以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1等を参照し、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
プリンタ1は、図1に示すように、筐体1a、インク吐出ヘッド2、プラテン5、搬送ユニット20、収容トレイ3、受容トレイ4、保持機構30、移動機構40(図3参照)、2つの用紙センサ6,7、及び制御部100を含む。インク吐出ヘッド2(以下、ヘッド2と称する)、プラテン5、搬送ユニット20、収容トレイ3、2つの用紙センサ6,7、及び制御部100は、筐体1a内に配置されている。受容トレイ4は、筐体1aの天板上部に設けられている。また、保持機構30は、筐体1a外であって、受容トレイ4の上方に配置されている。換言すると、受容トレイ4は、保持機構30の下方に配置されている。
ヘッド2は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。ヘッド2は、図2に示すように、流路ユニット12及びアクチュエータユニット17を含む。なお、主走査方向は、水平面に平行である。副走査方向は、水平面に平行で、且つ、主走査方向と直交する方向である。鉛直方向は、副走査方向及び主走査方向と直交する方向である。また、搬送ユニット20による用紙Pの搬送方向において、ヘッド2下における用紙Pの搬送方向は、副走査方向に平行であり、図1において左から右に向かう方向である。
流路ユニット12は、4枚のプレート12a,12b,12c,12dを積層した積層体であり、内部に流路が形成されており、下面に複数の吐出口14aが開口している。ヘッド2の吐出口14aからは、ブラックのインクが吐出される。流路ユニット12の内部に形成された流路は、1のマニホールド流路13及び複数の個別流路14を含む。個別流路14は、吐出口14a毎に設けられており、マニホールド流路13の出口から圧力室16を介して吐出口14aまで延在している。マニホールド流路13は、インクを貯留するタンク(不図示)と連通している。タンクからマニホールド流路13に供給されたインクが、個別流路14を通り、吐出口14aから吐出される。
アクチュエータユニット17は、振動板17a、圧電層17b、及び、複数の個別電極17cを積層した積層体である。振動板17aは、流路ユニット12の上面に固定され、複数の圧力室16を閉塞する。圧電層17bは、振動板17aの上面に固定され、複数の圧力室16と対向している。複数の個別電極17cは、圧電層17bの上面に固定され、複数の圧力室16のそれぞれと対向している。アクチュエータユニット17における各個別電極17cと各圧力室16とで挟まれた部分は、圧力室16毎に個別のユニモルフ型アクチュエータとして機能し、各個別電極17cへの電圧の印加に応じて、独立して変形可能である。アクチュエータが圧力室16に向かって凸となるように変形することにより、圧力室16の容積が減少し、圧力室16内のインクに圧力が付与され、吐出口14aからインクが吐出される。このように、複数の個別電極17cに対して選択的に電圧を印加することにより、ヘッド2は、複数の吐出口14aから選択的にインクを吐出することができる。
プラテン5は、図1に示すように、ヘッド2の下方に配置されている。プラテン5の上面と対応するヘッド2の下面である吐出面2aとの間には、記録に適した所定の間隙が形成されている。
搬送ユニット(搬送機構)20は、用紙Pを収容トレイ3からヘッド2とプラテン5との間を経由して保持機構30まで搬送するように構成されており、給紙ローラ21、搬送ローラ対22〜26、及びガイド29a〜29dを含む。
給紙ローラ21は、収容トレイ3内で最も上方にある用紙Pと接触する位置に配置されている。給紙ローラ21は、制御部100の制御によって給紙モータ21M(図4参照)が駆動されることで回転する。これにより、収容トレイ3内で最も上方にある用紙Pが収容トレイ3から送り出される。即ち、給紙ローラ21は、収容トレイ3に収容された用紙Pを搬送ローラ対22に向けて搬送するように構成されている。
