JP2016050259A - 硬化性組成物、硬化膜、半導体素子及び表示素子 - Google Patents

硬化性組成物、硬化膜、半導体素子及び表示素子 Download PDF

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Abstract

【課題】塩基反応性化合物としてケイ素化合物を含み、貯蔵安定性及び硬化性に優れた硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物(A)と、アルコキシシリル基を有するケイ素化合物とを硬化性組成物に含有させる。
Figure 2016050259

(Rは1価の芳香族環基若しくは複素環基、Rは水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はRとRとが結合してR及びRが結合する窒素原子と共に環構造を形成する。Rは環に結合する水素原子が置換されていてもよい。Rは水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基、Rは1価の有機基、Xは酸素原子又は硫黄原子である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、硬化性組成物、硬化膜、半導体素子及び表示素子に関する。
硬化性組成物は、簡便な塗布プロセスによって硬化膜を大量かつ容易に形成可能であることから、液晶デバイスや半導体デバイス等の各種部品の材料として、あるいは塗料や接着剤等の材料として広く用いられている。このような硬化性組成物としては、従来、熱や光などの外部刺激によって塩基を発生する塩基発生剤と、塩基によって反応が促進される塩基反応性化合物とを含有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ウレア構造を有する塩基発生剤を含有するエポキシ系硬化性組成物が開示されている。また、塩基反応性化合物としてケイ素系化合物を含む硬化性組成物についても知られている。
また従来、塩基発生剤としては、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン等のニトロベンジルカーバメート系の光塩基発生剤が広く用いられている(特許文献2及び特許文献3参照)。また、熱により塩基を発生する熱塩基発生剤として、N−アリル−N’,N’−ジアルキルウレアや、N−フェニルイミダゾールカルボキサミド等が提案されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
特開2013−68681号公報 特開2006−189591号公報 特開平7−140663号公報
Journal of Polymer Science,Part A,Polymer Chemistry,Vol.48,5298−5305,2010. Journal of Applied Polymer Science,Vol.104,3292−3300,2007.
硬化性組成物としては、外部刺激が与えられる前の段階では塩基発生剤が高い安定性を示す、つまり貯蔵安定性が良好である一方で、外部刺激を与えることによって塩基反応性化合物の反応が速やかに進行して優れた硬化性を示すことが望ましい。しかしながら、従来の塩基発生剤及びこれを含有する硬化性組成物は、塩基反応性化合物としてケイ素系化合物を用いた場合に上記特性を十分に発揮するものではなく、更なる改善が求められている。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、塩基反応性化合物としてケイ素化合物を含み、貯蔵安定性及び硬化性に優れた硬化性組成物を提供することを一つの目的とする。
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成するべく鋭意検討し、ケイ素化合物と組み合わせた場合に良好な特性を示す塩基発生剤を見出すに至った。具体的には、本発明により以下の硬化性組成物、硬化膜、半導体素子及び表示素子が提供される。
本発明は、一つの側面において、下記式(1)で表される化合物(A)と、アルコキシシリル基を有するケイ素化合物とを含有する硬化性組成物を提供する。
Figure 2016050259
(式(1)中、R及びRについて、Rは1価の芳香族環基若しくは複素環基であり、Rは水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はRとRとが結合してR及びRが結合する窒素原子と共に環構造を形成する。ただし、Rの芳香族環基及び複素環基は、環に結合する水素原子の少なくとも1個が置換されていてもよい。Rは水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。Rは1価の有機基である。Xは酸素原子又は硫黄原子である。)
本発明は、別の一つの側面において、上記硬化性組成物を用いて形成された硬化膜、並びに該硬化膜を備える半導体素子及び表示素子を提供する。
上記式(1)で表される化合物及びアルコキシシリル基を有するケイ素化合物を含有する組成物は、貯蔵安定性及び硬化性の両特性をバランスよく兼ね備えている。したがって、半導体素子や表示素子の膜形成材料として好適である。
本発明に係る硬化性組成物は、塩基発生剤としての化合物(A)と、アルコキシシリル基を有するケイ素化合物とを含有する。以下、本発明に係る硬化性組成物に含まれる各成分について説明する。
<化合物(A)>
化合物(A)は、下記式(1)で表される化合物である。
Figure 2016050259
(式(1)中、R及びRについて、Rは1価の芳香族環基若しくは複素環基であり、Rは水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はRとRとが結合してR及びRが結合する窒素原子と共に環構造を形成する。ただし、Rの芳香族環基及び複素環基は、環に結合する水素原子の少なくとも1個が置換基で置換されていてもよい。Rは水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。Rは1価の有機基である。Xは酸素原子又は硫黄原子である。)
