以下、本発明の実施の形態について説明する。
[自動変速機の構成]
図1に骨子を示すように、本発明の実施の形態に係る自動変速機1は、トルクコンバータ3を介してエンジン出力軸2に連結された入力軸4を有する。
トルクコンバータ3は、エンジン出力軸2に連結されたケース3aと該ケース3a内に固設されたポンプ3bと、該ポンプ3bに対向配置されて該ポンプ3bにより作動油を介して駆動されるタービン3cと、該ポンプ3bとタービン3cとの間に介設され、かつ、変速機ケース5にワンウェイクラッチ3dを介して支持されてトルク増大作用を行うステータ3eと、ケース3aとタービン3cとの間に設けられ、該ケース3aを介してエンジン出力軸2とタービン3cとを直結するロックアップクラッチ3fとを備えている。そして、タービン3cの回転が入力軸4を介して自動変速機1に伝達されるようになっている。
自動変速機1とトルクコンバータ3との間には、該トルクコンバータ3を介してエンジンにより駆動される機械式のオイルポンプ6が配置されており、エンジン駆動中において、該オイルポンプ6によって、自動変速機1及びトルクコンバータ3の制御に用いられる後述の油圧回路100(図4参照)に油圧が供給される。
自動変速機1の入力軸4上には、駆動源側(トルクコンバータ3側)から、第1、第2、第3プラネタリギヤセット(以下、「第1、第2、第3ギヤセット」という)10,20,30が配置されている。
また、入力軸4上には、ギヤセット10,20,30で構成される動力伝達経路を切り換えるための摩擦締結要素として、入力軸4からの動力をギヤセット10,20,30側へ選択的に伝達するロークラッチ40及びハイクラッチ50が配置されている。さらに、入力軸4上には、各ギヤセット10,20,30の所定の回転要素を固定するLR(ローリバース)ブレーキ60、26ブレーキ70、及び、R35ブレーキ80が、駆動源側からこの順序で配置されている。
前記第1〜第3ギヤセット10,20,30のうち、第1ギヤセット10と第2ギヤセット20はシングルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ11,21と、これらのサンギヤ11,21に噛み合った各複数のピニオン12,22と、これらのピニオン12,22をそれぞれ支持するキャリヤ13,23と、ピニオン12,22に噛み合ったリングギヤ14,24とで構成されている。
また、第3ギヤセット30はダブルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ31と、該サンギヤ31に噛み合った複数の第1ピニオン32aと、該第1ピニオン32aに噛み合った第2ピニオン32bと、これらのピニオン32a,32bを支持するキャリヤ33と、第2ピニオン32bに噛み合ったリングギヤ34とで構成されている。
そして、第3ギヤセット30のサンギヤ31には入力軸4が直接連結されている。第1ギヤセット10のサンギヤ11と第2ギヤセット20のサンギヤ21とは、互いに結合されて、ロークラッチ40の出力部材41に連結されている。第2ギヤセット20のキャリヤ23にはハイクラッチ50の出力部材51が連結されている。
また、第1ギヤセット10のリングギヤ14と第2ギヤセット20のキャリヤ23とは、互いに結合されており、LRブレーキ60を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。第2ギヤセット20のリングギヤ24と第3ギヤセット30のリングギヤ34とは、互いに結合されており、26ブレーキ70を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。第3ギヤセット30のキャリヤ33は、R35ブレーキ80を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。そして、第1ギヤセット10のキャリヤ13には、自動変速機1の出力を駆動輪(図示せず)側へ出力する出力ギヤ7が連結されている。
以上の構成により、この自動変速機1は、上記の摩擦締結要素(ロークラッチ40、ハイクラッチ50、LRブレーキ60、26ブレーキ70及びR35ブレーキ80)の締結状態の組み合わせにより、図2の締結表に示すように、Dレンジでの1〜6速と、Rレンジでの後退速とが形成されるようになっている。
[自動変速機の制御システム]
図3に示すように、自動変速機1は、上記の摩擦締結要素40,50,60,70,80に締結用のライン圧を選択的に供給して上記変速段を実現するための油圧回路100を備える。
この油圧回路100は、変速制御用の第1、第2、第3、第4、第5ソレノイドバルブ(以下、「ソレノイドバルブ」を「SV」と記す)101,102,103,104,105と、その他の例えば複数のSV106とを備えている。第1SV101は、開閉のみを制御可能なオン・オフソレノイドバルブであり、第2〜第5SV102〜105は、開度を制御可能なリニアソレノイドバルブである。また、油圧回路100には、LRブレーキ60の締結、解放状態を検出する油圧スイッチ221が設けられている。
油圧回路100のSV101〜106は、制御装置200によって制御される。制御装置200は、エンジンに搭載されたECU(Engine Control Unit)201と、自動変速機1に搭載されたTCM(Transmission Control Module)202とを備えており、ECU201とTCM202とは、例えばCAN通信を介して互いに電気的に接続されている。
