以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。また、各図において、寸法等は厳密には一致しない。
(実施の形態)
まず、蓄電素子10の構成について、説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の外観を模式的に示す斜視図である。また、図2は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の容器内方に配置されている構成要素を示す斜視図である。具体的には、図2は、蓄電素子10から容器100の本体111を分離した状態での構成を示す斜視図である。また、図3は、本発明の実施の形態に係る電極体400の構成を示す斜視図である。
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。例えば、蓄電素子10は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)に適用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子300とを備えている。また、図2に示すように、容器100内方には、正極集電体120と、負極集電体130と、電極体400とが収容されている。
なお、上記の構成要素の他、正極集電体120及び負極集電体130の側方に配置されるスペーサ、容器100内の圧力が上昇したときに当該圧力を開放するための安全弁、または、電極体400等を包み込む絶縁フィルムなどが配置されていてもよい。また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。
容器100は、矩形筒状で底を備える本体111と、本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成されている。また、容器100は、電極体400等を内部に収容後、蓋体110と本体111とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。なお、蓋体110及び本体111の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
電極体400は、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。正極は、アルミニウムやアルミニウム合金などからなる長尺帯状の正極基材層上に正極活物質層が形成されたものである。負極は、銅や銅合金などからなる長尺帯状の負極基材層上に負極活物質層が形成されたものである。セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。電極体400の詳細な構成については、後述する。
そして、図3に示すように、電極体400は、正極と負極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻回されて形成されている。なお、同図では、電極体400の形状としては長円形状を示したが、円形状または楕円形状でもよい。また、電極体400の形状は巻回型に限らず、平板状極板を積層した形状でもよいし、山折りと谷折りとを繰り返すことにより長尺帯状の極板を蛇腹状に積層した形状でもよい。
図2に戻り、正極端子200は、電極体400の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、電極体400の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体400に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体400に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子200及び負極端子300は、電極体400の上方に配置された蓋体110に取り付けられている。
正極集電体120は、電極体400の正極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、正極端子200と電極体400の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電体120は、電極体400の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。
負極集電体130は、電極体400の負極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、負極端子300と電極体400の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電体130は、電極体400の負極基材層と同様、銅または銅合金などで形成されている。
