本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、本発明に係る液滴吐出装置を、液滴吐出装置の一例であるインクジェット式プリンタに適用させて説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
図1に示すように、本実施形態に係るインクジェット式プリンタ101は、略直方体形状の筐体102を備えている。筐体102内には、5つのヘッド1から成るヘッドユニット10、用紙(記録媒体)Pをヘッド1の下方において搬送方向99(図1中左から右に向かう方向)へ搬送する搬送ユニット16、用紙Pを給紙する給紙ユニット103、およびインク等を貯留するタンクユニット104の各機能ユニットが上方から下方へ順に設けられている。また、筐体102内の上記した各機能ユニットと干渉しない位置には、各機能ユニットの動作を司る演算制御装置100が設けられている。さらに、筐体102の上面には、印刷を終えた用紙Pが排出される排紙部15が設けられている。
ヘッドユニット10が具備する5つのヘッド1のうち4つは、インクを吐出する記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)1aである。本実施形態では、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの各記録ヘッド1aが設けられている。残りの1つのヘッド1は、処理液を吐出する処理液ヘッド1bである。なお、本実施形態ではカラー印刷が可能なインクジェット式プリンタを例に挙げて説明するが、モノクロ印刷を行うインクジェット式プリンタであってもよい。モノクロ印刷を行うインクジェット式プリンタの場合、上記したヘッド1のうちシアン、マゼンダ、およびイエローについては省略することができる。
ここで、顔料インクに対しては顔料色素を凝集させる処理液が使用される。また、染料インクに対しては染料色素を析出させる処理液が使用される。処理液の主材料は、カチオン性化合物、とりわけ、カチオン系高分子、カチオン性界面活性剤、カルシウム塩およびマグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等のなかからインクの性質に応じて適宜選択される。このような処理液が塗布された用紙Pの領域にインクが着弾すると、処理液中の多価金属塩等がインクの成分(すなわち、着色剤である染料又は顔料)に作用して、不溶性又は難溶性の金属複合体等が凝集又は析出する。その結果、付着したインクの用紙P内への浸透度が低下して、インクが用紙Pの表面に近い領域に残存しやすくなる。
処理液ヘッド1bは、5つのヘッド1のうち搬送方向99の最も上流側に配置されている。4つの記録ヘッド1aは、処理液ヘッド1bよりも搬送方向99下流側において、吐出するインクの明度が小さい順に、すなわち、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順に上流側から下流側へ向けて配置されている。
5つのヘッド1は、略同様の構成を有しており、いずれも印字幅方向(主走査方向)98に長尺な略直方体形状を有するライン型インクジェットヘッドである。ここで「印字幅方向98」とは水平面に沿って搬送方向(副走査方向)99と直交する方向である。各ヘッド1は、複数の吐出口(不図示)が開口している吐出面2aを有するヘッド本体2を備えている。吐出面2aは、搬送ユニット16により搬送方向99へ搬送される用紙Pと所定間隔を介して上下に対向している。各ヘッド本体2は、後述するヘッド制御部51により制御される複数のアクチュエータ(不図示)を備えている。これらのアクチュエータは、選択的に複数の吐出口から処理液又はインクが吐出されるように、処理液又はインクに吐出エネルギーを付与する。なお、本実施形態においては、印字幅方向(主走査方向)98及び搬送方向99(副走査方向)の解像度はいずれも600dpiとなるよう構成又は設定されており、用紙Pの表面に印字幅方向98および搬送方向99にそれぞれ1/600インチ間隔の格子状に区画された複数の単位領域(画素領域)が仮想的に定められている。
タンクユニット104は、4つのインクタンク17aおよび1つの処理液タンク17bを備えている。インクタンク17aおよび処理液タンク17bは、筐体102に対して着脱可能に装着されている。各インクタンク17aは、ブラック、シアン、マゼンタまたはイエローのインクを貯留している。各インクタンク17aから対応する記録ヘッド1aへチューブ(不図示)を介してインクが供給される。同様に、処理液タンク17bは処理液を貯溜しており、処理液タンク17bから処理液ヘッド1bへチューブを介して処理液が供給される。
給紙ユニット103は、筐体102に対して着脱可能に設けられた給紙トレイ11と、給紙ローラ12とを有している。給紙トレイ11は、上面解放の箱形状をなし、複数枚の用紙Pが積層された状態で収容されている。給紙ローラ12は、給紙トレイ11に収容されている最も上の用紙Pと接触している。そして、給紙ローラ12が演算制御装置100の制御を受けて動作する給紙モータ31(後述の図2参照)により回転駆動されると、給紙トレイ11にある用紙Pが後述する搬送経路5へ送り出される。
