JP6116607B2 - ワンウェイクラッチ - Google Patents

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Description

本発明は、ワンウェイクラッチに関する。
特許文献1には、クランクシャフト上にACGスタータを設けたスクータ型車両が開示されている。前記スクータ型車両は、走行時に信号待ちなどにより減速して停止するとエンジンが自動停止し、この自動停止状態からスロットルグリップを操作する等の発進操作が検知されると、ACGスタータにてクランキングしてエンジンを再始動させる所謂アイドルストップを行うことができる。
上記したアイドルストップシステムでは、アイドルストップしてからエンジンが再始動するまでの間、ACGスタータを例えば圧縮行程終了後の位置まで逆回転させる所謂スイングバック制御を行うことで、エンジン再始動時にクランクシャフトが次の圧縮上死点にいたるまでにクランクシャフトを十分加速させ、再始動時に圧縮上死点を乗り越え易くしている。
一方、特許文献2には、クランクシャフトとプライマリドライブギヤとの間にエンジンブレーキ用のワンウェイクラッチを設けたパワーユニットが開示されている。この構成によれば、エンジンブレーキ時に(キックスタート時や押しがけ時も同様に)、プライマリドライブギヤがクランクシャフトに先んじて回転しようとすると、ワンウェイクラッチを介してプライマリドライブギヤからクランクシャフトへトルクが伝達される。
ところで、特許文献2のようなパワーユニットを備えた鞍乗り型車両にも、特許文献1のようなACGスタータを用いたアイドルストップ制御を実施したい要望がある。しかしながら、クランクシャフトとプライマリドライブギヤとの間にエンジンブレーキ用のワンウェイクラッチを設けたパワーユニットの場合、クランクシャフト上にACGスタータを設けてスイングバックをすると、このスイングバックによってクランクシャフトが逆回転する際、プライマリドライブギヤがクランクシャフトに先んじて回転しようとする状況となる。このため、ワンウェイクラッチが係合し、プライマリドライブギヤにトルクが伝達されて車両が僅かに後退してしまう。
このような課題に対し、特許文献3に開示されるような遠心作動式のワンウェイクラッチが効果的である。このワンウェイクラッチは、その内輪を接続する軸が所定の回転数以上にならないとワンウェイクラッチとして機能しない(正逆何れも空転してトルク伝達しない)。クランクシャフトと遠心ワンウェイクラッチの外輪とを連結し、プライマリドライブギヤと遠心ワンウェイクラッチの内輪とを連結すれば、スイングバック時にクランクシャフトが逆回転しても、その回転数が低いことからワンウェイクラッチが係合せず、車両が後退しない。
特開2002−188548号公報 特開2013−228079号公報 特開2004−316886号公報
しかしながら、特許文献3のようなワンウェイクラッチを用いた構造でも、プライマリドライブギヤを介したキック始動を行う場合には課題があった。すなわち、キックアームによる軸の回動量は限られているため、キックアームの踏み降ろしでプライマリドライブギヤ及び内輪を加速させ、ワンウェイクラッチが係合可能な回転数になった時点では、キックストロークの残りが少なく、十分なクランキングを行うことが難しかった。
本発明は上記課題を解決するものであり、所定回転数未満では外輪から内輪へトルク伝達をせず、所定回転数以上では外輪から内輪へ一回転方向のトルク伝達を可能とする遠心作動式のワンウェイクラッチにおいて、内輪への回転入力の初期から外輪へのトルク伝達を可能にすることを目的とする。
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、
第一の軸部材(21f)に接続されるとともに外周にカム面(52j,52d)が形成される内輪(52,52’,52”)と、
第二の軸部材(9d)に接続されるとともに前記内輪(52,52’,52”)の径方向外側に配置される外輪(51)と、
前記内輪(52,52’,52”)と前記外輪(51)との間で前記内輪(52,52’,52”)及び前記外輪(51)に対して前記内輪(52,52’,52”)および外輪(51)の軸中心で相対回動可能に配置される第一移動体(54,81)と、
前記内輪(52,52’,52”)の前記カム面(52j,52d)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に配置される第二移動体(55,71)と、を備え、
前記第二移動体(55,71)は、前記カム面(52j,52d)上で収容位置(A1)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52,52’,52”)との間の動力伝達を不能とし、前記カム面(52j,52d)上で係合位置(A2)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52,52’,52”)との間で動力伝達を可能とするワンウェイクラッチ(50,70,80)において、
前記第一移動体(54,81)は、クラッチ周方向に並ぶ複数の分割体(53,82)で構成され、
前記複数の分割体(53,82)の各々には、前記第二移動体(55,71)に当接する第一当接面(53a)と、前記外輪(51)の内周面(51a)に当接する第二当接面(53k,82c)と、が形成され、
前記第一移動体(54,81)は、付勢部材(57)により内輪(52,52’,52”)側に付勢され、
前記第一移動体(54,81)が規定回転数未満の場合には、前記第二移動体(55,71)と前記外輪(51)及び前記内輪(52,52’,52”)の少なくとも一方との間に隙間(S)が形成され、
前記第一移動体(54,81)が規定回転数以上の場合には、前記各分割体(53,82)の前記第二当接面(53k,82c)が前記外輪(51)の内周面(51a)に前記付勢部材(57)の付勢力に抗して当接し、前記第一移動体(54,81)を前記内輪(52,52’,52”)に対して前記軸中心で相対回動させるとともに、前記各分割体(53,82)の前記第一当接面(53a)が前記第二移動体(55,71)に当接し、前記第二移動体(55,71)を前記係合位置(A2)に移動させ、該第二移動体(55,71)を前記外輪(51)及び前記内輪(52,52’,52”)に係合させることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、
前記第一移動体(54,81)をクラッチ周方向で付勢して前記第二移動体(55,71)を前記収容位置(A1)に戻すリターンスプリング(56)を備え、
前記リターンスプリング(56)は、前記内輪(52,52’,52”)と前記第一移動体(54,81)との間に形成されるスプリングポケット(58)に収容されることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、
前記内輪(52,52’,52”)の前記第一移動体(54,81)と対向する面(52d)には係合凹部(52g)が設けられ、
前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)には前記係合凹部(52g)に入り込む係合凸部(53f)が設けられ、
前記係合凹部(52g)の内側面(52h)に前記係合凸部(53f)が当接することで、前記第一移動体(54,81)による前記第二移動体(55,71)の移動量が規定されることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、
前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52)と対向する面(53d,82a)には、前記係合凸部(53f)に隣接してクラッチ径方向外側に凹む逃げ部(53j)が形成され、
前記逃げ部(53j)の内側には、前記係合凸部(53f)を基端側ほど漸次末広がりとする逃げ曲面(53i)が形成されることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、
前記第一移動体(54,81)と前記第二移動体(55,71)とを前記内輪(52,52’,52”)の外周面(52d)上に配置した状態で、前記第一移動体(54,81)と前記第二移動体(55,71)とがクラッチ周方向で連続するように配置されることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、
前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)は、前記内輪(52,52’,52”)に対する滑動面とされ、
前記第一移動体(54,81)には、前記外輪(51)の前記内周面(51a)と対向する前記第二当接面(53k,82c)が前記滑動面とは別に形成され、
前記第二当接面(53k,82c)は、前記各分割体(53,82)のクラッチ径方向の幅よりもクラッチ周方向に長く形成されることを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、
前記内輪(52,52’,52”)の前記第一移動体(54,81)と対向する面(52d)は、クラッチ周方向に沿う円周面で構成され、
前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)は、前記円周面に整合する曲面で構成されることを特徴とする。
請求項8に記載した発明は、
前記内輪(52”)の前記第一移動体(81)と対向する面(52d)には、クラッチ周方向に対して傾斜するくさび面(52k)が形成され、
前記くさび面(52k)は、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させる方向へ前記第一移動体(81)が前記内輪(52”)に対して相対回動したときのみに、前記第一移動体(81)を外周側に移動させて前記外輪(51)と係合させるように傾斜することを特徴する。
請求項9に記載した発明は、
前記内輪(52’)の前記第一移動体(54)と対向する面(52d)は、クラッチ周方向に沿う前記カム面としての外周面(52d)とされ、
前記第二移動体(71)は、前記収容位置(A1)から前記係合位置(A2)に移動する際の姿勢変化により、前記係合位置(A2)で前記外輪(51)の内周面(51a)と前記内輪(52’)の外周面(52d)とに係合することを特徴とする。
請求項10に記載した発明は、
第一の軸部材(21f)に接続されるとともに外周にカム面(52j)が形成される内輪(52)と、
第二の軸部材(9d)に接続されるとともに前記内輪(52)の径方向外側に配置される外輪(51)と、
前記内輪(52)と前記外輪(51)との間で前記内輪(52)及び前記外輪(51)に対して前記内輪(52,52’,52”)および外輪(51)の軸中心で相対回動可能に配置される第一移動体(61)と、
前記内輪(52)の前記カム面(52j)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に配置される第二移動体(55)と、を備え、
