JP2016054220A - 半導体装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本明細書は、絶縁板とパワーカードの間にグリスが塗布された半導体装置に関し、絶縁板とパワーカードの積層体に加える荷重を高めることなく、グリス抜けを抑制する技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する半導体装置2は、パワーカード10と冷却器3が絶縁板6を挟んで積層されている。パワーカード10は、半導体素子を封止している樹脂製の筐体13と、絶縁板6と対向する筐体表面に露出しているとともに筐体内で半導体素子と導通している放熱板16a、16b、17を備えている。放熱板16a、16b、17は、放熱板の周囲の筐体表面から突出している。そして、放熱板を含むパワーカードの表面と絶縁板との間にグリスが塗布されている。上記の構成により、絶縁板と放熱板に挟まれたグリスは強く圧縮される。その結果、グリスが移動し難くなり、グリス抜けが抑制される。
【選択図】図2

Description

本発明は、半導体装置に関する。特に、半導体素子を収容したパワーカードと冷却器が絶縁板を挟んで積層されているとともに積層方向に荷重が加えられている積層タイプの半導体装置に関する。
上記した積層タイプの半導体装置は、半導体素子に対する冷却性能が高く、例えば電気自動車の駆動系のインバータに用いられる。積層タイプの半導体装置の一例が特許文献1に開示されている。
特許文献1に例示されている半導体装置の構造を概説する。パワーカードの筐体は樹脂で作られている。半導体素子はその筐体に封止されている。半導体素子は薄いチップであり、その一方の平面にエミッタ電極が露出しており他方の平面にコレクタ電極が露出している。パワーカードの表面には金属製(導電性)の放熱板が露出しており、放熱板の裏面(パワーカードに対向する面)は、直接に、あるいは、導電性と伝熱性の高いスペーサを介して筐体内部で半導体素子の電極と接続している。即ち、放熱板は、半導体素子の電極を筐体外部のデバイスと導通させる電極端子を兼ねている。半導体素子の電極に接している電極端子には半導体素子内部の熱が良く伝わる。その電極端子を伝熱経路としても用いることで、筐体に封止された半導体素子に対する冷却効率を高めている。ただし、冷却器はアルミニウムなどの導電性の金属で作られることが多いので、半導体素子と導通している放熱板と冷却器の間に絶縁板が必要となる。
特開2014−033125号公報
上記した積層タイプの半導体装置では、絶縁板と放熱板の間に生じる微細な空隙を空気よりも伝熱性の高い物質で満たして伝熱効率を高めるべく、両者の間にグリスが塗布されることがある。半導体装置は積層方向に荷重を受けているのでグリスは薄く引き伸ばされる。グリスの層の厚みは薄い方が放熱板から絶縁板への伝熱効率が向上する。パワーカード内部の半導体素子が発熱を繰り返す毎に、絶縁板と放熱板の間のグリスは膨張と収縮を繰り返すが、長期間使用しているうちに、グリスの収縮時にグリスが充分に放熱板の中心まで戻らず、外部から空気が侵入してしまうのである。この現象はブリードアウトと呼ばれている。なお、以下では、半導体素子が発熱を繰り返すことによってグリスが加熱と冷却を繰り返すことを熱負荷サイクルと称する。また、グリスの層に空気が混在することを「グリスが流出する」あるいは「グリスが抜ける」と称することがある。グリス抜けを抑制するには、グリスに高い圧力を付与するのがよい。しかしながら、パワーカードと冷却器の積層方向に加える荷重を増加させると、冷却器や、荷重を加える側の部品の強度を増さねばならない。
本明細書が開示する技術は、上記の課題に鑑みて創作された。本明細書は、絶縁板とパワーカードの間にグリスが塗布された半導体装置に関し、絶縁板とパワーカードの積層体に加える荷重を高めることなく、グリス抜けを抑制する技術を提供する。技術を提供する。
本明細書が開示する半導体装置は、半導体素子を収容したパワーカードと冷却器が絶縁板を挟んで積層されているとともに積層方向に荷重が加えられている。そのパワーカードは、半導体素子を封止している樹脂製の筐体と、絶縁板と対向する筐体表面に露出しているとともに筐体内で半導体素子と導通している放熱板を備えている。放熱板は、放熱板の周囲の筐体表面から突出しており、その放熱板を含むパワーカードの表面と絶縁板との間にグリスが塗布されている。