ECU201には、車両に対する加速要求量としてのアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ210、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ211等からの信号が入力され、これらの入力信号に基づき、エンジンの出力トルクの制御等、エンジンの動作に関する各種制御を行う。
TCM202には、車両の速度を検出する車速センサ212からの信号と、運転者によって選択されている自動変速機1のレンジを検出するレンジセンサ213からの信号と、トルクコンバータ3のタービン3cの回転数を検出するタービン回転数センサ214からの信号と、油圧回路100に設けられた油圧スイッチ221からの信号とが入力される。また、TCM202には、ECU201を介してアクセルセンサ210からの信号とエンジン回転数センサ211からの信号とが入力される。
そして、これらの入力信号に基づき、TCM202は、油圧回路100の各SV101〜106に信号を出力する。これにより、選択されたレンジや車両の走行状態に応じて各SV101〜106の開閉ないし開度が制御され、各摩擦締結要素40,50,60,70,80への油圧供給が制御されることで、自動変速機1の変速制御が行われる。また、TCM202は、変速制御の状況に応じて、例えばエンジンの出力トルク等、エンジンの動作に関する各種指令信号をECU201に出力する。
[油圧回路]
図4を参照しながら、油圧回路100の構成を説明する。
油圧回路100は、上記SV101〜106及び油圧スイッチ221に加えて、オイルポンプ6の吐出圧をライン圧に調整してメインライン120に供給するレギュレータバルブ108と、運転者のレンジ選択操作によって作動するマニュアルバルブ110と、上記その他のSV106を含む各種バルブが設けられた所定油圧回路112と、第1SV101によって制御される第1切換弁114と、該第1切換弁114によって制御される第2切換弁116と、第3SV103によって制御される第3切換弁118とを備えている。なお、図示は省略するが、油圧回路100には、トルクコンバータ3の作動油供給用及びロックアップクラッチ3f制御用の回路も設けられている。
メインライン120のライン圧は、マニュアルバルブ110がDレンジの操作位置にあるときはDレンジライン121に出力され、マニュアルバルブ110がRレンジの操作位置にあるときはRレンジライン122に出力される。
第1切換弁114は、ライン123上に設けられた第1SV101のオン・オフ制御によって、所定油圧回路112からライン123を経由した制御ポートA1への油圧供給が停止されることでスプール141が左側に寄せられた第1の状態と、所定油圧回路112から制御ポートA1に油圧供給されることでスプール141が右側に寄せられた第2の状態との間で切り換えられる。第1切換弁114の第1の状態において、入力ポートB1に入力されたライン圧は出力ポートC1からライン124に出力される。第1切換弁114の第2の状態において、Dレンジ選択状態で入力ポートB2に入力されたDレンジライン121の油圧は出力ポートC2からライン129に出力される。
第2切換弁116は、第1SV101による第1切換弁114の切換制御によって、ライン124から制御ポートD1へ油圧供給されることでスプール142が右側に寄せられた第1の状態と、ライン124から制御ポートD1への油圧供給が停止されることでスプール142が左側に寄せられた第2の状態との間で切り換えられる。
第2切換弁116の第1の状態において、ライン124から分岐したライン125の油圧は、入力ポートE2から入力されて出力ポートF1からライン126へ一旦出力される。そして、該ライン126上に設けられた第2SV102の制御によって、ライン126の油圧が入力ポートE3に入力されると、該油圧は出力ポートF2からライン127に出力されて、LRブレーキ60に供給される。
第2切換弁116の第2の状態において、所定油圧回路112から入力ポートE1に入力された油圧は出力ポートF1からライン126へ一旦出力され、第2SV102の制御によってライン126の油圧が入力ポートE3に入力されると、該油圧は出力ポートF3からライン128に出力されて、ハイクラッチ50に供給される。
第3切換弁118は、所定油圧回路112からライン130を経由して油圧が供給される第1制御ポートG1と、ライン130から分岐したライン131の油圧が供給される第2制御ポートG2とを備えている。ライン131上には第3SV103が設けられており、該第3SV103の開度を制御することでライン131の油圧が調整される。第3切換弁118は、第3SV103の開度を小さくすることによってライン131から第2制御ポートG2に入力される油圧を低減することでスプール143が左側に寄せられた第1の状態と、第3SV103の開度を大きくすることによって第2制御ポートG2に入力されるライン131の油圧を増大させることでスプール143が右側に寄せられた第2の状態との間で切り換えられる。
第3切換弁118の第1の状態において、第1切換弁114からライン129を経由して入力ポートH2に油圧供給されている場合、この油圧は、出力ポートI2からライン134に出力され、該ライン134上に設けられた第4SV104の制御によって、R35ブレーキ80に供給可能となっている。
