JP2016056378A - シンチレータ用単結晶、シンチレータ用単結晶を製造するための熱処理方法、及びシンチレータ用単結晶の製造方法 - Google Patents

シンチレータ用単結晶、シンチレータ用単結晶を製造するための熱処理方法、及びシンチレータ用単結晶の製造方法 Download PDF

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達也 碓井
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達也 碓井
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Abstract

【課題】セリウム低濃度側と高濃度側の蛍光出力差を十分に低減することができるシンチレータ用単結晶、その製造のための熱処理方法、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶。
Gd2−(a+x+y+z)LnLuCeLmSiO ……(1)
(一般式(1)中、LmはPr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、LnはPr、Tb及びTmを除くランタノイド系元素、並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0以上1未満の値を示し、xは1を超え2未満の値を示し、yは0を超え0.01以下の値を示し、zは0を超え0.01以下の値を示す。なお、a+x+y+zの値は2以下である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、医学診断用ポジトロンCT(PET)用、宇宙線観察用、地下資源探索用等の放射線医学、物理学、生理学、化学、鉱物学、更に石油探査等の分野で、ガンマ線等の放射線に対する単結晶シンチレーション検知器(シンチレータ)に用いられるシンチレータ用単結晶、シンチレータ用単結晶を製造するための熱処理方法、及びシンチレータ用単結晶の製造方法に関するものであり、更に詳細には、セリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶、シンチレータ用単結晶を製造するための熱処理方法及びシンチレータ用単結晶の製造方法に関する。
セリウムを付活剤としたオルト珪酸ガドリニウム化合物のシンチレータは、蛍光減衰時間が短く、放射線吸収係数も大きいことから、ポジトロンCT(以下、PETという。)等の放射線検出器として実用化されている。しかし、このようなシンチレータは、蛍光出力がBGOシンチレータよりは大きいものの、NaI(Tl)シンチレータの20%程度しかなく、その改善が望まれている。
一般式Lu2(1−x)Ce2xSiOで表されるセリウム付活オルト珪酸ルテチウムの単結晶を用いたシンチレータ(例えば、特許文献1、2参照)、一般式Gd2−(x+y)LnCeSiO(LnはSc、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるセリウム付活オルト珪酸ルテチウムガドリニウム単結晶を用いたシンチレータ(例えば、特許文献3、4参照)及び一般式Ce2x(Lu1−y)SiOCe2x(Lu1−y2(1−x)SiOで表されるセリウム付活オルト珪酸ルテチウムイットリウムの単結晶を用いたシンチレータ(例えば、特許文献5、6参照)が知られている。これらのシンチレータでは、結晶の密度が向上しているだけでなく、セリウム付活オルト珪酸塩化合物の単結晶の蛍光出力が向上し、蛍光減衰時間も短くできることが知られている。
Ln2−(x+y)LuCeSiO(LnはYを含み、Sc、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるセリウム付活オルト珪酸ルテチウムの単結晶は、付活剤のセリウム濃度を変えることにより、蛍光減衰時間の異なるシンチレータが得られることが知られている。
近年、PETの開発が進むにつれ、蛍光減衰時間の異なるシンチレータを組み合わせた次世代高性能PETの開発が期待されており、蛍光出力が高く、エネルギー分解能に優れると同時に蛍光出力差が小さく、特性ばらつきの小さいシンチレータが要求されている。
しかし、付活剤のセリウム濃度を変えると蛍光減衰時間が変化するだけでなく、蛍光出力やエネルギー分解能が低下して、シンチレータ特性にばらつきが生じるという問題がある。
特性ばらつきの要因はセリウム濃度以外に、結晶格子内の酸素欠損の発生が考えられる。この酸素欠損の発生により、エネルギートラップ準位が形成され、その準位からの熱励起作用に起因して蛍光出力のバックグラウンド(残光:Afterglow)が増加し、蛍光出力のばらつきが増加すると考えられる。
一般式:Ce2xLn2yLu2(1−x−y)SiO(式中Lnは、Luを除くランタノイド系元素のうち少なくともいずれか1種の元素であり、2×10−4≦x≦3×10−2、1×10−4≦y≦1×10−3)で表されるセリウム活性化ランタノイド珪酸塩のシンチレータ単結晶として、CeとTmの共付活珪酸ルテチウム単結晶が特許文献7に記載されており、蛍光出力、減衰時間及びエネルギー分解能のインゴット上下位置のばらつきが改善されることが記載されている。
一般式:(Ln1−x1−x2−x3Ln’x1Cex2Tbx39.33(SiO(式中、Ln及びLn’は互いに異なり、La、Gd、Yb及びLuの中から選択される希土類を表わし、x、x及びxは、0<x<1、0<x<0.05、0<x<0.05、0<x+x<0.1、0<x+x+x<1である)により示されるランタニド珪酸単結晶により構成されることを特徴とするシンチレータが特許文献8に記載されており、公知のオキシオルト珪酸塩を使用して得られたものと比較して、良好な性能を得るシンチレータであることが記載されている。
特許第2852944号公報 米国特許第4958080号公報 特公平7−78215号公報 米国特許第5264154号公報 米国特許第6624420号公報 米国特許第6921901号公報 特開2006−199727号公報 特開平2−64008号公報
異なる蛍光減衰時間をもつシンチレータを組み合わせる方式のDOI(Depth of Interaction)型次世代高性能PETでは、特定の減衰時間差を有し、蛍光出力やエネルギー分解能の差が小さい特性が要求される。セリウム付活ルテチウムオルト珪酸塩化合物単結晶においては、原料中のセリウム濃度を変えることで蛍光減衰時間を調整することが可能であり、高性能DOI型PET用シンチレータへの適用が検討されている。しかし、蛍光減衰時間の短いセリウム低濃度側では、蛍光出力が低下するので、組合せの蛍光減衰時間が長いシンチレータとの出力差がエネルギースペクトルを波形弁別する上で問題となる。したがってセリウム付活ルテチウムオルト珪酸塩化合物において、蛍光出力のセリウム濃度依存性を低減することが要求されている。
なお、特許文献7ではインゴット内の結晶上部、下部の特性ばらつきが15%以下になっている効果について述べているが、原料中のセリウム濃度が異なるインゴット間の特性差については何ら記載がない。
本発明の第1の発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、セリウム低濃度側と高濃度側の蛍光出力差を十分に低減することができるシンチレータ用単結晶を提供することを目的とする。また、第1の発明は、セリウム低濃度側と高濃度側の蛍光出力差を十分に低減することができるシンチレータ用単結晶を製造するための熱処理方法、及び当該シンチレータ用単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第2の発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、組み合わせる二種類のシンチレータの蛍光減衰時間差を10ns以上とすることを容易にする程度に蛍光減衰時間の長いシンチレータ用単結晶及びその製造方法を提供することを目的とする。