前記第二移動体(55)は、前記カム面(52j)上で収容位置(A1)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52)との間の動力伝達を不能とし、前記カム面(52j)上で係合位置(A2)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52)との間で動力伝達を可能とし、
前記カム面(52j)は、前記内輪(52)が前記第二移動体(55)に対してクラッチ周方向の一方向に相対回動したときのみに、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させるように傾斜するワンウェイクラッチ(60)において、
前記第一移動体(61)は、クラッチ周方向に並ぶ複数の分割体(62)で構成され、
前記複数の分割体(62)の各々には、前記第二移動体(55)に当接する当接面(53a)と、前記第二移動体(55)とクラッチ径方向で重複する重複部(63)と、が設けられ、
前記重複部(63)の外周面は外周係合面(62c)とされ、前記重複部(63)の内周面は内周係合面(62e)とされ、
前記第一移動体(61)は、付勢部材(57)により前記内輪(52)側に付勢され、
前記第一移動体(61)が規定回転数未満の場合には、前記各分割体(62)の前記重複部(63)の前記外周係合面(62c)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に隙間(S)が形成され、
前記第一移動体(61)が規定回転数以上の場合には、前記各分割体(62)が前記外輪(51)の内周面(51a)に前記付勢部材(57)の付勢力に抗して当接し、前記第一移動体(61)を前記内輪(52)に対して前記軸中心で相対回動させるとともに、前記各分割体(62)の前記当接面(53a)が前記第二移動体(55)に当接し、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させ、
前記係合位置(A2)に移動した前記第二移動体(55)が、前記第一移動体(61)の前記重複部(63)の前記内周係合面(62e)に係合するとともに、前記第一移動体(61)の前記重複部(63)の前記外周係合面(62c)を前記外輪(51)の内周面(51a)に係合させることを特徴とする。

請求項1に記載した発明によれば、ワンウェイクラッチが所定値未満の速度(回転数)で回転する状態では、第二の軸部材及び外輪側が正逆を問わず回動しても、第一の軸部材及び内輪側へと駆動力が伝達されることはない。これに対して、ワンウェイクラッチが所定値以上の速度で回転する状態になると、クラッチ周方向に分割された第一移動体が遠心力でクラッチ径方向外側に移動する。これにより、第一移動体は外輪の内周面に当接し、摩擦により内輪と第一移動体との間に相対回転が発生する。すると、第一移動体の第一当接面が第二移動体に当接し、係合位置へ第二移動体を移動する。これにより、内輪側が外輪側よりも速く正転する際に内輪側の駆動力が外輪側に伝達可能なワンウェイ作動状態となる。このように、遠心力を第一移動体で受けることにより、速やかにトルク伝達状態へ移行することができる。
請求項2に記載した発明によれば、リターンスプリングを設けることで、内輪側から駆動力がかけられて第一移動体に対して内輪が回動する際の作動トルクを設定することができる。また、ワンウェイ作動後に内輪と第一移動体とを初期位置に戻ることができる。
請求項3に記載した発明によれば、カム面を第二移動体が移動する際に、規定量以上にカム面を移動してしまうことがある。この場合、クラッチ径方向外側へ第二移動体が規定量以上突出し、外輪の内周面と強固に係合することがある。このような係合をした場合、速やかな駆動力の切断を行い難くなる。しかし、係合凸部及び係合凹部の係合により第二移動体の規定量以上の移動を規制できるため、第二移動体の強固な係合を回避することができる。また、内輪から突出する凸の構造を設ける場合と比べて、第一移動体から突出する凸の構造を設けることで、第一移動体の重量を重くすることができ、遠心力の力をより大きくすることができる。
請求項4に記載した発明によれば、係合凸部の基端側の逃げ部を末広がりに構成することで、係合凸部の直近まで内輪の外周面との当接面(滑動面)を形成することができるとともに、係合凸部の基端での応力集中を避けることができる。
請求項5に記載した発明によれば、第一移動体と第二移動体とをクラッチ周方向で連続するように配置することで、複数の第一移動体の一つがクラッチ周方向に移動した際に、隣接する第二移動体と当接し移動させ、さらに、第二移動体は隣接する第一移動体もしくは第二移動体と当接し移動させることができる。これにより連続的に第一、第二移動体を移動させ、速やかにすべての第二移動体を係合可能状態にすることができる。
請求項6に記載した発明によれば、第一移動体をクラッチ径方向に長く構成することで、より多くの力を外輪の外周から受けて作動させることができる。また、第一移動体を大きく構成することが容易になり、より遠心力を大きくして速やかに第一移動体を作動させることができる。
請求項7に記載した発明によれば、内輪及び第一移動体の対向面を互いに整合する円周面で構成することで、引っかかりなくスムーズに第一移動体を移動させることができる。
請求項8に記載した発明によれば、第一移動体が遠心力により外輪の内周面に当接して内輪と相対回転した際に、第一移動体はくさび面上をその傾斜に沿って移動し、より外周側へ移動する。このため、第一移動体はさらに外輪の内周面に強く当接し、外輪の内周面と略一体に回動する。このため、外輪の回動と第一移動体との位相差を少なくし、第二移動体をすばやく係合状態へ移行させることができる。
請求項9に記載した発明によれば、内外輪間のカム部材の移動によりトルク伝達の可否を切り替えるため、内外輪にカム面を形成する等の必要がなくなり、工数削減を図ることができる。
請求項10に記載した発明によれば、請求項1同様、遠心力を第一移動体で受けることにより、速やかにトルク伝達状態へ移行することができる。さらに、第一移動体に重複部を設けることで、第一移動体の重量を増やすことができ、より遠心力を大きくすることができる。また、第二移動体と外輪の内周面を第一移動体の重複部を介して係合させることで、第一移動体の重複部に形状を変える等して係合部の面積を増大させ、内外輪の係合タイミング及び係合力等を容易に設定、変更することができる。
本発明の第一実施形態における自動二輪車の左側面図である。 上記自動二輪車のエンジンの駆動軸方向に沿う展開断面図である。 本実施形態の主構成を含むブロック図である。 図2の要部拡大図である。 図2に示すワンウェイクラッチの斜視図である。 上記ワンウェイクラッチを軸方向から見た第一作用説明図である。 図6の第二作用説明図である。 上記ワンウェイクラッチのロック作動制限の設定概念を示す説明図である。 本発明の第二実施形態におけるワンウェイクラッチの斜視図である。 図9のワンウェイクラッチを軸方向から見た第一作用説明図である。 図10の第二作用説明図である。 本発明の第三実施形態におけるワンウェイクラッチを軸方向から見た第一作用説明図である。 図12の第二作用説明図である。 本発明の第四実施形態におけるワンウェイクラッチの斜視図である。 図14のワンウェイクラッチを軸方向から見た第一作用説明図である。 図15の第二作用説明図である。 上記エンジンの軸配置を示す左側面図である。 図17の18−18断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
<第一実施形態>
図1に示す自動二輪車(小型車両)101において、その車体フレーム102は複数種の鋼材を溶接等により一体に結合してなる。車体フレーム102は、前輪懸架系を操向可能に支持するヘッドパイプ103から下後方へ単一のメインチューブ108を延ばし、ヘッドパイプ103と乗員着座用のシート109との間を低部として跨り易さを向上させた所謂バックボーン型とされる。メインチューブ108の後端部の下方にはピボットブラケット110が延び、ピボットブラケット110には後輪懸架系のスイングアーム112の前端部が上下揺動可能に支持される。メインチューブ108の後端部の上後方にはシートフレーム113が延び、シートフレーム113上にシート109が配置されると共に、シートフレーム113とスイングアーム112との間には後輪懸架系のリアクッション114が配置される。図中符号104は前輪、符号105はフロントフォーク、符号106はステアリングステム、符号107は操向ハンドル、符号111は後輪をそれぞれ示す。
メインチューブ108の下方には、自動二輪車101の原動機であるエンジン(内燃機関)1が支持される。
図2を併せて参照し、エンジン1は、クランクシャフト9の回転中心軸線(クランク軸線)C1を左右方向に沿わせた空冷単気筒エンジンであり、クランクケース2の前端部から前方に向けてシリンダ3を略水平に(詳細にはやや前上がりに)突出させる。
クランクケース2は、左右方向に直交する分割面(例えば車体左右中心面)を境に左右ケース半体2a,2bに分割される。左右ケース半体2a,2bの外側方には、これらの一部をなす左右ケースカバー24,25が取り付けられる。図中符号CLはエンジン1(及び車体)の左右中心線を示す。クランクケース2は、マニュアルトランスミッション(変速機、以下、単にトランスミッションという。)4を収容するミッションケースを兼ねる。クランクケース2を含むエンジン1の内部では、エンジンオイルが適宜循環、撹拌される。
シリンダ3は、クランクケース2側から順に、シリンダ本体3a、シリンダヘッド3b及びヘッドカバー3cが連なる。シリンダ本体3aのシリンダボア3d内には、ピストン8が往復動可能に嵌装される。ピストン8は、コネクティングロッド8aを介してクランクシャフト9のクランクピン9aに連結される。
クランクシャフト9は、クランクピン9aを支持する左右クランクウェブ9bと、左右クランクウェブ9bから左右外側に突出する左右ジャーナル部9cと、左右ジャーナル部9cからさらに左右外側に延びる左右延長軸(第二の軸部材)9dと、を有する。
左延長軸9dの基端側にはカムドライブスプロケット12が設けられ、このカムドライブスプロケット12を含むチェーン式伝動機構を介して、シリンダヘッド3b内のカムシャフト11がクランクシャフト9と連動して駆動する。
図中符号15はシリンダ3の左側部内に設けられるカムチェーン室、符号17はシリンダヘッド3bに取り付けられる点火プラグ、符号18はシリンダヘッド3bの上側(吸気側)に接続されるスロットルボディ、符号19はシリンダヘッド3bの下側(排気側)に接続される排気管をそれぞれ示す。
クランクシャフト9の回転動力は、クランクケース2内右側に収容された二つのクラッチ21,22、及びクランクケース2内後部に収容されたトランスミッション4を介して、クランクケース2の後部左側の機関出力部23に出力される。機関出力部23は、駆動輪である後輪111とチェーン式伝動機構23aを介して連係される。以下、クランクシャフト9から機関出力部23までの伝動経路において、クランクシャフト9側を上流側、機関出力部23側を下流側ということがある。
クランクシャフト9の右延長軸9d上には、発進用クラッチである遠心クラッチ21が同軸支持される。