また、第3切換弁118の第1の状態において、第3SV103によってライン131が閉じられている場合、該ライン131から分岐したライン132の油圧は入力ポートH1に入力されないため、出力ポートI1からライン133を経由したロークラッチ40への油圧供給は行われない。一方、第3切換弁118の第1の状態であっても、第3SV103の開度を制御することで、ライン131の油圧を、スプール143が左側に寄せられる程度に低減しつつ、ある程度高い圧力に維持することが可能であり、この場合、ライン132の油圧が入力ポートH1から入力されて出力ポートI1から出力されることで、ライン133を経由してロークラッチ40に油圧を供給することができる。
第3切換弁118の第2の状態では、Dレンジライン121の油圧が2つの入力ポートH3,H4に入力されて、入力ポートH3に入力された油圧は出力ポートI1から出力されてロークラッチ40に供給され、入力ポートH4に入力された油圧は出力ポートI2から出力されて、第4SV104の制御によってR35ブレーキ80に供給可能となっている。
LRブレーキ60に直結されたライン127上には油圧スイッチ221が設けられており、この油圧スイッチ221によって、LRブレーキ60の締結・解放状態を検出可能となっている。
上述の通り、LRブレーキ60及びハイクラッチ50の締結および解放制御は、直接的には第2切換弁116の切換制御、又は、第2SV102の開度制御によって行われ、この第2切換弁116の制御は、第1SV101による第1切換弁114の切換制御によって行われる。また、ロークラッチ40の締結および解放制御は、第3SV103によって第3切換弁118を切換制御すること、又は、第3切換弁118が第1の状態であるときに第3SV103の開度を制御することで行われ、R35ブレーキ80の締結および解放制御は、第3SV103による第3切換弁118の切換制御と、第4SV104の開度の制御とによって行われる。さらに、26ブレーキ70の締結および解放制御は、所定油圧回路112と26ブレーキ70とを繋ぐライン136上に設けられた第5SV105の開度を制御することで直接的に行われる。
このようにして各摩擦締結要素40,50,60,70,80の締結および解放制御が行われることで、図2の締結表に従って各変速段が実現されるように変速制御が行われる。
図5は、1速時における油圧回路100の油圧供給状態を示す。1速状態では、第1SV101が閉じられており、第1切換弁114は、スプール141が左側に寄せられた第1の状態となる。これにより、第2切換弁116は、スプール142が右側に寄せられた第1の状態となり、ハイクラッチ50は解放される。また、1速状態では、第2SV102によって第2切換弁116の入力ポートE3への油圧供給が開放されることでLRブレーキ60が締結される。さらに、1速状態では、第3SV103の開度を大きくすることで、第3切換弁118は、スプール143が右側に寄せられた第2の状態となっており、ロークラッチ40が締結される。なお、1速状態において、第4SV104は閉じられており、これにより、R35ブレーキ80は解放されている。
図6は、4速時における油圧回路100の油圧供給状態を示す。4速状態では、第1SV101が開かれることで、第1切換弁114は、スプール141が右側に寄せられた第2の状態となる。これにより、第2切換弁116は、スプール142が左側に寄せられた第2の状態となり、LRブレーキ60は解放される。また、4速状態では、第2SV102によって第2切換弁116の入力ポートE3への油圧供給が開放されることでハイクラッチ50が締結される。さらに、4速状態において、第3切換弁118は、1速状態と同様、右側に寄せられた第2の状態となっており、ロークラッチ40が締結される。また、1速状態と同様、R35ブレーキ80は解放状態となる。
図5に示す1速状態と、図6に示す4速状態とを比較すると、ロークラッチ40を締結するための第3切換弁118の状態は同じであり、LRブレーキ60又はハイクラッチ50のいずれかを選択的に締結するための第1切換弁114及び第2切換弁116の状態が異なっている。
第2切換弁116は、LRブレーキ60及びハイクラッチ50の双方に直結されており、LRブレーキ60に繋がるライン127とハイクラッチ50に繋がるライン128とを選択的にオイルポンプ6側へ連通させるように構成されている。つまり、第2切換弁116は、これら両摩擦締結要素50,60の締結・解放状態を直接的に制御するバルブとして兼用されている。
Dレンジが選択されているとき、LRブレーキ60は、1速のときにのみ締結され、2速以上の変速段では解放される。他方、ハイクラッチ50は、4〜6速のときに締結され、1〜3速のときには解放される。したがって、2〜3速では、ハイクラッチ50及びLRブレーキ60のいずれも締結されないため、1速にシフトダウンするためにLRブレーキ60を締結すること、又は、4速にシフトアップするためにハイクラッチ50を締結することのいずれかを目的とした第2切換弁116の切換制御は、2〜3速のときに時間的余裕を持って予め行うことができる。したがって、これら両摩擦締結要素50,60の締結・解放制御に第2切換弁116を兼用しても、これらの締結・解放制御を支障なく行うことができる。
図7は、2速状態において、1速へのシフトダウンのために第2切換弁116が第1の状態に切り換えられた油圧供給状態を示している。図7に示すように、2速状態では、第2切換弁116とオイルポンプ6との間に設けられた第2SV102によって第2切換弁116の入力ポートE3への油圧供給が遮断されている。
2速から1速へのシフトダウンが行われると、第5SV105を閉じることによって26ブレーキ70が解放されるとともに、第2SV102を開くことによってライン126から第2切換弁116の入力ポートE3に導入された油圧が出力ポートF2からライン127に出力されることで、LRブレーキ60が締結される。