第1の発明は、下記一般式(1)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶を提供する。
Gd2−(a+x+y+z)LnLuCeLmSiO ……(1)
(一般式(1)中、LmはPr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、LnはPr、Tb及びTmを除くランタノイド系元素、並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0以上1未満の値を示し、xは1を超え2未満の値を示し、yは0を超え0.01以下の値を示し、zは0を超え0.01以下の値を示す。なお、a+x+y+zの値は2以下である。)
第1の発明のシンチレータ用単結晶によれば、上記一般式(1)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含む構成を有することにより、セリウム低濃度側と高濃度側の蛍光出力差を十分に低減することができる。本発明のシンチレータ用単結晶によれば、セリウム付活オルト珪酸塩化合物の単結晶に対して、Pr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を添加してセリウムと共付活することにより、特にセリウム低濃度側の蛍光出力及びエネルギー分解能を向上させることができ、セリウム低濃度側と高濃度側の蛍光出力及びエネルギー分解能の差を十分に低減することができる。
第1の発明のシンチレータ用単結晶において、上記LnはGdであり、上記aは0を超え1未満の値を示し、上記LmはTb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素であることがより好ましい。一方、Prはその濃度が適量よりも高い場合には、Gdと相互作用して蛍光波長がやや短波長側に検出されるため、シンチレータ用単結晶として、蛍光出力やエネルギー分解能の向上度合いが低下する傾向がある。
第1の発明のシンチレータ用単結晶において、上記LnはYであり、上記aは0を超え1未満の値を示すことが好ましい。LnがYであると、母体構造LSOの結晶構造の歪みが小さいため、蛍光出力やエネルギー分解能を向上させることができる。
第1の発明のシンチレータ用単結晶において、上記LnはYであり、上記aは0を超え0.2以下の値を示し、上記xは1.6を超え2未満の値を示すことが好ましい。LnがYであり、且つ、a及びxの値が上記範囲であると、母体構造LSOの結晶構造の歪みが小さいため、蛍光出力やエネルギー分解能を向上させることができる。
第1の発明のシンチレータ用単結晶は、周期表2族(IIa族)に属する元素から選ばれる少なくとも1種の添加元素を、上記単結晶の全質量を基準として0.00005〜0.1質量%含有することが好ましい。この場合、酸素欠陥起因によると思われる蛍光特性の低下やばらつきが低減され、それによって単結晶の蛍光特性が向上すると共に、蛍光出力のバックグラウンドとなる結晶欠陥起因の残光(Afterglow)が低減する。
第1の発明のシンチレータ用単結晶は、周期表13族(IIIb族)に属する元素から選ばれる少なくとも1種の添加元素を、前記単結晶の全質量を基準として0.00005〜0.1質量%含有することが好ましい。この場合、単結晶の蛍光特性が向上すると共に、蛍光出力のバックグラウンドとなる結晶欠陥起因の残光(Afterglow)が低減する効果がより顕著となる。更に、上記周期表2族に属する元素から選ばれる1種以上の添加元素と同時に存在することによって、より高い効果を得ることができる。
また、第1の発明は、シンチレータ用単結晶を製造するための熱処理方法であって、下記一般式(1)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶の構成元素を含有する原料を用いて育成した単結晶体を、酸素を含む雰囲気中で700〜1500℃の温度で熱処理する、熱処理方法を提供する。
Gd2−(a+x+y+z)LnLuCeLmSiO ……(1)
(一般式(1)中、LmはPr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、LnはPr、Tb及びTmを除くランタノイド系元素、並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0以上1未満の値を示し、xは1を超え2未満の値を示し、yは0を超え0.01以下の値を示し、zは0を超え0.01以下の値を示す。なお、a+x+y+zの値は2以下である。)
本熱処理方法によれば、元素間の偏析現象による単結晶(単結晶インゴット)内の元素分布のばらつきを低減し、また、酸素欠陥起因と思われる残光特性や特性劣化を軽減し、それによってセリウム低濃度側と高濃度側の蛍光出力差を十分に低減することができるシンチレータ用単結晶を提供することができる。また、本熱処理方法によれば、特に減衰時間の短いセリウム低濃度側の蛍光出力及びエネルギー分解能が向上したシンチレータ用単結晶を提供することができる。
また、第1の発明は、シンチレータ用単結晶の製造方法であって、下記一般式(1)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶の構成元素を含有する原料を準備し、チョクラルスキー法によって単結晶体を育成する工程と、上記単結晶体を、酸素を含む雰囲気中で700〜1500℃の温度で熱処理する工程とを備える、シンチレータ用単結晶の製造方法を提供する。
Gd2−(a+x+y+z)LnLuCeLmSiO ……(1)
(一般式(1)中、LmはPr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、LnはPr、Tb及びTmを除くランタノイド系元素、並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0以上1未満の値を示し、xは1を超え2未満の値を示し、yは0を超え0.01以下の値を示し、zは0を超え0.01以下の値を示す。なお、a+x+y+zの値は2以下である。)
本製造方法によれば、元素間の偏析現象による結晶育成時の不具合やクラックを低減し、蛍光特性を向上させるだけでなく、酸素欠陥起因と思われる残光特性や特性劣化を軽減し、セリウム低濃度側と高濃度側の蛍光出力差を十分に低減することができるシンチレータ用単結晶の製造方法を提供することができる。また、本製造方法によれば、特に減衰時間の短いセリウム低濃度側の蛍光出力及びエネルギー分解能が向上したシンチレータ用単結晶の製造方法を提供することができる。
第2の発明は、下記一般式(2)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶であって、周期表2族(IIa族)に属する元素から選ばれる少なくとも1種の添加元素を、上記単結晶の全質量を基準として0.00005〜0.1質量%含有し、蛍光波長420nmにおける、励起波長304nmでの蛍光強度に対する励起波長364nmでの蛍光強度の比(364nm/304nm)が3未満であるシンチレータ用単結晶を提供する。
Gd2−(a+x+y+z)LnLuCeLmSiO ……(2)
(一般式(2)中、LmはPr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、LnはPr、Tb及びTmを除くランタノイド系元素、並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0以上1未満の値を示し、xは1を超え2未満の値を示し、yは0.01を超え0.03以下の値を示し、zは0以上0.01以下の値を示す。なお、a+x+y+zの値は2以下である。)
