意し、作製した焼結板(正極)、リチウム金属箔からなる負極、ステンレス製の負極集電板、ステンレス製の加圧用板バネ、及び樹脂性セパレータを、焼結板−セパレータ−負極板−負極集電板−加圧用板バネの順にケース内に配置し、この集積体をイオン液体を用いた電解液で満たして封止することでコインセルを作製した。なお、イオン液体電解液は、溶媒であるイオン液体のカチオンとして1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン(P13)を用い、アニオンとしてビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(FSI)を用い、電解質としてビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩(LiFSI)を濃度0.4Mとなるように混合することにより調製した。
(3)各種評価
こうして作製されたイオン液体電解質を用いた電池について、例1と同様の電池評価を行った。その結果を表1に示す。表1に示されるように、電解質にイオン液体を用いた場合でも、電池化した際のレート特性は高い値を維持しており、本発明の配向焼結板はイオン液体を用いた電池にも好適に適用できることが確認できた。

(他の実施形態)
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
上記実施例では、主として本発明に係るコバルト酸リチウム配向正極板を固体電解質と組み合わせた例について説明したが、コバルト酸リチウム配向正極板はその他の電池構成に適用しても上述の効果を得ることができる。例えば、本発明に係るコバルト酸リチウム配向正極板は、電解質として固体電解質の他にもイオン液体、ポリマー電解質、ゲル電解質、液系電解質等を用いたリチウムイオン電池に用いることができる。
固体電解質層は、酸化物系セラミックス材料の1つであるリン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)系セラミックス材料で構成されるのが好ましい。固体電解質層の厚さは、リチウムイオン伝導性の向上という観点からは薄いことが好ましいが、充放電時の信頼性(欠陥抑制、セパレータ機能、クラックなど)を考慮して適宜設定することができる。固体電解質層の厚さは、例えば、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.2〜8.0μm、さらに好ましくは0.3〜7.0μm、特に好ましくは0.5〜6.0μmである。
正極板の固体電解質側表面にセラミックス材料からなる固体電解質層を被着させる成膜法として、スパッタリング法を用いるのが好ましい。この際、スパッタリング法での成膜条件(例えば成膜時間)を制御することによって、固体電解質層の厚さを調整することができる。正極板は、表面にLiPONからなる固体電解質層をスパッタリング法により形成して電池化した場合であっても電池性能の不具合を生じにくい。
LiPONは、Li2.9PO3.30.46の組成によって代表されるような化合物群であり、例えばLiPO(式中、aは2〜4、bは3〜5、cは0.1〜0.9である)で表される化合物群である。従って、スパッタリングによるLiPON系固体電解質層の形成は、Li源、P源及びO源としてリン酸リチウム焼結体ターゲットを用いて、N源としてのガス種としてNを導入することにより公知の条件に従って行えばよい。スパッタリング法は特に限定されないが、RFマグネトロン方式が好ましい。また、スパッタリング法に代えて、MOCVD法、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法、スクリーン印刷法などの成膜法を用いることもできる。
固体電解質層は、LiPON系セラミックス材料以外の酸化物系セラミックス材料で構成されてもよい。LiPON系セラミックス材料以外の酸化物系セラミックス材料の例としては、ガーネット系セラミックス材料、窒化物系セラミックス材料、ペロブスカイト系セラミックス材料、リン酸系セラミックス材料、及びゼオライト系材料からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。ガーネット系セラミックス材料の例としては、Li−La−Zr−O系材料(例えばLiLaZr12)、Li−La−Ta−O系材料も用いることができる。ペロブスカイト系セラミックス材料の例としては、Li−La−Ti−O系材料(例えばLiLa1−xTi(0.04≦x≦0.14))が挙げられる。リン酸系セラミックス材料の例としては、Li−Al−Ti−P−O、Li−Al−Ge−P−O、及びLi−Al−Ti−Si−P−O(例えばLi1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6))が挙げられる。
固体電解質層は、硫化物系材料で構成されていてもよい。硫化物系材料としては、LiS−P系、LiI−LiS−P系、LiI−LiS−B32系、若しくはLiI−LiS−SiS系の固体電解質、チオリシコン、及びLi10GeP12等の中から選択される材料を用いることができる。硫化物系材料は比較的柔らかいので、正極板の表面に硫化物系材料粉末をプレスして押し付けることで固体電解質層を形成し、電池化することができる。より具体的には、バインダーなどを用いてシート状にした硫化物系材料粉体を正極板に積層してプレスすることによって、或いは、硫化物系材料粉末を分散させたスラリーを正極板に塗布して乾燥させた後にプレスすることによって、固体電解質層を形成できる。
電解質層は、イオン液体で構成されていてもよい。イオン液体は、常温溶融塩とも呼ばれ、カチオン及びアニオンの組み合わせからなる塩である。イオン液体の例としては、四級アンモニウム系カチオンを含むイオン液体及びイミダゾリウム系カチオンを含むイオン液体などが挙げられる。


Claims (9)

  1. リチウム二次電池用配向正極板であって、
    前記配向正極板が、層状岩塩構造を有する複数のコバルト酸リチウム結晶粒で構成される焼結体からなり、前記複数のコバルト酸リチウム結晶粒の少なくとも一部が、層状岩塩構造の(003)面が前記配向正極板の板面と交差する方向に配向されており、
    前記配向正極板の少なくとも一方の側の表面に対するX線回折により測定される、(104)面の回折ピーク強度に対する(003)面の回折ピーク強度の比率である、表面XRDピーク比RS(003)/(104)が、前記配向正極板の板厚方向の中央位置に対するX線回折により測定される、(104)面の回折強度に対する(003)面の回折強度の比率である、内部XRDピーク比RI(003)/(104)よりも低く、前記内部XRDピーク比RI(003)/(104)に対する前記表面XRDピーク比RS(003)/(104)の比であるR/R比が0.25以下である、配向正極板。
  2. 前記表面XRDピーク比RS(003)/(104)が0.4以下である、請求項に記載の配向正極板。
  3. 前記内部XRDピーク比RI(003)/(104)が0.8〜1.6である、請求項に記載の配向正極板。
  4. 前記配向正極板の厚さが20μm以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の配向正極板。
  5. 前記配向正極板の厚さが20〜60μmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の配向正極板。
  6. 前記コバルト酸リチウム結晶粒の平均一次粒子径が4μm以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の配向正極板。
  7. 前記平均一次粒子径が4〜20μmである、請求項に記載の配向正極板。
  8. 少なくとも前記配向正極板の表面から深さ2μmまでの厚さ領域が、前記配向正極板の板面と垂直な研磨断面に対するEBSD法により測定される、(003)面と板面との角度が30°以下の粒子が占める板面と平行方向の長さが30%以下となる高配向領域である、請求項1〜のいずれか一項に記載の配向正極板。
  9. 前記表面X線回折測定において検出される回折ピークにおいて、(101)面の回折ピークのピーク強度が最大である、請求項1〜のいずれか一項に記載の配向正極板。
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