JP2784613B2 - 低熱膨張材料の製造方法 - Google Patents

低熱膨張材料の製造方法

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JP2784613B2
JP2784613B2 JP3076769A JP7676991A JP2784613B2 JP 2784613 B2 JP2784613 B2 JP 2784613B2 JP 3076769 A JP3076769 A JP 3076769A JP 7676991 A JP7676991 A JP 7676991A JP 2784613 B2 JP2784613 B2 JP 2784613B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、熱膨張特性と機械的
特性を改善したFe−Ni−Co系超不変鋼に係り、所
要組成の合金に、冷間加工を施しさらに所要の低温焼鈍
を施した極低熱膨張でかつ機械的強度を必要とする部材
に最適な低熱膨張材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】低熱膨張材料としては、不変鋼(Fe−
36%Ni)、超不変鋼(Fe−32%Ni−5%C
o)、不銹不変鋼(Fe−54%Co−9.5%Cr)
が知られており、このうち極低熱膨張を必要とする用途
に、公称成分Fe−32%Ni−5%Coの超不変鋼が
工業材料として使用されている。
【0003】かかる材料は高純度材料で製造された鋳塊
から切り出された1000℃の熱処理後の試験片の測定
値で、0〜100℃の平均熱膨張係数が1〜7×10-7
/℃(金属の研究、1931 Vol.8 No.5)
である。
【0004】しかし、工業的純度の材料を使用し工業
的生産手段で製造した超不変鋼にお いて一般に実用化さ
れている経年変化を防ぐための750℃以上の温度で高
温焼鈍した後の熱膨特性は、0〜100℃の平均熱膨
張係数が7〜15×10-7/℃、また後述する実施例の
とおり、0〜70℃の平均熱膨張係数が7〜14×10
-7/℃である。また、上記の焼鈍状態の機械的性質はビ
ッカース硬度が130〜140であり、比較的軟らか
く、外力により変形し易い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】今日の産業の高度化に
ともない超不変鋼実用合金の平均熱膨張係数をさらに小
さくすることが必要となってきた。例えば、レーザーミ
ラー支持棒、電波関連等の精密機械及び精密計測機器な
どに使用される材料には、極低熱膨張でかつ硬度、伸び
などの機械的強度が必要とされている。
【0006】また、超不変鋼は、材料の熱膨張特性の経
年変化を防ぐ意味で一般に前記焼鈍状態で使用されてい
るが、外力に対して変形し易いという欠点があった。
【0007】この発明は、Fe−Ni−Co系超不変鋼
の熱膨張特性と機械的特性を改善することを目的とし、
従来の如く高温焼鈍状態で使用する必要がなく、外力に
対して強い低熱膨張材料製造方法の提供を目的として
いる。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、Ni30.
5〜34.0wt%、Co4.0〜7.0wt%、かつ
Ni+Co36.0〜39.0wt%、Mn0.8wt
%以下、Si0.5wt%以下(但し、MnとSiの合
計が1.0wt%未満)、残部実質的にFeからなる合
金材料に、断面減少率20%以上の冷間加工を施し、そ
の後200〜450℃で30分〜5時間の熱処理を施
し、0〜70℃の平均熱膨張係数が+〜−3×10-7
/℃、ビッカース硬度が160〜240である材料を得
ることを特徴とする低熱膨張材料の製造方法である。
【0009】
【作用】この発明は、所要組成の合金に、冷間加工を施
しさらに所要の低温焼鈍を施すことを特徴としている。
かかるこの発明の機構を超不変鋼の代表的成分である、
実施例の合金番号9の例で説明すると、冷間加工、焼鈍
を繰り返して製造した高温焼鈍状態の合金棒に、この発
明の冷間加工を加えさらに低温焼鈍を施すと、合金の熱
膨張曲線は図1に示すように変化し、750℃以上の通
常の焼鈍状態に比べ極めて小さい平均熱膨張係数を得る
ことができる。すなわち、0〜70℃の平均熱膨張係数
は、冷間加工前の焼鈍状態では11.0×10-7/℃で
あるが、冷間加工が進むとともに小さくなり、−4.2
×10-7/℃となる。
【0010】冷間加工した合金棒を焼鈍すると熱膨張係
数は大きくなり、750℃以上の焼鈍ではもとに戻る
が、この発明による特定の合金組成では材料が軟化する
温度以下の200〜450℃の特定温度範囲で0〜70
℃の平均熱膨張係数が×10-7/℃以下となる。
【0011】すなわち、合金組成、冷間加工、低温焼鈍
の各条件を適宜選定することにより、0〜70℃の平均
熱膨張係数が+〜−3×10-7/℃、ビッカース硬度
が160〜240である低熱膨張材料を得ることができ
る。
【0012】さらに、合金組成をNi31.0〜33.
5wt%、Co4.5〜6.0wt%、かつNi+Co
36.0〜38.0wt%、Mn0.30wt%以下、
Si0.5wt%以下、残部実質的にFeとすることに
より、0〜70℃の平均熱膨張係数±2×10-7/℃を
得ることができる。
【0013】この発明において合金組成を限定した理由
を以下に説明する。Ni,Co,Feは当該低熱膨張合
金材料の主成分であり、Niが30.5〜34.0wt
%、Coが4.0〜7.0wt%、Ni+Coが36.
