(第一実施形態)
第一実施形態に係る水晶素子120は、図1〜図3に示したように、安定した機械振動を得ることができ、電子機器等の基準信号を発信するためのものである。水晶素子120は、振動部122、周辺部123からなる水晶片121と、この水晶片121の表面に設けられており、励振電極部125、配線部126および引出部127からなる金属パターン124と、から構成されている。また、水晶素子120を水晶デバイスに用いる場合、図6および図7に示すように、水晶素子120の金属パターン124の一部、具体的には、引出部127が、導電性接着剤140によって基板110の上面に設けられている搭載パッド111と電気的に接着され、水晶素子120が基板110の上面に実装される。その後、基板110と蓋体130とが接合されて、基板110と蓋体130とで形成される凹部133内に、基板110の上面に実装されている水晶素子120が気密封止される。
水晶片121は、図1〜図3に示したように、振動部122と、振動部122の縁部に沿って振動部122より上下方向の厚みが薄い周辺部123と、から構成されている。また、水晶片121は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって、振動部122および周辺部123が一体的に形成されている。水晶片121は、上面を平面視して、略矩形形状となっている。
ここで、図1および図3に示すように、水晶片121の上面を平面視して、水晶片121の一方の短辺の中点M11を通過する垂線を仮想垂線CL11とする。
水晶片121は、図1に示したように、水晶片121の上面を平面視して、この仮想垂線CL11に対し線対称となっている。また、水晶片121は、水晶片121の上面を平面視して、この仮想垂線CL11上に、水晶片121の中心C11が位置している。
振動部122は、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶部材が用いられている。振動部122は、略直方体形状に形成されている。このとき、振動部122の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっている。例えば、振動部122の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約37°回転させた面と、平行となっている。
ここで、図7に示したように、水晶素子120を基板110に実装したとき、基板110の上面を向く振動部122の面を振動部122の下面とし、この振動部122の下面と反対側を向く振動部122の面を振動部122の上面とする。また、この振動部122の上面および振動部122の下面を振動部122の主面とする。
振動部122は、水晶片121を平面視して、水晶片121の一方の短辺の中心M11を通過する垂線(仮想垂線CL11)に対して、線対称となっている。また、振動部122は、水晶片121を平面視して、振動部122の中心C12が仮想垂線CL11上に位置している。このとき、振動部122の中心C12と水晶片121の中心C11は重なっておらず、水晶片121の中心C11が振動部122の中心C12と比較して、水晶片121の一方の短辺側に位置している。従って、水晶片121の上面を平面視して、振動部122の中心C12から水晶片121の一方の短辺までの距離は、水晶片121の中心C11から水晶片121の一方の短辺までの距離よりも長くなっている。このような構成にすることで、図7に示したように、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、導電性接着剤140で水晶素子120を接着する箇所を水晶片121の一方の短辺の両端部にすることで、導電性接着剤140により接着される部分から振動部122の中心C22までの距離を長くすることができ、導電性接着剤140による影響、具体的には、導電性接着剤140が接着することによる振動部120の振動阻害をより低減させることが可能となる。この結果、導電性接着剤140で接着することにより等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
振動部122は、その両主面に一対の励振電極部125(125a,125b)が設けられている。振動部122は、この一対の励振電極部125に電圧が印加されると、励振電極部125に挟まれている振動部122の一部分が逆圧電効果および圧電効果により所定の周波数で厚みすべり振動をする。一般的に、厚みすべり振動の周波数は、振動部122の上下方向の厚みによって厚みすべり振動のしやすさが異なるため、振動部122の上下方向の厚みによって決定される。従って、30MHz以下のような低い周波数帯で厚みすべり振動させる場合、厚みすべり振動をさせるためには、30MHzより高い周波数帯で厚みすべり振動させる場合と比較し、振動エネルギーを要することとなる。このため、高い周波数帯で厚みすべり振動させる場合と比較し、励振電極部125で挟まれていない振動部にまで、振動漏れが生じている。
周辺部123(123a、123b)は、励振電極部125に電圧を印加したときに振動部122へ振動エネルギーを集中させつつ、水晶素子120を基板110に実装したときに実装による厚みすべり振動への影響を低減させるためのものである。周辺部123は、振動部122に沿って、環状に設けられており、その上下方向の厚みが振動部122の上下方向の厚みより薄くなっている。周辺部123は、図1〜図3に示したように、振動部の外縁に沿って設けられている傾斜部123aと、傾斜部123aの外縁に沿って設けられている平板部123bと、から構成されている。
傾斜部123aは、振動部122の外縁に沿って設けられている。また、傾斜部123aは、その上下方向の厚みが振動部122から平板部123bにかけて徐々に薄くなっている。傾斜部123aは、結晶軸の位置関係によってエッチングされやすさが異なることを利用し、振動部と平板部との間に形成されている。このように、振動部122と平板部123bとの間に傾斜部123aを設けることで、導電性接着剤140を用いて水晶素子120を基板110に実装する際に、平板部123bを導電性接着剤140で接着することによる振動部122への影響を軽減させることができる。なお、ここで、それぞれの結晶軸との位置関係によってエッチングされやすさが異なるため、水晶素子120を平面視したとき、傾斜部123aの幅全て同じとなっておらず、場所によって異なっている。本実施形態では、図で説明をしやすくするために、傾斜部123aの幅が全て同じとなっている状態を図示している。
平板部123bは、傾斜部123aの外縁に沿って設けられている。また、平板部123bは、その上下方向の厚みが、振動部122の上下方向の厚みより薄くなっている。傾斜部123aと平板部123bとからなる周辺部123の表面には、配線部126および引出部127が設けられている。
このように振動部122と、振動部122より上下方向の厚みが薄い周辺部123と、からなる水晶片121を用いることで、振動部122の一部分を逆圧電効果および圧電効果で厚みすべり振動させたときに、振動部122と周辺部123とで厚みすべり振動の振動状態が大きく異なる状態にすることができる。従って、このような構成にすることで、平板状の水晶片を用いた場合と比較して、振動部122のみに振動エネルギーをより集中させることが可能となる。この結果、このような水晶片121を用いた水晶素子120では、振動エネルギーの分散または漏れにより等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