上記式(1)のRについて、1価の芳香族環基としては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素の環部分から1個の水素原子を取り除いた基などが挙げられる。Rの1価の複素環基は、窒素含有複素環や硫黄含有複素環、酸素含有複素環から1個の水素原子を取り除いた基などが挙げられる。それらの具体例としては、例えばピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、インドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、キノキサリン、フタラジン、トリアジン、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、デカヒドロキノリンなどの窒素含有複素環から1個の水素原子を取り除いた基;チオラン、チオフェンなどの硫黄含有複素環から1個の水素原子を取り除いた基;フラン、ピラン等の酸素含有複素環から1個の水素原子を取り除いた基;などが挙げられる。
なお、Rの1価の芳香族環基及び複素環基において、環部分には置換基が導入されていてもよい。当該置換基の具体例としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数5〜12のアリール基(フェニル基、トリル基等)、ニトロ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロソ基、シリル基、シラノール基、スルフィノ基、ホスフィノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、アシル基などが挙げられる。
の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜10の鎖状炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数5〜10の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
ここで、本明細書において「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
の具体例としては、鎖状炭化水素基として、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。また、Rの脂環式炭化水素基としては、例えばシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等を;芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、ベンジル基等を、それぞれ挙げることができる。
なお、RとRは、これらが結合してR及びRが結合する窒素原子と共に環構造を形成していてもよい。こうした構造としては、例えばピペリジン等の2級アミンとイソシアネート基との反応によって形成される構造等が挙げられる。
としては、熱又は光による刺激によって発生した反応活性種の塩基性が高い点で、1価の窒素含有複素環基であることが好ましく、イミダゾール環、ピリジン環、ピペラジン環、ピラジン環、ピラゾール環又はピリダジン環を有する1価の基であることがより好ましく、ピリジン環又はイミダゾール環を有する1価の基であることがさらに好ましい。
は、水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基であることが好ましい。
の炭素数1〜10の1価の炭化水素基については、Rの説明を適用できる。
の1価の有機基としては、例えば鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む1価の炭化水素基;1価の炭化水素基のメチレン基を−O−、−S−、−CO−、−COO−、−COS−、−NR−、−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−OCO−NR−(ただし、Rは炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。)、−N=N−、−SO−等の2価の官能基で置き換えた基;1価の炭化水素基が有する水素原子の少なくとも1個をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、ニトロ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロソ基、シリル基、シラノール基、スルフィノ基、ホスフィノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、アシル基等の置換基で置換した基;複素環を有する1価の基、などが挙げられる。Rの炭素数は特に制限されないが、1〜20であることが好ましい。
は、化合物の合成しやすさの観点から酸素原子であることが好ましい。
化合物(A)は、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2016050259
(式(2)中、Rは(n+1)価の置換又は無置換の炭化水素基である。R、R、R及びXは上記式(1)と同義である。ただし、分子内の複数のR、R、R及びXは互いに同じでも異なってもよい。nは0〜3の整数である。)
