JP2009046598A - シンチレータ用単結晶材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】Luを主成分とする希土類硼酸塩を用いたシンチレータ用単結晶材料において、出力(明るさ)を維持しつつ発光寿命の短縮化を図る。
【解決手段】Lu(ルテチウム)を主成分とする希土類硼酸塩に発光元素とCaをド−プしてなる組成を備えたシンチレータ用単結晶材料を作製した。Caをド−プすることによって、出力(明るさ)を維持しつつ発光寿命の短縮化を図ることができ、Caのド−プ量を変化させることにより、用途に合わせて発光寿命を調整することができる。
【選択図】図10

Description

本発明は、放射線検出器などに用いるシンチレータの構成材料としてのシンチレータ用単結晶材料、中でも希土類元素に属するLu(ルテチウム)を主成分とする希土類硼酸塩からなるシンチレータ用単結晶材料に関する。
放射線検出器は、一般にX線やγ線などの放射線を受光して可視光に変換するシンチレータ部と、このシンチレータ部で変換され透過してくる可視光を検知して電気信号に変換するホトマルチプライヤチューブ(以下「ホトマル」という)やホトダイオードなどの光検出部とから構成される。シンチレータ部には、放射線を吸収して可視光に変換する機能のほか、変換した可視光を減衰させずに光検出部まで透過させる透明性が要求される。そのため、放射線検出器のシンチレータ材料は、放射線を吸収して発光するシンチレータとしての機能が必要であるほか、透明性で大きな結晶体であること、好ましくは単結晶材料であることが必要とされる。
この種の単結晶材料として、従来、CdWO4、Bi4Ge312などの母材単結晶だけで発光する材料のほか、Tlを添加したNal(NaI:Tl)、Ceを添加したGd2SiO5(Gd2SiO5:Ce)、Ceを添加したLu2SiO5(Lu2SiO5:Ce)な
どのように母材単結晶に少量の発光元素を添加した材料が知られている。
例えばセリウムをドープしたガドリニウムシリケート(Ce:Gd2SiO5(Ce:GSO))単結晶(特許文献1)や、同じくセリウムをドープしたCe:Lu2SiO5:(Ce:LSO))或いはCeα(LuγGd2−γ2−αSiOで表せられる単結晶シンチレータが提案されている(特許文献2、特許文献3)。
また、特許文献4には、Ceα(LuγGd2−γ2−αSiOで表せられる単結晶シンチレータにおいて、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Ca(カルシウム)、F(フッ素)を添加することが開示され、特許文献5には、放射線検出用シンチレータとしてPbWO4 単結晶を使用したシンチレータが開示されている。
また、特許文献6には、Ln2xSi(3x+2y)(Ln:希土類元素に属する元素)で表される化学組成を有する無機シンチレータが開示されており、特許文献7には、軽希土類フッ化物単結晶であって、REF3(REは、NdおよびPrから選択される少なくとも一種である)で表される放射線検出用フッ化物単結晶材料が開示されている。
これら単結晶材料は、回転引上法(チョクラルスキー法)やブリッジマン(Bridgman)成長法、或いは徐冷法などのように、原料組成物を溶融し、溶融液から温度を下げて結晶を固化析出させて得る方法によって製造されている。
特公昭62−8472号公報 特公平7−78215号公報 特開平9−118593号公報 特表2001−524163号公報 特開2003−41244号公報 特開2005−206640号公報 特開2005−119952号公報
希土類硼酸塩(XBO3、X:希土類元素)は、従来から蛍光体として利用されてきた。また、例えば蛍光体粉末として紙やプラスチック基板に塗布して放射線の検知板やX線フィルム用の増感紙を形成するといった用途にも用いられてきたが、単結晶を育成することが困難であったため、上述のような放射線検出器などに用いるシンチレータ材料として利用することはできないものと考えられてきた。
しかし、このような希土類硼酸塩を、放射線検出器などに用いるシンチレータ材料として利用できたならば、発光量をより一層高めることが期待できる上、従来のシンチレータ材料に比べて融点が低いために製造コストを抑えて安価に提供できることが期待される。
さらに、例えばγ線検出器に用いられるシンチレータ材料に関して言えば、γ線がシンチレータ材料中の電子と相互作用することで吸収されるため、この用途に用いられるシンチレータ材料は、電子密度が大きい材料、言い換えると、原子番号が大きい元素からなる材料であることが望ましい。よって、希土類元素の中でも原子番号の大きなLu(ルテチウム)を主成分とする希土類硼酸塩からシンチレータ用単結晶材料が開発できたならば、極めて有用である。例えばLuBO3は発光量が大きく、密度が大きいので、単結晶を製造することができれば、放射線検出器用として優れたシンチレータ材料として期待することができる。