遠心クラッチ21は、右方に開放する有底円筒状をなしてクランクシャフト9の右端部に相対回転可能に支持されるクラッチアウター21aと、クラッチアウター21aの内周側でクランクシャフト9の右端部に一体回転可能に支持されるクラッチインナー21bと、クラッチアウター21aの内周側でクラッチインナー21bに拡開作動可能に支持される複数の遠心ウェイト21cと、を有する。図中符号26はクラッチインナー21bの右側に形成される遠心分離式のオイルフィルタを示す。
遠心ウェイト21cは、クランクシャフト9の停止時及び低速回転時には、クラッチアウター21aの内周面から離間し、遠心クラッチ21を動力伝達不能な切断状態とする。
遠心ウェイト21cは、クランクシャフト9の回転数(回転速度)の上昇に伴い拡開作動し、所定回転数以上でクラッチアウター21aの内周面に摩擦係合して、遠心クラッチ21を動力伝達可能な接続状態とする。
図2、図4を参照し、クラッチアウター21aの中心部では、円筒状の内周側カラー部21dが右側に突設される。内周側カラー部21dの外周には、ワンウェイクラッチ50が外嵌される。ワンウェイクラッチ50の外周には、クラッチインナー21bの左側に突設された円筒状の外周側カラー部21eが外嵌される。外周側カラー部21eは、ワンウェイクラッチ50における外輪51を含む。図4中符号9eはクランクシャフト9内でクランク軸線C1に沿って形成された第一油路、符号9fはクランクシャフト9の右延長軸9dで第一油路9eから右延長軸9dの外周に至る第二油路、符号9gは第二油路9fからワンウィクラッチ50に形成される油溝52kに至る第三油路をそれぞれ示す。
ワンウェイクラッチ50の基本的な動作は、変速機側のクラッチアウター21aに先んじてクラッチインナー21b及びクランクシャフト9が正転(エンジン運転時の回転に相当)しようとしても、フリー状態となってトルク伝達をせず、クラッチアウター21aに対してクラッチインナー21b及びクランクシャフト9を空転させる。
ワンウェイクラッチ50は、クラッチインナー21b及びクランクシャフト9に先んじてクラッチアウター21aが正転しようとすると(又は、クラッチアウター21aに対してクラッチインナー21b及びクランクシャフト9が逆転しようとすると)、クラッチインナー21bの回転速度が所定未満であれば、フリー状態を保ってトルク伝達をせず、クラッチアウター21aをクラッチインナー21b及びクランクシャフト9に対して空転させる。
一方、ワンウェイクラッチ50は、クラッチインナー21bの回転速度が所定以上になると、後述するワンウェイ作動状態となり、この状態でクラッチインナー21b及びクランクシャフト9に先んじてクラッチアウター21aが正転しようとすると、後述する第二移動体55が内外輪52,51間でトルク伝達可能になるようにロック作動する。これにより、クラッチアウター21a、クラッチインナー21b及びクランクシャフト9が一体に正転可能となる。
図2を参照し、クラッチアウター21aの中央部左側には、左方に延びる円筒状の伝動筒(第一の軸部材)21fが設けられる。伝動筒21fの左端側には、プライマリドライブギヤ20aが一体回転可能に設けられる。プライマリドライブギヤ20aは、クランクシャフト9の後方に位置するメインシャフト5の右側部に相対回転可能に支持されたプライマリドリブンギヤ20bに噛み合う。プライマリドライブギヤ20a及びプライマリドリブンギヤ20bは、エンジン1の一次減速機構20を構成する。
クランクシャフト9の後方には、前側から順に、トランスミッション4のメインシャフト5及びカウンタシャフト6が配置される。メインシャフト5及びカウンタシャフト6は、それぞれの回転中心軸線C3,C4を左右方向に沿わせて(クランク軸線C1と平行にして)配置される。図中符号16aはカウンタシャフト6の後下方に配置されるキックスピンドルを示す。
メインシャフト5の右端部は遠心クラッチ21の右端よりも左方で終端し、この右端部上に多板クラッチ22が同軸支持される。
多板クラッチ22は変速用クラッチであり、右方に開放する有底円筒状をなしてメインシャフト5の右端部に相対回転可能に支持されるクラッチアウター22aと、クラッチアウター22aの内周側に配置されてメインシャフト5の右端部に一体回転可能に支持されるクラッチインナー22bと、クラッチアウター22a及びクラッチインナー22b間で軸方向に積層される複数のクラッチ板22cと、を有する。クラッチアウター22aの底壁左側には、プライマリドリブンギヤ20bが一体回転可能に支持される。
多板クラッチ22は、ダイヤフラムスプリング22dの付勢力によりクラッチ板22cを圧接して摩擦係合させる。多板クラッチ22は、不図示のシフトペダルの変速操作に連動してクラッチ板22cの圧接を一時的に解除し、トランスミッション4のシフトチェンジをよりスムーズにする。
トランスミッション4は、メインシャフト5及びカウンタシャフト6と、両シャフト5,6に跨って支持される変速ギヤ群7と、を備える。クランクシャフト9の回転動力は、変速ギヤ群7の任意のギヤを介してメインシャフト5からカウンタシャフト6に伝達される。カウンタシャフト6の左端部は、クランクケース2の後部左側に突出して機関出力部23となる。
変速ギヤ群7は、両シャフト5,6にそれぞれ支持された変速段数分のギヤで構成される。トランスミッション4は、両シャフト5,6間で変速ギヤ群7の対応するギヤ同士が常に噛み合った常時噛み合い式とされる。両シャフト5,6に支持された各ギヤは、自身を支持するシャフトに対して相対回転可能なフリーギヤと、自身を支持するシャフトに対して一体回転可能な固定ギヤと、自身を支持するシャフトにスプライン嵌合するスライドギヤと、に分類される。トランスミッション4は、不図示のチェンジ機構の作動によりスライドギヤを移動させ、変速段に応じたギヤ列を選定する。図2では、変速ギヤ群7の左側から順に、二速ギヤ列7b、四速ギヤ列7d、三速ギヤ列7c及び一速ギヤ列7aが並んで配置される。
クランクシャフト9の左延長軸9dの左端部上には、ACGスタータ27が同軸支持される。
ACGスタータ27は、三相交流式の発電電動機であり、エンジン1を始動するスタータモーターとして機能すると共に、エンジン1の運転に伴い発電する交流発電機としても機能する。ACGスタータ27の作動は、図3に示すECU(Electronic Control Unit)200により制御される。
ACGスタータ27は、いわゆるアウタローター型のもので、左方に開放する有底円筒状をなしてクランクシャフト9の左端部に一体回転可能に支持されるアウタローター27aと、アウタローター27aの内周側に配置されて左ケース半体2aの外側壁に固定的に支持されるステーター27bと、を有する。アウタローター27aの内周側には、周方向で並ぶ複数のマグネット27cが固定される。ステーター27bの外周側には、周方向で並ぶ複数のコイル27dが形成される。
図3を併せて参照し、ACGスタータ27は、例えばステーター27bにネジ等の締結部材28aで取り付けられた、複数のローター角度センサー28を保持するローター角度センサーユニット28bを有する。ローター角度センサー28は、ステーター27bのコイル27dに対する通電制御に用いられるもので、ACGスタータ27のU相、V相、W相のそれぞれに対応して一つずつ設けられる。
ローター角度センサー28は、アウタローター27aの周方向の一位置を点火タイミングとして検出する点火パルサー(パルサーセンサー)としても機能する。ローター角度センサー28は、ホールIC又は磁気抵抗(MR)素子で構成される。
ACGスタータ27は、エンジン始動時にはスタータモーターとして機能する。ACGスタータ27は、不図示のバッテリーからECU200のモータードライブ回路201を介して電力が供給され、クランクシャフト9を回転(正転駆動)させてエンジン1のクランキングを行う。このとき、クランクシャフト9の回転数は遠心クラッチ21の接続回転数未満であり、かつこの回転(正転)ではワンウェイクラッチ50がトルク伝達をしない。したがって、遠心クラッチ21の被動部材であるクラッチアウター21aよりも前記伝動経路下流側の多板クラッチ22及びトランスミッション4等には、前記クランキングの回転動力は伝達されない。
ACGスタータ27は、例えばクランクシャフト9の回転数がアイドリング相当以上になる等によりエンジン1の始動が確認されると、クランクシャフト9の回転により駆動して発電する交流発電機として機能する。この発電により、前記バッテリーの充電及び各種電装部品への電力供給がなされる。このとき、ワンウェイクラッチ50はトルク伝達をしないが、クランクシャフト9の回転数が遠心クラッチ21の接続回転数以上になれば、遠心クラッチ21が接続状態となって前記伝動経路下流側にクランクシャフト9の回転動力が伝達される。
クランクケース2の後部下側には、エンジン1のキックスタータ16における左右方向に沿うキックスピンドル16aが配置される。キックスピンドル16aの右端部はクランクケース2の後部右側に突出し、この突出部にキックアーム16bの基端部が取り付けられる。キックスピンドル16aにおけるクランクケース2内に臨む左側部上には、キックドライブギヤ16c及び噛合い機構16dが同軸支持される。キックドライブギヤ16cは、キックアーム16bの踏み降ろしによるキックスピンドル16aの一方向への回転時にのみ、噛合い機構16dを介してキックスピンドル16aと一体回転する。
キックドライブギヤ16cは、一速ギヤ列7aのドリブンギヤに噛み合う。キックドライブギヤ16cの回転動力は、一速ギヤ列7a、メインシャフト5、多板クラッチ22、プライマリドリブンギヤ20b及びプライマリドライブギヤ20aを介して、遠心クラッチ21のクラッチアウター21aに正転として入力される。この正転の回転トルクが所定以上であれば、ワンウェイクラッチ50がワンウェイ作動状態となり、さらなる正転によりワンウェイクラッチ50がロック作動すると、クラッチアウター21aからクラッチインナー21b及びクランクシャフト9に正転トルクを伝達可能となる。すなわち、キックスタータ16によるエンジン1のクランキングが可能となる。
ECU200は、ACGスタータ27の駆動及び発電を制御するモータードライブ回路201と、エンジン1の自動停止(アイドルストップ)を行うアイドルストップ制御部202と、アイドルストップ直後にACGスタータ27の逆転駆動によるクランクシャフト9の逆転(スイングバック)を行うスイングバック制御部203と、を有する。
ECU200には、ローター角度センサー28の他、スロットルボディ18のスロットルバルブ(不図示)の開度を検出するスロットルセンサー31、車輪の回転速度から車速を検出する車速センサー32、エンジン1の暖気状態として油温を検出する温度センサー33、前記バッテリーの充電状態としてバッテリー電流及び電圧を検出するバッテリーセンサー34、が接続される。ローター角度センサー28は、クランク回転数及び回転角度を検出するクランク角センサーを兼ねる。
ECU200には、ACGスタータ27の他に、点火プラグ17を含む点火装置35、スロットルボディ18のインジェクタ18aを含む燃料噴射装置36、が接続されると共に、アイドルストップ制御を行うか否かを乗員に選択させるアイドルストップスイッチ37、アイドルストップ制御の選択時やアイドルストップ時に点灯するインジケーター38、が接続される。
