本実施形態に係る水晶素子110は、図1〜図4に示したように、安定した機械振動を得ることができ、電子機器等の基準信号を発信するためのものである。水晶素子110は、振動部111a、固定部111b、緩衝部111cおよび傾斜部111dからなる水晶片111と、この水晶片111に形成されており、励振電極部113、引出部114および配線部115からなる金属膜と、から構成されている。また、水晶素子110が水晶デバイスに用いられる場合、図4に示すように、水晶素子110の金属膜、具体的には、引出部114が、導電性接着剤140によって基板120の搭載パッド121と電気的に接着され、水晶素子110が基板120の上面に実装される。その後、基板120と蓋体130とが接合されて、基板120と蓋体130とで形成される空間内に基板120に実装されている水晶素子110が気密封止される。
水晶片111は、振動部111a、固定部111b、緩衝部111cおよび傾斜部111dから構成されており、振動部111aと固定部111bの間に緩衝部111cおよび傾斜部111dが重なるように形成されている。また、水晶片111は、振動部111aと固定部111bとの間に、貫通穴112が形成されている。また、水晶片111は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、振動部111a、固定部111b、緩衝部111cおよび傾斜部111dが一体的に形成されている。このとき、傾斜部111dは、水晶部材の結晶軸との位置関係によってエッチングのされ方が異なることを利用し形成されている。
振動部111aは、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、水晶部材が用いられており、略矩形形状の平板状に形成されている。振動部111aは、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有しており、振動部111aの主面が、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心にX軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっている。例えば、振動部111aの主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心にX軸の負の方向を見て反時計回りに約37°回転させた面と平行となっている。
ここで、図面に合わせて、水晶素子110を基板120に実装したとき、基板120を向く振動部111aの面を振動部111aの下面とし、この振動部111aの下面と反対側を向く振動部111aの面を振動部111aの上面とする。また、振動部111aの上面および振動部111aの下面を振動部111aの主面とする。また、振動部111aの両主面につながっている面を振動部111aの側面とする。
振動部111aの両主面には、一対の励振電部113が設けられている。振動部111aは、この一対の励振電極部113に電圧が印加されると、励振電極部113に挟まれている振動部111aの一部が、逆圧電効果および圧電効果により所定の周波数で厚みすべり振動をする。一般的に、厚みすべり振動の周波数は、振動部111aの上下方向の厚みによって厚みすべり振動のしやすさが異なるため、振動部111aの上下方向の厚みによって決定される。具体的には、振動部111aの上下方向の厚みが薄い程、振動部111aの厚みすべり振動の周波数が高くなる傾向がある。このため、振動部111aの厚みすべり振動の周波数が高い場合、振動部111aの上下方向の厚みが薄く、厚みすべり振動がしやすくなり、励振電極部113に挟まれている振動部111aの一部が振動しているときに振動部111aの縁部まで厚みすべり振動している。
振動部111aは、前述したように略矩形形状の平板状となっており、平面して、長辺の長さが0.8〜4.0mmとなっており、短辺の長さが0.6〜2.8mmとなっている。また、振動部111aの上下方向の厚みは、5〜22μmとなっている。
固定部111bは、水晶素子110を基板120等に実装するときに、保持部材、具体的には、導電性接着剤140によって基板120等に接着、保持されるためのものである。固定部111bの下面には、一対の引出部114(114a、114b)が並んで設けられており、この一対の引出部114が基板120の搭載パッド121と導電性接着剤140によって電気的に接着されている。これにより、水晶素子110が基板120に保持され実装される。
ここで、図面に合わせて、水晶素子110を基板120に実装するとき、基板120を向く固定部111bの面を固定部111bの下面とし、固定部111bの下面と反対側を向く固定部111bの面を固定部111bの上面とする。また、固定部111bの下面および固定部111bの上面を固定部111bの主面とする。また、固定部111bの両主面につながっている面を固定部111bの側面とする。
固定部111bは、略矩形形状の平板状となっており、水晶素子110を平面視して、振動部111aの所定の一辺に沿って設けられており、例えば、固定部111bの上面が振動部111aの上面と同一平面上に位置するように設けられている。固定部111bは、上下方向の厚みが、振動部111aの上下方向の厚みより少なくとも2倍以上の厚みとなっている。このため、吸着ノズル等で吸引し水晶素子110を移動させる場合、振動部111aの上下方向の厚みより厚い固定部111bを吸引することが可能となり、上下方向の厚みが振動部と固定部と同じとなっている水晶素子の場合のように吸引が原因による水晶素子の破損を低減させることができ、生産性を向上させることができる。また、水晶素子110を基板120等に実装するとき、上下方向の厚みが振動部と固定部と同じとなっている水晶素子を実装する場合と比較して、上下方向の厚みの差の分だけ振動部111aを基板120から離れた位置にすることができるので、振動部111aが基板120と接触することを低減させることが可能となる。