他方、シンチレータの重要な用途として、陽電子断層撮影(PET)装置が挙げられるが、PET装置は、空間分解能が低いことや、検査時間が長いことが課題とされている。仮にPETに用いるシンチレータの発光寿命を短縮化することができれば、検査時間の短縮が可能となる。また、TOF(タイム・オブ・フライト)情報の利用による、PET装置の空間分解能の向上も期待できる。PET以外の用途においても、出力(明るさ)を維持しつつ発光寿命の短縮化を図ることができれば、各種検出装置の検出効率を高めることができる。
そこで本発明は、Luを主成分とする希土類硼酸塩を用いたシンチレータ用単結晶材料において、出力(明るさ)を維持しつつ発光寿命の短縮化を図ることができる、新たなシンチレータ用単結晶材料を提供せんとするものである。
かかる課題解決のため、本発明は、Lu(ルテチウム)を主成分とする希土類硼酸塩に発光元素とCa(カルシウム)をド−プしてなる組成を備えたシンチレータ用単結晶材料を提案する。
本発明者は、Lu(ルテチウム)を主成分とする希土類硼酸塩にCaをド−プすることによって、出力(明るさ)を維持しつつ発光寿命の短縮化を図ることができることを見出し、本発明を想到したものである。
本発明の好ましい一例として、組成式:(Lu1-x1 x)1-y2 yBO3(但し、0.02≦x<1、0.0001≦y≦0.1、M1:Sc、Ga及びInからなる群から選ばれる一種又二種以上の組合わせからなる元素、M2:発光元素)で表される希土類硼酸塩にCa(カルシウム)をド−プしてなるシンチレータ用単結晶材料を挙げることができる。
Lu(ルテチウム)を主成分とし、Sc、Ga、In等を添加することでカルサイト(Calcite)相に安定化された希土類硼酸塩からなる化合物は、化学的及び機械的に安定であり、これを母材結晶とし、これにCeなどの発光元素をドープして単結晶材料を作製すると、放射線に対する発光量が大きく、発光寿命の短い単結晶を得ることができる。さらにこのような単結晶材料にCaをド−プすることによって、出力(明るさ)を維持しつつ発光寿命の短縮化を図ることができる。
従来、シンチレータの寿命特性を変化させるには、発光イオンや母材の組成などを変更する必要があったが、本発明のシンチレータ用単結晶材料は、発光イオンや母材の組成を大きく変えることなく、Caのド−プ量を変化させることにより、用途に合わせて発光寿命を調整することができる。
よって、本発明のシンチレータ用材料は、医療用のPET(陽電子放射断層撮影装置)やTOF−PET(タイム・オブ・フライト陽電子放射断層撮影装置)、CT(コンピュータ断層撮影装置)のほか、空港などで使用される所持品検査装置など、各種放射線検出器のシンチレータ用材料として好適に使用することができ、これをシンチレータとして用いて各種放射線検出器を構成することができる。
発明を実施するための形態
以下に本発明の実施形態について詳細に述べるが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
(シンチレータ用単結晶材料)
本実施形態のシンチレータ用単結晶材料(以下「本単結晶材料」という)は、組成式:(Lu1-x1 x)1-y2 yBO3(但し、0.02≦x<1、0.0001≦y≦0.1、M1:Sc、Ga及びInからなる群から選ばれる一種又二種以上の組合わせからなる元素、M2:発光元素)で表される希土類硼酸塩にCaをド−プしてなるシンチレータ用単結晶材料である。
本単結晶材料は、カルサイト(Calcite)相の単相単結晶、及びファーテライト(Vat
erite)相の単相単結晶、並びにこれらが混合したものを包含する。例えばカルサイト(Calcite)相を主たる相としてファーテライト(Vaterite)相を含むもの、及び、ファーテライト(Vaterite)相を主たる相としてカルサイト(Calcite)相を含むものを包含する。但し、ファーテライト(Vaterite)相は、高温相と低温相とを有し不安定であるため、これらの中でも、カルサイト(Calcite)相の単相単結晶或いはカルサイト(Calcite)相を主たる相としてファーテライト(Vaterite)相を含むものが好ましく、その中でも、カルサイト(Calcite)相の単相単結晶が、構造の安定化(相転移を安定的に無くす)の点で特に好ましい。
上記組成式において、M1として機能し得る金属元素としては、Sc、Ga及びInからなる群から選ばれる一種又二種以上の組合わせからなる元素を挙げることができる。中でも、カルサイト(Calcite)相の単相単結晶を得ることができる点で、Sc及びInからなる群から選ばれる一種又二種の組合わせが特に好ましい。
なお、Sc、Ga及びIn以外の元素についても同様の効果を奏する元素が存在する可能性はあるが、少なくともScに代えてGdを添加して試験した結果、相転移を抑制することはできないことが確認されているから、何が有効に機能するかは実験しなければ不明である。
但し、M1としての機能を妨げない範囲で、他の元素を添加することを妨げるものではなく、そのような添加元素を含む材料を本実施形態は包含し得るものである。