具体的には、正極集電体120及び負極集電体130は、本体111の壁面から蓋体110に亘って当該壁面及び蓋体110に沿って屈曲状態で配置される金属製の板状部材である。また、正極集電体120及び負極集電体130は、蓋体110に固定的に接続されており、電極体400の正極及び負極にそれぞれ溶接などによって固定的に接続されている。これにより、電極体400は、容器100の内部において、正極集電体120及び負極集電体130により、蓋体110から吊り下げられた状態で保持される。
次に、電極体400の詳細な構成について、説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係る電極体400の巻回状態を一部展開して示す斜視図である。また、図5は、本発明の実施の形態に係る電極体400の構成を示す断面図である。具体的には、図5は、図4に示された電極体400をA−A’断面で切断した場合の断面を拡大して示す図である。なお、図5では、巻回されることにより積層された、正極410、負極420及びセパレータ430のうち、最外周の構成のみ図示し、内周側(Y軸方向プラス側)についての図示は省略している。
これらの図に示すように、電極体400は、正極410と負極420とセパレータ430とが積層されて形成されている。ここで、セパレータ430は、2つのセパレータ431及び432からなる。つまり、電極体400は、正極410と負極420と2つのセパレータ431及び432とが、正極410と負極420との間にセパレータ431または432が配置されるようにして、巻回されて形成されている。
正極410は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる長尺帯状の導電性の正極集電箔の表面に、正極活物質層が形成された電極板(極板)である。なお、本発明に係る蓄電素子10に用いられる正極410は、特に従来用いられてきたものと異なるところはなく、通常用いられているものが使用できる。
つまり、正極410の正極活物質層に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、正極活物質として、LixMOy(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(LixCoO2、LixNiO2、LixMn2O4、LixMnO3、LixNiyCo(1−y)O2、LixNiyMnzCo(1−y−z)O2、LixNiyMn(2−y)O4など)、あるいは、LiwMex(XOy)z(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO4、LiMnPO4、LiNiPO4、LiCoPO4、Li3V2(PO4)3、Li2MnSiO4、Li2CoPO4Fなど)から選択することができる。また、これらの化合物中の元素またはポリアニオンは一部他の元素またはアニオン種で置換されていてもよく、表面にZrO2、MgO、Al2O3などの金属酸化物や炭素を被覆されていてもよい。さらに、ジスルフィド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラスチレン、ポリアセチレン、ポリアセン系材料などの導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
負極420は、銅または銅合金からなる長尺帯状の導電性の負極集電箔の表面に、負極活物質層が形成された電極板(極板)である。負極活物質層は、セパレータを挟んで正極の正極活物質層に対向する位置に配置されている。なお、本発明に係る蓄電素子10に用いられる負極420は、特に従来用いられてきたものと異なるところはなく、通常用いられているものが使用できる。
つまり、負極420の負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金などのリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボンなど)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li4Ti5O12など)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
また、正極410は、正極集電体120と接続される部分であるX軸方向マイナス側の端部(正極活物質層が形成されていない正極集電箔の端部)が、セパレータ430から突出して配置されている。また、負極420は、負極集電体130と接続される部分であるX軸方向プラス側の端部(負極活物質層が形成されていない負極集電箔の端部)が、セパレータ430から突出して配置されている。
なお、以降、正極410において正極活物質層が形成されていない領域を正極410の未塗工部と記載し、負極420において負極活物質層が形成されていない領域を負極420の未塗工部と記載する場合がある。また、正極410において正極活物質層が形成されている領域を正極410の塗工部と記載し、負極420において負極活物質層が形成されている領域を負極420の塗工部と記載する場合がある。
なお、正極410の正極集電箔または負極420の負極集電箔として、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金など、適宜公知の材料を用いることもできる。