ところが、このとき、仮に第1切換弁114のスプール141が右側に寄せられた状態で固定されるか若しくは第2切換弁116のスプール142が左側に寄せられた状態で固定されるバルブスティック、又は、第1SV101の故障等の異常が生じていることによって、第2切換弁116が第2の状態に固定されている場合、第2切換弁116の入力ポートE3に導入された油圧は出力ポートF3からライン128に出力されてしまう。そうすると、1速へのシフトダウン指令が出ているにも拘わらず、LRブレーキ60の代わりにハイクラッチ50が締結されることで、誤って4速へのシフトアップが実現されてしまう。減速状態でこのような2速から4速へのシフトアップが実行されると、エンジンストールが生じる可能性がある。このようなエンジンストールを抑制するために、TCM202は、以下の変速条件設定制御を行う。
[変速条件設定制御]
変速制御には、各変速パターンの変速条件(シフトアップ条件及びシフトダウン条件)として、車速とアクセル開度をパラメータとする所謂変速線図が用いられ、車速センサ212で検出された車速と、アクセルセンサ210で検出されたアクセル開度とが上記変速条件を満たしたときに、シフトアップ又はシフトダウンが行われる。
各変速パターンの変速条件としては、所定の通常条件がそれぞれ設定されている。変速制御は、基本的には、これらの通常条件に基づいて行われるが、運転状態によっては通常条件とは異なる変速条件が用いられる。TCM202は、常に最適な変速条件を用いて変速制御を行うために、運転状態に応じて変速条件を適宜設定するための変速条件設定制御を行う。
本実施形態では、2速から1速へのシフトダウンを行うための条件(以下、「2−1速シフトダウン条件」という)として、通常条件と、通常条件よりも高車速側に設定された高車速側条件とが用いられる。なお、本実施形態における2速は、特許請求の範囲における「第3変速比」に相当し、本実施形態における1速は、特許請求の範囲における「第1変速比」に相当する。
変速条件設定制御では、2−1速シフトダウン条件として、基本的には通常条件が設定され、上記のように1速へのシフトダウン指令に対して4速へのシフトアップが実現されてしまう可能性がある運転状態では高車速側条件が設定される。具体的には、第2切換弁116が第2の状態から第1の状態へ切り換えられていることが確認されているときは通常条件が用いられ、第2切換弁116が第1の状態へ切り換えられていることが確認されていないときは高車速側条件が用いられる。なお、本実施形態における4速は、特許請求の範囲における「第2変速比」に相当する。
第2切換弁116が第1の状態に切り換えられているか否かの確認判定は、後述の切換確認制御によって行われる。この切換確認制御は、車両の前進走行中に常に繰り返し実行され、該切換確認制御による確認判定の有無に応じて変速条件設定制御が行われる。
通常条件としては、例えば、図8の符号300で示す実線によって定められた条件が設定されている。この通常条件300は、アクセル開度が所定開度Y1よりも小さいときは該所定開度Y1以上であるときに比べて車速条件が低車速となるように設定されている。
高車速側条件としては、例えば、図8の符号310で示す破線によって定められた条件が設定される。この高車速側条件310は、アクセル開度が前記所定開度Y1よりも小さい場合は通常条件300よりも高車速となるように且つアクセル開度が所定開度Y1以上である場合は通常条件300と同じ車速となるように設定されている。
このように高車速側条件310が設定されることにより、アクセル開度が所定開度Y1よりも小さい状態で車両が減速しているときに、第2切換弁116の第1の状態への切り換えが確認されていない場合、すなわち、次に1速へのシフトダウン指令が出たときに第2切換弁116の作動不良によって4速へのシフトアップが実現されてしまう可能性がある場合は、通常よりも早めに比較的高車速の状態で1速へのシフトダウン指令が出される。そのため、仮に第2切換弁116の作動不良によって誤って4速へシフトアップされても、エンジンストールを抑制できる。
一方、アクセル開度が所定開度Y1以上であることによりエンジンストールが起こり難い運転状態では、通常条件300を用いた通常の変速制御が行われる。
ただし、高車速側条件の構成は、図8に示された条件310に限定されるものでなく、例えば、図9の符号312で示す破線によって定められた高車速側条件を用いてもよい。図9に示される高車速側条件312は、アクセル開度に関わらず一律に通常条件300よりも高車速側に設定されている。この場合、アクセル開度に関わらず、通常よりも早めに比較的高車速の状態で1速へのシフトダウン指令が出される。
[切換確認制御]
図10に示すフローチャートを参照しながら、TCM202によって行われる切換確認制御の制御動作の一例について説明する。
図10に示す制御動作は、車両の前進走行中の変速制御が行われている間、常に繰り返し実行される。
先ず、ステップS1では、変速制御において、第1切換弁114及び第2切換弁116をそれぞれ第2の状態から第1の状態へ切り換えるために第1SV101をオフにする指令を出したか否かが判定される。
ステップS1の判定の結果、第1SV101のオフ指令が出ている場合は、ステップS2で、LRブレーキ60用の油圧スイッチ221の出力信号を読み込んで、ステップS3において、該油圧スイッチ221のオン・オフに基づいてLRブレーキ60が締結状態であるか否かが判定される。