モータードライブ回路201は、例えばパワーFET(Field Effect Transistor)を含み、ACGスタータ27が発生する三相交流を全波整流すると共に、ACGスタータ27を駆動する際には前記バッテリーの電力を調圧して供給する。
アイドルストップ制御部202は、アイドルストップ制御の選択時において、エンジン1の自動停止許可条件が整ったときには、点火プラグ17の点火及びインジェクタ18aの燃料噴射を停止してエンジン1を自動停止させる(アイドルストップ)。
その後、アイドルストップ制御部202は、エンジン1の再始動許可条件が整ったときに、ACGスタータ27を駆動させてエンジン1のクランキングを行うと共に、点火プラグ17の点火及びインジェクタ18aの燃料噴射を再開し、エンジン1を自動で再始動させる。ECU200は、前記バッテリーの充電状態がエンジン1の再始動を行うのに十分であると認められるときのみ、アイドルストップ制御を実施する。
スイングバック制御部203は、アイドルストップ後のエンジン1の再始動性を向上させるために、ACGスタータ27を逆転駆動させ、クランクシャフト9をアイドルストップ直前の圧縮上死点の手前(逆転時)となる回転角度まで逆転させる(スイングバック)。
スイングバック制御部203は、エンジン1の再始動時におけるクランクシャフト9の助走距離を伸ばし、圧縮上死点を乗り越えるための正転トルクが小さくて済む位置までクランクシャフト9を逆転させる。その後、アイドルストップ制御部202がACGスタータ27を正転駆動させ、クランクシャフト9を改めて正転させると共に、点火装置35及び燃料噴射装置36を改めて作動させることで、エンジン1が再始動される。
スイングバック制御部203は、ステージ判定部204、ステージ通過時間検知部205、逆転制御部206及びデューティー比設定部207を有する。
ステージ判定部204は、ローター角度センサー28の出力信号に基づいて、クランクシャフト9の一回転をステージ#0〜#35の36ステージに分割し、ローター角度センサー28が点火パルサーとして発生するパルス信号の検知タイミングを基準ステージ(ステージ#0)として現在のステージを判定する。
ステージ通過時間検知部205は、ステージ判定部204が新たなステージを判定してから次のステージを判定するまでの時間に基づいて、当該ステージの通過時間Δtnを検知する。
逆転制御部206は、ステージ判定部204による判定結果及びステージ通過時間検知部205により検知された通過時間Δtnに基づいて、ACGスタータ27の逆転駆動指令を発生する。
デューティー比設定部207は、ステージ判定部204による判定結果に基づいて、モータードライブ回路201の各パワーFETに供給するゲート電圧のデューティー比を動的に制御する。
図17、図18を参照し、クランクケース2の左ケースカバー24は、ACGスタータ27を左方から覆うカップ状のACGカバーとされる。左ケースカバー24は、左側壁及び該左側壁の外周縁から右方に起立する周壁を一体に有する。左側壁の後部の下方には、車幅方向に延びるシフトスピンドルの左端部を貫通支持する軸支持部が設けられる。クランクシャフト左方の左ケースカバー24にシフトスピンドルの軸支持部を設けることで、シフトスピンドルとクランクシャフトとの軸間距離を短くすることができる。
従来、シフトスピンドルは、側面視でACGカバーと重複しない位置でクランクケース配置されていた。この場合、シフトスピンドルはACGカバーを避けなければいけないため、ACGカバーの外径分だけシフトスピンドルとクランクシャフトとの軸間距離が長くなっていた。
なお、図中符号はシフトスピンドルの右側部に固定されて不図示のシフトドラムを連係させるマスターアーム、符号はシフトスピンドルの右端部に固定されて多板クラッチ22を連係させるクラッチアームをそれぞれ示す。
次に、ワンウェイクラッチ50について、図4〜図8を参照して説明する。
図4、図5を参照し、ワンウェイクラッチ50は、クランクシャフト9と同軸の円環状のもので、クラッチアウター21aの内周側カラー部21dに一体回転可能に外嵌する内輪52と、クラッチインナー21bの外周側カラー部21eに一体に設けられる外輪51と、内外輪52,51間に配置される複数(3つ)の分割体53を有する第一移動体54と、内外輪52,51間のトルク伝達要素であり分割体53の数と同数の第二移動体55と、分割体53の数と同数のリターンスプリング56と、リング状の付勢部材57と、を有する。
以下、ワンウェイクラッチ50の軸方向をクラッチ軸方向、径方向をクラッチ径方向、周方向をクラッチ周方向という。図中矢印Fはクランクシャフト9の正転方向、矢印Rはクランクシャフト9の逆転方向をそれぞれ示す。
外輪51は、円環形状をなし、第一移動体54の外周に摺動可能に外嵌する。なお、本実施形態の外輪51は外周側カラー部21eと一体に設けられるが、外周側カラー部21eに一体回転可能に内嵌するものであってもよい。
内輪52は、円環形状に形成され、その内周面に、伝動筒21fの回転方向に結合される内歯52cを有する。内輪52の外周面52dには、凹部52e、内周側スプリングポケット部52f及び係合凹部52gが、それぞれ例えば分割体53の数と同数設けられる。凹部52e、内周側スプリングポケット部52f及び係合凹部52gは、それぞれクラッチ周方向で等間隔に設けられ、かつ異構成間で互いに分離して設けられる。
凹部52eは、外周側を向くカム面52jを形成する。カム面52jは、第一移動体54の分割体53のクラッチ周方向の一端部に有する第一当接面53aと、隣り合う他の分割体53のクラッチ周方向の他端部に有する他方端部53bと、の間に形成される空隙部53cを通じて、外輪51の内周面51aと対向する。カム面52jは、正転方向側を外輪51から離間させるようにクラッチ周方向に対して傾斜する。
内周側スプリングポケット部52fは、内輪52の外周面52dにおいて軸方向視で接線方向に長い四角形状の凹部とされる。内周側スプリングポケット部52fは、リターンスプリング56の内周側を収容する。リターンスプリング56は、例えば接線方向に伸縮するコイルスプリングである。
係合凹部52gは、外周側に開放する矩形状をなし、分割体53の内周側に突設される係合凸部53fをクラッチ周方向で規定量だけ移動可能に収容する。分割体53の内周面53dには、係合凸部53fに隣接してクラッチ径方向外側に凹む逃げ部53jが形成される。逃げ部53jの内側には、係合凸部53fの基端側を末広がりに延長するように形成される逃げ曲面53iが形成され、係合凸部53fの基端での応力集中を回避する。
分割体53は、円環形状の第一移動体54をクラッチ周方向で分割した態様をなし、クラッチ周方向に沿う円弧状に形成される。
分割体53の内周面(円周面)53dは、外輪51の内周面(円周面)51aに対向、整合する。分割体53の内周面53dは、外輪51の内周面51aに係合可能な係合面とされる。分割体53の外周面53kは、分割体53の径方向の幅よりもクラッチ周方向に長く構成される。分割体53の外周面53kのクラッチ軸方向の中央部には、クラッチ周方向に沿って延びる溝部53nが形成される。溝部53nは、複数の分割体53に跨って円環形状に連続し、この溝部53nに付勢部材57が嵌め込まれる。
分割体53の内周面(円周面)53dは、内輪52の外周面(円周面)52dに対向、整合する。分割体53の内周面53dは、内輪52の外周面52d上を滑動可能な滑動面とされる。分割体53の内周面53dには、外周側スプリングポケット部53e及び係合凸部53fが、それぞれ内輪52の内周側スプリングポケット部52f及び係合凹部52gと同数設けられる。
外周側スプリングポケット部53eは、分割体53の内周面53dにおいて軸方向視で接線方向に長い四角形状の凹部とされる。外周側スプリングポケット部53eは、リターンスプリング56の外周側を収容する。内周側スプリングポケット部52f及び外周側スプリングポケット部53eは、リターンスプリング56を収容するためのスプリングポケット58を構成する。
リターンスプリング56は、内周側スプリングポケット部52fと外周側スプリングポケット部53eとに跨って配置される。リターンスプリング56は、その両端を内周側スプリングポケット部52f及び外周側スプリングポケット部53eのクラッチ周方向の両端にそれぞれ当接させて縮設される。リターンスプリング56は、内輪52及び第一移動体54の相対回動に伴い収縮し、内輪52及び第一移動体54を初期位置に戻すべく付勢する。前記初期位置では、外周側スプリングポケット部53eと内周側スプリングポケット部52fとがクラッチ周方向位置を一致させる。
係合凸部53fは、内輪52の係合凹部52gに収容され、内輪52及び第一移動体54の相対回動により、係合凹部52gのいずれかの内側面52hに当接可能となる。係合凸部53f及び係合凹部52gにより、分割体53の第一当接面53a又は他方端部53bに当接した第二移動体55が規定量以上にカム面52j上を移動することが防止される。
付勢部材57は、例えば細身のコイルバネを円環形状に繋げた所謂ガタースプリングであり、溝部53nに嵌め込まれるように装着される。この付勢部材57の張力により、複数の分割体53が内輪52に対して付勢される。
第二移動体55は、クラッチ軸方向に沿う一対の円柱部材55aを軸部材55bで接続して構成され、隣り合う分割体53間の空隙部53cに保持される。第二移動体55の一対の円柱部材55aの間には、溝部53nに嵌め込まれた付勢部材57が嵌め込まれる。
第二移動体55は、分割体53及び内輪52の相対回転に伴い、凹部52eの比較的深い正転方向側に臨む位置(以下、収容位置A1という(図6参照)。)と、凹部52eの比較的浅い逆転方向側に臨む位置(以下、係合位置A2という(図7参照)。)との間で移動可能である。
図6を参照し、第二移動体55は、比較的深い収容位置A1にあるとき、外輪51の内周面51aとの間に隙間Sを形成する。なお、第二移動体55が付勢部材57の付勢力を受けない場合、第二移動体55は外輪51及び内輪52の少なくとも一方との間に隙間を形成する。
図7を参照し、第二移動体55は、比較的浅い係合位置A2にあるとき、外輪51の内周面51aと内輪52のカム面52jとに接する。このとき、第二移動体55は、外輪51の内周面51aと内輪52のカム面52jとに係合可能となる。
具体的に、第二移動体55が係合位置A2にあるとき、内輪52が第二移動体55に対して一方向(正転方向)に回動すると、第二移動体55が外輪51の内周面51aと内輪52のカム面52jとの間に噛み込まれ、内輪52の一方向(正転方向)の回動の駆動力が外輪51に伝達可能となる。
内輪52の第一移動体54に対する正転は、第二移動体55が係合位置A2に移動して外輪51の内周面51aと内輪52のカム面52jとに接した時点で停止される(図7参照)。このため、係合位置A2に移動した第二移動体55は、外輪51の内周面51aと内輪52のカム面52jとに確実に接し、ワンウェイクラッチ50が確実にワンウェイ作動状態(ワンウェイ作動が可能な状態)となる。
