JP2009120809A - シンチレータ用単結晶 - Google Patents

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Abstract

【課題】高密度であり、かつ、プラセオジウム付活単結晶の特性として高速な蛍光減衰時間を有する蛍光特性を得ることが可能であると共に、室温で光電子増倍管を使用して検出可能な、300nm以上に最大値を示す高速な蛍光出力を得ることが可能なシンチレータ用単結晶を提供すること。
【解決手段】一般式Gd2−(x+y)LuPrSiO表されるプラセオジウム付活オルト珪酸塩化合物の単結晶を含有するシンチレータ用単結晶(xは1以上2未満の数を示し、yは0を超え0.1以下の数を示し、x及びyは2−(x+y)>0で表される条件を満たす。)
【選択図】なし

Description

本発明は、シンチレータ用単結晶に関する。より詳細には、医学診断用ポジトロンCT(PET)用、宇宙線観察用、地下資源探索用等の放射線医学、物理学、生理学、化学、鉱物学、さらに石油探査などの分野でガンマ線などの放射線に対する単結晶シンチレーション検知器(シンチレータ)に用いられるシンチレータ用単結晶に関する。
セリウムを付活剤としたオルト珪酸ガドリニウム化合物のシンチレータは、蛍光減衰時間が短く、放射線吸収係数も大きいことから、ポジトロンCTなどの放射線検出器として実用化されている。しかし、このようなシンチレータは、蛍光出力がBGOシンチレータよりは大きいものの、NaI(Tl)シンチレータの20%程度しかなく、その改善が望まれている。
一般式Lu2(1−x)Ce2xSiOで表されるセリウム付活オルト珪酸ルテチウムの単結晶を用いたシンチレータ(例えば、特許文献1、2参照)、一般式Gd2−(x+y)LnCeSiO(LnはSc、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるセリウム付活オルト珪酸ルテチウムガドリニウム単結晶を用いたシンチレータ(例えば、特許文献3、4参照)及び一般式Ce2x(Lu1−y)SiOCe2x(Lu1−y2(1−x)SiOで表されるセリウム付活オルト珪酸ルテチウムイットリウムの単結晶を用いたシンチレータ(例えば、特許文献5、6参照)が知られている。これらのシンチレータでは、結晶の密度が向上しているだけでなく、セリウム付活オルト珪酸塩化合物の単結晶の蛍光出力が向上し、蛍光減衰時間も短くできることが知られている。
近年、セリウムに代わる付活剤として蛍光減衰時間の短い特徴をもつプラセオジウムを付活剤としたシンチレータ用単結晶が検討されており、上記特許文献1〜6記載のセリウム付活オルト珪酸塩単結晶よりも高速なシンチレータとして期待されている。特に、医学診断用ポジトロンCT(PET)用シンチレータとしては、高性能次世代装置向けに高密度でかつ時間分解能に優れたシンチレータが要求されている。
一般に、無機シンチレータの蛍光減衰時間は、母体単結晶の結晶構造や付活剤濃度等による影響もあるが、付活剤種のエネルギー準位による作用が大きく、プラセオジウムを付活剤とした無機シンチレータは、一般的に5〜30ns程度の比較的高速な蛍光減衰時間を示すことが知られている。
Lu2−yPrSiO(式中、yは0.005〜0.02の数を示す。)で表されるプラセオジウム付活オルト珪酸ルテチウム単結晶シンチレータの特性については、非特許文献1などで報告されている。
その蛍光波長は、270nm、281nm、314nm付近の発光成分を含み281nm付近に最大値を持つブロードな蛍光であり、一般的なシンチレータの実用温度となる室温(295K付近)では低温(80K付近)に比べて蛍光出力が約70%に低下し、特に314nmの長波長成分の低下が顕著であることが示されている。
また、紫外線領域で励起した場合に上記蛍光を発生させる励起波長は、247nm付近にピークを有することや、紫外線励起による蛍光減衰時間が6nsであり、放射線励起による蛍光減衰時間が26nsであることなども報告されている。
これらの文献から、一般式Lu2−yPrSiOで表されるプラセオジウム付活オルト珪酸ルテチウムシンチレータは、その蛍光波長が、シンチレータの光検出器として一般的に使用される光電子増倍管の感度が極端に低下する300nm未満の成分が主体となるため、蛍光出力を充分に検出することができないと考えられる。