セパレータ430は、正極410と負極420との間に配置される長尺帯状のセパレータであり、具体的には、樹脂からなる微多孔性のシートであり、有機溶媒と電解質塩とを含む電解液が含浸されている。ここで、セパレータ430としては、有機溶剤に不溶な織布、不織布、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂微多孔膜が用いられ、材料、重量平均分子量や空孔率の異なる複数の微多孔膜が積層してなるものや、これらの微多孔膜に各種の可塑剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤を適量含有しているものや片面及び両面にシリカなどの無機酸化物を塗布したものであってもよい。特に、合成樹脂微多孔膜を好適に用いることができる。中でもポリエチレン及びポリプロピレン製微多孔膜、アラミドやポリイミドと複合化させたポリエチレン及びポリプロピレン製微多孔膜、または、これらを複合した微多孔膜などのポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗などの面で好適に用いられる。
このセパレータ430は、巻回方向の端部が、負極420の当該巻回方向の端部から突出して配置されている。また、負極420は、巻回方向の端部が、正極410の当該巻回方向の端部から突出して配置されている。よって、セパレータ430は、負極420の端部420a及び正極410の端部410aに位置する領域を含む。
ここで、電極体400は、正極410及び負極420の端部に位置し、セパレータ430を保護する保護部440を有する。具体的には、保護部440は、正極410及び負極420の巻回方向の端部に位置する。すなわち、保護部440は、セパレータ430の、負極420の端部420a及び正極410の端部410aの位置に配置されている。
この保護部440は、負極420の巻回方向の巻き終わりの端部420aに沿って、X軸方向に延びる保護部441と、正極410の巻回方向の巻き終わりの端部410aに沿って、X軸方向に延びる保護部442とからなる。
保護部440(保護部441及び442)は、正極410及び負極420の端部とセパレータ430との間に配置されたシート状の部材を有する。具体的には、図5に示すように、保護部441は、負極420の端部420aとセパレータ430との間に配置されたシート状の部材である保護シート451を有する。また、保護部442は、正極410の端部410aとセパレータ430との間に配置されたシート状の部材である保護シート452を有する。
保護シート451は、負極420の端部420aを挟むように、当該端部420aの両側に配置されている。具体的には、保護シート451は、セパレータ430を保護するX軸方向に延びる長尺帯状のシートであり、負極420の端部420aの内側(Y軸方向プラス側)及び外側(Y軸方向マイナス側)に配置される。
なお、保護シート451は、負極420の端部420aの内側及び外側のいずれか一方に配置されていてもよい。
保護シート452は、正極410の端部410aを挟むように、当該端部410aの両側に配置されている。なお、保護シート452は、配置されている位置を除いて保護シート451と同様の構成を有するため、詳細については省略する。
これら保護シート451及び452としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂によって形成された絶縁テープを用いることができる。なお、保護シート451は、これに限らず、絶縁性を有するシートであればどのような材質で形成されていてもかまわない。
このように、電極体400は、正極410及び負極420の端部に配置された保護シート451及び452を有する。この構成により、本実施の形態に係る蓄電素子10は、微小短絡の発生を抑制することができる。
この理由について、以下の電極体400を製造する工程の説明において、併せて説明する。図6Aは、本発明の実施の形態に係る電極体400を製造する工程を示す断面図及び当該断面図の一部拡大図である。また、図6Bは、図6Aに続く工程を示す断面図及び当該断面図の一部拡大図である。
図6Aの(a)に示すように、電極体400は、正極410、負極420及びセパレータ430が積層された状態で巻きつけられることにより形成される。
そして、セパレータ430がカッター等で裁断された後に、図6Aの(b)に示すように、保護部440(保護部441及び442)を負極420の端部420a及び正極410の端部410aに配置する(保護工程)。具体的には、セパレータ430の、負極420の端部420aに対向する位置に保護シート451を配置し、セパレータ430の、正極410の端部410aに対向する位置に保護シート452を配置する。
なお、保護工程は、セパレータ430が裁断される前、又は、裁断されると同時であってもよく、後述するプレス工程の前であればよい。
ここで、保護シート451及び452は、セパレータ430の、正極410及び負極420の端部に対応する位置に接着されて(取り付けられて)いる。