放熱板がその周囲の筐体表面と面一の従来の半導体装置と比較して、放熱板を突出させた半導体装置は、積層方向に加えられる荷重に対して放熱板が受ける圧力が高まる。即ち、放熱板上のグリスに加わる圧力が高まる。グリスに加わる圧力が高まることで、絶縁板と放熱板に挟まれたグリスは強く圧縮される。その結果、グリスが移動し難くなり、グリス抜けが抑制される。本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
実施例の半導体装置の模式的な斜視図である。 図1の座標系におけるXY平面でカットした半導体装置の断面図である。 図1の座標系におけるXZ平面でカットした半導体装置の断面図である。 変形例の半導体装置の平面図である。 XY平面でカットした変形例の半導体装置の断面図である。
図面を参照して実施例の半導体装置を説明する。図1は、半導体装置2の模式的な斜視図である。半導体装置2は、複数のパワーカード10と複数の冷却器3が積層されたユニットである。なお、図1では、一つのパワーカードだけに符号10を付し、他のパワーカードには符号を省略している。同様に一つの冷却器だけに符号3を付し、他の冷却器には符号を省略している。また、半導体装置2の全体が見えるように、半導体装置2を収容するケース31は仮想線で描いてある。
パワーカード10には4個の半導体素子が収容されている。4個の半導体素子は、具体的には、2個のトランジスタTa、Tbと、2個のダイオードDa、Dbである。パワーカード10の内部構造は後に詳しく説明する。冷却器3を通る冷媒により、半導体素子が冷却される。冷媒は液体であり、典型的には水である。
パワーカード10と冷却器3は、共に平板型であり、複数の側面のうち最大面積の平坦面が対向するように積層されている。パワーカード10と冷却器3は交互に積層されており、ユニットの積層方向の両端は冷却器が位置している。また、パワーカード10と冷却器3の間には絶縁板6が挟まれている。各パワーカード10は、その両面の夫々に絶縁板6を挟んで冷却器3が積層されている。
半導体装置2はケース31に収容される際、積層方向の一端側に板バネ32が挿入される。その板バネ32により、半導体装置2は、積層方向の両側から荷重を受ける。その荷重は、例えば3[kN]である。後述するように絶縁板6とパワーカード10の間にはグリスが塗布されるが、3[kN]という高い荷重は、グリスの層を薄く引き延ばし、パワーカード10から冷却器3への伝熱効率が高められる。
まず冷却器3について説明し、その後にパワーカード10について説明する。各冷却器3には、積層方向(図中X軸方向)からみて、パワーカード10の両側に連結管5a、5bが接続されている。各冷却器3は内部が空洞であり、連結管5a、5bは、隣接する冷却器3の内部の空洞を連通する。積層方向の一端の冷却器3には、冷媒供給管4aと冷媒排出管4bが連結されている。冷媒供給管4aと複数の連結管5aは、積層方向から見て重なるように配置されている。同様に、冷媒排出管4bと他方の連結管5bは、積層方向から見て重なるように配置されている。冷媒供給管4aと複数の連結管5aを通じて不図示の冷媒タンクから各冷却器3へ冷媒が送られる。各冷却器3を通過する間に冷媒は隣接するパワーカード10の熱を吸収する。各冷却器3を通過した冷媒は、連結管5bと冷媒排出管4bを通じて不図示の冷媒タンクへと戻される。
パワーカード10の外観を説明する。パワーカード10の内部構造については、図2、図3を参照して後述する。パワーカード10の積層方向を向く一方の平坦面10aには、放熱板16a、16bが露出している。平坦面10aとは反対側の平坦面は、図1では隠れて見えないが、別の放熱板17が露出している。パワーカード10の上面(図中Z軸の正方向)からは3本の電極端子7a、7b、7cが伸びており、下面(図中Z軸方向の負方向)からは制御端子29が伸びている。