各搬送ローラ対22〜26は、互いに接触する2つのローラを含み、用紙Pを当該2つのローラで挟持しつつ搬送するように構成されている。各搬送ローラ対22〜26を構成する2つのローラの一方は、駆動ローラであり、制御部100の制御によって搬送モータ20M(図4参照)が駆動されることで回転する。各搬送ローラ対22〜26を構成する2つのローラの他方は、従動ローラであり、駆動ローラの回転に伴い、駆動ローラと接触しながら駆動ローラと逆の方向に回転する。搬送ローラ対22〜26の回転により、給紙ローラ21によって収容トレイ3から送り出された用紙Pがヘッド2の下方を経由して筐体1aの出口1bから排出され、保持機構30に搬送される。
ガイド29a〜29dは、それぞれ、用紙Pの搬送経路を画定するように構成されており、互いに間隙を介して離隔配置された一対の板を含む。
収容トレイ3は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収容可能である。本実施形態においては、例えば、A4サイズの普通紙を採用しているが、A4サイズ以外の用紙サイズであってもよいし、吐出されたインクが浸透することでカールが生じる用紙(コート紙なども含む)であれば、どのような用紙であってもよい。また、収容トレイ3は、筐体1aに対して副走査方向に着脱可能である。
受容トレイ4は、保持機構30から移動されてきた複数の用紙Pを受容可能に構成されている。また、受容トレイ4は、図3に示すように、支持面4aと、一対の側壁4bと、1つの側壁4cとで画定されてなる。支持面4aは、用紙Pの下面(ヘッド2によって画像が記録される用紙Pの記録面)を支持する。一対の側壁4bは、支持面4aの副走査方向に沿う両端辺から上方に立設されている。側壁4cは、支持面4aの主走査方向に沿う一端辺(出口1bから搬送される用紙Pの搬送方向上流側の端辺)から上方に立設されている。側壁4cの上方には、出口1bが形成されている。このように受容トレイ4は、出口1bから搬送される用紙Pの所定搬送方向の下流側が側壁に画定されておらず、受容された用紙Pがユーザによって取り出しやすくなっている。
保持機構30及び移動機構40について、図1及び図3を参照しつつ以下に説明する。保持機構30は、図1に示すように、筐体1aの出口1bと副走査方向に沿って対向する位置に配置されており、受容トレイ4が受容可能な用紙枚数以下の用紙Pを収容可能に構成されている。本実施形態において、保持機構30の用紙Pの最大収容枚数は、例えば、20枚である。保持機構30は、一対の規制部材35を有する。これら一対の規制部材35は、図3に示すように、支持面4aの主走査方向中心を通る鉛直方向に延びる中心線Lに対して線対称に配置されている。
各規制部材35は、上規制部材31と、下規制部材32とを有する。上規制部材31は、図3に示すように、平板状の水平部31aと、水平部31aの主走査方向における外側端部から下方に立設された垂直部31bとを有し、断面L字形状に形成されている。水平部31aの下面31a1(第2の面)は、副走査方向に沿って用紙Pよりも長く形成されており、保持機構30に搬送されてきた用紙Pの副走査方向に沿う端部全体と対向可能に構成されている。上規制部材31の垂直部31bは、固定部33によって側壁4bに固定されている。下規制部材32は、水平部31aと同様な平板から構成されており、鉛直方向に関して水平部31aと支持面4aとの間に配置されている。また、下規制部材32は、主走査方向における外側端部が垂直部31bの下端に回動可能に支持されており、図3(a)に示す支持位置と図3(b)に示す非支持位置との間において、回動可能に構成されている。
支持位置は、下規制部材32が水平に配置され、当該下規制部材32の上面32a(第1の面)と水平部31aの下面31a1とが鉛直方向に対向する位置である。下規制部材32の上面32aが支持位置にある場合、出口1bから搬送された用紙Pをその上面32aで支持することが可能である。このとき、上面32aは、出口1bから搬送された用紙Pの下面を支持する。保持機構30に複数の用紙Pが搬送されてきた場合は、これら複数の用紙Pのうちの最も下方に位置する用紙Pの下面を支持する。一方、水平部31aの上面31a1は、複数の用紙Pのうちの最も上方に位置する用紙Pの上面と対向する。
