JP3820506B2 - 画像記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は画像記録装置に係り、特に複数の画像記録素子を有する記録ヘッドによって印字媒体に画像を記録するインクジェット記録装置その他の画像記録装置における画像記録素子の記録不良を検出する方法及びその記録不良を補う対処技術に関する。
インクジェット方式の記録装置は、多数のノズルを配列させたインクジェットヘッド(印字ヘッド)を有し、この印字ヘッドと記録紙を相対的に移動させつつノズルからインクを吐出することにより、記録紙上に画像を形成する。多数のノズルのうち一部のノズルについて、何らかの原因でインクが吐出されなくなったり、インクの吐出量(記録紙上に打滴されるドットサイズ)や打滴位置が不適切(飛翔方向が不適切、ノズル位置が不均一)になったりするなどの吐出不良が発生する場合がある。かかる不適切ノズルの存在は、記録画像の品質を低下させる原因となるためその対策が必要である。
従来、ノズルの吐出不良を検出する方法として、(1) テストパターンのプリントを測定する方法、(2) 実技のプリント(実際にプリント出力が要求された目的の画像を印刷したもの)を測定する方法、(3) ヘッド内部の吐出時特性を測定する方法などが知られている。
特許文献1は、上記(2) の方法の一例を開示しており、打滴画像データと本来記録されるべきデータとを比較して吐出不良によるドット欠けを補正している。
特開平5−301427号公報
しかしながら、テストパターンのプリントを測定する方法は、実際にプリントすべき目的の画像とは別に専用のテストパターンを印刷する必要がある。また、簡易なパターンでは測定位置誤差の影響を受け、不適切ノズルを特定し難いという問題がある。更に、テストパターンを撮像するラインセンサの出力ばらつきの影響を受けるという問題もある。
実技プリントを測定する方法の場合、測定対象となる実技のプリントは一般には複雑な画像であるため、ノズル不良による画像欠陥であるか本来の画像内容であるのかの判断が難しく、測定位置誤差の影響を受けて不適切ノズルを正確に特定し難いという問題がある。また、上記テストパターンの場合と同様に、ラインセンサのばらつきの影響を受ける。
特許文献1によれば、記録ヘッドのノズルのピッチと同じピッチで配置された光電変換素子によって記録紙上のドットを読み取り、インクの不吐出が発生していないかどうかを検知しているが、この方法では画像が高密度になった場合、周囲とのセンサ出力差が小さくなるので、ドットごとの個別比較では正確に不適切打滴を特定できないという欠点がある。特に、高解像度の画像記録に用いられる高密度ノズルの場合、ラインセンサの各画素の観測エリアがノズルピッチ以上となるため、記録紙の搬送誤差なども含めると、更に不適切吐出ノズルの特定が困難になる。
また、ヘッド内部の吐出時特性を測定する方法は、不適切ノズルを正確に特定できるが、不適切の程度がわかりにくいという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、記録不良となる不適切な画像記録素子とその状態を正確に特定することができる画像記録装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために本発明に係る画像記録装置は、印字媒体の全幅に対応する長さにわたって複数の画像記録素子が配列されたフルライン型の記録ヘッドからなる印字手段と、前記記録ヘッド及び前記印字媒体のうち少なくとも一方を前記印字媒体の幅方向と略直交する方向に搬送して前記記録ヘッドと前記印字媒体を相対移動させる搬送手段と、前記記録ヘッドによって前記印字媒体に記録された画像を読み取る複数のセンサが前記印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列された画像読取手段と、前記複数のセンサから得られる複数の読取画素データに基づき、各センサについて当該センサの読取画素データとその近隣センサから得られる読取画素データ及び本来記録されるべき画像から期待される期待読取データを用いて、近隣のセンサから得られるデータ値の変化を評価する演算を行い、その演算結果に基づいて記録不良の画像記録素子の特定と前記記録不良の画像記録素子の不良状態を特定する不適切画像記録素子特定手段と、記録されるべき画像のデータから生成されるドットデータに基づいて前記期待読取データを作成する期待読取データ生成手段と、を備え、前記期待読取データ生成手段は、前記ドットデータにフィルタリング処理を施すフィルタ処理手段を含み、前記フィルタ処理手段は、ドットサイズの種類に対応した複数種類の係数を有するフィルタを用いて前記ドットデータにフィルタリング処理を施すフィルタ処理手段であって、前記ドットデータが示すドットサイズに応じて前記フィルタの係数が選択的に決定されるフィルタ処理手段であることを特徴とする。
本発明によれば、印字媒体の相対的な送り方向(副走査方向)と略直交する方向(主走査方向)の印字媒体の全幅をカバーする画像記録素子列を有したフルライン型の記録ヘッドに対して、印字媒体を副走査方向に相対移動させながら記録ヘッドの画像記録素子の作用によって印字媒体上に画像を形成する。印字された画像を画像読取手段によって読み取ると、当該画像読取手段の画素を構成している各センサ(光電変換センサ)から受光量に応じた信号が出力され、主走査方向について1ライン分の読取画素データ(実測に係るデータ)が得られる。その一方、本来記録されるべき画像の情報から当該画像の読取データとして期待される期待読取データを求めておき、この期待読取データと、実際に測定された前記読取画素データとを使用した演算を行い、演算結果に基づき記録不良の画像記録素子(不適切画像記録素子)を特定する。このとき、各センサの読取画素データを個別に評価するのではなく、それぞれ近隣の複数のセンサから得られる読取画素データを見比べながらデータ値の変化(相関)を考慮して評価を行う。
これにより、センサの数(画像読取手段の画素数)と画像記録素子数とが一致しない場合や、センサの位置と画像のドット位置(すなわち、主走査方向に投影された画像記録素子の中心位置)とが一致していない場合、或いは、主走査方向に投影されたセンサの配列ピッチと主走査方向に投影された画像記録素子の配列ピッチとが異なっている場合などについても、不適切画像記録素子の位置を正確に特定することができる。
また、各センサから得られる個々の読取画素データのみならず、それぞれのセンサの近隣センサから得られる読取画素データを含む複数のデータ値を利用して不適切画像記録素子を特定するため、センサの個別のばらつきの影響を低減することができ、精度のよい判定が可能であるとともに、ドット位置のばらつき(記録位置ズレ)などの記録不良についても複数の画素データから効率的に判定することができる。
なお、本明細書において「印字」という用語は、文字の形成のみならず、文字を含む広い意味での画像を形成する概念を表すものとする。
「フルライン型の記録ヘッド」は、通常、印字媒体の相対的な送り方向(相対移動方向)と直交する方向に沿って配置されるが、相対移動方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿って記録ヘッドを配置する態様もあり得る。また、記録ヘッドにおける画像記録素子の配列形態は、1列のライン状配列に限定されず、複数列からなるマトリックス配列でもよい。更には、印字媒体の全幅に対応する長さに満たない画像記録素子列を有する短尺記録ヘッドユニットを複数個組み合わせることによって、これらユニット全体として印字媒体の全幅に対応する画像記録素子列を構成する形態もあり得る。
「印字媒体」は、記録ヘッドによって印字を受ける媒体(被画像形成媒体、被記録媒体、受像媒体など呼ばれる得るもの)であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
「搬送手段」は、停止した(固定された)記録ヘッドに対して印字媒体を搬送する態様、停止した印字媒体に対して記録ヘッドを移動させる態様、或いは、記録ヘッドと印字媒体の両方を移動させる態様の何れをも含む。