固定部111bは、前述したように略矩形形状の平板状となっており、平面視して、長辺の長さが0.6〜3.0mmとなっており、短辺の長さが0.26〜2.0mmとなっている。また、固定部111bは、その上下方向の厚みが30〜100μmとなっている。
固定部111bは、特に図示しないが、水晶素子110の上面を平面視して、固定部111bの長辺が振動部111aの短辺の長さより長くなっていてもよい。固定部111bの長辺を振動部111aの短辺より長くすることにより、固定部111bに設ける一対の引出部114の間隔を広くすることができ、実装時に、導電性接着剤140によって一対の引出部114が電気的に短絡することを低減させることが可能となる。また、固定部111bの長辺を振動部111aの短辺より長くすることで、固定部111bの体積をより増やすことができ、水晶素子110の重心をより固定部111b側にすることが可能となり、実装時に、振動部111aの端部が基板120(図4参照)に接触することを低減させることが可能となる。
緩衝部111cは、後述する傾斜部111dを設けることによって、固定部111bによる振動部111aの影響を軽減しつつ、振動部111aの振動を徐々に減衰させるためのものである。また、緩衝部111cは、振動部111aおよび固定部111bと一体的でかつ、矩形形状の平板状に形成されている。緩衝部111cは、例えば、緩衝部111cの上面が振動部111aの上面および固定部111bの上面と同一平面上に位置するように設けられている。緩衝部111cは、その上下方向の厚みが振動部111aの上下方向の厚みと同じとなっている。また、緩衝部111cは、振動部111aと固定部111bとの間に設けられており、緩衝部111cの側面が振動部111aの所定の一辺を含む側面と接しており、振動部111aと接している面と反対側を向く緩衝部111cの面が固定部111bと接している。
ここで、図面に合わせて、水晶素子110を基板120に実装するとき、基板120を向く緩衝部111cの面を緩衝部111cの下面とし、緩衝部111cの下面と反対側を向く緩衝部111cの面を緩衝部111cの上面とする。また、緩衝部111cの下面および緩衝部111cの上面を緩衝部111cの主面とし、緩衝部111cの両主面につながっている緩衝部111cの面を緩衝部111cの側面とする。
緩衝部111cは、平面視して、振動部111aと接している辺および固定部111bと接している辺の長さが0.3〜1.5mmとなっており、振動部111aと接している辺から固定部111bと接している辺までの長さが0.3〜0.7mmとなっている。また、緩衝部111cの上下方向の厚みは、30〜100μmとなっている。
傾斜部111dは、緩衝部111cに設けることによって、固定部111bによる振動部111aの影響を低減しつつ、振動部111aの振動を徐々に減衰させるためのものである。傾斜部111dは、振動部111a、固定部111bおよび緩衝部111cと一体的に形成されている。傾斜部111dは、緩衝部111cの下面に設けられており、振動部111aの下面から固定部111bの下面にかけて徐々に上下方向の厚みが厚くなるように設けられている。傾斜部111dは、平面視して、振動部111aと接している辺および固定部111bと接している辺の長さが0.3〜1.5mmとなっている。
従って、水晶片111の上面を平面視すると、振動部111aの所定の一辺に沿って緩衝部111c、固定部111bの順に並んで設けられている。また、水晶片111の下面を平面視すると、振動部111aの所定の一辺に沿って傾斜部111d、固定部111bの順に並んで設けられている。振動部111aから固定部111bにかけて上下方向の厚みが徐々に厚くなるように傾斜部111dが緩衝部111cの下面に設けられている。このため、本実施形態に係る水晶素子110で用いられる水晶片111は、振動部111aが振動しているときに振動部111aの縁部にまで漏れている厚みすべり振動が、緩衝部111cと傾斜部111dによって固定部111bに向かうにつれて厚みすべり振動を減衰させることができる。同様に、固定部111bによる振動部111aの厚みすべり振動への阻害を軽減させることも可能となる。この結果、このような水晶片111を水晶素子110として用いる場合、緩衝部111cおよび傾斜部111dによって、振動部111aの振動を徐々に減衰させることができつつ、固定部111bによる振動部111aへの厚みすべり振動への阻害を軽減させることができ、クリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
本実施形態に係る水晶素子110は、上記のような構成の水晶片111を用いることで、例えば、振動部と固定部の上下方向の厚みが同じとなっており、振動部の上下方向の厚みが13μmとなっている従来の水晶素子では50〜100Ωとなっていたクリスタルインピーダンス値を、20〜50Ω程度まで低減することが可能となった。このとき、本実施形態に係る水晶素子110で用いられる水晶片111の寸法は、振動部111aの寸法が、長辺が0.98mm、短辺が0.78mm、上下方向の厚みが13μmとなっており、固定部111bの寸法が、長辺が0.79mm、短辺が0.35mm、上下方向の厚みが50μmとなっており、水晶素子110の上面を平面視して、振動部111aから固定部111bまでの長さが0.05mmとなっている。