水平部31aの下面31a1と下規制部材32の上面32aは、支持位置において、保持機構30に搬送された一又は複数の用紙Pに生じるカールをカールの許容高さ以下に規制することが可能なように、鉛直方向に離隔して配置されている。すなわち、水平部31aの下面31a1と下規制部材32の上面32aとの鉛直方向の離隔距離は、カールの許容高さ以下である。カールの許容高さとは、予め定められた高さであって、用紙Pにカールが生じていても、次の用紙Pの排出に支障がでない程度のカール高さをいう。なお、カール高さとは、用紙Pの最下点から最上点までの距離である。インクが吐出されて画像が記録された用紙Pが保持機構30に搬送されると、当該用紙Pに吐出されたインクが用紙Pに浸透する間、印字面が伸長することで用紙Pの周縁が上方に持ち上がるようにカールが生じる。図3(a)中の二点鎖線は、複数の用紙Pにカールが生じる場合について示している。このとき、用紙Pが大きくカールしようとしても、そこには水平部31aの下面31a1が存在するため(下面31a1と上面32aとがカールを許容高さ以下とするように離隔して配置されているため)、当該用紙Pのカールが許容高さ以下に規制される。
非支持位置は、下規制部材32が垂直に配置され、当該下規制部材32の上面32aと水平部31aの下面31a1とが鉛直方向に対向しない位置である。下規制部材32の上面32aが非支持位置にある場合、上面32aは用紙Pの下面を支持することができない。つまり、下規制部材32が、移動機構40によって非支持位置に配置されることで、保持機構30で支持された用紙Pを受容トレイ4に移動させることが可能となる。また、下規制部材32が非支持位置に配置されることで、用紙Pに対するカールの規制を解除する。
移動機構40は、一対のソレノイド41を有する。ソレノイド41は、可動鉄心41aが主走査方向に沿って側壁4bから出入り可能なように、側壁4bに設けられている。また、ソレノイド41は、鉛直方向に関して、可動鉄心41aが上規制部材31よりも下方であって垂直部31bの下端近傍に配置されている。つまり、ソレノイド41は、可動鉄心41aが非支持位置にある下規制部材32と対向する位置に配置されている。この構成において、制御部100の制御によって一対のソレノイド41が駆動され、可動鉄心41aが側壁4bから突出する突出位置(図3(a)に示す位置)に配置されると、当該可動鉄心41aと下規制部材32とが係合して、下規制部材32が支持位置に位置付けられる。一方、制御部100の制御によって一対のソレノイド41が駆動され、可動鉄心41aが突出位置から側壁4b内に退避する退避位置(図3(b)に示す位置)に配置されると、当該可動鉄心41aと下規制部材32との係合が解除され、下規制部材32が非支持位置に位置付けられる。このように移動機構40は、下規制部材32を支持位置から非支持位置へと移動させることで、保持機構30から受容トレイ4に用紙Pを移動させることが可能となる。また、移動機構40は、下規制部材32を支持位置に位置付けることで、保持機構30で用紙Pを支持することが可能となる。
制御部100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)100a、ROM(Read Only Memory)100b、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)100c、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、I/F(Interface)、I/O(Input/Output Port)等を含む。ROM100bは、CPU100aが実行するプログラム、後述の係数Ca,Cb,Ccに関するデータを含む各種固定データ等を記憶している。RAM100cは、プログラム実行時に必要なデータを一時的に記憶する。ASICは、画像データの書き換えや並び替え(例えば、信号処理や画像処理)を行う。I/Fは、外部装置(例えば、プリンタ1に接続されたPC)とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。
続いて、図5〜図8を参照し、制御部100が実行する制御内容について説明する。制御部100は、プリンタ1の電源がONの間、図5に示すルーチンを繰り返し実行する。