の(n+1)価の炭化水素基としては、例えば鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。具体的には、鎖状炭化水素基としては、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、エテン、プロペン、アセチレン等の鎖状炭化水素から(n+1)個の水素原子を取り除いた基;脂環式炭化水素基としては、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環部分又は鎖状構造から(n+1)個の水素原子を取り除いた基;芳香族炭化水素基としては、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、トルエン、キシレン等の環部分又は鎖状構造から(n+1)個の水素原子を取り除いた基、などが挙げられる。Rの炭素数は特に制限はないが、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。Rが有していてもよい置換基としては、Rで例示した置換基などが挙げられる。
nは0又は1であることが好ましい。
化合物(A)の具体例としては、例えば下記式(A−1)〜式(A−8)のそれぞれで表される化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。化合物(A)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2016050259
(化合物(A)の合成)
化合物(A)は、有機化学の定法を適宜組み合わせることによって合成することができる。その一例を挙げると、例えばイソシアネート基を有する化合物と、1級アミン化合物又は2級アミン化合物とを反応させる方法などが挙げられる。化合物(A)は、例えば下記スキーム(I)又はスキーム(II)に従って合成することができる。
Figure 2016050259
(スキームI中、R,R,R及びXは上記式(1)と同義である。R41は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。)
具体例としては、例えばフェニルイソシアネートとアミノピリジンとを反応させる、アルキルイソチオシアネートとアミノピリジンとを反応させることによって合成することができる。同様に、上記式(1)で表される他の化合物についても、上記合成方法に準じて又は上記の一部を変更して合成することができる。
<ケイ素化合物>
上記化合物(A)と共に硬化性組成物に含有させるケイ素化合物は、アルコキシシリル基を有するものであれば特に限定されない。ケイ素化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等の(アルキル)アルコキシシラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−シクロヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等の窒素・硫黄含有アルコキシシラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等の酸無水物基含有アルコキシシラン化合物;
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等の不飽和結合含有アルコキシシラン化合物;
アルコキシシリル基を有するポリシロキサン;などを挙げることができる。
本発明に係る硬化性組成物に含有させるケイ素化合物としては、上記の中でもポリシロキサンとすることが好ましい。なお、ケイ素化合物としては、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。「(メタ)アクリロキシ」は、「アクリロキシ」及び「メタクリロキシ」を含む意味である。
ポリシロキサンは、塩基の作用によって反応する塩基反応性化合物であればよく、その構造は特に限定されるものでないが、例えば加水分解性のシラン化合物を加水分解・縮合させて得られる化合物等が挙げられる。
ポリシロキサンの合成に際して使用する加水分解性のシラン化合物としては、例えば上記の(アルキル)アルコキシシラン化合物、窒素・硫黄含有アルコキシシラン化合物、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物、酸無水物基含有アルコキシシラン化合物、不飽和結合含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。なお、加水分解性のシラン化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記の加水分解・縮合反応は、上記の如きシラン化合物の1種又は2種以上と水とを、好ましくは適当な触媒及び有機溶媒の存在下で反応させることにより行うことができる。加水分解・縮合反応に際し、水の使用割合は、シラン化合物(合計量)1モルに対して、好ましくは0.5〜100モルであり、より好ましくは1〜30モルである。
加水分解・縮合反応の際に使用する触媒としては、例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを挙げることができる。触媒の使用量は、触媒の種類、温度などの反応条件などにより異なり適宜に設定されるべきであるが、例えばシラン化合物の合計量に対して、好ましくは0.01〜3倍モルであり、より好ましくは0.05〜1倍モルである。
上記の加水分解・縮合反応の際に使用する有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどを挙げることができる。中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又は3−メトキシプロピオン酸メチルを好ましく使用することができる。有機溶媒の使用割合は、反応に使用するシラン化合物の合計100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