また、水晶片111は、振動部111aの上面、固定部111bの上面および緩衝部111cの上面が同一平面上に位置している。前述したように、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって水晶片111を形成しており、さらに、傾斜部111dの傾斜面(振動部111aの下面と固定部111bの下面とに接している傾斜部111dの面)は水晶部材の異方性を利用し形成している。このため、傾斜部111dの傾斜面の傾きは、振動部111aの主面および固定部111bの主面と結晶軸との角度によって一定となる。従って、振動部111aの上面、固定部111bの上面および緩衝部111cの上面を同一平面上に位置するようにすることで、振動部111aと固定部111bの上下方向の厚みの差が同じであれば、緩衝部111cの両主面に傾斜部を設ける場合と比較して、振動部111aから固定部111bまでの長さをより長くすることができる。この結果、振動部111aが振動しているときに振動部111aの縁部にまで漏れている厚みすべり振動を固定部111bに向かうにつれて厚みすべり振動をより緩やかに減衰させることができる。同様に、固定部111bによる振動部111aの厚みすべり振動への阻害を軽減させることも可能となる。この結果、このような水晶片111を水晶素子110として用いる場合、緩衝部111cおよび傾斜部111dによって、振動部111aの振動をより緩やかに徐々に減衰させることができつつ、固定部111bによる振動部111aへの厚みすべり振動への阻害を軽減させることができ、クリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、水晶片111には、貫通穴112が形成されている。貫通穴112は、水晶片111の振動部111aと固定部111bとの間であって振動部111aから固定部111bにかけて徐々に厚みが厚くなっている箇所、具体的には、緩衝部111cおよび傾斜部111dに、設けられている。緩衝部111cおよび傾斜部111dに貫通穴112を形成することで、振動部111aと緩衝部111cとが接している面積を小さくすることができる。従って、本発明の水晶素子110では、緩衝部111cが振動部111aに接していることによる振動部111aの振動への阻害を低減させることが可能となり、水晶素子110のクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、貫通穴112は、水晶素子110の上面を平面視して、緩衝部111cの上面の中央部に形成されている。従って、水晶素子110の上面を平面したとき、振動部111aの緩衝部111c側を向く辺の中心付近は緩衝部111cと接しておらず、振動部111aの緩衝部111c側を向く辺の端部のみで振動部111aと緩衝部111cとが接している状態となっている。一般的に、振動部111aに設けられた一対の励振電極部113に電圧が印加されると、水晶素子110を平面視して、励振電極部113の中心または振動部111aの中心で最も厚みすべり振動の変位量が大きく、励振電極部113の中心または振動部111aの中心から円形、または、楕円形状に厚みすべり振動が減衰していき、振動部111aの四隅に向かうにつれて厚みすべり振動の変位量が小さくなっていく。つまり、本実施形態に係る水晶素子110は、水晶素子110の上面を平面視して、緩衝部111cの上面の中央部に貫通穴112を形成することで、振動部111aの固定部111b側を向く辺の両端部のみで振動部111aと緩衝部111cとを接する状態にし、励振電極部113に電圧が印加されたときに、振動部111aの厚みすべり振動の変位量が少ない部分で振動部111aと緩衝部111cとを接するようにしている。このため、緩衝部111cによる振動部111aの厚みすべり振動への振動阻害を低減することが可能となる。この結果、本実施形態に係る水晶素子110は、水晶素子110のクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、貫通穴112は、水晶素子110の上面を平面視して、その開口部が略矩形形状となっており、その開口部の四隅が円弧状となっている。このように、開口部の四隅を円弧状にし、貫通穴112の開口部に丸みを持たせることで、水晶素子110の外部から応力が加わったとき、貫通穴112の開口部に向かう向きに加わる応力が四隅に集中することを低減させることが可能となる。この結果、貫通穴112の開口部からクラック等の破損が生じることを低減させることができる。ここで、貫通穴112は、水晶素子110を平面視して、開口部が矩形形状となっており、長辺が0.3〜1.78mmとなっており、短辺が0.01〜0.12mmとなっている。また、貫通穴112の開口部の四隅は、半径0.005〜0.12mmのR面取りされた円弧形状となっている。
ここで、このような水晶片111の形成方法について説明する。まず、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した水晶ウエハを用意する。このとき、水晶ウエハの主面が、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心にX軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面、例えば、約37°回転させた面と平行となっている。次に、水晶ウエハの両主面に金属膜をスパッタリング技術または真空蒸着技術を用いて形成し、この金属膜上に感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光、現像する。このとき、水晶ウエハの上面側を平面視すると、振動部111a、固定部111bおよび緩衝部111cとなる部分には感光性レジストが残っており、水晶ウエハの下面側を平面視すると、振動部111aおよび傾斜部111dとなる部分では水晶ウエハの下面が露出した状態となっている。所定のパターンに現像されている水晶ウエハを所定のエッチング溶液に浸漬させ、水晶ウエハをエッチングする。これにより、複数の水晶片111がその一部が接続された状態で水晶ウエハ内に形成される。