前記不適切画像記録素子特定手段における演算の一例として、前記読取画素データに基づく実測データと前記期待読取データとの比較を行う態様がある。
本発明に係る画像記録装置は、記録されるべき画像のデータから生成されるドットデータに基づいて前記期待読取データを作成する期待読取データ生成手段を備え、前記期待読取データ生成手段は、前記ドットデータにフィルタリング処理を施すフィルタ処理手段を含むことを特徴とする。
この場合更に、前記フィルタ処理手段は、ドットサイズの種類に対応した複数種類の係数を有するフィルタを用いて前記ドットデータにフィルタリング処理を施すフィルタ処理手段であって、前記ドットデータが示すドットサイズに応じて前記フィルタの係数が選択的に決定されるフィルタ処理手段であることを特徴とする態様が好ましい。
ドットサイズの違いに応じて適切な係数が選択されることにより、記録するドットのサイズが変更された場合でも、正確に不適切画像記録素子を特定することが可能である。なお、かかるフィルタの係数は、各センサの読み取り範囲に含まれるドットの面積を反映させて決定することが好ましい。
また、本発明の他の態様に係る画像記録装置は、印字媒体の全幅に対応する長さにわたって複数の画像記録素子が配列されたフルライン型の記録ヘッドからなる印字手段と、前記記録ヘッド及び前記印字媒体のうち少なくとも一方を前記印字媒体の幅方向と略直交する方向に搬送して前記記録ヘッドと前記印字媒体を相対移動させる搬送手段と、前記記録ヘッドによって前記印字媒体に記録された画像を読み取る複数のセンサが前記印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列された画像読取手段と、前記複数のセンサから得られる複数の読取画素データに基づき、各センサについて当該センサの読取画素データとその近隣センサから得られる読取画素データ及び本来記録されるべき画像から期待される期待読取データを用いて演算を行い、その演算結果に基づいて記録不良の画像記録素子を特定する不適切画像記録素子特定手段と、記録されるべき画像のデータから生成されるドットデータに基づいて前記期待読取データを作成する期待読取データ生成手段と、を備え、前記期待読取データ生成手段は、前記ドットデータにフィルタリング処理を施すフィルタ処理手段を含み、前記フィルタ処理手段は、ドットサイズの種類に対応した複数種類の係数を有するフィルタを用いて前記ドットデータにフィルタリング処理を施すフィルタ処理手段であって、前記ドットデータが示すドットサイズに応じて前記フィルタの係数が選択的に決定されるフィルタ処理手段であることを特徴とする。
本発明の他の態様は、前記記録ヘッドに対する前記印字媒体の相対移動方向について所定の長さ以上の幅を持つ単位で前記相対移動方向に前記読取画素データを積分する積分演算手段と、前記積分演算手段で求めた積分データから前記相対移動方向と略直交する主走査方向についての少なくとも2箇所についてその近傍の画像特性値を前記期待読み取りデータの積分値の画像特性値と比較し、前記2箇所に対応するセンサの位置と前記期待読み取りデータの位置関係を特定する画像位置特定手段と、前記画像位置特定手段により見出された前記2箇所に対応するセンサ位置と画像記録素子位置との対応付けを行い、各センサ位置と画像記録素子位置の対応関係を把握する位置関係把握手段と、前記位置関係把握手段で把握された前記各センサ位置と画像記録素子位置の対応関係に基づいて、補間演算により各センサ位置でのセンサ読み取り期待値を求めるセンサ読取期待値算出手段と、を備えたことを特徴とする。
かかる態様によれば、センサ位置と画像記録素子位置との位置関係の対応付けが行われ、主走査方向に投影される画像記録素子列方向の位置ズレを補正することができる。
例えば、画像両端に対応するセンサ位置と画像記録素子位置との対応付けを行い、各センサ位置と画像記録素子位置の対応関係を把握する態様がある。
補間演算には様々な手法を適用できるが、一例として、各センサについて、センサ位置から近隣画像記録素子までの主走査方向の距離の逆数を重み付け係数として、近隣画像記録素子位置の期待読み取り値の重み付け平均を算出することにより、各センサ位置でのセンサ読み取り期待値を求める態様がある。
本発明の更に他の態様は、各センサから得られる読取画素データを前記相対移動方向に積分して得られる積分値と、前記センサ読取期待値算出手段により求められたセンサ読み取り期待値を前記相対移動方向に積分して得られる積分値とを利用して、不適切画像記録素子の概略位置を特定する不適切画像記録素子候補特定手段を備えたことを特徴とする。
データ値を印字媒体の相対移動方向に積分することにより、センサの読み取りタイミングの影響を低減でき、また、読み取りエラーが平均化され、微小なデータ値の差を検出することが可能になる。更には、印字媒体を照明する光源の光量を小さくすることが可能になる。
この態様において、各センサから得られる読み取り画素データ値を直接(補間演算などを行わずに)積分することにより、周波数の高い不適切データを補間によって鈍らせることなく検出できる。
また、本発明の他の態様は、想定した不良状態の不適切画像記録素子を含む場合の記録画像から期待される期待読取データと、前記複数のセンサから得られた読取画素データとを比較することにより、不適切画像記録素子の状態を判定する画像記録素子状態判定手段を備えたことを特徴とする。
「不良状態」には、記録不能、ドットサイズの異常、ドット記録位置の異常などの態様が含まれる。画像記録素子としてインクを吐出するノズルを採用したインクジェット記録装置の場合の「不良状態」には、不吐出、打滴サイズの異常、着弾位置の異常などの態様が含まれる。
更に、本発明の他の態様は、前記不適切画像記録素子特定手段による不適切画像記録素子の特定結果に基づいて画像記録動作の補正を行う補正手段と、前記不適切画像記録素子特定手段による不適切画像記録素子の特定結果又は前記不適切画像記録素子候補特定手段によって特定した結果に基づいて前記記録ヘッドのクリーニングを行うクリーニング手段と、のうち少なくとも一方の手段を備えていることを特徴とする。
更にまた、本発明に係る画像記録装置において、前記不適切画像記録素子特定手段による不適切画像記録素子の特定結果に基づいて画像記録動作の補正を行う補正手段と、少なくとも前回の不適切画像記録素子の特定情報及び画像記録動作の補正の情報を記憶する履歴情報記憶手段と、前記履歴情報記憶手段に記憶した情報と補正後の画像を前記画像読取手段で読み取って得られた情報から次回の補正内容を決定する履歴制御手段と、を備える態様が好ましい。
これにより、仮に、前回の処理で不適切画像記録素子の補正を誤ったとしても、次の処理においてその情報が参照され、適切な補正処理が実施される。このように、履歴情報に基づくフィードバック制御を行うことで、補正の精度を向上させることができる。
本発明の他の更に具体的な態様として、前記印字手段は、少なくともシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を印字可能な記録ヘッドを備える一方、前記画像読取手段は、赤(R)光、緑(G)光及び青(B)光を分光して読取可能なRGBセンサ列で構成されており、前記印字手段により各色が重なり合って記録された同一の画像区間を前記RGBセンサ列で読み取り、C、M、Yの色順序で不適切画像記録素子を特定する処理を実施し、先行する色の処理において不適切画像記録素子と判定された個所を除去して後続の処理を行うことを特徴とする。
印字手段は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色に対応した色別の記録ヘッドを備える構成でもよいし、1つの記録ヘッドで複数色の印字が可能な構成でもよい。
また、上記3色(C,M,Y)に加え、更に、黒(K)の色を印字可能な記録ヘッドを備える態様も可能である。この場合、K、C、M、Yの色順序で不適切画像記録素子を特定する処理を実施し、先行する色の処理において不適切画像記録素子と判定された個所を除去して後続の処理を行う。