1の含有割合、すなわち上記組成式におけるxの範囲は、特に限定するものではないが、0.02≦x<1であるのが好ましい。この際、特に0.02より少ないと相移転を生じる可能性がある。また、シンチレータとしての実用的な密度が得られ易いという観点を加味すると、0.02≦x≦0.5であるのがより好ましい。さらに、実用化されている他の結晶密度も考慮すると、0.02≦x≦0.2であるのがさらに好ましく、その中でも、Scなどの添加量を抑制できるという観点から0.02≦x≦0.05であるのが特に好ましい。
上記組成式におけるM2(発光元素)は、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Cr、Bi及びTlからなる群から選ばれる一種又二種以上の組合わせからなる元素であればよい。中でも、PET(陽電子放射断層撮影装置)のように発光寿命(光を吸収してから発光するまでの時間)が短いことが特に求められる場合は、Ceが好ましい。
2の含有割合、すなわち上記組成式におけるyの範囲は、特に限定するものではないが、0.0001≦y≦0.1であるのが好ましく、その中で、発光元素の種類やScなどの濃度に応じてかかる範囲内で調整するのがよい。例えばCeの場合には、実用的な観点から0.001≦y≦0.01であるのが好ましく、その中でも発光強度の観点から0.003≦y≦0.007であるのが特に好ましい。
Caのドープ量は、単結晶中の濃度として重量比で1ppm以上であるのが好ましく、特に10ppm以上であるのがより好ましい。Ca濃度が1ppmより小さいと、発光寿命を有効に短縮化することができない。Ca濃度の上限は、単結晶中に固溶される上限であることが想定されるが、10ppm程度の濃度で十分に効果を得ることができるから、過剰に添加する必要はない。よって、Ca濃度は100ppm以下であるのが好ましい。ドープしたCaは、Luを主成分とするCalcite相の希土類硼酸塩に固溶され、単結晶を構成する。
(用途)
本単結晶材料は、原子番号の大きなLuが主成分である単結晶材料であり、密度が大きいために放射線の吸収能力に優れ、より薄いシンチレータ材料であっても十分に放射線を吸収することができる。よって、放射線検出器全体で見ると、機能を維持しつつ小型化(厚さを薄くする)することができる。
しかも、Caをド−プすることによって、出力(明るさ)を維持しつつ発光寿命の短縮化を図ることができ、Caのド−プ量を変化させることにより、発光寿命を様々に調整することができる。
このような観点から、本単結晶材料を加工してシンチレータとし、このシンチレータとホトマルやホトダイオードなどの光検出部とを組み合わせて放射線検出器を構成することができる。中でも、本単結晶材料は、医療用のPET(陽電子放射断層撮影装置)やTOF−PET(タイム・オブ・フライト陽電子放射断層撮影装置)、CT(コンピュータ断層撮影装置)のほか、空港などで使用される所持品検査装置など、各種放射線検出器のシンチレータ用材料として好適に使用することができ、これを用いて各種放射線検出器を構成することができる。
(製造方法)
次に、本単結晶材料を製造する方法について説明する。但し、本単結晶材料の製造方法が次に説明する方法に限定されるものではない。
本単結晶材料は、Lu原料、M1元素原料、硼素酸素原料、M2元素(発光元素)原料及びCa原料を混合及び加熱溶融する溶融工程と、溶融液を冷却固化させて単結晶を得る冷却固化工程と、必要に応じて得られた単結晶を所望の形状及び大きさに切り出す切断工程とを経て得ることができる。
従来、一般的にLuBO3などの希土類硼酸塩は、融点と室温との間で相変化するため、融点から室温まで冷却させる過程で相変化を生じてクラックが入るなど、単結晶を製造することが難しいという重大な課題を抱えていた。
本発明者は、Luを主成分とする希土類硼酸塩に、少なくともSc、Ga及びInのいずれかの元素を含有させることで、放射線を吸収する能力と発光量を実用的に高いレベルに保ったまま、被添加材料(Luを主成分とする希土類硼酸塩)の相転移を抑制できることを見出し、上記のような製造方法を想到したものである。
ここで、Lu原料及びM1元素原料は、Lu23やSc23のような酸化物でもよい。また、炭酸塩や水酸化物など、温度を上げる間に蒸発する成分を含む化合物でもよい。
硼素酸素原料としては、H3BO3、B23などを挙げることができる。これらは吸湿性があるため、水分を含まないように製造・管理された原料を用いることが好ましい。
2元素(発光元素)原料としては、上記発光元素(M2)の元素単体或いは酸化物、或いは炭酸塩、水酸化物など温度を上げる間に蒸発する成分を含む化合物でもよい。
Ca原料としては、CaOのような酸化物、または炭酸塩、水酸化物などを挙げることができる。
各原料の混合比率は、化学量論及び技術常識に基づいて、それぞれ上記組成範囲になるように秤量すればよい。ただし、硼素酸素原料は、焼成或いは予備焼成後において蒸発し易いので、化学量論から算出される量よりも硼素が多くなるように混合することが必要である。
また、Caのドープ量は、前述のように、単結晶中のCa濃度が1ppm〜100ppmの範囲で、各用途に求められる発光寿命を考慮して決定するのがよい。
原料の混合方法は、充分に混合することができれば特に混合方法を限定するものではない。例えばV型混合器で一晩程度混合すればよい。後工程で、最終的に全て融解するため、混合の程度に神経質になる必要はない。