具体的には、保護シート451は、巻回後の電極体400において、セパレータ430の、負極420の端部420aに対向する位置に接着されている。また、保護シート452は、巻回後の電極体400において、セパレータ430の、正極410の端部410aに対向する位置に接着されている。
より具体的には、負極420の端部420aの外側(Y軸方向マイナス側)に配置される保護シート451は、当該負極420の外側に配置されるセパレータ431の内側(Y軸方向プラス側)に接着され(取り付けられ)ている。また、負極420の端部420aの内側に配置される保護シート451は、当該負極420の内側に配置されるセパレータ432の外側に接着されている。
同様に、正極410の端部410aの外側(Y軸方向マイナス側)に配置される保護シート452は、当該正極410の外側に配置されるセパレータ432の内側に接着されている。また、正極410の端部410aの内側に配置される保護シート452は、当該正極410の内側に配置されるセパレータ431の外側に接着されている。
このように、保護シート451及び452を負極420の端部420a及び正極410の端部410aに配置した後に、図6Bの(c)に示すように、プレス装置20によって、正極410、負極420及びセパレータ430をプレスする。つまり、保護部440(保護部441及び442)により保護されたセパレータ430と正極410及び負極420とをプレスする(プレス工程)。
これにより、図6Bの(d)に示すように、本実施の形態に係る電極体400が製造される。
ここで、プレス装置20によるプレス圧は15〜80kgf/cm2で行う。このプレス工程により、蓄電素子10の外装体である容器100に収容する極板(正極410及び負極420)を増加させることができるので、蓄電素子10の高出力化を図ることができる。
このプレス工程では、正極410、負極420及びセパレータ430は、Y軸方向に圧迫される。したがって、正極410、負極420及びセパレータ430の隣接する部材同士が互いに強く押し付けられる。
このとき、隣接する部材同士が面接触している箇所では、これら部材が外方から圧迫される場合、各部材自体が圧縮又は変形しやすいために、食い込みが生じにくい。しかしながら、隣接する部材同士が線接触又は点接触している箇所、つまり各部材の端部では、当該端部のエッジによって接触する他の部材への食い込みが生じやすくなる。
したがって、プレス工程において、保護シート451及び452が配置されていない場合、プレスによって、負極420の端部420a及び正極410の端部410aが、当該端部420a及び当該端部410aに隣接するセパレータ430に食い込む場合がある。このような食い込みは、当該セパレータ430に亀裂又は凹部等の不具合を生じさせるため、微小短絡を引き起こす虞がある。
これに対して、本実施の形態では、プレス工程において、保護シート451及び452によりセパレータ430が保護された状態でプレスする。つまり、プレスによって生じる負極420の端部420a及び正極410の端部410aによる食い込みは、主として保護シート451及び452に生じ、セパレータ430には生じにくくなる。よって、微小短絡を抑制することができる。
なお、電極体400は、プレス工程を経ることなく製造されていてもよく、この場合であっても、保護シート451及び452が配置されていることにより、微小短絡の発生を抑制できる。例えば、電極体400は、充放電の繰り返しにより膨張していくために、容器100の内壁によって圧迫される。このとき、保護シート451及び452が配置されていることにより、セパレータ430に生じ得る亀裂又は凹部等の不具合を低減することができるので、微小短絡の発生を抑制できる。
また、図6Bの(d)に示すように、本実施の形態に係る電極体400は平坦部FAを有する扁平形状に形成され、正極410の巻回方向の端部410a、及び、負極420の巻回方向の端部420aは、平坦部FAに位置する。
具体的には、電極体400は、正極410、負極420及びセパレータ430が巻回されることで形成された一対の平坦部FAと、当該一対の平坦部FAを繋ぐ一対の湾曲部CAとを有する。
このような電極体400は、プレス工程において、平坦部FAが厚み方向に挟み込まれるようにプレスされるため、平坦部FAに位置する正極410の端部410a及び負極420の端部420aによってセパレータ430への食い込みが生じやすい。そこで、本実施の形態では、正極410の端部410aの位置、及び、負極420の端部420aの位置に保護部440を配置することにより、セパレータ430への食い込みが生じやすい箇所における当該食い込みを抑制できる。
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、負極420の端部420a及び正極410の端部410aに位置し、セパレータ430を保護する保護部440(保護部441及び442)を有する。
これにより、負極420の端部420a及び正極410の端部410aによるセパレータ430への食い込みを抑制できるので、セパレータ430に生じる亀裂又は凹部等の不具合を低減できる。よって、微小短絡を抑制することができる。