上記の加水分解・縮合反応は、例えば油浴などにより加熱して実施することが好ましい。加水分解・縮合反応時には、加熱温度を130℃以下とすることが好ましく、40〜100℃とすることがより好ましい。加熱時間は、0.5〜12時間とすることが好ましく、1〜8時間とすることがより好ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。なお、加水分解・縮合反応の後には脱水剤を加え、次いでエバポレーションを行うことで、水及び生成したアルコールを系外に除去することができる。
ポリシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が300〜50,000の範囲にあることが好ましく、500〜10,000の範囲にあることがより好ましい。ポリシロキサンの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、本組成物を用いて硬化膜を製造する際に取り扱いやすく、また得られた硬化膜は半導体デバイスや液晶デバイスに適用する硬化膜として十分な材料強度及び特性を有するものとなる。
本組成物における化合物(A)の配合割合は、ケイ素化合物100重量部に対して0.01〜20重量部とすることが好ましい。化合物(A)の配合割合を0.01重量部未満とすると、ケイ素化合物が十分に硬化せず、特性が低下するおそれがある。また、20重量部よりも多くすると、化合物(A)及びケイ素化合物の溶媒に対する溶解性が低下し、組成物中に不溶物が存在するおそれがある。化合物(A)の配合割合は、より好ましくはケイ素化合物100重量部に対して0.05〜15重量部であり、さらに好ましくは0.1〜10重量部であり、特に好ましくは0.5〜5重量部である。
<その他の成分>
本組成物は、上記の如き化合物(A)及びケイ素化合物を含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば化合物(A)以外のその他の塩基発生剤、多官能化合物、ラジカル発生剤等が挙げられる。
[その他の塩基発生剤]
その他の塩基発生剤としては、熱又は光によって塩基を発生する化合物として公知の化合物の中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えばイミダゾール系熱塩基発生剤;オルトニトロベンジルカルバメート系、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルカルバメート系、アシルオキシイミノ系の光塩基発生剤などを用いることができる。
その他の塩基発生剤を含有する場合、その配合割合は、硬化性組成物に含有させる化合物(A)及びその他の塩基発生剤の合計量に対して、50重量%以下とすることが好ましく、20重量%以下とすることがより好ましい。
[多官能化合物]
多官能化合物は、硬化性組成物により形成される硬化膜の強度や特性を改善すること等を目的として使用される。こうした多官能化合物としては、例えば2個以上のエチレン性不飽和基を有する多官能不飽和化合物、2個以上のチオール基を有する多官能チオール化合物、2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、多官能不飽和化合物として、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等を;
多官能チオール化合物として、例えば1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、2,5−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、3,7−ジチア−1,9−ノナンジチオール、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトベンゼン、ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、イソシアヌル酸、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、チオール基を有する多官能性ポリマー(例えば、商品名で「チオコールLP」、「ポリチオール」(以上、東レ・ファインケミカル(株)製))等を;
多官能エポキシ化合物として、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールADジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等を;それぞれ挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、(メタ)アクリレートは「アクリレート」及び「メタクリレート」を含む意味である。
多官能化合物を配合する場合、その配合割合は、ケイ素化合物100重量部に対して、200重量部以下とすることが好ましく、5〜100重量部とすることがより好ましい。
[ラジカル発生剤]
ラジカル発生剤は、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を配合させた際の熱又は光に対する感度を高めるために使用することができる。ラジカル発生剤としては、例えば熱ラジカル発生剤、光ラジカル発生剤等が挙げられる。これらの具体例としては、熱ラジカル発生剤として、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ペルオキシ酢酸t−ブチル等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ化合物;加硫酸塩と酸性亜硫酸ナトリウムと硫酸第一鉄との組み合わせ等のレドックス系開始剤;などが挙げられる。
光ラジカル発生剤としては、例えばアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等が挙げられる。
ラジカル発生剤の配合割合は、ケイ素化合物100重量部に対して、10重量部以下とすることが好ましく、5重量部以下とすることがより好ましい。