ここで、水晶片121の各寸法の実施例について説明する。水晶片121は、平面視して、略矩形形状となっており、長辺の寸法が、0.5mm〜3.2mmとなっており、短辺の寸法が、0.2mm〜2.5mmとなっている。振動部122は、平面視して、略矩形形状となっており、水晶片121の長辺に平行な寸法が、0.3mm〜2.7mmとなっており、水晶片121の短辺に平行な寸法が、0.2mm〜2.4mmとなっている。また、振動部122は、その上下方向の厚みが、30μm〜167μmとなっている。周辺部123の一部である平板部123bは、その上下方向の厚みが、27.30μm〜151.82μmとなっている。
ここで、このような水晶片121の形成方法について説明する。このような水晶片121の形成方法は、例えば、水晶ウエハ用意工程、第一エッチング工程、第二エッチング工程から構成される。水晶ウエハ用意工程では、まず、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した水晶ウエハを用意する。このとき、水晶ウエハの上下方向の厚みは、振動部122の上下方向の厚みとなっている。また、水晶ウエハの主面が振動部122の主面と同じカットアングルとなるようになっている。従って、水晶ウエハの主面は、X軸とZ軸とに平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに所定の角度回転させた面と平行となっている。第一エッチング工程では、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術が用いられる。まず、水晶ウエハの両主面上に保護金属膜が設けられ、この保護金属膜上に感光性レジストが塗付され、所定のパターンに露光・現像される。このとき、水晶ウエハを平面視すると、振動部122となる部分にのみ感光性レジストおよび保護金属膜が残っている。その後、所定のエッチング溶液に浸漬させ、エッチングされた水晶ウエハの上下方向の厚みが周辺部123の平板部123bの上下方向の厚みと同じになるまで、水晶ウエハをエッチングする。最後に、水晶ウエハに残っている感光性レジストおよび保護金属膜を剥離させる。第二エッチング工程では、第一エッチング工程後の水晶ウエハの両主面に保護金属膜を設け、保護金属膜上に感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光・現像する。このとき、水晶ウエハを平面視すると、水晶片121となる部分には感光性レジストおよび保護金属膜が残っている。その後、所定のエッチング溶液に浸漬させ、水晶ウエハをエッチングする。上述したようにすることで、複数の水晶片121がその一部が連結された状態で水晶ウエハ内に形成される。
水晶片121に設けられている金属パターン124は、水晶片121の外部から電圧を印加するためのものである。金属パターン124は、励振電極部125、配線部126および引出部127から構成されている。金属パターン124は、一層となっていてもよいし、複数の金属層が積層されていてもよい。金属パターン124は、特に図示しないが、例えば、第一金属層と、第一金属層上に積層されている第二金属層と、からなる。第一金属層は、水晶と密着性のよい金属が用いられ、例えば、ニッケル、クロム、ニクロムまたはチタンのいずれか一つが用いられる。水晶と密着性のよい金属を用いることで、水晶に密着しにくい金属材料であっても、第二金属層に用いることができる。第二金属層は、金属材料の中で比較的、電気抵抗率が低く、安定した金属材料が用いられる。第二金属層は、例えば、金、金を含む合金、銀または銀を含む合金のいずれか一つが用いられる。このように、金属材料の中で比較的、電気抵抗率が低い金属材料を用いることで、金属パターン124自身の電気抵抗率を低くすることができ、この結果、水晶素子120の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。また、このように、安定した金属材料を用いることで、周囲の酸素と酸化し、その分だけ金属パターン124の重さが変化し、水晶素子120の周波数が変化することを低減させることが可能となる。
励振電極部125(125a,125b)は、振動部122に電圧を印加するためのものである。励振電極部125は、一対となっており、振動部122の上面に一方の励振電極部125aが設けられ、振動部122の下面に振動部122を挟んで一方の励振電極部125aと対向するように他方の励振電極部125bが設けられている。励振電極部125は、水晶素子120を平面視して、略矩形形状となっている。
図1および図3に示したように、励振電極部125aは、水晶素子120を平面視して、水晶片121の一方の短辺の中点M11を通過する垂線(仮想垂線CL11)に対し、線対称となっている。このような構成にすることで、励振電極部125に電圧を印加したとき、励振電極部125に蓄えられる電荷が仮想垂線CL11に対し線対称となり、励振電極部125に挟まれている水晶片121の一部を厚みすべり振動させるための振動エネルギーを、仮想垂線CL11に対して線対称に分布させることができる。従って、本実施形態では、振動エネルギーを仮想垂線CL11に対し線対称に分布させることができるため、仮想垂線に対し左右の振動バランスを向上させることができる。このため、仮想垂線CL11に対し左右の振動バランスの低下により等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、図1および図3に示したように、励振電極部125aは、水晶素子120を平面視して、その励振電極部125の中心C13が仮想垂線CL11上に位置しつつ、振動部122の中心C12と重なる位置に位置している。従って、励振電極部125の中心C13は、水晶片121の中心C11と異なる位置にあり、水晶片121の一方の短辺より離れた位置に位置している。このような構成にすることで、図6に示したように、水晶片121の一方の短辺の両端部を導電性接着剤140で接着し、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、励振電極部125で挟まれている振動部122の一部分を、水晶片121の一方の短辺より離れた位置にすることができる。励振電極部125に電圧が印加されたときに励振電極部125に挟まれている振動部122の一部分が最も振動する構成となっているので、この励振電極部125に挟まれている振動部122の一部分をより導電性接着剤140で接着される部分より、遠くすることができる。この結果、導電性接着剤140による影響、具体的には、導電性接着剤140の接着による振動阻害、を低減させることができ、導電性接着剤140で接着することによる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
図1および図3に示したように、励振電極部125aは、水晶素子120を平面視したとき、水晶片121の長辺に平行な励振電極部123の長さが、水晶片121の長辺に平行な振動部122の長さより短くなっている。従って、水晶素子122を平面視したとき、近接している水晶片121の短辺に平行な励振電極部125aの辺と水晶片121の短辺に平行な振動部122の辺との間には、振動部122の一部分が露出した状態となっている。また、水晶素子120を平面視して、振動部122の中心C12と励振電極部125aの中心C13が重なる位置に位置しているので、近接する水晶片121の短辺に平行な励振電極部125aの辺と水晶片121の短辺に平行な振動部122の辺との長さは、同じ長さとなっている。