溶融工程では、加熱溶融する前に予め、Lu原料と、M1元素原料と、硼素酸素原料と、M2元素(発光元素)原料と、Ca原料とを混合し、加熱して予備焼成することにより、少なくとも前記硼素酸素原料よりも融点の高い反応物を焼成しておき、この反応物を加熱溶融するのが好ましい。この際の予備焼成は、硼素酸素原料の種類に応じて調整するのが好ましい。一般的には800〜1300℃で行なうのが好ましい。
このように予備焼成することにより、得られる反応物を焼き固めて嵩を小さくでき、取り扱いが容易になるばかりか、硼素の蒸発を抑えることができる。例えばLu23の融点は2400℃前後であるのに対し、B23の融点は577℃付近〜数百℃程度であるため、B23の蒸発を防ぐ方法を別途用意しない限りB23が徐々に蒸発してしまうが、このように予備焼成することにより、該B23よりも融点の高い反応物を得ることができるから、加熱溶融時に硼素の蒸発を抑制することができる。
なお、予備焼成は、酸素雰囲気(大気中含む)、無酸素雰囲気(真空雰囲気および不活性ガス雰囲気含む)のいずれの雰囲気で行なってもよい。空気や酸素雰囲気下では、例えばM2(発光元素)がCeの場合、イオン価数が発光しないイオン価数に酸化される。その上、母材が酸化物なので水素などの強還元雰囲気下では酸素欠損を生じ着色が生じるようになる。また、真空では、硼素が蒸発し易い上、製造コストが高くなるため窒素雰囲気が特に好ましい。
加熱溶融は、原料混合物を坩堝に入れ、溶融温度や設備などに適した加熱手段により加熱溶融すればよい。
この際、充填しやすいように坩堝形状に合わせて成形プレスしてもよい。
また、坩堝は、イリジウムや白金などの貴金属坩堝を使用するのが好ましい。
原料の溶融(予備焼成する場合、予備焼成後の溶融)は、温度を融点付近に上げて全ての原料を溶融するようにすればよい。この際、室温から融点を超えない所定の温度、或いは融点を超えた所定の温度まで加熱するのが好ましい。具体的には、例えば1650℃〜1700℃程度まで加熱すればよい。この際、高周波誘導加熱によって坩堝を発熱させる場合には、白金の融点に近いため、白金坩堝は使用せず、より融点の高いイリジウム坩堝を使用するのが好ましい。但し、溶融温度域に限定するものではない。
加熱溶融は、酸素雰囲気(大気中含む)、無酸素雰囲気(真空雰囲気および不活性ガス雰囲気含む)のいずれの雰囲気で行なってもよいが、予備焼成と同じ理由で窒素雰囲気が好ましい。
溶融液を冷却固化させて単結晶を得る方法は、チョクラルスキー法やブリッジマン法、
徐冷法などの周知の方法を採用することができる。
チョクラルスキー法は、坩堝内の溶融液面に上から種結晶を接触させ、回転しながらゆっくりと引上げ、種結晶に引き続いて所定量の結晶が育ったら、液面から切り離し、ゆっくり室温まで冷却する方法である。
他方、ブリッジマン法や徐冷法は、坩堝の端面からゆっくりと固化させ、固化が終わったら冷却する方法である。
いずれの方法も、溶融液に種結晶の少なくとも一部を浸漬し、種結晶を浸漬した溶融液を冷却固化させることにより、種結晶の所定の結晶面に沿って結晶を育成して単結晶インゴットを得ることができる。
切断工程は公知の方法を採用して行なえばよい。
(用語の解説)
本発明において「シンチレータ」とは、γ線やX線などの放射線を吸収し、可視光線又は可視光線に近い波長(光の波長域は近紫外〜近赤外にまで広がっていてもよい)の電磁波を放射する物質、並びに、そのような機能を備えた放射線検出器の構成部材を意味するものである。
また、本明細書において「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、本明細書において、「主成分」或いは「主たる相」とは、その成分或いは相の機能が影響する割合で含有される成分であり、その成分の機能を妨げない範囲で他の成分或いは他の相を含むことを許容する意を包含するものである。「主成分」或いは「主たる相」の含有割合は特に制限されるものではなく、「主成分」或いは「主たる相」の機能にもよるが、20質量%以上、特に30質量%以上、中でも特に50質量%以上、さらに80質量%以上(100%を含む)であるのが好ましい。
さらにまた、本明細書において、「希土類元素に属する元素」とは、3族元素のうち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuを示す。
以下、本発明に関する実験並びに実施例について説明する。但し、本発明は以下に説明する実験並びに実施例に限定されるものではない。
(実験1)
次のようにして、組成式:Lu0.796Sc0.199Ce0.005BO3で表される希土類硼酸塩を作製した。
はじめに、原料として、日本イットリウム製4NのLu23を25.34g、同社製4NのSc23を2.20g、同社製4NのCeO2を0.14g、高純度化学研究所製4NのB23を5.85gそれぞれ秤量した。B23は焼成中に蒸発しやすいので、化学量論から算出される比率よりモル比で5%多めに秤量した。