0〜39.0wt%、残部実質的にFeの範囲外である
と、前記冷間加工及び低温焼鈍を施しても、材料の熱膨
張係数が大きくなりすぎ、目的の材料を得ることができ
ない。
【0014】また、Niが30.5wt%未満では−4
0℃以上で合金材料がγ→α変態して不可逆的に膨張
し、工業機械がさらされる一般的な環境温度範囲である
−40〜100℃の雰囲気で使用できなくなる。
【0015】Mnは鋼質を清浄化するための脱酸かつS
固定のための必須の成分である。またSiもMnととも
に鋼質を清浄化するための脱酸成分である。Mn,Si
とともに必要以上の含有はその効果を飽和させるだけで
あり、また冷間加工と低温焼鈍後の材料の熱膨張係数に
影響を及ぼすことから、目的とする熱膨脹係数を得るた
めにはMn0.8wt%以下,Si0.5wt%以下と
し、これらの合計量を1.0wt%未満とする。特に0
〜70℃の平均熱膨張係数を±2×10-7/℃とするた
めにはMnの含有量を0.30wt%以下とすることが
好ましい。
【0016】さらに不可避的な不純物のうち、Cは0.
02wt%以下、Cuは0.2wt%以下、Crは0.
2wt%以下、Moは0.1wt%以下、Sは0.02
wt%以下、Pは0.02wt%以下、Nは0.005
wt%以下、Oは0.01wt%以下の含有であり、さ
らに好ましくは、Cは0.015wt%以下、Cuは
0.1wt%以下、Crは0.1wt%以下、Moは
0.05wt%以下、Sは0.01wt%以下、Pは
0.015wt%以下、Nは0.003wt%以下、O
は0.008wt%以下の含有である。
【0017】この発明において、さらに好ましい合金組
成は、Ni31.0〜33.5wt%、Co4.5〜
6.0wt%、かつNi+Co36.0〜38.0wt
%、Mn0.30wt%以下、Si0.5wt%以下、
残部実質的にFeであり、0〜70℃の平均熱膨張係数
が±2×10-7/℃となる。
【0018】この発明の特徴である低温焼鈍の前に行う
冷間加工は、例えば通常の冷間加工、焼鈍を繰り返した
焼鈍状態でこの発明の冷間加工を施すか、あるいは熱間
加工または鋳造して得た材料に直ちにこの発明の冷間加
工を施すとよく、また必要に応じて所要の熱処理を施し
てからこの発明の冷間加工をしてもよい。
【0019】すなわち、所要の組成に溶解、鋳造したイ
ンゴットから所要の断面寸法の製品材料を得るのに、圧
延、鍛造、伸線等の種々のリダクション加工を経るが、
最終製品を得る直前にこの発明の冷間加工と低温焼鈍を
行うことによりこの発明の効果を得ることができるもの
で、この発明の冷間加工前の加工、温度状態は何れの状
態であってもよいが、例えば700〜800℃の熱処理
を適宜選定して行うとよい。
【0020】この発明において、低温焼鈍の前に行う冷
間加工の断面減少率とは、加工前後の断面面積比をい
う。断面減少率を20%以上としたのは、断面減少率が
20%未満では450℃以下の低温焼鈍で0〜70℃の
平均熱膨張係数が小さくならないためであり、また断面
減少率が大きすぎると冷間加工時に材料の加工硬化が進
み加工が困難になるため、断面減少率は90%以下が望
ましく、好ましくは30〜80%、さらに好ましくは4
0〜70%の断面減少率である。
【0021】この発明の低温焼鈍において、熱処理温度
が200℃未満では常温近くで使用した際の材料の経年
変化のために材料の熱膨張係数が変化し好ましくなく、
また450℃を越えるとこの材料の熱膨張係数が大きく
なりすぎるため、200〜450℃の温度範囲とする。
また、かかる温度範囲での熱処理時間が30分未満で
は、低温焼鈍効果が不足し、5時間を越えるとその効果
が飽和して経済的でなくなるため、30分〜5時間の熱
処理とする。
【0022】
【実施例】原料に転炉溶解純鉄、純度98%以上のN
i、純度99.5%以上のCo、純度99.95%以上
のSi、純度98%以上のSiを用いて、表1に示す組
成のFe−Ni−Co系合金を高周波溶解して鋳造し、
インゴットを鍛造にて20mm径の棒材に仕上げた。
【0023】この棒材を800℃、1時間の焼鈍を施し
たのち、11.2mm径に冷間伸線して再度800℃、
1時間の焼鈍し、断面減少率61%のこの発明の冷間加
工にて7mm径の棒材を作成した。7mm径の棒材から
長さ250mmの試験片を切り出し、これに300℃で
1時間、400℃で1時間のこの発明による低温焼鈍
と、800℃で1時間の通常の焼鈍を施し、熱膨張試験
を行った。
【0024】なお、合金No.9の合金材料について
は、この発明の冷間加工と低温焼鈍の効果を明らかにす
るため、別に同様に高周波溶解、鋳造、鍛造加工した2
0mm径の棒材に800℃で1時間の焼鈍を施した後、
同じく800℃で1時間の中間焼鈍を施して7mm径の
棒材に冷間伸線した。中間焼鈍を施した各材料の線径は
最終冷間伸線の断面減少率が15〜83%の範囲になる
ように選定した。
【0025】7mm径の棒材から長さ250mmの試験