励振電極部113(113a、113b)は、振動部111aに電圧を印加するためのものである。励振電極部113は、一対となっており、振動部111aの両主面に互いが対向するように設けられている。また、励振電極部113は、水晶素子110を平面視して、例えば、楕円形状となっている。前述したように、励振電極部113に電圧を印加すると、平面視して、励振電極部113の中心部から徐々に円形形状または楕円形状に厚みすべり振動が減衰していく構成となっているため、励振電極部113を楕円形状にすることで、より効率よく振動させつつ、振動部111aの四隅付近での厚みすべり振動の変位量を小さくすることが可能となる。これにより、緩衝部111cによる振動部111aの厚みすべり振動への影響を低減させることができ、水晶素子110のクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
引出部114は、振動素子110の外部から励振電極部113に電圧を印加するためのものであり、固定部111bの下面に二つ並んで設けられている。引出部114は、水晶素子110を電子デバイスとして用いるとき、基板120の搭載パッド121と向かい合う位置に設けられ、導電性接着剤140によって電気的に接着される。
配線部115(115a、115b)は、一対となっており、励振電極部113と引出部114とを電気的に接続するためのものである。一方の配線部115aは、一端が振動部111aの上面に設けられている一方の励振電極部113aに接続され、他端が固定部111bの下面に設けられている一方の引出部114aに接続されるように、振動部111aの上面、貫通穴112の内壁面および固定部111bの下面に少なくとも設けられている。他方の配線部115bは、一端が振動部111aの下面に設けられている他方の励振電極部113bに接続され、他端が固定部111bの下面に設けられている他方の引出部114bに接続されるように、振動部111aの下面、傾斜部111dの傾斜面および固定部111bの下面に少なくとも設けられている。
貫通穴112の内壁面に一方の配線部115aの一部を設けることにより、一方の励振電極部113aから一方の引出部114aまでの配線部115aの長さをより短くすることが可能となる。これにより、一方の配線部115aの長さを短くした分だけ配線部115a自身が持つ抵抗値を小さくすることができるので、一方の配線部115aの抵抗によりクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、貫通穴112の内壁面に配線部115aの一部を設けることより、固定部111bまたは振動部111aの側面に配線部115aの一部を設ける必要がなくなる。このため、水晶素子110を水晶デバイスとして用いるときに、水晶素子110を基板120に実装するときに吸着ノズル等で吸引し、水晶素子110を移動させる際、固定部111bまたは振動部111aの側面に形成されている配線部に接触し配線部の一部が剥離することを、低減させることができる。
また、貫通穴112の内壁面に配線部115aの一部を設けることにより、固定部111bまたは振動部111aの側面に配線部を設けた場合と比較して、水晶素子110が存在する雰囲気中の塵、埃等の付着物が配線部115aに付着する量を低減させることが可能となる。このため、配線部115bに塵、埃等の付着物が配線部115aに付着し、クリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることができる。
また、貫通穴112の内壁面に配線部115の一部を設ける場合、貫通穴112の開口部を四隅が丸みを帯びている略矩形形状、または、楕円形状にすることで、貫通穴112の内壁面の形状を複雑にすることができる。このため、貫通穴112の内壁面の表面積を大きくすることができるので、内壁面に設けられる配線部115の面積を大きくすることが可能となる。この結果、内壁面中の配線部115の導通を確保することができる。
このような励振電極部113、引出部114および配線部115は、例えば、スパッタリング技術または蒸着技術が用いられる。複数の水晶片111となる部分が形成されている水晶ウエハを用いて、励振電極部113、引出部114および配線部115となる部分が露出するように蒸着用マスクに入れ、スパッタリングまたは蒸着を行い、所定の金属膜を被着させる。このようにして、励振電極部113、引出部114および配線部115を水晶片111の所定の位置に設けている。また、別の方法として、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いる方法がある。この場合、まず、複数の水晶片111となる部分が形成されている水晶ウエハの両主面に金属膜を設け、この金属膜上に感光性レジストを塗布する。その後、励振電極部113、引出部114および配線部115となる部分の感光性レジストが残るように露光、現像し、エッチングを行う。最後に、感光性レジストを除去することで、励振電極部113、引出部114および配線部115を水晶片111の所定の位置に形成することができる。