第2の発明のシンチレータ用単結晶によれば、上記一般式(2)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含む構成を有することにより、組み合わせる二種類のシンチレータの蛍光減衰時間差を10ns以上とすることを容易にする程度に長い蛍光減衰時間を得ることができる。
また、第2の発明は、シンチレータ用単結晶の製造方法であって、下記一般式(2)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶の構成元素を含有する原料を準備し、チョクラルスキー法によって単結晶体を育成する工程を備える、シンチレータ用単結晶の製造方法を提供する。
Gd2−(a+x+y+z)LnLuCeLmSiO ……(2)
(一般式(1)中、LmはPr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、LnはPr、Tb及びTmを除くランタノイド系元素、並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0以上1未満の値を示し、xは1を超え2未満の値を示し、yは0.01を超え0.03以下の値を示し、zは0以上0.01以下の値を示す。なお、a+x+y+zの値は2以下である。)
本製造方法によれば、組み合わせる二種類のシンチレータの蛍光減衰時間差を10ns以上とすることを容易にする程度に蛍光減衰時間の長いシンチレータ用単結晶を製造することができる。
第1の発明によれば、セリウム濃度低濃度側と高濃度側の蛍光出力差を十分に低減することができるシンチレータ用単結晶を提供することができる。また、第1の発明により、特に減衰時間の短いセリウム低濃度側の蛍光出力及びエネルギー分解能が向上したシンチレータ用単結晶を提供することができる。また、第1の発明によれば、セリウム低濃度側と高濃度側の蛍光出力差を十分に低減することができるシンチレータ用単結晶を製造するための熱処理方法、及び当該シンチレータ用単結晶の製造方法を提供することができる。
第2の発明によれば、組み合わせる二種類のシンチレータの蛍光減衰時間差を10ns以上とすることを容易にする程度に蛍光減衰時間の長いシンチレータ用単結晶及びその製造方法を提供することができる。
第1及び第2の発明のシンチレータ用単結晶の育成に使用される育成装置の基本構成の一例を示す模式断面図である。 実施例及び比較例で得られたシンチレータ用単結晶の、励起波長364nmにおける蛍光スペクトルである。各スペクトルは、最大出力値を1として表示している。 実施例及び比較例で得られたシンチレータ用単結晶の、蛍光波長420nmにおける励起波長スペクトルである。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の記載中、第1の発明の好適な実施形態の一つを「第1の実施形態」、第2の発明の好適な実施形態の一つを「第2の実施形態」と呼ぶ。
第1の実施形態のシンチレータ用単結晶は、下記一般式(1)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含む。
Gd2−(a+x+y+z)LnLuCeLmSiO ……(1)
(一般式(1)中、LmはPr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、LnはPr、Tb及びTmを除くランタノイド系元素、並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0以上1未満の値を示し、xは1を超え2未満の値を示し、yは0を超え0.01以下の値を示し、zは0を超え0.01以下の値を示す。なお、a+x+y+zの値は2以下である。)
ここで、上記一般式(1)中のa+x+y+zの値が2である場合、上記一般式(1)は下記一般式(3)で表される。
Ln2−(x+y+z)LuCeLmSiO ……(3)
(一般式(3)中、LnはPr、Tb及びTmを除く、Luを含むランタノイド系元素並びにSc及びYから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、LmはPr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、xは1を超え2未満の値を示し、yは0を超え0.01以下の値を示し、zは0を超え0.01以下の値を示す。なお、x+y+zの値は2以下である。)
上記一般式(3)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶においては、上記一般式(3)中のx、y、zがそれぞれ上記の範囲内であるため、室温で蛍光減衰時間の短い蛍光出力を得ることができる。
一般式(3)において、xの値はできるだけ大きいほうが、結晶が高密度化し、かつ室温で高い蛍光出力が得られる。そのため、xの値は、1を超え2未満であることが必要であり、1.2以上2未満であることが好ましく、1.4以上2未満であることがより好ましく、1.6以上2未満であることが更に好ましい。
一般式(3)において、yの値は、0を超え0.01以下であることが必要であり、0.00005以上で0.01以下であることが好ましく、0.0001以上で0.01以下であることがより好ましく、0.0002以上で0.005以下であることが更に好ましく、0.0005以上で0.003以下であることが最も好ましい。yが0であると充分な蛍光出力が得られず、また、0.01を超えると育成後の酸素を含む熱処理工程で結晶の着色が顕著になり蛍光出力の低下が問題になる。
一般式(3)において、zの値は、0を超え0.01以下であることが必要であり、0を超え0.01未満であることが好ましく、0.0001以上で0.005以下であることがより好ましく、0.0001以上で0.004以下であることが更に好ましく、0.0002以上で0.001以下であることが最も好ましい。zが0であると蛍光出力が低下し、また、0.01を超えると結晶の着色が顕著になり蛍光出力の低下や結晶の歪によるクラック発生が問題になる。
一方、上記一般式(1)中のa+x+y+zの値が2未満である場合、Gdが必須の元素となる。この場合も、シンチレータ用単結晶は、上記一般式(1)中のa、x、y、zがそれぞれ上記の範囲内であるため、室温で蛍光減衰時間の短い蛍光出力を得ることができる。
a+x+y+zの値が2未満である場合、一般式(1)中のaは0以上0.5以下であることが好ましく、0を超え0.5以下であることがより好ましく、0を超え0.4以下であることが更に好ましく、0を超え0.2以下であることが特に好ましく、0.05を超え0.2以下であることが最も好ましい。aが0.5を超えると結晶構造に歪みを起こし、結晶内へのクラックの発生が増大する傾向がある。また、aが0であると、Gdの偏析を抑制することが困難となり、蛍光特性の低下の原因となる場合がある。
また、上記一般式(1)中のx、y、zの値の好ましい範囲は、上記一般式(3)中のx、y、zの値の好ましい範囲とそれぞれ同一である。
第2の実施形態のシンチレータ用単結晶は、下記一般式(2)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含む。
Gd2−(a+x+y+z)LnLuCeLmSiO ……(2)
(一般式(2)中、LmはPr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、LnはPr、Tb及びTmを除くランタノイド系元素、並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0以上1未満の値を示し、xは1を超え2未満の値を示し、yは0.01を超え0.03以下の値を示し、zは0以上0.01以下の値を示す。なお、a+x+y+zの値は2以下である。)