図2の締結表に示されるように、前進走行中においてLRブレーキ60が締結状態となるのは1速のときのみであるため、ステップS3では、1速が実現されているときにLRブレーキ60が締結状態であると判定されることになる。
ステップS3でLRブレーキ60が締結状態であると判定されると、ステップS4で、第2切換弁116が第1の状態であることが確認されたと判定する確認判定が実行される。
一方、ステップS3でLRブレーキ60が締結状態でないと判定されると、仮に第2切換弁116が第1の状態であっても、そのことを確認できないため、ステップS4の確認判定は実行されない。
ステップS4の確認判定が実行された後は、ステップS5で、第1切換弁114及び第2切換弁116をそれぞれ第1の状態から第2の状態へ戻すために第1SV101をオンにする指令を出したか否かが判定される。
ステップS5の判定は、第1SV101のオン指令が出るまで繰り返し実行され、その間、ステップS4でなされた確認判定が維持される。
ステップS5で第1SV101のオン指令が出たと判定されると、ステップS6において、ステップS4の確認判定が解除される。
以上の切換確認制御では、第2切換弁116が第1の状態に正常に切り換えられたことが確認されることで、ステップS4の確認判定が実行された場合も、その後に第2切換弁116を第2の状態に戻す指令が出たときは、次回の第1の状態への切り換えが正常に行われるとは限らないことから、確認判定が解除される(ステップS6)。これにより、切換確認制御による確認判定が有効であるとき、第2切換弁116は必ず第1の状態となっている。
ただし、切換確認制御は、図10に示す制御動作からなるものに限定されず、第2切換弁116が第1の状態であることを確認可能なその他の制御動作で構成されてもよい。例えば、図10に示す制御動作では、1速へのシフトダウンによってLRブレーキ60が締結されたときに初めて確認判定されるが、2速又は3速のときに第2切換弁116が第1の状態に切り換えられる場合に、第2切換弁116が第1の状態に切り換えられたか否かを1速へのシフトダウン前に何らかの方法で診断できる場合には、その診断結果に基づいて確認判定を実行してもよい。
[変速条件設定制御の制御動作]
以下、変速条件設定制御の制御動作の具体例として、第1実施例および第2実施例について説明する。
[第1実施例]
図11に示すフローチャート及び図12に示すタイムチャートを参照しながら、第1実施例に係る変速条件設定制御の制御動作について説明する。
図11に示す制御動作は、車両の前進走行中の変速制御が行われる間、常に繰り返し実行される。また、図11に示す制御動作における全ての判定処理は、TCM202自身により行われる上記の変速制御又は切換確認制御における処理内容に基づいて実行されるため、図11に示す制御動作において、外部機器からTCM202への入力信号は用いられない。
図11に示す制御動作では、先ず、ステップS11で、2−1速シフトダウン条件が通常条件に設定され、以降、基本的には通常条件に基づいて変速制御が行われる。
次のステップS12では、変速制御において、第1切換弁114及び第2切換弁116をそれぞれ第2の状態から第1の状態へ切り換えるための第1SV101のオフ指令が出されているか否かが判定される。ステップS12の判定は、TCM202自身が行っている変速制御の状況に基づいて行われる。
なお、第1SV101のオフ指令は、減速走行中において1速へのシフトダウン指令が出される前に予め出され、具体的には、例えば2速へのシフトダウン指令が出たときから所定時間経過したタイミングで出される。
ステップS12の判定の結果、第1SV101のオフ指令が出されていない場合は、引き続き通常条件に基づく変速制御が行われる。
一方、ステップS12の判定の結果、第1SV101のオフ指令が出された場合、次のステップS13で第1SV101のオフが実行される。このとき、第1SV101の故障、又は、第1切換弁114若しくは第2切換弁116のバルブスティック等の異常が生じていない場合、第1切換弁114及び第2切換弁116は、それぞれ第2の状態から第1の状態へ正常に切り換えられる。
続くステップS14では、上述の切換確認制御(図10参照)による確認判定(図10のステップS4)がなされた状態であるか否かが判定される。ステップS14の判定は、TCM202自身が行っている切換確認制御の状況に基づいて行われる。
なお、上述したように、確認判定は、例えば、1速へのシフトダウンが実現されたときに実行される。ただし、2速又は3速状態で何らかの方法によって第2切換弁116が第1の状態であるか否かを診断する場合は、この診断によって第2切換弁116が第1の状態であると判定されたときに、切換確認制御による確認判定が実行される。
ステップS14の判定の結果、確認判定がなされていない場合、ステップS19で、2−1速シフトダウン条件が通常条件から高車速側条件に変更されて、ステップS20で、変速制御において、第1切換弁114及び第2切換弁116をそれぞれ第1の状態から第2の状態へ戻すための第1SV101のオン指令が出されているか否かが判定される。ステップS20の判定は、TCM202自身が行っている変速制御の状況に基づいて行われる。
ステップS14からステップS19を経由してステップS20に至る一連の制御動作は、切換確認制御による確認判定がなされるか又は第1SV101のオン指令が出されるまで繰り返し行われる。この一連の制御動作が行われている間は、1速へのシフトダウン指令が出されたときに第2切換弁116の作動不良によって4速へのシフトアップが実現されてしまう可能性があるが、2−1速シフトダウン条件として高車速側条件が設定されていることによって、仮に第2切換弁116の作動不良が生じていても、比較的高車速でシフトアップが実現されるため、エンジンストールを抑制することができる。
