JP2016056937A - ワンウェイクラッチ - Google Patents

ワンウェイクラッチ Download PDF

Info

Publication number
JP2016056937A
JP2016056937A JP2014186511A JP2014186511A JP2016056937A JP 2016056937 A JP2016056937 A JP 2016056937A JP 2014186511 A JP2014186511 A JP 2014186511A JP 2014186511 A JP2014186511 A JP 2014186511A JP 2016056937 A JP2016056937 A JP 2016056937A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
clutch
inner ring
retainer member
way clutch
ring
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014186511A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6212781B2 (ja
Inventor
大 片岡
Masaru Kataoka
大 片岡
田中 宏幸
Hiroyuki Tanaka
宏幸 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2014186511A priority Critical patent/JP6212781B2/ja
Publication of JP2016056937A publication Critical patent/JP2016056937A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6212781B2 publication Critical patent/JP6212781B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • One-Way And Automatic Clutches, And Combinations Of Different Clutches (AREA)

Abstract

【課題】所定回転数未満では外輪から内輪へトルク伝達をせず、所定回転数以上では外輪から内輪へ一回転方向のトルク伝達を可能とする遠心作動式のワンウェイクラッチにおいて、内輪への回転入力の初期から外輪へのトルク伝達を可能にするワンウェイクラッチを提供する。
【解決手段】内輪43と外輪41との間に環状のリテーナ部材44を備え、リテーナ部材44のリテーナ部材側錘体ポケット部44eには、錘体45のクラッチ径方向外側への移動に伴ってリテーナ部材44を内輪43に対して相対回動可能なリテーナ部材作動カム面44gが形成され、リテーナ部材44が内輪43に対して相対回動すると、トルク伝達要素であるローラ42がリテーナ部材44に押されて内外輪43,41に係合可能な係合位置に移動される。
【選択図】図5