ここで、本実施の形態では、保護部440(保護部441及び442)は、負極420の端部420a及び正極410の端部410aとセパレータ430との間に配置されたシート状の部材である保護シート451及び452を有する。
このようなシート状の部材を配置することにより、負極420の端部420a及び正極410の端部410aによる食い込みは、主として保護シート451及び452に生じ、セパレータ430には生じにくくなる。よって、微小短絡を抑制することができる。
また、保護シート451及び452は、負極420の端部420a及び正極410の端部410aを挟むように、両面に配置されている。
これにより、電極体400が正極410、負極420及びセパレータ430からなる組が複数組積層されて形成されるような構成であっても、各組のセパレータ430への食い込みを抑制できる。よって、積層回数が多い電極体400であっても、微小短絡を抑制することができる。
例えば、巻回型の電極体400では、正極410と負極420との間にセパレータ430(セパレータ431または432)が配置されるようにして、巻回されて形成されている。よって、正極410及び負極420の各々の内周側及び外周側のいずれにもセパレータ430(セパレータ431または432)が配置される。そこで、保護シート451及び452を正極410及び負極420の両面(内周側の面及び外周側の面)に配置することにより、最外周のセパレータ430への食い込み、及び、最外周の1つ内周のセパレータ430への食い込みのいずれも抑制できる。
また、保護シート451及び452は、セパレータ430の、負極420の端部420a及び正極410の端部410aに対応する位置に接着されて(取り付けられて)いる。
このように、保護シート451及び452がセパレータ430に取り付けられていることにより、保護シート451及び452の位置ずれを抑制することができるので、微小短絡をより確実に抑制することができる。
また、電極体400は、正極410及び負極420とセパレータ430とが巻回されて形成されており、保護部440は、正極410及び負極420の巻回方向の端部に位置する。
このような巻回型の電極体400では、当該電極体400が圧迫された際に、正極410及び負極420の巻回方向の端部に比較的大きな圧迫力が付与されやすい。つまり、当該端部において、セパレータ430への食い込みが生じやすい。そこで、当該端部に保護部440を配置することにより、微小短絡をより確実に抑制することができる。
また、平坦部FAを有する扁平形状に形成された電極体400は、蓄電素子10の容器100に収容される正極410及び負極420を増加させることで蓄電素子10の高出力化を図るために、製造工程において、プレスされる場合がある。この場合、電極体400は、平坦部FAが厚み方向に挟み込まれるようにプレスされる。よって、正極410の巻回方向の端部410a及び負極420の巻回方向の端部420aの少なくとも一方が平坦部FAに位置すると、セパレータ430への食い込みが特に生じやすくなる。そこで、当該端部410a及び420aに保護シート451及び452が位置するように配置することにより、セパレータ430への食い込みが生じやすい箇所における当該食い込みを抑制できる。よって、微小短絡をより効果的に抑制することができる。
また、製造工程におけるプレスの有無に関わらず、電極体400が、一対の湾曲部CAと一対の平坦部FAとを有する扁平形状に巻回されている場合、電極体400の膨張によって、特に平坦部FAが蓄電素子10の容器100に押し付けられる。つまり、平坦部FAに特に大きな圧迫力が付与されやすい。よって、当該平坦部FAに正極410の端部410a及び負極420の端部420aの少なくとも一方が位置する場合には、セパレータ430への食い込みが生じやすい。このため、正極410及び負極420の巻回方向の端部に保護部440を配置することにより、微小短絡をより効果的に抑制することができる。
また、巻回型の電極体400では、正極410及び負極420に用いられる電極板は、一般的に、裁断によって帯状に切断される。この際に、裁断された端部にバリなどが残る場合があり、このバリは、巻回後において巻回方向の端部に位置する。このようなバリがセパレータ430に食い込んだ場合には、食い込み箇所から亀裂が発生して微小短絡が発生する虞がある。そこで、正極410及び負極420の巻回方向の端部に保護部440を配置することにより、上記正極410及び負極420のバリにより亀裂が発生しやすい箇所における当該亀裂の発生を抑制できる。
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法によれば、保護部440によりセパレータ430が保護された状態でプレスすることにより、電極体400を形成する。
これにより、プレスする際に生じる、負極420の端部420a及び正極410の端部410aのセパレータ430への食い込みを低減できる。よって、プレスによって生じる微小短絡の発生を抑制することができる。
また、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法によれば、保護工程(図6Aの(b)参照)では、正極410の巻回方向の端部410aの位置、及び、負極420の巻回方向の端部420aの位置に、保護シート451及び452を配置する。