なお、本組成物には、本発明の目的及び効果を妨げない範囲内において、上記以外のその他の添加剤を適宜配合してもよい。その他の添加剤としては、例えば界面活性剤、充填剤、顔料、消泡剤、増感剤、分散剤、酸化防止剤、密着助剤、帯電防止剤、レベリング剤、抗菌剤等が挙げられる。
<溶剤>
本組成物は、化合物(A)、ケイ素化合物及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な有機溶媒に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する有機溶媒としては、化合物(A)、ケイ素化合物及び必要に応じて使用されるその他の成分を均一に溶解でき、かつ各成分と反応しない化合物が好ましい。
このような溶媒のうち、各成分の溶解性、各成分との非反応性及び塗布性の観点から、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ベンジルアルコール、3−メトキシブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを好ましく使用することができる。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本組成物における固形分濃度(硬化性組成物の溶媒以外の成分の合計重量が硬化性組成物の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性、使用目的、基板等に塗布する際に用いる方法などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは5〜50重量%の範囲である。固形分濃度が5重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な硬化膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が50重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な硬化膜が得にくい。また、硬化性組成物の粘性が増大して塗布性が低下しやすい。
硬化性組成物を調製する際の温度は、好ましくは10〜100℃であり、より好ましくは20〜80℃である。硬化性組成物が液状の場合には、例えば孔径0.1〜1.0μm程度のフィルター等を用いてろ過した後、硬化膜の形成に供してもよい。
<硬化膜及びその製造方法>
上記の如くして調製した硬化性組成物を用いて硬化膜を得るには、例えば下記の工程(1)及び工程(2)を含む方法により行うことができる。
(1)上記の硬化性組成物を用いて基板上に塗膜を形成する工程。
(2)基板上に形成された塗膜に対して加熱又は露光する工程。
[工程(1):塗膜の形成]
基板としては、特に限定されず、例えば透明基板、金属基板等が挙げられる。透明基板としては、例えばガラス基板、樹脂基板等が挙げられ、その具体例としては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等のガラス基板;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックからなる樹脂基板を挙げることができる。
基板上に本組成物を塗布した後、塗布面を加熱(プリベーク)することによって塗膜を形成することが好ましい。基板上に本組成物を塗布する方法は特に制限されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット塗布法等の方法を採用することができる。これらの中でも、特にスピンコート法又はスリットダイ塗布法が好ましい。加熱温度は、好ましくは50〜120℃である。加熱時間は、好ましくは1〜15分である。加熱後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.01〜20μmであり、より好ましくは0.03〜5μmである。
[工程(2):塩基の発生]
本工程は、形成された塗膜の少なくとも一部に対して加熱又は露光を行うことにより塩基を発生させ、塩基反応性化合物としてのケイ素化合物の反応を行う。
加熱により塩基を発生させる場合、加熱温度は、70〜250℃とすることが好ましく、80〜230℃とすることがより好ましく、100〜200℃とすることがさらに好ましい。加熱時間は、好ましくは1分〜2時間であり、より好ましくは10分〜1時間である。
光(放射線)の照射により塩基を発生させる場合、使用される放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線等が挙げられる。これらのうち、波長が250nm〜550nmの範囲にある放射線を用いることが好ましい。放射線の照射量(露光量)は、照射される放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model 356、Optical Associates Inc.製)により測定した値として、100〜5,000J/mが好ましく、200〜3,000J/mがより好ましく、250〜2,000J/mがさらに好ましい。特に、本組成物は放射線に対する感度が高いため、硬化に必要な露光量を低減することができる。したがって、放射線照射による塗膜への影響を低減できるとともに、エネルギー削減にも資する。
上記工程(2)において、塗膜に対してパターン露光を行い、次いで現像処理を施すことにより、所望のパターンが形成された硬化膜を得ることができる。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等のアルカリ(塩基性化合物)の水溶液を使用することができる。これらのアルカリ水溶液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒及び/又は界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。アルカリ水溶液におけるアルカリの濃度は、適当な現像性を得る観点から、好ましくは0.1〜5重量%とすることが好ましい。現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー法等のいずれでもよく、現像時間は、常温で10〜180秒間程度とすることが好ましい。
