JP7178043B2 - Lso系シンチレータ結晶 - Google Patents
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さらに、Ln2-(x+y)LuxCeySiO5(LnはYを含み、Sc、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるセリウム付活オルト珪酸ルテチウムの単結晶は、付活剤のセリウム濃度を変えることにより、蛍光減衰時間の異なるLSO系シンチレータ結晶が得られることが知られている。
さらに、特許文献10では、LSO:Ce+Tmが開示されており、蛍光減衰時間の短いLSO系シンチレータ結晶が得られことが開示されている。
さらに、特許文献11では、耐放射性等のフォトニック特性等が改善された不純物が含まれるLSO系シンチレータ結晶が開示されている。
なお、特許文献5、6、及び8では、インゴットの白濁やクラックについては何ら記載がない。
特許文献7には、Caの濃度をCeの濃度の3倍以上とすることで、クラッキングを抑制できることが開示されているが、白濁については記載されていない。
また、特許文献9では、蛍光減衰時間の短時間化とインゴットの白濁やクラックとの両立を実現する具体的な方法について記載されていない。
また特許文献10では、蛍光減衰時間が短くなるが、それと共に、蛍光出力が低下する。また、インゴットの白濁やクラックについては何ら記載がない。
また特許文献11では、共ドープされたLSO系シンチレータ結晶の記載があるが、インゴットの白濁やクラックについては何ら記載されていない。
(1)純粋な物質に対して少量の添加元素を加えることによって、性能を改善できることが知られている。例えば、純金属に少量の元素を添加して機械的強度を増す、セラミックスに少量の元素を添加してクラックの伝搬を止める、また、溶融ガラスに少量の元素を添加して清澄にする、等である。単結晶のLSO系シンチレータにおいても、純LSOに対して、Gdを添加したLGSOはシンチレータ特性の均一性向上の効果がある。これは、純LSOに対してLuとイオン半径が異なるGdを少量添加することで、よりイオン半径
の異なる発光母材のCeが均一に結晶内に取り込まれるため、と考えられる。
(2)一方、融液から単結晶を育成する場合、結晶に入りにくい元素を添加すると結晶育成が進むにつれて添加した元素が融液中に濃集し、組成的過冷却という現象がしばしば発生する。組成的過冷却が起きると固液界面が不安定化し、固化する結晶内に包含物が取り込まれ、濁りの原因やクラックの起点となる。添加元素の母材単結晶に取り込まれる難易度は、結晶成長界面の固化結晶側の濃度Csと融液相側の濃度CLとの比である分配係数kによって表現できる(Cs/CL=k)。特にk<1の添加元素は、育成する単結晶インゴットの後半に濃集し、組成的過冷却をおこすため、添加量を抑制する必要がある。
以上のとおり、(1)特定の元素を添加すると結晶の品質改善が図れるが、(2)k<1の添加元素が多すぎると特に結晶下部に不良が頻発する。
[1]ドープ元素の総量が1.8wt%以下であり、ドープ元素としてY、Gd及びGaの群から選ばれる少なくとも1つの元素、並びにCe及びCaを含み、かつ、第2族元素の含有量が0.0065wt%以下である、LSO系シンチレータ結晶。
[2]ドープ元素として、更にCa以外の第2族元素を含む、[1]に記載のLSO系シンチレータ結晶。
[3]Y、Gd、及びGaの群から選ばれる少なくとも1つの元素の含有量が、1wt%以下である、[1]又は[2]に記載のLSO系シンチレータ結晶。
[4]Caに対するCeの含有比Ce/Ca(mol比率)が1.5以下である、[1]~[3]の何れかに記載のLSO系シンチレータ結晶。
[5]ドープ元素として、Y及びGdを含み、Gdに対するYの含有比Y/Gd(mol比率)が1以上である、[1]~[4]の何れかに記載のLSO系シンチレータ結晶。
[6]蛍光減衰時間が25~35nsである、[1]~[5]の何れかに記載のLSO系シンチレータ結晶。
なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本発明の一実施形態であるLSO系シンチレータ結晶は、オルト珪酸ルテチウム(LSO)からなり、ドープ元素の総量が1.8wt%以下であり、ドープする元素(以下、「ドープ元素」とも称する)としてY、Gd及びGaの群から選ばれる少なくとも1つの元素、並びにCe及びCaを含み、かつ、第2族元素の含有量が0.0065wt%以下の結晶である。
なお、LSO系シンチレータ結晶をドープする元素は、Y、Gd、Ga、Ce及びCaに限定されず、これら以外の元素を含んでいてもよい。
上記範囲内であると、蛍光減衰時間が短く、蛍光出力が高く、白濁、クラックの少ない結晶を得ることができる。
上記範囲内であると、蛍光減衰時間が短く、蛍光出力が高く、白濁、クラックの少ない結晶を得ることができる。
また、Ca以外の第2族元素は、透過率向上の観点からは、Mgであることが好ましい。
上記範囲内であると、蛍光減衰時間が短く、クラックの少ない結晶を得ることができる。