ここで、図3に示したように、水晶片121の長辺の長さを第一距離D11とし、水晶片121の長辺に平行な振動部122の長さを第二距離D12とし、水晶片121の長辺に平行な励振電極部125aの長さを第三距離D13とする。また、露出している振動部122を挟むように位置している二辺間の長さ、具体的には、水晶片121の短辺に平行な振動部122の辺と水晶片121の短辺に平行な励振電極部125aの辺との長さを、第四距離D14とする。
つまり、図1および図3に示したように、励振電極部125aは、水晶素子120を平面視したとき、振動部122の内縁側に位置するように設けられている。励振電極部125に振動部122の上下方向で挟まれている振動部122の一部分が圧電効果および逆圧電効果により振動するので、このような構成にすることで、励振電極部125に挟まれている振動部122の一部分が振動するときに、励振電極部125aの外縁から振動部122の外縁に向かって振動漏れが生じ、この漏れでた振動が、振動部122の外縁に設けられている傾斜部123aの傾斜面で反射した場合であっても、励振電極部125aが平面視して振動部122の内縁側に位置するように設けられているので、振動部122の縁部に設けられている傾斜部123aの影響を低減させることが可能となる。この結果、振動部122の縁部に設けられている傾斜部123aの影響、具体的には、傾斜部123aによる振動阻害による等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
このとき、水晶素子120を平面視して、露出している振動部122を挟むように位置している二辺間の長さ、具体的には、水晶片121の短辺に平行な振動部122の辺と水晶片121の短辺に平行な励振電極部125aの辺との長さ(第四距離D14)は、5μm以上55μm以下であることが望ましい。第四距離D14が0μm以上でかつ5μmより小さい場合、励振電極部125に電圧を印加したとき、励振電極部125で振動部122の上下方向で挟まれている部分から挟まれていない部分へ振動漏れが生じ、その漏れた振動が振動部122の外縁に沿って設けられている傾斜部123aで反射し、励振電極部125で挟まれている部分の振動を阻害してしまい、等価直列抵抗値が大きくなる虞がある。第四距離D14が55μmより大きい場合、水晶素子120の小型化に伴い振動部122の大きさも小さくなり、その結果、励振電極部125aの大きさも小さくなってしまう。このため、励振電極部125に蓄えられる電荷の量も減り、励振電極部125で振動部122の上下方向で挟まれている振動部122を振動させるための振動エネルギーが不足し、等価直列抵抗値が大きくなってしまう虞がある。従って、第四距離D14は、5μm以上55μm以下であることが望ましい。
ここで、水晶素子120を基板110に実装したときの等価直列抵抗値と第四距離D14との関係を実験した実験結果を、図4および図5に示す。なお、図4と図5とは、水晶片および振動部の大きさが異なっている。
図4に示した実験に用いた水晶振動子は、次のような水晶素子120を基板110に導電性接着剤140を用いて実装したものである。この水晶振動子は、第四距離D14を−30〜80μmの範囲で数値ごとに10個ずつ作製した。なお、このとき、基板110と蓋体130とは、接合されていない状態となっている。水晶素子120の振動周波数が、24MHzとなっており、水晶素子120を平面視したとき、水晶片121の長辺が0.790mm、水晶片121の短辺が0.540mm、水晶片121の長辺に平行な振動部122の長さが0.560mm、水晶片121の短辺に平行な振動部122の長さが0.436mmとなっている。また、振動部122の上下方向の厚みが、69.58μmとなっている。
図4の縦軸は、10個の水晶振動子の等価直列抵抗値の平均値を示している。図4の横軸は、第四距離D14となっている。なお、図4において、第四距離D14が0より小さい場合とは、水晶素子120を平面視して、励振電極部125の外縁より内側に振動部122の外縁が位置している場合である。本実施形態中では、第四距離D14を振動部122の露出している部分の長さと定義しているため、0より小さい第四距離D14は実際には存在していないこととなるが、水晶素子を平面視して励振電極部の外縁が振動部の外縁より大きくなっている従来技術との比較をするために、図4中では、近接する水晶片121の短辺に平行な振動部122の辺と水晶片121の短辺に平行な励振電極部125aの辺との長さとして説明している。第四距離D14が0となっている場合とは、水晶素子120を平面視したときに、励振電極部125aの外縁と振動部122の外縁とが重なっている場合である。第四距離D14が0より小さい場合とは、水晶素子120を平面視したときに、励振電極部125aの外縁より内側に振動部122の外縁が位置している場合である。第四距離D14が0より大きい場合とは、水晶素子120を平面視したときに、振動部122の外縁より内側に振動部122の外縁が位置している場合である。
図4に示すように、第四距離D14が5μm以上かつ55μm以下となっている場合、水晶デバイスが実装され組み込まれる電子機器等の発振回路において、発振しやすさの一つの目安である等価直列抵抗値100Ω以下となっていることがわかる。また、第四距離D14が5μm以上かつ55μm以下となっている場合、第四距離D14の変化量に対し等価直列抵抗値の変化量が、第四距離D14が5μmより小さい、または、第四距離D14が55μmより大きい場合と比較して、小さくなっている。
第四距離D14が5μmより小さい場合には、等価直列抵抗値が100Ωより大きくなっている。また、第四距離D14が5μmより小さい場合、第四距離D14の変化量に対し等価直列抵抗値の変化が、第四距離D14が5μm以上かつ55μm以下となっている場合と比較して、大きくなっている。
第四距離D14が55μmより大きい場合には、等価直列抵抗値が100Ωより大きくなっている。また、第四距離D14が55μmより大きい場合、第四距離D14の変化量に対し等価直列抵抗値の変化が、第四距離D14が5μm以上かつ55μm以下となっている場合と比較して、大きくなっている。
従って、第四距離D14を5μm以上かつ55μm以下とすることで、等価直列抵抗値をより低減させることが可能となることがわかる。また、第四距離D14を5μm以上かつ55μm以下とすることで、第四距離D14の変化量に対し等価直列抵抗値の変化量を、第四距離D14が5μmより小さい場合、または、第四距離D14が55μmより大きい場合と比較して、小さくすることができる。このため、第四距離D14を5μm以上かつ55μm以下とすることで、第四距離D14が5μmより小さい場合、または、第四距離D14が55μmより大きい場合と比較して、第四距離D14の微小変化に対し等価直列抵抗値の変化量を低減させることができるので、振動部122に対する励振電極部125aの位置ずれによる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