かかる態様によれば、実技の画像から精度良くかつ効率的に各色の不適切画像記録素子を特定することが可能である。
なお、印字手段の構成は、黒(K)の色に対応した黒(K)用の(色別の)記録ヘッドを付加する構成でもよいし、他の色と組み合わせて黒(K)を含む複数色の印字が可能な記録ヘッドを用いてもよい。
本発明によれば、複数の画像記録素子が印字媒体の相対移動方向と略直交する主走査方向に印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列されたフルライン型の記録ヘッドで印字した画像を、同印字媒体の全幅に対応する長さにわたり複数のセンサが配列された画像読取手段によって読み取り、各センサから得られる複数の読取画素データに基づいて不適切画像記録素子を特定するようにしたので、センサの数と画像記録素子数とが一致する場合はもちろんのこと、センサの数と画像記録素子数とが一致しない場合にも不適切画像記録素子を精度よく特定できる。また、センサの位置と画像のドット位置とが一致していない場合、或いは、主走査方向に投影されたセンサの配列ピッチと主走査方向に投影された画像記録素子の配列ピッチとが異なっている場合などについても対応可能である。
更に、本発明では、互いに近隣関係にある複数のセンサから得られる複数の読取画素データを利用して不適切画像記録素子を特定するため、センサの個別のばらつきの影響を低減することができ、精度のよい判定が可能であるとともに、記録位置のばらつき(記録位置ズレ)などの記録不良についても複数の読取画素データから効率的に判定することができる。
また、本発明において、データ値を印字媒体の相対移動方向に積分することによって、センサの読み取りタイミングの影響を低減できるとともに、読み取りエラーが平均化され、微小なデータ値の差を検出することが可能になり、不適切画像記録素子の判定精度が向上する。
本発明の一態様による不適切画像記録素子の特定方法は、本来記録されるデータと実測されたデータとの比較に基づく判定のため、テストパターン(テストプリント)のみならず、実技プリントでも判定することが可能である。
本発明の他の態様では、少なくとも前回の履歴情報を利用して次回の補正方法を修正するフィードバック制御を付加したので、仮に前回の補正処理において誤った補正が行われたとしても、次の処理工程では同じ誤補正が実施されるのを回避して、適切な補正を行うことが可能になる。
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図7中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図3乃至図5)、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、紙搬送方向という。)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドが各インク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。吐出検出の詳細については後述する。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3(a)は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図である。また、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3中4−4線に沿う断面図)である。記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3及び図4に示したように、インク滴が吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP)で直線状に配列されているものとして説明する。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、記録媒体(記録紙16)の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録媒体の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ64に向かってダミー吐出が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
なお、図1に示した例では、印字検出部24が印字面側に設けられており、ラインセンサの近傍に配置された冷陰極管などの光源(不図示)によって印字面を照明し、その反射光をラインセンサで読み取る構成になっているが、本発明の実施に際しては、図8に示すように、記録紙16の搬送路を挟んでラインセンサ90と光源92とを対向して配置し、記録紙16の裏側(インク打滴面の反対側)から光源92の光を照射して、その透過光量をラインセンサ90によって読み取る構成も可能である。図8に示した透過型検出の構成は、反射型検出の構成と比較して、ラインセンサによって取り込む像のボケを少なくできるという利点がある。
ただし、透過型の場合、反射型よりもラインセンサへの入射光量が少なくなる。また、反射型においても入射光量が少ない場合が想定される。何れにしても、ラインセンサへの入射光量が少ないと十分な検出信号が得られなくなるが、ラインセンサによる画像読み取りの際に、紙送り方向の解像度は要求されないため、センサの電荷蓄積時間を長くするか、或いは読み取りデータを紙送り方向に積分することによって対応できる。
また、ラインセンサの読み取り開始タイミングは、センサとノズル間の距離及び記録紙16の搬送速度から決定される。
〔不適切ノズルの検出における問題点〕
本実施形態に係るインクジェット記録装置10における不適切ノズルの検出方法について説明する前に、まず、図9乃至図12を用いて、不適切ノズルの検出上問題となる技術課題について考察する。
図9は、ノズルの位置と、各ノズルにより記録紙上に打滴されるドットの位置、ドットにより形成される画像を読み取るセンサ(画素)の位置、及びセンサの出力値の関係を例示した図である。同図では、ノズル101の個数とセンサ102の個数(ラインセンサの画素数)とが一致し(ノズルピッチPnとセンサピッチPsが等しく)、ノズル101とセンサ102とが1対1に対応した配置関係になっている例が示されている。
高密度ノズルの場合、図9に示したように、ノズルピッチPnに対しドット104のサイズが大きくなり、近隣のノズルによって打滴されたドット同士が部分的に重なり合う。
また、各センサ102は、同図中の両向き矢印106で示したように、比較的大きな読み取り範囲を有しており、各センサ102の出力値は対応するノズルの近傍のノズルから吐出されたドットの影響を受ける。
図9では、左から3番目のノズルN3 が吐出しないノズルとなっており、当該ノズルN3 から吐出されるべきドットがプリント上で欠落している。かかる不適切ノズルN3 を含むノズル列によって形成された画像をラインセンサで撮像したときのセンサ出力値は、図示のように、左から3番目のセンサS3 の出力値が最も高くなるが、更に、その近傍のセンサ(2番目と4番目のセンサS2 ,S4 )の出力値も高くなっている。
したがって、各センサS1 〜S5 の出力値をそれぞれ単独で評価するだけでは、2番目及び4番目のノズルN2 ,N4 についても吐出不良と判定されることになり、実際にどのノズルが真に不適切ノズルであるのかを特定することはできない。
図10は、センサ数とノズル数が一致しない場合の例が示されている。同図では、センサピッチPsがノズルピッチPnの1.5倍となっている。例えば、主走査方向に投影されたノズル数が1インチあたり2400個(2400npi)、ラインセンサの画素が1インチ当たり1600個(1600dpi)の場合などがこの例に該当する。