上記範囲内であると、蛍光減衰時間が短く、蛍光出力が高く、白濁、クラックの少ない結晶を得ることができる。
次に、LSO系シンチレータ結晶の製造方法の一例について説明する。
シンチレータ結晶の製造方法においては、まず、オルトシリケートの原料を混合し、るつぼに投入する。この結晶を製造する場合の出発原料としては、オルトシリケートの構成元素であるLu、Siの単独酸化物及び/又は複合酸化物が好適に用いられ、純度の高いものを用いることが好ましい。
まず、溶融工程では、るつぼ17中に、単結晶の原料を投入し、高周波誘導コイル15に高周波誘導をかけることにより、単結晶の構成材料からなる溶融液18(融液)を得る。
発ロスが問題となる。
具体的には、ドープ元素をドープしたオルトシリケートのシンチレータ結晶を製造するための熱処理方法であって、該シンチレータ結晶の構成元素を含有する原料を用いて育成した単結晶体を、1000℃以上、単結晶体の融点-100℃以下の温度で熱処理する工程を含む、熱処理方法である。
<3-1.透過率>
LSO系シンチレータ結晶は、波長420nmの光を入射させた際の(インゴット下部の透過率(%))/(インゴット上部の透過率(%))で表される透過率の均一性が、90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、99%以上であることが特に好ましい。なお、図2に示すように、単結晶インゴットの結晶成長方向に対して引き上げ棒側をインゴットの上側、溶融液側をインゴットの下側とし、インゴットの結晶成長方向の長さを100%とした場合において、インゴット下部とは、インゴットの下側端部から10%の部分(結晶成長後半部)をいい、インゴット上部とは、インゴットの上側端部から10%の部分(結晶成長前半部)をいう。当該図2において、インゴットの隣の矢印は、結晶成長方向を表し、当該矢印に付した線は、インゴットを均等に10等分した線を表す。
LSO系シンチレータ結晶は、662keVのガンマ線をサンプルに照射した際の蛍光
減衰時間が、35ns以下であることが好ましく、34ns以下であることがより好ましく、32ns以下であることが特に好ましく、30ns以下であることが最も好ましく、25ns以上であることが好ましく、26ns以上であることがより好ましく、27nsであることがさらに好ましい。上記範囲とすることにより、PET診断においての空間分解能が高いシンチレータ結晶を得ることができる。
蛍光出力について、例えば、インゴット上部から4×4×12mmで切り出した試料を用いて、後述の実施例の項に記載される方法で評価を行った場合には、その蛍光出力(a.u.(任意単位))が、700以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、900以上であることがさらに好ましく、1000以上であることが特に好ましく、1100以上であることが最も好ましい。上記範囲を充足することにより、PET診断においての空間分解能が高いシンチレータ結晶を得ることができる。
以下に示す実施例1~6、及び比較例1~3に従い、特開2011-026547号公報に開示されるチョクラルスキー法によってLSO系シンチレータ単結晶を作製した。
出発原料として、酸化ルテチウム(Lu2O3、純度99.999質量%)、二酸化珪素(SiO2、純度99.9999質量%)、酸化イットリウム(Y2O3、純度99.99質量%)、酸化ガドリニウム(Gd2O3、純度99.99質量%)、酸化セリウム(CeO2、純度99.99質量%)及び酸化カルシウム(CaO、純度99.99質量%)を混合し、特開2011-026547号公報に開示されるチョクラルスキー法で重量約14Kg(Φ90×300mL)の単結晶インゴットを得た。
上記条件で作製した場合のインゴット上部に対し、グロー放電質量(GDMS)分析して得られたドープ元素量に係る結果を表2に示す。
ニューインスツルメンツ社製GDMS モデル Astrum Mを使いサンプルサイズ2×2×22mmでAr雰囲気下、1.3~1.4KV、3.0~4.0mAのグロー放電条件で測定を行った。
た。大気雰囲気中で、100℃/時間のレートで電気炉内を昇温し、1350℃で24時間保持した後、100℃/時間のレートで室温まで冷却した。次に、上記結晶サンプルにリン酸を用いてケミカルエッチングを施し、結晶サンプルの全面を鏡面化した。これにより、比較例1のシンチレータ結晶を得た。
当該シンチレータ結晶において、インゴット上部から切り出したものを上部シンチレータ結晶、及びインゴット下部から切り出したものを下部シンチレータ結晶と称する。
表2に示すGDMS分析の結果になるように、CaCO3を比較例1の6倍仕込んだ以外は、比較例1と同様の方法で重量約14Kgの単結晶インゴットを得た。
表2に示すGDMS分析の結果になるように、Y2O3及びGd2O3を用いず、CaCO3を比較例1の6倍仕込んだ以外は、比較例1と同様の方法で重量約14Kgの単結晶インゴットを得た。
[比較例4]
表2に示すGDMS分析の結果になるように、Y2O3を用いず、Gd2O3を比較例1の0.004倍、CaCO3を比較例1の10倍仕込んだ以外は、比較例1と同様の方法で重量約14Kgの単結晶インゴットを得た。