また、図5に示した実験に用いた水晶振動子は、水晶素子120の水晶片121の大きさ、および、振動部122の大きさが、図4に示した実験に用いた水晶振動子と異なる。図5に示した実験に用いた水晶振動子は、次のような水晶素子120を基板110の導電性接着剤140を用いて実装したものである。このとき、基板110と蓋体130とは、接合されていない状態となっている。水晶素子120の振動周波数が、27.1MHzとなっており、水晶素子120を平面視したとき、水晶片121の長辺が0.730mm、水晶片121の短辺が0.530mm、水晶片121の長辺に平行な振動部122の長さが0.485mm、水晶片121の短辺に平行な振動部122の長さが0.425mmとなっている。また、振動部122の上下方向の厚みが、61.62μmとなっている。なお、図5の縦軸は、図4と同様に、第四距離D14を−30〜80μmの範囲で数値ごとに10個作製した水晶振動子の等価直列抵抗値の平均値を示しており、図5の横軸は、第四距離D14を示している。
図5に示すように、第四距離D14が5μm以上かつ55μm以下となっている場合、さらに発振しやすい等価直列抵抗値75Ω以下となっていることがわかる。また、第四距離D14が5μm以上かつ55μm以下となっている場合、第四距離D14の変化量に対し等価直列抵抗値の変化量が、第四距離D14が5μmより小さい、または、第四距離D14が55μmより大きい場合と比較して、小さくなっている。
第四距離D14が5μmより小さい場合には、等価直列抵抗値が75Ωより大きくなっている。また、第四距離D14が5μmより小さい場合、第四距離D14の変化量に対し等価直列抵抗値の変化が、第四距離D14が5μm以上かつ55μm以下となっている場合と比較して、大きくなっている。
第四距離D14が55μmより大きい場合には、等価直列抵抗値が75Ωより大きくなっている。また、第四距離D14が55μmより大きい場合、第四距離D14の変化量に対し等価直列抵抗値の変化が、第四距離D14が5μm以上かつ55μm以下となっている場合と比較して、大きくなっている。
従って、第四距離D14を5μm以上かつ55μm以下とすることで、等価直列抵抗値をより低減させることが可能となることがわかる。また、第四距離D14を5μm以上かつ55μm以下とすることで、第四距離D14の変化量に対し等価直列抵抗値の変化量を、第四距離D14が5μmより小さい場合、または、第四距離D14が55μmより大きい場合と比較して、小さくすることができる。このため、第四距離D14を5μm以上かつ55μm以下とすることで、第四距離D14が5μmより小さい場合、または、第四距離D14が55μmより大きい場合と比較して、第四距離D14の微小変化に対し等価直列抵抗値の変化量を低減させることができるので、振動部122に対する励振電極部125aの位置ずれによる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
図4および図5に示した実験結果からも、等価直列抵抗値をさらに低減させるためには、第四距離D14を、5μm以上かつ55μm以下にすることが有効であるといえる。
配線部126(126a、126b)は、一対となっており、励振電極部125に電圧を印加させるためのものであり、水晶片121の表面に設けられている。一方の配線部126aは、一端が水晶片121の上面に設けられている励振電極部125aに接続され、他端が水晶片121の一方の短辺まで延設されている。また、一方の配線部126aは、他端が一方の引出部127aに接続されている。他方の配線部126bは、一端が水晶片121の下面に設けられている励振電極部125b接続され、他端が水晶片121の一方の短辺まで延設されている。また、他方の配線部126bは、他端が他方の引出部127bに接続されている。
引出部127(127a、127b)は、配線部126に接続されており、配線部126を介して励振電極部125に電圧を印加するためのものである。引出部127は、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、導電性接着剤140によって、基板110の上面に設けられている搭載パッド111と電気的に接着される。引出部127は、一対となっており、水晶素子120の下面を平面視して、水晶片120の一方の短辺に沿って二つ並んで設けられている。
ここで、励振電極部125、配線部126および引出部127からなる金属パターン124を形成する方法について説明する。ここでは、励振電極部125、配線部126および引出部127を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、一体的に形成する場合を例に説明する。まず、水晶片121となる部分が連結されている状態の水晶ウエハを用意し、この水晶ウエハの両主面上に金属パターン124となる金属膜を形成する。次に、この金属膜上に感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光・現像する。このとき、現像後、感光性レジストは、金属パターン124となる部分、具体的には、励振電極部125、配線部126および引出部127となる部分に残っている状態となっている。最後に、残っている感光性レジストを除去することで、水晶ウエハの水晶片121に励振電極部125、配線部126および引出部127からなる金属パターン124が形成される。なお、励振電極部125、配線部126、引出部127をそれぞれ別々に形成してもよいし、フォトリグラフィー技術およびエッチング技術でなく、スパッタリング技術または蒸着技術を用いて形成してもよいし、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術とスパッタリング技術または蒸着技術を組み合わせて形成してもよい。
第一実施形態に係る水晶素子120は、略直方体形状の振動部122と、振動部122の縁部に沿って振動部122より上下方向の厚みが薄い周辺部123と、から構成されている水晶片121と、水晶片121の振動部122に設けられている略矩形形状の一対の励振電極部125(125a,125b)と、水晶片121の周辺部の所定の一辺に沿って並んで設けられている一対の引出部127(127a,127b)と、励振電極部125と引出部127とを電気的に接続している配線部126(126a,126b)と、からなる水晶素子120であって、水晶素子120を平面視して、水晶片121の所定の一辺に平行な振動部122の二つの辺の間の距離が、水晶片121の所定の一辺に平行な励振電極部125aの二つの辺の間の距離より、長くなっており、励振電極部125aが振動部122の内側に設けられている。
