以下、図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔本発明に係るインクジェット記録装置(画像記録装置)の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド(記録手段)12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙 (被記録媒体)16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部(読取手段)24と、印字済みの記録紙16(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図5中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に記録紙16の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される記録紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを記録紙搬送方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図3(a) 〜(c) 及び図4)、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、記録紙搬送方向という。)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(即ち、1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字された画像を読み取り、各印字ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
本インクジェット記録装置10の吐出異常検出では、画像データに基づいて画像の中から予め検出領域が抽出され、抽出された領域内の画像の読取結果から各ヘッド(各ヘッドが有するノズル)の吐出判定を行うように構成されている。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔ヘッドの構造〕
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3(a) は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。また、図3(c) は印字ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(b) 中の4−4線に沿う断面図)である。
記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3(a) 〜(c) 及び図4に示したように、インク滴が吐出されるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
即ち、本実施形態における印字ヘッド50は、図3(a) ,(b) に示すように、インクを吐出する複数のノズル51が記録紙搬送方向と略直交する方向に記録紙(印字媒体)16の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
また、図3(c) に示すように、短尺の2次元に配列された印字ヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、印字媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
図4に示すように、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
圧力室52の天面を構成している加圧板 (振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53は図3(b) に示すように、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP)で直線状に配列されているものとして説明する。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。例えば、主走査方向にノズル列が1列配置されていてもよいし、副走査方向に複数のノズルを有する配置でもよい。
一般に、インクジェット記録装置では、印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべく不図示のキャップ(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50に前記キャップを当て、吸引ポンプ (不図示)で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク(不図示)へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