図10に示したように、左から3番目のノズルN3 が不吐出ノズルであった場合、ラインセンサの出力値は当該不吐出ノズルに近いセンサ(図10上で左から2番目と3番目のセンサS2 ,S3 )からの出力が相対的に高くなる。しかし、図9のグラフと比較すると明らかなように、図10ではセンサ出力値の波形変化が全体的に小さく、明確なピークを検出し難い。したがって、どのノズルが不適切であるのかを精度よく判定することが難しい。
図11は、センサ数とノズル数は一致するが、主走査方向へ投影させて見たときのノズルの中心位置とセンサ(画素)の中心の位置がずれている場合の例が示されている。すなわち、図11では主走査方向の投影させて見たとき隣接するノズルの中間にセンサが位置している。
図11に示したように、左から3番目のノズルN3 が不吐出ノズルであった場合、ラインセンサの出力値は、左から3番目のセンサS3 と4番目のセンサS4 の出力値が等しく最も高い値を示し、これらに隣接するセンサS2 ,S5 の出力値も正常な出力レベルよりもやや高い値を示す。したがって、センサ出力値を個別に評価するだけでは、どのノズルが不適切ノズルであるかを特定できない。
図12は、センサ数とノズル数並びにこれらの中心位置の関係については一致しているものの、着弾位置のばらつき(インクの飛翔方向ズレ)や吐出量の異常が発生した場合の例が示されている。図12によれば、左から3番目のノズルN3 から吐出されたインク滴が正常の着弾位置よりも1画素弱右にずれた位置に着弾している。この場合のラインセンサ出力値は、図12の実線で示したように、左から2番目のセンサの出力値が最も高くなる。
したがって、2番目のセンサ出力だけに着目すれば、対応するノズルN2 の吐出量が小さい(ドットサイズが小さい)と誤って判断してしまう恐れがある。このような誤判定に基づいて、対応ノズルの吐出量を増加させるような補正制御をかけると、当該補正によって却って筋ムラ(副走査方向に沿う直線状の筋状のムラ)を強調してしまう可能性がある。
また、図12中点線で示したように、着弾位置のばらつきと吐出量低下が同時に起きるような場合もある。かかる場合のラインセンサ出力値は、図12の点線で示したものになる。
この場合も2番目のノズルを不適切ノズルとして誤判定する可能性があり、また、2番目のセンサのみならず、3番目のセンサ出力も比較的高い値を示すため、更に3番目のノズルも不適切ノズルとして誤判定する可能性もある。
図9乃至図12で説明してきたように、ラインセンサの各画素の出力を個別に判断するだけでは、不良ノズルの位置とその状態を正確に判断することは困難である。
上述した考察に基づき、本実施形態に係るインクジェット記録装置10は、近隣ドットの重なり具合と各センサの読み取り範囲とを考慮して、複数の画素(センサ)の出力からノズルの状態を評価し、不適切ノズルとその状態を特定するように構成されている。
〔不適切ノズルの検出方法〕
以下、本インクジェット記録装置10における不適切ノズルの検出方法を説明する。
図13は、テストパターンを印字して、その印字結果をラインセンサで読み取る場合の例を示した図である。テストパターンは、インク色ごとにそれぞれ一色のみで所定の印画領域を塗りつぶすように、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yについて全てのノズルから所定の吐出量で打滴を行う指令によって形成される。つまり、色別に記録可能幅全域にわたって副走査方向に一定範囲の「ベタ印刷」を行う。
図示のように、印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの配列順に従い記録紙16上に下流側から、K,C,M,Yの順で矩形状の塗り潰しパターン(最大の記録可能幅を有する色別のベタ印刷パターン)が形成される。各色のパターン部分は、図13の右側に示したように、主走査方向について全ノズルから打滴され、副走査方向(紙搬送方向)について複数列の打滴が連続するドットパターンとなっている。
かかるテストパターンをラインセンサ120(印字検出部24)で読み取る。ラインセンサ120での読み取り開始タイミングは、センサ(画素)とノズル間の距離および記録紙16の搬送速度から決められる。
図14はインクジェット記録装置10におけるノズル検出の要部構成を示したブロック図である。同図中、図7に示したブロック図と対応する部分には、同一の符号又は括弧付きの同一符号を付してある。また、図14中の不適切ノズル(不適切画像記録素子)特定部140及び打滴制御部132の詳細な構成例を図20に示した。
印刷すべき画像のデータは、図7で説明した通信インターフェース70を介して外部から入力され、図14に示した第1のフレームメモリ130に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データが第1のフレームメモリ130に記憶される。
第1のフレームメモリ130に蓄えられた画像データは、打滴制御部132に送られ、打滴制御部132のハーフトーン処理部213(図20参照)において既知の誤差拡散アルゴリズムなどの手法によりインク色ごとのドットのデータに変換される。すなわち、打滴制御部132は、入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。打滴制御部132で生成されたドットデータは、第2のフレームメモリ134に蓄えられる。
このとき、不適切ノズル検出補正に使用する部分のドットデータが第3のフレームメモリ136にも蓄えられる。
ヘッドドライバ84は、第2のフレームメモリ134に記憶されたドットデータを取り込み、印字ヘッド50の駆動制御信号を生成する。ヘッドドライバで生成された駆動制御信号が印字ヘッド50に加えられることによって、印字ヘッド50からインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期して印字ヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。
印字ヘッド50による打滴後、ラインセンサ120によってその打滴画像が読み込まれる。ラインセンサ120から出力されたデータは第4のフレームメモリ138に蓄えられる。第4のフレームメモリ138に蓄えられたデータと、第3のフレームメモリ136に蓄えられたデータとに基づき、不適切ノズル特定部140において、後述のステップ1〜5及び履歴制御を実施する。実際の補正動作は打滴制御部132が実施するため、不適切ノズル特定部140は打滴制御部132に対して補正の指示を与えるに留まる。
不適切ノズル特定部140による不適切ノズルの特定処理結果に基づき、クリーニング動作を行う場合は、プリント制御部80からクリーニング制御部142へ指令が送られる。クリーニング制御部142は、プリント制御部80からの指令に従い、図6で説明したダミー吐出、吸引ポンプによる吸引、或いは、クリーニングブレード66による拭き取り(ワイピング)又はこれらの適宜の組み合わせによるクリーニング動作(ノズルの回復動作)の実行を制御する。
また、不適切ノズルの存在を報知する警告表示などを行う場合には、操作表示部144へ指令が送られる。この指令に従い操作表示部144において所定の警告情報が表示される。
不適切ノズル特定部140における不適切ノズルの検出と補正の処理は、以下に示すステップ1〜5と、その補正結果に基づく履歴制御からなる。
〔ステップ1〕:ドットデータからの期待読み取り1ラインデータの作成
まず、ステップ1として、打滴指令のデータから各ノズルの中心位置で見込まれる1ライン分のセンサの読み取り期待値(各ノズル位置でのセンサ出力値はこのくらいになるはずだという予測値)を示すデータを作成する。これは、打滴指令のデータ(ドットデータ)がどういうデータであったかということから、この指令に従い正常に打滴が行われた場合に、センサの読み取り値がどうなるかという期待値を推定するためのデータ作りを行う工程である。この工程は、図20の期待読取データ生成部216で実施される。具体的には、下記の(1−1),(1−2)の処理を行う。
1−1.フィルタリング