筐体102の内部には、図1に黒矢印で示されるように、給紙トレイ11から排紙部15までの用紙Pの搬送経路5が形成されている。搬送経路5は、複数の搬入ガイド14、搬送ユニット16および複数の搬出ガイド29により、全体として左右が反転したS字形状となるように形成されている。給紙ローラ12により給紙トレイ11から送り出された用紙Pは、複数の送給ローラ対13により搬入ガイド14を通じて搬送ユニット16へと送られる。搬送ユニット16の搬送経路5上流側には、レジストレーションローラ対4が設けられている。用紙Pは、このレジストレーションローラ対4により姿勢が整えられたのち、搬送ユニット16へ突入する。搬送ユニット16は、用紙Pを画像形成可能な位置へ送り込み、画像形成時には搬送方向99に所定の搬送速度で用紙Pを搬送させる。用紙Pが各ヘッド1の下方を通過する際に、用紙Pへ向けて処理液およびインクが吐出され、用紙Pの印刷面(上面)に所望のカラー画像が形成される。画像が形成された用紙Pは、搬送ユニット16から更に下流側へ送り出され、複数の搬出ローラ対28により搬出ガイド29により形成された搬出路60を通じて上方に搬送され、筐体102の上部に設けられた排出口22から排紙部15へ排出される。
搬送ユニット16は、用紙Pの搬送方向に沿って配置された複数の搬送ローラ対8を備えている。搬送ローラ対8は、全ヘッド1の搬送方向99の下流側及び上流側と、各ヘッド1の間にそれぞれ配置されている。各搬送ローラ対8は、搬送ローラ8bと歯付ローラ8aとの、上下一対のローラで構成されている。搬送ローラ8bは、その周面と用紙Pの下面とが接触するように配置されている。歯付ローラ8aは、搬送ローラ8bの周面と用紙Pを挟んで対向するように配置されている。歯付ローラ8aは、印字幅方向98に延びる支軸と、支軸上に間隔を開けて設けられた複数の歯付ディスクとを備えている。歯付ディスクは、周面に複数の歯が形成された薄い板状のものであって、この歯の先端で用紙Pと接触することができる。歯付ローラ8aは図示しない付勢手段により搬送ローラ8bへ向けて付勢されており、歯付ローラ8aの周面は搬送ローラ8bの周面に圧接している。そして、搬送ユニット16に含まれる複数の搬送ローラ8bが、搬送モータ33(図2参照)により同期して回転駆動されることにより、用紙Pが歯付ローラ8aと搬送ローラ8bとの間に挟まれて搬送方向99に沿って下流側へ向かって搬送経路5中を搬送される。
次に、図2を参照しつつ、インクジェット式プリンタ101の制御に係る構成について説明する。図2は演算制御装置100の機能ブロック図であり、同図において矢印はデータの流れを示している。インクジェット式プリンタ101の演算制御装置100は、CPU(中央演算処理装置)20および制御回路90から構成される。CPU20には、プログラムやプログラムで使用されるデータを記憶するROM23とCPU20がプログラム実行時にデータを一時的に読み出し記憶させるRAM21が備えられている。さらに、CPU20と外部機器を接続するためのインターフェース、並びこれらを接続する内部経路等が備えられている(何れも不図示)。
また、CPU20は、インターフェースを介して出入力装置である操作パネル73と接続されている。ユーザが操作パネル73に対して入力操作を行った場合には、その操作内容を示す信号がCPU20へ入力され、CPU20は入力信号に基づいてインクジェット式プリンタ101の各部の動作を制御する。また、インクジェット式プリンタ101の動作上、ユーザに提供する各種の情報は操作パネル73が有する表示画面にて文字や記号により適宜表示させる。また、演算制御装置100のCPU20は、インターフェースを介して外部コンピュータ70との間でデータ通信可能に接続されている。インクジェット式プリンタ101の演算制御装置100は外部コンピュータ70から送られてきた画像データや入力信号等に基づいてプリンタ101の各部の動作を制御することができる。さらにCPU20は、制御回路90において演算された値を取得したり、制御回路90を構成する各部(特に、後述するヘッド制御部51および搬送制御部59)の制御を行ったりする。
制御回路90は、ハードウェアによって構成されており、画像データ記憶部52、インク吐出データ生成部53、インク吐出データ記憶部54、属性算出回路61、評価領域グループ別カウント部62、乾燥時間決定部63、ヘッド制御部51、および搬送制御部59を備える。
画像データ記憶部52は、用紙P上に記録される画像に係る画像データを記憶する記憶媒体である。画像データは、インクジェット式プリンタ101と接続されている外部コンピュータ70やプリンタドライバ等から画像データ記憶部52へ転送されてくる。
インク吐出データ生成部53は、画像データ記憶部52に記憶された画像データに基づいて、インク吐出データを生成する。インク吐出データ生成部53は、さらに詳細には、ラスタイメージ処理部、ガンマ補正処理部および誤差拡散処理部等から構成されている。画像データ記憶部52に格納されている画像データはベクターデータであって、インク吐出データ生成部53はこの画像データをラスタイメージ処理することによりインク吐出データを生成する。インク吐出データは、用紙P上に仮想的に定められた単位領域(画素領域)に形成するドットのドットサイズ(ドットの大きさ)を示すラスタデータである。インク吐出データに示されたドットサイズは、記録ヘッド1aが用紙P上の単位領域へ吐出するインクの液滴サイズ(ゼロ,小滴,中滴,大滴の4段階のいずれか)を示している。液滴サイズは、用紙P上の単位領域へ吐出されるインクの量(液体量)を表している。なお、用紙P上の単位領域に吐出される液滴サイズを変化させる場合には、液滴サイズに応じた大きさの1滴の液滴を吐出する場合や、液滴サイズに応じて複数の等しい大きさの微小液滴を連続的に吐出する場合などがある。後者の場合に、実際は微小液滴の液滴数は多数であるが、これらを合わせて液滴数は1として数える。上記ように生成されたインク吐出データは、必要に応じてガンマ補正処理と誤差拡散処理とが施される。本実施例において、インク吐出データは誤差拡散処理によって8ビットのデータが2ビットに変換されている。