〔制御系の説明〕
図5はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部(駆動制御手段)80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。
メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバである。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成したドットデータをヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図5において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ74に記憶される。
メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータ(画像情報)に変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられるドットデータに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。
なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
また、プリント制御部80は、該ドットデータ(画像情報)に基づいて、隣り合うドット間の距離が所定の値以上となる条件を満たす特定濃度領域(ドットが孤立化している領域)を画像内から抽出する抽出部92を備えている。
本インクジェット記録装置10では、抽出部92によって抽出された特定濃度領域が吐出異常検出の対象領域として設定され、印字検出部24を用いて実技画像内の特定濃度領域の画像を構成するドットの読み取りが行われる。
また、プリント制御部80に備えられた吐出異常判断部94では、印字検出部24から得られた読取情報 (読取結果)に基づいてノズル51(ノズル51と圧力室とを連通させる吐出側流路)、圧力室52、供給口54を含んだ供給側流路、駆動素子であるアクチュエータ58などから構成される吐出素子(記録素子)の状態を検出する。
言い換えると、吐出異常判断部94では、該ドットデータと読取情報を比較して当該吐出素子が吐出異常状態であるか否かを判断する。なお、吐出異常検出の詳細は後述する。
図6に示すように、印字検出部24はラインセンサ24A及び光源24Bを含むブロックであり、印字ヘッド50から吐出されたインク滴によって記録紙16に印字された画像 (ドット96)に光源24Bから光を照射させ、この反射光をセンサ部24Aで読み取り、所定の信号処理が施された後に印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる読取情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
図6に示すラインセンサ24Aには、CCD、CMOS、フォトトランジスタなどの受光素子(光電変換素子)が用いられる。また、光源24Bには、LED、赤外線、ハロゲン、メタルハライド、蛍光など、センサ24Aに用いられる受光素子に合わせて様々な光源を適用可能である。
〔第1実施形態〕
次に、本発明の第1実施形態に係る本インクジェット記録装置10に備えられた異常ノズル検出機能について詳説する。なお、本異常ノズル検出機能によって検出可能なノズル異常の種類には、ノズル51が形成されるインク吐出面の汚れ、ノズル51内部のインクの乾燥による増粘、アクチュエータ58の破損及び動作不良、アクチュエータ58へ駆動信号を伝送する配線の断線や駆動回路の素子異常などの電気不良、吐出素子内への異物や気泡の混入、吐出素子内のインクの変質などがある。
図7は、印字ヘッド50から吐出されるインクによって記録紙16上に形成された画像100を示している。この画像100には、隣り合うドットのエッジの間隔がドット径の1/2未満である高濃度領域102(斜線格子で図示)と、隣り合うドットのエッジの間隔がドット径の1/2以上であり、隣り合うドットが互いに干渉しないように孤立化して配置されている低濃度領域104(斜線で図示)と、から構成され、更に、低濃度領域104は隣り合うドットのエッジの間隔がドット径よりも大きい (即ち、ドットがまばらに配置されている)極低濃度領域106(点ハッチで図示)を有している。
図7中、破線で示した符号24は図1及び図2に示した印字検出部であり、符号50は図2及び図3に示した印字ヘッドである。また、矢印線で示した方向は記録紙搬送方向を示している。なお、本明細書において低濃度領域104とは、特に断らない限り低濃度領域104と極低濃度領域106とを合わせた領域を示すこととする。