センサ(画素)の読み取り範囲に含まれる周辺の打滴ドットを含む打滴パターンに基づき、図15に示すようなフィルタを用いてフィルタリング処理を行う。図15にはノズル並び方向と紙搬送方向について5×5の画素範囲を演算対象とするフィルタが例示されている。各係数は、センサの読み取り範囲に含まれるドットの面積に基づいて決定される。すなわち、フィルタ中央の注目ノズルの面積寄与率(係数)は大きく、左右上下の周辺に行くほど面積寄与率(係数)は小さくなる。このデータは図20のフィルタパターン200に保持されており、フィルタ処理部201でフィルタリング処理が実施される。
図15中フィルタの各セルに係数が3つ示されているのは、打滴サイズ(ドットの大きさ)が3種類に制御される場合に、それぞれ打滴サイズに応じて係数が選択されることを表しており、打滴なし/小サイズドット/大サイズドットの3種類の打滴に対応したものである。なお、打滴サイズは、アクチュエータに印加される駆動パルスの波形を変更することによって制御可能である。打滴サイズに応じてフィルタの係数を選択する態様は、実技の画像に対する処理を行う場合に特に有効である。
こうして、上記フィルタリング処理の結果得られるデータは、各ノズルから吐出されるインクによって記録紙16上に形成されるドットの実面積(打滴面積)を反映した値である。
1−2.センサ読み取り値への換算
次に、上記(1−1)で得られたフィルタリング処理後の値をセンサの読み取り値に換算するための変換を行う。CCDなどの光電変換センサは、光量に対してリニアな信号出力値が得られる(ガンマをかける場合でも、そのガンマ係数のかかったある値が得られる)。したがって、実際の打滴面積に対して、どういう読み取り値が返ってくるかを変換LUTによって換算する必要がある。この変換処理は、図20のテーブル変換部202で実施され、用いるルックアップテーブル(変換LUT)は実験的に決定される。
すなわち、予めいくつかの打滴を実行し、そのドットをセンサで読み取り、どういう読み取り値が得られたかという実験結果に基づいて変換LUTが定められる。例えば、図16に示すグラフの関係を規定したテーブルが設けられており、この変換テーブルに従って(1−1)の出力値はセンサの読み取り値に換算される。
各印字ヘッドの全ノズルの打滴について(1−1),(1−2)の処理を行うことにより、1ライン分の各ノズル中心位置に対応したセンサ読み取り期待値が求められる。
〔ステップ2〕:センサ読み取りデータの位置補正
ラインセンサ120とノズル列の位置ズレは、ノズル列方向及び紙搬送方向にそれぞれ最大で100μm程度は存在し得るものと想定される。ステップ2は、ノズル列方向のズレを補正する工程である。なお、通常、ラインセンサはヘッドの比較的近傍に配置されるので、画素(センサ)とノズルの相対的な位置関係は一度の読み取り期間中は略一定である。したがって、読み取り期間について一定の補正を行うものとする。具体的には、以下に示す(2−1)〜(2−4)の処理を行う。
2−1.まず、副走査方向(紙搬送方向)について一定の長さ以上の単位で画像の読み取りを行う。仮に1ライン単位で画像(ドット)の読み取りを行うとすると、読み取りエラーやノイズなどの影響によって位置検出の精度が低下する。したがって、本例のインクジェット記録装置10では、紙搬送方向に一定以上の長さを持った所定幅単位(複数ライン単位)で画像を読み取ることとし、図20の積分演算部203で紙送り方向について打滴画像データを積分(平均化)する。
2−2.次に、画像位置特定部204で画像の両端立ち上がり位置を検出する。すなわち、上記(2−1)で求めた積分データの画像両端付近のエッジプロファイルを比較し、画像の端に対応する境界位置を判定する処理を行う。具体的には、両隣画素の出力値の差分が最大となる位置を求めて、その位置を画像の端と判定してノズル位置(番号)と対応付けを行う。両隣画素の差分を利用する理由は、絶対値を利用する場合よりも誤差の影響が少ないからである。なお、比較する範囲は、大きなミス(誤判断)を回避するために、想定されるズレ量の2〜3倍程度に留めるものとする。
図17は、画像の左端部分近傍のセンサ出力値と、両隣画素の出力値の差分を示したグラフである。ラインセンサ120の受光素子(画素)の位置を表すために、画素の端から順に番号を付与し、このセンサ番号によって画素の位置を特定するものとする。記録紙16の余白部(打滴されてない領域)は明るく、打滴による画像が始まると(ドットが形成されると)暗くなるので、余白部に相当するセンサ出力は高く、画像部のセンサ出力は低下する(図17中グラフa)。
センサ番号kの両隣画素の差分とは、(k−1)番のセンサの出力値と(k+1)番のセンサの出力値との差を意味しており、両隣画素の差分を示したグラフbによれば、差分のピークは14番のセンサのところである。
図18は、各ノズル位置でのセンサ読み取り期待値と、両隣ノズル位置の差分を示すグラフである。各ノズル位置で期待されるセンサ出力値は、上記〔ステップ1〕で求められたものである。
ノズル位置を表すために、印字ヘッドのノズル列に端から順に番号を付与し、そのノズル番号によってノズルの中心位置を特定するものとする。実際のノズル番号は、基準となる端のノズルの0番からスタートするが、図18のグラフ上でマイナスのノズル番号が付与されている理由は、0番のノズルよりも外側の位置にドットが形成されており、ノズルよりも外側の位置にあるドットについてもある読み取り範囲内であれば、センサから検出信号が得られることを意味している。
図17及び図18に示したグラフを比較することにより、両隣画素の差分のピークである14番のセンサをノズル番号「0」のノズルに対応付けることができる。図17及び図18では、画像の左端部分についての処理を説明したが、画像の右側部分についても同様の処理を行い、画像の両端についてノズル番号とセンサ番号との対応関係を求める。
2−3.ノズル位置の特定
図20の位置関係把握部205でノズル位置を特定する。上記(2−2)で求められた画像両端のセンサ番号とノズル番号の組を(S0 , N0 ),(Sm , Nm )とすれば、i番目のセンサの位置をノズル位置(番号)に換算すると、そのノズル位置(番号)Pi は、次式で表すことができる。
[数1]
Pi =( Nm −N0 )/(Sm −S0 )×(i−S0 )+N0 …(1)
2−4.センサ位置での読み取り期待値の算出
図20のセンサ読取期待値算出部206で、式(1)から求まるノズル位置Pi を挟む両隣の(二つの)ノズル番号の読み取り期待値で重み付け平均(距離の逆数で重み付け)を算出し、i番目のセンサ読み取り期待値Ei を求める。
〔ステップ3〕:不適切ノズルのラフ特定
センサ番号i番目の読み取り値Di と上記〔ステップ2〕で求めた期待値Ei を使って、まず、不適切ノズルをラフに特定する。ここで、Di をノズル位置のデータに変換しないのは、周波数の高い不適切データを補間操作により鈍らせるのを回避するためである。具体的には、以下に示す(3−1)〜(3−3)の工程によって不適切ノズルをラフに特定する。
3−1.データ値の紙搬送方向への積分
1ラインのみデータでは当該1ラインがどのノズルによって打滴されたものであるかを正確に特定することが困難であるため、まず、紙搬送方向にi番目のデータを積分(平均化)する。これにより、ノイズなどの読み取りエラーも平均化され、ノズルの不適切による微小なデータ値変化を検出することができる。読み取りデータが図13で説明したテストパターンのようなベタ画像であれば、ベタの範囲から読み取り位置が外れない限り、紙搬送方向の位置ズレはほとんど問題とならない。この積分は、読み取り値については図20の積分演算部203で、期待値についてはセンサ読取期待値積分演算部207でそれぞれ実施される。
実技を使う場合は、画像データ値が一定でないため、紙搬送方向について長めに(テストパターンを使うときよりも長く)積分する。また、長めに積分することで、画像データのノズル列方向の周波数を落とすことができる。不適切ノズルに起因するデータ変化は、周波数が高くなるので、上記の積分によってそのデータ変化を見つけやすくなる。
こうして求めたi番目の読み取り値Di の積分値をDsi、期待値Ei の積分値をEsiとする。