ここで、正極410及び負極420とセパレータ430とが巻回されて形成された巻回型の電極体400では、平板状の正極及び負極とセパレータとが積層されて形成された積層型の電極体と比較して、正極410及び負極420とセパレータ430との積層方向の厚みが大きくなりやすい。そこで、プレスすることにより、巻回型の電極体400であっても蓄電素子10の容器100に収容される正極410及び負極420を増加させることができるので、当該蓄電素子10の高出力化を図ることができる。また、プレス工程(図6Bの(c)参照)は保護工程の後に行われるので、プレス工程における、負極420の端部420a及び正極410の端部410aのセパレータ430への食い込みを抑制できる。したがって、蓄電素子10の高出力化を図りつつ、微小短絡を抑制することができる。
(変形例1)
次に、本実施の形態の変形例1について説明する。上記実施の形態では、保護部440は、正極410及び負極420の巻回方向の端部に位置するとした。これに対し、本変形例では、保護部は、正極410及び負極420の端部のうち当該正極410及び負極420の角部に位置している。
図7は、本発明の実施の形態の変形例1に係る電極体400aの巻回状態を一部展開して示す斜視図である。また、図8は、本発明の実施の形態の変形例1に係る電極体400aの構成を示す上面図である。具体的には、同図は、図7の保護部440a付近を拡大し、Y軸方向マイナス側から見た図である。なお、同図は、説明の都合上、セパレータ430を透視した図となっている。
図7に示すように、保護部440aは、正極410及び負極420の端部のうち当該正極410及び負極420の角部に位置する。この保護部440aは、負極420の角部に位置する保護部441aと、正極410の角部に位置する保護部442aとからなる。
ここで、正極410及び負極420の端部のうち特に角部(角部410b及び420b)では、電極体が圧迫された際にセパレータ430への食い込みが生じやすい。そこで、保護部440aが正極410及び負極420の角部(角部410b及び420b)に位置することにより、セパレータ430への食い込みが生じやすい箇所において当該食い込みを抑制することができる。
図8に示すように、保護部441aは、例えば円弧状等の曲線状に面取りされた負極420の角部420bを有し、保護部442aは、例えば円弧状等の曲線状に面取りされた正極410の角部410bを有する。
角部420bは、負極420の角部であって、かつ、当該負極420の塗工部に位置する。この角部420bは、負極420に用いられる電極板が、裁断によって帯状に切断された後に、例えば円弧状等の曲線状に面取りされることにより形成されている。これにより、角部420bは、電極体400の積層方向(Y軸方向)から見て、面取りされている。
なお、角部410bは、正極410の角部であって、かつ、当該正極410の塗工部に位置する点を除いて、角部420bと同様の構成を有するため、詳細については省略する。
以上のように、本発明の実施の形態の変形例1に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、正極410及び負極420に用いられる電極板が裁断によって帯状に切断された後に面取りされない場合、電極体が圧迫された際に正極410及び負極420の角部の先端にかかる圧迫力が大きくなる。よって、セパレータ430に食い込みが生じやすくなる。
そこで、正極410の角部410b及び負極420の角部420bを曲線状に面取りされた形状とすることにより、正極410及び負極420の角部にかかる圧迫力を緩和することができる。よって、セパレータ430に生じる食い込みを抑制できるので、微小短絡を抑制することができる。
(変形例2)
次に、本実施の形態の変形例2について説明する。上記実施の形態の変形例1では、保護部440aは、曲線状に面取りされた角部410b及び角部420bを有するとした。これに対し、本変形例では、保護部は、折り返された正極410及び負極420の角部を有する。
図9は、本発明の実施の形態の変形例2に係る電極体400bの構成を示す斜視図である。具体的には、同図の(a)は、当該電極体400bの巻回状態を一部展開して示す斜視図である。また、同図の(b)は(a)に示す保護部441b付近の拡大図である。また、同図の(c)は(a)に示す保護部442b付近の拡大図である。
同図の(a)に示すように、保護部440bは、正極410及び負極420の端部のうち当該正極410及び負極420の角部に位置する。この保護部440bは、負極420の角部に位置する保護部441bと、正極410の角部に位置する保護部442bとからなる。
ここで、同図の(b)に示すように、保護部441bは、折り返された負極420の端部を有する。具体的には、保護部441bは、内側(Y軸方向プラス側)に折り返された負極420の角部420dを有する。
また、保護部442bは、折り返された正極410の端部を有する。具体的には、保護部442bは、外側(Y軸方向マイナス側)に折り返された正極410の角部410dを有する。