秤量した原料をメノウ乳鉢に入れ、30分間混合した後、白金坩堝に移し、白金の蓋を軽くかぶせた。窒素雰囲気中、1500℃まで200℃/時間で昇温し、24時間保持して焼成した。その後、200℃/時間で室温に戻して焼成物を取り出し、メノウ乳鉢で30分粉砕した。
このようにして得た希土類硼酸塩の粉体のXRD、フォトルミネセンス及びDTAを次のように測定した。
XRD測定は、測定装置としてマックサイエンスMXP18を使用し、線源にはCuターゲットを用い、2θが5度から80度の範囲でXRDパターンを得た。
得られたパターンを同定したところ、LuBO3のCalcite相(JCPDS13-0477)と同じ構造を持つことがわかった。(図1:XRD測定結果)
フォトルミネセンス測定は、日立分光蛍光光度計F4500を用いて実施した。
励起波長及び蛍光強度に応じて、励起光の検出を抑えるためのフィルタや、蛍光強度のレンジを適切に保つためのフィルタを使用した。
結果、励起波長333nmにおいて、370nm付近に最大強度示す発光を確認した。
(図2:フォトルミネセンス測定結果)
熱分析は、SEIKO EXSTAR6000 TG/DTAを用いた。
30mgのサンプルを白金製の容器に入れ、最高到達温度の1400℃まで昇温速度+20℃/分で昇温し、その後、降温速度−20℃/分で100℃付近まで降温してDTAを測定した。
結果、室温から1400℃まで相転移は確認されなかった。(図3:DTA測定結果)
さらに、1400℃から融点までの相転移の有無を確認する為、高温で使用可能な簡易熱分析装置を作製した。簡単に説明すると、高温焼成可能な焼成炉に、サンプルを満たしたJIS10ccの白金坩堝を入れ、その坩堝の中にPR20−40熱電対を差し込んでおく。焼成炉を1700℃付近まで昇温してサンプルを溶かし、冷却して固める過程の熱電対の出力を記録する。相転移のような急激な熱の出入りがある場合、ピークとして検出できる。
このような簡易熱分析装置を用いて1400℃から1700℃までの相転移の有無を調べたところ、1400℃から融点1660℃の範囲において相転移は認められなかった。(図4:高温熱分析結果)
以上の結果から、組成式:Lu0.796Sc0.199Ce0.005BO3で表される希土類硼酸塩は室温から融点に至るまで相転移を持たないことがわかった。これより、Sc添加によって融液からの単結晶育成が可能であることがわかった。
(実験2)
実験1と同様に、組成式:(Lu1-xScx0.995Ce0.005BO3(x=1、0.75、0.5、0.25、0.05、0.03、0.02又は0.01)で表される希土類硼酸塩を作製した。
得られた希土類硼酸塩の粉体について、実験1と同様にしてXRD、DTAおよびをフォトルミネセンスを測定し、XRD及びDTAの測定結果は表1に示し、フォトルミネセンスの測定結果は表2に示した。
Figure 2009046598
Figure 2009046598
XRD測定結果より、x=0.02では、Calcite相を主たる相として微量のVaterite相(JCPDS13-0481)を含むこと、また、x=0.01では、Calcite相とVatirite相の混合物となっていることがわかった。
また、Sc添加量xの増加に伴い、発光波長が長波長側にシフトすることがわかった。なお、x=0.01については、主たる相が異なる(Vatirite相)。そのため発光波長の比較を行わなかった。
DTA測定結果より、x=1〜0.02の範囲では、室温から1400℃までの範囲で相転移に起因するピークは確認されなかった。
以上の結果より、xが0.02≦x<1である組成式:(Lu1-xScx0.995Ce0.005BO3で表される希土類硼酸塩は、室温から融点まで相転移を持たないことがわかった。
(実験3)
Scの添加効果と比較するため、Sc以外の希土類元素であるGdを添加して組成式:(Lu1-xGdx0.995Ce0.005BO3(但し、x=1、0.75、0.5又は0.25)
で表される希土類硼酸塩を作製した。
例えばx=0.25の場合、日本イットリウム製4NのLu23を23.76g、同社製4NのGd23を7.21g、同社製4NのCeO2を0.14g、高純度化学研究所製4NのB23を5.85gそれぞれ秤量した。但し、B23は焼成中に蒸発しやすいので、化学量論よりモル比で5%多めに秤量した。
秤量した原料をメノウ乳鉢に入れ、30分間混合した後、白金坩堝に移し、白金の蓋を軽くかぶせた。窒素雰囲気中、1500℃まで200℃/時間で昇温し24時間保持して焼成した。その後、200℃/時間で室温に戻して焼成物を取り出し、メノウ乳鉢で30分粉砕した。
このようにして得た希土類硼酸塩の粉体のXRD、DTAを測定し、結果を表3にまとめた。
XRD測定は、測定装置としてマックサイエンスMXP18を使用し、線源にはCuターゲットを用い、2θが5度から80度の範囲でXRDパターンを得た。
得られたパターンを同定したところ、LuBO3のVaterite相と同じ構造を持つことがわかった。
熱分析は、SEIKO EXSTAR6000 TG/DTAを用いて実施した。
30mgのサンプルを白金製の容器に入れ、最高到達温度の1400℃まで昇温速度+20℃/分で昇温し、その後、降温速度−20℃/分で100℃付近まで降温してDTAを測定した。
その結果、室温から1400℃までにおいて2つの相転移があることを確認した。
Figure 2009046598
以上の結果より、(Lu1-xGdx0.995Ce0.005BO3(x=1、0.75、0.5又は0.25)で表される希土類硼酸塩は、相転移のため融液からの単結晶育成が困難であることがわかった。
(実験4)
実験1と同様に、組成式:Lu0.89551 0.0995Ce0.005BO3 (M1はAl、Ga、Inの中の1種)で表される希土類硼酸塩を作製した。
実験1と同様にして、希土類硼酸塩の粉体のXRDを測定した。
XRD測定には、測定装置としてマックサイエンスMXP18を使用し、線源にはCuターゲットを用い、2θが5度から80度の範囲でXRDパターンを得た。
得られたパターンを同定したところ、Al添加ではVaterite相を主たる相としてわずかにCalcite相がみられた。Ga添加ではCalcite相を主たる相としてわずかにVaterite相がみられた。In添加ではCalcite相の単相であった。(表4)
Figure 2009046598
実験1と同様の条件でGa添加のサンプルについて熱分析を行った。
30mgのサンプルを白金製の容器に入れ、最高到達温度の1400℃まで昇温速度+20℃/分で昇温し、その後、降温速度−20℃/分で100℃付近まで降温してDTAを測定した。
その結果、100℃から200℃にかけて脱水による吸熱ピークが見られたが、室温から1400℃までで相転移は確認されなかった。(図5:DTA測定結果)
以上の結果から、組成式:Lu0.89551 0.0995Ce0.005BO3 (M1はAl、Ga、Inの中の1種)で表される希土類硼酸塩は、M1がGa又はInの場合、Scと同様に相転移を抑制する効果を発揮する可能性があることがわかった。
また、それらの元素を組み合わせることも考えられる。
(実験5)
実験1と同様に、組成式:Lu0.995Ce0.005BO3で表される希土類硼酸塩を作製した。得られた希土類硼酸塩の粉体のXRD、フォトルミネセンス及びDTAを測定した。
XRD測定は、測定装置としてマックサイエンスMXP18を使用し、線源にはCuターゲットを用い、2θが5度から80度の範囲でXRDパターンを得た。
得られたパターンを同定したところ、LuBO3と同様のVaterite相を持つことがわかった。(図6:XRD測定結果)
フォトルミネセンス測定は日立分光蛍光光度計F4500を用いて実施した。励起波長及び蛍光強度に応じて、励起光の検出を抑えるためのフィルタや、蛍光強度のレンジを適切に保つためのフィルタを使用した。
結果、励起波長363nmにおいて、394nm、419nm付近に最大強度示す発光を確認した。(図7:フォトルミネセンス測定結果)
熱分析はSEIKO EXSTAR6000 TG/DTAを用いて実施した。
30mgのサンプルを白金製の容器に入れ、最高到達温度の1400℃まで昇温速度+20℃/分で昇温し、その後、降温速度−20℃/分で100℃付近まで降温してDTAを測定した。
結果、昇温過程で1030℃、降温過程で530℃付近に相転移が確認された。(図8:DTA測定結果)
以上の結果より、組成式:Lu0.995Ce0.005BO3で表される希土類硼酸塩は相転移を持つため、融液からの単結晶育成が極めて困難であることがわかった。
(実験6)
次のようにして、組成式:Lu0.796Sc0.199Ce0.005BO3で表される希土類硼酸塩の単結晶を作製した。
先ずは、原料として、日本イットリウム製4NのLu23を142.53g、同社製4NのSc23を12.35g、同社製4NのCeO2を0.78g、高純度化学研究所製4NのB23を43.86gそれぞれ秤量した。B23は結晶育成中常に蒸発し続けるので、化学量論よりモル比で40%過剰に秤量した。
秤量した原料を全てポリ容器に入れ、蓋をした後、V型混合機を用いて12時間混合した。
混合した原料を白金製の坩堝に移し、窒素雰囲気中、1000℃まで200℃/時間で昇温し24時間保持して予備焼成した。その後、200℃/時間で室温まで冷却し、予備焼成済原料を取り出した。
この時、予備焼成済みの原料は完全に反応を終えて、LuBO3のCalcite構造と同じ構造となっていることをエックス線粉末回折(XRD)測定により確認した。
取り出した予備焼成済原料をビニール製チャック袋に封入し、軽く叩きながらサラサラになるまで粉砕した。
次に、原料を専用のゴム袋に封入し、冷間等方圧加圧装置(CIP)を用いて2t/cm2の圧力で2分間圧縮して圧縮体原料とした。
この圧縮体原料を、直径40mmφ、高さ35mmのIr坩堝に入れ、結晶育成装置にセットした。この結晶育成装置は、チョクラルスキー法による育成を行なうための装置である。
結晶育成は、窒素雰囲気中において、希土類硼酸塩を融点以上に加熱して原料を溶融し、融液のまま保持しながら行なった。Ir線を融液につけ、回転速度:15rpm、5mm/時間の速度で引き上げて育成した。結晶の長さが30mm程度に達したところで育成を終了し、充分に時間をかけて冷却した。
また、得られた結晶の一部を粉砕し、XRD測定を行なった(図9)。
得られた結晶の育成方向に沿って切断し、断面を露出させた。この断面について、背面反射ラウエ法による結晶性の評価を試みた。
背面反射ラウエ法は、X線源のMoターゲットより30kV−15mAで放射されたX線を1mmφのコリメータにより収束してサンプルに照射し、反射X線をフィルムに撮影する方法で行なった。この際、フィルムとサンプルの距離は50mm、露出時間3分、フィルムにはポラロイド社製Type57を用いた。
結晶断面を2mm×2mmで区切り、結晶方位の分布を調べた結果、結晶育成の後半の部分で、育成方向に20mm−幅6mmの単結晶が成長していることが確認された。
よって、以上の実験により、組成式:Lu0.796Sc0.199Ce0.005BO3で表される希土類硼酸塩の単結晶が育成されたことが確認された。
(実施例1)
組成式Lu0.8811Sc0.1089Ce0.01BO3で表される希土類硼酸塩に炭酸カルシウム(CaCO3)を添加した原料を用いて単結晶を作製した。
先ずは、日本イットリウム製4NのLu23を140.25g、同社製4NのSc23を6.01g、同社製4NのCeO2を1.377g、高純度化学研究所製5NのB23を29.8gを秤量し、混合した。この際、B23は結晶育成中常に蒸発し続けるので、モル比で7%程度過剰に秤量した。この混合原料に0.05gのCaCO3を秤量して添加した。
このように混合した原料を全てポリ容器に入れて蓋をした後、V型混合機を用いて12時間混合した。得られて混合原料を白金製のルツボに移し、窒素雰囲気中で、1000℃まで200℃/時間で昇温し、1000℃を24時間保持して仮焼した。その後、200℃/時間で降温して室温に戻して仮焼済みの原料を取り出した。この時、仮焼きした原料が完全に反応を終えて、LuBO3のCalcite構造と同じ構造になっていることをエックス線粉末回折(XRD)測定により確認した。
仮焼済みの原料を専用のゴム袋に封入し、冷間等方圧加圧装置(通称CIP)を用いて2t/cm2の圧力で2分間圧縮して圧粉体原料とした。この圧粉体原料を、直径40mm、高さ35mmのIrルツボに入れ、結晶育成装置にセットした。この際に用いた結晶育成装置は、チョクラルスキー法による育成を行うためのものである。
結晶育成は、アルゴンガス雰囲気中において、希土類硼酸塩を融点以上に加熱して原料を溶解し、融液のまま保持しながら行った。シード結晶を融液に付け、回転速度40rpm、0.5mm/時間の速度で引き上げて育成した。結晶の長さが30mm程度になったところで育成を終了し、十分に時間をかけて冷却した。
得られた結晶は無色透明であった。得られた結晶の一部を粉砕し、XRD測定を行ったところ、LuBO3のCalcite相(JCPDS13-0477)と同じ構造を持つことを確認した。
また、結晶中のCa濃度をグロー放電質量分析法(GD−MS)により分析したところ、12ppmであった。
さらにまた、育成した結晶から2.5mm×5mm×15mmのサンプル(角柱)を切り出し、蛍光寿命を測定した。この際、ガンマ線源として137Csを用いた。ガンマ線励起に伴うサンプルからの蛍光を、光電子増倍管によって信号に変換し、その信号強度の時間変化をオシロスコープにより測定した。ガンマ線励起後の蛍光強度の時間変化は(式1)のように表される。
(式1)
I=A0+Aexp(-T/τ)
(式1)において、Iは蛍光強度、A0及びAは定数、Tは経過時間である。τは蛍光強度が1/eに減少する時間に対応する定数であり、減衰時間と呼ばれている。複数の減衰時間からなる蛍光体の場合、蛍光強度は(式2)のように表すことができる。
(式2)において、係数A1、A2・・・Anの大きさから、各減衰時間τ1、τ2・・・τnの成分比を求めることができる。
(式2)
I=A0+A1exp(-T/τ1)+ A2exp(-T/τ2)+・・・+Anexp(-T/τn)
蛍光寿命測定結果を(図10)に示す。図10の結果を(式2)に当てはめ、減衰時間τと成分比を導いた。
この結果、実施例1で得られた結晶の減衰時間τは、主に29ナノ秒、230ナノ秒の2成分からなり、これ以外の成分は無視できるほど小さいことがわかった。
また、A1、A2から求めたそれぞれの成分比は、29ナノ秒成分が92%、230ナノ秒成分が8%%であった。両成分を合わせると、蛍光強度が最大強度の1/eに減衰する時間は33ナノ秒、1/e2に減衰する時間は76ナノ秒となった。
蛍光出力については、Ca未添加の結晶と同等の性能であることを確認した。
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同じ条件でCaの濃度のみが異なる結晶を育成し(下記表5参照)、蛍光寿命を測定した。蛍光寿命測定結果を図11に示す。また、結晶中のCa濃度をグロー放電質量分析法(GD−MS)により分析したところ、10ppmであった。
(比較例1)
組成式Lu0.8811Sc0.1089Ce0.01BO3で表される希土類硼酸塩原料を用いて単結晶を作製した。
先ず、日本イットリウム製4NのLu23を140.25g、同社製4NのSc23を6.01g、同社製4NのCeO2を1.377g、高純度化学研究所製5NのB23を29.8g秤量し、混合した。この際、B23は結晶育成中常に蒸発し続けるので、モル比で7%程度過剰に秤量した。そして、実施例1と同様に結晶を育成した。
得られた結晶は無色透明であった。得られた結晶の一部を粉砕し、XRD測定を行ったところ、LuBO3のCalcite相(JCPDS13-0477)と同じ構造を持つことを確認した。
また、結晶中のCa濃度をグロー放電質量分析法(GD−MS)により分析したところ、0.5ppm以下(本分析における検出限界以下)であった。
次に、結晶から2.5mm×5mm×15mmのサンプル(角柱)を切り出し、実施例1と同様に蛍光寿命を測定した。蛍光寿命測定結果を(図12)に示す。図12の結果について、実施例と同様に、減衰時間τと成分比を導いた。
減衰時間は33ナノ秒、310ナノ秒の2成分からなることがわかった。A1、A2から求めたそれぞれの成分比は、33ナノ秒成分が70%、310ナノ秒成分が30%であった。両成分を合わせると、蛍光強度が最大強度の1/eに減衰する時間は64ナノ秒、1/e2に減衰する時間は324ナノ秒となった。
(結果)
実施例2及び比較例1の蛍光寿命から、実施例1と同様に減衰時間τと成分比を導いた。結果を表5に示す
Figure 2009046598
実施例1−2と比較例1とを比較すると、Ca添加により30ナノ秒程度の速い成分比を増やすことが可能となり、その結果、測定される蛍光強度が速やかに減衰することがわかった。すなわち、組成式:(Lu1-x1 x)1-y2 yBO3(但し、0.02≦x<1、0.0001≦y≦0.1、M1:Sc、Ga及びInからなる群から選ばれる一種又二種以上の組合わせからなる元素、M2:発光元素)で表される希土類硼酸塩にCaをド−プすることにより、シンチレータとしての発光寿命を短縮することができることがわかった。
さらにまた、表5の結果より、Caをドープしない場合では、Ca濃度は0.5ppm以下で効果がなく、10ppm以上ドープした場合は、実施例1と同様に30ナノ秒程度の速い成分の成分比を増す効果があることがわかった。従って、Ca濃度は10ppm以上であればよいと考えられる。また、Ca濃度の上限については、結晶中に固溶する範囲であればよいと考えられるが、10ppm程度の濃度で十分に効果を発揮しているため、過剰に添加する必要はなく、100ppm以下でよいと考えられる。
なお、Ce発光イオンの濃度や結晶の組成が異なる場合であっても、実施例のようにCa濃度と蛍光寿命の関係を調べることで、容易にCaの濃度範囲を決定することができる。
実験1で得られたLu0.796Sc0.199Ce0.005BO3のXRD測定結果(XRDパターン)を示す。 実験1で得られたLu0.796Sc0.199Ce0.005BO3のフォトルミネセンス測定結果を結果を示す。 実験1で得られたLu0.796Sc0.199Ce0.005BO3のDTA測定結果を示す。 実験1で得られたLu0.796Sc0.199Ce0.005BO3の高温熱分析結果を示す。 実験4で得られたLu0.8955Ga 0.0995Ce0.005BO3のDTA測定結果を示す。 実験5で得られたLu0.995Ce0.005BO3のXRDパターンを示す。 実験5で得られたLu0.995Ce0.005BO3のフォトルミネセンス測定結果を示す。 実験5で得られたLu0.995Ce0.005BO3のDTA測定結果を示す。 実験6で得られた結晶のXRD測定結果(XRDパターン)を示す。 実施例1で得られた結晶の蛍光寿命測定結果を示したグラフである。 実施例2で得られた結晶の蛍光寿命測定結果を示したグラフである。 比較例1で得られた結晶の蛍光寿命測定結果を示したグラフである。

Claims (5)

  1. Lu(ルテチウム)を主成分とする希土類硼酸塩に発光元素とCa(カルシウム)をド−プしてなる組成を備えたシンチレータ用単結晶材料。
  2. 組成式:(Lu1-x1 x)1-y2 yBO3(但し、0.02≦x<1、0.0001≦y≦0.1、M1:Sc、Ga及びInからなる群から選ばれる一種又二種以上の組合わせからなる元素、M2:発光元素)で表される希土類硼酸塩にCaをド−プしてなるシンチレータ用単結晶材料。
  3. カルサイト(Calcite)相の単相単結晶からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のシンチレータ用単結晶材料。
  4. 上記組成式におけるM2が、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Cr、Bi及びTlからなる群から選ばれる一種又二種以上の組合わせからなる元素であることを特徴とする請求項2又は3に記載のシンチレータ用単結晶材料。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載のシンチレータ用単結晶材料をシンチレータとして用いてなる放射線検出器。
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