図8は、図7に示す低濃度領域104内に存在する隣り合う3つのドット110、112、114を示している。各ドットの直径(ドット径)Dは同一であり、ドット110とドット112とのドットエッジ間の距離A1 、ドット112とドット114とのドットエッジ間の距離A2 、ドット110とドット114とのドットエッジ間の距離A3 はそれぞれ、A1 >D/2、A2 >D/2、A3 >D/2の関係を満たしている。
図5に示したプリント制御部80では、システムコントローラ72から送出される画像データからドットデータを生成すると、図8に示すように、抽出部92によって該ドットデータに基づいて隣り合うドットの間隔A1 、A2 、A3 がドット径Dの1/2より大きくなる条件を満たす低濃度領域104を抽出し、この低濃度領域104が吐出異常検出領域として設定される。
印字検出部24では、図7に示した画像100の読み取りを行い、読取情報の中から低濃度領域104の読取情報を選択的に取得する。吐出異常判断部94では、このようにして得られた低濃度領域104の読取情報と低濃度領域104のドットデータとを比較して低濃度領域104に対応したノズルの吐出異常を判断する。
低濃度領域104の読取情報を選択的に取得する態様には、印字検出部24のうち検出領域に対応するセンサのみを動作させて読み取りを行う態様や、印字検出部24の全センサ(有効なセンサ)を動作させて読み取りを行い、低濃度領域104に対応するセンサからだけ検出信号を取得する態様などがあり、何れの態様を用いてもよいし、これ以外の態様を用いてもよい。
なお、低濃度領域104のみを読み取るように印字検出部24を制御してもよい。
また、ドット110の直径がD’(但し、D>D’)となるように、隣り合うドットのドット径が異なる場合には、低濃度領域104を判断するドットエッジ間の距離はD/2としてもよいし、D’/2としてもよい。但し、このドットエッジ間の距離は2つのドットのうち小さい方のドット径D’から算出されるD’/2とすると検出効率を落とさずに済み、好ましい。
このようにして、画像100の中からドットの読み取りに適した低濃度領域104を抽出し、抽出された低濃度領域104内のドットの読取情報を選択的に取得することで、読取情報の処理を高速化することができ、また、読取情報の処理回路(処理部)の構成を簡易化することができる。
また、ここでいう隣り合うドットには異なる色のインクによって形成されるドットを含んでいる。即ち、ドット110はマゼンダ(M)インクによって形成されるドット、ドット112はシアン(C)インクによって形成されるドットである場合、これらがドット径の1/2の間隔となる領域を低濃度領域104として抽出すると、異なる色のインクによって形成されるドット間の干渉を回避して、より正確なドットの読み取りが可能になる。
更に、隣り合うドットに異なる色のドットを含め、色を区別せずにドットを読み取るように構成すると、印字検出部24のセンサ部24AはRGB(カラー)に対応したセンサではなくモノクロ対応のセンサを用いることができ、検出システムの構成及び読取情報の処理を簡易化することができる。
ここで、印字検出部24が有するセンサ部24Aの読取性能について説明する。
本インクジェット記録装置10では、各ドットの直径Dはインク吐出量2plの場合25μm 〜30μm となる。このようなドットを形成する場合、各ドットには2μm 〜3μm 程度の位置ずれが起こり得る。
例えば、各ドットがそれぞれ近づく方向に3μm の位置ずれを生じて、理想的に形成されたドットの間隔よりも6μm 近づいて形成される場合にも、この誤差の最大値6μm に2倍のマージンを見込んで、隣り合うドットのドットエッジ間の距離を12μm (即ち、ドット径の略1/2)として配置すれば、打滴のばらつきが起きても隣り合うドットが重ならずに、それぞれを正確に読み取ることが可能である。
図9には、直径25μm 、ドットエッジ間の距離25μm の黒色インクによるドットが5つ並べられたドット列の中から1つのドットが欠落しているドット列を、1600dpi の解像度を持ったRGBセンサ(ラインセンサ)を有するセンサ部24Aを用いて読み取りを行った読取結果を示す。
図9中、横軸はセンサの画素(画素間ピッチは15.8μm )を示し、たて軸は検出光量(検出信号の値)を示している。また、各画素の検出光量値を結んだ曲線(検出光量曲線)120はRセンサの検出光量、曲線122はGセンサの検出光量、曲線124はBセンサの検出光量を表し、検出光量は8ビットデータ(0〜255のデータ)で表されて、ドットから離れた画素では検出光量の値はほぼ255となり、ドットに近くなると検出光量が減少する傾向にある。
検出光量曲線120、122、124の極小値に対応する画素がドットを検出している画素を示している。但し、センサの検出誤差、センサの画素間ピッチ、ドットエッジ間の距離を考慮すると、検出光量曲線120、122、124の極小値に対応する画素の隣接画素の少なくとも何れか一方がドットを検出している画素に含まれている。
本例では、画素P7 及び画素P8 の検出領域、画素P11及び画素P12の検出領域、画素P14及び画素P15の検出領域、画素P17及び画素P18の検出領域、画素P21及び画素P22の検出領域には、ドットデータ上でドットが配置されている。