言い換えると、第一実施形態に係る水晶素子120は、水晶素子120を平面視して、水晶片121の長辺に平行な励振電極部125aの長さ(第三距離D13)が、水晶片121の長辺に平行な振動部122の長さ(第二距離D12)より短くなっており、励振電極部125aが振動部122の内縁側に設けられている状態となっている。このような構成にすることで、励振電極部125に電圧を印加したときに、励振電極部125に振動部122の上下方向で挟まれている振動部122の一部分が圧電効果および逆圧電効果により振動するので、励振電極部125に振動部122の上下方向で挟まれている振動部122の一部分が振動するときに、水晶素子120を平面視して励振電極部125aの外縁から振動部122の外縁に向かって振動漏れが生じ、この漏れた振動が振動部122の外縁に設けられている傾斜部123aの面で反射した場合であっても、励振電極部125aが振動部122の内縁側に位置するように設けられているので、振動部122の縁部に設けられている傾斜部123aの影響を低減させることが可能となる。この結果、振動部122の縁部に設けられている傾斜部123aの影響、具体的には、傾斜部123aによる振動阻害による等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、第一実施形態に係る水晶素子120は、水晶素子120を平面視して、露出している振動部122を挟むように位置している振動部122と励振電極部125aの二辺間の距離、具体的には、水晶片121の所定の一辺に平行な振動部122の辺と水晶片121の所定の一辺に平行な励振電極部125aの辺との距離が、5μm以上55μm以下となっている。仮に、第四距離D14が5μmより小さい場合、励振電極部125に電圧を印加したとき、励振電極部125で振動部122の上下方向で挟まれている部分から挟まれていない部分へ振動漏れが生じ、その漏れた振動が振動部122の外縁に沿って設けられている傾斜部123aで反射し、励振電極部125で振動部122の上下方向で挟まれている部分の振動を阻害してしまい、等価直列抵抗値が大きくなる虞がある。また、第四距離D14が55μmより大きい場合、水晶素子120の小型化に伴い振動部122の大きさが小さくなるので、励振電極部125aの大きさも小さくなってしまう。このため、励振電極部125aに蓄えられる電荷の量も減り、励振電極部125aで挟まれている振動部122を振動させるための振動エネルギーが不足し、等価直列抵抗値が大きくなってしまう虞がある。従って、第四距離D14を5μm以上55μm以下にすることで、等価直列抵抗値が大きくなることを更に低減させることができる。
また、第一実施形態に係る水晶素子120は、水晶素子120を平面視して、水晶片121の所定の一辺の中心M11を通る仮想垂線CL11に対し、水晶片121、振動部122および励振電極部125aが線対称となっている。このような構成にすることで、励振電極部125に電圧を印加させ、励振電極部125に振動部の上下方向で挟まれている振動部122の一部分を逆圧電効果および圧電効果により振動させたとき、水晶片121および振動部122を仮想垂線CL11に対し線対称にすることで、仮想垂線CL11に対し質量も線対称となるようにすることができ、励振電極部125aを仮想垂線CL11に対し線対称にすることで、振動エネルギー分布、具体的には、励振電極部125aに蓄えられる電荷の分布も線対称となるようにすることができる。従って、第一実施形態に係る水晶素子120は、励振電極部125aに電圧を印加させたときに、仮想垂線CL11に対し振動バランスを向上させることが可能となる。このため、第一実施形態に係る水晶素子120は、振動バランスにより等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
また、第一実施形態に係る水晶素子120は、水晶素子120を平面視して、励振電極部125aの中心C13が振動部122の中心C12と重なっており、水晶片121の中心C11が振動部122の中心C12より水晶片121の所定の一辺側に位置している。このとき、水晶片121の所定の一辺の縁部には、一対の引出端子127(127a,127b)が二つ並んで設けられている。従って、第一実施形態に係る水晶素子120では、励振電極部125aの中心C13が水晶片121の中心C11と異なる位置にあり、励振電極部125aおよび振動部122の中心C12,C13が、引出部127が設けられている水晶片121の所定の一辺より離れた位置に、位置していることとなる。このため、水晶素子120の引出部127を導電性接着剤140で接着し水晶デバイスとして用いる場合、振動部122を、水晶片121の所定の一辺より離れた位置にすることができる。この結果、励振電極部125に電圧が印加されたとき、圧電効果および逆圧電効果により振動する振動部122を、導電性接着剤140で接着されている部分より遠ざけることが可能となり、導電性接着剤140の接着による振動阻害を低減させることができ、振動阻害による等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
(変形例)
第一実施形態の変形例では、第一実施形態に係る水晶素子120を用いた水晶デバイスについて説明する。第一実施形態の変形例に係る水晶デバイスは、図6および図7に示したように、第一実施形態に係る水晶素子120と、この水晶素子120を実装している基板110と、基板110と接合され水晶素子120を気密封止している蓋体130と、基板110に水晶素子120を実装するための導電性接着剤140と、から主に構成されている。
基板110は、水晶素子120を実装するためのものである。基板110は、図6および図7に示したように、例えば、平板状の矩形形状に形成されており、一方の主面に一対の搭載パッド111が設けられ、他方の主面に複数の外部端子112が設けられている。また、基板110には、一対の搭載パッド111と所定の外部端子112とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。基板110は、例えば、アルミナセラミックス、または、ガラスーセラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなっている。基板110は、絶縁層を一層で用いたものであっても、絶縁層を複数積層させたものであってもよい。
ここで、図面に合わせて、外部端子112が設けられている基板110の他方の主面を基板110の下面とし、この基板110の下面と反対側を向く基板110の一方の主面を基板110の上面とする。
搭載パッド111は、水晶素子120を基板110に実装するためのものである。搭載パッド111は、基板110の上面に設けられており、例えば、基板110の上面を平面視したとき、基板110の短辺に沿って二つ並んで配置されている。
外部端子112は、電子機器等のマザーボードに実装するためのものであり、電子機器等のマザーボードに実装する際、マザーボード上にある所定の実装パッド(図示せず)に半田等により、接続固着されている。外部端子112は、例えば、四つ設けられており、基板110の下面の四隅に一つずつ設けられている。外部端子112のうち所定の二つは、基板110に設けられている配線パターン(図示せず)によって、基板110の上面に設けられている一対の搭載パッド111と電気的に接続されている。基板110の大きさは、例えば、基板の上面を平面視して、長辺の寸法が、0.65〜5.0mmとなっており、短辺の寸法が、0.4〜3.2mmとなっている。
ここで、基板110の作製方法について説明する。基板110がアルミナセラミックスからなる場合、まず、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加し混合して得た複数のセラミックグリーンシートを準備する。また、セラミックグリーンシートの表面、または、セラミックグリーンシートに打ち抜き設けていた貫通孔内に、従来周知のスクリーン印刷法を用いて導体パターンとなる位置に所定の導電ペーストを塗布する。複数の絶縁層が積層されている場合には、次に、セラミックグリーンシートを積層させプレス加工し、高温で焼成する。焼成後、導体パターンの所定の部位、具体的には、搭載パッド111、外部端子112および配線パターン(図示せず)となる部分に、ニッケルメッキ、または、金メッキを施すことにより基板が作成される。また、導電ペーストは、例えば、タングステン、モリブデン、銅、銀またはパラジウム等の金属粉末の焼結体等から構成されている。