ここからは、図1とともに図2及び図3を参照してパワーカード10を詳しく説明する。図2は、図1のパワーカード10を図中の座標系のXY面に平行な平面であってトランジスタTaとTbを横切る平面でカットした断面図である。図3は、図1のパワーカード10を図中の座標系のXZ面に平行な平面でカットした断面図であってトランジスタTaとダイオードDaを横切る平面でカットした断面図である。別言すれば、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図であり、図2は図3のII−II線に沿った断面図である。
4個の半導体素子(トランジスタTa、Tb、ダイオードDa、Db)は、樹脂製の筐体13に封止されている。いずれの半導体素子も平坦なチップであり、その平坦面が筐体13の平坦面(法線が図中のX軸方向を向く面)と平行になるように配置されている。トランジスタTa(Tb)のチップの一方の平坦面にはコレクタ電極が露出しており、他方の平坦面にはエミッタ電極が露出している。トランジスタTa(Tb)のゲートは、チップの一方の平坦面の端に位置する。ダイオードDa、Dbも平坦なチップであり、一方の平坦面にアノード電極が露出しており、他方の平坦面にカソード電極が露出している。
トランジスタTaの一方の平坦面の電極はハンダ15により放熱板16aの裏面に接合している。トランジスタTaの他方の平坦面の電極は、ハンダ15とスペーサ14を介して放熱板17の裏面に接合している。トランジスタTaの他方の平坦面の端にはゲートが位置しており、そのゲートはワイヤを介して制御端子29に接続されている。図3では、ワイヤは破線で描いてある。トランジスタTbも同様の構造を有している。
図3によく示されているように、放熱板16aは、電極端子7aの一部である。電極端子7aは、一方の面が筐体13から露出しており、他方の面が筐体内部でハンダ15を介してトランジスタTaの一方の平坦面の電極と接続している。筐体内部で放熱板16aの側縁から延設部が伸びており、その延設部は筐体13の内部を通り、筐体13の上面(図中の座標系のZ軸正方向を向く面)から外部へ伸びている。即ち、トランジスタTaの電極を外部の他のデバイスと接続するための電極端子7aにおいて、筐体13の平坦面に露出している部位が放熱板16aに相当する。電極端子7aはトランジスタTaの電極と接しているので、トランジスタTaの内部の熱を伝えやすい。その電極端子7aの一部が放熱板16aとして筐体13から露出しているので、放熱板16aにはトランジスタTaの内部の熱がよく伝わる。一方、冷却器3はアルミニウム(導電性の金属)で作られているので、放熱板16aと絶縁する必要があり、それゆえ、冷却器3とパワーカード10(放熱板16a)との間に絶縁板6を挟んでいる。絶縁板6は、薄くても絶縁性が高く、導電性も良いセラミックスで作られている。放熱板16a(電極端子7a)は、導電性と伝熱性に優れた銅で作られている。
ダイオードDaの一方の平坦面に露出している電極も、トランジスタTaと同様に、ハンダ15を介して放熱板16aの裏面に接続している。トランジスタTaの他方の面の電極はハンダ15とスペーサ14を介して放熱板17の裏面(筐体に対向する面)に接続している。ダイオードDaの他方の面の電極も、ハンダ15とスペーサ14を介して放熱板17の裏面に接続している。即ち、トランジスタTaとダイオードDaは、放熱板16aと17の間で並列に接続されている。スペーサ14も、導電性と伝熱性に優れた銅で作られている。放熱板17のおもて面(筐体を向く面の反対側)は筐体13から露出しており、絶縁体6をはさんで冷却器3と対向している。
トランジスタTbとダイオードDbの組も、トランジスタTaとダイオードDaの組と同様の構造を有している。トランジスタTbのコレクタとダイオードDbのカソードは電極端子7bに接続している。電極端子7bの一方の面が露出しており、他方の面は筐体13に密着しており、その他方の面が、筐体内で、ハンダ15を介してトランジスタTbの電極と接続している。電極端子7bにおいて、筐体13の平坦面から露出して部位が放熱板16bに相当する。また、トランジスタTaのコレクタとトランジスタTbのエミッタがともに電極端子7c(放熱板17)に接続している。このことは2個のトランジスタは筐体内で直列に接続されることを意味する。
放熱板16a、16bは、平板型のパワーカード10の最大面積の平坦面(平板型のパワーカード筐体の複数側面のうち、最大面積の平坦面)の一方に露出しており、放熱板17は、パワーカード10の最大面積の平坦面の他方に露出している。図2、図3によく示されているように、放熱板16a、16b、17は、その板厚方向の半分(絶縁板6とは反対側)が筐体13に埋設されており、残り半分(絶縁板6と対向する側)が筐体表面から突出している。図2と図3において、符号W1が示す長さが、筐体13から盛り上がっている放熱板16aの突出量(突出高さ)を表している。突出量W1は、概ね100−300ミクロンである。放熱板16bと放熱板17も同様に100−300ミクロン程度、周囲の筐体表面から突出している。
図2、及び、図3によく示されているように、絶縁板6とパワーカード10との間にはグリス9が塗布されている。絶縁板6と冷却器3の間にもグリス9が塗布されている。そして、先に述べたように、放熱板16aがその周囲の筐体表面から突出しているので、絶縁板6と放熱板16aとの間のグリスの層の厚み(図中の符号W2が示す厚み)は、放熱板の周囲の筐体表面と絶縁板6との間のグリスの層の厚み(図中の符号W3が示す厚み)よりも薄くなる。放熱板16b、17についても同様である。
グリス9は、絶縁板6とパワーカード10の間、及び、絶縁板6と冷却器3の間から微細な気泡を排除し、パワーカード10から絶縁板6への伝熱効率、及び、絶縁板6から冷却器3への伝熱効率を高める。先に述べたように、半導体装置2はパワーカード10と冷却器3の積層方向に荷重を受けており、その荷重でグリスの層が薄く引き延ばされる。次に、グリスの層の厚みの相違による効果、即ち、放熱板16a、16b、17を周囲の筐体表面から突出させる効果を説明する。
まず、放熱板と筐体が面一である従来の半導体装置の課題を説明する。一般に、グリスの層が厚くなりすぎると伝熱効率が低下するため、積層方向から高い荷重を加えてグリスの層を薄くする。荷重が大きいほど、グリスの層を薄くできるが、荷重が大きいと、冷却器3や、荷重を加える部材の強度を高める必要がある。
以下、放熱板16aについて説明するが、他の放熱板16b、17についても同様の効果が得られる、放熱板16aを筐体表面から突出させることで、積層方向の荷重によって放熱板16aが受ける圧力が増加する。別言すれば、放熱板とその周囲の筐体表面が面一の従来構造と比較して、同じ荷重を加えたときに放熱板16aに加わる圧力が従来構造よりも高くなる。このことは、即ち、絶縁板6と放熱板16aとの間のグリスに高い圧力が加わることを意味する。グリスに加える圧力を高めることで、放熱板16aと絶縁板6の間でグリスが強く圧縮される。このことによって、グリスが動きにくくなり、グリス抜けが抑制される。即ち、半導体装置2は、積層方向に加える荷重を高めることなく、グリス抜けを抑制することができる。
放熱板16aの上のグリスに加えられる圧力が高まると、グリスの層が薄くなる。グリスの層が薄くなることは、放熱板16aから冷却器3へ熱が移動するときの熱抵抗が小さくなることを意味する。このことは、パワーカードを冷却する性能が高くなることを意味する。放熱板16aとその周囲の筐体表面から突出させることは、冷却性能を高めることにも貢献する。
放熱板16aとその周囲の筐体表面から突出させる構造は、他にも利点がある。放熱板16aの周囲ではグリスの層の厚みが大きい。この厚みの大きいグリスの層は、熱負荷サイクルの累積が増大してもブリードアウトを生じ難くする。これは、次の理由による。放熱板16aの上のグリスは放熱板16aが高温になると熱膨張により周囲へ膨らむ。放熱板16aの温度が下がると放熱板16aの上のグリスは収縮する。放熱板16aの上のグリスが熱膨張する際、積層方向からみたときに放熱板16aをリング状に囲んでいる厚みの大きいグリスの層も膨張する。放熱板16aの温度が下がり、グリスが収縮する際、放熱板16aをリング状に囲んでいるグリスの層は、厚みが大きいのでグリスが千切れ難い。厚みの大きいグリスの層は、積層方向から見て放熱板16aをリング状に囲んでいるので、そのグリスの層で千切れが発生しなければ、収縮するとそのリングは元の体積まで戻る。積層方向からみたときのリングの内側の面積が元の大きさまで戻るということは、厚みの大きいグリスの層がリングの内側の厚みの薄いグリスの層を元の大きさまで押し戻す。その結果、厚みの薄いグリスの層には空気が侵入し難くなる。
さらにまた、放熱板16aをリング状に囲んでいる厚みの大きいグリスの層は、積層方向からみて放熱板16aの周囲の筐体表面の全体にわたる。即ち、放熱板16aをリング状に囲むグリスの層は、厚みが大きく、しかも、積層方向からみたときの幅も広くて体積が大きい。厚みが大きく体積も大きいグリスの層は、熱負荷サイクルの累積数が増大し伸縮を繰り返しても千切れ難い。その結果、熱負荷サイクルの累積数が増大しても、ブリードアウトが生じ難くなる。放熱板16bと17でも同様である。
なお、放熱板16aがその周囲の筐体表面よりも突出していることで、これに対向する絶縁板6は僅かながら湾曲する。その結果、積層方向からみたときの放熱板16aの中心はその縁よりも絶縁板6との間の隙間が僅かながら大きくなる。放熱板16aの周囲ではグリスの層が薄く、伝熱効率が向上する。放熱板16aの中心では縁よりも僅かながらグリスの層が厚くなる。ブリードアウトは、積層方向から見て放熱板16aの中心で生じ易いので、絶縁板6がわずかながら撓むことは、ブリードアウトの低減に寄与する。放熱板16bと17でも同様である。
図4Aと図4Bを参照して変形例の半導体装置2aを説明する。図4Aは、半導体装置2aを積層方向からみた平面図である。ただし、図4Aではパワーカードの平面を描いており、絶縁板6は仮想線で描いてある。冷却器3は図示を省略している。図4Bは、図2と同様に、半導体装置2aをトランジスタTaとTbを通る断面でカットした断面図である。この変形例では、放熱板16a、16bの周囲に塗布されている第1グリス(図中、符号9aが示す範囲)の粘度が放熱板16a、16bに塗布されている第2グリス(図中、符号9bが示す範囲)の粘度よりも高い。逆にいえば、放熱板16a、16bの上に塗布されている第2グリス9bの粘度が、積層方向にみたときに第2グリス9bを囲んでいる第1グリス9aの粘度よりも低い。放熱板16a、16bと絶縁板6の間に粘度の低いグリスを採用することで、積層方向の荷重に対してグリスの層を薄くし易くする。他方、放熱板16a、16bの周囲には粘度の高いグリスを採用することで、熱負荷サイクルの累積に対してグリスの層をより一層千切れ難くする。即ち、放熱板16a、16bの周囲のグリスの経時劣化を抑えることができる。放熱板17についても、同様である。即ち、放熱板17の周囲に塗布されている第1グリス(図中、符号9aが示す範囲)の粘度が放熱板17に塗布されている第2グリス(図中、符号9bが示す範囲)の粘度よりも高くなっている。この変形例では、絶縁板6と冷却器3の間にも、第1グリスを塗布している。
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。図2−図4Bでは、理解を助けるために放熱板の厚み(及び突出量)とグリスの厚みを強調して描いた。先に述べたように、放熱板の筐体からの突出量(図の符号W1が示す厚み)は100−300ミクロン程度である。グリスの厚み(図の符号W2とW3が示す厚み)は、10−100ミクロン程度である。
従来の半導体装置に加えられ荷重と同じ荷重で放熱板が受ける圧力(グリスを圧縮する力)を高めることができるという実施例の技術の利点は、見方を変えると次のように説明できる。これまで、積層方向の荷重に対して絶縁板が変形しないように、放熱板の表面は筐体表面と面一とするのがよいとされていた。即ち、放熱板をその周囲から突出させると絶縁板が撓み易くなるという見方があった。しかしながら、放熱板をその周囲の筐体表面から突出させることで、荷重を主に受け持つ面積が放熱板だけとなり、放熱板が受ける圧力は従来と同じであっても全体に加える荷重は小さくて済むようになった。荷重が従来よりも小さくて済むので、放熱板をその周囲から突出させることで絶縁板に生じる撓みも抑制できる。さらに、絶縁板は僅かながら撓むが、その結果、積層方向からみたときの放熱板の中心は辺縁よりも絶縁板と放熱板の間の空間が大きくなる。放熱板の辺縁ではグリスの層が薄く伝熱性に優れ、放熱板の中心はグリスの厚みが僅かではあるが辺縁よりも厚くなり、ブリードアウトが生じ難くなる。絶縁板は、大きく撓むと破損の虞があるが、僅かな撓みはブリードアウト抑制に貢献する。
放熱板をその周囲の筐体表面から突出させることは、放熱板の表面とその周囲の筐体表面が面一であってその筐体表面に放熱板を囲む溝を設ける場合とは、効果が顕著に相違する。