図9に示すように、画素P7 及び画素P8 の検出領域、画素P14及び画素P15の検出領域、画素P17及び画素P18の検出領域、画素P21及び画素P22の検出領域では、R画素、G画素、B画素の各検出光量曲線が極小値となる画素或いは極小値となる画素に隣接する画素となっておりドットが検出されていることが分かる。
一方、画素P11及び画素P12では、検出光量曲線120、122、124が極大値となっており、ドットが検出されていないことが分かる。このように、印字検出部24のセンサ部24Aの解像度を1600dpi とすると、直径25μm のドットがドットエッジ間の距離25μm で配列されたドット列における1ドットを正確に読み取ることが可能である。
なお、図9に示した印字検出部24の解像度はあくまでも一例であり、印字検出部24の解像度は検出対象となるドット径、検出対象ドットと隣り合うドット間の距離などによって決められる。
図10は、上述した吐出異常検出の制御の流れを示したフローチャートである。
図10に示すように、吐出異常検出制御が開始されると(ステップS10)、図5のシステムコントローラ72からプリント制御部80へ印字データ(画像データ)が送られ (図10のステップS12)、プリント制御部80では記録紙16(記録媒体)上のドット配置データ(ドットデータ)が生成される(ステップS14)。
このドットデータから隣り合うドットのドットエッジ間の距離が、予め設定されたしきい値(ドット径の1/2)以上である条件を満たすか否か(隣り合うドットのエッジ間距離がしきい値以上の領域が存在するか)が判断される(ステップS16)。
即ち、ステップS16では、ドットエッジ間の距離がドット径の1/2以上という抽出条件に基づいて、ドットデータから領域の抽出が行われる。
前記抽出条件を満たす領域がない場合には(NO判定)、画像の読み取り (吐出異常検出)が行われずに(ステップS18)、本吐出異常制御が終了される(ステップS24)。
一方、ステップS16において、前記抽出条件を満たす領域がある場合には(YES判定)、抽出領域(抽出範囲)が決定され(ステップS19)、この抽出領域が吐出異常検出領域に設定され、印字検出部24によって画像の読み取りが行われた後に、読取結果(読取情報)の中から抽出領域の読取情報が得られる(ステップS20)。この抽出領域の読取情報は、所定の信号処理を施された後に、図5に示した吐出異常判断部94で各ノズルの状態が検出され(図10のステップS22)、本吐出異常検出の制御は終了される(ステップS24)。
ここで、ステップS22において吐出異常と判断されたノズルの処理の一例を示す。吐出異常と判断されたノズル(吐出異常ノズル)では、駆動が停止され、該吐出異常ノズルの隣接ノズルにて吐出異常ノズルの補正吐出を行うように制御される。
隣接ノズルによる補正吐出には、吐出回数を増やしてドットサイズを所定のサイズより大きくする態様や、隣接ノズルから吐出されるインクの吐出量を増やして所定のサイズより大きくする態様があり、これらの補正吐出によって特定のノズルの吐出異常に起因するすじやむらの発生を抑えることができる。
また、吐出異常が発生したノズルが使用された可能性のあるプリントを仕分けて、画像品質の劣化したプリントを排除し、また、印字インターバルでは、吐出異常ノズルを対象として予備吐出、吸引などのメンテナンス動作 (回復動作)を実行し、吐出異常ノズルの回復を図るように制御される。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、画像から生成されるドットデータに基づいて、当該画像の中から低濃度領域104を抽出し、印字検出部24から得られる読取情報の中から低濃度領域104の読取情報を選択的に取得し、低濃度領域104の読取情報から低濃度領域104に対応するノズルの吐出異常を判断するように構成されるので、隣り合うドットや他色のドットとの干渉を回避して、好ましいドットの読み取りが可能であり、正確に吐出異常ノズルを判断することができる。また、低濃度領域104の読取情報を選択的に取得するので、読取情報の処理を高速化でき、また、処理回路(データ処理手段)の構成を簡略化することができる。
なお、同一画像の複数枚プリントが行われる際には、特定のノズルしか吐出異常検出が行われず、また、特定のノズル使用頻度が低くなり吐出異常の原因となり得るので、数枚ごとに画像を回転 (例えば、上下反転)させるように制御して、ノズルの検出頻度及び使用頻度を分散させる態様が好ましい。
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。
本実施形態に係る吐出異常検出では、上述した第1実施形態において、ドットエッジ間の距離がドット径の1/2未満である高濃度領域102を構成するドットの一部又は全部を移動させてドットのエッジ間の距離がドット径の1/2以上の条件を満たすようになる場合(高濃度領域の一部又は全部を低濃度領域に変更することができる場合)には、専用の画像処理テーブルを用いて隣り合うドットのエッジ間の距離がドット径の1/2以上になるようにドット配置が変更され、新たに低濃度領域となった領域(低濃度領域に変更された領域)に対応するノズルの吐出異常が判断される。