3−2.不適切ノズル候補のピックアップ
次に、不適切ノズル候補のピックアップが図20の不適切画像記録素子位置候補特定部208で実施される。隣接する二つのノズル(i番目,i−1番目)について、次式(2),(3)に従って読み取り値の差分(正規化された差分) と期待値の差分(正規化された差分) を求め、これらを比較する。
[数2] ΔDsi=(Dsi−Ds(i-1))/(Dsi+Ds(i-1)) …(2)
[数3] ΔEsi=(Esi−Es(i-1))/(Esi+Es(i-1)) …(3)
式(2)で求めた読み取り値の差分ΔDsiと式(3)で求めた期待値の差分ΔEsiの差が所定の閾値を越えていれば、不適切ノズルが近傍に存在する候補としてその番号「i」を登録する。このときの判定基準となる閾値は、実際に不適切ノズルの打滴パターンを読み取ったデータから実験的に決定すればよい。
3−3.周辺データのまとめ
ある1つのノズルの欠陥は、その対応する位置の近隣にある複数のセンサの読み取り値に影響を及ぼすので、上記(3−2)で不適切ノズル候補として登録される「i」の周辺(「i+1」や「i−1」など)も不適切ノズル候補として抽出され得る。しかし、これらはある共通の(1つの)ノズル欠陥に起因するものであるため、「i」の周辺に不適切ノズル候補が存在する場合には、重複を避けるために、これらをまとめて「i」で代表させるものとする。
〔ステップ4〕:不適切ノズルの特定と不適切レベルの判定
図20の画像記録素子状態判定部210で、不適切ノズルの特定と不適切レベルの判定を行う。このステップ4では、上記ステップ3で検出された不適切ノズルの候補について、実際にどの位置のノズルが不適切であり、また、どのように不適切であるのかを特定する処理を行う。
すなわち、予め不適切ノズルを想定しておき、そのパターンごとに実際のセンサ出力との比較を行う。高密度インクジェットヘッドの場合、不適切なノズルについて厳密な補正を行わなくても十分な印画品質が得られる。例えば、あるノズルからの打滴サイズが正常値の3/4程度であった場合、かかる吐出不良をカバーする補正を行わなくても、印画結果にムラなどは認められず、画質の劣化は認知されない。このような観点から、印画品質上問題となりうる数パターンに限って補正処理を行うものとする。
登録されているパターンは、次の7種類である。これらのパターンは図20に示した素子状態パターン209に登録されている。
[1] ノズルデッド(吐出しない)(図9で例示)
[2] 吐出量1/2(ただし、打滴位置のズレ無し)
[3] 1ノズル右に位置ズレ(図12実線で例示)
[4] 1ノズル左に位置ズレ(図12実線の左右対称)
[5] 1ノズル右に位置ズレで吐出量1/2(図12点線で例示)
[6] 1ノズル左に位置ズレで吐出量1/2(図12点線の左右対称)
[7] 不適切なし
以下に述べる(4−1),(4−2)の操作をPi 付近の近傍ノズルについて上記[1] 〜[7] のパターンで行うループを回し、最も評価値がマッチしたものを、不適切ノズル番号とパターンの組み合わせでピックアップする。
4−1.想定した不適切ノズルを含むノズル列の構成についてノズル位置での期待センサ出力を求める。すなわち、ステップ1で説明した操作を上記各パターンの不適切があるものとして計算する。例えば、吐出量(吐出液の体積)が変化するものについては、ドットの面積(断面積)に換算して、2/3乗程度の変化となるように係数を変更して計算する。
このように、ある位置にある状態の不適切ノズルが存在するものと仮定してもう一度〔ステップ1〕の演算手順に従い、期待センサ出力値を算出する。
その後、同様にセンサとの位置合わせ、紙搬送方向についての積分を行い、新たなEsiとする。
4−2.評価値の算出
上記(4−1)で求めた期待センサ出力値のEsiを用いて、不適切ノズル候補の位置の周辺についてパターンの幅にわたって次式の絶対値を算出し、算出された値を評価値とする。
[数4] j
評価値=|Σ{(Dsj−Esj)−(Dsi−Esi)}| …(4)
この評価値は、絶対値の基準を「i」の位置として、相対的な差分の絶対値をパターンの幅にわたって計算している。図9及び図12で説明した例によれば、「パターンの幅」は、中心位置を含む周辺の7点(又は5点)を意味しており、この7点(又は5点)がjに相当する。
こうして、式(4)に従い、パターンの数(7通り)×ノズル位置(フィルタサイズのサイズ分5通り)の計35通りの評価値を算出し、これらの中から最小値を示したものをマッチするものとしてピックアップする。
上記(4−2)の処理によって、不適切ノズルの位置が特定されるとともに、その不適切レベルが特定される(パターン[1] 〜[7] の何れかの状態であるかが特定される)。
〔ステップ5〕:補正又はクリーニング
上記したステップ4における不適切ノズルの特定と不適切レベル判定の結果に基づき、必要に応じて補正制御を図20の補正部214で行う。補正は、周辺のノズルの吐出量又は吐出頻度を変更することにより実施される。具体的には、各パターン [1]〜[7] に対応してそれぞれ補正方法が補正パターン215に登録されている。各パターンに関連付けされた補正処理の内容は次のとおりである。
[1] ノズルデッド(吐出しない)については、当該ノズルデッドのノズルが打滴されるべき時に、隣接両側の2ノズルの吐出量にデッドノズルの吐出量の1/2ずつを加算する制御を行う。もし、吐出量を加算できない場合(最大吐出量が指令されている場合など)は、紙搬送方向にその誤差を引き継ぎ、次の吐出機会に補正するものとする。
[2] 吐出量1/2の不適切ノズルについては、当該不適切ノズルが打滴される時に、隣接両側の2ノズルの吐出量に不適切ノズルの吐出量の1/4ずつを加算する制御を行う。吐出量を加算できない場合は、紙搬送方向にその誤差を引き継ぎ、次の吐出機会に補正するものとする。
[3] 1ノズル右に位置ズレを起こす不適切ノズルについては、補正しないものとする。高密度ヘッドの場合、プリント上視認されないからである。
[4] 1ノズル左に位置ズレを起こす不適切ノズルについても、[3] と同様に、補正しないものとする。
[5] 1ノズル右に位置ズレを起し、かつ吐出量1/2となる不適切ノズルについては、当該不適切ノズルが打滴されるときに、左側の隣接ノズルの吐出量に当該不適切ノズルの吐出量の1/2を加算する。加算できない場合は、紙搬送方向に誤差を引き継ぎ、次の吐出機会に補正するものとする。
[6] 1ノズル左に位置ズレを起し、かつ吐出量1/2となる不適切ノズルについては、当該不適切ノズルが打滴されるときに、右側の隣接ノズルの吐出量に当該不適切ノズルの吐出量の1/2を加算する。加算できない場合は、紙搬送方向に誤差を引き継ぎ、次の吐出機会に補正するものとする。
[7] 不適切ノズルなしの場合については、当然、補正は行わない。
なお、不適切ノズルの存在が検出された場合において、シーケンス上、クリーニング(ノズル機能回復動作)が可能であれば、該当部分のインク吸引やワイピングを実施し、上記の補正動作を行わない態様もあり得る。この指示は図20のクリーニング制御部142で行われる。
なお、上述の説明では、図9のような、ノズル数とセンサ数が一致している場合を述べたが、本発明の実施に際しては、ノズル数とセンサ数が一致しない場合についても、上記〔ステップ2〕のフィルタリング処理のフィルタを修正することで、基本的には上記と同様の手法を適用することができる。
また、上述の説明では、図20の画像記録素子状態判定部210の判定結果に基づいてクリーニングの動作を制御する例を述べたが、不適切画像記録素子位置候補特定部208によって特定した結果の基づいてクリーニングを行うことも可能である。
〔履歴制御についての説明〕
上述したステップ1〜5の方法によれば、比較的高精度に不適切ノズルの特定が可能であるが、紙搬送方向のデータを積分するなどしてもムラの検出精度には一定の限界があり、不適切ノズルの検出や補正を誤る可能性を完全に排除することはできない。濃度0.01以下の僅かな筋でムラになる上、センサとノズルの位置関係の特定に誤差を生じる場合もあり得る。
そのため、前回行われた不適切ノズル検出及び補正の情報を記憶しておき、その履歴情報を利用して、次回の不適切ノズル検出及び補正の精度を高める履歴制御を付加することが好ましい。
ここでは履歴制御の一例として、不適切ノズルを近傍のノズルと間違って補正した場合の対応について説明する。
図19には不適切ノズルを誤判定して補正を行った例が示されている。同図によれば、前回、「N3 」のノズルが不吐出(ノズルデッド)であるのを「N4 」と誤判定し、次ラインの打滴時に補正が行われた様子が示されている。「N4 」のノズルをノズルデットと誤判定した結果、補正によって両隣の「N3 」と「N5 」のノズルの吐出量が増加される。
この補正により、「N5 」のノズルの吐出量は、図19の点線で示したドット分増加するが、「N3 」のノズルについては、もともと吐出不能であるため、補正による打滴増加指令を受けても打滴が行われない。
そのため、この補正結果を読み取ったセンサ出力は、図19の点線が検出される。この場合、前回と同様の不適切ノズル検出及び補正処理が行われるが、再度「N4 」のノズルがノズルデッドであると判定される可能性があり、結果として補正が有効に機能しないことが起こり得る。
かかる事態を回避するために、履歴情報を活用して次のように対応する。
<1.>センサの出力期待値は、前回までの補正量を含めずに算出するものとし、上記ステップ1〜ステップ4までを実施する。この場合、図20に示した第3のフレームメモリ136には補正が含まれない打滴画像データが記憶される。
<2.>このとき、不適切ノズルが前回と同じノズルと特定された場合は、隣接ノズルの同じパターンの評価値が小さい方を不適切ノズルとして選び直す。
<2'.> 或いは上記 <2.>に代えて、不適切ノズルが前回と同じノズルと特定された場合に、前回の評価値が2番目に小さいノズルとパターンの組み合わせを選択し直す。
このステップ<1.>〜<2.>(又は<2'.> )を繰り返しても、改善されない場合は、近傍の複数ノズルが不適切と考えられるため、クリーニング動作を行う。また、補正処理及びクリーニング動作でも改善されない場合は、警告を出す。
これらの指示は、図20の履歴情報記録部211に記録された前回の評価値及び特定された不適切ノズル情報を基に、履歴制御部212が、画像記録素子状態判定部210に対して実施する。なお、履歴情報の蓄積は、前回の情報に限らず、少なくとも前回の情報を含む過去数回分の情報を記憶してもよい。
〔実技の画像を読み取る場合の色間処理〕
上記の説明では、図8のような色別のテストパターンによる画像を読み取る場合を述べたが、本発明の実施に際しては、テストパターンを利用する態様に限らず、実技の画像を利用することも可能である。
実技の画像を読み取る場合には、各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yによって打滴された同一(オーバーラップ)区間を複数色(RGB)のラインセンサで読み取り、以下のインク順序で処理する。
〔処理手順1〕まず、Kインクノズルについて不適切ノズルの検出を行う。Kインクノズルの評価には、RGB全てのセンサの出力の平均値を使う。
〔処理手順2〕次に、Cインクノズルについて不適切ノズルの検出を行う。Cインクノズルの評価には、Rセンサの出力を用いる。ただし、Kインクノズルの不適切個所を除去して、それ以外の範囲について検出補正を行う。
〔処理手順3〕次に、Mインクノズルについて不適切ノズルの検出を行う。Mインクノズルの評価には、Gセンサの出力を用いる。ただし、Kインクノズル及びCインクノズルの不適切個所を除去して、それ以外の範囲について検出補正を行う。
〔処理手順4〕次に、Yインクノズルについて不適切ノズルの検出を行う。Yインクノズルの評価には、Bセンサの出力を用いる。ただし、Kインクノズル、Cインクノズル及びMインクノズルの不適切個所を除去して、それ以外の範囲について検出補正を行う。
上記処理手順1〜4に従い、K→C→M→Yの順で処理を行う理由は、センサの分光感度と色材の分光吸収の関係によるものである。すなわち、KインクはRGBの各センサにほぼ同様の出力変化を与える。したがって、これらの平均値を利用して最初に処理を行うことで、正確な検出が可能となる。また、色材は通常、短波長側に副吸収を持つので、CインクはRのところに吸収を持つとともに、これよりも短波長側、すなわちGやBの領域に吸収が出る。つまり、CインクはMインク及びYインクの検出に影響を与える。同様にMインクはYインクの検出に影響を与える。したがって、かかる影響を排除すべく、影響範囲の広い順に(すなわち、長波長側から順に)処理を行うことが好ましい。こうすることで、色間の処理を効率的に行うことができる。
上記実施の形態では画像記録装置の一例としてインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、ラインヘッドを有する熱転写記録装置、LED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど各種方式の画像記録装置についても本発明を適用することが可能である。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図 図1に示したインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図 印字ヘッドの構造例を示す平面透視図 図3中4−4線に沿う断面図 図3に示した印字ヘッドのノズル配列を示す拡大図 本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるインク供給系の構成を示した概要図 本実施形態に係るインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図 照明用光源の他の配置例を示す図 センサ数とノズル数及びそれら配列ピッチが等しい場合におけるノズル位置、ドット位置、センサ(画素)位置及びセンサ出力値の関係を例示した図 センサ数とノズル数が一致しない場合におけるノズル位置、ドット位置、センサ位置及びセンサ出力値の関係を例示した図 ノズル位置とセンサ位置がずれている場合におけるノズル位置、ドット位置、センサ位置及びセンサ出力値の関係を例示した図 着弾位置のばらつきや吐出量の異常が発生した場合におけるノズル位置、ドット位置、センサ位置及びセンサ出力値の関係を例示した図 テストパターンをラインセンサで読み取る場合の例を示した図 本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるノズル検出の要部構成を示したブロック図 フィルタリング処理に用いるフィルタの例を示した図 フィルタリング処理の出力値をセンサの読み取り値に換算するときに用いる変換テーブルを例示したグラフ 画像の左端部分近傍のセンサ出力値と、両隣画素の出力値の差分とを示したグラフ 各ノズル位置でのセンサ読み取り期待値と、両隣ノズル位置の差分とを示すグラフ 不適切ノズルを誤判定して補正を行った例を示す図 図14中の不適切ノズル(不適切画像記録素子)特定部及び打滴制御部の詳細な構成例を示すブロック図
符号の説明
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12K,12C,12M,12Y…印字ヘッド、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、20…デカール処理部、22…吸着ベルト搬送部、24…印字検出部、28…カッター、33…ベルト、50…印字ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、53…インク室ユニット、54…供給口、58…アクチュエータ、64…キャップ、66…クリーニングブレード、67…吸引ポンプ、72…システムコントローラ、76…モータドライバ、80…プリント制御部、84…ヘッドドライバ、90,120…ラインセンサ、92…光源、132…打滴制御部、140…不適切ノズル特定部、142…クリーニング制御部