ステップS20の判定の結果、第1SV101のオン指令が出されると、ステップS21で、第1SV101がオンされることで、第1切換弁114及び第2切換弁116がそれぞれ第2の状態に戻されるか、又は、元々第2の状態に固定される作動不良が生じていた場合は第2の状態に維持される。続くステップS22では、2−1速シフトダウン条件が通常条件に戻され、これにより、次に第1SV101のオフ指令(ステップS13)が出されるまでは、通常条件に基づく変速制御が行われる。
一方、ステップS14の判定の結果、確認判定がなされた場合、第2切換弁116が正常に作動していることから1速へのシフトダウンが正常に実現され得る状態であるため、ステップS15で、2−1速シフトダウン条件として通常条件が用いられる。
続くステップS16では、ステップS20と同様、第1SV101のオン指令が出されているか否かが判定される。ステップS16の判定は、第1SV101のオン指令が出されるまで繰り返し行われるが、その間も2−1速シフトダウン条件は通常条件に維持される。
ステップS16の判定の結果、第1SV101のオン指令が出されると、ステップS17で、第1SV101がオンされることで、第1切換弁114及び第2切換弁116がそれぞれ第2の状態に戻される。続くステップS18では、引き続き、2−1速シフトダウン条件が通常条件に維持される。
以上のように、第1実施例によれば、第2切換弁116を第1の状態に切り換える指令が出されてから、この切り換えを確認する確認判定が出されるまでの間のみ、2−1速シフトダウン条件として高車速側条件が用いられ、その他の期間は基本的に通常条件が用いられる。したがって、基本的には、通常条件に基づく通常の変速制御を行いつつ、必要なときには高車速側条件が用いられることで、仮に第2切換弁116の作動不良による誤った4速へのシフトアップが実現されても、このシフトアップによるエンジンストールを抑制することができる。
なお、1速へのシフトダウン指令が出されたにも拘わらず切換確認制御による確認判定がなされない場合には、第2切換弁116の作動不良によってLRブレーキ60を締結できず、LRブレーキ60の締結を必要とする1速を実現できない状態となっていることから、以降の変速制御では、1速を用いることなく前進走行を行うリンプホーム制御が実行される。
図12は、図10に示す切換確認制御及び図11に示す変速条件設定制御を行いながら変速制御を行う場合における各要素の経時的変化の一例を示すタイムチャートである。
図12に示す時刻t0の時点において、自動変速機1が搭載された車両は4速での減速状態であり、その後、自動変速機1は3速を経て2速へ段階的にシフトダウンされる。この間、2−1速シフトダウン条件は通常条件に設定されている。
2速状態の所定のタイミングt1において、第1切換弁114及び第2切換弁116を第2の状態から第1の状態に切り換えるための第1SV101のオフ指令が出されると、2−1速シフトダウン条件は通常条件から高車速側条件に切り換えられる。
このとき、第2切換弁116が第1の状態へ正常に切り換えられた場合は、その後の1速へのシフトダウン指令によって、時刻t2に、LRブレーキ60が締結されることで1速が実現されるとともに、LRブレーキ60の締結状態が検出されることで切換確認制御による確認判定がなされて、2−1速シフトダウン条件が通常条件に戻される。
一方、バルブスティック等によって第2切換弁116の作動不良が生じた場合、1速へのシフトダウン指令が出された後、時刻t2以降も、符号aに示されるようにLRブレーキ60が締結されず、符号bに示されるように切換確認制御による確認判定がなされない。この場合、符号cに示されるように、時刻t2以降も、第2切換弁116を第2の状態に戻すための第1SV101のオン指令が出される時刻t6までの間、2−1速シフトダウン条件として高車速側条件が用いられる。
このように、第2切換弁116の作動不良が生じている場合は、時刻t2以降も高車速側条件が用いられるため、時刻t3で一旦2速へのシフトアップ指令が出た後、次に1速へのシフトダウン指令が出るタイミングt4は、仮に通常条件が用いられる場合における同シフトダウン指令のタイミングt5に比べて早くなる。したがって、第2切換弁116の作動不良によって誤って4速へのシフトアップが実現されてしまう場合であっても、このシフトアップは比較的高車速の状態で実現されるため、エンジンストールを抑制することができる。
また、第2切換弁116の作動不良の有無を判定するための特別な異常診断制御を行わなくても、上記のような2−1速シフトダウン条件の変更によってエンジンストールを抑制できるため、2速又は3速状態において異常診断制御のための時間を確保できない程度に速やかに1速へのシフトダウン指令が出される場合でも、エンジンストールの抑制を確実に果たすことができる。
さらに、図12に示す変速制御が行われる場合において、第2切換弁116が正常に作動する場合は、時刻t1から時刻t2までの間を除いて、基本的には通常条件に基づいて、通常の変速制御が行うことができる。
[第2実施例]
図13に示すフローチャート及び図14に示すタイムチャートを参照しながら、第2実施例に係る変速条件設定制御の制御動作について説明する。
図13に示す制御動作は、車両の前進走行中の変速制御が行われる間、常に繰り返し実行される。また、図13に示す制御動作における全ての判定処理は、TCM202自身により行われる上記の変速制御又は切換確認制御における処理内容に基づいて実行されるため、図13に示す制御動作において、外部機器からTCM202への入力信号は用いられない。