なお、ドットの移動に代わりドットを削除してもよいし、ドットの移動とドットの削除を併用してもよい。
即ち、図11(a) に示すように、同一の直径Dを有し、外縁部(エッジ)が接する(ドットのエッジ間の距離がほぼゼロの)位置関係を有する3つのドット202、204、206は、上述した第1実施形態ではドットエッジ間の距離がドット径の1/2以下となる高濃度領域102であり、吐出異常検出領域外とされる。
しかしながら、本実施形態では、図11(a) に示す3つのドット202、204、206のうち一部又は全部を移動させることで、図11(b) に示すように、それぞれのドットエッジ間の距離A11、A12、A13が、A11>D/2、A12>D/2、A13>D/2の条件を満たすようにドット配置が変更可能であるか否かが判断され、ドット配置が変更可能である場合には、図11(a) に示すほぼ接するように配置された3つのドットを、図11(b) に示すドットエッジ間の距離がドット径の1/2以上となるように、ドット配置が変更される。同様に、ドット210、212、214及びドット220、222、224にも図11(a) に示すドット配置から図11(b) に示すドット配置へ変更される。
また、ドット配置を変更することで距離が近くなるドットについてもドットエッジ間の距離を考慮する必要がある。即ち、ドット202とドット214との距離A31、ドット214とドット222との距離A32、ドット202とドット222との距離A33もD/2以上になるように、各ドットエッジ間の距離が決められる。なお、図11(b) に示す各ドットのドットエッジ間の距離は同一距離でもよいし、異なる距離でもよい。
ここで、ドット配置の変更と使用ノズルの関係について説明する。図12(a) 、(b) は、印字ヘッド50内のノズル51と図11(a) 、(b) に示したドットとの関係を示す図である。なお、図を簡略化するために、図12(a) 、(b) に示す印字ヘッド50は記録紙16の幅方向に沿って所定のノズル間ピッチ(図3に示すノズル間ピッチP)で並べられた1列のノズル列を有するものとする。また、便宜上、図12(a) 、(b) に示すノズル51は同図の上からノズル51-1、51-2、…、ノズル51-8とする。
図11(a) に示すドット202はノズル51-6から吐出されるインクによって形成され、ドット204、206はノズル51-7から吐出されるインクによって形成されるようにドットとノズルとの関係が決められている。
図11(a)に示すドット配置から図11(b) に示すドット配置へ変更すると、ドット202を形成するインクを吐出するノズルがノズル51-6からノズル51-5へ変更され、同様に、ドット210及び220を形成するインクを吐出するノズルがノズル51-2からノズル51-1へ変更される。なお、ドット配置の変更に伴い、打滴タイミングも適宜変更される。
上述したようにドット配置を変更して、新たに吐出異常検出領域を増やすことで被検出ノズル数を増やすことができ、更に、ドット配置の変更に対応して使用予定のないノズルを使用することで、使用予定のないノズルの吐出異常検出が可能になる。
本実施形態では、図7に示した高濃度領域102に対してドット配置変更可否を判断したが、もちろん、第1実施形態に示す低濃度領域104に対してのドット配置を変更する画像処理テーブルを適用し、使用予定のないノズルを使用してドットを形成するようにドット配置を変更してもよい。
なお、画像品質への影響を考慮すると、ドット配置を変更する領域は、主要被写体の画像位置から外れる領域や画像の先端部近傍及び画像の後端部近傍を優先的に選択する態様が好ましい。また、ドット配置変更に伴うドットの移動量の最大値を予め設定しておくことが好ましい。このドット移動量の最大値は画像の内容に応じて複数設けてもよい。
一方、ドット配置を変更することで画像品質に影響を与えないように、単位面積あたりのドット被覆率(単位面積あたりのドット占有面積、単位面積あたりのドット数)が小さく、ドット配置を変更する余裕がある低密度領域104を予めドットデータから求めておき、この低密度領域104を対象としてドット配置を変更するように制御する態様が好ましい。
低密度領域は、単位面積あたりのドット被覆率が50%以下の領域としてもよいし、ドット被覆率に代わり、ドットデータから得ることができる記録密度など他のパラメータを適用してもよい。なお、本例では画像密度は2400dpi であり、前記単位面積には100画素×100画素が適用される。
ここで、図13にはドット配置の変更処理を実行する処理ブロック(ドット配置変更処理部)の構成を示す。
図13に示すように、オリジナルのドットデータ300に基づいて、図5に示した抽出部92では、ドットエッジ間の距離がドット径の1/2以上となる条件を満たす領域を抽出すると共に、ドットエッジ間の距離がドット径の1/2未満となる領域について、ドット配置を変更して各ドットのドットエッジ間の距離がドット径の1/2以上の条件を満たすようにドットの移動が可能な領域が抽出される。