図3は或領域のインク吐出データを示す図であり、(a)はブラックのインク吐出データ、(b)はシアンのインク吐出データ、(c)はマゼンタのインク吐出データ、(d)はイエローのインク吐出データである。例えば、図3に示すように、インク吐出データ記憶部54は、4つの記録ヘッド1aに関する4つのインク吐出データを記憶している。なお、図3に示す4つのインク吐出データは、用紙P上の同一領域(例えば1〜6までの6行分およびa〜fまでの6列分の計36個分の単位領域)に形成する画像に対応している。また、図3のS,M,Lとの記載は、用紙P上に仮想的に定められたその単位領域に形成するドットのドットサイズを示しており、S,M,Lのいずれの記載もない単位領域にはドットを形成しないことを示している。なお、ドットサイズS,M,Lは、記録ヘッド1aから吐出される小滴,中滴,大滴の液滴と対応している。すなわち、インク吐出データには、ドット形成なし、小滴、中滴、大滴の4値が含まれている。
なお、インク吐出データ生成部53により生成されたインク吐出データは、インク吐出データ生成部53からインク吐出データ記憶部54へ転送される。ここで、インク吐出データ生成部53とインク吐出データ記憶部54とは有線で接続されており、インク吐出データは短距離用のデータ転送規格に則って1クロックに1以上の単位領域(画素領域)のデータが乗せられて転送される。したがって、インク吐出データ生成部53からインク吐出データ記憶部54への1ページ分のインク吐出データの転送には、画素数に応じた時間を要する。
(評価対象および評価対象グループ)
また、本実施形態では、インク吐出データを、逐次、受け付け液滴サイズごとにドット数をカウントする構成である。液滴のドット数のカウントは所定の評価領域から構成される評価領域グループごとに行われる。なお、評価領域とは、用紙Pに吐出された液滴の乾燥時間を演算する領域である。
ここで評価領域および評価領域グループについて図4を参照して詳細に説明する。図4は、用紙に定められた評価領域グループと該評価領域グループを構成する評価領域との関係を示す表である。図4では、複数パターンの評価領域グループを例示している。
図4の表の一列目に示された全ベタ評価領域グループは、1枚の用紙Pの全画素範囲を評価領域とする。図4の表の二列目に示された四隅評価領域グループは、1枚の用紙Pの四隅に位置する画素範囲を評価領域とする。図4の表の三列目に示された縦評価領域グループは、1枚の用紙Pの印字幅方向98両端において搬送方向99に延びる画素範囲であり、用紙Pの印字幅方向98両端の一方又は他方の数列(印字幅方向98に沿って1/4の範囲)に含まれる画素範囲を評価領域とする。さらに、縦評価領域グループは、1枚の用紙Pの印字幅方向98の中央部において搬送方向99に延びる画素領域であり、用紙Pの印字幅方向98に、一方は、中央から図4の紙面左側に向かって数列(印字幅方向98に沿って中央から1/4の範囲)、他方は紙面右側に向かって数列(印字幅方向98に沿って中央から1/4の範囲)に含まれる画素範囲も評価領域に含む。図4の表の四列目に示された横評価領域グループは、1枚の用紙Pの搬送方向99の両端において印字幅方向98に延びる領域であり、用紙Pの搬送方向99における両端のうちの一方又は他方の数行(搬送方向99に沿って1/4の範囲)に含まれる画素範囲を評価領域とする。さらに、横評価領域グループは、1枚の用紙Pの搬送方向99中央部において印字幅方向98に延びる領域であり、用紙Pの搬送方向99に、一方は、中央から図4の紙面上側に向かって数列(搬送方向99に沿って中央から1/4の範囲)、他方は紙面下側に向かって数列(搬送方向99に沿って中央から1/4の範囲)に含まれる画素範囲も評価領域に含む。
すなわち、上記した4つの評価領域グループは、互いに重畳することのない、同一サイズでかつ同一形状となる1以上の評価領域から構成されている。このため、評価領域グループごとに、これらを構成する評価領域をまとめて容易に管理することができるとともに、液滴数および液体量を1つの演算回路で求めることができる。
演算制御装置100では、上記したように制御回路90が属性算出回路61、評価領域グループ別カウント部62、および乾燥時間決定部63を更に備えている。これらの各部を構成する回路により、記録媒体に吐出された液滴の乾燥時間算出処理がおこなわれる。以下、本実施の形態に係るインクジェット式プリンタ101における乾燥時間算出処理、ならびにこの乾燥時間処理を実施する属性算出回路61、評価領域グループ別カウント部62および乾燥時間決定部63の構成について説明する。
(評価領域グループ別カウント部の構成)
まず、図5を参照して評価領域グループ別カウント部62の構成について説明する。図5は乾燥時間処理を実施する評価領域グループ別カウント部62および乾燥時間決定部63の回路構成の一例を模式的に示すブロック図である。まず、評価領域グループ別カウント部62の構成を説明する前に、図6を参照して各評価領域グループ別カウント部62による液滴数および液体量のカウント方法を説明する。図6は評価領域グループ別カウント部62による液滴数および液体量のカウント方法の一例を説明する図である。