一方、付活剤としてプラセオジムを使用する(PrLu1−yAl12(式中、yは0.0025〜0.01の数を示す。)で表されるプラセオジウム付活ルテチウムアルニウムガーネット単結晶シンチレータの特性については、非特許文献2などで報告されている。
その蛍光波長は、255nm、305nm、325nm、358nm付近の発光成分を含み305nmに最大値を持つブロードな蛍光であり、255nm付近の短波長成分の減少を除けば、室温(295K付近)でも低温(80K付近)に比べて蛍光出力はほぼ同等であることが示されている。
また、紫外線領域で励起した場合に上記蛍光を発生させる励起波長は、285nmと240nm付近にピークを有することや、紫外線励起による蛍光減衰時間が17〜21nsであり、放射線励起による蛍光減衰時間が20〜25nsであることなども報告されている。また、その密度は6.7g/cmであり、蛍光出力は、BiGe12(BG
O) の2倍よりも高い程度であることが示されている。
Lu2−yPrSiOで表されるプラセオジウム付活オルト珪酸ルテチウムの単結晶は、密度が7.4と大きく、高速な蛍光減衰時間を有するが、その蛍光波長はシンチレータの一般的な使用温度である室温(例えば10〜40℃)では300nm以下の低波長かつブロードなピークのため、一般的な光検出器である光電子増倍管を使用する場合に、その検出感度が悪くなり、充分な出力を検出できないという問題点がある。
(PrLu1−yAl12で表されるプラセオジウム付活ルテチウムアルミニウムガーネットの単結晶は、高速な蛍光減衰時間を有し、その蛍光波長は305nm付近に最大値を示すが、密度が6.7g/cmと小さく、蛍光出力もBGOの2倍よりも高い程度であり、次世代用高性能シンチレータ特性としては不充分であった。
特許第2852944号公報 米国特許第4958080号公報 特公平7−78215号公報 米国特許第5264154号公報 米国特許第6624420号公報 米国特許第6921901号公報 Chemical Physics Letters, 410 (2005) p.218-221 Physical Static Solid (a) 202 (2005) R4-R6、Journal of Crystal Growth, 287(2006)p. 335-338
本発明は、高密度であり、かつ、プラセオジウム付活単結晶の特性として高速な蛍光減衰時間を有する蛍光特性を得ることが可能であると共に、室温で光電子増倍管を使用して検出可能な、300nm以上に最大値を示す高速な蛍光出力を得ることが可能なシンチレータ用単結晶を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明は、下記一般式(1)で表されるプラセオジウム付活オルト珪酸塩化合物の単結晶を含有することを特徴とするシンチレータ用単結晶を提供する。
Gd2−(x+y)LuPrSiO (1)
(一般式(1)中、xは1以上2未満の数を示し、yは0を超え0.1以下の数を示し、x及びyは2−(x+y)>0で表される条件を満たす。)
また、上記の単結晶は、10〜40℃の温度下で測定される励起蛍光スペクトルにおいて、蛍光出力の最大値を与える励起波長に対する蛍光波長が300nm以上であることを特徴としてもよい。
本発明の単結晶によれば、高密度のLuSiOを母構造のLuサイトにGdを置換した同じ結晶構造空間群C2/cのため高密度であり、また、プラセオジウム付活の特性として高速な蛍光減衰時間を有する蛍光特性を得ることが可能である。
本発明に係る単結晶によれば、室温で光電子増倍管を使用して検出可能な300nm以上に最大値を示す高速な蛍光出力を得ることが可能である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の単結晶は、一般式(1)で表されるプラセオジウム付活珪酸塩化合物の単結晶を含有する。
Gd2−(x+y)LuPrSiO (1)
(一般式(1)中、xは1以上2未満の数を示し、yは0を超え0.1以下の数を示し、x及びyは2−(x+y)>0で表される条件を満たす。)