制御部100は、先ず、外部装置から送信された画像データを含む記録ジョブ(1以上の用紙Pに画像を記録するための記録指令に対応する一連の処理を示すデータ)を受信したか否かを判定する(S1)。記録ジョブを受信していない場合(S1:NO)、制御部100は、S1の処理を繰り返す。記録ジョブを受信した場合(S1:YES)、制御部100は、待機時間を設定する(S2)。なお、本実施形態においては、複数の用紙Pに画像を記録するための記録ジョブを受信した場合について説明する。
S2について、制御部100は、図6に示すように、先ず、今回の記録ジョブに基づく用紙Pの記録枚数の区切り位置を決定する(SF1)。SF1では、記録枚数が保持機構30での最大収容枚数以下である場合、区切り位置をなしと判定し、記録枚数が保持機構30での最大収容枚数より多い場合、最大収容枚数ごとに区切り位置を決定する。本実施形態における保持機構30の最大収容枚数は20枚であるため、例えば、記録ジョブに基づく用紙Pの記録枚数が30枚であると、用紙Pの20枚目と21枚目との間に区切り位置が設定される。
SF1の後、制御部100は、SF1で決定された区切り位置によって分けられた用紙群の数、及び、当該用紙群に属する用紙Pを設定する(SF2)。このときの用紙群の数はNとされ、区切り位置の個数に1を足した数となる。つまり、区切り位置が1つの場合、用紙群の数が2となる。例えば、記録ジョブに基づく用紙Pの記録枚数が30枚であると、記録枚数が20枚の用紙群と、10枚の用紙群とに区切られる。一方、区切り位置がない場合は、用紙群の数は1となる。SF2の後、制御部100は、n=1とする(SF3)。ここでいうnは、用紙群の順番を示す。
SF3の後、制御部100は、第n用紙群に属する各用紙Pについて、領域A1〜F5毎の個別待機時間を算出する(SF4)。つまり、SF4において、制御部100は、各用紙Pに定められる複数の領域A1〜F5のそれぞれについて、基礎待機時間と、3つの係数Ca,Cb,Ccとを乗じて、個別待機時間を算出する。なお、本実施形態における基礎待機時間は、10秒に設定されている。
複数の領域A1〜F5は、図7に示すように、主走査方向(用紙Pの幅方向)及び副走査方向(用紙Pの搬送方向)に沿って並ぶ領域である。より具体的には、複数の領域A1〜F5は、用紙Pの主走査方向の一端から他端までの幅を5等分され、用紙Pの副走査方向の一端から他端までの幅を6等分されて得られる領域である。そして、各領域A1〜F5を特定するために、A〜Fの行記号と、1〜5の列番号とを付与している。これら複数の領域A1〜F5は、外側領域R1と、内側領域R2と、中間領域R3との3つに分けることができる。外側領域R1は、領域A1,A2,A3,A4,A5,B1,B5,C1,C5,D1,D5,E1,E5,F1,F2,F3,F4,F5からなり、用紙Pの最も外側の環状領域である。内側領域R2は、領域C3,D3からなり、用紙Pの最も内側(中央)にある。中間領域R3は、領域B2,B3,B4,C2,C4,D2,D4,E2,E3,E4からなり、外側領域R1と内側領域R2との間の環状領域である。
係数Caは、用紙群に属する複数の用紙Pを保持機構30で待機させた後に受容トレイ4に移動させたときの当該用紙群中での用紙Pの鉛直方向の相対位置に関する係数であり、下記の表1に示す。表1に示すように、係数Caは、受容トレイ4での用紙の位置が上にあるものほど、大きい。なお、保持機構30には、搬送されてきた用紙Pが下から上へと順に重ねて配置される。保持機構30で重ねられた複数の用紙Pは、この重なり状態のまま、受容トレイ4に移動される。このため、本実施形態においては、用紙Pの保持機構30での位置関係と受容トレイ4での位置関係が同じとなる。これより、用紙群中での用紙Pの鉛直方向の相対位置に関する係数Caは、保持機構30及び受容トレイ4のいずれかにおける用紙群中での用紙Pの相対位置に関する係数であればよい。
本実施形態においては、受容トレイ4で最も上方に配置される用紙Pに関する係数Caを1とし、この用紙Pよりも下に存在する用紙Pに関する係数Caを最も上方にある用紙Pから離れるものほど小さくなるように設定している。受容トレイ4において最も上方に配置される用紙P上には、用紙Pが配置されない。つまり、最も上方に配置される用紙Pは、吐出されたインクによるカールの進行が受容トレイ4においてカールの許容高さを超えて進行しないように、保持機構30で待機させる必要がある。