上記一般式(2)で表されるシンチレータ用単結晶においては、上記一般式(2)中のa、x、y、zがそれぞれ上記の範囲内であるため、室温での蛍光特性が優れ、特にアバランシェ・フォトダイオードなどの500nm以上の長波長光に対する感度が優れる半導体検出器との組合せでの優れた特性を得ることができる。
一般式(2)において、yの値は、0.01を超え0.03以下であることが必要であり、0.01を超え0.03未満であることが好ましく、0.01を超え0.025以下であることがより好ましく、0.012以上で0.02以下であることが更に好ましく、0.012以上で0.018以下であることが最も好ましい。yが0.01以下であると500nm以上の蛍光波長に対する感度に優れる半導体検出器で充分な蛍光出力が得られず、また、0.03を超えると育成後の結晶の着色が顕著になり蛍光出力が低下したり、結晶の割れが増加するという問題が発生する。
一般式(2)において、zの値は、0以上0.01以下であることが必要であり、0以上で0.01未満であることが好ましく、0.0001以上で0.005以下であることがより好ましく、0.0001以上で0.004以下であることが更に好ましく、0.0001以上で0.001以下であることが最も好ましい。zが0であっても蛍光出力がほぼ最大となる蛍光波長420nmにおける、励起波長304nmでの蛍光強度に対する励起波長364nmでの蛍光強度の比(364nm/304nm)が3未満であれば蛍光出力に問題はなく、0.01を超えると結晶の着色が顕著になり蛍光出力の低下や結晶の歪によるクラック発生が問題になる。
また、上記一般式(2)中のa及びxの値の好ましい範囲は、上記一般式(1)の場合と同様の理由から、上記一般式(1)中のa及びxの値の好ましい範囲とそれぞれ同一である。
上記一般式(1)、(2)及び(3)において、Lnとしては、Pr、Tb及びTmを除くランタノイド系元素、並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素が選ばれる。より好ましくは、イオン半径がDyよりも大きくLu以下であるランタノイド系元素並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素が選ばれる。母体構造がLGSOの場合では、Gdの偏析の影響で、インゴット下部がにごり、蛍光特性が低下してしまう傾向があるが、イオン半径がLuに比較的近いもしくはLuよりも小さいランタノイド系元素並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を含有することで、Gdの偏析が抑制され、インゴット下部のにごりが解消され、蛍光特性低下が抑制される。これらの含有元素の中でも、結晶中に多く存在しても単結晶成長が比較的容易な点でSc、Y、Ybがより好ましく、蛍光特性を劣化させずに効果が得られ、蛍光特性を向上させることができる点で、Yが最も好ましい。
第1の実施形態のシンチレータ用単結晶は、周期表2族(IIa族)に属する元素から選ばれる少なくとも1種の添加元素を含有することが好ましい。これにより、酸素欠陥に起因すると思われる蛍光特性の低下やばらつきを低減し、結晶欠陥起因の蛍光出力のバックグラウンド(残光:Afterglow)を低減することができる。この添加元素の含有量は、上記の効果がより十分に得られることから、シンチレータ用単結晶の全質量を基準として、0.00005〜0.1質量%であることが好ましく、0.005〜0.02質量%であることがより好ましい。含有する元素としては、上記の効果がより十分に得られることから、周期表2族(IIa族)に属する元素の中でもCa、Mgから選ばれる1種以上の元素が好ましい。
第2の実施形態のシンチレータ用単結晶は、周期表2族(IIa族)に属する元素から選ばれる少なくとも1種の添加元素を、シンチレータ用単結晶の全質量を基準として、0.00005〜0.1質量%含有する。これにより、酸素欠陥に起因すると思われる蛍光特性の低下やばらつきを低減し、結晶欠陥起因の蛍光出力のバックグラウンド(残光:Afterglow)を低減することができる。また、周期表2族(IIa族)に属する元素を含有する効果として、結晶育成中の育成雰囲気中の微量酸素によるCeの価数変化(Ce3+⇒Ce4+)による結晶の着色や蛍光出力の低下を抑制することができる。この効果は、Ce濃度が高濃度の場合に顕著になる傾向があり、Ceの価数変化(Ce3+⇒Ce4+)は、酸素欠陥と類似した結晶欠陥を形成することも判明したので、蛍光出力のバックグラウンド(残光:Afterglow)を更に低減する効果が得られる。この添加元素の含有量は、上記の効果がより十分に得られることから、シンチレータ用単結晶の全質量を基準として、0.00005〜0.1質量%であることが必要であり、0.005〜0.02質量%であることが好ましい。含有する元素としては、上記の効果がより十分に得られることから、周期表2族(IIa族)に属する元素の中でもCa、Mgから選ばれる1種以上の元素が好ましい。
また、第1及び第2の実施形態のシンチレータ用単結晶は、周期表13族(IIIb族)に属する元素から選ばれる少なくとも1種の添加元素を含有することが好ましい。これにより、結晶欠陥に起因すると思われる蛍光出力のバックグラウンド(残光:Afterglow)を低減する効果が更に顕著となる。この添加元素の含有量は、上記の効果がより十分に得られることから、シンチレータ用単結晶の全質量を基準として、0.00005〜0.1質量%であることが好ましく、0.005〜0.02質量%であることがより好ましい。また、当該添加元素を、上述した周期表2族(IIa族)に属する元素のうちCa、Mgから選ばれる1種以上の添加元素と同時に存在させることによって、より高い効果が得られることがある。含有する元素としては、上記の効果がより十分に得られることから、周期表13族(IIIb族)に属する元素の中でもAl、Ga、Inから選ばれる1種以上の元素が好ましい。
更に、第1及び第2の実施形態のシンチレータ用単結晶においては、それぞれ周期表4、5、6族及び14、15、16族に属する元素から選ばれる1種以上の元素の合計の濃度を、第1又は第2の実施形態のシンチレータ用単結晶の全質量を基準として、0.002重量%以下とすることが好ましい。これにより、蛍光特性の劣化を抑制することができる。
第1の実施形態の上記一般式(1)及び(3)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶は、蛍光出力がほぼ最大となる蛍光波長420nmにおける、励起波長304nmでの蛍光強度に対する励起波長364nmでの蛍光強度の比(364nm/304nm)が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが最も好ましい。これにより、高い蛍光出力を保ったまま、蛍光減衰時間を更に高速化する効果が得られる。
一方、第2の実施形態の上記一般式(2)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶は、蛍光出力がほぼ最大となる蛍光波長420nmにおける、励起波長304nmでの蛍光強度に対する励起波長364nmでの蛍光強度の比(364nm/304nm)が3未満であり、2未満であることが好ましい。これにより、蛍光減衰時間は、若干遅くなるが、蛍光波長のうち500nm付近の長波長成分が増加して、アバランシェ・フォトダイオードなどの500nm以上に最高感度を有する半導体光検出器のエネルギー変換効率を向上することができる。