Description

本発明は、ワンウェイクラッチに関する。
特許文献1には、クランクシャフト上にACGスタータを設けたスクータ型車両が開示されている。前記スクータ型車両は、走行時に信号待ちなどにより減速して停止するとエンジンが自動停止し、この自動停止状態からスロットルグリップを操作する等の発進操作が検知されると、ACGスタータにてクランキングしてエンジンを再始動させる所謂アイドルストップを行うことができる。
上記したアイドルストップシステムでは、アイドルストップしてからエンジンが再始動するまでの間、ACGスタータを例えば圧縮行程終了後の位置まで逆回転させる所謂スイングバック制御を行うことで、エンジン再始動時にクランクシャフトが次の圧縮上死点にいたるまでにクランクシャフトを十分加速させ、再始動時に圧縮上死点を乗り越え易くしている。
一方、特許文献2には、クランクシャフトとプライマリドライブギヤとの間にエンジンブレーキ用のワンウェイクラッチを設けたパワーユニットが開示されている。この構成によれば、エンジンブレーキ時に(キックスタート時や押しがけ時も同様に)、プライマリドライブギヤがクランクシャフトに先んじて回転しようとすると、ワンウェイクラッチを介してプライマリドライブギヤからクランクシャフトへトルクが伝達される。
ところで、特許文献2のようなパワーユニットを備えた鞍乗り型車両にも、特許文献1のようなACGスタータを用いたアイドルストップ制御を実施したい要望がある。しかしながら、クランクシャフトとプライマリドライブギヤとの間にエンジンブレーキ用のワンウェイクラッチを設けたパワーユニットの場合、クランクシャフト上にACGスタータを設けてスイングバックをすると、このスイングバックによってクランクシャフトが逆回転する際、プライマリドライブギヤがクランクシャフトに先んじて回転しようとする状況となる。このため、ワンウェイクラッチが係合し、プライマリドライブギヤにトルクが伝達されて車両が僅かに後退してしまう。
このような課題に対し、特許文献3に開示されるような遠心作動式のワンウェイクラッチが効果的である。このワンウェイクラッチは、その内輪を接続する軸が所定の回転数以上にならないとワンウェイクラッチとして機能しない(正逆何れも空転してトルク伝達しない)。クランクシャフトと遠心ワンウェイクラッチの外輪とを連結し、プライマリドライブギヤと遠心ワンウェイクラッチの内輪とを連結すれば、スイングバック時にクランクシャフトが逆回転しても、その回転数が低いことからワンウェイクラッチが係合せず、車両が後退しない。
特開2002−188548号公報 特開2013−228079号公報 特開2004−316886号公報
しかしながら、特許文献3のようなワンウェイクラッチを用いた構造でも、プライマリドライブギヤを介したキック始動を行う場合には課題があった。すなわち、キックアームによる軸の回動量は限られているため、キックアームの踏み降ろしでプライマリドライブギヤ及び内輪を加速させ、ワンウェイクラッチが係合可能な回転数になった時点では、キックストロークの残りが少なく、十分なクランキングを行うことが難しかった。
本発明は上記課題を解決するものであり、所定回転数未満では外輪から内輪へトルク伝達をせず、所定回転数以上では外輪から内輪へ一回転方向のトルク伝達を可能とする遠心作動式のワンウェイクラッチにおいて、内輪への回転入力の初期から外輪へのトルク伝達を可能にすることを目的とする。
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、第1の軸部材(21f)に接続されるとともに外周面(43c)に凹部(43d)が形成される内輪(43)と、第2の軸部材(9d)に接続されるとともに前記内輪(43)の径方向外側に配置される外輪(41)と、前記内輪(43)の前記凹部(43d)が形成するカム面(43g)と前記外輪(41)の内周面(41a)との間に配置される移動体(42)と、を備え、前記移動体(42)は、前記凹部(43d)のクラッチ径方向内側の収容位置(A1)にあるとき、前記外輪(41)の内周面(41a)との間に隙間(S)を形成可能となり、前記凹部(43d)のクラッチ径方向外側の係合位置(A2)にあるとき、前記外輪(41)の内周面(41a)と前記凹部(43d)の前記カム面(43g)とに係合可能となり、前記移動体(42)が前記係合位置(A2)にあるとき、前記内輪(43)の前記外輪(41)に対する一方向の回動の駆動力が伝達可能とされるワンウェイクラッチ(40)において、前記内輪(43)と前記外輪(41)との間には、前記内輪(43)と相対回動可能でかつ、前記移動体(42)をクラッチ周方向で移動可能なリテーナ部材(44)が配置され、前記内輪(43)と前記リテーナ部材(44)との間には、遠心力によってクラッチ径方向外側に移動可能な錘体(45)が配置され、前記錘体(45)は、前記凹部(43d)とは分離して設けられる錘体ポケット(47)に収容され、前記錘体ポケット(47)は、前記リテーナ部材(44)の内周面(44d)にリテーナ部材側ポケット部(44e)を有し、前記リテーナ部材側ポケット部(44e)には、前記錘体(45)のクラッチ径方向外側への移動に伴って前記リテーナ部材(44)を前記内輪(43)に対して相対回動可能なリテーナ部材作動カム面(44g)が形成され、前記リテーナ部材(44)が前記内輪(43)に対して相対回動すると、前記移動体(42)が前記リテーナ部材(44)により前記係合位置(A2)に移動されることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記リテーナ部材(44)をクラッチ周方向で付勢して前記移動体(42)を前記収容位置(A1)に戻すリターンスプリング(46)を備え、前記リターンスプリング(46)は、前記内輪(43)と前記リテーナ部材(44)との間に形成されるスプリングポケット(48)に収容されることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、前記凹部(43d)及び前記移動体(42)は、クラッチ周方向で複数設けられることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、前記リテーナ部材(44)は、一体の環状部材(44a)に、該環状部材(44a)をクラッチ径方向で貫通するとともに複数の前記移動体(42)をそれぞれ収容する複数の切り欠き部(44c)を有すること特徴とする。
請求項1に記載した発明によれば、ワンウェイクラッチが所定値未満の速度(回転数)で回転する状態では、第2の軸部材及び外輪側が正逆を問わず回動しても、第1の軸部材及び内輪側へと駆動力が伝達されることはない。これに対して、ワンウェイクラッチが所定値以上の速度で回転する状態になると、錘体が遠心力でクラッチ径方向外側に移動することで、リテーナ部材が作動し、移動体が内輪の係合位置へ移動されて、内輪側が外輪側よりも速く正転する際に内輪側の駆動力が外輪側に伝達可能なワンウェイクラッチのワンウェイ作動状態となる。また、ワンウェイクラッチの回転数が所定値未満であっても、内輪がリテーナ部材に対して相対回動すれば、移動体が内輪の係合位置へ移動されて、ワンウェイクラッチがワンウェイ作動状態となる。すなわち、遠心力により錘体がクラッチ径方向外側に移動することの他、内輪の回転速度(回転数)が低い初期入力時であっても、リテーナ部材に対して内輪が先んじて回動することで、ワンウェイクラッチを速やかにワンウェイ作動させてトルクを伝達することができる。
請求項2に記載した発明によれば、内輪側から駆動力がかけられてリテーナ部材に対して内輪が回動する際の作動トルクを設定することができる。また、ワンウェイ作動後に内輪とリテーナ部材とを初期位置に戻すことができる。
請求項3に記載した発明によれば、凹部及び移動体がクラッチ周方向で複数設けられることにより、伝達できる駆動力を大きくすることができる。
請求項4に記載した発明によれば、リテーナ部材を一部品の環状部材で形成することにより、部品点数の削減ができるとともに、一体のリテーナ部材で複数ある移動体を同じ量だけ一様に移動させることができるため、ワンウェイクラッチとしての機能をより確実にすることができる。
本発明の実施形態における自動二輪車の左側面図である。 上記自動二輪車のエンジンの駆動軸方向に沿う展開断面図である。 本実施形態の主構成を含むブロック図である。 図2の要部拡大図である。 図2に示すワンウェイクラッチの斜め左前方から見た斜視図である。 上記ワンウェイクラッチを軸方向から見た正面図である。 図6の第一作用説明図である。 図6の第二作用説明図である。 上記ワンウェイクラッチのロック作動制限の設定概念を示す説明図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
図1に示す自動二輪車(小型車両)101において、その車体フレーム102は複数種の鋼材を溶接等により一体に結合してなる。車体フレーム102は、前輪懸架系を操向可能に支持するヘッドパイプ103から下後方へ単一のメインチューブ108を延ばし、ヘッドパイプ103と乗員着座用のシート109との間を低部として跨り易さを向上させた所謂バックボーン型とされる。メインチューブ108の後端部の下方にはピボットブラケット110が延び、ピボットブラケット110には後輪懸架系のスイングアーム112の前端部が上下揺動可能に支持される。メインチューブ108の後端部の上後方にはシートフレーム113が延び、シートフレーム113上にシート109が配置されると共に、シートフレーム113とスイングアーム112との間には後輪懸架系のリアクッション114が配置される。図中符号104は前輪、符号105はフロントフォーク、符号106はステアリングステム、符号107は操向ハンドル、符号111は後輪をそれぞれ示す。
メインチューブ108の下方には、自動二輪車101の原動機であるエンジン(内燃機関)1が支持される。
図2を併せて参照し、エンジン1は、クランクシャフト9の回転中心軸線(クランク軸線)C1を左右方向に沿わせた空冷単気筒エンジンであり、クランクケース2の前端部から前方に向けてシリンダ3を略水平に(詳細にはやや前上がりに)突出させる。
クランクケース2は、左右方向に直交する分割面(例えば車体左右中心面)を境に左右ケース半体2a,2bに分割される。左右ケース半体2a,2bの外側方には、これらの一部をなす左右ケースカバー24,25が取り付けられる。図中符号CLはエンジン1(及び車体)の左右中心線を示す。クランクケース2は、マニュアルトランスミッション(変速機、以下、単にトランスミッションという。)4を収容するミッションケースを兼ねる。クランクケース2を含むエンジン1の内部では、エンジンオイルが適宜循環、撹拌される。
シリンダ3は、クランクケース2側から順に、シリンダ本体3a、シリンダヘッド3b及びヘッドカバー3cが連なる。シリンダ本体3aのシリンダボア3d内には、ピストン8が往復動可能に嵌装される。ピストン8は、コネクティングロッド8aを介してクランクシャフト9のクランクピン9aに連結される。
クランクシャフト9は、クランクピン9aを支持する左右クランクウェブ9bと、左右クランクウェブ9bから左右外側に突出する左右ジャーナル部9cと、左右ジャーナル部9cからさらに左右外側に延びる左右延長軸9dと、を有する。
左延長軸9dの基端側にはカムドライブスプロケット12が設けられ、このカムドライブスプロケット12を含むチェーン式伝動機構を介して、シリンダヘッド3b内のカムシャフト11がクランクシャフト9と連動して駆動する。
図中符号15はシリンダ3の左側部内に設けられるカムチェーン室、符号17はシリンダヘッド3bに取り付けられる点火プラグ、符号18はシリンダヘッド3bの上側(吸気側)に接続されるスロットルボディ、符号19はシリンダヘッド3bの下側(排気側)に接続される排気管をそれぞれ示す。
クランクシャフト9の回転動力は、クランクケース2内右側に収容された二つのクラッチ21,22、及びクランクケース2内後部に収容されたトランスミッション4を介して、クランクケース2の後部左側の機関出力部23に出力される。機関出力部23は、駆動輪である後輪111とチェーン式伝動機構23aを介して連係される。以下、クランクシャフト9から機関出力部23までの伝動経路において、クランクシャフト9側を上流側、機関出力部23側を下流側ということがある。
クランクシャフト9の右延長軸9d上には、発進用クラッチである遠心クラッチ21が同軸支持される。
遠心クラッチ21は、右方に開放する有底円筒状をなしてクランクシャフト9の右端部に相対回転可能に支持されるクラッチアウター21aと、クラッチアウター21aの内周側でクランクシャフト9の右端部に一体回転可能に支持されるクラッチインナー21bと、クラッチアウター21aの内周側でクラッチインナー21bに拡開作動可能に支持される複数の遠心ウェイト21cと、を有する。図中符号26はクラッチインナー21bの右側に形成される遠心分離式のオイルフィルタを示す。
遠心ウェイト21cは、クランクシャフト9の停止時及び低速回転時には、クラッチアウター21aの内周面から離間し、遠心クラッチ21を動力伝達不能な切断状態とする。遠心ウェイト21cは、クランクシャフト9の回転数(回転速度)の上昇に伴い拡開作動し、所定回転数以上でクラッチアウター21aの内周面に摩擦係合して、遠心クラッチ21を動力伝達可能な接続状態とする。
図2、図4を参照し、クラッチアウター21aの中心部では、円筒状の内周側カラー部21dが右側に突設される。内周側カラー部21dの外周には、ワンウェイクラッチ40が外嵌される。ワンウェイクラッチ40の外周には、クラッチインナー21bの左側に突設された円筒状の外周側カラー部21eが外嵌される。外周側カラー部21eは、ワンウェイクラッチ40における外輪41を含む。
ワンウェイクラッチ40の基本的な動作は、変速機側のクラッチアウター21aに先んじてクラッチインナー21b及びクランクシャフト9が正転(エンジン運転時の回転に相当)しようとしても、フリー状態となってトルク伝達をせず、クラッチアウター21aに対してクラッチインナー21b及びクランクシャフト9を空転させる。
ワンウェイクラッチ40は、クラッチインナー21b及びクランクシャフト9に先んじてクラッチアウター21aが正転しようとすると(又は、クラッチアウター21aに対してクラッチインナー21b及びクランクシャフト9が逆転しようとすると)、クラッチインナー21bの回転速度が所定未満であれば、フリー状態を保ってトルク伝達をせず、クラッチアウター21aをクラッチインナー21b及びクランクシャフト9に対して空転させる。
一方、ワンウェイクラッチ40は、クラッチインナー21bの回転速度が所定以上になると、後述するワンウェイ作動状態となり、この状態でクラッチインナー21b及びクランクシャフト9に先んじてクラッチアウター21aが正転しようとすると、後述するローラ42が内外輪43,41間でトルク伝達可能になるようにロック作動する。これにより、クラッチアウター21a、クラッチインナー21b及びクランクシャフト9が一体に正転可能となる。
図2を参照し、クラッチアウター21aの中央部左側には、左方に延びる円筒状の伝動筒21fが設けられる。伝動筒21fの左端側には、プライマリドライブギヤ20aが一体回転可能に設けられる。プライマリドライブギヤ20aは、クランクシャフト9の後方に位置するメインシャフト5の右側部に相対回転可能に支持されたプライマリドリブンギヤ20bに噛み合う。プライマリドライブギヤ20a及びプライマリドリブンギヤ20bは、エンジン1の一次減速機構20を構成する。
クランクシャフト9の後方には、前側から順に、トランスミッション4のメインシャフト5及びカウンタシャフト6が配置される。メインシャフト5及びカウンタシャフト6は、それぞれの回転中心軸線C3,C4を左右方向に沿わせて(クランク軸線C1と平行にして)配置される。図中符号16aはカウンタシャフト6の後下方に配置されるキックスピンドルを示す。
メインシャフト5の右端部は遠心クラッチ21の右端よりも左方で終端し、この右端部上に多板クラッチ22が同軸支持される。
多板クラッチ22は変速用クラッチであり、右方に開放する有底円筒状をなしてメインシャフト5の右端部に相対回転可能に支持されるクラッチアウター22aと、クラッチアウター22aの内周側に配置されてメインシャフト5の右端部に一体回転可能に支持されるクラッチインナー22bと、クラッチアウター22a及びクラッチインナー22b間で軸方向に積層される複数のクラッチ板22cと、を有する。クラッチアウター22aの底壁左側には、プライマリドリブンギヤ20bが一体回転可能に支持される。
多板クラッチ22は、ダイヤフラムスプリング22dの付勢力によりクラッチ板22cを圧接して摩擦係合させる。多板クラッチ22は、不図示のシフトペダルの変速操作に連動してクラッチ板22cの圧接を一時的に解除し、トランスミッション4のシフトチェンジをよりスムーズにする。
トランスミッション4は、メインシャフト5及びカウンタシャフト6と、両シャフト5,6に跨って支持される変速ギヤ群7と、を備える。クランクシャフト9の回転動力は、変速ギヤ群7の任意のギヤを介してメインシャフト5からカウンタシャフト6に伝達される。カウンタシャフト6の左端部は、クランクケース2の後部左側に突出して機関出力部23となる。
変速ギヤ群7は、両シャフト5,6にそれぞれ支持された変速段数分のギヤで構成される。トランスミッション4は、両シャフト5,6間で変速ギヤ群7の対応するギヤ同士が常に噛み合った常時噛み合い式とされる。両シャフト5,6に支持された各ギヤは、自身を支持するシャフトに対して相対回転可能なフリーギヤと、自身を支持するシャフトに対して一体回転可能な固定ギヤと、自身を支持するシャフトにスプライン嵌合するスライドギヤと、に分類される。トランスミッション4は、不図示のチェンジ機構の作動によりスライドギヤを移動させ、変速段に応じたギヤ列を選定する。図2では、変速ギヤ群7の左側から順に、二速ギヤ列7b、四速ギヤ列7d、三速ギヤ列7c及び一速ギヤ列7aが並んで配置される。
クランクシャフト9の左延長軸9dの左端部上には、ACGスタータ27が同軸支持される。
ACGスタータ27は、三相交流式の発電電動機であり、エンジン1を始動するスタータモーターとして機能すると共に、エンジン1の運転に伴い発電する交流発電機としても機能する。ACGスタータ27の作動は、図3に示すECU(Electronic Control Unit)60により制御される。
ACGスタータ27は、いわゆるアウタローター型のもので、左方に開放する有底円筒状をなしてクランクシャフト9の左端部に一体回転可能に支持されるアウタローター27aと、アウタローター27aの内周側に配置されて左ケース半体2aの外側壁に固定的に支持されるステーター27bと、を有する。アウタローター27aの内周側には、周方向で並ぶ複数のマグネット27cが固定される。ステーター27bの外周側には、周方向で並ぶ複数のコイル27dが形成される。
図3を併せて参照し、ACGスタータ27は、例えばステーター27bにネジ等の締結部材28aで取り付けられた、複数のローター角度センサー28を保持するローター角度センサーユニット28bを有する。ローター角度センサー28は、ステーター27bのコイル27dに対する通電制御に用いられるもので、ACGスタータ27のU相、V相、W相のそれぞれに対応して一つずつ設けられる。
ローター角度センサー28は、アウタローター27aの周方向の一位置を点火タイミングとして検出する点火パルサー(パルサーセンサー)としても機能する。ローター角度センサー28は、ホールIC又は磁気抵抗(MR)素子で構成される。
ACGスタータ27は、エンジン始動時にはスタータモーターとして機能する。ACGスタータ27は、不図示のバッテリーからECU60のモータードライブ回路61を介して電力が供給され、クランクシャフト9を回転(正転駆動)させてエンジン1のクランキングを行う。このとき、クランクシャフト9の回転数は遠心クラッチ21の接続回転数未満であり、かつこの回転(正転)ではワンウェイクラッチ40がトルク伝達をしない。したがって、遠心クラッチ21の被動部材であるクラッチアウター21aよりも前記伝動経路下流側の多板クラッチ22及びトランスミッション4等には、前記クランキングの回転動は伝達されない。
ACGスタータ27は、例えばクランクシャフト9の回転数がアイドリング相当以上になる等によりエンジン1の始動が確認されると、クランクシャフト9の回転により駆動して発電する交流発電機として機能する。この発電により、前記バッテリーの充電及び各種電装部品への電力供給がなされる。このとき、ワンウェイクラッチ40はトルク伝達をしないが、クランクシャフト9の回転数が遠心クラッチ21の接続回転数以上になれば、遠心クラッチ21が接続状態となって前記伝動経路下流側にクランクシャフト9の回転動が伝達される。
クランクケース2の後部下側には、エンジン1のキックスタータ16における左右方向に沿うキックスピンドル16aが配置される。キックスピンドル16aの右端部はクランクケース2の後部右側に突出し、この突出部にキックアーム16bの基端部が取り付けられる。キックスピンドル16aにおけるクランクケース2内に臨む左側部上には、キックドライブギヤ16c及び噛合い機構16dが同軸支持される。キックドライブギヤ16cは、キックアーム16bの踏み降ろしによるキックスピンドル16aの一方向への回転時にのみ、噛合い機構16dを介してキックスピンドル16aと一体回転する。
キックドライブギヤ16cは、一速ギヤ列7aのドリブンギヤに噛み合う。キックドライブギヤ16cの回転動は、一速ギヤ列7a、メインシャフト5、多板クラッチ22、プライマリドリブンギヤ20b及びプライマリドライブギヤ20aを介して、遠心クラッチ21のクラッチアウター21aに正転として入力される。この正転の回転トルクが所定以上であれば、ワンウェイクラッチ40がワンウェイ作動状態となり、さらなる正転によりワンウェイクラッチ40がロック作動すると、クラッチアウター21aからクラッチインナー21b及びクランクシャフト9に正転トルクを伝達可能となる。すなわち、キックスタータ16によるエンジン1のクランキングが可能となる。
ECU60は、ACGスタータ27の駆動及び発電を制御するモータードライブ回路61と、エンジン1の自動停止(アイドルストップ)を行うアイドルストップ制御部62と、アイドルストップ直後にACGスタータ27の逆転駆動によるクランクシャフト9の逆転(スイングバック)を行うスイングバック制御部63と、を有する。
ECU60には、ローター角度センサー28の他、スロットルボディ18のスロットルバルブ(不図示)の開度を検出するスロットルセンサー31、車輪の回転速度から車速を検出する車速センサー32、エンジン1の暖気状態として油温を検出する温度センサー33、前記バッテリーの充電状態としてバッテリー電流及び電圧を検出するバッテリーセンサー34、が接続される。ローター角度センサー28は、クランク回転数及び回転角度を検出するクランク角センサーを兼ねる。
ECU60には、ACGスタータ27の他に、点火プラグ17を含む点火装置35、スロットルボディ18のインジェクタ18aを含む燃料噴射装置36、が接続されると共に、アイドルストップ制御を行うか否かを乗員に選択させるアイドルストップスイッチ37、アイドルストップ制御の選択時やアイドルストップ時に点灯するインジケーター38、が接続される。
モータードライブ回路61は、例えばパワーFET(Field Effect Transistor)を含み、ACGスタータ27が発生する三相交流を全波整流すると共に、ACGスタータ27を駆動する際には前記バッテリーの電力を調圧して供給する。
アイドルストップ制御部62は、アイドルストップ制御の選択時において、エンジン1の自動停止許可条件が整ったときには、点火プラグ17の点火及びインジェクタ18aの燃料噴射を停止してエンジン1を自動停止させる(アイドルストップ)。
その後、アイドルストップ制御部62は、エンジン1の再始動許可条件が整ったときに、ACGスタータ27を駆動させてエンジン1のクランキングを行うと共に、点火プラグ17の点火及びインジェクタ18aの燃料噴射を再開し、エンジン1を自動で再始動させる。ECU60は、前記バッテリーの充電状態がエンジン1の再始動を行うのに十分であると認められるときのみ、アイドルストップ制御を実施する。
スイングバック制御部63は、アイドルストップ後のエンジン1の再始動性を向上させるために、ACGスタータ27を逆転駆動させ、クランクシャフト9をアイドルストップ直前の圧縮上死点の手前(逆転時)となる回転角度まで逆転させる(スイングバック)。
スイングバック制御部63は、エンジン1の再始動時におけるクランクシャフト9の助走距離を伸ばし、圧縮上死点を乗り越えるための正転トルクが小さくて済む位置までクランクシャフト9を逆転させる。その後、アイドルストップ制御部62がACGスタータ27を正転駆動させ、クランクシャフト9を改めて正転させると共に、点火装置35及び燃料噴射装置36を改めて作動させることで、エンジン1が再始動される。
スイングバック制御部63は、ステージ判定部64、ステージ通過時間検知部65、逆転制御部66及びデューティー比設定部67を有する。
ステージ判定部64は、ローター角度センサー28の出力信号に基づいて、クランクシャフト9の一回転をステージ#0〜#35の36ステージに分割し、ローター角度センサー28が点火パルサーとして発生するパルス信号の検知タイミングを基準ステージ(ステージ#0)として現在のステージを判定する。
ステージ通過時間検知部65は、ステージ判定部64が新たなステージを判定してから次のステージを判定するまでの時間に基づいて、当該ステージの通過時間Δtnを検知する。
逆転制御部66は、ステージ判定部64による判定結果及びステージ通過時間検知部65により検知された通過時間Δtnに基づいて、ACGスタータ27の逆転駆動指令を発生する。
デューティー比設定部67は、ステージ判定部64による判定結果に基づいて、モータードライブ回路61の各パワーFETに供給するゲート電圧のデューティー比を動的に制御する。
次に、ワンウェイクラッチ40について、図4〜図9を参照して説明する。
図4、図5を参照し、ワンウェイクラッチ40は、クランクシャフト9と同軸の円環状のもので、クラッチアウター21aの内周側カラー部21dに一体回転可能に外嵌する内輪43と、クラッチインナー21bの外周側カラー部21eに一体に設けられる外輪41と、内外輪43,41間に配置されるリテーナ部材44と、内外輪43,41間のトルク伝達要素である複数のローラ42(移動体)と、複数の錘体45と、複数のリターンスプリング46と、を有する。以下、ワンウェイクラッチ40の軸方向をクラッチ軸方向、径方向をクラッチ径方向、周方向をクラッチ周方向という。図中矢印Fはクランクシャフト9の正転方向、矢印Rはクランクシャフト9の逆転方向をそれぞれ示す。
内輪43は、円環形状に形成された本体43aの内周面に、伝動筒21fの回転方向に結合される内歯43bを有する。本体43aの外周面43cには、複数(3つ)の凹部43dと、錘体ポケット47の内周側を構成する複数(3つ)の内輪側錘体ポケット部43eと、スプリングポケット48の内周側を構成する複数(3つ)の内輪側スプリングポケット部43fと、がクラッチ周方向で独立して形成される。凹部43d、内輪側錘体ポケット部43e及び内輪側スプリングポケット部43fは、それぞれクラッチ周方向で等間隔に設けられる。
凹部43dは、カム面43gを形成する。カム面43gは、リテーナ部材44の切り欠き部44cを通じて外輪41の内周面41aと対向する。カム面43gは、正転方向側を外輪41から離間させるようにクラッチ周方向に対して傾斜する。切り欠き部44c内には、ローラ42が保持される。ローラ42は、内輪43に対するリテーナ部材44の回動に伴い、凹部43dの比較的深い正転方向側に臨む位置(以下、収容位置A1という(図6参照)。)と、凹部43dの比較的浅い逆転方向側に臨む位置(以下、係合位置A2という(図7、図8参照)。)との間で移動する。
図6を参照し、ローラ42は、クラッチ径方向内側の収容位置A1にあるとき、例えば外輪41の内周面41aとの間に隙間Sを形成する。このとき、ローラ42は、内周面41a及びカム面43gの少なくとも一方との間に隙間を形成すればよい。ローラ42は、クラッチ軸方向に沿う円柱形状をなし、内輪43の外周面43c、凹部43d、カム面43gのいずれに対しても相対回動可能である。
図7を参照し、ローラ42は、クラッチ径方向外側の係合位置A2にあるとき、外輪41の内周面41aとカム面43gの逆転方向側とに接する。このとき、ローラ42は、外輪41の内周面41aとカム面43gとに係合可能となる。具体的に、ローラ42が係合位置A2にあるとき、内輪43が一方向(正転方向)に回動すると、ローラ42が外輪41の内周面41aとカム面43gとの間に噛み込まれ、内輪43の外輪41に対する一方向(正転方向)の回動の駆動力が外輪41に伝達可能となる。
内輪側錘体ポケット部43eは、内輪43の外周面43cにおいて軸方向視で角が丸面取りされた四角形状の凹部とされる。内輪側錘体ポケット部43eは、クラッチ径方向に沿う一対の対向面43hを形成する。内輪側錘体ポケット部43eには、軸方向視で角が丸面取りされた四角形状の錘体45が収容される。錘体45は、内輪側錘体ポケット部43eの一対の対向面43hに摺接する一対の側面45aを有し、内輪側錘体ポケット部43e内にクラッチ径方向で移動可能に保持される。
錘体45は、予め定められた遠心力によってクラッチ径方向外側に向けて移動可能な自重を有する。錘体45は、クラッチ径方向幅が内輪側錘体ポケット部43eの深さよりも大であり、内輪側錘体ポケット部43eに底付きした状態で外側端部45bを内輪側錘体ポケット部43eから突出させる(図6参照)。錘体45は、内輪側錘体ポケット部43eに収容された状態で、内輪43と一体的に回動する。
内輪側スプリングポケット部43fは、内輪43の外周面43cにおいて軸方向視で接線方向に長い四角形状の凹部とされる。内輪側スプリングポケット部43fは、リターンスプリング46の内周側を収容する。リターンスプリング46は、例えば接線方向に伸縮するコイルスプリングである。
図5、図6を参照し、リテーナ部材44は、例えば金属製で一体の環状部材44aに複数の切り欠き部44cを形成する。リテーナ部材44は、一体の環状をなし、内輪43の外周に摺動可能に外嵌する。リテーナ部材44は、内輪43と外輪41との間において、内外輪43,41と相対回動可能とされる。切り欠き部44cは、環状部材44aをクラッチ径方向で貫通するとともに、対応するローラ42を収容する。切り欠き部44cは、収容したローラ42とクラッチ周方向で隣接する一対の隣接面44bを形成する。隣接面44bは、クラッチ径方向外側が正転方向側に位置するように、クラッチ径方向に対して僅かに傾斜する。ローラ42は、対応する切り欠き部44cの一対の隣接面44bに挟まれた状態で、リテーナ部材44と一体的に回動する。
リテーナ部材44において、環状部材44aの内周面44dには、複数(3つ)の切り欠き部44cと、錘体ポケット47の外周側を構成する複数(3つ)のリテーナ部材側錘体ポケット部44eと、スプリングポケット48の外周側を構成する複数(3つ)のリテーナ部材側スプリングポケット部44fと、がクラッチ周方向で独立して形成される。切り欠き部44c、リテーナ部材側錘体ポケット部44e及びリテーナ部材側スプリングポケット部44fは、それぞれクラッチ周方向で等間隔に設けられる。
リテーナ部材側錘体ポケット部44eは、リテーナ部材44の内周面44dにおいて軸方向視台形状の凹部とされる。リテーナ部材側錘体ポケット部44eは、内輪側錘体ポケット部43eよりもクラッチ周方向幅が大きい。リテーナ部材側錘体ポケット部44eの逆転方向側には、クラッチ径方向外側が正転方向側に位置するように傾斜したリテーナ部材作動カム面44gが形成される。リテーナ部材側錘体ポケット部44eは、内輪側錘体ポケット部43eとそれぞれの開口部分を対向させることにより、錘体45を収容する錘体ポケット47を形成する。
内輪43のリテーナ部材44に対する正転は、ローラ42が係合位置A2に移動し、外輪41の内周面41aとカム面43gとに接した時点で停止される(図7参照)。このとき、錘体45は、リテーナ部材側錘体ポケット部44eの正転方向側の側面44hに当接する手前で止まる。このため、係合位置A2に移動したローラ42が、外輪41の内周面41aとカム面43gとに確実に接し、ワンウェイクラッチ40がワンウェイ作動状態(ワンウェイ作動が可能な状態)となる。
また、内輪43のリテーナ部材44に対する逆転は、錘体45の外側端部45bがリテーナ部材作動カム面44gの逆転方向側端部44iに当接することで停止される(図6参照)。このとき、ローラ42が収容位置A1に移動し、かつローラ42が内周面41a及びカム面43gの少なくとも一方との間に隙間を形成し、内輪43及びリテーナ部材44が正逆何れにも相対回動可能な初期位置にある状態となる。内輪43及びリテーナ部材44が初期位置にあるとき、リテーナ部材側錘体ポケット部44eの逆転方向側と内輪側錘体ポケット部43eとが対向する。
リテーナ部材側スプリングポケット部44fは、リテーナ部材44の内周面44dにおいて軸方向視で接線方向に長い四角形の凹部とされる。リテーナ部材側スプリングポケット部44fは、リターンスプリング46の外周側を収容する。リテーナ部材側スプリングポケット部44fは、内輪側スプリングポケット部43fとそれぞれの開口部分を対向して配置されることにより、リターンスプリング46を収容するスプリングポケット48を形成する。
リターンスプリング46は、リテーナ部材側スプリングポケット部44fと内輪側スプリングポケット部43fとに跨って配置される。リターンスプリング46は、その両端をリテーナ部材側スプリングポケット部44f及び内輪側スプリングポケット部43fの各両端に当接させて縮設される。リターンスプリング46は、内輪43及びリテーナ部材44の相対回動に伴い収縮し、内輪43及びリテーナ部材44を初期位置に戻すべく付勢する。
外輪41は、円環形状をなし、リテーナ部材44の径方向外側においてリテーナ部材44の外周に摺動可能に外嵌する。なお、本実施形態の外輪41は外周側カラー部21eと一体に設けられるが、外周側カラー部21eに一体回転可能に内嵌するものであってもよい。
図6を参照し、リテーナ部材44及び内輪43は、リターンスプリング46に蓄積される弾性反発力によって、初期位置に向けて常時付勢される。このとき、ローラ42は、切り欠き部44cの一対の隣接面44b間に保持されて収容位置A1にあり、例えば外輪41の内周面41aとの間に隙間Sを形成する。錘体45は、外側端部45bをリテーナ部材作動カム面44gの逆転方向側端部44iに当接させて、リテーナ部材側錘体ポケット部44eに底付き状態で収容される。ローラ42が収容位置A1にあるとき、内輪43と外輪41とは正逆何れにも相対回動可能であり、ワンウェイクラッチ40はワンウェイ作動状態にない。
図7を参照し、内輪43が回動すると、リターンスプリング46を介してリテーナ部材44も一体的に回動する。このとき、内輪43の回転数(回転速度)の増加に伴い、錘体45に作用する遠心力が所定以上になると、錘体45がリテーナ部材作動カム面44gに摺接しつつ、リターンスプリング46の付勢力に抗してリテーナ部材44を内輪43に対して回動(逆転)させる。リテーナ部材44が内輪43に対して逆転することで、ローラ42が切り欠き部44cの隣接面44bに押されて係合位置A2に移動する。その結果、ローラ42が外輪41の内周面41aとカム面43gとに接し、ワンウェイクラッチ40がワンウェイ作動状態になる。
ワンウェイ作動状態において、外輪41に対する内輪43の正転時(又は内輪43に対する外輪41の逆転時)には、内外輪43,41間でトルク伝達が可能となるように、ワンウェイクラッチ40がロック作動する。ロック作動とは、ワンウェイ作動状態からさらに内外輪43,41が相対回動し、外輪41の内周面41aと内輪43のカム面43gとの間にローラ42を噛み込み、内外輪43,41間のトルク伝達が可能になる作動をいう。