本発明の単結晶においては、一般式(1)中のx及びyがそれぞれ上記の範囲内であるため、室温で光電子増倍管を使用して検出可能な312nm付近に最大値を示す高速な蛍光出力を得ることができる。ここで、xは、結晶を高密度化し、かつ、室温で高い蛍光出力が得られる点から、1以上2未満であることが必要であり、1.2を超え2未満が好ましく、1.6を超え2未満であることがより好ましく、1.8を超え2未満であることがさらに好ましい。また、yは、0を超え0.1以下であることが必要であり、0を超え0.1未満であることが好ましく、0.0001を超え0.05未満であることがより好ましく、0.0005を超え0.03未満であることがさらに好ましく、0.001を超え0.01未満であることが最も好ましい。yが0であると充分な蛍光出力が得られず、また、0.1よりも大きいと結晶の着色が顕著になり蛍光出力の低下や結晶の歪によるクラック発生が問題になる。
上記の単結晶は、上記一般式(1)で表されるプラセオジウム付活珪酸塩化合物の単結晶のみからなるものであってもよいが、周期表2族(IIa族)に属する元素のうちCa、Mgから選ばれる1種以上の添加元素を更に含有してもよい。これにより、酸素欠陥起因によると思われる蛍光特性の低下やばらつきを低減し、結晶欠陥起因の蛍光出力のバックグラウンド(残光、Afterglow)を低減することができる。当該添加元素の含有量は、上記一般式(1)で表されるプラセオジウム付活珪酸塩化合物の単結晶の全質量に対して、0.00005〜1.0質量%であることが好ましい。
また、上記の単結晶は、それぞれ周期表13族(IIIb族)に属する元素のうちAl、Ga、Inから選ばれる1種以上の添加元素を更に含有してもよい。前記単結晶の全質量に対して含有してもよい。これにより、結晶欠陥起因の蛍光出力のバックグラウンド(残光、Afterglow)を低減する効果がさらに顕著となる。また、当該添加元素を、上述した周期表2族(IIa族)に属する元素のうちCa、Mgから選ばれる1種以上の添加元素と同時に存在することによって、より高い効果が得られることがある。当該添加元素の含有量は、上記一般式(1)で表されるプラセオジウム付活珪酸塩化合物の単結晶の全質量に対して、0.00005〜1.0質量%であることが好ましい。
さらに、上記の単結晶においては、それぞれ周期表4、5、6族及び14、15、16族に属する元素から選ばれる1種以上の元素濃度の合計を、上記一般式(1)で表されるプラセオジウムオルト付活珪酸塩化合物の単結晶の全質量に対して、0.002重量%以下とすることができる。これにより、蛍光特性の劣化を抑制することができる。
次に、上記の単結晶の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係る単結晶の製造方法においては、まず、一般式(1)で表されるプラセオジウム付活オルト珪酸塩化合物の原料を所定の量論組成となるように混合し、るつぼに投入する。この単結晶を製造する場合の出発原料としては、一般式(1)で表されるプラセオジウム付活オルト珪酸塩化合物の構成元素であるGd、Lu、Pr及びSiの単独酸化物及び/又は複合酸化物が好適に用いられる。市販のものとしては、信越化学社製、スタンフォードマテリアル社製、多摩化学社製等の純度の高いものを用いると好ましい。
また、上記の単結晶が周期表2族(IIa族)に属する元素のうちCa、Mgから選ばれる1種以上の添加元素、周期表13族(IIIb族)に属する元素のうちAl、Ga、Inから選ばれる1種以上の添加元素等を更に含有する場合、これらの添加元素を添加するタイミングとしては、結晶の育成前であれば特に限定されない。例えば原料の秤量時に添加元素を添加混合してもよく、るつぼに原料を投入する際に2族元素を混合してもよい。また、添加元素は、育成された単結晶中に含まれていれば添加時の態様は特に限定されず、例えば酸化物や炭酸塩の状態で原料中に添加されてもよい。
次に、上記の原料が充填されたるつぼを加熱して原料を溶融させ(溶融工程)、続いて溶融液を冷却固化させて(冷却固化工程)、単結晶インゴットを得る。
ここで、上記の溶融工程における溶融法はチョクラルスキー法であってもよい。この場合、図1に示す構成を有する引き上げ装置10を用いて溶融工程及び冷却固化工程における作業を行なうことが好ましい。