また、第1の実施形態のシンチレータ用単結晶は、上記一般式(1)及び(3)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶の構成元素を含有する原料を用いて育成した単結晶体を、酸素を含む雰囲気中で加熱する工程(以下、「熱処理工程」という。)を経て製造されたものであることが好ましい。上記熱処理工程を経ることにより、上述の酸素欠損の発生による蛍光出力のばらつきを低減することができる。すなわち、酸素を含む雰囲気中において、より低温側で単結晶体を加熱処理することにより、3価のセリウムイオンを4価に変化させることなく、酸素欠損を十分に低減することができる。その結果、このような熱処理方法を経た単結晶は、蛍光出力を低下させることなくバックグラウンド(残光:Afterglow)が低減され、蛍光出力のばらつきを抑制することができるので、より良好な蛍光特性を実現することが可能となる。
酸素を含む雰囲気は、酸素濃度が1体積%以上100体積%以下であり、窒素若しくは不活性ガスを含む雰囲気(例えば大気雰囲気)であることが好ましい。その中でも、酸素濃度が30体積%以上である雰囲気がより好ましく、酸素濃度が50体積%以上である雰囲気が特に好ましい。酸素濃度が1体積%未満では、酸素分圧が低く、結晶中に酸素が拡散し難いために、第1の実施形態による上記効果が得られ難くなる。酸素濃度はより高い方が望ましいので、密閉炉を用いて一定流量で酸素を流通する方法も有効である。
熱処理工程における単結晶体の加熱温度は、700℃〜1500℃であり、1000℃〜1300℃であると好ましい。加熱温度が700℃未満では第1の実施形態による上記効果が得られ難くなる傾向にあり、1500℃より高いとセリウムイオンが4価に変化しやすく、単結晶が着色する原因となり、蛍光出力を低下させてしまう要因となる。
一般式(1)及び(3)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶の構成元素を含有する原料を用いて育成した単結晶体に、上述した熱処理方法を適用することで、酸素欠損の発生を極力抑制し、バックグラウンド(残光:Afterglow)を小さくして、最大限に蛍光出力、エネルギー分解能の向上を図ることが可能である。
これに対し、第2の実施形態のシンチレータ用単結晶の製造において、上記一般式(2)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶の構成元素を含有する原料を用いて育成した単結晶体を、酸素を含む雰囲気中で加熱する工程を施した場合、3価のセリウムイオンが4価に変化してしまう作用が顕著になることによって、蛍光特性が劣化してしまうことがある。したがって、第2の実施形態には上記「熱処理工程」は適さない。
次に、第1及び第2の実施形態のシンチレータ用単結晶の製造方法の一例について説明する。
第1及び第2の実施形態のシンチレータ用単結晶の製造方法においては、まず、一般式(1)又は(2)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物の原料を所定の量論組成となるように混合し、るつぼに投入する。この単結晶を製造する場合の出発原料としては、一般式(1)で表されるプラセオジウム、テルビウム、ツリウムから選ばれる少なくとも1種とのセリウム付活オルト珪酸塩化合物の構成元素であるGd、Lu、Si、Pr、Tb、Tm、Ceの単独酸化物及び/又は複合酸化物が好適に用いられる。市販のものとしては、信越化学社製、スタンフォードマテリアル社製、多摩化学社製、日本イットリウム社製等の純度の高いものを用いると好ましい。
また、上記の単結晶が周期表2族(IIa族)に属する元素、及び/又は、周期表13族(IIIb族)に属する元素を含有する場合、これらの添加元素を添加するタイミングとしては、結晶の育成前であれば特に限定されない。例えば、原料の秤量時に添加元素を添加混合してもよく、るつぼに原料を投入する際に周期表2族(IIa族)に属する元素、及び/又は、周期表13族(IIIb族)に属する元素を混合してもよい。また、添加元素は、育成された単結晶中に含まれていれば添加時の態様は特に限定されず、例えば酸化物や炭酸塩の状態で原料中に添加してもよい。
次に、上記の原料が充填されたるつぼを加熱して原料を溶融させ(溶融工程)、続いて溶融液を冷却固化させて(冷却固化工程)、単結晶インゴットを得る。
ここで、上記の溶融工程における溶融法はチョクラルスキー法を採用してもよく、他の方法を採用してもよい。チョクラルスキー法により溶融工程を行う場合、図1に示す構成を有する引き上げ装置10を用いて溶融工程及び冷却固化工程における作業を行なうことが好ましい。
図1は、第1及び第2の実施形態に係る製造方法において、単結晶を育成するための育成装置の基本構成の一例を示す模式断面図である。図1に示す引き上げ装置10は、高周波誘導加熱炉14を有している。この高周波誘導加熱炉14は先に述べた溶融工程及び冷却固化工程における作業を連続的に行うためのものである。
この高周波誘導加熱炉14は耐火性を有する側壁が筒状の有底容器であり、有底容器の形状自体は公知のチョクラルスキー法に基づく単結晶育成に使用されるものと同様である。この高周波誘導加熱炉14の底部の該側面には高周波誘導コイル15が巻回されている。そして、高周波誘導加熱炉14の内部の底面上には、るつぼ17(例えば、Ir製のるつぼ)が配置されている。このるつぼ17は、高周波誘導加熱ヒータを兼ねている。そして、るつぼ17中に、単結晶の原料を投入し、高周波誘導コイル15に高周波誘導をかけると、るつぼ17が加熱され、単結晶の構成材料からなる溶融液18(融液)が得られる。
また、高周波誘導加熱炉14の底部中央には、高周波誘導加熱炉14の内部から外部へ貫通する開口部(図示せず)が設けられている。そして、この開口部を通じて、高周波誘導加熱炉14の外部からるつぼ支持棒16が挿入されており、るつぼ支持棒16の先端はるつぼ17の底部に接続されている。このるつぼ支持棒16を回転させることにより、高周波誘導加熱炉14中において、るつぼ17を回転させることができる。開口部とるつぼ支持棒16との間には、パッキン等によりシールされている。
次に、引き上げ装置10を用いたより具体的な製造方法について説明する。
まず、溶融工程では、るつぼ17中に、単結晶の原料を投入し、高周波誘導コイル15に高周波誘導をかけることにより、単結晶の構成材料からなる溶融液18(融液)を得る。
次に、冷却固化工程において溶融液を冷却固化させることにより、円柱状の単結晶インゴット1を得る。より具体的には、後述する結晶育成工程と、冷却工程の2つの工程に分けて作業が進行する。
まず、結晶育成工程では、高周波誘導加熱炉14の上部から、種子結晶2を下部先端に固定した引き上げ棒12を溶融液18中に投入し、次いで、引き上げ棒12を引き上げながら、単結晶インゴット1を形成する。このとき、結晶育成工程では、ヒータ13の加熱出力を調節し、溶融液18から引き上げられる単結晶インゴット1を、その断面が所定の直径となるまで育成する。
次に、冷却工程ではヒータの加熱出力を調節し、結晶育成工程後に得られる育成後の単結晶インゴットを冷却する。
第1及び第2の実施形態に係る製造方法においては、結晶育成の雰囲気が0〜0.6体積%の範囲の酸素を含むことが好ましい。酸素濃度が0.6体積%を超える場合、着色等によって蛍光出力が低下することがある。また、イリジウムるつぼを用いた場合、イリジウムるつぼの酸化による蒸発ロスが問題となる。
また、第1の実施形態に係る製造方法においては、単結晶を育成後あるいは育成・加工後に、酸素を含む雰囲気で熱処理する(熱処理工程)。熱処理による着色の減少等により、蛍光出力が増加する効果が得られる。熱処理温度としては、上記の効果が得られやすい700℃〜1500℃の温度を適用する。