なお、角部410d及び420dの各々は折り返されていればよく、各々の折り返し方向は上記に限らない。
以上のように、本発明の実施の形態の変形例2に係る蓄電素子によれば、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、正極410及び負極420の端部が折り返されない場合、電極体が圧迫された際に当該端部にかかる圧迫力が大きくなる。よって、本変形例では、正極410及び負極420の端部(本変形例では角部410d及び420d)を折り返すことにより、正極410及び負極420の端部にかかる圧迫力を緩和することができる。よって、セパレータ430に生じる食い込みを抑制できるので、微小短絡を抑制することができる。
また、例えば、正極410及び負極420に用いられる電極板は、カッター等による裁断によって帯状に切断される際に、裁断された端部において、当該カッター等の進行方向等によって定まる所定方向に向かってバリが発生する場合がある。つまり、正極410及び負極420の所定面にバリ面が形成される場合がある。このようなバリがセパレータ430に食い込んだ場合には、食い込み箇所から亀裂が発生して微小短絡が発生する虞がある。そこで、バリ面が形成された所定面同士が対向するように、当該端部を折り返してもよい。つまり、当該端部を、当該所定面で谷折りとなるように折り返してもよい。これにより、上記正極410及び負極420のバリにより亀裂が発生しやすい箇所における当該亀裂の発生を抑制できる。
(その他の変形例)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。
つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、上記実施の形態及びその変形例では、保護部は正極410及び負極420の巻回方向の巻き終わりの端部に配置されるとしたが、図10に示すように、保護部440cは当該巻回方向の巻き始めの端部に配置されてもよい。図10は、本発明のその他の変形例に係る電極体400cの構成を示す斜視図及び当該斜視図の一部拡大図である。
同図に示すように、電極体400cは、セパレータ430と負極420と正極410とが、巻き芯500に巻きつけられて形成されている。
ここで、一般的に、巻回型の電極体は、巻回方向の端部において、正極の両側(内周側及び外周側)に負極が配置されるように形成される。具体的には、正極基材層の両面に正極活物質層が配置されることで形成された正極を有する電極体の場合、当該正極活物質層に対向して負極が配置される。このため、例えば、図10に示す電極体400cでは、巻回方向の巻き始めにおいて正極410よりも先に負極420を1周余分に巻くことにより、正極410の巻き始めの端部410eにおいて、当該端部420eの内周側に負極420が配置される。これにより、巻き始めの端部においても、巻き終わりの端部と同様に、正極410を挟み込むように負極420が配置される。
また、セパレータ430は、巻回方向の巻き終わりの端部と同様に、巻回方向の巻き始めの端部が負極420の当該巻回方向の端部から突出して配置されている。また、負極420も、巻き終わりの端部と同様に、巻回方向の巻き始めの端部が正極410の当該端部から突出して配置されている。よって、セパレータ430は、負極420の巻回方向の巻き始めの端部420e及び正極410の巻回方向の巻き始めの端部410eに位置する領域を含む。
保護部440cは、負極420の端部420eに位置する保護シート451を有する保護部441cと、正極410の端部410eに位置する保護シート452を有する保護部442cとからなる。
このように、正極410及び負極420の巻回方向の巻き始めの端部(端部410e及び420e)に、保護部440(保護部441c及び442c)を配置することにより、上記実施の形態及びその変形例と同様の効果を奏する。つまり、当該巻き始めの端部(端部410e及び420e)における微小短絡を抑制することができる。
また、本発明に係る蓄電素子の製造方法は、上記実施の形態で説明したプレス工程(図6Bの(c)参照)の後に、保護シート451及び452を取り除く除去工程を含んでもよい。図11は、本発明のその他の変形例に係る蓄電素子の製造方法における製造工程を示すフローチャートである。
なお、同図に示す保護工程(S101)は上記実施の形態で説明した保護工程(図6Aの(b)参照)に相当し、プレス工程(S102)は上記実施の形態で説明したプレス工程(図6Aの(c)参照)に相当するため、詳細については省略する。
同図に示すように、蓄電素子の製造方法は、プレス工程の後に、保護シート451及び452を取り除く除去工程(S103)を含んでもよい。これによっても、プレスする際に生じる、負極420の端部420a及び正極410の端部410aのセパレータ430への食い込みを低減できる。よって、プレスによって生じる微小短絡の発生を抑制することができる。また、保護シート451及び452を取り除くことにより、電極体の局所的な突出を抑制することができる。このため、例えば、蓄電素子10の容器100によって電極体の特定の箇所が圧迫されることによって生じ得る電極体の破損等の不具合を低減することができる。