図1は、本実施形態に係る製造方法において、単結晶を育成するための育成装置の基本構成の一例を示す模式断面図である。図1に示す引き上げ装置10は、高周波誘導加熱炉14を有している。この高周波誘導加熱炉14は先に述べた溶融工程及び冷却固化工程における作業を連続的に行うためのものである。
この高周波誘導加熱炉14は耐火性を有する側壁が筒状の有底容器であり、有底容器の形状自体は公知のチョクラルスキー法に基づく単結晶育成に使用されるものと同様である。この高周波誘導加熱炉14の底部の該側面には高周波誘導コイル15が巻回されている。そして、高周波誘導加熱炉14の内部の底面上には、るつぼ17(例えば、Ir製のるつぼ)が配置されている。このるつぼ17は、高周波誘導加熱ヒータを兼ねている。そして、るつぼ17中に、単結晶の原料を投入し、高周波誘導コイル15に高周波誘導をかけると、るつぼ17が加熱され、単結晶の構成材料からなる溶融液18(融液)が得られる。
また、高周波誘導加熱炉14の底部中央には、高周波誘導加熱炉14の内部から外部へ貫通する開口部(図示せず)が設けられている。そして、この開口部を通じて、高周波誘導加熱炉14の外部からるつぼ支持棒16が挿入されており、るつぼ支持棒16の先端はるつぼ17の底部に接続されている。このるつぼ支持棒16を回転させることにより、高周波誘導加熱炉14中において、るつぼ17を回転させることができる。開口部とるつぼ支持棒16との間には、パッキンなどによりシールされている。
次に、引き上げ装置10を用いたより具体的な製造方法について説明する。
先ず、溶融工程では、るつぼ17中に、単結晶の原料を投入し、高周波誘導コイル15に高周波誘導をかけることにより、単結晶の構成材料からなる溶融液18(融液)を得る。
次に、冷却固化工程において溶融液を冷却固化させることにより、円柱状の単結晶インゴット1を得る。より具体的には、後述する結晶育成工程と、冷却工程の2つの工程に分けて作業が進行する。
先ず、結晶育成工程では、高周波誘導加熱炉14の上部から、種子結晶2を下部先端に固定した引き上げ棒12を溶融液18中に投入し、次いで、引き上げ棒12を引き上げながら、単結晶インゴット1を形成する。このとき、結晶育成工程では、ヒータ13の加熱出力を調節し、溶融液18から引き上げられる単結晶インゴット1を、その断面が所定の直径となるまで育成する。
次に、冷却工程ではヒータの加熱出力を調節し、結晶育成工程後に得られる育成後の単結晶インゴット(図示せず)を冷却する。
本実施形態に係る製造方法においては、結晶育成の雰囲気が0.01〜0.6体積%の範囲の酸素を含むことが好ましい。酸素濃度が0.01体積%未満の場合、結晶中に酸素欠陥ができやすく、残光(Afterglow)が上昇することがある。一方、酸素濃度が0.6体積%を超える場合、着色などによって蛍光出力が低下することがある。
また、本実施形態に係る製造方法においては、単結晶を育成後あるいは育成・加工後に酸素を含む雰囲気あるいは、酸素を含有しない雰囲気で熱処理することができる。熱処理による着色の減少等により、蛍光出力が増加する効果が得られることが。熱処理温度としては、上記の効果が得られやすい700℃〜1300℃の温度が適用できる。
上記のようにして得られる単結晶は、高密度のLuSiOを母構造のLuサイトにGdを置換した同じ結晶構造空間群C2/cのため高密度であり、また、プラセオジウム付活の特性として高速な蛍光減衰時間を有する蛍光特性を得ることが可能である。
この単結晶は、10〜40℃の温度下で測定される励起蛍光スペクトルにおいて、蛍光出力の最大値を与える励起波長に対する蛍光波長が300nm以上であるという優れた蛍光特性を有し得るため、室温で光電子増倍管を使用して検出可能な300nm以上の波長領域に蛍光出力を得ることが可能となる。
したがって、この単結晶は、第1医学診断用ポジトロンCT(PET)用、宇宙線観察用、地下資源探索用等の放射線医学、物理学、生理学、化学、鉱物学、さらに石油探査などの分野でガンマ線などの放射線に対する単結晶シンチレーション検知器(シンチレータ)に用いられるシンチレータ用単結晶として非常に有用である。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