この単結晶は、第1の実施形態に係る製造方法において、セリウム付活オルト珪酸塩化合物の単結晶に対して、プラセオジウム又はテルビウム又はツリウムを添加してセリウムとともに共付活して、好ましくは更に周期表2族(IIa族)に属する元素、及び/又は、周期表13族(IIIb族)に属する元素を含有することによって、蛍光出力及びエネルギー分解能が向上し、セリウム濃度の違いによる蛍光出力差が低減されたシンチレータとして用いることができる。これらの添加量はそれぞれ、製造されたシンチレータ用単結晶中の含有量が、上記第1の実施形態のシンチレータ用単結晶における含有量となるように調整する。
この単結晶は、第2の実施形態に係る製造方法において、セリウム付活オルト珪酸塩化合物の単結晶に対してプラセオジウム又はテルビウム又はツリウムを添加してセリウムとともに共付活することは必須ではないが、周期表2族(IIa族)に属する元素を添加することは必須である。これらの添加量はそれぞれ、製造されたシンチレータ用単結晶中の含有量が、上記第2の実施形態のシンチレータ用単結晶における含有量となるように調整する。
したがって、この単結晶は、医学診断用ポジトロンCT(PET)用、宇宙線観察用、地下資源探索用等の放射線医学、物理学、生理学、化学、鉱物学、更に石油探査等の分野でガンマ線等の放射線に対する単結晶シンチレーション検知器(シンチレータ)に用いられるシンチレータ用単結晶として非常に有用であり、特に、減衰時間の異なるシンチレータを組み合わせる次世代高性能PETに効果的である。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<単結晶の作製>
単結晶はチョクラルスキー法によって作製した。まず、出発原料としてLn2−(x+y+z)LuCeLmSiO(Ln=Lu、Lm=Pr、x=1.996、y=0.003、z=0.001)の化学量論組成になるように、酸化ルテチウム(Lu、純度99.99質量%)、二酸化珪素(SiO、純度99.9999質量%)、酸化セリウム(CeO、純度99.99質量%)、酸化プラセオジウム(Pr11、純度99.99質量%)を混合し、合計で500gの混合物を得た。またそれ以外に、炭酸カルシウム(CaCO、純度99.99質量%)0.08748g(Caとして0.007質量%に相当)を秤量した。
次に、得られた原料混合物500gと秤量した炭酸カルシウムとを、直径50mm、高さ50mm及び厚み1.5mmのイリジウム製るつぼの中に投入し、高周波誘導加熱炉で融点約2100℃まで加熱して融液を得た。なお、融点は電子式光高温計((株)チノー社製、パイロスタMODEL UR−U)により測定した。
続いて、種子結晶を先端に固定した引き上げ棒の当該先端を融液中に入れて種付けを行った。その後、結晶引き上げ速度1.5mm/hの速度で単結晶インゴットの肩部の引き上げを行い、直径25mm(φ)になった時点から、引き上げ速度1mm/hの速度で平行部の育成を開始し、所定の重量の結晶を育成した後、単結晶を融液から切り離し、冷却を開始した。結晶を育成する際には、育成炉内に4L/minのNを流し続けた。このとき、育成炉内の酸素濃度は0.02体積%未満であった。このようにして、結晶重量が280g、肩部の長さが30mm、平行部の長さが90mmの単結晶インゴットを得た。得られた単結晶インゴットについて、元素分析の結果から、Prの偏析係数0.36、Ceの偏析係数0.22及びCaの偏析係数0.15の結果を得た。偏析係数は、一般式(4)で表される。
Cs/Co=k(1−g)k−1 ……(4)
(Co:融液中の溶質濃度、Cs:結晶中の濃度、k:実効偏析係数、g:固化率)
こうして得られた単結晶インゴットの上部から、4×6×20mmのサンプルを切り出し、任意に5個の結晶サンプルを抜き出し、白金板の上にのせ、電気炉に投入した。大気雰囲気中で、約3〜4時間かけて電気炉内を昇温し、1200℃で12時間保持した後、約5〜8時間かけて室温まで冷却した。次に、上記結晶サンプルにリン酸を用いてケミカルエッチングを施し、結晶サンプルの全面を鏡面化した。これにより、実施例1のシンチレータ用単結晶を得た。
<蛍光特性の測定>
4×6×20mmのシンチレータ用単結晶(各サンプル)の6つの面のうちの4mm×6mmの大きさを有する面の1つ(以下、「放射線入射面」という。)を除く残り5つの面に、反射材としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)テープを被覆した。次に、得られた各サンプルのPTFEテープを被覆していない上記放射線入射面を光電子増倍管(浜松ホトニクス社製、商品名「H7195」)のフォトマル面(光電変換面)に光学グリースを用いて固定した。次に、各サンプルに対して137Csを用いた662keVのガンマ線を照射し、各サンプルのエネルギースペクトルを測定し、各サンプルの蛍光出力とエネルギー分解能を評価した。エネルギースペクトルは光電子増倍管に1.45kVの電圧を印加した状態で、ダイノードからの信号を前置増幅器(ORTEC社製、商品名「113」)及び波形整形増幅器(ORTEC社製、商品名「570」)で増幅し、MCA(PGT社製、商品名「Quantum MCA4000」)で測定した。また、蛍光減衰時間は、光電子増倍管のアノードからの信号を入力インピーダンス50Ωでデジタルオシロスコープ(Tektronix社製、商品名「TDS5052」)に入力し、信号を10000回の平均をすることにより得られる蛍光減衰曲線から算出した。表1に、本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性(蛍光出力、エネルギー分解能、蛍光減衰時間)の測定結果を示した。
また、紫外線励起蛍光特性を、分光蛍光光度計(日立 F−4500)を用いて、励起波長200〜400nm、蛍光波長200〜700nm、いずれもサンプリング間隔4nm、スキャン速度1200nm/min、励起及び蛍光側スリット2.5nm及びPMT(フォトマル)電圧400Vの条件で測定した。蛍光出力がほぼ最大になる蛍光波長420nmにおける、主要な励起波長である304nmでの蛍光強度に対する、もう一つの主要な励起波長である364nmでの蛍光強度の比(364nm/304nm)を算出し、その値を表1に示した。
なお、波長420nmについての、励起波長スペクトルを図3に示す。図3中、D2が実施例1を示し、A2、B2、C2,E2及びF2は、それぞれ後述する実施例13、実施例14、実施例15、比較例4及び比較例7を示す。
[実施例2]
出発原料として、酸化ルテチウム及び酸化セリウムの量を、x=1.996がx=1.9985となり、且つ、y=0.003がy=0.0005となるように調整したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表1に示した。
[実施例3]
出発原料として、酸化プラセオジウム(Pr11、純度99.99質量%)の代わりに酸化テルビウム(Tb、純度99.99質量%)を用いたこと(Lm=Tb)以外は実施例1と同様にして、実施例3のシンチレータ用単結晶を作製した。なお、得られた単結晶インゴットについて、元素分析の結果から、Tbの偏析係数0.7、Ceの偏析係数0.25、及びCaの偏析係数0.15の結果を得た。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表1に示した。
[実施例4]
出発原料として、酸化ルテチウム及び酸化セリウムの量を、x=1.996がx=1.9985となり、且つ、y=0.003がy=0.0005となるように調整したこと以外は実施例3と同様にして、実施例4のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表1に示した。
[実施例5]