図13に示す制御動作では、先ず、ステップS31で、2−1速シフトダウン条件が高車速側条件に設定され、以降、第1切換弁114及び第2切換弁116を第2の状態から第1の状態へ切り換えるための第1SV101のオフ指令が出され且つ切換確認制御による確認判定がなされるまでの間は、高車速側条件が維持される。
次のステップS32では、変速制御において第1SV101のオフ指令が出されているか否かが判定される。ステップS32の判定の結果、第1SV101のオフ指令が出された場合、次のステップS33で第1SV101のオフが実行される。
続くステップS34では、上述の切換確認制御(図10参照)による確認判定(図10のステップS4)がなされた状態であるか否かが判定される。
ステップS34の判定の結果、確認判定がなされていない場合、ステップS39で、2−1速シフトダウン条件は高車速側条件に維持されて、ステップS40で、変速制御において、第1切換弁114及び第2切換弁116をそれぞれ第1の状態から第2の状態へ戻すための第1SV101のオン指令が出されているか否かが判定される。
ステップS34からステップS39を経由してステップS40に至る一連の制御動作は、切換確認制御による確認判定がなされるか又は第1SV101のオン指令が出されるまで繰り返し行われる。この一連の制御動作が行われている間は、1速へのシフトダウン指令が出されたときに第2切換弁116の作動不良によって4速へのシフトアップが実現されてしまう可能性があるが、2−1速シフトダウン条件として高車速側条件が設定されていることによって、仮に第2切換弁116の作動不良が生じていても、比較的高車速でシフトアップが実現されるため、エンジンストールを抑制することができる。
ステップS40の判定の結果、第1SV101のオン指令が出されると、ステップS41で、第1SV101がオンされることで、第1切換弁114及び第2切換弁116がそれぞれ第2の状態に戻されるか、又は、元々第2の状態に固定される作動不良が生じていた場合は第2の状態に維持される。続くステップS42では、2−1速シフトダウン条件が高車速側条件に維持される。この高車速側条件の維持は、次に第1SV101のオフ指令が出され且つ切換確認制御による確認判定がなされるまでの間、継続される。
一方、ステップS34の判定の結果、確認判定がなされた場合、第2切換弁116が正常に作動していることから1速へのシフトダウンが正常に実現される可能性が高いため、ステップS35で、2−1速シフトダウン条件が高車速側条件から通常条件に変更される。
続くステップS36では、ステップS40と同様、第1SV101のオン指令が出されているか否かが判定される。ステップS36の判定は、第1SV101のオン指令が出されるまで繰り返し行われるが、その間も2−1速シフトダウン条件は通常条件に維持される。
ステップS36の判定の結果、第1SV101のオン指令が出されると、ステップS37で、第1SV101がオンされることで、第1切換弁114及び第2切換弁116が第2の状態に戻され、続くステップS38では、2−1速シフトダウン条件が高車速側条件に戻される。この高車速側条件の維持は、次に第1SV101のオフ指令が出され且つ切換確認制御による確認判定がなされるまでの間、継続される。
以上のように、第2実施例によれば、第2切換弁116を第1の状態に切り換える指令が出され且つこの切り換えを確認する確認判定が出された場合は、2−1速シフトダウン条件として通常条件が用いられるため、第2切換弁116が正常に作動している場合は、通常条件に基づいて1速へのシフトダウンを行うことができる。また、確認判定が出されていない場合は2−1速シフトダウン条件として高車速側条件が用いられるため、仮に第2切換弁116の作動不良による誤った4速へのシフトアップが実現されても、このシフトアップによるエンジンストールを抑制することができる。
図14は、図10に示す切換確認制御及び図13に示す変速条件設定制御を行いながら変速制御を行う場合における各要素の経時的変化の一例を示すタイムチャートである。
図14に示す制御例では、時刻t10の時点において、自動変速機1が搭載された車両は4速での減速状態である。その後、自動変速機1は3速を経て2速へ段階的にシフトダウンされる。この間、2−1速シフトダウン条件は高車速側条件に設定されている。
その後、2速状態の所定のタイミングt11において、第1切換弁114及び第2切換弁116を第2の状態から第1の状態に切り換えるための第1SV101のオフ指令が出される。
このとき、2−1速シフトダウン条件は既に高車速側条件に設定されているため、この設定を変更する必要ない。
時刻t11における第1SV101のオフ指令に対して、第2切換弁116が第1の状態へ正常に切り換えられた場合は、その後の1速へのシフトダウン指令によって、時刻t12に、LRブレーキ60が締結されることで1速が実現されるとともに、LRブレーキ60の締結状態が検出されることで切換確認制御による確認判定がなされて、2−1速シフトダウン条件が高車速側条件から通常条件に変更される。
一方、バルブスティック等によって第2切換弁116の作動不良が生じた場合、1速へのシフトダウン指令が出された後、時刻t12以降も、符号dに示されるようにLRブレーキ60が締結されず、符号eに示されるように切換確認制御による確認判定がなされない。この場合、符号fに示されるように、時刻t12以降も、第2切換弁116を第2の状態に戻すための第1SV101のオン指令が出される時刻t16までの間、2−1速シフトダウン条件として高車速側条件が用いられる。