単結晶はチョクラルスキー法に基づいて作製した。まず、Gd2−(x+y)LuPrSiO(x=1.8、y=0.003)の出発原料として、酸化ガドリニウム(Gd、純度99.99質量%)、酸化ルテチウム(Lu、純度99.99質量%)、二酸化珪素(SiO、純度99.9999質量%)、酸化プラセオジウム(Pr11、純度99.99質量%)を準備し、これらの原料を所定の量論組成になるように混合した。
次に、得られた原料混合物500gを、直径50mm、高さ50mm及び厚み1.5mmのイリジウム製るつぼの中に投入し、高周波誘導加熱炉で融点2150℃まで加熱して融液を得た。なお、融点は電子式光高温計(チノー製、パイロスタMODEL UR−U)により測定した。
続いて、趣旨結晶を先端に固定した引き上げ某の当該先端を溶融液中に入れて種付けを行った。その後、結晶引き上げ速度1.5mm/hの速度で単結晶インゴットの肩部の引き上げを行い、直径25mm(φ)になった時点から、引き上げ速度1mm/hの速度で平行部の育成を開始し、所定の重量の結晶を育成した後、単結晶を溶融液から切り離し、冷却を開始した。結晶を育成する際には、育成炉内に4L/minのNガス及び15mL/minのOガスを流し続けた。このとき、育成炉内の酸素濃度は0.4体積%であった。このようにして、結晶重量が280g、肩部の長さが30mm、平行部の長さが90mmの単結晶インゴットを得た。得られた単結晶インゴットについて、元素分析の結果から、Gdの偏析係数0.7、Prの偏析係数0.35の結果を得た。偏析係数は、
Cs/Co=k(1−g)k−1 (2)
(Co:融液中の初期濃度、Cs:結晶中の初期濃度、k:偏析係数、g:固化率)
と上記の式(2)で表される。
次に、得られた単結晶の上部から、4×6×20mmのサンプルを切り出し、そのサンプルの6×20mmの面の励起蛍光スペクトルを室温にて測定した。なお、サンプルは、単結晶育成後、あるいは育成・加工後に熱処理は行っていない。励起蛍光スペクトルは、分光蛍光光度計((株)日立製作所製、商品名F4500)を使用し、励起波長200〜400nm、蛍光波長200〜700nmの範囲で測定した。その結果、312nm付近に比較的シャープな蛍光があることがわかった。図2に励起スペクトル(蛍光波長312nm)を示す。図2に示したように、実施例1の単結晶の場合、蛍光強度が最大となる励起波長は276nmであった。また、波長276nmにおける蛍光スペクトルを図3に示す。図3に示したように、実施例1の単結晶の場合、蛍光出力の最大値を与える励起波長(276nm)に対する蛍光波長は312nmであった。また、X線励起による蛍光スペクトルも同様に蛍光波長312nmが観測された。
上述の通り、実施例1で得られた単結晶の励起蛍光特性は、前記の非特許文献1などで報告されているLu2−yPrSiO(原料組成y=0.005〜0.02)で表されるプラセオジウム付活オルト珪酸ルテチウム単結晶シンチレータの特性とは明らかに異なるものであり、実施例1の単結晶によって、室温で光電子増倍管を使用して検出可能な300nm以上の波長領域に蛍光出力が得ることが確認された。
[実施例2]
実施例1における一般式(1)中のyが0.02であること、育成炉内に4L/minのNガス及び0mL/minのOガスとし、このときの育成炉内の酸素濃度は、0.02%未満である以外は実施例1と同様にして、単結晶を作製した。
次に、得られた単結晶について、実施例1と同様にして励起蛍光スペクトルを測定した。図2に励起スペクトル、図3に蛍光スペクトルを示す。その結果、蛍光強度が最大となる励起波長は276nmであり、また、波長276nmにおける蛍光波長は312nmであった。
上述の通り、実施例2で得られた単結晶の励起蛍光特性は、実施例1の単結晶と同様に、前記の非特許文献1などで報告されているLu2−yPrSiO(原料組成y=0.005〜0.02)で表されるプラセオジウム付活オルト珪酸ルテチウム単結晶シンチレータの特性とは明らかに異なるものであった。実施例2の単結晶によって、室温で光電子増倍管を使用して検出可能な300nm以上の波長領域に蛍光出力が得られることが確認された。