図6(a)に示すように、通常、1ページ分のインク吐出データがライン毎に送られてくる。図6(a)ではインク吐出データ生成部53からインク吐出データ記憶部54へ送られてきた1ページ分のインク吐出データの一部分のラインデータL1〜Lnが示されている。そして、複数行のラインデータが順次送られてきて、ある評価領域に対応する画素範囲のインク吐出データが送られてきた時点で当該ある評価領域の液滴数と液体量とが確定する。例えば、図6(b)では四隅評価領域グループを構成する評価領域の一部のインク吐出データがラインデータL1〜Lnに含まれている場合に、ラインデータLnがインク吐出データ記憶部54に到達した時点で、四隅評価領域グループを構成する左上隅および右上隅の評価領域の液滴数と液体量とが順次確定されていく様子を示している。このようにある評価領域のインク吐出データが総て転送された時点で、当該評価領域の液滴数と液体量が確定する。
上記したように各評価領域グループを構成する評価領域それぞれの液滴数および液体量をカウントする評価領域グループ別カウント部62は図5に示すように構成される。すなわち、評価領域グループ別カウント部62は、上記した4つの評価領域グループに対し個別のレジスタ41a〜41dを備えている。そして、各評価領域グループのレジスタ41a〜41dには演算回路(全ベタ領域演算回路、四隅領域演算回路、縦領域演算回路、横領域演算回路)42a〜42dが付属しており、これらの演算回路42a〜42dでその評価領域グループに関連づけられた1又は複数の評価領域の液滴数と液体量とが確定する。ここでレジスタ41a〜41d、ならびに演算回路42a〜42dを特に区別して説明する必要がない場合はレジスタ41ならびに演算回路42と称するものとする。
演算回路42a〜42dそれぞれは、インクリメンタ43a〜43d、ドットカウンタ44a〜44d、液体量カウンタ45a〜45d、および予測対象値算出回路46a〜46dを備えてなる構成である。なお、インクリメンタ43a〜43d、ドットカウンタ44a〜44d、液体量カウンタ45a〜45d、および予測対象値算出回路46a〜46dを特に区別して説明する必要がない場合はインクリメンタ43、ドットカウンタ44、液体量カウンタ45、および予測対象値算出回路46と称するものとする。
レジスタ41は、各評価領域グループの評価領域における、液滴サイズに対応したドットサイズ毎のドット数の積算値をそれぞれ格納する論理回路である。インクリメンタ43は、液滴吐出データを、逐次、受け付け、レジスタ41に格納しているドット数をインクリメントする論理回路である。ドットカウンタ44は、評価領域グループの各評価領域について、液滴サイズ別にドット数をカウントし、評価領域グループにおける液滴サイズ別のドット数の総和を求める論理回路である。液体量カウンタ45は、評価領域グループの各評価領域についての液体量を求め、評価領域グループにおける液体量の総和を求める論理回路である。
ここで評価領域おけるドット数は、用紙P上に仮想的に定められた当該評価領域へ吐出された液滴の数である。本実施の形態において、評価領域の液滴数は、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの各インク吐出データにおいて当該評価領域のドット数をそれぞれカウントし、これを総計することにより求められる。例えば、任意の評価領域において、ドットサイズSがa個で、ドットサイズMがb個、ドットサイズLがc個ある場合、a+b+c個が、任意の評価領域における液滴数となる。
一方、評価領域の液体量は、用紙P上に仮想的に定められた当該評価領域へ吐出されたインクの液滴量の総量である。したがって、ある評価領域の液体量は、当該評価領域に相当するインク吐出データの、ドットサイズごとのドット数にそのドットサイズに対応する液滴量を乗じたものを総計することにより求められる。例えば、ある評価領域においてSサイズのドット数がa個であり、Mサイズのドット数がb個であり、Lサイズのドット数はc個であるとする。この場合、Sサイズの液滴量を7pl、Mサイズの液滴量を14pl、Lサイズの液滴量を21plとすると、この評価領域の液体量はa×7pl+b×14pl+c×21plである。
予測対象値算出回路46は、前記評価領域グループに対応する最終の液滴吐出データ部分を受け付ける前に、レジスタ41にすでに格納されたドット数に基づき、第1予測対象値として液滴数と液体量とを求める論理回路である。また予測対象値算出回路46は、最終の液滴吐出データ部分に対する液滴数と液体量を所定値により補完したときの総液滴数と総液体量である第2予測対象値もさらに求める。
ここで、最終の液滴吐出データ部分とは、例えば、液滴吐出データにおける用紙Pの最終ラインに相当するデータ部分である。なお、最終の液滴吐出データ部分は用紙Pにおける最終ラインに相当するデータ部分に限定されるものではなく、例えば、最後の2ラインに相当するデータ部分であってもよい。また、最終の液滴吐出データ部分に対する液滴数と液体量を補完する所定値とは、例えば、用紙Pにおける最終ラインに相当する画素すべてに液滴があり、かつ該液滴のサイズが大滴であるとしたときに得られる液体数と液体量である。すなわち、最終ラインについてもっとも液滴数が多くかつ最も液体量が多くなる場合を想定した値である。