塩基発生剤として化合物(A)を用いることで、現像処理後においては室温でも硬化反応は十分に進行するが、硬化反応を効率よく進行させ、高い表面硬度を有する硬化膜を得るために、現像処理前又は現像処理後に加熱処理(ポストベーク)を実施してもよい。加熱温度(ポストベーク温度)は、通常100〜250℃であり、100〜200℃の温度範囲内とすることが好ましく、100〜180℃とすることがより好ましい。加熱時間は、10秒〜60分とすることが好ましく、60秒〜30分とすることがより好ましい。
以上詳述した硬化性組成物は、熱や光などの外部刺激に伴い化合物(A)から発生する塩基によって、ケイ素化合物の反応、より好ましくはポリシロキサンの硬化反応が速やかに進行する。また、化合物(A)は安定性が高く、ケイ素化合物との混合物において、外部刺激が付与される前では、ケイ素化合物の反応が進行しないか、又は反応の進行が抑制される。このように、上記硬化性組成物は硬化性と貯蔵安定性とを兼ね備えており、例えば耐熱性や耐候性、耐汚染性などといったケイ素化合物が有する各種特性が要求される用途に有用である。
本発明の硬化性組成物及び硬化膜は、高い表面硬度や透明性を有する技術用途に有効に適用することができ、中でも、表示素子又は半導体素子が備える硬化膜に好ましく適用することができる。具体的には、例えば保護膜、スペーサー膜、層間絶縁膜、反射防止膜、配線被覆膜等といった、表示素子又は半導体素子が備える種々の硬化膜に適用することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の合成例において、各物性は以下の方法により測定した。
(重量平均分子量)
重合体の重量平均分子量Mwは、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
装置:GPC−101(昭和電工製)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803及びGPC−KF−804を結合
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0重量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
H−NMR)
H−NMRは、核磁気共鳴装置(商品名「JNM−ECX400」、日本電子社製)を用いて測定した。
なお、以下では「式(X)で表される化合物」を「化合物(X)」と記すことがある。
<塩基発生剤の合成>
[合成例1:化合物(A−1)の合成]
下記スキーム1に従って化合物(A−1)を合成した。
Figure 2016050259
加熱乾燥後の200mLの二口フラスコに、4−アミノピリジン1.5g(16.0mmol)、フェニルイソシアネート1.6mL(15.0mmol)及びトルエン120mLを入れ、80℃で12時間攪拌した。反応の進行に伴い白色固体の析出が確認された。薄層クロマトグラフィー(TLC)により目的物の生成を確認した後、白色固体を濾取した。得られた白色固体をメタノールによる再結晶によって精製し、化合物(A−1)を得た。化合物(A−1)のH−NMR測定の結果を下記に示す。
H−NMR(DMSO−d);δ7.02(t,1H),7.31(t、2H),7.44(d,2H),7.45(d,2H),8.36(d,2H),8.83(s,1H),9.09(s,1H).
[合成例2:化合物(A−2)の合成]
下記スキーム2に従って化合物(A−2)を合成した。
Figure 2016050259
200mLの二口フラスコに、化合物(A−1)を1.06g(3.9mmol)入れ、50mLのDMFに溶解させた。次いで、水素化ナトリウム0.65g(16.3mmol)を6回に分けて入れ、24mlのDMFに溶解させたヨウ化メチル2.28g(16.0 mmol)を加え、室温下にて4時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)により目的物の生成を確認した後、ジクロロメタン/水にて分液洗浄を行い溶剤留去した。ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を加えることで、析出した沈殿をジクロロメタンにより洗浄し、化合物(A−2)を得た。化合物(A−2)のH−NMR測定の結果を下記に示す。
H−NMR(DMSO−d);δ3.28(s、3H),3.89(s,3H),6.99(m,3H),7.32(dd,2H),7.72(d,2H),8.46(d,2H).
[合成例3:化合物(A−3)の合成]
フェニルイソシアネートの代わりにt−ブチルイソシアネートを出発物質として用いた以外は合成例1と同様に操作し、下記式で表される化合物(A−3)を得た。化合物(A−3)のH−NMR測定の結果を下記に示す。
H−NMR(DMSO−d);δ1.28(s、9H),6.21(s、1H), 7.30(dd,2H,J=4.8,1.6Hz),8.25(dd,2H,J=4.8,1.6Hz),8.66(s,1H).
Figure 2016050259
[合成例4:化合物(A−4)の合成]
フェニルイソシアネートの代わりにメチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネートを出発物質とした点、及び4−アミノピリジンの使用量を3.0g(32.0mmol)とした点以外は合成例1と同様に操作し、下記式で表される化合物(A−4)を得た。化合物(A−4)のH−NMR測定の結果を下記に示す。
Figure 2016050259
H−NMR(DMSO−d);δ3.83(s,2H),7.14(d,4H),7.37(d,4H),7.42(d,4H),8.34(d,4H),8.79(s,2H),9.05(s,2H).