一方、最も上方にある用紙Pよりも下にある用紙Pの上には、1以上の用紙Pが存在する。このため、当該下にある用紙Pが受容トレイ4にあるときにカールが進行しようとしても上に存在する用紙Pの自重によって、そのカールの進行自体が抑制される。より詳細には、吐出されるインク量や吐出される領域が同条件である用紙Pの場合では、下にある用紙Pは、上にある用紙Pの自重による重石効果によって上にある用紙Pよりもカールが進行しない。つまり、カール高さが小さくなる。このため、下にある用紙Pは、上にある用紙Pに比べてカールが生じる前の状態に回復する時間が短くなる。換言すると、カールの進行が開始してから当該カールがカールの許容高さを超えて進行しなくなるまでの時間が、下にある用紙Pの方が上にある用紙Pよりも短くなる。このようなカールの進行の抑制、すなわち、回復時間が短くなることは、保持機構30及び受容トレイ4のいずれでも生じ、これらを考慮して、最も上方にある用紙Pよりも下にある用紙Pに係る係数Caが設定されている。すなわち、保持機構30においては、下にある用紙Pは、上にある用紙Pの自重による重石効果によって、上にある用紙Pに比べてカールが生じる前の状態に回復する時間が短くなる。つまり、下にある用紙Pは、上にある用紙Pよりも待機時間が短くて済む。その結果、保持機構30における複数の用紙Pの相対位置を考慮することで、当該複数の用紙Pの待機時間を効果的に短くすることができる。また、受容トレイ4においては、下にある用紙Pがカールしようとしても、上にある用紙Pの自重による重石効果によって、当該カールが抑えられる。つまり、下にある用紙Pは、上にある用紙Pよりも待機時間が短くて済む。その結果、受容トレイ4における複数の用紙Pの相対位置を考慮することで、当該複数の用紙Pの待機時間をさらに効果的に短くすることができる。そして、このカールの進行の抑制具合は、用紙Pの枚数が多いほど大きく、ある程度の枚数(本実施形態では5枚)以上となると、受容トレイ4でのカールの許容高さを超えるカールの進行を確実に防ぐことができる。したがって、当該係数Caは、受容トレイ4において上からの位置が5番目以降の用紙Pについては、「0」となっている。
本実施形態の係数Caは、保持機構30から受容トレイ4に移動された各用紙Pにカールが生じても、当該カールが少なくともカールの許容高さを超えて進行しない状態となるように設定されている。
係数Cbは、各用紙Pに定められる領域A1〜F5毎に吐出されるインク量に関する係数であり、下記の表2に示す。表2に示すように、係数Cbは、領域A1〜F5毎に吐出されるインク量が多くなるほど、大きい。これは、各領域A1〜F5において、吐出されるインク量が多くなると、用紙Pに浸透する時間が長くなり、カールの進行時間が長くなる。換言すると、各領域A1〜F5において、吐出されるインク量が少なくなると、用紙Pに浸透する時間が短くなり、カールの進行時間が短くなる。本実施形態においては、各領域A1〜F5において、吐出することが可能な最大インク量を100%(当該領域においてベタ印刷をする状態)とし、このときの係数Cbを1とする。そして、吐出するインク量が80%、60%、40%、20%、0%と順に減少するに連れて、係数Cbが小さくなるように設定されている。なお、インク量が0%のときは、その領域ではカールが生じないため、係数Cbも0となっている。
係数Ccは、各用紙Pに定められる領域A1〜F5毎のカールのし易さに関する係数である。本実施形態においては、外側領域R1に属する領域が1、内側領域R2に属する領域が0.2、中間領域R3に属する領域が0.5として設定されている。係数Ccは、用紙Pの中央(内側)から周縁(外側)に近づくほど大きい。これは、同じ量のインクが内側よりも外側に吐出されたときの方が、用紙Pのカールの度合いが大きくなるからである。吐出されるインク量が同じであると、当該インクによるカールの進行時間は同じとなるが、インクの吐出領域が用紙Pの周縁に近づくほどカールの度合いが大きくなる。このようにカールの度合いに影響が大きい用紙Pの外側領域R1ほど、大きな値に設定されている。