Claims (11)

  1. 印字媒体の全幅に対応する長さにわたって複数の画像記録素子が配列されたフルライン型の記録ヘッドからなる印字手段と、
    前記記録ヘッド及び前記印字媒体のうち少なくとも一方を前記印字媒体の幅方向と略直交する方向に搬送して前記記録ヘッドと前記印字媒体を相対移動させる搬送手段と、
    前記記録ヘッドによって前記印字媒体に記録された画像を読み取る複数のセンサが前記印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列された画像読取手段と、
    前記複数のセンサから得られる複数の読取画素データに基づき、各センサについて当該センサの読取画素データとその近隣センサから得られる読取画素データ及び本来記録されるべき画像から期待される期待読取データを用いて、近隣のセンサから得られるデータ値の変化を評価する演算を行い、その演算結果に基づいて記録不良の画像記録素子の特定と前記記録不良の画像記録素子の不良状態を特定する不適切画像記録素子特定手段と、
    記録されるべき画像のデータから生成されるドットデータに基づいて前記期待読取データを作成する期待読取データ生成手段と、
    を備え、
    前記期待読取データ生成手段は、前記ドットデータにフィルタリング処理を施すフィルタ処理手段を含み、
    前記フィルタ処理手段は、ドットサイズの種類に対応した複数種類の係数を有するフィルタを用いて前記ドットデータにフィルタリング処理を施すフィルタ処理手段であって、
    前記ドットデータが示すドットサイズに応じて前記フィルタの係数が選択的に決定されるフィルタ処理手段であることを特徴とする画像記録装置。
  2. 印字媒体の全幅に対応する長さにわたって複数の画像記録素子が配列されたフルライン型の記録ヘッドからなる印字手段と、
    前記記録ヘッド及び前記印字媒体のうち少なくとも一方を前記印字媒体の幅方向と略直交する方向に搬送して前記記録ヘッドと前記印字媒体を相対移動させる搬送手段と、
    前記記録ヘッドによって前記印字媒体に記録された画像を読み取る複数のセンサが前記印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列された画像読取手段と、
    前記複数のセンサから得られる複数の読取画素データに基づき、各センサについて当該センサの読取画素データとその近隣センサから得られる読取画素データ及び本来記録されるべき画像から期待される期待読取データを用いて演算を行い、その演算結果に基づいて記録不良の画像記録素子を特定する不適切画像記録素子特定手段と、
    記録されるべき画像のデータから生成されるドットデータに基づいて前記期待読取データを作成する期待読取データ生成手段と、
    を備え、
    前記期待読取データ生成手段は、前記ドットデータにフィルタリング処理を施すフィルタ処理手段を含み、
    前記フィルタ処理手段は、ドットサイズの種類に対応した複数種類の係数を有するフィルタを用いて前記ドットデータにフィルタリング処理を施すフィルタ処理手段であって、
    前記ドットデータが示すドットサイズに応じて前記フィルタの係数が選択的に決定されるフィルタ処理手段であることを特徴とする画像記録装置。
  3. 前記不適切画像記録素子特定手段は、前記読取画素データに基づく実測データと前記期待読取データとの比較を行う演算処理を実施することを特徴とする請求項1又は2記載の画像記録装置。
  4. 前記記録ヘッドに対する前記印字媒体の相対移動方向について所定の長さ以上の幅を持つ単位で前記相対移動方向に前記読取画素データを積分する積分演算手段と、
    前記積分演算手段で求めた積分データから前記相対移動方向と略直交する主走査方向についての少なくとも2箇所についてその近傍の画像特性値を前記期待読取データの積分値の画像特性値と比較し、前記2箇所に対応するセンサの位置と前記期待読取データの位置関係を特定する画像位置特定手段と、
    前記画像位置特定手段により見出された前記2箇所に対応するセンサ位置と画像記録素子位置との対応付けを行い、各センサ位置と画像記録素子位置の対応関係を把握する位置関係把握手段と、
    前記位置関係把握手段で把握された前記各センサ位置と画像記録素子位置の対応関係に基づいて、補間演算により各センサ位置でのセンサ読み取り期待値を求めるセンサ読取期待値算出手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像記録装置。
  5. 各センサから得られる読取画素データを前記相対移動方向に積分して得られる積分値と、前記センサ読取期待値算出手段により求められたセンサ読み取り期待値を前記相対移動方向に積分して得られる積分値とを利用して、不適切画像記録素子の概略位置を特定する不適切画像記録素子候補特定手段を備えたことを特徴とする請求項に記載の画像記録装置。
  6. 想定した不良状態の不適切画像記録素子を含む場合の記録画像から期待される期待読取データと、前記複数のセンサから得られた読取画素データとを比較することにより、不適切画像記録素子の状態を判定する画像記録素子状態判定手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像記録装置。
  7. 前記不適切画像記録素子特定手段による不適切画像記録素子の特定結果に基づいて画像記録動作の補正を行う補正手段と、前記不適切画像記録素子特定手段による不適切画像記録素子の特定結果又は前記不適切画像記録素子候補特定手段によって特定した結果に基づいて前記記録ヘッドのクリーニングを行うクリーニング手段と、のうち少なくとも一方の手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像記録装置。
  8. 前記不適切画像記録素子特定手段による不適切画像記録素子の特定結果に基づいて画像記録動作の補正を行う補正手段と、
    少なくとも前回の不適切画像記録素子の特定情報及び画像記録動作の補正の情報を記憶する履歴情報記憶手段と、
    前記履歴情報記憶手段に記憶した情報と補正後の画像を前記画像読取手段で読み取って得られた情報から次回の補正内容を決定する履歴制御手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像記録装置。
  9. 前記印字手段は、少なくともシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を印字可能な記録ヘッドを備える一方、
    前記画像読取手段は、赤(R)光、緑(G)光及び青(B)光を分光して読取可能なRGBセンサ列で構成されており、
    前記印字手段により各色が重なり合って記録された同一の画像区間を前記RGBセンサ列で読み取り、
    C、M、Yの色順序で不適切画像記録素子を特定する処理を実施し、先行する色の処理において不適切画像記録素子と判定された個所を除去して後続の処理を行うことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の画像記録装置。
  10. 前記印字手段は、黒(K)の色を印字可能な記録ヘッドを備えており、
    K、C、M、Yの色順序で不適切画像記録素子を特定する処理を実施し、先行する色の処理において不適切画像記録素子と判定された個所を除去して後続の処理を行うことを特徴とする請求項記載の画像記録装置。
  11. 前記不適切画像記録素子特定手段は、不適切画像記録素子を含む近傍の複数の不適切画像記録素子候補を抽出する処理と、前記複数の不適切画像記録素子候補の中から記録不良の画像記録素子の特定と前記記録不良の画像記録素子の不良状態の特定を行う処理と、を行うことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の画像記録装置。
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