出発原料として、酸化プラセオジウム(Pr11、純度99.99質量%)の代わりに酸化ツリウム(Tm、純度99.99質量%)を用いた(Lm=Tm)こと以外は実施例1と同様にして、実施例5のシンチレータ用単結晶を作製した。なお、得られた単結晶インゴットについて、元素分析の結果から、Tmの偏析係数は0.8、Ceの偏析係数は0.26及びCaの偏析係数0.15の結果を得た。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表1に示した。
[実施例6]
出発原料として、酸化ルテチウム及び酸化セリウムの量を、x=1.996がx=1.9985となり、且つ、y=0.003がy=0.0005となるように調整したこと以外は実施例5と同様にして、実施例6のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表1に示した。
[実施例7]
Ln2−(x+y+z)LuCeLmSiO(Ln=Gd、Lm=Tb、x=1.8、y=0.003、z=0.001)の化学量論組成になるように、出発原料として、酸化ガドリニウム(Gd、純度99.99質量%)と酸化テルビウム(Tb、純度99.99質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表2に示した。
[実施例8]
出発原料として、酸化ガドリニウム及び酸化セリウムの量を、y=0.003がy=0.0005となるように調整したこと以外は実施例7と同様にして、実施例8のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表2に示した。
[実施例9]
Ln2−(x+y+z)LuCeLmSiO(Ln=Y、Lm=Tb、x=1.8、y=0.003、z=0.001)の化学量論組成になるように、出発原料として酸化イットリウム(Y、純度99.99質量%)と酸化テルビウム(Tb、純度99.99質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表3に示した。
[実施例10]
出発原料として、酸化イットリウム及び酸化セリウムの量を、y=0.003がy=0.0005となるように調整したこと以外は実施例9と同様にして、実施例10のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表3に示した。
[実施例11]
Gd2−(a+x+y+z)LnLuCeLmSiO(Ln=Y、Lm=Tb、a=0.06、x=1.86、y=0.003、z=0.001)の化学量論組成になるように、出発原料として酸化ガドリニウム(Gd、純度99.99質量%)と酸化イットリウム(Y、純度99.99質量%)と酸化テルビウム(Tb、純度99.99質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表4に示した。
[実施例12]
出発原料として、酸化ガドリニウム及び酸化セリウムの量を、y=0.003がy=0.0005となるように調整したこと以外は実施例11と同様にして、実施例12のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表4に示した。
[比較例1]
出発原料として、酸化プラセオジウムを用いず(z=0)、酸化ルテチウムの量を、x=1.996がx=1.997となるように調整したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表1に示した。
[比較例2]
出発原料として、酸化プラセオジウムを用いず(z=0)、酸化ルテチウムの量を、x=1.9985がx=1.9995となるように調整したこと以外は実施例2と同様にして、比較例2のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表1に示した。
[比較例3]
出発原料として、酸化テルビウムを用いず(z=0)、それに合わせて酸化ガドリニウムの量を調整したこと以外は実施例7と同様にして、比較例3のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表2に示した。
[比較例4]
出発原料として、酸化テルビウムを用いず(z=0)、それに合わせて酸化ガドリニウムの量を調整したこと以外は実施例8と同様にして、比較例4のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表2に示した。
[比較例5]
出発原料として、酸化テルビウムを用いず(z=0)、それに合わせて酸化イットリウムの量を調整したこと以外は実施例9と同様にして、比較例5のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表3に示した。
[比較例6]
出発原料として、酸化テルビウムを用いず(z=0)、それに合わせて酸化イットリウムの量を調整したこと以外は実施例10と同様にして、比較例6のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表3に示した。
[比較例7]
出発原料として、酸化テルビウムを用いず(z=0)、それに合わせて酸化ガドリニウムの量を調整したこと以外は実施例11と同様にして、比較例7のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表4に示した。
[比較例8]
出発原料として、酸化テルビウムを用いず(z=0)、それに合わせて酸化ガドリニウムの量を調整したこと以外は実施例12と同様にして、比較例8のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表4に示した。
[比較例9]
出発原料として、酸化プラセオジウム(Pr11、純度99.99質量%)の代わりに酸化エルビウム(Er、純度99.99質量%)を用いたこと(Lm=Er)以外は実施例1と同様にして、比較例9のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表1に示した。
[比較例10]
出発原料として、酸化プラセオジウム(Pr11、純度99.99質量%)の代わりに酸化エルビウム(Er、純度99.99質量%)を用いたこと(Lm=Er)以外は実施例10と同様にして、比較例10のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表1に示した。
Figure 2016056378
実施例1、3、5と比較例1とを比較した場合、実施例1、3、5は、比較例1と比べて蛍光出力が高く、エネルギー分解能も良いことがわかる(表1)。つまり、セリウム単独の付活の場合と比べて、プラセオジウム、テルビウム、ツリウムから選ばれる少なくとも1種の元素とセリウムとによって蛍光体を共付活することにより、蛍光出力及びエネルギー分解能が向上する。実施例2、4、6と比較例2とを比較した場合も同様である(表1)。共付活であっても、エルビウムで付活した比較例9、10の結果は、比較例1、2とそれぞれ比較すると、結晶の着色により蛍光出力及びエネルギー分解能は劣っている。
Figure 2016056378
実施例7と比較例3とを比較した場合、実施例7のほうが、蛍光出力が高く、エネルギー分解能も良いことがわかる(表2)。実施例8と比較例4とを比較した場合も、実施例8のほうが、蛍光出力が高く、エネルギー分解能も良いことがわかる(表2)。母体構造がLSOだけでなくLGSOについても、プラセオジウム、テルビウム、ツリウムから選ばれる少なくとも1種の元素とセリウムとによって蛍光体を共付活することにより、蛍光出力及びエネルギー分解能が向上することがいえる。
Figure 2016056378