本実施形態に係る水晶素子110は、振動部111a、振動部111aより上下方向の厚みが厚い固定部111b、振動部111aと上下方向の厚みが同じ緩衝部111c、傾斜部111dから構成されている水晶片111を用いている。本実施形態に係る水晶素子110で用いる水晶片111は、振動部111aと固定部111bとの間に振動部111aが設けられており、振動部111aの所定の一辺に沿って傾斜部111d、固定部111bの順に並んで設けられている。このとき、振動部111aの上面、緩衝部111cの上面および固定部111bの上面が同一平面上に位置しており、振動部111aから固定部111bにかけて上下方向の厚みが徐々に厚くなるように傾斜部111dが緩衝部111cの下面に設けられている。このため、本実施形態に係る水晶素子110は、振動部111aに設けられた励振電極部113に電圧が印加され振動部111aが振動しているときに、振動部111aの縁部にまで漏れている厚みすべり振動を、緩衝部111cおよび傾斜部111dによって固定部111bに向かうにつれて徐々に減衰させることができる。同様に、本実施形態に係る水晶素子110は、上下方向の厚みが振動部111aと比較して厚い固定部111bにより振動部111aによる振動部111aへの厚みすべり振動への阻害を軽減させることができる。この結果、本実施形態に係る水晶素子110は、固定部111bによる振動部111aへの影響を抑えることができ、クリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子110は、振動部111aの上面、固定部111bの上面および緩衝部111cの上面が同一平面上に位置している。本実施形態に係る水晶素子110の水晶片111は、前述したように、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって水晶片111を形成しており、さらに、傾斜部111dの傾斜面を水晶の異方性を利用して形成している。このため、本実施形態に係る水晶素子110の水晶片111は、傾斜部111dの傾斜面の傾きが、振動部111aの主面および固定部111bの主面と結晶軸との角度によって一定となり、振動部111aの上面、固定部111bの上面および緩衝部111cの上面を同一平面上に設けることで、水晶素子110の上面を平面視したときの緩衝部111cの振動部111aから固定部111bまでの長さをより長くすることが可能となる。この結果、本実施形態に係る水晶素子110は、振動部111aに設けられている励振電極部113に電圧が印加され振動部111aが振動しているとき、振動部111aの縁部にまで漏れている厚みすべり振動を緩衝部111cおよび傾斜部111dで、より緩やかに減衰させることができる。同様に、本実施形態に係る水晶素子110は、上下方向の厚みが振動部111aと比較して厚い固定部111bにより振動部111aによる振動部111aへの厚みすべり振動への阻害を軽減させることができる。この結果、本実施形態に係る水晶素子110は、固定部111bによる振動部111aへの影響を抑えることができ、クリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子110は、水晶片111の振動部111aと固定部111bとの間であって振動部111aから固定部111bにかけて徐々に厚みが厚くなっている箇所、具体的には、緩衝部111cおよび傾斜部111dに、貫通穴112が形成されている。従って、本実施形態に係る水晶素子110は、振動部111aと緩衝部111cとが接している面積をより小さくすることができ、緩衝部111cにより振動部111aの厚みすべり振動が阻害されることを低減させることが可能となる。このため、本実施形態に係る水晶素子110は、緩衝部111cにより振動部111aの厚みすべり振動が阻害されクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子110は、水晶素子110の上面を平面視したとき、貫通穴112の開口部の中心が緩衝部111cの中心付近に位置している。従って、水晶素子110の上面を平面したとき、振動部111aの緩衝部111c側を向く辺の中心付近は緩衝部111cと接しておらず、振動部111aの緩衝部111c側を向く辺の端部のみで、振動部111aと緩衝部111cとが接している状態となっている。一般的に、振動部111aに設けられた一対の励振電極部113に電圧が印加されると、水晶素子110を平面視して、励振電極部113の中心または振動部111aの中心で最も厚みすべり振動の変位量が大きく、励振電極部113の中心または振動部111aの中心から円形、または、楕円形状に厚みすべり振動が減衰していき、振動部111aの四隅に向かうにつれて厚みすべり振動の変位量が小さくなっていく。このため、本実施形態に係る水晶素子110は、水晶素子110の上面を平面視して、緩衝部111cの上面の中心部に貫通穴112を形成することで、励振電極部113に電圧を印加したときに、振動変位が小さい振動部111aの部分と緩衝部111cとを接するようにすることができ、緩衝部111cによる振動部111aの厚みすべり振動への振動阻害を低減することが可能となる。この結果、本実施形態に係る水晶素子110は、水晶素子110のクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子110は、貫通穴112の内壁面に一方の配線部115aの一部を設け、振動部111aの上面に設けられている一方の振動部111aと固定部111bの下面に設けられている一方の引出部114aとを電気的に接続させている。従って、本実施形態に係る水晶素子110は、一方の配線部115aを、水晶片111の外周面に配線部115aを設ける場合と比較して、より短くすることができる。これにより、本実施形態に係る水晶素子110は、一方の配線部115aの長さが短くなった分だけ、一方の配線部115a自身が持つ抵抗値を小さくすることができる。この結果、本実施形態に係る水晶素子110は、一方の配線部115a実施の抵抗によりクリスタルインピーダンス値が大きくなることを軽減させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶素子110は、貫通穴112の内壁面に一方の配線部115aの一部を設けているので、固定部111bまたは振動部111aの側面に一方の配線部115aを設ける必要がなくなる。このため、本実施形態に係る水晶素子110は、水晶素子110を吸着ノズル等で吸引し移動させる際、固定部11bまたは振動部111aの側面に設けられている一方の配線部115aに接触し、剥離することを低減させることができる。この結果、本実施形態に係る水晶素子110は、配線部11aの一部が剥離し、配線部115aが極端に細くなり抵抗値が高くなることを低減させることが可能となり、本実施形態に係る水晶素子110のクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることができる。