(乾燥時間決定部の構成)
次に、評価領域グループ別カウント部62によって求められた各評価領域グループにおける液滴数および液体量から評価領域グループごとに乾燥時間を求め、最終的に用紙Pに対する乾燥時間を決定する乾燥時間決定部63の構成について説明する。
乾燥時間決定部63は、正規化回路47、乾燥時間算出回路48、乾燥時間判定回路49、および乾燥時間参照テーブル50を備えてなる構成である。乾燥時間決定部63は、正規化回路47、乾燥時間算出回路48、および乾燥時間判定回路49の3つの論理回路から構成されるが、CPU20がプログラムを読み出し、実行することで、これら3つの論理回路で実施する機能を実現する構成であってもよい。ただし、本願のように論路回路によって構成される方が、CPU20からの実行指示に基づき各機能が実現される構成よりもデータ処理速度が速くなる点で有利である。
正規化回路47は、各評価領域における単位面積当たりの液滴数および液体量を求める論理回路である。用紙Pのサイズ(画像サイズ)の大小により液滴数および液体量は異なってくる。そこで、正規化回路47は用紙Pのサイズに依存することなく乾燥時間を評価することができるようにするため、所定の評価領域グループにおける単位面積当たりの液滴数および液体量を求める。正規化回路47は、所定の評価領域グループの総ドット数に対して各評価領域における液滴数および液体量が何%を占めるか求める。なお、論理回路を用いて割り算を実行するには回路構成が大きくなり、またその構成が複雑となるという問題がある。そこで、本実施形態では、各評価領域グループの総ドット数を事前に求め、正規化回路47はその逆数を評価領域グループにおける液滴数および液体量に乗算するように構成されている。
なお、各評価領域グループにおける総ドット数は、インク吐出データが転送される前に1ページあたりのデータサイズ(主走査方向のドット数および副走査方向のドット数)から属性算出回路61が事前に求めることができる。そして、評価領域グループ別カウント部62がインク吐出データの受け付けを開始すると属性算出回路61が、事前に求めた各評価領域グループの総ドット数を正規化回路47に送信する。そして、正規化回路47は、属性算出回路61から受信した総ドット数の逆数を評価領域グループにおける液滴数および液体量に乗算する。
このように、正規化回路47は割り算を実行することなく各評価領域グループについて単位面積あたりの液滴数および液体量を求めることができるため、回路構成が大きくならないという利点を有する。
乾燥時間算出回路48は、各評価領域グループについて、正規化回路47によって変換された単位面積あたりの液滴数(dot%)および液体量(ink%)に基づき、乾燥時間参照テーブル50を参照して乾燥時間を算出する論理回路である。乾燥時間算出回路48により算出される乾燥時間としては、各評価領域グループのドット数に基づきカウントされた液滴数と液体量とを正規化した値から求められる乾燥時間、正規化された第1予測対象値から求められる乾燥時間(第1予測乾燥時間)、ならびに正規化された第2予測対象値から求められる乾燥時間(第2予測乾燥時間)が挙げられる。
ここで乾燥時間参照テーブル50について説明する。ここでは、説明の便宜上、図7を参照して全ベタ評価領域グループに関する乾燥時間参照テーブル50を例に挙げて説明する。図7は全ベタ評価領域グループに関する乾燥時間参照テーブル50の一例を示す図である。図7に示された乾燥時間参照テーブル50は、全ベタ評価領域グループの液体量および液滴数に対応付けられた用紙Pの乾燥時間を示すマップである。このマップにおいて、縦軸は評価領域グループの液滴数の割合を表している。評価領域グループの液滴数の割合(百分率)は、上記したようにその評価領域グループの総ドット数を100%としている。図7に示す例では、単位領域を600dpiとし、A4の用紙の全域を塗り潰したときの液滴数を100%としている。
また、上記マップにおいて、横軸は評価領域グループの液体量の割合を表している。評価領域グループの液体量の割合(百分率)は、その評価領域グループを中滴サイズ(Mサイズ)の一色のインクで塗り潰したときの液体量を100%としている。図7に示す例では、単位領域を600dpiとし、例えば液滴量14plのブラックインクでA4の用紙の全域を塗り潰したときの液体量を100%としている。このため、大滴サイズ(Lサイズ)の一色のインクで塗り潰したときの液体量は、当然、中滴サイズのインクで塗り潰したときの液体量よりも大きくなる。そこで、横軸では150%まで目盛が付されている。そして、縦軸と横軸とで規定される座標に示された値が含まれる領域が乾燥のために用紙Pが排出されず保持される時間(乾燥時間)である。
図7に示すようにこのマップでは(A)〜(F)の領域に区分されており、液体量と液滴量との関係が(A)の領域となる場合は、乾燥させるために排出されず用紙が保持される時間は0秒、(B)の領域となる場合は1秒、(C)の領域となる場合は2秒、(D)の領域となる場合は3秒、(E)の領域となる場合は4秒、(F)の領域となる場合は、5秒となっている。この乾燥時間参照テーブル50は、5%刻みに縦軸が100%まで、横軸が150%まで目盛が刻まれており、縦軸に20マス、横軸に30マスの総計600マス存在する。そこで、乾燥時間が示された各マスに対応する配列データ形式で乾燥時間参照テーブル50のデータを乾燥時間決定部63が有するメモリ(不図示)に保持することができる。しかしながら、乾燥時間参照テーブル50のデータ形式はこのような配列データ形式に限定されるものではない。例えば、以下の条件(1)〜(6)を示すデータとして保持されていてもよい。