内輪52の軸方向一側面には、クランクシャフト9の第一油路9eと連通する油溝52kがクラッチ径方向に沿うように形成される。油溝52kは、例えばカム面52jの数と同数設けられ、各カム面52とクラッチ周方向の位置をラップさせる。各油溝52kには、クランクシャフト9内の第一油路9から第二及び第三油路9f,9gを介して導かれたエンジンオイルをカム面52j周辺に供給可能とする。
次に、ワンウェイクラッチ50の作用について説明する。
まず、第一移動体54が所定値以上の速度で回転する状態になると、クラッチ周方向で分割された第一移動体54の分割体53が遠心力でクラッチ径方向外側に移動し、分割体53の外周面53kが外輪51の内周面51aに当接する。このとき、分割体53と外輪51との間に回転速度差があると、摩擦により分割体53が加減速し、内輪52と分割体53との間に相対回転が生じる。
そして、分割体53に対して内輪52が正転する方向に相対回転が生じると、分割体53の第一当接面53aが第二移動体55に当接し、第二移動体55を係合位置A2へ移動させる。これにより、分割体53に対する内輪52の正転時、又は内輪52に対する分割体53の逆転時において、内外輪52,51間で第二移動体55を介して駆動力が伝達可能なワンウェイ作動状態となる。
また、分割体53に対して内輪52が逆転する方向に相対回転が生じると、第二移動体55が分割体53の他方端部53bに押されて収容位置A1に移動し、第二移動体55が外輪51の内周面51aとの間に隙間を形成する。このとき、内輪52及び第一移動体54が正逆何れにも相対回動可能な状態となる。
この状態から、分割体53に対して内輪52が逆転する方向に相対回転が生じようとしても、内輪52の係合凹部52gの内側面に分割体53の係合凸部53fがクラッチ周方向で当接することで、前記相対回転が規制される。
図6を参照し、第一移動体54及び内輪52は、リターンスプリング56に蓄積される弾性反発力によって前記初期位置に向けて常時付勢される。第一移動体54及び内輪52が初期位置にある状態において、第二移動体55は、空隙部53cに保持されて収容位置A1にあり、外輪51の内周面51aとの間に隙間Sを形成する。第二移動体55が収容位置A1にあるとき、内輪52と外輪51とは正逆何れにも相対回動可能であり、ワンウェイクラッチ50はワンウェイ作動状態にない。このとき、左右延長軸9d及び外輪51側が正逆を問わず回動しても、伝動筒21f及び内輪52側へと駆動力が伝達されることはない。
図7を参照し、通常の入力で内輪52が第一移動体54に対して正転すると、リターンスプリング56を介して第一移動体54も一体的に回動する。そして、第一移動体54の回転数(回転速度)が所定値以上になると、遠心力を受けた分割体53が外輪51の内周面51aに摺接し、リターンスプリング56の付勢力に抗して第一移動体54を内輪52に対して逆転させる。第一移動体54が内輪52に対して逆転すると、第二移動体55が第一当接面53aに押されて係合位置A2に移動する。その結果、第二移動体55が外輪51の内周面51aと内輪52のカム面52jとに接し、ワンウェイクラッチ50がワンウェイ作動状態になる。
ワンウェイ作動状態において、内輪52側が外輪51側に対してさらに正転すると(又は外輪51側が内輪52側に対して逆転すると)、内外輪52,51間でトルク伝達が可能となるように、ワンウェイクラッチ50がロック作動する。第一実施形態のロック作動は、ワンウェイ作動状態からさらに内外輪52,51が相対回動し、外輪51の内周面51aと内輪52のカム面52jとの間に第二移動体55を噛み込むことで、内外輪52,51間のトルク伝達が可能になる作動をいう。
一方、ワンウェイ作動状態において、内輪52側が外輪51側に対して逆転すると(又は外輪51側が内輪52側に対して正転すると)、ワンウェイクラッチ50がロック作動せず、内外輪52,51間のトルク伝達がなされない。
ワンウェイ作動状態では、内輪52及び第一移動体54の相対回動に伴い、外周側スプリングポケット部53eと内周側スプリングポケット部52fとがクラッチ周方向でずれて、リターンスプリング56を収縮させる。
第一移動体54の回転数が下がると、リターンスプリング56の復元力により第一移動体54が内輪52に対して正転し、第一移動体54及び内輪52が初期位置に戻る。これにより、第二移動体55が収容位置A1に戻り、ワンウェイクラッチ50がワンウェイ作動状態になる前の初期状態に戻る。
ここで、内輪52への所定トルク以上の正転入力があると、内輪52の回転数が低くても、内輪52が第一移動体54に対して先んじて正転する。その結果、第二移動体55が係合位置A2に至り、ワンウェイクラッチ50がワンウェイ作動状態になる。このため、内輪52の回転数が上昇する前にも、前記正転入力後に速やかに外輪51に正転トルクを伝達することが可能となる。
図8は、ワンウェイクラッチ50の作動制限の設定概念を示し、横軸をクランクシャフト9と同軸の各要素の回転速度として、ワンウェイクラッチ50の作動制限のかかる領域と、スイングバックの回転速度域と、キックによるクランク回転速度域と、を示す。スイングバックの回転速度域の幅は、クランクの位相等を考慮し、キックによるクランク回転速度域の幅は、一般運転者のキックのばらつきも含めて想定したものである。なお、スイングバックは逆回転だが、遠心力を活用する回転作動型のワンウェイクラッチ50の場合は、正逆回転によらず、回転速度の絶対値によるので、横軸は各要素の回転速度の絶対数値として設定概念を表している。
図8に示すように、スイングバックの回転速度域より上の回転速度で、かつキックスタータ16の回転想定域内の回転速度V1にて、ワンウェイクラッチ50のロック作動の制限とワンウェイ作動状態とが切り替わるように設定される。
このように設定することにより、遠心式の発進クラッチを有する小型車両用の内燃機関に、キックスタータ16を装備するために、伝動軸上にワンウェイクラッチ50を設けたものであっても、始動電動機兼用の発電機装置を装着し、高効率のスイングバック制御を行うことができる。
本実施形態では、内輪52の回転速度が速度V1より小であっても、キックを踏み込む勢いをもって内輪52が正転すれば、内輪52が第一移動体54に対して先んじて正転し、ワンウェイクラッチ50が速やかにワンウェイ作動状態となる。これにより、キックの踏み込み初期から十分なストロークをもってクランキングを行うことができる。
特許文献3のワンウェイクラッチでは、キックスタータで始動する際、キックスタータの回転想定域の内、速度V1より上の回転速度域(実線で示す領域)でのみキック駆動が有効になるので、クランキングのキックストロークが少なくなる。
一方、本実施形態のワンウェイクラッチ50では、キックの踏み込みの勢いを利用してワンウェイ作動状態となるので、キックスタータの回転想定域の内、速度V1より低い回転速度域(破線で示す領域)からキック駆動が有効になり、クランキングのキックストロークが確保される。
本実施形態のエンジン1においては、機関停止後にクランクシャフト9を所定位置まで逆転させるスイングバック制御におけるクランクシャフト9の低速の逆転時に、ワンウェイクラッチ50におけるトルク伝達のためのロック作動を制限するため、クランクシャフト9から機関出力部23への伝動経路に遠心クラッチ21及びワンウェイクラッチ50を有する既存の内燃機関の構成を大きく変えることなく、エンジンブレーキを利用可能とし、かつ遠心クラッチ21の機関出力部23側のクラッチアウター21aを用いたキックスタータ16を装備可能とする。そして、キック始動時には、回転作動型のワンウェイクラッチ50でありながら、回転速度が低くてもロック作動を可能とし、キックの踏み込みストロークを有効利用できる。
以上説明したように、本実施形態におけるワンウェイクラッチ50によれば、所定値未満の速度(回転数)で回転する状態では、左右延長軸9d及び外輪51側が正逆を問わず回動しても、伝動筒21f及び内輪52側へと駆動力が伝達されることはない。これに対して、所定値以上の速度で回転する状態になると、クラッチ周方向に分割された第一移動体54の分割体53が遠心力でクラッチ径方向外側に移動する。これにより、分割体53の外周面53kが外輪51の内周面51aに摺接し、分割体53と外輪51との回転速度差に応じて内輪52と分割体53との間に位相差(相対回転)を生じさせる。すると、分割体53の第一当接面53aが第二移動体55に当接し、第二移動体55を係合位置A2へ移動させる。これにより、内輪52側が外輪51側よりも速く正転する際に、内輪52側の駆動力を外輪51側に伝達可能なワンウェイ作動状態とすることができる。
また、ワンウェイクラッチ50によれば、リターンスプリング56を設けることで、内輪52側から駆動力がかけられて第一移動体54に対して内輪52が回動する際の作動トルクを設定することができる。また、ワンウェイ作動後に内輪52と第一移動体54とを初期位置に戻すことができる。
また、ワンウェイクラッチ50によれば、係合凸部53f及び係合凹部52gの係合により第二移動体55の規定量以上の移動を規制することで、第二移動体55が強固に係合してしまうことを回避し、速やかな駆動力の切断を行い難くなる状況を回避することができる。また、内輪52から突出する凸の構造を設ける場合と比べて、第一移動体54から突出する凸の構造を設けることで、第一移動体54の重量を増して遠心力をより大きくすることができる。
また、ワンウェイクラッチ50によれば、第一移動体54と第二移動体55とをクラッチ周方向で隣接配置することで、複数の分割体53の一つがクラッチ周方向に移動した際に、隣接する第二移動体55と当接し移動させ、他の分割体53及び第二移動体55を順次移動させることができる。これにより、連続的に全ての分割体53及び第二移動体55を移動させ、トルク伝達可能な状態へ移行することができる。
また、ワンウェイクラッチ50によれば、係合凸部53fの基端側に末広がりの逃げ部53jを設けることで、係合凸部53fの直近まで内輪52の外周面52dに対する滑動面(内周面53d)を形成するとともに、係合凸部53fの基端での応力集中を避けることができる。
また、ワンウェイクラッチ50によれば、第一移動体54をクラッチ径方向に長く構成することで、より多くの力を外輪51から受けて作動させることができる。また、第一移動体54を大きく構成することが容易になり、より遠心力を大きくして速やかに第一移動体54を作動させることができる。
また、ワンウェイクラッチ50によれば、内輪52及び第一移動体54の対向面を互いに整合する円周面で構成することで、引っかかりなくスムーズに第一移動体54を作動させることができる。
ここで、エンジン1の通常運転時において、クランクシャフト9の正転は、ワンウェイクラッチ50を介してはプライマリドライブギヤ20aに伝達されず、遠心クラッチ21を介してプライマリドライブギヤ20aに伝達される。また、アイドルストップ時のスイングバックでは、クランクシャフト9の逆転は、ワンウェイクラッチ50を介してはプライマリドライブギヤ20aに伝達されず、かつ回転数が低ければ遠心クラッチ21も係合せず、プライマリドライブギヤ20aには伝達されない。一方、エンジンブレーキ時には、プライマリドライブギヤ20aの正転は、その回転数が所定以上であれば、遠心クラッチ21の係合が解除されても、ワンウェイクラッチ50が係合してクランクシャフト9に伝達される。そして、キック始動時には、プライマリドライブギヤ20aの正転は、キックアーム16bの踏み降ろしの勢いがあれば、その回転数が所定未満であっても、回転入力の初期からワンウェイクラッチ50が係合し、クランクシャフト9に伝達される。このように、遠心作動式のワンウェイクラッチ50を備えたエンジン1において、キックアーム16bの踏み降ろしの初期からクランキングを可能にし、キック始動を容易にすることができる。