また、本実施形態に係る水晶素子110は、水晶素子110の上面を平面視したとき、振動部111aと固定部111bとの間に設けられている緩衝部111cに、貫通穴112が形成されている。このとき、貫通穴112の開口部は、四隅が円弧状となっている略矩形形状となっている。貫通穴112の開口部が矩形形状の場合、水晶素子110の外部から応力が加わったとき、貫通穴112の開口部に向かう向きに加わる応力が開口部の四隅に集中してしまいクラック等の破損が生じる虞がある。従って、本実施形態に係る水晶素子110では、貫通穴112の開口部を四隅が円弧状となっている略矩形形状とすることで、水晶素子110の外部から応力が加わったとき、開口部112の内壁面からクラック等の破損が生じることを低減させることができる。この結果、本実施形態に係る水晶素子110は、水晶素子110に生じるクラック等の破損によるクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることができる。
本実施形態に係る水晶デバイスは、図3および図4に示したように、本実施形態に係る水晶素子110と、水晶素子110が実装されている基板120と、基板120と接合され水晶素子110を基板120とで形成する空間内に気密封止している蓋体130と、から構成されている。
基板120は、本実施形態に係る水晶素子110を実装するためのものである。基板120は、例えば、略矩形形状の平板状に形成されており、一方の主面に一対の搭載パッド121が設けられ、他方の主面に複数の外部端子122が設けられている。また、基板120には、一対の搭載パッド121と複数の外部端子122とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。基板120は、例えば、アルミナセラミックス、または、ガラスーセラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなっている。基板120は、絶縁層を一層で用いたものであっても、絶縁層を複数層積層させたものであってもよい。
ここで、図面に合わせて、外部端子122が設けられている基板120の面を基板120の下面とし、この基板120の下面と反対側を向く基板120の面を基板120の上面とする。従って、ここでは、基板120の他方の主面が基板120の下面となり、基板120の一方の主面が基板120の上面となっている。
搭載パッド121は、水晶素子110の引出部114と導電性接着剤140によって電気的に接着され、水晶素子110を基板120に実装するためのものである。搭載パッド121は、基板120の上面を平面視したとき、基板120の短辺に沿って二つ並んで基板120の上面に設けられている。
外部端子122は、電子機器等のマザーボードに本実施形態に係る水晶デバイスを実装するためのものであり、実装時には、マザーボード上にある所定の実装パッド(図示せず)に接続固着される。外部端子122は、例えば、四つ設けられており、基板120の下面の四隅に一つずつ設けられている。外部端子122のうち所定の二つは、基板120の配線パターン(図示せず)によって、基板120の上面に設けられている一対の搭載パッド121と電気的に接続されている。
ここで、基板120は、基板120の上面を平面視したとき、長辺の寸法が0.6〜5.0mmであり、短辺の寸法が0.4〜3.2mmとなっている。
また、ここで、基板120の作製方法について説明する。基板120がアルミナセラミックスからなる場合、まず、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤を添加し混合して得た複数のセラミックグリーンシートを準備する。また、セラミックグリーンシートを打ち抜き予め施しておいた貫通孔内に、従来周知のスクリーン印刷等を用いて導体パターンとなる位置に所定の導電ペーストを塗布する。次に、複数の絶縁層が積層されている場合にはセラミックグリーンシートを積層させプレス加工して高温で焼成する。焼成後、導体パターンの所定の部位、具体的には、搭載パッド121、外部端子122および配線パターンとなる部分に、ニッケルメッキ、または、金メッキ等を施すことにより基板120が作製される。また、導電性ペーストは、例えば、タングステン、モリブデン、銅、銀またはパラジウム等の金属粉末の焼結体等から構成されている。
導電性接着剤140は、水晶素子110の引出部114と基板120の搭載パッド121とを電気的に接着、保持し、水晶素子110を基板120に実装するためのものである。導電性接着剤140は、引出部114と搭載パッド121との間に設けられている。導電性接着剤140は、シリコーン系の樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケルまたはニッケル鉄のいずれか、或いは、これらを組み合わせたものを含むものが用いられる。また、バインダーとしては、例えば、シリコーン系の樹脂、エポキシ系の樹脂、ポリイミド系の樹脂、または、ビスマレイミド系の樹脂が用いられている。