このドットの移動が可能な領域では、画像処理テーブル設定部304によって設定された画像処理テーブルを用いて各ドットのドットエッジ間の距離がドット径の1/2以上になるようにドット配置が変更され、配置変更ドットを含むドットデータ306が生成される。
なお、ドット配置の変更処理を行う画像処理テーブルを予め複数備えて画像処理テーブル記録部308に記録しておき、オリジナルドットデータや抽出された低密度領域に適した画像処理テーブルを読み出すように構成してもよい。
図14は、本実施形態に係る吐出異常検出制御の流れを示すフローチャートである。図14中、図10と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
第2実施形態に係る吐出異常検出制御では、図10に示すステップS18に代わり、図5、図13に示す抽出部92において、ドットエッジ間の距離がステップS16の抽出条件(ドットエッジ間の距離がドット径の1/2以上)を満たすように、ドット配置の変更が可能か否かを判断し(ステップS100)、ドット配置を変更しても前記抽出条件を満たさない(ドット配置変更不可能な)場合(NO判定)、吐出異常検出は行われず(ステップS102)、本吐出異常検出制御が終了される(ステップS24)。
一方、ステップS100において、ドット配置を変更すると前記抽出条件を満たす、ドット配置が変更可能な場合(YES判定)、図13に示した画像処理テーブル設定部304によって設定される画像処理テーブルを用いて、ドットデータ上でドット配置の変更処理が施されたドットデータが生成され(ステップS104)、このドット配置の変更処理が施されたドットデータに基づいて抽出領域(抽出範囲)が決定され(ステップS105)、この抽出領域を吐出異常検出領域として、吐出異常検出が実行される。(ステップS106)。
その後、ステップS22に進み、ステップS106において得られた読取情報は、所定の信号処理を施された後に、図5に示した吐出異常判断部94で各ノズルの状態が判定され、本吐出異常検出制御は終了される(ステップS24)。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、ドットを移動させることで抽出条件(ドットエッジ間の距離がドット径の1/2以上)を満たすようにドット配置を変更できる領域では、専用の画像処理テーブルを用いてドット配置が変更されるので、ドットエッジ間の距離がドット径の1/2未満となる領域でもドット配置を変更することで当該領域に対応したノズルの吐出異常検出を実行することができる。
また、ドット配置を変更させる際に、使用予定のないノズルを使用するように制御すると、使用予定のないノズルの吐出異常検出を行うことができて好ましい。
〔第3実施形態〕
次に、図15(a) 、(b) を用いて、本発明に係る第3実施形態を説明する。
図15(a) は、図7に示す低濃度領域104に3つのドット400、402、404が配置されている状態を示し、図15(b) は、図15(a) に示した低濃度領域104内の目立たない位置(画像への影響が極めて少ない範囲)に検出用ドット406を配置した状態を示している。
検出用ドット406は、ドット400、402、404との距離がドット径の1/2以上となるように配置されている。
このようにして、低濃度領域104の目立たない位置に検出用ドット406を形成させると、1つの画像内で吐出異常検出を行うノズルの数を増やすことができる。なお、画像及びドットの読み取りに影響しない範囲で検出用ドット406を複数追加してもよい。
また、検出用ドット406の大きさはその画像内(又は、検出用ドットが追加された領域内)にある最小サイズのドットと同じサイズにすることが好ましい。更に、検出用ドット406には何れの色のインクを用いてもよい。
なお、本実施形態と上述した第2実施形態とを組み合わせて、図7に示す低濃度領域104に検出用ドット406を追加できるようにドットデータを変更する態様も可能である。
〔第4実施形態〕
次に、本発明に係る第4実施形態について説明する。本例における吐出異常検出では、各ノズルの検出履歴データ、吐出履歴データ(ノズルの使用履歴データ、ノズル休止時間データ等)から検出対象ノズルが選択される。
図16は、本例の吐出異常検出を行うブロック(吐出異常検出部)の構成を示すブロック図である。図16に示すように、オリジナルドットデータ420は、各ノズルの吐出異常検出履歴データや吐出履歴データが記録されているデータ記録部(記録素子情報格納手段)422に記録されているデータに基づいて設定された検出ドット選定フィルタ424を用いて、検出ドットを含むドットデータ426に変換される。
複数の検出ドット選定フィルタを予め準備しておき、これらを検出ドット選定フィルタ記録部に記録し、吐出履歴データ等に応じて検出ドット選定フィルタを選択するように構成してもよい。