SF4では、先ず、制御部100が、受容トレイ4で最も上方に配置される用紙Pについて、領域A1〜F5毎の個別待機時間を算出する。例えば、領域A1におけるインク量が40%の場合、(基礎待機時間としての10秒)×(係数Caとしての1)×(係数Cbとしての0.4)×(係数Ccとしての1)より、領域A1における個別待機時間である4秒が算出される。なお、各領域A1〜F5において吐出されるインク量は、制御部100が記録ジョブの画像データを参照することで導出される。領域A1以外の他の領域A2〜F5においても、領域A1と同様に、算出する。このように算出された個別待機時間(秒)の一例を、図7の各領域A1〜F5においてカッコ書きで示す。このように最も上方に配置される用紙Pのすべての領域A1〜F5における個別待機時間を算出した後、同様にして、第n用紙群に属する他の用紙Pについても、領域A1〜F5毎の個別待機時間を算出する。これら算出されたすべての個別待機時間は、RAM100cに記憶される。なお、第n用紙群に属する各用紙Pのすべての領域A1〜F5における個別待機時間の算出は、どの用紙P及びどの領域A1〜F5から行われてもよい。
次に、制御部100は、第n用紙群の待機時間を抽出する(SF5)。具体的には、制御部100は、第n用紙群に属する各用紙Pについて、個別待機時間を抽出する。つまり、各用紙Pの領域A1〜F5毎の個別待機時間のうちの最大値を抽出し、これを用紙P毎の個別待機時間とする。例えば、図7に示すように、受容トレイ4で最も上方に配置される用紙Pにおいては、8秒が最大値となり、これが当該用紙Pの個別待機時間となる。他の用紙Pも同様にして、個別待機時間を抽出する。このときの用紙P毎の個別待機時間の一例を、図8(a)に示す。なお、図8(a)は、記録ジョブに基づく用紙Pの記録枚数が30枚であるときに区切られた20枚の用紙群に対応するものである。この後、制御部100は、これら用紙P毎の個別待機時間の最大値を抽出し、これを第n用紙群の待機時間とする。つまり、図8(a)中の個別待機時間のうちの最大値(例えば、8秒)が当該用紙群の待機時間とされる。変形例として、制御部100は、第n用紙群の各用紙Pの領域A1〜F5毎の個別待機時間の中から最大値を抽出し、これを第n用紙群の待機時間としてもよい。こうすることで、第n用紙群の各用紙Pにおける個別待機時間を抽出する手間を省くことができる。
次に、制御部100は、SF5で抽出された待機時間と、第n用紙群の最終ページ数とをひも付けしてRAM100cに記憶させる(SF6)。こうして、第n用紙群の待機時間が設定される。このときの第n用紙群(ここでは、20枚の用紙群)の待機時間の一例を、図8(b)に示す。これらSF4〜SF6によって、本発明における待機時間設定処理が構成される。
SF6の後、制御部100は、第n用紙群のnがNであるか否かを判定する(SF7)。SF2で設定された用紙群の数であるNと、第n用紙群のnとが異なる場合(SF7:NO)は、すべての用紙群における待機時間の抽出が完了していないため、制御部100はSF8に進み、nに1を足して、SF4に戻る。こうして、用紙群の数だけ、上述のSF4〜SF6の処理が繰り返される。このときの待機時間の一例も、図8(b)に示す。図8(b)は、記録ジョブに基づく用紙Pの記録枚数が30枚であって、20枚の用紙群と10枚の用紙群のそれぞれの待機時間を示す。一方、n=Nの場合(SF7:YES)、用紙群毎の待機時間の設定が終了し、S3に進む。
S3において、制御部100は、記録ジョブに基づいて1枚の用紙Pに対する記録動作を実行するように、各部を制御する。つまり、制御部100は、給紙モータ21M、及び、搬送モータ20Mを制御して、収容トレイ3内で最も上方にある用紙Pを搬送し、さらに用紙センサ6からの信号及び画像データに基づいてヘッド2を制御して、用紙Pの各領域A1〜F5に所定量のインクを吐出させる。これにより、当該用紙Pに対する画像の記録が行われる。この後、制御部100は、搬送モータ20Mを制御して、画像が記録された用紙Pを保持機構30(すなわち、下規制部材32の上面32aと上規制部材31の水平部31aの下面31a1との間)に搬送させる(S4:搬送処理)。
次に、制御部100は、用紙センサ7からの信号に基づいて、画像が記録された用紙Pが保持機構30に搬送されたか否かを判定する(S5)。保持機構30に用紙Pが搬送されていない場合(NO)、S4に戻り、保持機構30に用紙Pが搬送された場合、S6に進む。
S6において、制御部100は、記録ジョブに基づくすべての用紙Pに対する記録動作が終了したか否かを判定する。記録動作が終了していない場合(NO)、S7に進み、記録動作が終了した場合(YES)、S8に進む。S7において、制御部100は、用紙群の最終ページであるか否かを判定する。最終ページでない場合、S3に戻り、最終ページの場合、S8に進む。
S8において、制御部100は、RAM100cに記憶された待機時間の中から、直前に記録された用紙Pに対応する最終ページの待機時間を今回の待機時間として参照する。S8の後、制御部100は、用紙群の最終ページが保持機構30に搬送されてから今回の待機時間が経過したか否かを判定する(S9)。今回の待機時間が経過していない場合(NO)、制御部100は、S9の処理を繰り返す。今回の待機時間が経過した場合(YES)、制御部100は、保持機構30で待機する複数の用紙Pを受容トレイ4に移動させる(移動処理:S10)。S10において、制御部100は、ソレノイド41を制御して、下規制部材32を支持位置から非支持位置に移動させる。こうして、保持機構30で待機する複数の用紙Pを受容トレイ4に移動させる。このとき、図3(b)中二点鎖線で示すように、複数の用紙Pにカールが生じていても、複数の用紙Pが水平部31aの下面31a1と下規制部材32の上面32aとの間に支持されていたことによって、このカールはカールの許容高さ以下に規制されている。さらには、カールがカールの許容高さを超えて進行しない状態となっている。そして、複数の用紙Pは、図3(b)実線で示すように、時間が経過するに連れてカール度合いが小さくなり、カールが生じる前の状態へと回復する。
S10の後、制御部100は、S6と同様に、記録ジョブに基づくすべての用紙Pに対する記録動作が終了したか否かを判定する。記録動作が終了していない場合(NO)、S3に進み、記録動作が終了した場合(YES)、一連の制御フローが終了する。
以上に述べたように、本実施形態によるプリンタ1によると、用紙群に属する複数の用紙Pを保持機構30に待機させたときに、用紙Pにカールが生じても当該カールをカールの許容高さ以下に規制することが可能となる。各個別待機時間は、各用紙群に属する各用紙Pについて、領域A1〜F5のそれぞれについて、基礎待機時間と、3つの係数Ca,Cb,Ccとを乗じて算出される。このときの個別待機時間が、用紙Pの相対位置に基づいて算出されることで、保持機構30及び受容トレイ4の両方において、カールの進行が上方にある用紙Pの自重によって抑制されることが考慮される。つまり、カールが許容高さを超えて進行しないタイミングになると、用紙群を保持機構30から受容トレイ4に移動させることが可能となる。保持機構30においてカールの回復時間を短くすることが可能となることで、用紙群を受容トレイ4に移動させるタイミングを早くすることが可能となる。このため、当該個別待機時間を効果的に短くできる。そして、これら複数の個別待機時間のうちの最大値が用紙群の待機時間として設定され、複数の用紙Pが用紙群毎に保持機構30に当該待機時間待機する。このため、用紙Pに生じるカールの度合いを抑制しつつ、受容トレイ4にインクが吐出された複数の用紙Pの移動が完了するまでに要する時間を短くすることが可能となる。
また、個別待機時間が、基礎待機時間と、3つの係数Ca,Cb,Ccとを乗じて算出される。このため、個別待機時間を容易に算出することができる。さらに、係数Ca,Cbに加えて係数Ccを乗じることで個別待機時間が算出されているため、個別待機時間を精度良く算出することができる。加えて、係数Ccは、用紙Pの中央(内側)から周縁(外側)に近づくほど大きい。これにより、個別待機時間をより精度良く算出することができる。
また、係数Cbは、領域A1〜F5毎に吐出されるインク量が多くなるほど大きい。これより、個別待機時間を精度良く算出することができる。また、係数Caは、受容トレイ4での用紙の位置が上にあるものほど、大きい。これにより、個別待機時間を精度良く算出することができる。つまり、上方にある用紙ほど、当該用紙よりも上方にある用紙の数が少なくなって、カールの抑制効果が小さくなる。この分を、用紙の相対位置に関する係数Caで考慮することで、個別待機時間の精度が向上する。