導電性接着剤140を用いて、引出部114と搭載パッド121とを電気的に接着する方法について説明する。まず、導電性接着剤140が、例えば、ディスペンサによって、搭載パッド121上に塗布される。その後、水晶素子110が導電性接着剤140上に搬送され、引出部114と搭載パッド121とで導電性接着剤140を挟むように水晶素子110が載置され、その状態で硬化される。水晶素子110は、固定部111bの上面が固定部111bより上下方向の厚みの薄い振動部111aの上面と同一平面上に位置しているので、引出電極114と搭載パッド121とを導電性接着剤140で電気的に接着するとき、上下方向の厚みが振動部と固定部と同じとなっている水晶素子を実装する場合と比較して、上下方向の厚みの差の分だけ振動部111aを基板120から離れた位置にすることができるので、振動部111aが基板120と接触することを低減させることが可能となる。
蓋体130は、封止基部131、封止枠部132から構成されている。また、蓋部材130は、基板120の上面と接合部材150により接合されて、基板120の上面に実装されている水晶素子110を気密封止するためのものである。
封止基部131は、略矩形形状の平板状となっており、その主面の大きさが水晶素子110よりも大きく、基板120の上面より小さくなっている。また、封止基部131の下面には、封止枠部132により凹部が形成されている。
封止枠部132は、枠部132aおよび鍔部132bから構成されている。枠部132aは、蓋体130の下面に凹部を形成するためのものであり、封止基部131の下面の外縁沿って設けられている。凹部内には、基板120の上面に実装されている水晶素子110が収容される。鍔部132bは、蓋体130と基板120とを接合する面積を確保し接合強度を上げるためのものである。鍔部132bは、枠部132aの外周面に沿って環状でかつ、枠部132aの外周側へ延設されている。
封止基部131および封止枠部132は、例えば、鉄、ニッケル、または、コバルトの少なくともいずれかを含む合金からなり、一体的に形成されている。このような蓋体130は、真空状態にある凹部空間、または、窒素ガスなどが充填された凹部を気密封止するためのものである。具体的には、枠部132aの下面と基板120の上面との間、および、鍔部132bの下面と基板120の上面との間に設けられた接合部材150とに熱が印加されることで、接合部材150が溶融され、封止枠部132の下面と基板120の上面とが溶融接合される。
ここで、蓋体130の作製方法について説明する。蓋体130の作製には、例えば、従来周知のプレス加工が用いられる。まず、矩形形状の平板を準備し、蓋体130の凹部と同形状となっている凸部とを有した一対の金型で、平板を挟み加圧し、封止基部131および封止枠部132が設けられ凹部が形成される。このようにして、蓋体130は、プレス加工を用いて平板を塑性加工し、凹部を形成し蓋体130を形成している。
接合部材150は、蓋体130の封止枠部132の下面と基板120の上面との間に設けられており、蓋地130と基板120とを接合するためのものである。接合部材150は、ガラスの場合には、300〜400℃で溶融するガラスであり、例えば、バナジウムを含有した低融点ガラス、または、酸化鉛系ガラスから構成されている。酸化鉛系ガラスの組成は、酸化銅、フッ化鉛、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化第二鉄、酸化銅、および、酸化カルシウムから構成されている。
次に、接合部材150を用いて蓋体130と基板120とを接合する接合方法について説明する。接合部材150の原料となるガラスは、バインダーと溶剤とが加えられたペースト状であり、溶融された後、固化されることで他の部材と接着する。接合部材150は、例えば、ガラスフリットペーストをスクリーン印刷法で封止枠部132の下面、具体的には、枠部132aの下面および鍔部132bの下面に塗布され乾燥することで設けられる。
また、接合部材150は、例えば、絶縁性樹脂の場合には、エポキシ樹脂、または、ポリイミド樹脂から構成されている。このとき、絶縁性樹脂は蓋体130の封止枠部132の下面に塗布される。絶縁性樹脂が塗付された蓋体130は、絶縁性樹脂を封止枠部132の下面と基板120の上面とで挟むように載置される。その後、絶縁性樹脂を加熱硬化させて、蓋体130と基板120とを接合している。
本実施形態に係る水晶デバイスで用いる水晶素子110は、上下方向の厚みが振動部111aと比較して厚い固定部111bを有し、固定部111bの上面、緩衝部111cの上面、および振動部111aの上面が同一平面上に位置している。また、本実施形態に係る水晶デバイスで用いる水晶素子110は、固定部111bの下面に一対の引出部114が設けられている。従って、本実施形態に係る水晶デバイスでは、固定部111bの下面に設けられている引出部114と基板120の上面に設けられている搭載パッド121とが導電性接着剤140によって電気的に接着、保持されるので、水晶素子110が基板120に実装されたとき、固定部111bと振動部111aの上下方向の厚みの差の分だけ、振動部111aを基板120から離れた位置に設けることが可能となる。このため、本実施形態に係る水晶デバイスでは、水晶素子110を基板120に実装したとき、振動部111aが基板120に接触することを低減させることが可能となる。この結果、本実施形態に係る水晶デバイスは、振動部111aが基板120に接触することによりクリスタルインピーダンス値が大きくなることを軽減させることができる。
また、本実施形態に係る水晶デバイスは、上下方向の厚みが振動部111aと比較して厚い固定部111bを有し、固定部111bの上面、緩衝部111cの上面、および振動部111aの上面が同一平面上に位置している水晶素子110が用いられ、この水晶素子110の固定部111bの下面に設けられた引出部114と基板120の搭載パッド121とが導電性接着剤140によって接着されている。従って、本実施形態に係る水晶デバイスでは、水晶素子110を基板120に実装するとき、引出部114と搭載パッド121とで挟まれた導電性接着剤140が振動部111a側に基板120の上面を伝って押し出されても、振動部111aの下面に設けられている励振電極部113bと導電性接着剤140とが接触することを低減させることが可能となる。この結果、本実施形態に係る水晶デバイスは、励振電極部113bと導電性接着剤140とが接触することによりクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることができる。
また、本実施形態に係る水晶デバイスは、上述した本実施形態に係る水晶素子110を基板120に実装しているので、本実施形態に係る水晶素子110の効果と同様の効果を得ることができ、クリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることができる。
(変形例)
以下、本実施形態の変形例に係る水晶素子210について説明する。なお、本実施形態の変形例における水晶素子210のうち上述した水晶素子110と同様の部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。本実施形態の変形例に係る水晶素子210は、図5に示すように、水晶素子210の下面を平面視して、固定部211bの四隅のうち二隅が円弧形状となっている点で本実施形態と異なる。
固定部211bは、水晶素子210を基板120等に実装するときに、保持部材、具体的には、導電性接着剤140によって基板120等に接着、保持されるためのものである。固定部211bの下面には、一対の引出部214(214a、214b)が並んで設けられており、この一対の引出部214が基板120の搭載パッド121と導電性接着剤140によって電気的に接着されている。これにより、水晶素子210が基板120に保持され実装される。
固定部211bは、略矩形形状の平板状となっている。水晶素子210の上面を平面視して、固定部211bは、振動部211aの所定の一辺に沿って、振動部211aから緩衝部211c、固定部211bの順で設けられている。このとき、固定部211bの上面、緩衝部211cの上面および振動部211aの上面は、同一平面上に位置している。
水晶素子210の下面を平面視して、固定部211bは、固定部211bの四隅のうち振動部211a側を向く二隅が円弧形状となっている。上述したように、水晶片211は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術により、振動部211a、固定部211b、緩衝部211cおよび傾斜部211dを一体となるように形成しているので、固定部211bの四隅のうち振動部211a側を向く二隅を円弧形状にすることで、水晶片211を平面視したときの傾斜部211dの形状を四隅が円弧形状となっている略矩形形状にすることが可能となる。傾斜部211dは、緩衝部211cの下面に設けられているため、水晶片211の上面を平面視したとき、緩衝部211cも四隅が円弧形状となっている略矩形形状となる。従って、振動部211aに設けられている励振電極部213に電圧が印加されたとき、励振電極部213の中心から円形、または、楕円形状に厚みすべり振動が減衰していくので、振動部211aの最も厚みすべり振動が減衰している点で緩衝部211cにより振動部211aを固定しているとみなすことができる。この結果、本実施形態に係る水晶素子210は、緩衝部211cによる振動部211aの厚みすべり振動への影響をより低減させることができ、水晶素子210のクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
本実施形態の変形例における水晶素子210では、水晶素子210の下面を平面視して、固定部211bの四隅のうち振動部211a側向く二隅を円弧形状にすることで、励振電極部213の中心からより離れた位置で振動部211aを緩衝部211cにより固定することが可能となる。従って、本実施形態の変形例における水晶素子210は、励振電極部213に電圧が印加されたとき、厚みすべり振動がより減衰している部分で振動部211aを固定することができるので、緩衝部211cによる振動部211aの厚みすべり振動への影響をより低減させることができ、水晶素子210のクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることが可能となる。
なお、ここで、貫通穴の開口部が略矩形形状となっておりその四隅が円弧状となっている場合について説明しているが、貫通穴の開口部が楕円形状にしてもよい。水晶素子の上面を平面視したとき、振動部と固定部との間に設けられている緩衝部に、開口部が楕円形状となっている貫通穴を形成することで、開口部が矩形形状の場合のように水晶素子の外部から応力が加わった場合に開口部に向かう向きに加わる応力が開口部の四隅に集中しククラック等の破損が生じることを低減させることが可能となる。つまり、貫通穴の開口部を楕円形状にすることで、水晶素子の外部から応力が加わったとき、開口部の内壁面からクラック等の破損が生じることを低減させることができる。この結果、水晶素子に生じるクラック等の破損によるクリスタルインピーダンス値が大きくなることを低減させることができる。
また、振動部の上面、固定部の上面および緩衝部の上面が同一平面上に位置し傾斜部が緩衝部の下面に設けられている場合について説明しているが、傾斜部が緩衝部の両主面に設けられていてもよい。
また、水晶デバイスが、水晶素子と基板と蓋体とのみからなる水晶振動子の場合について説明しているが、水晶素子と基板と蓋体と集積回路素子とからなり、基板に水晶素子と集積回路素子が実装された圧電発振器であってもよい。