データ記録部422には、上述した検出履歴データ、ノズル使用履歴、ノズルの休止履歴の他に、各ノズルの故障履歴(吐出異常発生履歴)各ノズルのローカリティなどを記録してもよい。
また、データ記録部422は、図5に示したメモリ74や画像バッファメモリ82など他のメモリ(記録手段)と兼用してもよい。データ記録部422に記録されるデータは、電源オン時や1つの画像の記録終了時など、所定のタイミングで更新されることが好ましい。
図17は、本実施形態に係る吐出異常検出制御の流れを示すフローチャートである。なお、図17中、図10及び図14と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図17に示すように、吐出異常検出制御が開始され、(ステップS10)、ステップS12、ステップS14によってドットデータが生成される。一方、図16に示したデータ記録手段422に記録されている検出履歴データ、吐出履歴データ等が参照され(図17のステップS100)、検出対象となる被検出ノズルが選定される(ステップS102)。
生成されたドットデータに基づいて、ステップS102で選定された被検出ノズルが画像印字に用いられるノズルに含まれるか否かが判断され(ステップS104)、被検出ノズルが画像印字に使用するノズルに含まれる場合には(YES判定)、ステップS16に進む。
一方、ステップS104において被検出ノズルが画像印字に使用するノズルに含まれない場合には(NO判定)、ステップS16の抽出条件に基づいて、被検出ノズルに対応するドット(被検出ドット)の位置にドット(例えば、図15に示す符号406)を追加することができるか否かが判断される(ステップS110)。
ステップS110において、被検出ドットの位置にドットを追加できないと判断されると(NO判定)、ステップS120に進み、ステップS16の抽出条件に基づいて、被検出ノズルの近隣ノズルに対応するドットを被検出ドットの位置に移動可能であるか否かが判断される。
ステップS120において、被検出ノズルの近隣ノズルに対応するドットを被検出ドットの位置に移動可能でないと判断されると(NO判定)、被検出ノズルに対応するドットは吐出異常検出領域に設定されず、このドットの読み取りが行われず、ステップS24に進み、本吐出異常検出制御は終了される。
一方、ステップS120において、被検出ノズルの近隣ノズルに対応するドットを被検出ドットの位置に移動可能であると判断されると(YES判定)、ドットデータ上でドットの移動処理が施され(ステップS124)、ステップS16に進む。
また、ステップS110において、被検出ドットの位置にドットを追加できると判断されると(YES判定)、ドットデータ上で被検出ドットの追加処理が施され(ステップS112)、ステップS16に進む。
ステップS16では、オリジナルのドットデータ及びドットの移動処理及び追加処理が施されて生成されたドットデータに基づいて、抽出条件(被検出ドットと隣り合うドットとのドットエッジ間の距離がドット径の1/2以上)を満たすか否かが判断され、前記条件を満たさない場合(NO判定)、被検出ドット周辺のドット配置を変更して前記条件を満たすか否かが判断される(ステップS130)。
なお、ステップS112及びステップS124において、ドットの追加処理、移動処理が施された後に生成されたドットデータは、ステップS16の抽出条件を満たすようにドットデータが形成されている。
ステップS130において、前記条件を満たさない場合(NO判定)、吐出異常検出が行われずに(ステップS132)、ステップS24に進み、本吐出異常検出制御は終了される。
一方、ステップS130において、前記抽出条件を満たす場合(YES判定)、ドット配置の変更処理が反映されたドットデータが生成され(ステップS134)ステップS20に進み、被検出ドットの読み取り、読取情報に基づいた被検出ノズルの状態判定が行われ(ステップS24)、ステップS24進み、本吐出異常制御は終了される。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、検出対象ノズルをノズルの使用履歴などのノズル情報から選択し、選択されたノズルの吐出異常検出を行うように制御されるので、異常の起こりやすいノズルを効率的に検出できる。
本実施形態では、印字ヘッドに備えられたノズルから吐出されるインクによって記録メディア上に画像を記録するインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、LEDなどノズル以外の記録素子を備えた画像記録装置(LED電子写真プリンタ等)に広く適用可能である。
10…インクジェット記録装置、24,24A,24B…印字検出部、50…印字ヘッド、51…ノズル、72…システムコントローラ、74…メモリ、80…プリント制御部、82…画像バッファメモリ、90…プログラム格納部、92…抽出部、94…吐出異常判断部、104…低濃度領域、304…画像処理テーブル設定部、424…検出ドット選定フィルタ