第2切換弁116の作動不良が生じている場合は、時刻t12以降も高車速側条件が用いられるため、時刻t13で一旦2速へのシフトアップ指令が出た後、次に1速へのシフトダウン指令が出るタイミングt14は、仮に通常条件が用いられる場合におけるシフトダウン指令のタイミングt15に比べて早くなる。したがって、第2切換弁116の作動不良によって誤って4速へのシフトアップが実現されてしまう場合であっても、このシフトアップは比較的高車速の状態で実現されるため、エンジンストールを抑制することができる。
また、第2切換弁116の作動不良の有無を判定するための特別な異常診断制御を行わなくても、上記のような2−1速シフトダウン条件の変更によってエンジンストールを抑制できるため、2速又は3速状態において異常診断制御のための時間を確保できない程度に速やかに1速へのシフトダウン指令が出される場合でも、エンジンストールの抑制を確実に果たすことができる。
さらに、図14に示す制御例では、切換確認制御による確認判定がなされたとき(時刻t12)から第1SV101のオン指令が出されるとき(時刻t16)までの間は、通常条件に基づいて通常の変速制御が行うことができる。
またさらに、図14に示す制御例では、切換確認制御による確認判定が一旦なされた場合でも、その後、第2切換弁116が第2の状態に戻されることによって次の第1の状態への切り換えが正常に行われるかどうかが分からない状態となったとき(時刻t16)には、2−1速シフトダウン条件が通常条件から高車速側条件に戻されることで、次の1速へのシフトダウン指令は比較的高車速で出されることになる。そのため、このシフトダウン指令の際、仮に、第2切換弁116の作動不良によって4速へのシフトアップが実現されても、エンジンストールを抑制できる。
[他の実施形態]
図15を参照しながら、本発明の他の実施形態に係る自動変速機の油圧回路400の構成について説明する。
油圧回路400は、LRブレーキ60の締結、解放に関連する部分を除いて、上述の実施形態の油圧回路100と同様に構成されており、該油圧回路100と同じ構成要素については、説明を省略するとともに、図15において同一の符号を付している。
図15に示す実施形態では、LRブレーキ60の油圧アクチュエータとして、締結ピストンと隙間調整ピストンとを有する複動式アクチュエータ(図示せず)が用いられ、油圧回路400には、前記隙間調整ピストンと共に前記締結ピストンを小クリアランス状態となる締結準備位置までストロークさせるための油圧供給がなされるクリアランス室62と、締結準備位置にある前記締結ピストンを作動させてLRブレーキ60を締結するための油圧供給がなされる締結室61と、が設けられている。
締結室61は、ライン410を介して第2切換弁116の出力ポートF2に直結され、クリアランス室62は、ライン420を介して、第1切換弁114の出力ポートC1に接続されたライン124に接続されている。ライン410上には上記油圧スイッチ221が設けられており、該油圧スイッチ221のオンによって、LRブレーキ60の締結状態を検出できる。
クリアランス室62には、第1SV101のオフによって、スプール141が左側に位置する第1の状態とされた第1切換弁114の出力ポートC1から、ライン124及びライン420を介してライン圧が供給される。これにより、前記締結ピストンは、前記隙間調整ピストンと共に締結準備位置までストロークし、該締結準備位置に保持される。
上述したように、第1切換弁114が第1の状態にあるとき、第2切換弁116は、スプール142が右側に位置する第1の状態となっている。したがって、前記締結ピストンが締結準備位置にあるとき、第2切換弁116は第1の状態となっており、この状態で第2SV102が開かれると、ライン126から第2切換弁116の入力ポートE3にライン圧が入力され、該ライン圧が第2切換弁116の出力ポートF2からライン410を介して締結室61に供給される。これにより、前記締結ピストンが摩擦板を押圧して、LRブレーキ60が締結される。
このように、先にクリアランス室62への油圧供給によってクリアランス調整を行った後に、締結室61へ締結油圧を供給することで、小クリアランス状態でLRブレーキ60の締結を行うことができる。したがって、容量が大きなLRブレーキ60に関して、緻密で応答性に優れた締結制御が可能になる。
一方、LRブレーキ60の解放状態には、前記締結ピストン及び前記隙間調整ピストンを、大クリアランス状態となる位置に退避させることができ、これにより、潤滑油の粘性による回転抵抗が抑制される。
油圧回路400におけるその他の構成は、上述の実施形態における油圧回路100と同じであり、2速以上の前進変速段では、上述の実施形態と同様の変速制御が行われる。
したがって、図15に示す実施形態においても、2−1速シフトダウン条件は、上記の変速条件設定制御に従って、上記の切換確認制御における確認判定の有無に応じて適宜設定される。よって、仮に第2切換弁116の作動不良が生じている場合、2速から1速へのシフトダウン指令は比較的高車速の状態で早めに出されるため、4速への誤ったシフトアップが実現されてもエンジンストールを抑制することができる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、2−1速シフトダウン条件を高車速側に変更する構成について説明したが、本発明において、このようなシフトダウン条件の変更は、他の変速段間のシフトダウン条件にも同様に適用できる。