表2に示すGDMS分析の結果になるように、Gd2O3を用いず、Y2O3を比較例1の0.4倍、CaCO3を比較例1の6倍仕込んだ以外は、比較例1と同様の方法で重量約14Kgの単結晶インゴットを得た。
表2に示すGDMS分析の結果になるように、Y2O3を用いず、Gd2O3を比較例1の0.004倍、CaCO3を比較例1の6倍仕込んだ以外は、比較例1と同様の方法で重量約14Kgの単結晶インゴットを得た。
表2に示すGDMS分析の結果になるように、Y2O3を比較例1の0.4倍、Gd2O3を比較例1の0.004倍、CaCO3を比較例1の6倍仕込んだ以外は、比較例1と同様の方法で重量約14Kgの単結晶インゴットを得た。
表2に示すGDMS分析の結果になるように、Y2O3を用いず、Gd2O3を比較例1の0.004倍、CaCO3を比較例1の4倍仕込み、出発原料にさらに酸化マグネシウム(MgO、純度99.999質量%)を混合した以外は、比較例1と同様の方法で重量約14Kgの単結晶インゴットを得た。
表2に示すGDMS分析の結果になるように、Y2O3を用いず、Gd2O3を比較例1の0.004倍、CaCO3を比較例1の4倍仕込んだ以外は、比較例1と同様の方法で重量約14Kgの単結晶インゴットを得た。
表2に示すGDMS分析の結果になるように、Y2O3を比較例1の0.4倍、Gd2O3を比較例1の0.004倍、CaCO3を比較例1の6倍、CeO2を比較例1の0.5倍仕込んだ以外は、比較例1と同様の方法で重量約14Kgの単結晶インゴットを得
た。
<1.透過率>
上記に従って作製した各実施例及び比較例の上部シンチレータ結晶、及び下部シンチレータ結晶を用い、日立製分光光度計U-3310を用いて、透過率モードで、測定波長420nmの透過率を測定した。
これらの透過率について、上部シンチレータ結晶の透過率に対する下部シンチレータ結晶の透過率の比率として評価した透過率の均一性評価の結果を表2に示した。
上記に従って作製した各実施例及び比較例の単結晶インゴットに対して、発生したクラックの本数を下記のように評価し、評価結果を表2に示した。
○:0本
△:1~2本
×:3本以上
4×4×12mmの上部シンチレータ結晶、及び下部シンチレータ結晶の6つの面のうちの4mm×4mmの大きさを有する面を光電子増倍管(浜松ホトニクス社製、商品名「
H7195」)のフォトマル面(光電変換面)に光学グリースを用いて固定した。次に、外径40mm、内径25mm、高さ30mm、深さ26mmのPTFE製のキャップ状の蓋をサンプルが中心になるようにかぶせ、キャップの上に直径25mmのコイン状Cs-137γ線源を置き、662keVのガンマ線をサンプルに照射した、その状態でサンプルのエネルギースペクトルを測定し、各サンプルの蛍光出力を評価した。エネルギースペクトルは光電子増倍管に-1.4kVの電圧を印加した状態で、ダイノードからの信号を増幅器(SPECTECH社製、商品名「UCS30」)で測定した。また、蛍光減衰時間は、光電子増倍管のアノードからの信号をデジタルオシロスコープ(Tektronix社製、商品名「TDS3052B」)に入力し、信号を512回の平均をすることにより得られる蛍光減衰曲線からWave metrics社ソフトIgor Proを使用し、指数関数フィッティングすることにより算出した。
蛍光出力については、上部シンチレータ結晶の結果を表2に示した。
蛍光減衰時間については、上部シンチレータ結晶の算出結果を表2に示した。
したまま、透過率の均一性を向上できることが分かった。
実施例1~6と比較例4との比較から、Ca元素の添加量が多すぎると、全体のドープ元素の総量が少なくても、クラックの発生が抑制できないことが分かった。
2 種子結晶
10 引き上げ装置
12 引き上げ棒
13 ヒータ
14 高周波誘導加熱炉
15 高周波誘導コイル
16 るつぼ支持棒
17 るつぼ
18 溶融液(融液)
31 単結晶インゴット
32 インゴット下部
33 インゴット上部
Claims (5)
- ドープ元素の総量が0.75wt%以下であり、ドープ元素としてY及びGdの群から選ばれる少なくとも1つの元素、並びにCe及びCaを含み、かつ、第2族元素の含有量が0.0065wt%以下であり、Y及びGdの群から選ばれる少なくとも1つの元素の総量は0.75wt%未満であり、Ceの含有量が0.005~0.040wt%である、LSO系シンチレータ結晶。
- ドープ元素として、更にCa以外の第2族元素を含む、請求項1に記載のLSO系シンチレータ結晶。
- Caに対するCeの含有比Ce/Ca(mol比率)が1.5以下である、請求項1又は2に記載のLSO系シンチレータ結晶。
- ドープ元素として、Y及びGdを含み、Gdに対するYの含有比Y/Gd(mol比率)が1以上である、請求項1~3の何れか1項に記載のLSO系シンチレータ結晶。
- 蛍光減衰時間が25~35nsである、請求項1~4の何れか1項に記載のLSO系シンチレータ結晶。
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