導電性接着剤140は、水晶素子120を基板110の上面に実装するためのものである。導電性接着剤140は、シリコーン系の樹脂バインダーの中に導電フィラーとしての導電性粉末が含有されているものである。導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケルまたはニッケル鉄のいずれか、或いは、これらを組み合わせたものを含むものを用いられる。また、バインダーとしては、例えば、シリコーン系の樹脂、エポキシ系の樹脂、ポリイミド系の樹脂またはビスマレイミド系の樹脂が用いられる。
導電性接着剤140は、搭載パッド111上に塗布され、搭載パッド111と水晶素子120の引出部127(127a,127b)とを電気的に接続させている。導電性接着剤140は、例えば、加熱硬化されたとき、樹脂バインダーが収縮し、導電フィラー同士がより近接する特性を有しているので、加熱硬化することで、搭載パッド111と水晶素子120の引出部127とを接着しつつ、電気的に接続することができる。このため、導電性接着剤140が加熱硬化し固化するとき、導電性接着剤140が収縮する。従って、導電性接着剤140が加熱硬化し固化するときには、導電性接着剤140が接触している搭載パッド111および水晶素子120の引出部127には、それぞれから導電性接着剤140に向かう向きに応力が加わることとなる。
蓋体130は、基板110の上面と接合部材150により接合されて、基板110の上面に実装されている水晶素子120を気密封止するためのものである。また、蓋体130は、封止基部131と封止枠部132とから構成されている。また、蓋体130は、封止基部131の下面に封止枠部132が設けられており、封止基部131の下面と封止枠部132の内壁面とで凹部133が形成されている。
封止基部131は、例えば、略直方体形状となっており、その主面の大きさが、水晶片121の主面の大きさより大きく、かつ、基板110の上面より小さくなっている。封止枠部132は、枠部132aおよび鍔部132bから構成されている。枠部132aは、蓋体130に凹部133を形成するためのものであり、封止基部131の下面の外縁に沿って設けられている。凹部133内には、基部131の上面に実装されている水晶素子120が収容される。鍔部132bは、蓋体130と基板110とが接合する面積を確保し接合強度を上げるためのものである。鍔部132bは、枠部132aの外周縁に沿って環状で、かつ、枠部132aの外縁側へ延設されている。封止基部131および封止枠部132は、例えば、鉄、ニッケルまたはコバルトの少なくともいずれかを含む合金からなり、一体的に形成されている。このような蓋体130は、真空状態にある凹部133、または、窒素ガスなどが充填された凹部133を気密封止するためのものである。具体的には、蓋体130は、所定の雰囲気中で、封止枠部132の下面(枠部132aの下面および鍔部132bの下面)と基板110の上面との間に設けられた接合部材150とに熱が加えられることで、接合部材150が溶融され、封止枠部132の下面と基板110の上面とが溶融接合される。
ここで、蓋体130の作製方法について説明する。蓋体130の作製には、例えば、従来周知のプレス加工が用いられる。矩形形状の平板を準備し、蓋体130の凹部133と同じ形状となっている凸部と凹部とを有した一対の金型で平板を挟み加圧し、封止基部131および封止枠部132が設けられ凹部133が形成される。このようにして、蓋体130は、プレス加工を用いて平板を塑性加工し、作製している。
接合部材150は、蓋体130の封止枠部132の下面と基板110の上面との間、具体的には、枠部132aの下面と基板110の上面との間および鍔部132bの下面と基板110の上面との間に設けられており、蓋体130と基板110とを接合するためのものである。接合部材150は、例えば、ガラスの場合には、300〜400℃で溶融するガラスであり、例えば、バナジウムを含有した低融点ガラス、または、酸化鉛系ガラスから構成されている。酸化鉛系ガラスの組成は、酸化鉛、フッ化鉛、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ホウ素。酸化亜鉛、酸化第二鉄、酸化銅および酸化カルシウムから構成されている。
次に、接合部材150を用いて、蓋体130と基板110とを接合する方法について説明する。接合部材150の原料となるガラスは、バインダーと溶剤とが加えられたペースト状であり、溶融された後、固化されることで他の部材と接着する。接合部材150は、例えば、ガラスフリットペーストをスクリーン印刷法で封止枠部132の下面、具体的には、枠部132aの下面および鍔部132bの下面に塗布され乾燥されることで設けられている。
また、接合部材150は、例えば、絶縁性樹脂の場合には、エポキシ系の樹脂またはポリイミド系の樹脂から構成されている。このとき、絶縁性樹脂は、蓋体130の封止枠部132の下面に塗布される。絶縁性樹脂が塗付された蓋体130は、封止枠部132の下面と基板110の上面とで絶縁性樹脂を挟むように載置される。その後、絶縁性樹脂を加熱硬化させて、蓋体130と基板110とを接合している。
第一実施形態の変形例に係る水晶デバイスは、第一実施形態に係る水晶素子120と、水晶素子120の引出部127(127a,127b)に固着されている導電性接着剤140と、導電性接着剤140によって水晶素子120を実装している基板110と、基板110と接合され、水晶素子120を気密封止している蓋体130と、からなる。このような構成にすることで、第一実施形態に係る水晶素子により等価直列抵抗値を低減させることができるので、水晶デバイスの等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
(第二実施形態)
以下、第二実施形態に係る水晶素子220および水晶デバイスについて説明する。なお、第二実施形態に係る水晶素子220および水晶デバイスと同様の部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
第二実施形態は、図8および図10に示したように、水晶素子220を平面視したときに、振動部222の中心C22と励振電極部225aの中心C23とが重なっていない点において、第一実施形態と異なる。
水晶片221は、振動部222と、振動部222の縁部に沿って振動部222より上下方向の厚みが薄い周辺部223と、から構成されている。また、水晶片221は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって、振動部222および周辺部223が一体的に形成されている。水晶片221は、上面を平面視して、略矩形形状となっている。
ここで、水晶片221の上面を平面視して、水晶片221の一方の短辺の中点M21を通過する垂線を仮想垂線CL21とする。
水晶片221は、図8および図10に示したように、水晶片221の上面を平面視して、この仮想垂線CL21に対し線対称となっている。また、水晶片221は、水晶片221の上面を平面視して、この仮想垂線CL21上に、水晶片221の中心C21が位置している。