一方、ワンウェイ作動状態において、外輪41に対する内輪43の逆転時(又は内輪43に対する外輪41の正転時)には、ワンウェイクラッチ40がロック作動せず、内外輪43,41間のトルク伝達がなされない。
ワンウェイ作動状態では、内輪43に対するリテーナ部材44の回動に伴い、リテーナ部材側スプリングポケット部44fと内輪側スプリングポケット部43fとがクラッチ周方向でずれて、リターンスプリング46を収縮させる。
内輪43の回転数が下がり錘体45に作用する遠心力が所定未満になると、リターンスプリング46の付勢力によりリテーナ部材44が内輪43に対して正転する。これにより、リテーナ部材44及び内輪43が初期位置に戻り、リテーナ部材作動カム面44gに沿って錘体45が内輪側錘体ポケット部43eに底付きするまで押し戻され、ローラ42が収容位置A1に戻される。
図8を参照し、内輪43の回転数が低くても、内輪43への所定トルク以上の正転入力があると、内輪43がリテーナ部材44に対して先んじて正転する。このとき、リテーナ部材44が内輪43に対して相対的に逆転し、ローラ42が逆転方向に移動する。その結果、ローラ42が係合位置A2に至り、ワンウェイクラッチ40がワンウェイ作動状態になる。このため、前記正転入力後に速やかに外輪41に正転トルクを伝達することが可能となる。
図9は、ワンウェイクラッチ40の作動制限の設定概念を示し、横軸をクランクシャフト9と同軸の各要素の回転速度として、ワンウェイクラッチ40の作動制限のかかる領域と、スイングバックの回転速度域と、キックによるクランク回転速度域と、を示す。スイングバックの回転速度域の幅は、クランクの位相等を考慮し、キックによるクランク回転速度域の幅は、一般運転者のキックのばらつきも含めて想定したものである。なお、スイングバックは逆回転だが、遠心力を活用する回転作動型のワンウェイクラッチ40の場合は、正逆回転によらず、回転速度の絶対値によるので、横軸は各要素の回転速度の絶対数値として設定概念を表している。
図9に示すように、スイングバックの回転速度域より上の回転速度で、かつキックスタータ16の回転想定域内の回転速度V1にて、ワンウェイクラッチ40のロック作動の制限とワンウェイ作動状態とが切り替わるように設定される。
このように設定することにより、遠心式の発進クラッチを有する小型車両用の内燃機関に、キックスタータ16を装備するために、伝動軸上にワンウェイクラッチ40を設けたものであっても、始動電動機兼用の発電機装置を装着し、高効率のスイングバック制御を行うことができる。
本実施形態では、内輪43の回転速度が速度V1より小であっても、キックを踏み込む勢いをもって内輪43が正転すれば、内輪43がリテーナ部材44に対して先んじて正転し、ワンウェイクラッチ40が速やかにワンウェイ作動状態となる。これにより、キックの踏み込み初期から十分なストロークをもってクランキングを行うことができる。
特許文献3のワンウェイクラッチでは、キックスタータで始動する際、キックスタータの回転想定域の内、速度V1より上の回転速度域(実線で示す領域)でのみキック駆動が有効になるので、クランキングのキックストロークが少なくなる。
一方、本実施形態のワンウェイクラッチでは、キックの踏み込みの勢いを利用してワンウェイ作動状態となるので、キックスタータの回転想定域の内、速度V1より低い回転速度域(破線で示す領域)からキック駆動が有効になり、クランキングのキックストロークが確保される。
本実施形態のエンジン1においては、機関停止後にクランクシャフト9を所定位置まで逆転させるスイングバック制御におけるクランクシャフト9の低速の逆転時に、ワンウェイクラッチ40におけるトルク伝達のためのロック作動を制限するため、クランクシャフト9から機関出力部23への伝動経路に遠心クラッチ21及びワンウェイクラッチ40を有する既存の内燃機関の構成を大きく変えることなく、エンジンブレーキを利用可能とし、かつ遠心クラッチ21の機関出力部23側のクラッチアウター21aを用いたキックスタータ16を装備可能とする。そして、キック始動時には、回転作動型のワンウェイクラッチ40でありながら、回転速度が低くてもロック作動を可能とし、キックの踏み込みストロークを有効利用できる。
以上説明したように、上記実施形態におけるワンウェイクラッチ40は、ワンウェイクラッチ40が所定値未満の速度(回転数)で回転する状態では、延長軸9d及び外輪41側が正逆を問わず回動しても、伝動筒21f及び内輪43側へと駆動力が伝達されることはない。これに対して、ワンウェイクラッチ40が所定値以上の速度で回転する状態になると、錘体45が遠心力でクラッチ径方向外側に移動することで、リテーナ部材44が作動し、ローラ42が内輪43の係合位置A2へ移動されて、ワンウェイクラッチ40がワンウェイ作動状態となる。また、ワンウェイクラッチ40の回転数が所定値未満であっても、内輪43がリテーナ部材44に対して相対回動すれば、ローラ42が内輪43の係合位置A2へ移動されて、ワンウェイクラッチ40がワンウェイ作動状態となる。すなわち、遠心力により錘体45がクラッチ径方向外側に移動することの他、内輪43の回転速度(回転数)が低い初期入力時でも、リテーナ部材44に対して内輪43が先んじて回動することで、ワンウェイクラッチ40を速やかにワンウェイ作動させて正転トルクを伝達することができる。
また、ワンウェイクラッチ40によれば、内輪43側から駆動力がかけられてリテーナ部材44に対して内輪43が正転する際の作動トルクを設定することができる。また、ワンウェイ作動後に内輪43とリテーナ部材44とを初期位置に戻すことができる。
また、ワンウェイクラッチ40によれば、凹部43d及びローラ42がクラッチ周方向で複数設けられることにより、伝達できる駆動力を大きくすることができる。
また、ワンウェイクラッチ40によれば、リテーナ部材44を一部品の環状部材44aで形成することにより、部品点数の削減ができるとともに、一体のリテーナ部材44で複数あるローラ42を同じ量だけ一様に移動させることができるため、ワンウェイクラッチ40としての機能をより確実にすることができる。
ここで、エンジン1の通常運転時において、クランクシャフト9の正転は、ワンウェイクラッチ40を介してはプライマリドライブギヤ20aに伝達されず、遠心クラッチ21を介してプライマリドライブギヤ20aに伝達される。また、アイドルストップ時のスイングバックでは、クランクシャフト9の逆転は、ワンウェイクラッチ40を介してはプライマリドライブギヤ20aに伝達されず、かつ回転数が低ければ遠心クラッチ21も係合せず、プライマリドライブギヤ20aには伝達されない。一方、エンジンブレーキ時には、プライマリドライブギヤ20aの正転は、その回転数が所定以上であれば、遠心クラッチ21の係合が解除されても、ワンウェイクラッチ40が係合してクランクシャフト9に伝達される。そして、キック始動時には、プライマリドライブギヤ20aの正転は、キックアーム16bの踏み降ろしの勢いがあれば、その回転数が所定未満であっても、回転入力の初期からワンウェイクラッチ40が係合し、クランクシャフト9に伝達される。このように、遠心作動式のワンウェイクラッチ40を備えたエンジン1において、キックアーム16bの踏み降ろしの初期からクランキングを可能にし、キック始動を容易にすることができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、例えば、遠心クラッチ21及びACGスタータ27の少なくとも一方がクランクシャフト9と同軸ではなく別軸に支持されてもよい。マニュアルトランスミッション4ではなく、有段式あるいは無段式のオートマチックトランスミッションを備えたエンジンに適用してもよい。
また、各実施形態においては、遠心クラッチ21のクラッチアウター21a側に、ワンウェイクラッチ40の内輪43が外嵌され、クラッチインナー21b側に、ワンウェイクラッチ40の外輪41が内嵌されているが、この配置に限定されず、遠心クラッチ21のクラッチインナー21b側にワンウェイクラッチ40の内輪43が装着され、遠心クラッチ21のクラッチアウター21a側にワンウェイクラッチ40の外輪41が装着されるものであってもよい。
また、本発明は、自動二輪車に限らず三輪又は四輪の小型車両に適用してもよい。クランクケース2の前方にシリンダ3を突出させたエンジン1に限らずクランクケース2の上方にシリンダ3を起立させたエンジンに適用してもよい。
そして、上記各実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
9d 左右延長軸(第2の軸部材)
21f 伝動筒(第1の軸部材)
40 ワンウェイクラッチ
41 外輪
41a 内周面
42 ローラ(移動体)
43 内輪
43c 外周面
43d 凹部
43g カム面
44 リテーナ部材
44a 環状部材
44c 切り欠き部
44d 内周面
44e リテーナ部材側錘体ポケット部(リテーナ部材側ポケット部)
44g リテーナ部材作動カム面
45 錘体
46 リターンスプリング
47 錘体ポケット
48 スプリングポケット
A1 収容位置
A2 係合位置
S 隙間