片を切り出し、伸線のままの状態、300℃で1時間、
400℃で1時間、500℃で1時間、800℃で1時
間の各熱処理を行ったものについて熱膨張係数を測定し
た。測定結果を図1に示す。図1において、曲線1は冷
間加工状態、曲線2は300℃、1時間の低温焼鈍後、
曲線3は400℃、1時間の低温焼鈍後、曲線4は50
0℃、1時間の焼鈍後、曲線5は800℃、1時間の焼
鈍後のものを示す。
【0026】すなわち、加工、焼鈍を繰り返して製造し
た焼鈍状態の合金材に、この発明による冷間加工を加え
さらに低温焼鈍を施すと、合金の熱膨張曲線は図1に示
すように変化し、750℃以上の通常の焼鈍状態に比べ
極めて小さい平均熱膨張係数を得ることができる。
【0027】なお、この発明合金の不純物組成のうちS
は表1に示す通りであるが、他にC0.005〜0.0
15wt%、Cu0.02〜0.1wt%、Cr0.0
3〜0.1wt%、Mo0.005〜0.05wt%、
S0.002〜0.01wt%、P0.005〜0.0
15wt%、N0.0008〜0.003wt%、O
0.0002〜0.008wt%を含有するものがあっ
た。
【0028】熱膨張係数の測定は、一端を封じた石英管
と差動トランス式測長機で構成された自己記録式熱膨張
測定器を用いて測定し、平均熱膨張係数は測定値に石英
の熱膨張係数5×10-7/℃を加えて補正した。測定結
果を表2に示す。
【0029】低温のγ→α変態は、メチルアルコールと
ドライアイスで試験片を−40℃で5時間冷却し、不可
逆的膨張の発生の有無で判断したところ、この発明合金
の場合は変態が全くなかった。
【0030】硬度の測定は上記の7mm径の棒材より小
片を切り出し、400℃で1時間、800℃で1時間の
熱処理を行ったものについて、ビッカース硬度計で測定
した。測定結果を表2に示す。
【0031】表1、表2から明らかなように、比較合金
に示すFe−32%Ni−5%Coで代表される超不変
鋼及びその周辺の組成の合金は、通常の750℃以上の
焼鈍状態を意味する800℃で1時間の熱処理により、
0〜70℃の平均熱膨張係数が12.3〜17.2×1
-7/℃であるのに対し、この発明による組成の合金
(合金番号1〜15)の場合は通常焼鈍の800℃で1
時間の熱処理を行っても0〜70℃の平均熱膨張係数が
7〜14×10-7/℃と低い値を示し、さらにこの発明
の冷間加工と低温焼鈍により、0〜70℃の平均熱膨張
係数が×10-7/℃以下と極めて小さな熱膨張係数が
得られた。
【0032】また、同時に400℃で1時間の低温焼鈍
を施した合金材料では、ビッカース硬度が212〜21
9となり、通常の焼鈍状態の硬さ133〜138よりも
硬く、外力による変形に対して強い材料が得られた。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【発明の効果】この発明は、所要組成のFe−Ni−C
o系合金に、断面減少率20%以上の冷間加工を施し、
200〜450℃で30分〜5時間の低温焼鈍を施すこ
とにより、当該材料が使用される一般的な環境温度範囲
である−40〜100℃、特に0〜70℃の平均熱膨張
係数が+〜−3×10-7/℃と極めて小さな熱膨張係
数とビッカース硬度が160〜240を有し、外力に対
して変形し難く機械的強度の大きい材料を得ることがで
きる。また、実施例にも明らかな如く、特に冷間加工の
断面減少率を適宜選定することにより、0〜70℃の平
均熱膨張係数+〜−3×10-7/℃、ビッカース硬度
が160〜240の低熱膨張材料を得られることを確認
した。
【図面の簡単な説明】
【図1】断面減少率と0〜70℃の平均熱膨張係数との
関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−52024(JP,A) 特開 昭55−128565(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 8/00 - 8/10 C22C 38/00 - 38/60

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni30.5〜34.0wt%、Co
    4.0〜7.0wt%、かつNi+Co36.0〜3
    9.0wt%、Mn0.8wt%以下、Si0.5wt
    %以下(但し、MnとSiの合計が1.0wt%未
    満)、残部実質的にFeからなる合金材料に、断面減少
    率20%以上の冷間加工を施し、その後200〜450
    ℃で30分〜5時間の熱処理を施し、0〜70℃の平均
    熱膨張係数が+〜−3×10-7/℃、ビッカース硬度
    が160〜240である材料を得ることを特徴とする低
    熱膨張材料の製造方法。
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