また、保護部は、正極410及び負極420の巻回方向の両端部、すなわち、巻き終わりの端部及び巻き始めの端部のいずれにも配置されていてもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、保護部は正極410及び負極420の各々に対応して配置されるとしたが、図12に示すように、保護部440dは正極410のみに対応して配置されていてもよい。図12は、本発明のその他の変形例に係る電極体400dの構成を示す断面図及び当該断面図の一部拡大図である。
同図に示すように、電極体400dにおける保護部440dは、正極410及び負極420の巻回方向の端部410a、410e、420a及び420eにおいて、当該端部を構成する正極410及び負極420のうち正極410の端部410a及び410eに位置する。具体的には、保護部440dは、上記実施の形態で説明した、保護シート452を有する保護部442と、その他変形例で説明した、保護シート452を有する保護部442cとからなる。
ここで、一般的に負極420は正極410よりも大きいため、巻回型の電極体400dでは、正極410及び負極420の巻回方向の端部において、負極420が正極410よりも突出して配置される。このため、電極体400dが圧迫された際に、負極420の巻回方向の端部420a及び420eは対向する正極410がないために比較的圧迫されにくいものの、正極410の端部410a及び410eは対向する負極420によって圧迫されやすい。つまり、正極410及び負極420の巻回方向の端部では、正極410の端部410a及び410eの位置において、セパレータ430への食い込みが生じやすい。そこで、当該正極410の端部410a及び410eに保護部440d(本変形例では保護シート452)が位置するように配置することにより、セパレータ430への食い込みが生じやすい箇所において、微小短絡を抑制することができる。
なお、保護部440dは、正極410及び負極420の巻回方向のいずれか一方のみ(巻き始め又は巻き終わり)に配置されていてもよい。つまり、保護部440dは、保護部442及び保護部442cのいずれか一方のみからなってもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、保護部は正極410及び負極420の巻回方向の端部に配置されるとしたが、保護部は正極410及び負極420の巻回軸の方向(X軸方向)の端部に配置されていてもよい。
また、上記変形例2では、保護部440bは、正極410及び負極420の端部のうち当該正極410及び負極420の角部に位置するとした。しかし、保護部440bは正極410及び負極420の端部に位置していればよく、正極410及び負極420の巻回方向の端部に沿ってX軸方向に延びて配置されていてもよい。つまり、正極410及び負極420の巻回方向の端部がX軸方向に延びる線で折り返されていてもよい。
また、実施の形態の構成に変形例2の構成を組み合わせてもかまわない。つまり、保護部は、折り返された正極410及び負極420の端部と、当該端部に位置する保護シート451及び452とを有してもよい。言い換えると、折り返された正極410及び負極420の端部に対向するセパレータ430に、保護シート451及び452が取り付けられていてもよい。
また、上記実施の形態では、保護シート451及び452はセパレータ430に取り付けられているとしたが、正極410及び負極420に取り付けられていてもよい。これにより、上述したような実施の形態の構成に変形例2の構成を組み合わせる場合には、正極410及び負極420の折り返された端部における復元力による戻りを抑制できる。
また、上記実施の形態では、保護シート451及び452として絶縁テープを例に挙げたが、当該保護シート451及び452はシート状の部材であればよく、接着性を有さなくてもよい。これによっても、保護シート451及び452の位置ずれが多少発生する虞があるものの、負極420の端部420a及び正極410の端部410aのセパレータ430への食い込みは低減できる。
また、上記実施の形態では、セパレータ430を保護する保護部440が保護シート451及び452を有する構成について説明した。しかし、保護部440はセパレータを保護できる構成であればよく、例えば、エポキシ樹脂からなる粒子を塗装することによって形成された保護膜を有してもよい。なお、このような保護膜に用いられる材質としては、エポキシ樹脂の他に、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、カプトン、テフロン(登録商標)、シリコン、ポリイソプレン、及びポリ塩化ビニルなどの絶縁性のポリマーを例示することができる。
また、上記実施の形態及びその変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。また、上記実施の形態及びその変形例の部分的な構成を、適宜組み合わせてなる構成であってもよい。例えば、上述したように実施の形態に変形例2の構成を組み合わせてなる構成であってもかまわないし、実施の形態に変形例1の構成を組み合わせてなる構成であってもかまわない。