[合成例5:化合物(A−5)の合成]
4−アミノピリジンの代わりに2−アミノイミダゾール硫酸塩を出発物質として用いた以外は合成例1と同様に操作し、下記式で表される化合物(A−5)を得た。化合物(A−5)のH−NMR測定の結果を下記に示す。
Figure 2016050259
H−NMR(DMSO−d);δ6.0(s,2H),7.02(s,2H),7.19(t,1H), 7.43(dd,2H),7.61(d,2H),13.00(s,1H).
<ポリシロキサンの合成>
[合成例6:重合体(PS−1)の合成]
撹拌機及び温度計を備えた反応容器に、シラン化合物としてメチルトリメトキシシラン60重量部及びテトラエトキシシラン40重量部、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテル50重量部、及びテトラ−i−プロポキシアルミニウム0.2重量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。次いで、水(シラン化合物の合計100重量部に対して40重量部)を仕込み、75℃になるまで加熱し、3時間保持した。次いで、脱水剤としてオルト酢酸メチル60重量部を加え、1時間撹拌した。さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションすることで水及びメタノールを留去した。これにより重合体(PS−1)を得た。得られた重合体(PS−1)の重量平均分子量(Mw)は3,000であった。
[合成例7〜9]
使用する加水分解性シラン化合物の種類及び量を下記表1に記載の通り変更した以外は合成例6と同様に操作し、重合体(PS−2)〜重合体(PS−4)をそれぞれ得た。
Figure 2016050259
表1中、加水分解性シラン化合物の数値は、重合体の合成に使用したモノマーの合計量に対する各化合物の使用割合(重量%)を示す。表1中の「−」は、該当する成分を使用しなかったことを示す。加水分解性シラン化合物の略称の意味は以下の通りである。
m−1:メチルトリメトキシシラン
m−2:テトラエトキシシラン
m−3:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
m−4:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
m−5:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
<硬化性組成物の調製及び評価>
[実施例1]
(1)硬化性組成物の調製
ケイ素化合物として上記合成例6で得た重合体(PS−1)を100重量部、塩基発生剤として上記合成例1で得た化合物(A−1)を0.01重量部、及び溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を混合し、固形分濃度25重量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターを用いてろ過して硬化性組成物を調製した。
(2)溶解性の評価
上記で得た硬化性組成物の調製後、その外観を目視で観察した。硬化性組成物が透明均一な溶液であった場合を溶解性「良好」、不溶物が僅かに観察された場合を「可」、不溶物が多く観察された場合を「不良」と評価した。その結果、この実施例の硬化性組成物では不溶物が観察されず、透明均一な溶液であり、溶解性「良好」であった。
(3)耐擦傷性による熱硬化性の評価(スチールウール耐性テスト)
無アルカリガラス基板上に、上記で調製した硬化性組成物をスピンナーにより塗布した後、90℃のホットプレート上で3分間プレベークすることにより塗膜(膜厚3.0μm)を形成した。次いで、塗膜を160℃のクリーンオーブン中で1時間加熱した。得られた硬化膜及びスチールウール(ボンスターNo.0000、日本スチールウール株式会社製)を学振型摩擦堅牢度試験機(AB−301、テスター産業株式会社製)に取り付け、硬化膜の表面を荷重200gの条件で10回繰り返し擦過し、硬化膜の表面における傷の発生の有無を以下のA〜Dの基準により目視で確認した。本実施例の熱硬化膜は「A」の評価であった。
A :硬化膜に傷が発生しない。
B :硬化膜にわずかな細い傷が認められる。
C :硬化膜に複数の筋状の傷が認められる。
D :硬化膜に剥離が生じる。
(4)密着性による熱硬化性の評価
上記の(3)と同様の操作によって基板上に硬化膜(熱硬化膜)を形成し、この硬化膜が形成された基板を用いてJIS D0202−1998に準拠して基板目剥離テープ試験を実施した。具体的には、硬化膜が形成された面にセロハンテープ(ニチバン株式会社製CT−18)を貼り付けた後、セロハンテープを剥離し、1cm×1cmの範囲内に設けた10個×10個の基盤目のうち、硬化膜が剥離しなかった基盤目の数で密着性を評価した。このとき、基板から硬化膜が剥離しなかった場合を「優良(◎)」、剥離しなかった基盤目の数が80個以上99個以下であった場合を「良好(○)」、剥離しなかった基盤目の数が1個以上79個以下であった場合を「可(△)」、100個全ての基盤目で剥離が生じた場合を「不可(×)」と評価した。その結果、この実施例では「可」の評価であった。
(5)光硬化性の評価
無アルカリガラス基板上に、上記(1)で調製した硬化性組成物をスピンナーにより塗布した後、90℃のホットプレート上で3分間プレベークすることにより塗膜(膜厚3.0μm)を形成した。得られた塗膜上にフォトマスクを使用せず、高圧水銀ランプを用い、露光量を変量しつつ塗膜に露光を行った。得られた硬化膜について、JIS−K5400−1990の8.4.1鉛筆引っかき試験により、硬化膜の鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度がH以上になる場合の露光量を求めた。本実施例では、鉛筆硬度がH以上になるときの露光量は1,900(J/m)であった。
(6)貯蔵安定性の評価
上記(1)で調製した硬化性組成物を40℃で保管し、増粘率が200%になるまでに要した日数により貯蔵安定性を評価した。硬化性組成物の溶液粘度(mPa・s)は、E型回転粘度計を用いて40℃で測定した。増粘率が200%になるまでに要した日数が30日以上であった場合を貯蔵安定性「優良」、20日以上30日未満であった場合を「良好」、10日以上20日未満であった場合を「可」、10日未満であった場合を「不良」と評価した。その結果、この実施例では貯蔵安定性「優良」の評価であった。
[実施例2〜15及び比較例1〜6]
硬化性組成物の組成を下記表2及び表3に示す通りに変更した点以外は実施例1と同様の操作により硬化性組成物を調製した。また、得られた硬化性組成物を用いて実施例1と同様の評価を行った。それらの結果を下記表2及び表3に示した。
Figure 2016050259
Figure 2016050259
表2及び表3中の化合物の略称は以下の通りである。
(塩基発生剤)
G−1:イミダゾール系塩基発生剤(商品名「TBG−01」、日本合成化学工業株式会社製)
G−2:2−ニトロベンジルシクロヘキシルカーバメート(商品名「NBC−101」、みどり化学株式会社製)
G−3:1,2−ジイソプロピル−3−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム2−(3−ベンゾイルフェニル)ピロピオナート(商品名「WPBG−266」、和光純薬工業株式会社製)
(その他添加剤)
H−1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
H−2:ビスフェノールAジグリシジルエーテル
H−3:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
H−4:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
H−5:トリエチルアミン
(溶剤)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MEK:メチルエチルケトン
なお、表2及び表3における各組成の数値は、硬化性組成物の調製に使用したポリシロキサン100重量部に対する各化合物の配合割合(重量部)を示す。光硬化性の評価欄では、鉛筆硬度がH以上になるときの露光量(J/m)を感度とした。
表2及び表3に示すように、化合物(A)を含む実施例1〜15の硬化性組成物では、化合物(A)を含まない比較例の硬化性組成物と比べて、貯蔵安定性及び硬化性の両特性をバランス良く兼ね備えていた。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表される化合物(A)と、アルコキシシリル基を有するケイ素化合物とを含有する硬化性組成物。
    Figure 2016050259
    (式(1)中、R及びRについて、Rは1価の芳香族環基若しくは複素環基であり、Rは水素原子若しくは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるか、又はRとRとが結合してR及びRが結合する窒素原子と共に環構造を形成する。ただし、Rの芳香族環基及び複素環基は、環に結合する水素原子の少なくとも1個が置換されていてもよい。Rは水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。Rは1価の有機基である。Xは酸素原子又は硫黄原子である。)
  2. 前記化合物(A)は、下記式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
    Figure 2016050259
    (式(2)中、Rは(n+1)価の置換又は無置換の炭化水素基である。R、R、R及びXは上記式(1)と同義である。ただし、分子内の複数のR、R、R及びXは互いに同じでも異なってもよい。nは0〜3の整数である。)
  3. 前記Rは1価の窒素含有複素環基である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物を用いて形成された硬化膜。
  5. 請求項4に記載の硬化膜を備える半導体素子。
  6. 請求項4に記載の硬化膜を備える表示素子。
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