(1)インク量(ink%)が50%以上であるとき、またはインク量(ink%)が45%以上でかつ液滴数(dot%)が80%以上であるとき乾燥時間を5秒とする(乾燥時間5秒 when(ink%≧50)or(ink%≧45 and dot%≧80))
(2)上記条件に当てはまらない場合でかつ、インク量(ink%)が40%以上であるとき、またはインク量(ink%)が35%以上でかつ液滴数(dot%)が55%以上であるとき乾燥時間を4秒とする(乾燥時間4秒 else {when(ink%≧40)or(ink%≧35 and dot%≧55)})
(3)上記条件に当てはまらない場合でかつ、インク量(ink%)が30%以上であるとき、またはインク量(ink%)が25%以上でかつ液滴数(dot%)が75%以上であるとき乾燥時間を3秒とする(乾燥時間3秒 else {when(ink%≧30)or(ink%≧25 and dot%≧75)})
(4)上記条件に当てはまらない場合でかつ、インク量(ink%)が20%以上であるとき乾燥時間を2秒とする(乾燥時間2秒 else {when(ink%≧20)})
(5)上記条件に当てはまらない場合でかつ、インク量(ink%)が15%以上であるときを乾燥時間1秒とする(乾燥時間1秒 else {when(ink%≧15)})
(6)上記条件に当てはまらない場合は乾燥時間を0秒とする。
このように乾燥時間参照テーブル50を上記した条件(1)〜(6)で示したデータ形式により保持する構成の方が保持するデータ量を低減でき有利である。なお、これら条件は、評価領域グループごとに異なってくる。
乾燥時間算出回路48は、上記した乾燥時間参照テーブル50を参照して各評価領域グループの乾燥時間(第1予測乾燥時間および第2予測乾燥時間も含む)を求める。
乾燥時間判定回路49は、乾燥時間算出回路48により求められた評価領域グループの第1予測乾燥時間および第2予測乾燥時間に基づき、該評価領域グループでの乾燥時間を求めるとともに、全評価領域グループの中で最大の乾燥時間を用紙Pの乾燥時間として決定する論理回路である。乾燥時間判定回路49による判定結果は、不図示のレジスタに記録され、該レジスタからCPU20に読み出される。判定結果をレジスタから読み出したCPU20は、この読み出した判定結果に基づき搬送制御部59を制御する。そして搬送制御部59は、CPU20からの制御指示に応じて、この読み出した乾燥時間の間、用紙Pを排紙しないように制御する。
なお、上記では乾燥時間決定部63により乾燥時間を決定する構成について説明したが、乾燥時間決定部63は、乾燥時間の予測を行う場合は、第1予測乾燥時間および第2予測乾燥時間を決定する。乾燥時間の予測を含む、乾燥時間算出処理について以下に図8、9を参照し説明する。
(乾燥時間算出処理)
図8は乾燥時間算出処理の一例を示すフローチャートである。また、図9は、各評価領域グループの乾燥時間予測の一例を示すフローチャートである。
まず評価領域グループ別カウント部62は、インク吐出データ生成部53からインク吐出データ記憶部54へインク吐出データが転送される過程で、転送されてくるインク吐出データを取得し(ステップS11)、インクリメンタ43がドットサイズ毎のドット数をレジスタ41に格納し、逐次、ドットサイズ毎のドット数をインクリメントしていく。そして、レジスタ41に格納されたドット数に基づき、ドットカウンタ44が評価領域グループにおける液滴数をカウントし、液体量カウンタ45が液体量をカウントする(ステップS12)。この評価領域グループの液滴数と液体量のカウントは、4つの評価領域グループごとに対応して設けられている4つの演算回路42により並行して行われるため、処理時間の短縮を図ることができる。
最終の1ラインを除く1ページ分のインク吐出データがインク吐出データ記憶部54へ到達すると(ステップS13でYES)、予測対象値算出回路46が、最終の1ラインを除く1ページ分のインク吐出データから得られた評価領域グループの液滴数および液体量を第1予測対象値として求める。つまり、ステップS13においてYESとなった時点、つまり最終の1ラインを受け付ける前に、レジスタ41にすでに格納されたドット数に基づき、ドットカウンタ44によりカウントされた液滴数と液体量カウンタ45によりカウントされた液体量を予測対象値算出回路46が取得し、第1予測対象値とする。さらに予測対象値算出回路46は、用紙Pにおける最終の1ラインに相当する画素すべてに液滴があり、かつ該液滴のサイズが大滴であるとして補完した、評価領域グループの液体数と液体量を第2予測対象値として求める(ステップS14)。そして、この求めた各評価領域グループの第1予測対象値と第2予測対象値を乾燥時間決定部63に出力する。
乾燥時間決定部63は、各評価領域グループの第1予測対象値と第2予測対象値とに基づき、各評価領域グループの乾燥時間を予測する(ステップS15)。そして、乾燥時間決定部63は、ステップS15で予測した乾燥時間の結果に基づき用紙Pに対する乾燥時間を決定する(ステップS16)。
ここで、ステップ15で実施する各評価領域グループの乾燥時間予測処理について図9を参照して説明する。まず、評価領域グループ別カウント部62から乾燥時間決定部63に第1、第2予測対象値が入力されると、各評価領域グループの第1、第2予測対象値を正規化回路47が正規化して単位面積当たりの液滴数および液体量を求める(ステップS21)。