Claims (4)

  1. 第1の軸部材(21f)に接続されるとともに外周面(43c)に凹部(43d)が形成される内輪(43)と、
    第2の軸部材(9d)に接続されるとともに前記内輪(43)の径方向外側に配置される外輪(41)と、
    前記内輪(43)の前記凹部(43d)が形成するカム面(43g)と前記外輪(41)の内周面(41a)との間に配置される移動体(42)と、を備え、
    前記移動体(42)は、
    前記凹部(43d)のクラッチ径方向内側の収容位置(A1)にあるとき、前記外輪(41)の内周面(41a)との間に隙間(S)を形成可能となり、
    前記凹部(43d)のクラッチ径方向外側の係合位置(A2)にあるとき、前記外輪(41)の内周面(41a)と前記凹部(43d)の前記カム面(43g)とに係合可能となり、
    前記移動体(42)が前記係合位置(A2)にあるとき、前記内輪(43)の前記外輪(41)に対する一方向の回動の駆動力が伝達可能とされるワンウェイクラッチ(40)において、
    前記内輪(43)と前記外輪(41)との間には、前記内輪(43)と相対回動可能でかつ、前記移動体(42)をクラッチ周方向で移動可能なリテーナ部材(44)が配置され、
    前記内輪(43)と前記リテーナ部材(44)との間には、遠心力によってクラッチ径方向外側に移動可能な錘体(45)が配置され、
    前記錘体(45)は、前記凹部(43d)とは分離して設けられる錘体ポケット(47)に収容され、
    前記錘体ポケット(47)は、前記リテーナ部材(44)の内周面(44d)にリテーナ部材側ポケット部(44e)を有し、
    前記リテーナ部材側ポケット部(44e)には、前記錘体(45)のクラッチ径方向外側への移動に伴って前記リテーナ部材(44)を前記内輪(43)に対して相対回動可能なリテーナ部材作動カム面(44g)が形成され、
    前記リテーナ部材(44)が前記内輪(43)に対して相対回動すると、前記移動体(42)が前記リテーナ部材(44)により前記係合位置(A2)に移動されることを特徴とするワンウェイクラッチ(40)。
  2. 前記リテーナ部材(44)をクラッチ周方向で付勢して前記移動体(42)を前記収容位置(A1)に戻すリターンスプリング(46)を備え、
    前記リターンスプリング(46)は、前記内輪(43)と前記リテーナ部材(44)との間に形成されるスプリングポケット(48)に収容されることを特徴とする請求項1に記載のワンウェイクラッチ(40)。
  3. 前記凹部(43d)及び前記移動体(42)は、クラッチ周方向で複数設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のワンウェイクラッチ(40)。
  4. 前記リテーナ部材(44)は、一体の環状部材(44a)に、該環状部材(44a)をクラッチ径方向で貫通するとともに複数の前記移動体(42)をそれぞれ収容する複数の切り欠き部(44c)を有すること特徴とする請求項3に記載のワンウェイクラッチ(40)。
JP2014186511A 2014-09-12 2014-09-12 ワンウェイクラッチ Expired - Fee Related JP6212781B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014186511A JP6212781B2 (ja) 2014-09-12 2014-09-12 ワンウェイクラッチ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014186511A JP6212781B2 (ja) 2014-09-12 2014-09-12 ワンウェイクラッチ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016056937A true JP2016056937A (ja) 2016-04-21
JP6212781B2 JP6212781B2 (ja) 2017-10-18