上述の実施形態においては、保持機構30から受容トレイ4に移動させた用紙群に属する用紙Pには、カールの許容高さ以下のカールが生じている場合があるが、カールが生じる前の状態に回復させてから用紙群を保持機構30から受容トレイ4に移動させてもよい。この場合、用紙群中での用紙Pの相対位置に関する係数Caを変更することで、実現できる。この変形例における個別待機時間は、係数Ca1が上述の実施形態と異なるだけで、それ以外は、上述の実施形態と同様な方法で算出される。本変形例における係数Ca1は、保持機構30における用紙群中での用紙Pの鉛直方向の相対位置に関する係数であり、下記の表3に示す。本変形例においても、表3に示すように、係数Ca1は、用紙の位置が上にあるものほど、大きい。
本変形例においては、保持機構30から受容トレイ4に移動されたときにはカールが回復された状態であることを考慮して、係数Ca1が設定される。従って、上述の実施形態におけるよりも各用紙位置における係数Ca1の値が大きくなっている。この大きくなった分だけ、個別待機時間が長くなり、保持機構30における待機時間も長くなる。本変形例においても、個別待機時間が、用紙Pの相対位置に基づいて算出される際に、保持機構30において、カールの進行が上方にある用紙Pの自重によって抑制されることが考慮される。このため、保持機構30におけるカールの回復時間が短くなることが考慮され、用紙群を受容トレイ4に移動させるタイミングを早くすることが可能となる。したがって、当該個別待機時間を効果的に短くできる。本変形例では、受容トレイ4において、カールの進行が上方にある用紙Pの自重によって抑制されることは考慮しない。そのため、保持機構30において、カールが回復された状態となるまで、用紙Pを待機させる必要がある。そして、上述の実施形態と同様に、複数の個別待機時間のうちの最大値が用紙群の待機時間として設定され、複数の用紙Pが用紙群毎に保持機構30に当該待機時間待機する。このため、用紙Pに生じるカールの度合いを抑制しつつ、受容トレイ4にインクが吐出された複数の用紙Pの移動が完了するまでに要する時間を短くすることが可能となる。加えて、受容トレイ4に移動した用紙Pには、カールが生じていない状態となるため、ユーザにカールが生じていない用紙Pを提供することが可能となる。
別の変形例として、移動機構は、複数の用紙Pを保持する一対の規制部材35を主走査方向外側に移動させてもよいし、複数の用紙Pを保持する一対の規制部材35を主走査方向に関する内側端部が外側端部よりも下方に配置されるように回動させてもよい。これらにおいても、複数の用紙Pを保持機構30から受容トレイ4に移動させることが可能となる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態及び変形例においては、SF4において、第n用紙群に属するすべての用紙Pについて、個別待機時間を算出しているが、受容トレイ4又は保持機構30において最も上方に配置される用紙Pを含む2以上の用紙Pについて、領域毎の個別待機時間を算出してもよい。また、係数Ca,Ca1,Cbが0となるものを乗ずる領域においては、特に個別待機時間を算出しなくてもよい。
また、保持機構は、一対の規制部材35のうちの一方だけを有していてもよい。この場合、規制部材は、用紙Pの主走査方向の幅よりも長い水平部31a及び下規制部材32を有することが好ましい。また、水平部31aに相当する部材、及び、下規制部材32に相当する2枚の平板から保持機構が構成されていてもよい。要するに、保持機構は、用紙Pの厚み方向に面する第1表面と対向し用紙Pを支持可能な第1の面と、用紙Pの第1表面とは反対側の第2表面と対向し第1の面と所定距離を隔てて配置される第2の面とを有しておればよい。この場合、移動機構は、第1の面が用紙Pを支持する支持位置と用紙Pを支持しない非支持位置との取るように、少なくとも第1の面を移動させることが可能であればよい。
また、個別待機時間は、用紙Pの領域毎に吐出されるインク量と受容トレイ4又は保持機構30での複数の用紙P中での用紙の相対位置とに基づいて算出されておればよい。係数Ccはなくてもよい。また、用紙Pの領域は1つでもよい。このときの1つの領域は用紙Pの一表面全体であってもよい。
また、本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。さらに、ノズルからインク以外の液体を吐出する、プリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。