振動部222は、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶部材が用いられている。振動部222は、略直方体形状に形成されている。このとき、振動部222の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっている。例えば、振動部222の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約37°回転させた面と、平行となっている。
ここで、説明をしやすくするために、水晶素子220を基板110に実装したとき、基板110の上面を向く振動部222の面を振動部222の下面とし、この振動部222の下面と反対側を向く振動部222の面を振動部222の上面とする。また、この振動部222の上面および振動部222の下面を振動部222の主面とする。
振動部222は、水晶片221を平面視して、水晶片22の一方の短辺の中点M21を通過する垂線(仮想垂線CL21)に対して、線対称となっている。また、振動部222は、水晶片221を平面視して、振動部222の中心C22が仮想垂線CL21上に位置している。このとき、振動部222の中心C22と水晶片221の中心C21は重なっておらず、水晶片221の中心C21が振動部222の中心C22と比較して、水晶片221の一方の短辺側に位置している。従って、水晶素子220を平面視して、振動部222の中心C22から水晶片221の一方の短辺までの距離は、水晶片221の中心C21から水晶片221の一方の短辺までの距離よりも長くなっている。このような構成にすることで、水晶素子220を水晶デバイスとして用いる場合、導電性接着剤140で水晶素子220を接着する箇所を水晶片221の一方の短辺の両端部にすることで、導電性接着剤140による影響をより低減させることが可能となる。この結果、導電性接着剤140による影響、具体的には、導電性接着剤140の保持による振動部222の振動阻害、を低減させることができ、導電性接着剤140で接着することによる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
振動部222は、その両主面に一対の励振電極部225(225a、225b)が設けられている。振動部222は、この一対の励振電極部225に電圧が印加されると、励振電極部225に振動部222の上下方向で挟まれている振動部222の一部分が逆圧電効果および圧電効果により所定の周波数で厚みすべり振動をする。一般的に、厚みすべり振動の周波数は、振動部222の上下方向の厚みによって厚みすべり振動のしやすさが異なるため、振動部222の上下方向の厚みによって決定される。従って、30MHz以下のような低い周波数帯で厚みすべり振動させる場合、厚みすべり振動をさせるためには、30MHzより高い周波数帯で厚みすべり振動させる場合と比較し、振動エネルギーを要することとなる。このため、高い周波数帯で厚みすべり振動させる場合と比較し、励振電極部225で挟まれていない振動部222にまで、振動漏れが生じている。
周辺部223は、励振電極部225に電圧を印加したときに振動部225へ振動エネルギーを集中させつつ、水晶素子220を基板110に実装したときに実装による厚みすべり振動への影響を低減させるためのものである。周辺部223は、振動部223に沿って、環状に設けられており、その上下方向の厚みが振動部222の上下方向の厚みより薄くなっている。周辺部223は、振動部の外縁に沿って設けられている傾斜部223aと、傾斜部の外縁に沿って設けられている平板部223bと、から構成されている。
傾斜部223aは、振動部222の外縁に沿って設けられている。また、傾斜部223aは、その上下方向の厚みが振動部222から平板部223bにかけて徐々に薄くなっている。傾斜部223aは、結晶軸の位置関係によってエッチングされやすさが異なることを利用し、振動部222と平板部223bとの間に形成されている。このように、振動部222と平板部223bとの間に傾斜部223aを設けることで、導電性接着剤140を用いて水晶素子220を基板110に実装する際に、平板部223bを導電性接着剤140で接着することによる振動部222への影響を軽減させることができる。
平板部223bは、傾斜部223aの外縁に沿って設けられている。また、平板部223bは、その上下方向の厚みが、振動部222の上下方向の厚みより薄くなっている。傾斜部223aと平板部223bとからなる周辺部223の表面には、配線部226(226a,226b)および引出部227(227a,227bが設けられている。
本実施形態では、振動部222と、振動部222より上下方向の厚みが薄い周辺部223と、からなる水晶片221を用いることで、振動部222の一部分を逆圧電効果および圧電効果で厚みすべり振動させたときに、振動部222と周辺部223とで厚みすべり振動の振動状態が大きく異なる状態にすることができる。従って、このような構成にすることで、平板状の水晶片を用いた場合と比較して、振動部222のみに振動エネルギーをより集中させることが可能となる。この結果、このような水晶片221を用いた水晶素子220では、振動エネルギーの分散または漏れにより等価直列廷億値が大きくなることを低減させることが可能となる。
ここで、水晶片221の各寸法の実施例について説明する。水晶片221は、平面視して、略矩形形状となっており、長辺の寸法が、0.50mm〜3.20mmとなっており、短辺の寸法が、0.20mm〜2.50mmとなっている。振動部222は、平面視して、略矩形形状となっており、水晶片221の長辺に平行な寸法が、0.30mm〜2.70mmとなっており、水晶片221の短辺に平行な寸法が、0.20mm〜2.40mmとなっている。また、振動部222は、その上下方向の厚みが、30μm〜167μmとなっている。周辺部223の一部である平板部は、その上下方向の厚みが、27.3μm〜151.82μmとなっている。
水晶片221に設けられている金属パターン224は、水晶片221の外部から電圧を印加するためのものである。金属パターン224は、励振電極部225(225a,225b)、配線部226(226a,226b)および引出部227(227a,227b)から構成されている。金属パターン224は、一層となっていてもよいし、複数の金属層が積層されていてもよい。
励振電極部225(225a,225b)は、振動部222に電圧を印加するためのものである。励振電極部225は、一対となっており、一方の励振電極部225aが振動部222の上面に設けられており、他方の励振電極部225bが振動部222の下面であって、振動部222を挟むように一方の励振電極部225bと対向する位置に設けられている。励振電極部225は、水晶素子220を平面視して、略矩形形状となっている。
