JP2013135645A - 煮沸液量が低減されたビールテイスト飲料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ビールテイスト飲料の製造方法であって、製品の香味バランスを損なわずに原料液汁の煮沸の際の使用エネルギー量を低減する製造方法の提供。
【解決手段】ビールテイスト飲料の製造方法であって、多管式熱交換器(レーレンコッファ)を備えた煮沸釜を使用する煮沸工程において原料液汁の煮沸液量を煮沸釜の満量よりも減らすことにより煮沸時の使用蒸気量を削減し、かつ、原料液汁中の5−ヒドロキシメチルフルフラール濃度および揮発成分濃度を指標として原料液汁を煮沸または静置することにより香味バランスを調整する製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、原料液汁の煮沸液量が低減されたビールテイスト飲料(ビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料)の製造方法に関し、さらには、該飲料の製造に使用するエネルギーの削減方法にも関する。
ビールテイスト発酵飲料の製造プロセスで消費されるエネルギーの内、約80%が仕込工程で消費されており、この内平均37%が麦汁製造に必要であると言われている(非特許文献1)。そのため、麦汁煮沸における所要エネルギーを低減させることにより、ビール製造における消費エネルギー量を大幅に削減できると期待されている。
煮沸時の消費エネルギー量削減のために、煮沸時の加熱条件を変更するという手段が研究されてきた。しかし、一般的に、加熱条件の変更は、苦味、渋味、香りや麦汁ろ過性等に大きな影響を及ぼすため、好ましい香味特性を有する飲料製品を製造するための条件を設定することは非常に困難であった。一方、煮沸釜の液量は、エキス抽出の観点および焦げ付き防止の観点から、煮沸釜の設計最大液量に設定することがよいとされ、煮沸液量を設計最大液量よりも減らすことは好ましくないとされていた。
近年では、エネルギー効率を高める観点から、熱交換効率の良い仕込釜が採用されている。また、煮沸工程における熱エネルギーの消費を低減することを目的として、原料のうちホップの煮沸と他の原料液汁の煮沸とを、それぞれ別個に実施する方法が開発された(特許文献1および2)。さらに、煮沸中の麦汁中に、麦汁を煮沸するエネルギーを持たない不活化ガスを通気して気泡を発生させることによって、熱エネルギーを低減する煮沸方法が開発された(特許文献3)。しかしながら、これらの方法では別途新たな煮沸釜や工程ラインの設備対応が必要となり、コストや工程管理の観点からその実施は容易ではない。
そのため、コストや工程管理の観点で優れ、煮沸工程での使用エネルギー量を簡便に低減できるビールテイスト飲料の製造方法の開発が望まれていた。
特開2010−178628号公報 特開2009−77730号公報 特許第3490460号
宮地秀夫著、ビール醸造技術、食品産業新聞社、1999年12月28日、261頁〜290頁
本発明は、ビールテイスト飲料の製造方法であって、製品の香味バランスを損なわずに原料液汁の煮沸の際の使用エネルギー量を低減する製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ビールテイスト飲料の製造方法における、多管式熱交換器(レーレンコッファ)を備えた煮沸釜(以下、「WP」ということがある。)を使用する煮沸工程において、原料液汁の煮沸液量を煮沸釜の満量よりも減らすことにより煮沸時の使用蒸気量を削減し、併せて原料液汁中の5−ヒドロキシメチルフルフラール(以下、単に「5HMF」ということがある)濃度および揮発成分濃度を指標として原料液汁を煮沸、静置することにより、香味バランスを保ったまま、製造時の消費エネルギーを低減することが可能であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)ビールテイスト飲料の製造方法であって、多管式熱交換器(レーレンコッファ)を備えた煮沸釜を使用する煮沸工程において原料液汁の煮沸液量を煮沸釜の満量よりも減らし、かつ、原料液汁中の5HMF濃度および揮発成分濃度を指標として原料液汁を煮沸および/または静置する、製造方法。
(2)前記煮沸工程における原料液汁の濃度を増加させる、上記(1)に記載の製造方法。
(3)煮沸終了時に煮沸釜内の多管式熱交換器が露出しない範囲で原料液汁の煮沸液量を減らす、上記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)原料液汁の煮沸液量を、煮沸釜の満量よりも5〜30%減らす、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)揮発成分濃度がジメチルスルフィド(以下、単に「DMS」ということがある)濃度である、上記(1)に記載の製造方法。
(6)煮沸液の冷却後の原料液汁中のDMS濃度が40μg/L以下であることを指標とする、上記(5)に記載の製造方法。
(7)煮沸液の冷却後の5HMF濃度が16mg/L以下であることを指標とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の方法により製造された、ビールテイスト飲料。
(9)ビールテイスト飲料の製造方法において、多管式熱交換器(レーレンコッファ)を備えた煮沸釜を使用する煮沸工程において原料液汁の煮沸液量を煮沸釜の満量よりも減らし、かつ、原料液汁中の5HMF濃度および揮発成分濃度を指標として原料液汁を煮沸および/または静置することを特徴とする、該飲料の製造に使用するエネルギーの削減方法。
本発明によれば、ビールテイスト飲料の製造方法において、多管式熱交換器(レーレンコッファ)を備えた煮沸釜を使用する煮沸工程において原料液汁の煮沸液量を煮沸釜の満量よりも減らし、かつ、原料液汁中の5HMF濃度および揮発成分濃度を指標として原料液汁を煮沸または静置する製造方法が提供される。本発明は、香味バランスを崩すことなく煮沸工程の消費エネルギー量の大きな低減が達成できる点で有利である。
図1は、一般的なビールテイスト飲料の製造における煮沸工程に用いる多管式熱交換器(レーレンコッファ)を備えた煮沸釜(WP)の断面図である。図中の点線は、煮沸終了時の煮沸液量の最低ラインを示し、図中の矢印は、多管式熱交換器(レーレンコッファ)を示す。
発明の具体的説明
本発明において、「ビールテイスト飲料」とは、「ビールテイスト発酵飲料」と「ビールテイスト非発酵飲料」を含む意味で用いられる。
本発明において、「ビールテイスト発酵飲料」とは、炭素源、窒素源およびホップ類などを原料とし、通常のビールの製造方法に従いアルコール発酵により製造した場合に得られる、ビールに類似する香味特徴を有するすべての発酵飲料をいう。ビールテイスト発酵飲料としては、例えば、ビール、発泡酒、ビール風味発酵飲料(例えば、酒税法上、「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される飲料)が挙げられる。ビールテイスト発酵飲料には、原料液汁に麦汁を用いる麦芽発酵飲料と呼ばれるものが挙げられるが、必ずしも麦汁を用いる必要はない。
本発明において、「ビールテイスト非発酵飲料」とは、炭素源、窒素源およびホップ類などを原料とし、アルコール発酵を行わないで製造することができる非発酵飲料であって、ビールに類似する香味特徴を有するすべての非発酵飲料をいう。例えば、アルコール含量が0%である完全無アルコール麦芽飲料や、麦芽を用いない完全無アルコールビールテイスト飲料等もビールテイスト非発酵飲料に含まれる。
本発明において、ビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料の原料には、下記の炭素源、窒素源、添加物等を用いることができる。麦汁は用いてもよいし、用いなくてもよい。また、麦汁には、未発芽の麦類、例えば、未発芽大麦(エキス化した未発芽大麦を含む)または未発芽小麦(エキス化した未発芽小麦を含む)を用いてもよい。
本発明において、ビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料の炭素源としては、特に限定されないが、米、トウモロコシ、こうりゃん、馬鈴薯、でん粉および糖類(例えば、果糖ブドウ糖液糖などの液糖)の1種または2種以上を使用することができ、これら以外の炭素源を用いることもできる。
本発明において、ビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料の窒素源としては、特に限定されないが、大豆タンパク質、エンドウタンパク質およびトウモロコシタンパク質並びにこれらのタンパク分解産物などの穀物原料の1種または2種以上を使用することができ、これら以外の穀物原料を用いることもできる。
本発明において、ビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料に用いるホップ類としては、特に限定されないが、ビールや発泡酒等の製造に使用される通常のホップ、ペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキスを適宜選択して使用することができる。また、それ以外にも、異性化ホップ、ヘキサホップ、テトラホップなどのホップ加工品を用いることもできる。
本発明によるビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料は、必要に応じて、甘味料、酸味料、苦味料等の調味料、pH調製剤などの安定化剤、アルコール、香料、色素、起泡向上剤、泡持ち向上剤、水質調整剤および発酵助成剤などの添加物の1種または2種以上を添加して製造してもよい。
本発明におけるビールテイスト発酵飲料およびビールテイスト非発酵飲料の製造は例えば以下のように行うことができる。すなわち、原料に、
−必要に応じて糖化やタンパク分解等の処理を施し(仕込工程)、
−必要に応じて濾過を行って原料液汁を取得し(濾過工程1)、
−煮沸を行いながらホップ等を適量添加し(煮沸工程)、
−ビールテイスト発酵飲料を製造する場合のみ、酵母によるアルコール発酵に供する発酵前液を製造し、発酵前液に酵母を添加して、アルコール発酵を行わせ、かつ完全に発酵を完了させ(発酵工程)、
−得られた液汁を0℃付近の低温で長時間寝かせることで混濁の原因となるタンパク質を析出させ(貯酒工程)、
−必要に応じて適宜甘味料、酸味料、苦味料等の調味料、希釈水、アルコール、pH調製剤などの安定化剤、香料、色素、起泡向上剤、泡持ち向上剤、水質調整剤および発酵助成剤などの添加物を添加して飲料の香味や品質を整え、
−残存した酵母や不溶成分を完全に取り除いて清澄化して(濾過工程2)、
−最後に、濾過工程の終了した製品を缶、ビン、樽等に充填して(充填工程)、
最終製品とすることができる。
本発明の製造方法における原料液汁の煮沸工程は、上記濾過工程1で得られた原料液汁をWP中で煮沸することにより実施することができる。原料液汁の煮沸は香味バランスを崩すことなく煮沸工程の消費エネルギー量の達成できる限り特に限定されないが、例えば、煮沸率(煮沸前の液汁重量に対する蒸発成分重量の割合)が1〜15%程度、好ましは、3〜12%程度となるように煮沸処理することができる。本発明では、煮沸時間を大幅に短縮するために、所定温度の湯に原料液汁を添加して迅速に煮沸を開始させてもよい。
本発明によれば、煮沸工程における煮沸は、さらに原料液汁の濃度を増加させてから行ってもよい。例えば、原料液汁の濃度は、5〜43%増加させることができ、好ましくは、5〜30%増加させることができ、より好ましくは、5〜15%増加させることができる。原料液汁の濃度を増加させることにより、煮沸液量を減らさない場合と比較して、製品生産量当りの消費エネルギー量を削減することが可能となる。
本発明では、原料液汁の濃度は、使用する原料の量を増やすことにより増加させることができる。具体的には、上記炭素源、窒素源、糖類およびホップなどの原料の使用量を増やして高濃度仕込液を調製し、これを原料液汁として本発明の製造方法に用いることができる。
本発明ではまた、原料液汁の濃度は、濾過工程1で用いるまき湯の量を減らすことにより増加させることもできる。
本発明の煮沸工程では、煮沸時のエネルギー効率を高める観点で、煮沸終了時に煮沸釜内の多管式熱交換器が露出しない範囲で原料液汁の煮沸液量を減らすことができる。なお、煮沸工程においては、原料液汁量は、特に限定されないが、通常、蒸発により3%〜10%程度減少することが知られており、当業者であれば、煮沸前の必要原料液汁量を計算することが容易である。
本発明の煮沸工程ではまた、原料液汁の煮沸液量を、煮沸釜の満量よりも5〜30%減らすことができ、好ましくは、5〜15%減らすことができる。
本発明において、「煮沸釜の満量」とは、煮沸釜の設計最大液量、すなわち煮沸釜の有効用量をいう。
本発明の煮沸工程ではさらに、煮沸工程においては、煮沸時のエネルギー効率を高める観点で、原料液汁の煮沸液量を減らすと共に、原料液汁の濃度を増加させることができ、好ましくは、煮沸1回当りの最終製品の生産量が煮沸液量を減らす前の最終製品の生産量と同等かそれ以上となるように、原料液汁の濃度を増加させることができる。
本発明によれば、原料液汁中の5HMFおよび不揮発成分の濃度を指標として、原料液汁を煮沸または静置することができる。
本発明によれば、原料液汁の煮沸後に、必要に応じて煮沸液の糖度を調整することができる。例えば、濃縮した原料液汁を用いた場合などに煮沸液の糖度の調整を行うことができる。
本発明によれば、香味バランスを調整するための指標としての揮発成分としては、特に限定されないが、例えば、フルフリルアルコール、酢酸ヘキシル、2−アセチルフラン、酢酸ヘプチル、2−アセチルピロール、酢酸オクチル、C6〜8アルコール、C10アルコール、ジメチルスルフィド(DMS)、ストレッカーアルデヒド、β−ピネン、ミルセン、セキステルペン、β−カリオフィレンおよびリナロールなどの揮発性の不快臭成分または香気成分が挙げられ、好ましくは、香味バランスを調整するために、DMSを指標とすることができる。
本発明において、DMSは、S−メチルメチオニン(SMM)の熱分解により煮沸中の原料液汁中に生じる不快臭成分であることが知られている。DMSは、分析サンプルに内部標準を添加して、前処理をし、ヘッドスペース法によりガスクロマトグラフィーで定量することができる。
本発明において、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5HMF)とは、原料液汁の煮沸により、原料液汁中のアミノ酸と糖とが反応して引き起こされるメイラード反応の生成物の一つである。5HMFは、定法により、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製した後、吸光光度計を用いて280nmのUV波長で定量することが可能である。
本発明によれば、煮沸液の冷却後または糖度調整後の原料液汁中のDMS濃度が40μg/L以下であることを指標にして原料液汁を煮沸および/または静置することができる。
本発明によればまた、煮沸液の冷却後または糖度調整後の5HMF濃度が16mg/L以下であることを指標にして原料液汁を煮沸および/または静置することができる。
本発明によればさらに、煮沸液の冷却後または糖度調整後の5HMF濃度およびDMS濃度がそれぞれ16mg/L以下および40μg/L以下であることを指標にして原料液汁を煮沸および/または静置することができる。
本発明によれば、原料液汁中の5HMFおよびDMSの濃度は、原料液汁の煮沸および/またはその後の静置槽での静置を管理することにより調整することができる。例えば、煮沸の管理としては、煮沸温度条件、煮沸時間、原料液汁のpH、煮沸釜の直径または蒸発率の調整が挙げられる。静置槽での静置の管理としては、静置時の温度条件や静置時間などの調整が挙げられる。よって、本発明によれば、原料液汁中の5HMF濃度および揮発成分濃度(好ましくは、DMS濃度)を指標として原料液汁を煮沸および/または静置することにより香味バランスを調整することができる。
本発明によれば、煮沸液の冷却後または糖度調整後の5HMF濃度およびDMS濃度をそれぞれ16mg/L以下および40μg/L以下とするように煮沸または静置することにより、煮沸過多を防ぐと共に、不快臭を低減することができるので、得られるビールテイスト飲料の香味バランスを好適に保つことができる。
本発明によれば、本発明の製造方法により製造されたビールテイスト飲料が提供される。
本発明の製造方法では、原料液汁の濃度を増加させることにより、煮沸液量を減らさない場合と比較して、製品生産量当りの消費エネルギー量を削減することができ、原料液汁中の5HMF濃度および揮発成分濃度(好ましくは、DMS濃度)を指標として原料液汁を煮沸および/または静置することにより製造された飲料の香味バランスを調整することができる。従って、本発明の別の面によれば、ビールテイスト飲料の製造方法において、多管式熱交換器(レーレンコッファ)を備えた煮沸釜を使用する煮沸工程において原料液汁の煮沸液量を煮沸釜の満量よりも減らし、かつ、原料液汁中の5HMF濃度および揮発成分濃度を指標として原料液汁を煮沸および/または静置することを特徴とする、該飲料の製造に使用するエネルギーの削減方法が提供される。
実施例1:ビール調製の際の麦汁煮沸のための原料液汁の削減とその効果
本実施例では、2kLのビールのパイロットプラントを用いて、原料液汁の煮沸液量を減らした際の煮沸時の使用蒸気量低減の効果を評価し、併せて煮沸物から得られたビールの官能評価を実施した。
まず、一般的なビールの製造法に従って、麦芽をお湯に添加して糖化反応を引き起こし、得られたもろみを濾過して、原料液汁とした。
原料液汁を、煮沸釜(WP)を用いて煮沸した。実験は3回行い、いずれの場合も、原料液汁の煮沸液量は、試験1では、対照1に対して25%〜26%減とした(表1)。
Figure 2013135645
煮沸にあたっては、煮沸後冷却した液中の5HMFおよびDMS濃度がそれぞれ4〜5mg/Lおよび40μg/L以下となるよう管理した(表2)。具体的には、煮沸は、煮沸前後の液量が表1に記載の液量となったところで終了させ、その後静置した。なお、煮沸による煮沸釜の焦げ付きは見られなかった。
Figure 2013135645
その結果、原料液汁の煮沸に使用した蒸気量は表3の通りであった。なお、煮沸時の使用蒸気量は、蒸気流量計により測定した。
Figure 2013135645
表3に示されるように、煮沸時の使用蒸気量は、煮沸液量を減らすことにより対照1と比較して試験1で14〜19%減少した。
次に、煮沸して得られた原料液汁の煮沸液(試験1および対照1)にビール酵母を添加し、通常の方法により発酵させ、それぞれからビール(試験1および対照1)を調製した。得られたビール(試験1および対照1)の香味について、10人の社内パネラーによる官能評価を実施した。官能評価は、通常のビール(対照1と同様に製造)を4点とした場合の5点評価法を採用し、10人の評点の平均値を比較することにより実施した。香味の評点は、以下のように設定した。
5点:通常のビールと比べて優れている
4点:通常のビールと比べて遜色がない(標準)
3点:通常のビールと比べて許容できる
2点:通常のビールと比べて香味がやや悪い
1点:通常のビールと比べて香味が悪い
官能評価結果は表4に示される通りであった。
Figure 2013135645
表4に示されるように、実施例1の方法により作成したビール(試験1)の香味は、平均して4点であり、液量を減らさずに調製したビール(対照1)とほぼ同等であった。これらの結果から、煮沸後冷却した液中の5HMF濃度およびDMS濃度を監視することにより、煮沸時の使用蒸気量を低減しつつ、香味を損なわずにビールを製造することができることが分かった。
実施例2:麦汁比率25%未満の発泡酒製造の際の麦汁煮沸のための原料液汁の削減とその効果
本実施例では、2kLの発泡酒用のパイロットプラントを用いて、原料液汁の煮沸液量を減らした際の煮沸時の蒸気使用量低減の効果を評価し、併せて煮沸物から得られた発泡酒の官能評価を実施した。
まず、一般的な発泡酒の製造法に従って、麦芽(水を除く原料の25重量%未満)をお湯に添加して糖化反応を引き起こした。得られたもろみに、糖化した大麦と、米、コーン、スターチおよび糖類とを添加し、その後濾過して、原料液汁とした。
原料液汁を、煮沸釜(WP)を用いて煮沸した。実験は3回行い、いずれの場合も、原料液汁の煮沸液量は、試験2では、対照2に対して24%〜25%減とした(表5)。
Figure 2013135645