実施例9と比較例5とを比較した場合、実施例9のほうが、蛍光出力が高く、エネルギー分解能も良いことがわかる(表3)。実施例10と比較例6とを比較した場合も、実施例10のほうが、蛍光出力が高く、エネルギー分解能も良いことがわかる(表3)。母体構造がLYSOについてもプラセオジウム、テルビウム、ツリウムから選ばれる少なくとも1種の元素とセリウムとによって蛍光体を共付活することにより、蛍光出力及びエネルギー分解能が向上することがいえる。
Figure 2016056378
実施例11と比較例7とを比較した場合、実施例11のほうが、蛍光出力が高く、エネルギー分解能も良いことがわかる(表4)。実施例12と比較例8とを比較した場合も、実施例12のほうが、蛍光出力が高く、エネルギー分解能も良いことがわかる(表4)。母体構造がLGYSOについてもプラセオジウム、テルビウム、ツリウムから選ばれる少なくとも1種の元素とセリウムとによって蛍光体を共付活することにより、蛍光出力及びエネルギー分解能が向上することがいえる。
次に、同じセリウム濃度における(組成式中のy値が等しい)共付活による蛍光出力の向上率を表5に示した。実施例の蛍光出力値(ch)を分子、比較例の蛍光出力値(ch)を分母として、対蛍光出力比(%)を求めた。
Figure 2016056378
表5に示した結果から明らかなように、yが0.003(セリウム高濃度側)のときは平均値103%、yが0.0005(セリウム低濃度側)のときは平均値108%であった。つまりセリウム低濃度側のほうが、共付活による蛍光出力向上が大きいといえる。
また、セリウム低濃度側(y=0.0005)を共付活してDOI−PET用途として組み合わせを考えた場合、セリウム低濃度側を分子とし、セリウム高濃度側を分母として蛍光出力比(%)を求め、表6に示した。
Figure 2016056378
表6に示した結果から明らかなように、セリウム低濃度側と高濃度側のどちらもセリウム単独の場合は平均値90%、セリウム低濃度側のみ共付活した場合は平均値97%であった。つまり、セリウム低濃度側を共付活することにより、高濃度側との蛍光出力差を大幅に小さくすることができるといえる。
また、セリウム低濃度側(y=0.0005)と高濃度側(y=0.003)のどちらも共付活してDOI−PET用途として組み合わせを考えた場合、セリウム低濃度側を分子とし、セリウム高濃度側を分母として蛍光出力比(%)を求め、表7に示した。
Figure 2016056378
表7に示した結果から明らかなように、セリウム低濃度側と高濃度側のどちらもセリウム単独の場合は平均値90%、セリウム低濃度側と高濃度側のどちらも共付活した場合は平均値94%であった。つまり、共付活同士で組み合わせることにより、蛍光出力差を小さくすることができるといえる。
以上の結果より、セリウム付活オルト珪酸塩化合物の単結晶に対して、プラセオジウム、テルビウム、ツリウムから選ばれる少なくとも1種を添加してセリウムとともに蛍光体を共付活すると、セリウム濃度によらず、蛍光出力及びエネルギー分解能が向上し、セリウム濃度による蛍光特性差を低減することができる。特にセリウム低濃度側での蛍光特性の向上が大きく、セリウム低濃度側の共付活と、セリウム高濃度側のセリウム単独付活とを組み合わせるシンチレータは、蛍光特性差を更に低減することが可能であり、DOI型次世代高性能PET用途として大いに期待される。
[実施例13]
出発原料として、酸化ガドリニウム及び酸化セリウムの量を、y=0.0005がy=0.015となるように調整したこと、及び、4×6×20mmのサンプルを切り出した後の大気雰囲気中の電気炉での熱処理工程を行わなかったこと以外は比較例4と同様にして、実施例13のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表8に示した。
[実施例14]
出発原料として、酸化ガドリニウム及び酸化セリウムの量を、y=0.003がy=0.015となるように調整したこと、及び、4×6×20mmのサンプルを切り出した後の大気雰囲気中の電気炉での熱処理工程を行わなかったこと以外は比較例7と同様にして、実施例14のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表8に示した。
[実施例15]
出発原料として、酸化ガドリニウム及び酸化セリウムの量を、y=0.003がy=0.015となるように調整したこと、z=0.001がz=0.0004となるように調整したこと、及び、4×6×20mmのサンプルを切り出した後の大気雰囲気中の電気炉での熱処理工程を行わなかったこと以外は実施例11と同様にして、実施例15のシンチレータ用単結晶を作製した。また、得られたシンチレータ用単結晶について、実施例1と同様の手順で蛍光特性の測定を行った。本実施例の組成式及び各サンプルの平均値としての蛍光特性の測定結果を表8に示した。
また、実施例13〜15の比較対象として、実施例1、比較例4及び7の蛍光特性の測定結果を表8に併せて示した。
Figure 2016056378
表8の実施例13及び実施例14では、セリウム単独の付活剤で、セリウム濃度が実施例1〜12のシンチレータ用単結晶よりも高い組成(y=0.015)の蛍光特性を測定した。蛍光減衰時間は約46nsであり、実施例13と実施例8、実施例14と実施例12のそれぞれの組み合わせを考えると、蛍光減衰時間差は10ns以上である。実施例15では、テルビウムとセリウムの共付活剤で、セリウム濃度が同様に高い組成(y=0.015)の蛍光特性を測定した。蛍光減衰時間は同様に約46nsであり、蛍光出力も向上した。DOI型次世代高性能PETにおいて、組み合わせる二種類のシンチレータの蛍光減衰時間差は10ns以上が理想とされており、実施例13、14又は15の組成を有するセリウム高濃度側と、共付活したセリウム低濃度側(例えば上記実施例8又は12)との組み合わせでは、更に蛍光出力差が小さくDOI型次世代高性能PET用途に適している。
実施例13、14、15及び1、並びに比較例4及び7の単結晶について、励起波長364nmの紫外線による紫外線励起蛍光スペクトルを図2に示す。図2中、A1は実施例13を、B1は実施例14を、C1は実施例15を、D1は実施例1を、E1は比較例4を、F1は比較例7をそれぞれ示す。実施例13〜15の単結晶における蛍光スペクトルは、蛍光出力が波長420nm付近で最大になる蛍光を示している。セリウム濃度が高い組成(y=0.015)である実施例13、実施例14及び実施例15では、図2に示した蛍光スペクトルにおいて、500nm付近の蛍光長波長成分の比率が増加していることがわかる。この特性変化によって、最大感度波長が500nm以上であるアバランシェ・フォトダイオードのような半導体検出器との組合せによって、優れた蛍光特性を示すと考えられる。
1…単結晶インゴット、2…種子結晶、10…引き上げ装置、12…引き上げ棒、13…ヒータ、14…高周波誘導加熱炉、15…高周波誘導コイル、16…るつぼ支持棒、17…るつぼ、18…溶融液(融液)。

Claims (1)

  1. 下記一般式(1)で表されるセリウム付活オルト珪酸塩化合物を含むシンチレータ用単結晶。
    Gd2−(a+x+y+z)LnLuCeLmSiO ……(1)
    (一般式(1)中、LmはPr、Tb及びTmから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、LnはPr、Tb及びTmを除くランタノイド系元素、並びにSc、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは0以上1未満の値を示し、xは1を超え2未満の値を示し、yは0を超え0.01以下の値を示し、zは0を超え0.01以下の値を示す。なお、a+x+y+zの値は2以下である。)
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