<第二実施形態>
次に、図9〜図11を参照して、本発明の第二実施形態におけるワンウェイクラッチについて説明する。なお、第一実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略する。
図9に示すように、本実施形態のワンウェイクラッチ60は、前記ワンウェイクラッチ50に対して、複数(3つ)の分割体53を有する第一移動体54に代えて、複数(6つ)の分割体62を有する第一移動体61を備え、各分割体62に第二移動体55とクラッチ径方向で重複する重複部63を設ける点で特に異なる。内輪52には、分割体62の数と同数の凹部52e及びカム面52jが形成される。各分割体62の係合凸部53f及び内輪52の係合凹部52gの図示は省略する。
分割体62は、クラッチ周方向に沿う円弧状に形成され、内輪52の外周面52dと対向する内周面62dと、外輪51の内周面51aと対向する外周面62bと、を有する。分割体62は、その逆転方向側の内周側が、内周側に開放する切り欠き部62aを形成するフック形状に形成される。切り欠き部62aの外周側は、クラッチ周方向に沿って延びる重複部63とされ、切り欠き部62aの逆転方向側は、クラッチ径方向に沿って延びる先端壁63aとされる。
切り欠き部62aは内輪52のカム面52jの外周側に配置され、切り欠き部62a内に第二移動体55が収容される。切り欠き部62aの正転方向側の内側面は第一当接面53aとされる。分割体62の正転方向側の端部は他方端部53bとされる。重複部63の外周面は分割体62の外周面62bと連続する外周係合面62cとされ、重複部63の内周面は内周係合面62eとされる。
図10に示すように、ワンウェイクラッチ60では、第二移動体55は、収容位置A1にあるとき、重複部63の内周係合面62eとの間に隙間Sを形成する。なお、第二移動体55が付勢部材57の付勢力を受けない場合、第二移動体55は重複部63及び内輪52の少なくとも一方との間に隙間を形成する。
重複部63の外周係合面62cは、第二移動体55が収容位置A1にあるとき、外輪51の内周面51aとの間に隙間を形成可能である。また、分割体62の先端壁63aは、内輪52及び第一移動体61が初期位置にあるとき、隣り合う他の分割体62の他方端部53bに近接する。先端壁63aが構成されることで、第二移動体55の飛び出しを防止したり、先端壁63aを内輪52に沿うように延出させて第一移動体61が大きく振動することを防止したり、遠心力を増大させるべく重量を増加したりする、等の効果を発揮させることができる。
次に、ワンウェイクラッチ60の作用について説明する。
まず、第一移動体61が所定値以上の速度で回転する状態になると、クラッチ周方向で分割された第一移動体61の分割体62が遠心力でクラッチ径方向外側に移動する。これにより、分割体62の外周面62bが外輪51の内周面51aに当接するが、このとき、分割体62と外輪51との間に回転速度差があると、摩擦により内輪52と分割体62との間に相対回転を生じさせる。すると、分割体62の第一当接面53aが第二移動体55に当接し、第二移動体55を係合位置A2へ移動させる。すると、第二移動体55が重複部63の内周係合面62eに当接して重複部63を外周側に押し上げ、重複部63の外周係合面62cを外輪51の内周面51aに当接させる。これにより、分割体62に対する内輪52の正転時、又は内輪52に対する分割体62の逆転時において、内外輪52,51間で第二移動体55及び重複部63を介して駆動力が伝達可能なワンウェイ作動状態となる。
また、分割体62に対する内輪52の逆転時、又は内輪52に対する分割体62の正転時には、第二移動体55が収容位置A1に移動し、第二移動体55が重複部63の内周係合面62eとの間に隙間を形成する。このとき、内輪52及び第一移動体61が正逆何れにも相対回動可能な状態となる。
図10を参照し、第一移動体61及び内輪52がリターンスプリング56によって初期位置にある状態において、第二移動体55は、切り欠き部62aに保持されて収容位置A1にあり、重複部63の内周係合面62eとの間に隙間Sを形成する。第二移動体55が収容位置A1にあるとき、内輪52及び外輪51は正逆何れにも相対回動可能であり、ワンウェイクラッチ60はワンウェイ作動状態にない。このとき、左右延長軸9d及び外輪51側が正逆を問わず回動しても、伝動筒21f及び内輪52側へと駆動力が伝達されることはない。
図11を参照し、第一移動体61の回転数が所定値以上になると、遠心力を受けた分割体62が外輪51の内周面51aに摺接し、リターンスプリング56の付勢力に抗して第一移動体61を内輪52に対して逆転させる。第一移動体61が内輪52に対して逆転すると、第二移動体55が第一当接面53aに押されて係合位置A2に移動し、第二移動体55が重複部63の内周係合面62eと内輪52のカム面52jとに接し、ワンウェイクラッチ60がワンウェイ作動状態になる。
ワンウェイ作動状態において、内輪52側が外輪51側に対してさらに正転すると(又は外輪51側が内輪52側に対して逆転すると)、内外輪52,51間でトルク伝達が可能となるように、ワンウェイクラッチ60がロック作動する。第二実施形態のロック作動は、外輪51の内周面51aと内輪52のカム面52jとの間に分割体53を噛み込むとともに、外輪51の内周面51aと内輪52のカム面52jとの間に第二移動体55及び重複部63を噛み込むことで、内外輪52,51間のトルク伝達が可能になる作動をいう。
一方、ワンウェイ作動状態において、内輪52側が外輪51側に対して逆転すると(又は外輪51側が内輪52側に対して正転すると)、ワンウェイクラッチ60がロック作動せず、内外輪52,51間のトルク伝達がなされない。
ワンウェイ作動状態では、内輪52及び第一移動体61の相対回動に伴いリターンスプリング56を収縮させるが、第一移動体61の回転数が下がると、リターンスプリング56の復元力により第一移動体61が内輪52に対して正転し、第一移動体61及び内輪52が初期位置に戻る。これにより、第二移動体55が収容位置A1に戻り、ワンウェイクラッチ60がワンウェイ作動状態になる前の初期状態に戻る。
ここで、内輪52への所定トルク以上の正転入力があると、内輪52の回転数が低くても、内輪52が第一移動体61に対して先んじて正転する。その結果、第二移動体55が係合位置A2に至り、ワンウェイクラッチ60がワンウェイ作動状態になる。このため、内輪52の回転数が上昇する前にも、前記正転入力後に速やかに外輪51に正転トルクを伝達することが可能となる。
以上説明したように、第二実施形態におけるワンウェイクラッチ60によっても、第一実施形態と同様、第一移動体61の分割体62を遠心作動させることで、速やかに第一移動体61を外輪51に摺接させ、速やかにトルク伝達可能な状態へ移行することができる。
また、ワンウェイクラッチ60の回転数が所定値未満である初期入力時でも、第一移動体61に対して内輪52が先んじて回動することで、速やかにワンウェイ作動状態とすることができる。
また、ワンウェイクラッチ60によれば、分割体62に重複部63を設けることで、第一移動体61の重量を増やして遠心力をより大きくすることができる。
また、第二移動体55と外輪51の内周面51aとを第一移動体61の重複部63を介して係合させることで、第一移動体61の重複部63の形状を変える等して内外輪52,51の係合タイミング及び係合力等を容易に設定、変更することができる。
<第三実施形態>
次に、図12及び図13を参照して、本発明の第三実施形態におけるワンウェイクラッチ70について説明する。なお、第一実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略する。
図12に示すように、本実施形態のワンウェイクラッチ70は、前記ワンウェイクラッチ50に対して、ローラ形状の第二移動体55に代えて、軸方向視だるま形状のスプラグ71を備える点で特に異なる。スプラグ71は、軸方向視だるま形状の輪留めであって、空隙部53cに収容される。ワンウェイクラッチ70では、内輪52に対して凹部52e及びカム面52jを無くした内輪52’を備える。付勢部材57及び溝部53nの図示は省略する。
スプラグ71は、不図示のリテーナを介して内輪52’に一体回転可能に支持され、かつ空隙部53c内で揺動可能に支持される。スプラグ71は、前記だるま形状の長軸方向をクラッチ径方向に対して外周側ほど正転方向側に位置するように傾斜させて配置される。
スプラグ71は、前記傾斜を大きくした傾斜姿勢(図12参照)で収容位置A1にあり、前記傾斜を小さくした起立姿勢(図13参照)に変化しつつ係合位置A2に移動する。
スプラグ71は、前記傾斜姿勢にあるときには、外輪51の内周面51aとの間に隙間Sを形成し、内外輪52’,51の間でトルク伝達を不能にする。なお、スプラグ71が付勢部材57の付勢力を受けない場合、スプラグ71は内外輪52’,51の少なくとも一方との間に隙間を形成する。
スプラグ71は、前記起立姿勢にあるときには、外輪51の内周面51a及び内輪52’の外周面52dに当接し、内外輪52’,51の間でトルク伝達を可能にする。
次に、ワンウェイクラッチ70の作用について説明する。
まず、第一移動体54が所定値以上の速度で回転する状態になると、クラッチ周方向で分割された第一移動体54の分割体53が遠心力でクラッチ径方向外側に移動する。これにより、分割体53の外周面53kが外輪51の内周面51aに当接するが、このとき、分割体53と外輪51との間に回転速度差があると、摩擦により内輪52’と分割体53との間に相対回転を生じさせる。すると、分割体53の第一当接面53aがスプラグ71に当接し、収容位置A1で傾斜姿勢にあるスプラグ71を起立姿勢に変化させつつ係合位置A2に移動させる。これにより、分割体53に対する内輪52’の正転時、又は内輪52’に対する分割体53の逆転時において、内外輪52’,51間でスプラグ71を介して駆動力が伝達可能なワンウェイ作動状態となる。
また、分割体53に対する内輪52’の逆転時、又は内輪52’に対する分割体53の正転時には、スプラグ71が傾斜姿勢となり、スプラグ71が内周面51aとの間に隙間を形成する。このとき、内輪52’及び第一移動体54が正逆何れにも相対回動可能な状態となる。
図12を参照し、第一移動体54及び内輪52’がリターンスプリング56によって初期位置にある状態において、スプラグ71は、空隙部53cにおいて傾斜姿勢にあり、外輪51の内周面51aとの間に隙間Sを形成する。スプラグ71が傾斜姿勢にあるとき、内輪52’及び外輪51は正逆何れにも相対回動可能であり、ワンウェイクラッチ50はワンウェイ作動状態にない。このとき、左右延長軸9d及び外輪51側が正逆を問わず回動しても、伝動筒21f及び内輪52’側へと駆動力が伝達されることはない。