煮沸にあたっては、煮沸後冷却した液中の5HMFおよびDMS濃度がそれぞれ4〜5mg/Lおよび40μg/L以下となるよう管理した(表6)。具体的には、煮沸は、煮沸前後の液量が表5に記載の液量となった段階で終了させ、その後静置した。なお、煮沸による煮沸釜の焦げ付きは見られなかった。
Figure 2013135645
その結果、原料液汁の煮沸に使用した蒸気量は表7の通りであった。煮沸時の使用蒸気量は、蒸気流量計により測定した。
Figure 2013135645
表7に示されるように、煮沸時の使用蒸気量は、煮沸液量を減らすことにより対照2と比較して試験2で13〜18%減少した。
次に、煮沸して得られた原料液汁の煮沸液(試験2および対照2)にビール酵母を添加し、それぞれ通常の方法により発酵させ、発泡酒(試験2および対照2)を調製した。得られた発泡酒の香味について、10人の社内パネラーによる官能評価を実施した。官能評価は、通常の発泡酒(対照2と同様に製造)を4点とした場合の5点評価法を採用し、10人の評点の平均値を比較することにより実施した。香味の評点は、以下のように設定した。
5点:通常の発泡酒と比べて優れている
4点:通常の発泡酒と比べて遜色がない(標準)
3点:通常の発泡酒と比べて許容できる
2点:通常の発泡酒と比べて香味がやや悪い
1点:通常の発泡酒と比べて香味が悪い
官能評価結果は表8に示される通りであった。
Figure 2013135645
表8に示されるように、実施例2の方法により作成した発泡酒(試験2)の香味は、平均して4点であり、液量を減らさずに調製した発泡酒(対照2)とほぼ同等であった。これらの結果から、煮沸後冷却した液中の5HMFおよびDMS濃度を監視することにより、煮沸に使用する蒸気量を低減しつつ、香味を損なわずに発泡酒を製造することができることが分かった。
実施例3:麦不使用のアルコール飲料の製造の際の麦汁煮沸のための原料液汁の削減とその効果
本実施例では、2kLの麦不使用のアルコール飲料用のパイロットプラントを用いて、原料液汁の煮沸液量を減らした際の煮沸時の蒸気使用量低減の効果を評価し、併せて煮沸物から得られたアルコール飲料の官能評価を実施した。
まず、一般的な麦不使用の発酵アルコール飲料の製造法に従って、タンパク質分解処理済み大豆タンパク質に酵母エキスおよび糖類を添加して、原料液汁を得た。原料液汁(試験3)および原料液汁(対照3)として、上記で得られた原料液汁を用いた。
原料液汁を煮沸釜(WP)を用いて煮沸した。実験は3回行い、いずれの場合も、原料液汁の煮沸液量は、試験3では、対照3に対して20〜30%減とした(表9)。
Figure 2013135645
煮沸にあたっては、煮沸後冷却した液中の5HMFおよびDMS濃度がそれぞれ5〜8mg/Lおよび40μg/L以下となるよう管理した(表10)。具体的には、煮沸は、煮沸前後の液量が表9に記載の液量となった段階で終了させ、その後静置した。なお、煮沸による煮沸釜の焦げ付きは見られなかった。
Figure 2013135645
その結果、原料液汁(試験3)および原料液汁(対照3)の煮沸に使用した蒸気量は表11の通りであった。煮沸時の使用蒸気量は、蒸気流量計により測定した。
Figure 2013135645
表11に示されるように、煮沸時の使用蒸気量は、煮沸液量を減らすことにより対照3と比較して試験3で17〜21%減少した。
次に、煮沸して得られた原料液汁の煮沸液(試験3および対照3)にビール酵母を添加し、それぞれ通常の方法により発酵させ、麦不使用の発酵アルコール飲料(試験3および対照3)を調製した。得られた麦不使用の発酵アルコール飲料(試験3および対照3)の香味について、10人の社内パネラーによる官能評価を実施した。官能評価は、通常の発酵アルコール飲料(対照3と同様に製造)を4点とした場合の5点評価法を採用し、10人の評点の平均値を比較することにより実施した。香味の評点は、以下のように設定した。
5点:通常の麦不使用の発酵アルコール飲料と比べて優れている
4点:通常の麦不使用の発酵アルコール飲料と比べて遜色がない(標準)
3点:通常の麦不使用の発酵アルコール飲料と比べて許容できる
2点:通常の麦不使用の発酵アルコール飲料と比べて香味がやや悪い
1点:通常の麦不使用の発酵アルコール飲料と比べて香味が悪い
官能評価結果は表12に示される通りであった。
Figure 2013135645
表12に示されるように、実施例3の方法により作成した麦不使用の発酵アルコール飲料(試験3)の香味は、平均して4点であり、液量を減らさずに調製した麦不使用の発酵アルコール飲料(対照3)とほぼ同等であった。これらの結果から、煮沸後冷却した液中の5HMF濃度を管理することにより、煮沸に使用する蒸気量を低減しつつ、香味を損なわずに麦不使用の発酵アルコール飲料を製造することができることが分かった。
上記実施例1〜3の結果から、ビール、発泡酒、その他の麦不使用のビールテイスト発酵飲料において、煮沸後冷却した液中の5HMFおよびDMS濃度を管理することにより、煮沸時の原料液汁量を減らして煮沸時の使用蒸気量の低減が可能になると共に、煮沸を行った場合に懸念される通常香味の低下の抑制が可能となることが分かった。
実施例4:工場での試験結果
実施例1〜3では、ビール、発泡酒および麦不使用の発酵アルコール飲料の製造時に原料液汁の煮沸液量を減らした際の煮沸時の蒸気使用量低減の効果を評価し、併せて煮沸物から得られたビール、発泡酒および麦不使用の発酵アルコール飲料の官能評価を、工場の実製造ラインを用いて実施した。
工場での実製造においても、煮沸液量は、WPの多管式熱交換器が露出しない範囲で減らすことが可能であり、また、煮沸時の使用蒸気量の低減が可能であった(表13)。官能試験の結果、煮沸液量を減らしたビール、発泡酒および麦不使用の発酵アルコール飲料では、煮沸液量を減らさないものと比較しても遜色ないことが明らかとなった。なお、実施例4では、工場試験では煮沸液量を減らす代わりに糖度の高い煮沸液を使用したため、糖度調整後のビール、発泡酒および麦不使用の発酵アルコール飲料の生産量は、煮沸液量の低減処置を行わなかったものの生産量と同等であった。
Figure 2013135645
この結果から、本発明により、ビールテイスト発酵飲料またはビールテイスト非発酵飲料の製造において、香味バランスを崩さずにビール、発泡酒およびその他のビールテイスト発酵飲料の製造時の使用エネルギー量を削減できることが示された。

Claims (9)

  1. ビールテイスト飲料の製造方法であって、多管式熱交換器(レーレンコッファ)を備えた煮沸釜を使用する煮沸工程において原料液汁の煮沸液量を煮沸釜の満量よりも減らし、かつ、原料液汁中の5−ヒドロキシメチルフルフラール(5HMF)濃度および揮発成分濃度を指標として原料液汁を煮沸および/または静置する、製造方法。
  2. 前記煮沸工程における原料液汁の濃度を増加させる、請求項1に記載の製造方法。
  3. 煮沸終了時に煮沸釜内の多管式熱交換器が露出しない範囲で原料液汁の煮沸液量を減らす、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 原料液汁の煮沸液量を、煮沸釜の満量よりも5〜30%減らす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 揮発成分濃度がジメチルスルフィド(DMS)濃度である、請求項1に記載の製造方法。
  6. 煮沸液の冷却後または糖度調整後の原料液汁中のDMS濃度が40μg/L以下であることを指標とする、請求項5に記載の製造方法。
  7. 煮沸液の冷却後または糖度調整後の5HMF濃度が16mg/L以下であることを指標とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法により製造された、ビールテイスト飲料。
  9. ビールテイスト飲料の製造方法において、多管式熱交換器(レーレンコッファ)を備えた煮沸釜を使用する煮沸工程において原料液汁の煮沸液量を煮沸釜の満量よりも減らし、かつ、原料液汁中の5HMF濃度および揮発成分濃度を指標として原料液汁を煮沸および/または静置することを特徴とする、該飲料の製造に使用するエネルギーの削減方法。
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