[比較例1]
一般式Lu2−yPrSiO(ただし、yは0を超え0.1以下の数を示す)において、yが0.02であること、育成炉内に4L/minのNガス及び0mL/minのOガスとし、このときの育成炉内の酸素濃度は、0.02%未満である以外は実施例1と同様にして、単結晶を作製した。
[比較例2]
一般式Lu2−yPrSiO(ただし、yは0を超え0.1以下の数を示す)において、yが0.003であること、育成炉内に4L/minのNガス及び0mL/minのOガスとし、このときの育成炉内の酸素濃度は、0.02%未満である以外は実施例1と同様にして、単結晶を作製した。
[比較例3]
一般式(1)のyが0.003であること、出発原料として、酸化ガドリニウム(Gd、純度99.99質量%)の代わりに酸化イットリウム(Y、純度99.99質量%)であること、育成炉内に4L/minのNガス及び0mL/minのOガスとし、このときの育成炉内の酸素濃度は、0.02%未満である以外は実施例1と同様にして、単結晶を作製した。
次に、比較例1、比較例2及び比較例3で得られた単結晶について、実施例1と同様にして励起蛍光スペクトルを測定した。図2に励起スペクトル、図3に蛍光スペクトルを示した。非特許文献1などで報告されているLu2−yPrSiO(原料組成y=0.005〜0.02)で表されるプラセオジウム付活オルト珪酸ルテチウム単結晶シンチレータの特性と同様の結果が得られ、得られた励起蛍光スペクトルは、蛍光強度が最大となる励起波長は248nmであり、また波長248nmにおける蛍光波長は276nm、312nm付近の発光成分を含み276nm付近に最大値を持つブロードな蛍光であった。結果を表1に示す。なお、表1中の「最大蛍光波長」は蛍光強度の最大値を与える波長を意味する。
Figure 2009120809
実験結果より、一般式Lu2−yPrSiOで表されるプラセオジウム付活オルト珪酸ルテチウムシンチレータは、その蛍光波長が、シンチレータの光検出器として一般的に使用される光電子増倍管の感度が極端に低下する300nm未満の成分が主体となるため、蛍光出力を充分に検出することができないと考えられる。
一般式Gd2−(x+y)LuPrSiO(xは1以上2未満の数を示し、yは0を超え0.1以下の数を示す)で表されるプラセオジウム付活オルト珪酸塩化合物の単結晶を含有するシンチレータ用単結晶は、一般式Lu2−yPrSiOにGdを置換することにより、室温で光電子増倍管を使用して検出可能な300nm以上の波長領域に蛍光出力が得られると考えられる。
単結晶の育成に使用される育成装置の基本構成の一例を示す模式断面図である。 実施例1及び実施例2(蛍光波長312nm)、比較例1、比較例2及び比較例3(蛍光波長276nm)で得られた単結晶の励起スペクトルを示すグラフである。 図2の蛍光強度が最大となる励起波長276nm(実施例1、2の場合)、248nm(比較例1、2、3の場合)における蛍光スペクトルを示すグラフである。
符号の説明
1…単結晶、2…種子結晶、10…引き上げ装置、12…引き上げ棒、14…高周波誘導加熱炉、15…高周波誘導コイル、16…るつぼ支持棒、17…るつぼ、18…溶融液(融液)。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で表されるプラセオジウム付活オルト珪酸塩化合物の単結晶を含有することを特徴とするシンチレータ用単結晶。
    Gd2−(x+y)LuPrSiO (1)
    (一般式(1)中、xは1以上2未満の数を示し、yは0を超え0.1以下の数を示し、x及びyは2−(x+y)>0で表される条件を満たす。)
  2. 10〜40℃の温度下で測定される励起蛍光スペクトルにおいて、蛍光出力の最大値を与える励起波長に対する蛍光波長が300nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のシンチレータ用単結晶。
JP2008172738A 2007-07-17 2008-07-01 シンチレータ用単結晶 Active JP5176074B2 (ja)

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