図13を参照し、第一移動体54の回転数が所定値以上になると、遠心力を受けた分割体53が外輪51の内周面51aに摺接し、リターンスプリング56の付勢力に抗して第一移動体54を内輪52’に対して逆転させる。第一移動体54が内輪52’に対して逆転すると、スプラグ71が第一当接面53aに押されて起立姿勢となり、スプラグ71が外輪51の内周面51aと内輪52’のカム面52jとに接し、ワンウェイクラッチ50がワンウェイ作動状態になる。
ワンウェイ作動状態において、内輪52’側が外輪51側に対してさらに正転すると(又は外輪51側が内輪52’側に対して逆転すると)、内外輪52’,51間でトルク伝達が可能となるように、ワンウェイクラッチ50がロック作動する。第三実施形態のロック作動は、外輪51の内周面51aと内輪52’の外周面52dとの間にスプラグ71を噛み込むことで、内外輪52’,51間のトルク伝達が可能になる作動をいう。
一方、ワンウェイ作動状態において、内輪52’側が外輪51側に対して逆転すると(又は外輪51側が内輪52’側に対して正転すると)、ワンウェイクラッチ50がロック作動せず、内外輪52’,51間のトルク伝達がなされない。
ワンウェイ作動状態では、内輪52’及び第一移動体54の相対回動に伴いリターンスプリング56を収縮させるが、第一移動体54の回転数が下がると、リターンスプリング56の復元力により第一移動体54が内輪52’に対して正転し、第一移動体54及び内輪52’が初期位置に戻る。これにより、スプラグ71が傾斜姿勢に戻り、ワンウェイクラッチ70がワンウェイ作動状態になる前の初期状態に戻る。
ここで、内輪52’への所定トルク以上の正転入力があると、内輪52’の回転数が低くても、内輪52’が第一移動体54に対して先んじて正転する。その結果、スプラグ71が起立姿勢に変化し、ワンウェイクラッチ70がワンウェイ作動状態になる。このため、内輪52’の回転数が上昇する前にも、前記正転入力後に速やかに外輪51に正転トルクを伝達することが可能となる。
以上のように、第三実施形態におけるワンウェイクラッチ70によっても、第一実施形態と同様、第一移動体61の分割体62を遠心作動させることで、速やかに第一移動体61を外輪51に摺接させ、速やかにトルク伝達可能な状態へ移行することができる。
また、ワンウェイクラッチ60の回転数が所定値未満である初期入力時でも、第一移動体61に対して内輪52’が先んじて回動することで、速やかにワンウェイ作動状態とすることができる。
また、ワンウェイクラッチ70によれば、内外輪52’,51間のトルク伝達要素にスプラグ71を用いることで、内輪52’に前記凹部52e及びカム面52jを形成する必要がなくなるために、大幅な工数削減を図ることができる。
<第四実施形態>
次に、図14〜図16を参照して、本発明の第四実施形態におけるワンウェイクラッチ80について説明する。なお、第一実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略する。
図14に示すように、本実施形態のワンウェイクラッチ80は、前記ワンウェイクラッチ50に対して、複数(3つ)の分割体53を有する第一移動体54に代えて、複数(6つ)の分割体82を有する第一移動体81を備えるとともに、内輪52に対して外周面52dに各分割体82と対向するくさび面52kを形成する内輪52”を備え、かつ各分割体82の内周面82aにくさび面52kに整合する分割側くさび面82bを形成する点で特に異なる。各分割体62の係合凸部53f及び内輪52”の係合凹部52g、並びに付勢部材57及び溝部53nの図示は省略する。
くさび面52k及び分割側くさび面82bは、クラッチ周方向に沿う円周の接線方向に対し、正転方向側ほど内周側に位置するように傾斜した傾斜面とされる。
換言すれば、くさび面52k及び分割側くさび面82bは、第二移動体55を係合位置A2に移動させる方向へ内輪52”が第一移動体81に対して正転(第一移動体81が内輪52”に対して逆転)したときのみに、分割体82を外周側に移動させ、分割体82の外周面82cと外輪51の内周面51aとを係合状態とするように傾斜する。
次に、ワンウェイクラッチ80の作用について説明する。
まず、第一移動体81が所定値以上の速度で回転する状態になると、クラッチ周方向で分割された第一移動体81の分割体82が遠心力でクラッチ径方向外側に移動する。これにより、分割体82の外周面82cが外輪51の内周面51aに当接するが、このとき、分割体82と外輪51との間に回転速度差があると、摩擦により内輪52”と分割体82との間に相対回転を生じさせる。このとき、くさび面52k及び分割側くさび面82bの摺接によっても、分割体82が外周側に移動する。
前記相対回転により、分割体82の第一当接面53aが第二移動体55に当接し、第二移動体55を係合位置A2へ移動させる。これにより、分割体82に対する内輪52”の正転時、又は内輪52”に対する分割体82の逆転時において、内外輪52”,51間で第二移動体55を介して駆動力が伝達可能なワンウェイ作動状態となる。
このとき、くさび面52k及び分割側くさび面82bの摺接によって、分割体82が外周側へ移動して外輪51に係合することで、分割体82も内外輪52”,51間のトルク伝達要素となり、クラッチ容量が高められる。
また、分割体82に対する内輪52”の逆転時、又は内輪52”に対する分割体82の正転時には、第二移動体55が収容位置A1に移動し、第二移動体55が内周面51aとの間に隙間を形成する。また、くさび面52k及び分割側くさび面82bの摺接による分割体82の外周側への付勢が解除され、分割体82が外輪51の内周面51aとの間に隙間を形成する。このとき、内輪52”及び第一移動体81が正逆何れにも相対回動可能な状態となる。
図15を参照し、第一移動体81及び内輪52”がリターンスプリング56によって初期位置にある状態において、第二移動体55は、空隙部53cに保持されて収容位置A1にあり、外輪51の内周面51aとの間に隙間Sを形成する。また、第一移動体81及び内輪52”が初期位置にある状態では、分割体82と外輪51の内周面51aとの間に隙間が形成される。このとき、内輪52”及び外輪51は正逆何れにも相対回動可能であり、ワンウェイクラッチ80はワンウェイ作動状態にない。このとき、左右延長軸9d及び外輪51側が正逆を問わず回動しても、伝動筒21f及び内輪52”側へと駆動力が伝達されることはない。
図16を参照し、第一移動体81の回転数が所定値以上になると、遠心力を受けた分割体82が外輪51の内周面51aに摺接し、リターンスプリング56の付勢力に抗して第一移動体54を内輪52”に対して逆転させる。第一移動体54が内輪52”に対して逆転すると、第二移動体55が第一当接面53aに押されて係合位置A2に移動し、第二移動体55が外輪51の内周面51aと内輪52”のカム面52jとに接する。また、くさび面52k及び分割側くさび面82bの摺接によって、分割体82が外周側へ移動して外輪51の内周面51aに接する。これにより、ワンウェイクラッチ80がワンウェイ作動状態になる。
ワンウェイ作動状態において、内輪52”側が外輪51側に対してさらに正転すると(又は外輪51側が内輪52”側に対して逆転すると)、内外輪52”,51間でトルク伝達が可能となるように、ワンウェイクラッチ80がロック作動する。第四実施形態のロック作動は、外輪51の内周面51aと内輪52”のカム面52jとの間に第二移動体55を噛み込むとともに、外輪51の内周面51aと内輪52”のくさび面52kとの間に分割体82を噛み込むことで、内外輪52”,51間のトルク伝達が可能になる作動をいう。
一方、ワンウェイ作動状態において、内輪52”側が外輪51側に対して逆転すると(又は外輪51側が内輪52”側に対して正転すると)、ワンウェイクラッチ80がロック作動せず、内外輪52”,51間のトルク伝達がなされない。
ワンウェイ作動状態では、内輪52”及び第一移動体81の相対回動に伴いリターンスプリング56を収縮させるが、第一移動体54の回転数が下がると、リターンスプリング56の復元力により第一移動体81が内輪52”に対して正転し、第一移動体81及び内輪52”が初期位置に戻る。これにより、第二移動体55が収容位置A1に戻るとともに、分割体82の外周側への移動が解除され、ワンウェイクラッチ80がワンウェイ作動状態になる前の初期状態に戻る。
ここで、内輪52”への所定トルク以上の正転入力があると、内輪52”の回転数が低くても、内輪52”が第一移動体81に対して先んじて正転する。その結果、第二移動体55が係合位置A2に至るとともに分割体82が外周側に移動し、ワンウェイクラッチ80がワンウェイ作動状態になる。このため、内輪52”の回転数が上昇する前にも、前記正転入力後に速やかに外輪51に正転トルクを伝達することが可能となる。
以上のように、第四実施形態におけるワンウェイクラッチ80によっても、第一実施形態と同様、第一移動体81の分割体82を遠心作動させることで、速やかに第一移動体81を外輪51に摺接させ、速やかにトルク伝達可能な状態へ移行することができる。
また、ワンウェイクラッチ80の回転数が所定値未満である初期入力時でも、第一移動体81に対して内輪52”が先んじて回動することで、速やかにワンウェイ作動状態とすることができる。
また、ワンウェイクラッチ80によれば、第一移動体81及び内輪52”間に相対回転が生じた際に、くさび面52k及び分割側くさび面82bの摺接により第一移動体81がより外周側へ移動することで、第一移動体81がさらに外輪51の内周面51aに強く当接し、外輪51と速やかに一体回動可能となる。このため、外輪51と第一移動体81との回動の位相差を少なくし、当接する第二移動体55をすばやく係合状態へ移行させるとともに、第二移動体55をトルク伝達要素として利用することができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、例えば、各実施形態においては、遠心クラッチ21のクラッチアウター21a側にワンウェイクラッチの内輪が外嵌され、クラッチインナー21b側にワンウェイクラッチの外輪が内嵌されているが、この配置に限定されず、遠心クラッチ21のクラッチインナー21b側にワンウェイクラッチの内輪が装着され、遠心クラッチ21のクラッチアウター21a側にワンウェイクラッチの外輪が装着されてもよい。また、ワンウェイクラッチの第一移動体54,61,81の分割数は上記各実施形態と異なってもよい。また、リターンスプリング56はコイルスプリングに限らず板バネ又はゴム等の弾性体を用いてもよい。また、ワンウェイクラッチ60,80の第二移動体55に代わりスプラグ71を用いてもよい。
また、本発明は、自動二輪車に限らず三輪又は四輪の小型車両に適用してもよい。クランクケース2の前方にシリンダ3を突出させたエンジン1に限らずクランクケース2の上方にシリンダ3を起立させたエンジンに適用してもよい。また、遠心クラッチ21及びACGスタータ27の少なくとも一方がクランクシャフト9と同軸ではなく別軸に支持されたエンジンに適用してもよい。また、マニュアルトランスミッション4ではなく有段式あるいは無段式のオートマチックトランスミッションを備えたエンジンに適用してもよい。
そして、上記各実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
