JP2016027187A - 高剛性低熱膨張鋳物及びその製造方法 - Google Patents

高剛性低熱膨張鋳物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高剛性、低熱膨張率を有する鋳物を得る。
【解決手段】成分組成が、質量%で、Ni:27〜35%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であり、オーステナイト組織の平均結晶粒径が200μm以下であることを特徴とする高剛性低熱膨張鋳物。
【選択図】図3

Description

本発明は高いヤング率を有する高剛性低熱膨張鋳物及びその製造方法に関する。
エレクトロニクスや半導体関連機器、レーザー加工機、超精密加工機器の部品材料として、熱的に安定なインバー合金が広く使用されている。しかしながら、従来のインバー合金には、ヤング率が一般鋼材の2分の1程度と小さいという問題があった。そのため、対象となる部品の肉厚を厚くするなどの、高剛性化設計を行う必要があった。
特許文献1には、この問題を解決するためにNb等を添加してインゴットを作製した後、熱間鍛造や圧延加工を施すによりヤング率を高めた、高ヤング率低熱膨張Fe−Ni合金が開示されている。
特許文献2には、NiとCoの含有量を適正化し、溶体化、及び時効処理により微細なNi(Ti,Al)を析出させてヤング率を向上した合金鋼を利用した超精密機器の部材が開示されている。特許文献2では、鋳造品でも鍛造品と同様の効果が得られると述べている。すなわち、熱間鍛造や圧延加工による結晶粒の微細化作用には全く触れられていない。
特許文献3には、−40℃以下の温度まで深冷処理することにより、オーステナイト基地中にマルテンサイト相を分散させることによってヤング率を高めた鋳鉄が開示されている。しかしながら、特許文献2に述べられているように、マルテンサイト変態が少しでも生じると熱膨張係数は著しく高くなり、低熱膨張でかつ高ヤング率を達成した合金は得られない。
一方、一般に、複雑な形状を有する部材には、製造の容易さから、機械加工や溶接ではなく、鋳物が用いられる。鋳物は鋳型に溶湯を流し込むことにより任意の形状が得られるので、製造が容易であるという利点がある。
鋳型による凝固では、鋳型壁面にほぼ垂直な方向に温度勾配が生じるため、結晶が温度勾配に平行に成長し、柱状晶が形成される。すなわち、鍛造加工を施した場合とは異なり、結晶が一方向に揃った組織となる。この傾向は、Niの含有量が多いと特に顕著になる。
単結晶低熱膨張合金の結晶方位とヤング率に関する研究によれば、<100>方向の結晶からなる組織は、<111>方向、<110>方向の結晶からなる組織と比較してヤング率小さいことが知られている。柱状晶の優先成長方向は<100>方向であるので、鋳物はヤング率が低くなるものと考えられる。
特開平7−102345号公報 特開平11−293413号公報 特開平06−179938号公報
従来の低熱膨張鋳物は上述のとおりヤング率が低いので、複雑な形状を有する部材であっても低熱膨張で高剛性を必要とする部材は鋳物として製造することはできないという問題があった。
また、低熱膨張鋳物では、オーステナイトからマルテンサイト変態を開始する温度であるMs点が0℃前後となりやすく、たとえば寒冷地の輸送などではマルテンサイト変態が進行して低熱膨張特性が失われるため、使用可能な温度環境が制限されやすいという問題があった。
しかしながら、鍛造を施すと、複雑な形状を有する部材の製造は難しく、また、設備、型、加工とも非常に高価となり、量産スピードが鋳造と比較して遅いという問題がある。
本発明は、上記の問題を解決し、鍛造を施さない鋳造のままでも高いヤング率を有し、従来よりも低いMs点を有する、高剛性低熱膨張鋳物及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋳物のヤング率を高める方法を鋭意検討した。その結果、鋳造後の鋳物の組織はオーステナイトであるが、Ms点以下まで冷却することにより一部分あるいは大部分をマルテンサイト変態させた後、再度、加熱してマルテンサイト組織をオーステナイト化することにより、再結晶したオーステナイト組織が、等軸晶主体の結晶方位がランダムであり、通常の凝固の組織制御では得られない微細な組織となり、その結果、高ヤング率を有する低熱膨張鋳物を得ることができることを見出した。本発明は上記の知見に基づきなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、Ni:27〜35%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であり、オーステナイト組織の平均結晶粒径が200μm以下であることを特徴とする高剛性低熱膨張鋳物。
(2)さらに、質量%で、Co:0.1〜18%を含有することを特徴とする前記(1)の高剛性低熱膨張鋳物。
(3)さらに、質量%で、Mn:0.5%以下、C:0.2%以下、及びSi:0.3%以下のいずれか1種以上を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)の高剛性低熱膨張鋳物。
(4)さらに、質量%で、S:0.05%以下、Se:0.05%以下、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下、及びAl:0.1%以下の1種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかの高剛性低熱膨張鋳物。
(5)さらに、質量%で、Co:2.0〜8.0%を含有し、さらにMn:0.3%以下、B:0.05%以下、Mg:0.1%以下、C:0.1%以下、Si:0.2%以下。S:0.05%以下、及び、Ce及び/又はLa:0.1%以下のいずれか1種以上を含有することを特徴とする前記(1)の高剛性低膨張鋳物。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかの成分組成を有する鋳鋼を、室温からMs点以下まで冷却して、Ms点以下の温度で0.5〜3hr保持した後室温まで昇温するクライオ処理工程と、上記の処理を施した鋳鋼を、800〜1200℃に加熱し、0.5〜5hr保持した後急冷する再結晶処理工程を順に備えるRC処理を1回以上備えることを特徴とする高剛性低熱膨張鋳物の製造方法。
(7)前記RC処理の前に、さらに、鋳物を800〜1200℃に加熱して、0.5〜5hr保持する溶体化処理工程を備えることを特徴とする前記(6)の高剛性低熱膨張鋳物の製造方法。
(8)前記RC処理サイクルの少なくとも1回において、前記クライオ処理工程と前記再結晶処理工程の間に、さらに、鋳鋼を300〜400℃で1〜10hr保持する調質処理工程を備えることを特徴とする前記(6)又は(7)の高剛性低熱膨張鋳物の製造方法。
本発明によれば、鋳物を等軸晶を中心とした結晶粒径の小さな組織とすることにより、高い剛性を有し、Ms点の低い低熱膨張鋳物が得られるので、熱的に安定でありかつ複雑な形状が必要となる部品等に適用できる。
鋳物にクライオ処理を施した後の組織の一例である。 鋳物に溶体化処理を施した後の組織の一例である。 鋳物に再結晶処理を施した組織の一例である。 クライオ処理を施した試験片の加熱変態曲線の一例である。 実施例1におけるマクロ組織観察した鋳物の組織である。 実施例1におけるミクロ組織観察した鋳物の組織である。 実施例2におけるミクロ組織観察したクライオ処理と再結晶処理の間の鋳物の組織である。
以下、本発明について詳細に説明する。以下、成分組成に関する「%」は特に断りのない限り「質量%」を表すものとする。はじめに、本発明の鋳物の成分組成について説明する。
Niは、熱膨張係数を低下させる、必須の元素である。Ni量は多すぎても少なすぎても熱膨張係数が十分に小さくならない。また、Ni量が多すぎると冷却によりマルテンサイト変態を生じさせるのが困難になる。以上を考慮して、Ni量は27〜35%の範囲とする。
Ni以外の元素は必須の添加元素ではないが、必要に応じて、下記のとおり添加することができる。
Coは、Niとの組み合わせにより熱膨張係数の低下に寄与する。所望の熱膨張係数を得るため、Coの範囲は0.1〜18%、好ましくは2.0〜8.0%とする。
Mnは、脱酸材として添加される。また、固溶強化による強度向上にも寄与する。この効果を得るためには、Mn量を0.1%以上が好ましい。Mnの含有量が0.5%を超えても効果が飽和し、コスト高となるので、Mn量は0.5%以下、好ましくは0.3%以下とする。
Cは、オーステナイトに固溶し強度の上昇に寄与する。また、Tiと結合してTiCを形成し、強度を向上させる。Cの含有量が多くなると、熱膨張係数が大きくなり、延性が低下するので、含有量は0.2%以下、好ましくは0.1%以下とする。
Siは、脱酸材として添加される。Si量が0.3%を超えると熱膨張係数が増加するので、Si量は0.3%以下、好ましくは0.2%以下とする。溶湯の流動性を向上させるためには、Siは0.1%以上含有させることが好ましい。
Sは、被削性の向上を目的に含有させてもよい。ただし、FeSを形成し、結晶粒界に晶出して熱間脆性の原因となるので、Sの含有量は0.05%以下とする。
Seは、被削性の向上を目的に含有させてもよい。0.05%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、Seの含有量は0.05%以下とする。
Nb、Tiは凝固核を生成させる接種材として添加される。Nb、Tiの添加により、溶湯内にNbC、TiNが生成して、この炭化物、窒化物を凝固核として微細な等軸晶が形成されやすくなり、本発明の所望の結晶方位が得られやすくなる。また、これらの元素は硬さ、引張強さを向上させる元素でもある。Nb、Tiの含有量が多くなると靭性が著しく劣化するので、含有量はそれぞれ0.5%以下とする。
Alは、脱酸の目的で添加される。また、SやMgとともに強度の低下を抑制させる効果がある。Alの含有量が多くなると、介在物が多量に形成され、鋳造欠陥が多量に発生するので、含有量は0.1%以下とする。
Bは、粗大な共晶炭化物の形成を抑制し、硬さ、引張強さを向上させる元素である。また、ホウ化物を生成して接種材としての効果も有する。ただし、Bの含有量が0.05%を超えると、粒界への偏析が顕著になり靭性が低下する。したがって、Bの含有量は0.05%以下とする。
MgはSと結合することで熱間延性を向上させる機能を有する。さらに、Mg酸化物あるいはMg蒸気が接種材としての効果も有する。Mgの含有量が0.1%を超えると、溶湯の粘性が高められ、また、鋳造欠陥を生じるおそれがあるので、Mgの含有量は0.1%以下とする。
Ce、Laは、硫化物による靭性の低下を抑制する元素である。Ce、Laの含有量が0.1%を超えると効果が飽和するので、Ce、Laの含有量は合計で0.1%以下とする。
成分組成の残部は、Fe及び不可避的不純物である。不可避的不純物とは、本発明で規定する成分組成を有する鋼を工業的に製造する際に、原料や製造環境等から不可避的に混入するものをいう。
本発明の鋳物の組織は、平均粒径が200μm以下のオーステナイト組織である。組織は、さまざまな結晶方位を有する微細な等軸晶を中心とし、その結果ヤング率の高い結晶方位である(111)や(110)などを有する結晶が一定割合以上含まれる。その結果、ヤング率が低い結晶方位(100)である柱状晶を中心とした通常の低熱膨張鋳物と比較して高いヤング率が得られる。組織のすべてが等軸晶である必要はないが、等軸晶の割合が面積率で60%以上であることが好ましい。等軸晶の割合が面積率で90%以上であればより好ましく、95%以上であればさらに好ましい。
通常の低熱膨張鋳物においても、成分組成の調整により、ヤング率と熱膨張係数をある程度調整することができる。しかしながら、ヤング率と熱膨張係数は、ほぼトレードオフの関係にある。すなわち、ヤング率が高くなると、熱膨張係数も大きくなる関係にある。
しかしながら、本発明の低熱膨張鋳物では、組織が微細となり、ヤング率が向上することと合わせて、同じ成分組成を有する通常の低熱膨張鋳物と比較して熱膨張係数が低下する。また、組織が微細になることによりオーステナイトが安定化するので、同じ成分組成を有する通常の低熱膨張鋳物と比較してMs点が低下する。その結果、寒冷地での輸送などによってもマルテンサイト変態が進行して低熱膨張特性が失われることがない。
次に、本発明の高剛性低熱膨張鋳物の製造方法について説明する。
本発明の高剛性低熱膨張鋳物の製造に用いる鋳型や、鋳型への溶鋼の注入装置、注入方法は特に限定されるものではなく、公知の装置、方法を用いればよい。鋳型で製造された鋳鋼の組織は柱状晶を中心とした組織となる。この鋳鋼に、以下の熱処理を施す。
はじめに、鋳物を、Ms点以下まで冷却し、Ms点以下の温度で0.5〜3hr保持した後、室温まで昇温する(クライオ処理工程)。冷却の方法は特に限定されない。なお、ここでいうMs点は、本発明の効果が発現される前の段階でのMs点である。冷却温度はMs点よりも十分に低い温度とすればよいので、この段階での正確なMs点がわかる必要は。一般的に、Ms点は鋼の成分を用いて、下記の式で推定できる。
Ms=521−353C−22Si−24.3Mn−7.7Cu−17.3Ni
−17.7Cr−25.8Mo
ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Moは各元素の含有量(質量%)である。含有しない元素は0とする。
本発明の高剛性低熱膨張鋳物の成分組成の場合、上式で計算されるMs点は、特にNi量に依存して、室温から−100℃以下程度となるので、冷却媒体としては−80℃まではドライアイスとメチルアルコ−ルあるいはエチルアルコールが用いることができる。さらに低温の−196℃までは液体窒素に浸漬する方法あるいは液体窒素を噴霧する方法が用いることができる。これに依り、微細なマルテンサイトを含有した組織が形成される。また、昇温は室温の大気中に引き上げることで行えばよい。図1に、クライオ処理工程の後の組織の例を示す。
次に、鋳物を800〜1200℃まで再加熱し、800〜1200℃で0.5〜5hr保持し、急冷する(再結晶処理工程)。これにより、マルテンサイトが形成された組織はオーステナイト組織へと戻る。通常の凝固により形成される組織の結晶粒径は1〜10mm程度であるが、上記のクライオ処理工程と、その後の再結晶処理工程を経ることでで、オーステナイト粒径は微細化するとともに、結晶方位がランダムな等軸晶中心の組織となり、急冷後の組織は、等軸晶の平均粒径が200μm以下となる微細な組織となる。急冷の方法は特に限定されないが、水冷が好ましい。図3に、再結晶処理工程の後の組織の例を示す。
このクライオ処理工程と、再結晶処理工程を1つの熱処理サイクルとし(以下「RC処理」という)、2回以上RC処理を繰り返し施してもよい。
上記のRC処理の前に、鋳物を800〜1200℃に加熱して、0.5〜5hr保持し、急冷する溶体化処理工程を設けてもよい。溶体化により、鋳造時に析出した析出物が固溶して、延性、靭性が向上する。急冷の方法は特に限定されないが、水冷が好ましい。図2に、溶体化処理を施した後の組織の例を示す。この段階での組織は、通常の鋳物と同様、柱状晶が主体のオーステナイト組織である。
上記のRC処理のクライオ処理工程と再結晶処理工程の間に、再結晶オーステナイト結晶粒をより微細化させるために、鋳物をAC点直下の300〜400℃に加熱し、300〜400℃で1〜10hr保持するマルテンサイトの調質処理を施してもよい(調質処理工程)。調質処理では、加熱後の冷却は水冷でも空冷でも炉冷でも結晶粒微細化効果は変わらないので、冷却方法は特に限定しない。
図4に、クライオ処理した試験片の加熱変態曲線の例を示す。図4の横軸は温度、縦軸は試験片長さの変化量であり、長さの急激な収縮が生じる点が結晶構造の変態温度であることを示している。この試料のAC点は、345℃である。熱処理サイクルを2回以上繰り返す場合は、その一部のサイクルのみで調質処理を施してもよいし、すべてのサイクルで調質処理を施してもよい。
鋳物を製造する際には、溶湯に接種材としてNb、Ti、B、Mgを含有させることにより、凝固核を生成しやすくしてもよい。また、通常鋳型に塗布される塗型材とともに、Co(AlO)、CoSiO、Co−borate等のような接種材を鋳型表面に塗ることにより、凝固核が生成しやすくしてもよい。さらに、鋳型内の溶湯を、電磁撹拌装置を用いた方法、鋳型を機械的に振動させる方法、溶湯を超音波で振動させる方法などで、撹拌、流動させてもよい。これらの方法を適用することで、鋳物の組織がより等軸晶となりやすくなるため、より効率よく、本発明の高剛性低熱膨張鋳物が製造できるようになる。
[実施例1]
表1に示す成分組成となるように調整した溶湯を鋳型に注湯し鋳物を複数製造した。鋳物は、φ100×350とし、サンプル7mm×16mm×125mmのサイズに切り出し試験片とした。
製造した鋳物に対し、
(a)溶体化処理
(b)RC処理(クライオ処理→再結晶処理)
(c)溶体化処理→RC処理
(d)調質処理を含むRC処理(クライオ処理→調質処理→再結晶処理)
(e)溶体化処理→調質処理を含むRC処理
のいずれかの熱処理を施し、最終的な鋳物を得た。
製造した鋳物について、ヤング率、熱膨張係数、Ms点、オーステナイト組織の平均結晶粒径を測定した。ヤング率は室温にて二点支持横共振法で測定し、熱膨張係数は、熱膨張測定機を用い、0〜60℃の平均熱膨張係数として求めた。Ms点は、鋳物を所定の温度まで冷却して1時間保持した後に組織を観察し、マルテンサイトの有無を観察することにより求めた。オーステナイト組織の平均結晶粒径は、観察した結晶粒の円相当径の平均値として求めた。結果を表2に示す。また、図5、図6に鋳物の組織の一例を示す。図5の51〜56は鋳物より切り出したサンプル7mm×16mm×125mmをマクロ組織観察した写真、図6の61〜66はミクロ組織観察した写真である。
表2に示すとおり、本発明例の鋳物は、組織が等軸晶となり、結晶粒径が小さく、同じ成分組成を有する通常の低熱膨張鋳物と比較して、高いヤング率、低い熱膨張係数、低いMs点が得られていることが分かる。なお、No.138、139は、鋼中のNiが多すぎるため、Ms点が低くなりすぎ、マルテンサイト変態が起こらなかった比較例である。
[実施例2]
表3に示す成分組成となるように調整した溶湯を鋳型に注湯し鋳物を複数製造した。物はφ100×350とし、サンプル7mm×16mm×125mmのサイズに切り出し試験片とした。製造した鋳物に対し、溶体化処理→クライオ処理→再結晶処理を施し、最終的な鋳物を得た。溶体化処理は830℃×2hr、クライオ処理は液体窒素浸漬×2hr、再結晶処理は830℃×2hrとした。
表4に、製造した鋳物のヤング率、熱膨張係数、組織の観察結果を示す。測定方法は、実施例1と同じである。また、図7に鋳物のクライオ処理と再結晶処理の間の組織を示す。表中のマルテンサイト面積率は、この組織でのマルテンサイトの面積率を示す。図7と表4から分かるように、Ni量が35%を超えると、マルテンサイト組織が形成されず、その結果、表4に示すように、高いヤング率が得られなかった。

Claims (8)

  1. 質量%で、Ni:27〜35%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であり、
    オーステナイト組織の平均結晶粒径が200μm以下である
    ことを特徴とする高剛性低熱膨張鋳物。
  2. さらに、質量%で、Co:0.1〜18%を含有することを特徴とする請求項1に記載の高剛性低熱膨張鋳物。
  3. さらに、質量%で、Mn:0.5%以下、C:0.2%以下、及びSi:0.3%以下のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高剛性低熱膨張鋳物。
  4. さらに、質量%で、S:0.05%以下、Se:0.05%以下、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下、及びAl:0.1%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高剛性低熱膨張鋳物。
  5. さらに、質量%で、Co:2.0〜8.0%を含有し、さらにMn:0.3%以下、B:0.05%以下、Mg:0.1%以下、C:0.1%以下、Si:0.2%以下。S:0.05%以下、及び、Ce及び/又はLa:0.1%以下のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高剛性低膨張鋳物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の成分組成を有する鋳鋼を、室温からMs点以下まで冷却して、Ms点以下の温度で0.5〜3hr保持した後室温まで昇温するクライオ処理工程と、
    上記の処理を施した鋳鋼を、800〜1200℃に加熱し、0.5〜5hr保持した後急冷する再結晶処理工程
    を順に備えるRC処理を1回以上備えることを特徴とする高剛性低熱膨張鋳物の製造方法。
  7. 前記RC処理の前に、さらに、鋳鋼を800〜1200℃に加熱して、0.5〜5hr保持する溶体化処理工程を備えることを特徴とする請求項6に記載の高剛性低熱膨張鋳物の製造方法。
  8. 前記RC処理サイクルの少なくとも1回において、前記クライオ処理工程と前記再結晶処理工程の間に、さらに、
    鋳鋼を300〜400℃で1〜10hr保持する調質処理工程
    を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の高剛性低熱膨張鋳物の製造方法。
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