第一の顕著な相違は次の通りである。溝を除く筐体表面と放熱板は面一である。それゆえ、溝では、放熱板に加わる圧力を高める効果が極めて小さい。
第二の顕著な相違は次のとおりである。溝を設けた場合、積層方向から見てリング状の溝の外側に厚みの薄いグリスの層が続く。熱膨張したグリスは溝の外側の厚みの薄い層へと拡がり、そこでは放熱板上と同様にブリードアウトが生じ易い。溝の外側でブリードアウトが生じると収縮時に溝に戻るグリスの量が減少する。その結果、収縮時に放熱板の中心へとグリスを押し戻す効果が減少する。これに対して実施例の半導体装置では、厚みの大きい層は、積層方向からみてグリスの層の全体の縁まで続いているので、上記した溝の場合のブリードアウト生じない。
第三の顕著な相違は次の通りである。溝を設けた場合、溝の外側では放熱板と筐体表面が対向する。それゆえ、絶縁板は、積層方向からみて放熱板の縁でグリスの層が薄く、放熱板の中心でグリスの層が厚くなるようには変形しない。放熱板を囲む溝では、上記した絶縁板の変形による効果が得られない。
実施例の半導体装置は、パワーカードの両面の夫々に、絶縁板を挟んで冷却器が対向していた。そして、パワーカードの両面の夫々に、放熱板が突出している。放熱板を突出させるのは、パワーカードのいずれか一方のみでもよい。また、実施例の半導体装置は複数のパワーカードを備えているが、全てのパワーカードの放熱板を突出させずともよい。特に発熱量の大きい半導体素子を収容したパワーカードのみ、放熱板を突出させてもよい。
図4Aと図4Bに示した変形例では、放熱板の周囲に塗布されている第1グリスの粘度が放熱板に塗布されている第2グリスの粘度よりも高い。グリスは粘性を有しているので、第1グリスと第2グリスの境界が、厳密に放熱板の縁と一致している必要はない。図4Aでは、第1グリス9aは、積層方向からみて放熱板16a、16bの周辺に僅かに重なっている。第2グリス9bが積層方向からみて放熱板16a、16bの周囲の筐体表面にわずかに重なっていてもよい。
図2と図3に示したように、冷却器3の内部は単純な空洞である。冷却器の内部空間には、絶縁体と接する側板の裏面に接するフィンを設けてもよい。
グリスの粘度は、「ちょう度」という指標で表されることがある。ちょう度は、85−475の数値範囲で表され、数値が大きいほど粘度が低い(流動性が高い)。放熱板と絶縁板の間に塗布する粘度が比較的に低いグリスの一例は、ちょう度=300程度のものである。また、放熱板の周囲に塗布する粘度が比較的に高いグリスの一例は、ちょう度=200程度のものである。SI単位系で表した場合、高い方の粘度は、例えば、800[Pa・s]である。低い方の粘度は、例えば、200[Pa・s]である。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
2、2a:半導体装置
3:冷却器
4a:冷媒供給管
4b:冷媒排出管
5a、5b:連結管
6:絶縁板
7a、7b、7c:電極端子
9、9a、9b:グリス
10:パワーカード
13:筐体
14:スペーサ
15:ハンダ
16a、16b、17:放熱板
29:制御端子
31:ケース
32:板バネ
Da、Db:ダイオード
Ta、Tb:トランジスタ

Claims (2)

  1. 半導体素子を収容したパワーカードと冷却器が絶縁板を挟んで積層されているとともに積層方向に荷重が加えられている半導体装置であり、
    前記パワーカードは、前記半導体素子を封止している樹脂製の筐体と、前記絶縁板と対向する筐体表面に露出しているとともに前記筐体内で前記半導体素子と導通している放熱板と、を備えており、
    前記放熱板は、前記放熱板の周囲の筐体表面から突出しており、
    前記放熱板を含む前記パワーカードの表面と前記絶縁板との間にグリスが塗布されている、
    ことを特徴とする半導体装置。
  2. 前記放熱板の周囲に塗布されている第1グリスの粘度が前記放熱板に塗布されている第2グリスの粘度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
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