乾燥時間算出回路48は、正規化された第1予測対象値に基づき、乾燥時間参照テーブル50を参照して乾燥時間を予測する(ステップS22)。さらに乾燥時間算出回路48は、正規化された第2予測対象値に基づき、乾燥時間参照テーブル50を参照して乾燥時間を予測する(ステップS23)。すなわち、乾燥時間算出回路48は、ある評価対象グループについて、第1予測対象値に基づく乾燥時間を乾燥時間参照テーブル50から求める(第1予測乾燥時間)。さらに乾燥時間算出回路48は、第2予測対象値に基づく乾燥時間を乾燥時間参照テーブル50から求める(第2予測乾燥時間)。このように求められた第1予測乾燥時間と第2予測乾燥時間とに基づき、乾燥時間判定回路49が乾燥時間を判定する。具体的には、乾燥時間判定回路49は、第1予測乾燥時間と第2予測乾燥時間とが一致するか否か判定する(ステップS24)。一致する場合(ステップS24において「YES」の場合)、乾燥時間判定回路49は、第1予測乾燥時間または第2予測乾燥時間を、ある評価領域グループで予測される乾燥時間と決定し、不図示のレジスタに記録する。
一方、ステップS24において「NO」の場合、乾燥時間判定回路49は、第1予測乾燥時間よりも第2予測乾燥時間の方が大きく、かつすでに確定している他の評価領域グループの乾燥時間よりも第2予測乾燥時間の方が小さい場合(ステップS25において「YES」)、乾燥時間の予測処理を終了する。すなわち、ある評価対象グループの第2予測乾燥時間は、第2予測対象値に基づき求められた乾燥時間であり、該評価対象グループについて想定される乾燥時間のうち最大となるものである。この第2予測対象値よりも他の評価領域グループの乾燥時間の方が大きい場合、ある評価対象グループの乾燥時間が用紙Pに対する乾燥時間として採用されることはない。このため、ステップS25において「YES」の場合、乾燥時間判定回路49は乾燥時間の予測処理を終了する。一方、ステップS25において「NO」の場合、未受信の最終の1ライン分のデータを取得する(ステップS26)。そして、この最終の1ライン分のデータを合わせてカウントした液滴数および液体量に基づき、乾燥時間算出回路48が乾燥時間を算出する。そして、得られた乾燥時間をある評価領域グループの乾燥時間として不図示のレジスタに記憶して乾燥時間予測処理を終了する(リターン)。
乾燥時間予測処理が終了すると、ステップS16において乾燥時間判定回路49は、予測された各評価領域グループの乾燥時間の中で最大となるものを、用紙Pに対する乾燥時間として決定する。
以上のように、本実施の形態に係るインクジェット式プリンタ101では、乾燥時間を求める際に、最終の1ライン分の液滴吐出データを受け付ける前に、乾燥時間決定部63が各評価領域グループにおける乾燥時間を予測し、該予測された乾燥時間から用紙Pに対する乾燥時間を決定することができる。このように、演算回路42が最終の1ライン分の液滴吐出データを受け付ける前に乾燥時間決定部63が乾燥時間を決定することができるため、用紙Pに対する乾燥時間の算出にかかる処理時間を早くすることができる。
(画像形成後の用紙の搬送)
次に、用紙P上に画像が形成され、用紙Pに対する乾燥時間が決定された後のインクジェット式プリンタ101の構成、すなわち画像形成後の用紙Pの搬送について説明する。
図2に示すように演算制御装置100では、制御回路90が搬送制御部59としての機能する回路を更に備えている。
搬送制御部59は、CPU20からの制御指示に応じて、搬送経路5に沿って用紙Pが搬送されるように、給紙ユニット103、各送給ローラ対13、レジストレーションローラ対4、各搬出ローラ対28、および搬送ユニット16を制御する。具体的には、搬送制御部59は、給紙ユニット103の給紙ローラ12を駆動する給紙モータ31、各送給ローラ対13およびレジストレーションローラ対4を駆動する送給モータ32、各搬出ローラ対28を駆動する搬出モータ34、ならびに搬送ユニット16の搬送ローラ対8を駆動する搬送モータ33の駆動を制御する。搬送制御部59は、上記したように、乾燥時間決定部63により用紙Pに対する乾燥時間が決定されると、決定された時間だけ搬出ローラ対28により搬出路60を通じて用紙Pが排紙されないように搬出モータ34を制御する。
(インク吐出データに基づくインク吐出処理)
次に、CPU20からの制御指示に応じて、インク吐出データに基づきインク吐出処理を実施するヘッド制御部51について上記した図2を参照して説明する。
ヘッド制御部51は、記録ヘッド1aのアクチュエータを制御する記録ヘッド制御部(液滴吐出ヘッド制御部)51aと、処理液ヘッド1bのアクチュエータを制御する処理液ヘッド制御部51bと、を有している。記録ヘッド制御部51aは、インク吐出データ記憶部54に記憶されたインク吐出データに基づいて、搬送される用紙Pへ向けてインクを吐出するように、ドライバICであるヘッド駆動回路30aを介して記録ヘッド1aのインクの吐出動作を制御する。処理液ヘッド制御部51bは、不図示の処理液吐出データ記憶部に記憶された処理液吐出データに基づいて、用紙Pにおけるインクの着弾位置と処理液の着弾位置とが対応するように、ドライバICであるヘッド駆動回路30bを介して処理液ヘッド1bの処理液の吐出動作を制御する。なお、本実施形態においては、ヘッド1から吐出するインク又は処理液の量をゼロ,小滴,中滴,大滴の4段階で変化させることができる。
(変形例)
なお、本実施の形態に係るインクジェット式プリンタ101では、乾燥時間決定部63が用紙Pについての乾燥時間を求め、該乾燥時間だけ用紙Pを排紙させない構成であった。また、乾燥時間決定部63は、最終の1行の液滴吐出データを受信する前に、各評価領域グループの乾燥時間を予測し、予測される乾燥時間の中で最大のものを用紙Pに対する乾燥時間と決定する構成であった。しかしながら、このような構成に限定されるものではない。例えば、乾燥時間決定部63は、各評価領域グループについてすべての液滴吐出データを受信した上で、乾燥時間を算出し、算出した乾燥時間の中で最大のものを用紙Pに対する乾燥時間と決定する構成であってもよい。しかし、本実施の形態に係るインクジェット式プリンタ101のよう、最終の1行の液滴吐出データを評価領域グループ別カウント部62の演算回路42が受信する前に、すでに受信した液滴吐出データから乾燥時間を予測する構成の方が乾燥時間の算出にかかる処理時間を短縮することができる点で有利である。
また、本実施の形態に係るインクジェット式プリンタ101では、図5に示すように、各評価領域グループ(全ベタ評価領域グループ、四隅評価領域グループ、縦評価領域グループ、横評価領域グループ)ごとに演算回路42が設けられた構成であった。しかしながらこのような構成に限定されるものではなく、例えば、図10に示すように、制御回路90は、ドットカウンタ44および液体量カウンタ45を1つだけ備え、各評価領域グループについて、総ドット数および総液体量をカウントする構成としてもよい。すなわち、各評価領域グループ全体に対して、総ドット数および総液体量のカウントを、1組のドットカウンタ44および液体量カウンタ45(カウンター回路)のみで行う構成としてもよい。このように構成した場合、制御回路90の回路構成の小型化を図ることができる。また、このように構成される場合、予測対象値算出回路46も複数の評価領域グループそれぞれに対して設けられるのではなく、図10に示すように制御回路90において1つだけ設けた構成とすることができる。
また、本実施の形態に係るインクジェット式プリンタ101では、評価領域グループ別カウント部62は、評価領域グループに対応してレジスタ41a〜41d、および演算回路42a〜42dを備える一方、乾燥時間決定部63は1つだけ備える構成であった。しかしながらこのような構成に限定されるものではなく、乾燥時間決定部63も評価領域グループに対応してそれぞれ4つ備えられる構成であってもよい。しかしながら、本願のように、乾燥時間決定部63が1つ備える構成の方が回路構成を小さくできる点で有利である。
また、本実施の形態に係るインクジェット式プリンタ101では、乾燥時間決定部63の乾燥時間判定回路49が、第1予測乾燥時間と第2予測乾燥時間とが一致する場合に、両者のうちのいずれかを乾燥時間に決定する。一方、一致しない場合は、まだ受け付けていない最終の1ライン分の液滴吐出データを評価領域グループ別カウント部62が受け付け、カウントした液滴量および液体量に基づき乾燥時間を求める構成であった。また、第1予測乾燥時間と第2予測乾燥時間とが一致しない場合において、第2予測乾燥時間がすでに求められている他の評価領域グループの乾燥時間よりも短くなる場合は乾燥時間の算出を終了する構成であった。
しかしながら、第1予測乾燥時間と第2予想乾燥時間との差が所定範囲内である場合は、第1予測乾燥時間または第2予測乾燥時間を乾燥時間として決定するように構成してもよい。そして、第1予測乾燥時間と第2予測乾燥時間との差が所定の範囲を超える場合、まだ受け付けていない最終の1ライン分の液滴吐出データを評価領域グループ別カウント部62が受け付け、カウントした液滴量および液体量に基づき乾燥時間を求める構成としてもよい。あるいは、第1予測乾燥時間と第2予測乾燥時間との差が所定の範囲を超える場合、乾燥時間判定回路49は両者の平均値を乾燥時間として決定する構成としてもよい。すなわち、乾燥時間決定部63は、評価領域グループに対応する最終の液滴吐出データを受け付ける前に、演算回路によって求められた第1予測対象値に基づき、評価領域グループにおける乾燥時間を予測する。そして、この予測した乾燥時間(第1予測乾燥時間)を参照して評価領域グループの乾燥時間を決定するように構成されていればよい。このように構成される場合、演算回路42が最終の液滴吐出データを受け付ける前に乾燥時間決定部63が乾燥時間を決定することができる。したがって、インクジェット式プリンタ101の演算制御装置100は乾燥時間の算出にかかる処理時間を早くすることができる。
また、本実施の形態に係るインクジェット式プリンタ101では、全評価領域グループに対して乾燥時間の予測処理を実施する構成であったが、1ページ分のインク吐出データすべてを受信できないと乾燥時間を求めることができない評価領域グループのみについて乾燥時間の予測処理を行う構成であってもよい。すなわち、1ページ分のインク吐出データすべてを受信することなく途中で、乾燥時間を求めることができる評価領域グループに対しては乾燥時間の予測処理を実施しない構成としてもよい。
また、本実施の形態に係るインクジェット式プリンタ101は、上記したように用紙Pに対する乾燥時間を算出する構成であったが、特許文献1に示すように用紙Pのカール度を予測する構成と組み合わせてもよい。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。