Family

ID=55758087

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014186511A Expired - Fee Related JP6212781B2 (ja) 2014-09-12 2014-09-12 ワンウェイクラッチ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6212781B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016160812A (ja) * 2015-02-27 2016-09-05 本田技研工業株式会社 内燃機関の制御装置
JP2021081027A (ja) * 2019-11-21 2021-05-27 株式会社ミツバ 減速機構付モータ

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5213051A (en) * 1975-07-18 1977-02-01 Sanwa Tekki Corp Rotary clutch and an it-loaded vibration braking instrument
JPH0754861A (ja) * 1993-08-20 1995-02-28 Daikin Mfg Co Ltd クラッチ装置
JP2005207515A (ja) * 2004-01-23 2005-08-04 Honda Motor Co Ltd ワンウェイクラッチ
JP2008283780A (ja) * 2007-05-10 2008-11-20 Kr & D:Kk 回転機のクラッチ機構
JP2012219845A (ja) * 2011-04-05 2012-11-12 Jtekt Corp 一方向クラッチ装置およびプーリユニット

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5213051A (en) * 1975-07-18 1977-02-01 Sanwa Tekki Corp Rotary clutch and an it-loaded vibration braking instrument
JPH0754861A (ja) * 1993-08-20 1995-02-28 Daikin Mfg Co Ltd クラッチ装置
JP2005207515A (ja) * 2004-01-23 2005-08-04 Honda Motor Co Ltd ワンウェイクラッチ
JP2008283780A (ja) * 2007-05-10 2008-11-20 Kr & D:Kk 回転機のクラッチ機構
JP2012219845A (ja) * 2011-04-05 2012-11-12 Jtekt Corp 一方向クラッチ装置およびプーリユニット

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016160812A (ja) * 2015-02-27 2016-09-05 本田技研工業株式会社 内燃機関の制御装置
JP2021081027A (ja) * 2019-11-21 2021-05-27 株式会社ミツバ 減速機構付モータ

Also Published As

Publication number Publication date
JP6212781B2 (ja) 2017-10-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6002269B1 (ja) 車両用エンジンの始動装置
US7303504B2 (en) Power switchover apparatus for a hybrid vehicle
KR100671252B1 (ko) 무단 변속기의 변속 제어 장치
US9050974B2 (en) Drive system and method for controlling drive system
US9086132B2 (en) Vehicle transmission
JP6212781B2 (ja) ワンウェイクラッチ
JP6007120B2 (ja) 内燃機関の始動制御装置
JP4263587B2 (ja) ワンウェイクラッチ装置及びこれを用いた自動二輪車
WO2014122857A1 (ja) 内燃機関
EP2952731A1 (en) Engine unit provided with a starter-generator and an auxiliary starter motor for starting a straddle-type vehicle
JP6413199B2 (ja) ワンウェイクラッチ
JP5998073B2 (ja) 内燃機関
JP6116607B2 (ja) ワンウェイクラッチ
JP6249861B2 (ja) ワンウェイクラッチ
JP6431374B2 (ja) エンジンの自動停止始動制御装置
CN112714825B (zh) 车辆用发动机起动装置
JP6408399B2 (ja) 内燃機関の制御装置
JP4135562B2 (ja) エンジン始動装置
JP2014177868A (ja) 車両の電動発電機
JP6097465B2 (ja) 鞍乗型車両
JP2009079691A (ja) パワーユニット
JP2008045562A (ja) 自動二輪車
JP2000097136A (ja) エンジンの始動兼発電装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161129

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170822

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170824

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170829

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6212781

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees