JP2016059326A - 糖化もろみの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】香味成分の調製方法の一つとして、糖化もろみの加熱装置に着目し、これが、ビールテイスト飲料の品質へ及ぼす影響を明らかにし、香味に優れたビールテイスト飲料を、効率良く製造するのに有用な、糖化もろみの製造方法を提供すること。
【解決手段】糖化用もろみの一部をタンクに抜き出し、加熱後、返送して残部と混合する糖化もろみの製造方法であって、前記抜き出した糖化用もろみを銅管内にて加熱することを特徴とする、糖化もろみの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、糖化もろみの製造方法に関する。より詳しくは、ビール等のビールテイスト飲料の製造に用いられる糖化もろみの製造方法、該製造方法により得られた糖化もろみを原料とするビールテイスト飲料及び該製造方法に用いられる装置に関する。
近年の消費者の嗜好の多様化にともなって、様々な香味特徴をもつビールテイスト飲料の開発が望まれている。
例えば、特許文献1では、糖とタンパク分解物とを105℃以上121℃以下でメイラード反応させることにより調製した物及びその調製物を用いることで、発酵アルコール飲料の液色及び風味を調整することが可能となり、従来用いられているカラメルのような着色料を用いることなく、ビール様の自然な色度や風味を付与した発酵アルコール飲料を製造できることが開示されている。
特許文献2では、ビールや発泡酒の原料となる麦芽や麦、米、コーン、こうりゃん、馬鈴薯、スターチ、糖類等の澱粉質原料の糖化を行った後に、122℃以上141℃以下の反応温度によって糖及び/又はタンパク分解物を反応させ、高温反応生成物であるマルトールやフラネオールを従来より多く含有させることで、味の厚みや香ばしさを増強させるビールテイスト飲料を製造できることが報告されている。
特許文献3では、大麦種子、大麦麦芽、大麦種子抽出液、大麦麦芽抽出液、またはこれらの混合物を120℃〜150℃で処理することによって生ずる高分子成分(アミノカルボニル反応生成成分およびカラメル反応生成成分)中の特定分子量画分が、まろやかな旨みや味の厚みを有することから、それらを香味付与剤としてビールテイスト飲料などの飲食品に添加することによって、ビールテイスト飲料の旨みや重厚感を増強することができ、ビールテイスト飲料の香味を大幅に向上させることができることが報告されている。
特許第3836117号公報 国際公開WO2009/078360号公報 国際公開WO2009/078359号公報
しかしながら、特許文献1の方法ではメイラード反応により香味成分が生成されるものの、香味成分の抽出が必ずしも十分ではなく、所望の香味を達成するにはさらなる工夫が必要である。一方、特許文献2、3のように高温で処理すると、味の厚みや香ばしさを増強させる成分の抽出が可能となるものの、一方で「コゲ」様の成分等も生じやすくなるために所望の風味に調整することが難しく、また、反応液温をそのような高温に調整するには仕込釜をより高温に加熱する必要があり、設備面からすると効率が良いものとは言えない。
また、糖化もろみの調製に用いる仕込釜としては、銅釜を用いることもあったが、その維持や管理が煩雑であることから、現在ではステンレス(SUS)製の釜を用いるのが主流である。
本発明の課題は、香味成分の調製方法の一つとして、糖化もろみの加熱装置に着目し、これが、ビールテイスト飲料の品質へ及ぼす影響を明らかにし、香味に優れたビールテイスト飲料を、効率良く製造するのに有用な、糖化もろみの製造方法を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、糖化もろみを製造する際に、糖化用もろみの加熱を銅製の管内にて行うことによって、所望のビール品質を精度良く製造するのに有用な、糖化もろみを製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の〔1〕〜〔3〕に関する。
〔1〕 糖化用もろみの一部をタンクに抜き出し、加熱後、返送して残部と混合する糖化もろみの製造方法であって、前記抜き出した糖化用もろみを銅管内にて加熱することを特徴とする、糖化もろみの製造方法。
〔2〕 前記〔1〕記載の製造方法により得られた糖化もろみを原料の一部として用いて得られる、ビールテイスト飲料。
〔3〕 糖化もろみの製造装置において、糖化用もろみを保温可能に収容する仕込槽と、該仕込槽内の糖化用もろみの一部を受け入れ、加熱処理後のもろみを前記仕込槽に返送可能なタンクとを有し、該タンクが銅管を有する外部循環配管を備え、該銅管内にてもろみの加熱を可能としたことを特徴とする、糖化もろみの製造装置。
本発明の製造方法により得られる糖化もろみは、「コゲ感」などの官能面でマイナスとなる要因の発生が抑制され、「コク」、「芳ばしさ」等が増強され、所望のビールテイスト飲料を精度良く製造することが可能になる。
図1は、加熱方法が異なる糖化もろみを用いたビールテイスト飲料の官能評価の結果を示す図である。 図2は、本発明の製造方法において用いられる製造装置の一態様を示す模式図である。
本発明の糖化もろみの製造方法は、糖化用もろみの一部をタンクに抜き出し、加熱後、返送して残部と混合する製造方法であって、前記抜き出した糖化用もろみを銅管内にて加熱することを特徴とする。
銅は、酸化剤としての機能を有する金属である。よって、糖化用もろみを銅製容器内で加熱すると、その詳細なるメカニズムは不明なるも銅との接触面において酸化反応が進行し、「コク」、「芳ばしさ」等に関する成分の生成が起こりやすくなると推定される。
(糖化用もろみ)
本発明において「糖化用もろみ」とは、麦芽を含む原料に温水を加えて混ぜ合わせたものであり、加熱によりデンプンから糖への反応が行なわれる。例えば、仕込槽に当業者に周知の方法で粉砕した麦芽を投入し、約40〜70℃の温水に混合することにより得られる。なお、仕込槽は、当業者に公知のものを特に限定なく用いることができる。
糖化用もろみの原料としては、麦芽の他に、麦、米、コーン、こうりゃん、馬鈴薯、スターチ、糖類等の澱粉質原料を用いることができる。また、麦芽、麦、米などの穀物原料中に含まれるタンパク分解物などや、苦味料、色素などの添加物を含んでいてもよい。
(タンク)
糖化用もろみの一部を抜き出して投入するタンク(仕込釜)としては、加熱処理後のもろみを受け入れ、そして仕込槽に返送可能なものであればよく、材質は特に限定されない。例えば、前述したように、かつては銅製が用いられることもあったが、維持や管理の煩雑さを考慮し、現在はステンレス製が好適に用いられる。
糖化用もろみのタンクへの抜き出し量は特に設定されず、公知技術に従って適宜調整することができる。例えば、仕込槽に充填した糖化用もろみの10〜50質量%をタンクに抜き出すことができる。また、抜き出して、戻す回数も特に制限はない。
(加熱処理)
本発明において、抜き出した糖化用もろみの加熱処理は銅管にて行われる。該糖化用もろみの加熱処理が銅管にて行われるのであれば、一部を銅管内に抜き出して加熱しても、全部を銅管内にて循環させながら加熱してもよい。銅管内への抜き出し量又は循環量は特に設定されず、適宜調整することができる。銅管は、銅管全体を加熱して熱交換することが出来ればその形状は特に設定されないが、「コク」、「芳ばしさ」等に関する成分の生成の観点から、銅管の内表面積(m)とタンクに抜き出した糖化用もろみの体積(m)の比(内表面積/体積)が、好ましくは1.5以上、より好ましくは3.0以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.0以下、さらに好ましくは7.0以下、よりさらに好ましくは5.0以下である。また、銅管の長さや太さは、製造設備や製造量に応じて適宜調整することができる。なお、銅の純度や品質は特に限定されない。
加熱処理は、前記銅管を加熱することが出来れば、直火加熱であってもよいが、銅管の維持やメンテナンスを考慮して、蒸気を用いて加熱することが好ましい。加熱に用いる蒸気としては、絶対圧力で0.12〜0.20MPaの蒸気を用いることが好ましい。蒸気はボイラー(図示しない)で製造された蒸気を、減圧弁を介して減圧し、前記銅管の加熱に用いる。ここで絶対圧力とは、減圧弁から銅管に至るまでの蒸気配管内のゲージ圧に大気圧を加えた値である。銅管を加熱する蒸気の温度は、105℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。また、120℃以下が好ましく、115℃以下がより好ましい。加熱時間は、加熱用に抜き出したもろみ量に応じて一概には決定されず、銅管内のもろみは管内に滞留して加熱されても、循環中に加熱されてもよい。また、糖化用もろみの全量の加熱が終了するまで前記銅管を加熱しておくのが望ましく、前記加熱処理を行う回数も特に制限はない。抜き出した糖化用もろみは、仕込槽中の残部のもろみと混合して糖化を行うことから、前記加熱処理によって到達する温度は残部のもろみよりも高いものであればよく、例えば、前記加熱処理によって100℃にまで加熱することができる。
前記銅管は、糖化用もろみの加熱処理が行なえるのであれば、タンクとの間にもろみを抜き出すための配管や返送するための配管、もろみの量を調節するバルブ等を適宜設置することができる。なお、前記配管の材質や形状、長さは公知技術に従って、適宜設定することができるが、銅管の維持やメンテナンスのし易さの観点から、該配管から銅管の脱着が容易となる設計であることが好ましい。
かくして、銅管内にてもろみの加熱処理を行うことができる。得られた加熱後のもろみは残部のもろみと混合し、糖化を行って、本発明における糖化もろみを製造することができる。糖化の条件は、一般に知られている条件を用いればよい。
得られた糖化もろみは、穀皮等を濾過により取り除き、ホップなどを加えて煮沸し、凝固タンパク質などの固形分を取り除いた後、酵母を添加して発酵を行なわせ、必要に応じ濾過機などで酵母を取り除いて、ビールテイスト飲料を製造することができる。よって、本発明はまた、本発明の製造方法により得られた糖化もろみを原料の一部として用いて得られるビールテイスト飲料を提供する。なお、貯蔵(貯酒)、濾過・容器詰め、必要により殺菌の工程を経ることができ、これらの煮沸工程、固形分除去工程、発酵工程などにおける条件は、一般に知られている条件を用いればよい。
本発明のビールテイスト飲料は、銅管内にて加熱された糖化もろみを用いているのであれば、その他の原料や製法ならびに日本国酒税法によって種々の分類がなされ得るが、ビール様の風味を有する飲料であればどのような飲料でもよい。即ち、本発明のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、酵母による発酵工程を経る経ないにかかわらず、ビール風味の飲料を全て包含する。例えば、日本の酒税法上の名称における発泡酒、ビール、リキュール類、その他雑酒を含み、また、低アルコール分の発酵飲料(例えばアルコール分1%未満の発酵飲料)、スピリッツ類、ノンアルコールのビールテイスト飲料、ビールテイストの清涼飲料なども含む。本発明のビールテイスト飲料は、「コゲ感」が抑制され、「コク」、「芳ばしさ」が付与された、優れた香味を有するものである。
本発明のビールテイスト飲料中のアルコール濃度は特に限定されないが、好ましくは0〜40%(v/v)、より好ましくは1〜15%(v/v)である。なかでも、ビールや発泡酒といったビールテイスト飲料として消費者に好んで飲用される飲料と同程度のアルコール濃度、すなわち3〜8%(v/v)がより好ましい。
本発明のビールテイスト飲料は、通常の飲料と同様、ビン、缶、樽、またはペットボトル等の密封容器に充填して、容器入り飲料とすることができる。
またさらに、本発明は、糖化もろみの製造装置を提供する。
本発明の糖化もろみの製造装置は、糖化用もろみを保温可能に収容する仕込槽(図2中の符号1)と、該仕込槽内の糖化用もろみの一部を受け入れ、加熱処理後のもろみを前記仕込槽に返送可能なタンク(図2中の符号2)とを有するものであって、該タンクが銅管(図2中の符号3)を有する外部循環配管(図2中の符号4)を備え、該銅管内にてもろみの加熱を可能としたことを特徴とする。
仕込槽は公知技術に従って適宜設定することができ、前出の通りである。
また、タンクは、タンク本体に銅管を有する循環配管が外付けされたものであり、タンク本体は糖化用もろみの一部を仕込槽から受け入れ、加熱処理後のもろみを仕込槽に返送可能な配管を有することが好ましい。銅管は本発明の糖化もろみの製造方法にて用いられる銅管と同様であり、該銅管内の加熱に供されるもろみと加熱後のもろみの配送は循環配管によって行われる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によってなんら限定されるものではない。
実施例1及び比較例1、2
麦芽30kgを適当な粒度に粉砕し、これを仕込槽(200L容)に入れた後、120Lの温水を加えて、約40℃のマッシュ(糖化用もろみ)を作った。一部(30L)を抜き出して100℃まで昇温して煮沸し、残部と混合して糖化を行った。糖化が完了したマッシュを78℃まで昇温後、麦汁濾過槽に移し、濾過を行って濾液を得た。なお、実施例1、比較例1、2では、前述の一部のマッシュを100℃で煮沸する工程において使用する加熱設備が異なる。比較例1ではステンテス製釜(底面積0.20m、50L容)内にて全量を蒸気加熱する設備、比較例2では銅製釜(底面積0.20m、50L容)内にて全量を直火により加熱する設備、実施例1ではステンレス製釜内に全量を入れた後、これを10L/分で循環(循環中の銅管内に存在するマッシュ量7.5×10−4に相当)しながら、絶対圧力0.15MPaの蒸気を用いた、銅製の蒸気熱交換器(銅管:径23mm、長さ1.8m、内表面積0.13m、内表面積/ステンレス製釜内に入れたマッシュ体積=4.3)で加熱した後、ステンレス製釜に戻す設備を用いた。
得られた濾液の一部をとり、ホップを添加してから60〜90分間煮沸を行った。これら調整麦汁を同一条件下で、グルコース、スクロース、マルトース及びイソマルトースを主として資化し、三糖類を資化しない又は資化し難い下面ビール酵母を添加して約10℃にて10〜30日間発酵を行った後、濾過を行い濾過ビールを得た。
得られたビールの香味を、評点法による官能試験によって評価した。良く訓練された官能評価者7名が、「コク」、「芳ばしさ」、「多重奏の飲み応え」、「コゲ感」、及び「総合評価」の各項目について、3点満点で評価した。「非常に強く感じる」又は「非常に優れている」を3点、「明確に感じる」又は「優れている」を2点、「やや感じる」又は「少し優れている」を1点、「感じない」又は「普通」を0点として評価を行った。具体的には、7人の官能評価者によって3つのサンプル(実施例1、比較例1、2)の評価を行い、それぞれの項目ごとに評価結果の平均値と標準偏差から各評価結果の偏差値を算出し、その平均値を各サンプルの評価値とした。偏差値は、平均点が50であり、「コク」、「芳ばしさ」、「多重奏の飲み応え」、「総合評価」は数値が高いほど、「コゲ感」は数値が低いほど優れていることを示す。結果を表1及び図1に示す。
表1より、本発明の製造方法により得られた糖化もろみを用いたビールは、コゲ感が抑えられることに加え、コクや芳ばしさ、飲みごたえ等に優れることから、総合的に優れた香味を呈するものであることが分かる。
本発明の製造方法により得られた糖化もろみを用いたビールは、コゲ感が抑えられることに加え、コクや芳ばしさ、飲みごたえ等に優れるなど、嗜好品として新たなテイストを提供できる。
1 仕込槽
2 タンク(仕込釜)
3 銅管
4 外部循環配管
即ち、本発明は、以下の〔1〕〜〔〕に関する。
〔1〕 糖化用もろみの一部をタンクに抜き出し、加熱後、返送して残部と混合する糖化もろみの製造方法であって、前記抜き出した糖化用もろみを銅管内にて加熱することを特徴とする、糖化もろみの製造方法
〔2〕 糖化もろみの製造装置において、糖化用もろみを保温可能に収容する仕込槽と、該仕込槽内の糖化用もろみの一部を受け入れ、加熱処理後のもろみを前記仕込槽に返送可能なタンクとを有し、該タンクが銅管を有する外部循環配管を備え、該銅管内にてもろみの加熱を可能としたことを特徴とする、糖化もろみの製造装置。

Claims (5)

  1. 糖化用もろみの一部をタンクに抜き出し、加熱後、返送して残部と混合する糖化もろみの製造方法であって、前記抜き出した糖化用もろみを銅管内にて加熱することを特徴とする、糖化もろみの製造方法。
  2. 銅管内での加熱が、絶対圧力が0.12〜0.20MPaの蒸気により該銅管を加熱して行う、請求項1記載の製造方法。
  3. 銅管の内表面積(m)とタンクに抜き出した糖化用もろみの体積(m)の比(内表面積/体積)が1.5〜10.0である、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 請求項1〜3いずれか記載の製造方法により得られた糖化もろみを原料の一部として用いて得られる、ビールテイスト飲料。
  5. 糖化もろみの製造装置において、糖化用もろみを保温可能に収容する仕込槽と、該仕込槽内の糖化用もろみの一部を受け入れ、加熱処理後のもろみを前記仕込槽に返送可能なタンクとを有し、該タンクが銅管を有する外部循環配管を備え、該銅管内にてもろみの加熱を可能としたことを特徴とする、糖化もろみの製造装置。
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