9d 左右延長軸(第二の軸部材)
21f 伝動筒(第一の軸部材)
50,60,70,80 ワンウェイクラッチ
51 外輪
51a 内周面
52,52’,52” 内輪
52d 外周面(カム面)、第一移動体と対向する面、円周面
52g 係合凹部
52j カム面
52k くさび面
53,62,82 分割体
53a 第一当接面、当接面
53d,82a 内輪と対向する面、外周面、曲面
53f 係合凸部
53h 内側面
53i 逃げ曲面
53j 逃げ部
53k,82c 第二当接面
54,61,81 第一移動体
55 第二移動体
56 リターンスプリング
57 付勢部材
58 スプリングポケット
62c 外周係合面
62e 内周係合面
63 重複部
71 スプラグ(第二移動体)
A1 収容位置
A2 係合位置
S 隙間

Claims (10)

  1. 第一の軸部材(21f)に接続されるとともに外周にカム面(52j,52d)が形成される内輪(52,52’,52”)と、
    第二の軸部材(9d)に接続されるとともに前記内輪(52,52’,52”)の径方向外側に配置される外輪(51)と、
    前記内輪(52,52’,52”)と前記外輪(51)との間で前記内輪(52,52’,52”)及び前記外輪(51)に対して前記内輪(52,52’,52”)および外輪(51)の軸中心で相対回動可能に配置される第一移動体(54,81)と、
    前記内輪(52,52’,52”)の前記カム面(52j,52d)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に配置される第二移動体(55,71)と、を備え、
    前記第二移動体(55,71)は、前記カム面(52j,52d)上で収容位置(A1)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52,52’,52”)との間の動力伝達を不能とし、前記カム面(52j,52d)上で係合位置(A2)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52,52’,52”)との間で動力伝達を可能とするワンウェイクラッチ(50,70,80)において、
    前記第一移動体(54,81)は、クラッチ周方向に並ぶ複数の分割体(53,82)で構成され、
    前記複数の分割体(53,82)の各々には、前記第二移動体(55,71)に当接する第一当接面(53a)と、前記外輪(51)の内周面(51a)に当接する第二当接面(53k,82c)と、が形成され、
    前記第一移動体(54,81)は、付勢部材(57)により内輪(52,52’,52”)側に付勢され、
    前記第一移動体(54,81)が規定回転数未満の場合には、前記第二移動体(55,71)と前記外輪(51)及び前記内輪(52,52’,52”)の少なくとも一方との間に隙間(S)が形成され、
    前記第一移動体(54,81)が規定回転数以上の場合には、前記各分割体(53,82)の前記第二当接面(53k,82c)が前記外輪(51)の内周面(51a)に前記付勢部材(57)の付勢力に抗して当接し、前記第一移動体(54,81)を前記内輪(52,52’,52”)に対して前記軸中心で相対回動させるとともに、前記各分割体(53,82)の前記第一当接面(53a)が前記第二移動体(55,71)に当接し、前記第二移動体(55,71)を前記係合位置(A2)に移動させ、該第二移動体(55,71)を前記外輪(51)及び前記内輪(52,52’,52”)に係合させることを特徴とするワンウェイクラッチ。
  2. 前記第一移動体(54,81)をクラッチ周方向で付勢して前記第二移動体(55,71)を前記収容位置(A1)に戻すリターンスプリング(56)を備え、
    前記リターンスプリング(56)は、前記内輪(52,52’,52”)と前記第一移動体(54,81)との間に形成されるスプリングポケット(58)に収容されることを特徴とする請求項1に記載のワンウェイクラッチ。
  3. 前記内輪(52,52’,52”)の前記第一移動体(54,81)と対向する面(52d)には係合凹部(52g)が設けられ、
    前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)には前記係合凹部(52g)に入り込む係合凸部(53f)が設けられ、
    前記係合凹部(52g)の内側面(52h)に前記係合凸部(53f)が当接することで、前記第一移動体(54,81)による前記第二移動体(55,71)の移動量が規定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のワンウェイクラッチ。
  4. 前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52)と対向する面(53d,82a)には、前記係合凸部(53f)に隣接してクラッチ径方向外側に凹む逃げ部(53j)が形成され、
    前記逃げ部(53j)の内側には、前記係合凸部(53f)を基端側ほど漸次末広がりとする逃げ曲面(53i)が形成されることを特徴とする請求項3に記載のワンウェイクラッチ。
  5. 前記第一移動体(54,81)と前記第二移動体(55,71)とを前記内輪(52,52’,52”)の外周面(52d)上に配置した状態で、前記第一移動体(54,81)と前記第二移動体(55,71)とがクラッチ周方向で連続するように配置されることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。
  6. 前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)は、前記内輪(52,52’,52”)に対する滑動面とされ、
    前記第一移動体(54,81)には、前記外輪(51)の前記内周面(51a)と対向する前記第二当接面(53k,82c)が前記滑動面とは別に形成され、
    前記第二当接面(53k,82c)は、前記各分割体(53,82)のクラッチ径方向の幅よりもクラッチ周方向に長く形成されることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。
  7. 前記内輪(52,52’,52”)の前記第一移動体(54,81)と対向する面(52d)は、クラッチ周方向に沿う円周面で構成され、
    前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)は、前記円周面に整合する曲面で構成されることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。
  8. 前記内輪(52”)の前記第一移動体(81)と対向する面(52d)には、クラッチ周方向に対して傾斜するくさび面(52k)が形成され、
    前記くさび面(52k)は、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させる方向へ前記第一移動体(81)が前記内輪(52”)に対して相対回動したときのみに、前記第一移動体(81)を外周側に移動させて前記外輪(51)と係合させるように傾斜することを特徴する請求項1から6の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。
  9. 前記内輪(52’)の前記第一移動体(54)と対向する面(52d)は、クラッチ周方向に沿う前記カム面としての外周面(52d)とされ、
    前記第二移動体(71)は、前記収容位置(A1)から前記係合位置(A2)に移動する際の姿勢変化により、前記係合位置(A2)で前記外輪(51)の内周面(51a)と前記内輪(52’)の外周面(52d)とに係合することを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。
  10. 第一の軸部材(21f)に接続されるとともに外周にカム面(52j)が形成される内輪(52)と、
    第二の軸部材(9d)に接続されるとともに前記内輪(52)の径方向外側に配置される外輪(51)と、
    前記内輪(52)と前記外輪(51)との間で前記内輪(52)及び前記外輪(51)に対して前記内輪(52,52’,52”)および外輪(51)の軸中心で相対回動可能に配置される第一移動体(61)と、
    前記内輪(52)の前記カム面(52j)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に配置される第二移動体(55)と、を備え、
    前記第二移動体(55)は、前記カム面(52j)上で収容位置(A1)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52)との間の動力伝達を不能とし、前記カム面(52j)上で係合位置(A2)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52)との間で動力伝達を可能とし、
    前記カム面(52j)は、前記内輪(52)が前記第二移動体(55)に対してクラッチ周方向の一方向に相対回動したときのみに、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させるように傾斜するワンウェイクラッチ(60)において、
    前記第一移動体(61)は、クラッチ周方向に並ぶ複数の分割体(62)で構成され、
    前記複数の分割体(62)の各々には、前記第二移動体(55)に当接する当接面(53a)と、前記第二移動体(55)とクラッチ径方向で重複する重複部(63)と、が設けられ、
    前記重複部(63)の外周面は外周係合面(62c)とされ、前記重複部(63)の内周面は内周係合面(62e)とされ、
    前記第一移動体(61)は、付勢部材(57)により前記内輪(52)側に付勢され、
    前記第一移動体(61)が規定回転数未満の場合には、前記各分割体(62)の前記重複部(63)の前記外周係合面(62c)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に隙間(S)が形成され、
    前記第一移動体(61)が規定回転数以上の場合には、前記各分割体(62)が前記外輪(51)の内周面(51a)に前記付勢部材(57)の付勢力に抗して当接し、前記第一移動体(61)を前記内輪(52)に対して前記軸中心で相対回動させるとともに、前記各分割体(62)の前記当接面(53a)が前記第二移動体(55)に当接し、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させ、
    前記係合位置(A2)に移動した前記第二移動体(55)が、前記第一移動体(61)の前記重複部(63)の前記内周係合面(62e)に係合するとともに、前記第一移動体(61)の前記重複部(63)の前記外周係合面(62c)を前記外輪(51)の内周面(51a)に係合させることを特徴とするワンウェイクラッチ。
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