図8および図10に示すように、励振電極部225は、水晶素子220を平面視して、水晶片221の一方の短辺の中点M21を通過する垂線(仮想垂線CL21)に対し、線対称となっている。このような構成にすることで、励振電極部225に電圧を印加したとき、励振電極部225に蓄えられる電荷が仮想垂線CL21に対し線対称となり、励振電極部225に挟まれている水晶片221の一部を厚みすべり振動させるための振動エネルギーを、仮想垂線CL21に対して線対称に分布させることができる。従って、本実施形態では、振動エネルギーを仮想垂線CL21に対し線対称に分布させることができるため、仮想垂線CL21に対し左右の振動バランスを向上させることができる。このため、仮想垂線CL21に対し左右の振動バランスの低下により等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、図8および図10に示すように、励振電極部225は、水晶素子220を平面視して、その励振電極部225の中心C23が仮想垂線CL21上に位置しつつ、振動部222の中心C22より水晶片221の他方の短辺側に位置している。従って、励振電極部225の中心C23は、水晶片221の中心C21および振動部222の中心C22とは異なる位置にあり、水晶片221の中心C21、振動部222の中心C22、励振電極部225の中心C23と水晶片221の一方の短辺との距離を比較すると、励振電極部225と水晶片221の一方の短辺の距離が最も長い。このような構成にすることで、水晶片221の一方の短辺の両端部を導電性接着剤140で接着し、水晶素子220を水晶デバイスとして用いる場合、励振電極部225で振動部222の上下方向で挟まれている振動部222の一部分を、第一実施形態より、水晶片221の一方の短辺から離れた位置にすることができる。励振電極部225に電圧が印加されときに、励振電極部225に振動部222の上下方向で挟まれている振動部222の一部分が最も振動する構成となっているので、この励振電極部225に振動部222の上下方向で挟まれている振動部222の一部分をより導電性接着剤140で接着される部分より、遠くすることができる。この結果、導電性接着剤140による影響、具体的には、導電性接着剤140の接着による振動阻害、を低減させることができ、導電性接着剤140で接着することによる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
励振電極部225は、水晶素子220を平面視したとき、水晶片221の長辺に平行な励振電極部225の長さが、水晶片221の長辺に平行な振動部222の長さより短くなっている。従って、水晶素子220を平面視したとき、水晶片221の短辺に平行な励振電極部225と水晶片221の短辺に平行な振動部222との間には、振動部222の一部分が露出した状態となっている。このとき、水晶素子220を平面視して、励振電極部225の中心C23と振動部222の中心C22とが仮想垂線CL21上に位置しつつ、重ならない位置に設けられているので、近接する水晶片221の短辺に平行な励振電極部225の辺と水晶片221の短辺に平行な振動部222の辺との長さは、水晶片221の一方の短辺側と水晶片221の他方の短辺側とで長さが異なっている。
ここで、水晶片221の長辺の長さを第一距離D21とし、水晶片221の長辺に平行な振動部222の長さを第二距離D22とし、水晶片221の長辺に平行な励振電極部225の長さを第三距離D23とする。また、露出している振動部222を挟むように位置している水晶片221の短辺に平行な励振電極部225の辺と振動部222の辺との長さを、第四距離D24とし、引出部227(227a,227b)が二つ並んで設けられる水晶片221の一方の短辺側の第四距離D24を第一間隔距離D24aとし、水晶片221の他方の短辺側の第四距離D24を第二間隔距離D24bとする。
つまり、励振電極部225は、水晶素子220を平面視したとき、水晶片221の他方の短辺側にやや寄った状態で、振動部222の内縁側に位置するように設けられている。従って、第一間隔距離D24aは、第二間隔距離D24bより短くなっている。このように、励振電極部225を振動部222の内縁側に位置するように設けることで、励振電極部225に電圧を印加し励振電極部225に挟まれている振動部222の一部分を振動させたとき、励振電極部225の外縁から振動部222の外縁に向かう向きに振動漏れが生じ、この漏れた振動が振動部222の外縁に設けられている傾斜部223aの面で反射した場合であっても、反射された振動が励振電極部225で挟まれている振動部222の一部分への振動を阻害することを低減させることができる。従って、振動部222の縁部に設けられている傾斜部223aの影響を低減させることが可能となり振動部222の一部分への振動が阻害されることによる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
このとき、振動部222を挟むように位置している、水晶片221の短辺に平行な振動部222の辺と励振電極部225の辺との長さ(第四距離D24)は、5μm以上55μm以下であることが望ましい。第四距離D24が5μmより小さい場合、励振電極部225に電圧を印加したとき、励振電極部225で挟まれている部分から挟まれていない部分へ振動漏れが生じ、その漏れた振動が振動部222の外縁に沿って設けられている傾斜部223aで反射し、励振電極部225で挟まれている部分の振動を阻害してしまい、等価直列抵抗値が大きくなる虞がある。第四距離D24が55μmより大きい場合、水晶素子220の小型化に伴い振動部222の大きさが小さくなるので、励振電極部225の大きさも小さくなってしまう。このため、励振電極部225に蓄えられる電荷の量も減り、励振電極部225で挟まれている振動部222を振動させるための振動エネルギーが不足し、等価直列抵抗値が大きくなってしまう虞がある。従って、第四距離D24を5μm以上55μm以下にすることで、更に等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。
第二実施形態に係る水晶素子220は、水晶素子220を平面視して、振動部222の中心C22が、励振電極部225の中心C23より水晶片221の所定の一辺側に位置しており、水晶片221の中心C21が、振動部222の中心C22より水晶片221の所定の一辺側に位置している。従って、第二実施形態に係る水晶素子220は、水晶素子220を平面視して、一対の引出部227(227a,227b)が並んで設けられる水晶片221の所定の一辺から励振電極部225の中心C23までの距離、水晶片221の所定の一辺から振動部222の中心C22までの距離、水晶片221の所定の一辺から水晶片221の中心C21までの距離を比較した場合、水晶片221の所定の一辺から励振電極部225の中心C23までの距離が最も長く、水晶片221の所定の一辺から水晶片221の中心C21までの距離が最も短い。このような構成にすることで、第二実施形態に係る水晶素子220は、水晶素子220の引出部227を導電性接着剤140で接着し水晶デバイスとして用いる場合、振動部222を水晶片221の所定の一辺より離れた位置にすることができ、さらに、励振電極部225を水晶片221の所定の一辺より離れた位置にすることができる。このため、励振電極部225に電圧が印加されたとき、圧電効果および逆圧電効果により振動する振動部222の一部分を、導電性接着剤140で接着されている部分から、第一実施形態と比較して、更に離れた位置に設けることが可能となる。この結果、導電性接着剤140の接着による振動阻害を第一実施形態と比較して更に低減させることができ、振動阻害により等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、第二実施形態に係る水晶デバイスは、このような第二実施形態に係る水晶素子220を用いているので、第一実施形態と比較し、更に、等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることができる。