JP3603726B2 - 電子機器部品用オーステナイト系ステンレス鋼板 - Google Patents

電子機器部品用オーステナイト系ステンレス鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度、高平坦度、低残留応力を有する高性能オーステナイト系ステンレス鋼板とその製造方法に関する。特に、本発明は、電子機器部品用に適する高強度、高平坦度、低残留応力を有する高性能オーステナイト系ステンレス鋼板とその製造方法に関する。
【0002】
ここで言う電子機器部品とは、板材より比較的小さな寸法で採取され、必要に応じ所定の加工を施した後に部品として完成し、その後は主に電子機器中に組込まれて使用されるものである。例えば、具体的には、板材を母材とする多種、多目的に渡る電子機器用のバネ部品であり、またメタルフィルター、リードフレーム、ジンバル等が例示される。板材からの採取は、切断やプレス機等を用いての打抜き、製品以外の部分を化学的に腐食除去するエッチング等の各種方法により行われる。
【0003】
【従来の技術】
上記の電子機器部品には、多種の形状、目的を有する多くの製品があり、特に高強度を必要とするバネ部品をはじめとして、半導体チップがその上に固定されるリードフレーム、磁気ヘッドを支えるジンバルはいずれも構造部品であって、充分な強度が必要となる。また、上記のように切断や打ち抜きにより所定寸法の部品を高精度かつ安定して採取するためには、板材は高平坦度であることが必要とされる。
【0004】
更に、板材からの採取前後にその採取方法に起因せず、周囲からの拘束が無くなることで部品に発生する形状変化を防止するため、板材に残存する弾性歪も低減されている( 低残留応力) 必要がある。特に、高平坦度および低残留応力であることは、最近の電子精密機器の小型、軽量化にともなう部品形状の高精度、複雑化あるいは高密度化にともない必要不可欠となり、要求が厳しくなる一方である。
【0005】
従来、上述のようなバネ用鋼帯としては、加工誘起マルテンサイト変態を伴う加工硬化により比較的容易に高強度が得られ、加工率の調整による広範囲な強度調整も可能であり、加工性にも優れるSUS301やSUS304等の準安定オーステナイト系ステンレス鋼が主な素材の一つとして使用されてきた。
【0006】
このためにSUS301やSUS304ではJIS 規格(JIS−G−4313)においてバネ用ステンレス鋼帯としての規定がなされ、強度、伸び、形状等に関して1/2HからEHにわたる多種の仕様がある。それらの中で最高強度を示すSUS301材のEH仕様でのビッカース硬度(Hv)は 490以上にも達する。そして、上述のような用途への拡大もあり、最近の同鋼帯には高強度、高平坦度とともに低残留応力であることが要求されるようになっている。
【0007】
これらバネ用ステンレス鋼帯の製造は複雑であり、全工程は図1(a)に概略示すようである。
【0008】
すなわち、図1(a)に示すように、溶製されたステンレス鋼鋳塊は通常の熱間加工工程を経て熱延材となり、次いで、冷間圧延および焼鈍を繰返して所定板厚にまで減厚される。その後、調質圧延、形状矯正、再加熱による歪取焼鈍が施される。これらの工程のうち、調質圧延は、製品板厚への減厚に伴う加工硬化により必要な強度、伸びに調整するためになされる。そのために前工程で繰返される冷間圧延および焼鈍の最終段階においては、この調質圧延を考慮した所定板厚への減厚後、充分な軟化がなされる。
【0009】
更に、形状矯正は調質圧延後の性能を大きく変化させない塑性変形域で平坦度改善のために施され、また歪取焼鈍はその性能を大きく変化させない温度域で残留応力低減のために施される。
【0010】
従来例にあっても、形状矯正と歪取焼鈍の効果を併せ持つ工程として、TA(Tension Annealing)処理が施される場合もある。TA処理は、調質圧延後の性能を大きく変化させない範囲で張力を付与しつつ加熱するものであり、平坦度改善と残留応力低減を同時になすことを目的とする処理である。
【0011】
しかし、最近の鋼帯は機器の小型、軽量化に伴う板厚の減少、高強度化のために加工率が増加する傾向にあり、それに伴って耳伸び等の形状悪化が増加する傾向にある。このため、上述の形状矯正はより高強度かつ形状の悪化した材料に施されることとなり、充分な改善が難しくなっている。また、矯正後に例え平坦となっても、高強度( 高降伏応力) 材を大きく変形させるため、弾性変形により平坦となっている場合も多く、歪取焼鈍後に形状が再び悪化することも多かった。
【0012】
このため、形状悪化に伴い形状矯正工程において局所的かつ多量に導入された弾性歪を充分に除去するために、引き続いて行われる歪取焼鈍工程では強度、伸びを変化させない低温において長時間実施することが必要であり、焼鈍設備を長期間占有し、生産性阻害の要因となっていた。
【0013】
更に、板材が多種製品にわたり、かつ各板厚が薄板化する状況下では、使用量減少傾向にあり、少量多品種をその都度調整の必要な上記のような複数工程に通すことは極めて非効率的であり、コストアップの大きな要因となっていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
図1(a)に関連させて説明したように、従来例では、最終冷間圧延で所定板厚にまで減厚してから、最終焼鈍での充分な軟化後、調質圧延を行い、製品板厚への減厚による加工硬化により性能を調整し、その性能を変化させない範囲で精一杯の形状矯正による高平坦度化、そして再加熱での歪取焼鈍による低残留応力化を図るのである。
【0015】
本発明の課題は、上述のような電子機器部品への適用に最適な高強度、高平坦度、低残留応力を備えたオーステナイト系ステンレス鋼とその製造方法を提供することである。
【0016】
より具体的には、電子機器部品に最適な高性能材料を安価かつ安定して供給することが可能であって、残留応力低減、高平坦度化をも同時になし、一工程で薄板製品に仕上げることができる合理的かつ効率的工程によって製造したオーステナイト系ステンレス鋼とその製造方法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、最終冷間圧延にて製品板厚へ減厚後に焼鈍し、その際の軟化による強度、伸びの調整に着目した。
以下、この軟化による材料の強度、伸びの調整を目指した焼鈍を「調質焼鈍」と称する。
【0018】
ここに、本発明者らは、準安定オーステナイト系ステンレス鋼での加工誘起マルテンサイト相のオーステナイトへ変態( 逆変態) を伴う再結晶に注目し、この逆変態は数% の体積変化を伴うものであることに着目し、そして、同材料およびその製造方法について鋭意研究を重ね、本発明を完成したものである。
【0019】
すなわち、本発明者らは、準安定オーステナイト系ステンレス鋼の逆変態を伴う再結晶が張力付与により制御できると考え、検討の結果、次のような知見を得た。
(1) 張力付与調質焼鈍により、強度および伸びの調整がなされること。
(2) 張力付与調質焼鈍により、効果的な平坦度改善と残留応力低減がなされること。
(3) 従来の最終冷間圧延工程にて製品板厚とした後の最終焼鈍工程に張力付与調質焼鈍を適用することで、従来その後に施されていた工程を経ることなく製品に仕上げる合理的工程が実現可能であること。
(4)更に張力付与調質焼鈍を適用した工程で製造された材料が従来工程により製造された材料では得ることが困難であった高性能を示すこと。
【0020】
ここに、高性能とは従来技術におけるレベルを越える高強度、高平坦度および低残留応力を総称して言う。なお、高強度とは一般的に伸び( 加工性) 低下を伴う単純な強度上昇とは異なり、従来材と同一の伸び( 加工性) を確保したまま高強度を得られるという実際の機器への材料として適用可能な実質的強度を言う。
【0021】
そして、この高性能材は一連の実験結果より再結晶粒と前加工の影響を残す未再結晶部の混合組織を示す場合に得られることを確認した。
【0022】
すなわち、高強度化は材料の再結晶粒と未再結晶部、つまりオーステナイト相とマルテンサイト相からなる混合組織の比率の最適化と一部条件下で確認される結晶粒微細化に起因し、残留応力低減と平坦度向上は逆変態での体積変化と変形抵抗の低下する高温での矯正に起因するものと推定される。
【0023】
従来にあって、本発明の一つの特徴である調質焼鈍が用いられてこなかった理由は、再結晶挙動の制御が困難なため、焼鈍での急激な軟化に対して目標性能を達成することもまた困難と考えられていたためである。しかし、本発明者らの知見によれば、調質焼鈍は従来の歪取焼鈍に比べて高温の再結晶温度域を使用するため極く短時間で残留応力が消失し、一方、変形抵抗の大きな低下を活用することで極めて効果的な平坦度の改善も期待される。
したがって、本発明により、材料の再結晶挙動を制御し、同時に残留応力低減、平坦度改善をもなす調質焼鈍法が確立されたということができる。
【0024】
すなわち、本発明は次の通りである。
(1) 質量%で、
C : 0.01%以上 0.08 %以下、 Si : 0.1 %以上 2.0%以下
Mn : 3.0%以下、 Cr : 10.0 %以上20.0%以下
Ni : 3.0 %以上12.0%以下、 N : 0.08%以上 0.25 %以下
Nb : 0.01%以上 0.50 %以下、
を含み、かつ
Md=500 −458(C+N) −9(Si+Mn)−14Cr−20Ni−65Nb
としたときのMd値が0以上80以下を満足し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、金属組織が再結晶粒と前加工の影響を残す未再結晶部の混合組織であることを特徴とする電子機器部品用オーステナイト系ステンレス鋼板。
【0025】
(2) 金属組織中にNb窒化物が存在する上記(1) に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
【0026】
(3) 上記(1) または(2) に記載の化学組成を備える素材に対して、熱間加工後、冷間圧延および焼鈍を1回または2回以上行って鋼板を製造する方法であって、圧下率20%以上で最終の冷間圧延を行った後は、 650℃以上1000℃以下の温度でその温度での0.2 %耐力以下に相当する張力を付与しつつ、300 秒以下の時間保持する調質焼鈍を行うことによって、再結晶粒と前加工の影響を残す未再結晶部の混合組織を有する鋼板を製造することを特徴とする電子機器部品用オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明において化学組成、金属組織、そして製造条件を上述のように規定したその限定理由について説明する。
まず、材料の化学組成の限定理由について説明する。
【0028】
C:0.01% 以上0.08% 以下
Cは、オーステナイト母相および加工誘起マルテンサイト相を固溶強化する元素であり、必要な強度を得るため少なくとも 0.01%以上とする。また、強力なオーステナイト安定化元素でもあり、添加量の増加にともない加工誘起マルテンサイト変態を抑制する。
【0029】
更に、過度に含有した場合、焼鈍時に多量の炭化物の析出を招き、材料の加工性や耐食性を大きく劣化させる。これらより、上限を 0.08%とした。更に好ましくは、0.02% 以上0.07% 以下である。
【0030】
Si:0.1%以上2.0%以下
Siは、オーステナイト母相およびマルテンサイト相を固溶硬化する元素である。また、高温強度を上昇させ、本発明鋼の特徴である混合組織を得ることを容易にすると考えられる。この意味では本発明鋼に不可避の元素である。これらの効果を得るために、少なくとも0.1%以上とする。ただし、Siはフェライト安定化元素でもあり、過度に添加した場合には鋼中へのフェライト相の残存を招き、加工誘起マルテンサイト相が得にくくなる。また、介在物等の生成により材料の加工性を劣化し、性能の低下を招く。このため、上限を2.0%とした。更に好ましく、は0.3%以上1.8%以下である。
【0031】
Mn:3.0%以下
Mnは、オーステナイト安定化元素である。他の元素とのバランスを考えて添加されるが、過度に添加した場合、加工誘起マルテンサイト相が得られない場合がある。また、介在物等の生成により材料の加工性や性能の低下を招く。このため、上限を3.0%以下とした。ただし、熱間加工性を改善する効果もあり、更に好ましくは、0.3%以上2.6%以下である。
【0032】
Cr:10.0% 以上20.0% 以下
Crは、ステンレス鋼の基本元素の一つであり、必要な耐食性を得るためには10.0% 以上を添加する。ただし、Crはフェライト安定化元素でもあり、過度に添加した場合には鋼中へのフェライト相の残存を招く。このため、上限を20.0% とした。更に好ましくは、13.0% 以上19.0% 以下である。
【0033】
Ni:3 .0 %以上12.0 %以下
Niは、ステンレス鋼の基本元素の一つでありであり、オーステナイト安定化元素である。室温において安定したオーステナイト相を得るために必要不可避の元素である。しかし、本発明においては加工誘起マルテンサイト変態を起こし得る準安定オーステナイト状態とし、良好な加工性を得るために 3.0% 以上12.0% 以下の添加とした。更に好ましくは、3 .5% 以上11.5% 以下である。
【0034】
N:0.08% 以上0.25% 以下
Nは、オーステナイト母相および加工誘起マルテンサイト相を固溶強化する元素である。また、後述するようにNb−N化合物の析出により再結晶粒の成長を抑制し、混合組織を得ることを容易にする。この意味では本発明鋼に不可避の元素である。これらの効果を得るため、0.08%以上、特に0.1%以上とする。また、C と同様に強力なオーステナイト安定化元素でもあり、添加量の増加にともない加工誘起マルテンサイト変態を抑制する。更に、過度に添加した場合、熱間加工性を阻害し、耳割れ等の発生により製造性を低下させることとなる。これらより、上限を0.25% とした。更に好ましくは、0.11% 以上、0.20% 以下である。
【0035】
Nb:0.01% 以上0.50% 以下
Nbは、再結晶および焼鈍時のNb−N化合物の析出により粒成長を抑制し、混合組織を得ることを容易にする。この意味では本発明鋼に不可避の元素である。これらの効果を得るため、少なくとも0.01% 以上添加する。ただし、極めて高価な元素であり、多量に添加した場合、材料も高価となる。また、材料の延性が低下する。これらより、上限を0.50% とした。好ましくは、0.02% 以上0.45% 以下である。
残部はFeおよび不可避的不純物元素からなる。
【0036】
なお、これらの成分以外に工業的側面より添加される元素、例えば溶製時に脱酸剤として使用されるCa、 Al 、 Ti あるいはREM(希土類金属)、熱間加工性の改善が見込まれる B、耐食性を向上するMo等を必要に応じてそれぞれ0.3%以下、合計量で0.5%以下含有しても差し支えない。
【0037】
本発明においてはさらに下記式で規定されるMd (℃) の値を0以上 80 以下に規定する。
Md=500 −458(C+N) −9(Si+Mn)−14Cr−20Ni−65Nb
ここで元素記号は、鋼中の含有量 (質量%) を意味する。
Md( ℃) は 0.3% の引張真ひずみを与えた時、全体の50% がマルテンサイト変態を生じる温度( 一般的に用いられるMd30) を一連の実験結果に基づいて補正したものである。
【0038】
本発明は、準安定オーステナイト系ステンレス鋼での加工誘起マルテンサイト相の逆変態を伴う再結晶挙動が張力付与調質焼鈍により制御可能であると考え、諸特性の調整、向上が可能となることを発見したことに基づくものであり、加工誘起マルテンサイト変態の調整が不可避である。このため、一連の試験の結果より、最適なMdを 0以上80以下に規定した。
【0039】
後述するように、図5は、再結晶粒と前加工の影響を残す未再結晶部の混合組織のTEM 観察結果を示すものである。本発明にあっては、高性能化のためには混合組織とするのであって、主に高強度が材料の再結晶粒と未再結晶粒、つまりオーステナイト相とマルテンサイト相からなる混合組織の比率の最適化に起因するもとの考えられ、また、高平坦度と低残留応力が加工誘起マルテンサイトの逆変態での体積変化に起因するものと考えられる。
【0040】
かかる混合組織において、析出物として、粒成長を抑制し、混合組織を安定して得られるようになると考えられるNb−N化合物や、更なる高強度を目的として別に 200℃から 600℃程度の比較的低温域で焼鈍した場合に観察されるものと同様のN 、C ないしそれらの化合物等がある。なお、上述の混合組織から構成される本発明の高性能材に同様の焼鈍を施した場合、当然のことながら析出強化が得られる。
【0041】
すなわち、本発明の高性能材は、所定成分のオーステナイト系ステンレス鋼を再結晶粒と前加工の影響を残す未再結晶部の混合組織とすることで得られるものである。
次に、製造方法の限定理由について説明する。
【0042】
まず、図1(b)は、本発明にかかるオーステナイト系ステンレス鋼板の製造工程について概略示す工程図であり、図中、従来法と同様にして溶製されたステンレス鋼鋳塊は通常の熱間加工工程を経て熱延材となり、次いで、冷間圧延および焼鈍を繰返して所定板厚にまで減厚される。これは1回または2回以上行われる。最終冷間圧延によって製品板厚にまで減厚された冷延材は、次いで張力付与調質焼鈍が行われる。これは強度、伸びを調整するとともに平坦化度の向上および残留応力の低減を図るために行われる。なお、1回の冷間圧延だけを行う場合は、それが最終の冷間圧延となり、それに続いて単なる焼鈍ではなく、上述の張力付与焼鈍が行われる。
【0043】
ここに、図3および図4は、図1(b)の工程図にしたがって、後述の表1の鋼種2材を用い、最終冷間加工の加工率 40%で板厚0.2mm に最終冷間圧延後、調質焼鈍した薄板材について特性評価を行ったときの結果をまとめて示すグラフである。
【0044】
調質焼鈍は、 650〜1050℃まで50℃間隔の各温度にて30秒保持、張力有無にて実施した。張力は図2に示す各温度での0.2%耐力に対して 70%の値を同温度での焼鈍中に付与した。
【0045】
また、硬度はビーッカース硬度計、伸びは通常のインストロン型引張試験機を用いてJIS 規格に準じて測定した。
【0046】
板反りは長さ500mm の薄板での吊下げ時の値を測定、表層部残留応力はエッチングによる短冊状試験片の片面のみを全面腐食により板厚減少させることで発生する板反りの変化を測定し、その変化より算出した。ミクロ組織は透過電子顕微鏡にて観察した。
【0047】
図3に、本発明鋼薄板の張力有無での調質焼鈍後の硬度と伸びを示す。
張力無の場合には 800℃から 850℃での急激な軟化(硬度低下、伸び上昇)後、1000℃程度まで緩やかに軟化するのに対し、張力有の場合は 650℃から1000℃まで全体に比較的緩やかな軟化を起こす。
【0048】
具体的には同図中に示すように冷間圧延後と本試験での最高温度である1050℃での焼鈍後の硬度の中間値に関して見た場合、中間値を挟む前後温度(800℃と850 ℃) での焼鈍後の値より決定される硬度減少率(/℃)は、張力無では−3.5と大きいのに対し、張力有では−0.8に留まり、−1.0(/℃)より小さくなる。
すなわち、張力付与により軟化が緩やかとなり、硬度調整も容易となり、調質焼鈍の適用が可能となる。
【0049】
図4は、本発明にかかる薄鋼板の張力有無での調質焼鈍後の板反りと表層部残留応力との関係を示すグラフである。
張力無の場合には板反りの改善効果が小さく、残留応力も硬度と同様に 800℃から 850℃で急激に低下するのに対し、張力有の場合は 650℃から 750℃において改善が認められ、 750℃以上では充分に低下し、比較的広範囲な温度域にわたる効果を示す。
【0050】
具体的に見た場合、硬度が先述の中間値に至る直前の 800℃焼鈍後の値の冷延後に対する比率(%)は、張力無では板反りが 85%、残留応力が 71%と依然大きな残存を示すのに対し、張力有では板反りが8%、残留応力が 10%と小さい。
すなわち、張力付与調質焼鈍により、平坦度および残留応力は大きく改善される。
【0051】
これらより、本発明によれば、(1) 張力付与調質焼鈍により強度および伸びの調整が可能となり、(2) 効果的な平坦度改善と残留応力低減がなされ、(3) 製品板厚に冷間圧延後、張力付与調質焼鈍を適用することで製品に仕上げる合理的工程が実現可能となることが解る。
【0052】
更に、張力付与調質焼鈍により製造された材料は、従来法により製造された材料を越える性能を示し、高性能材を得られることが解る。
【0053】
図5には 800℃での張力付与調質焼鈍後の材料のミクロ組織を示す。同材は再結晶粒と未再結晶粒からなる混合組織を示すとともに、析出したNb−N化合物が確認される。これにより、張力付与調質焼鈍後の高性能材が再結晶粒と未再結晶部の混合組織からなることも確認される。
【0054】
以上より、調質焼鈍に先立って冷間圧延における冷間圧延率は製品板厚において製品に要求される所定の性能を得られるものであればよいが、充分な加工誘起マルテンサイトの量を得るために 20%以上と規定した。更に好ましくは、 25%以上である。
【0055】
張力付与調質焼鈍は 650℃以上1000℃以下の温度にて工業的な面より 300秒以下の保持時間とし、焼鈍中の材料の破断を避けるため各温度での0.2%耐力以下の張力を付与するものとした。更に好ましくは、温度が 700℃以上、保持時間が 120秒以下、張力が0.2%耐力の90% 以下である。
次に、本発明の作用効果について実施例に関連させて、さらに具体的に説明する。
【0056】
【実施例】
表1に示す組成からなる本発明鋼および比較鋼の溶製材を熱間圧延、焼鈍、脱スケール( 酸洗) 後、複数回の冷間圧延および焼鈍を繰り返し、最終工程で図1(b)に従い加工率30〜50% で板厚0.2mm に最終冷間圧延後、張力付加調質焼鈍を実施した。
【0057】
調質焼鈍は、 650〜1050℃まで50℃間隔の各温度にて30秒ないし 240秒保持し、同時に張力を付与した。その際、各温度での0.2%耐力に対して 50%ないし 70%の値の張力を同温度での焼鈍中に付与した。
その後、得られた0. 2mmの薄板材より試験片を採取し、硬度、板反り、表層部残留応力およびミクロ 組織を調査した。
【0058】
張力付与による調質焼鈍の適用可否は、図3の場合と同様に、冷間圧延後と本試験での最高温度である1050℃での焼鈍後の硬度の中間値を得ることを目標と仮定し、同中間値を挟む前後温度での焼鈍後の値より硬度減少率(/℃)を算出し、 0〜−1.0を可能として○、それ以外を困難として×にて評価した。
【0059】
平坦度と残留応力の改善効果は、図4の場合と同様に、先の硬度中間値(目標)に至る直前の温度での焼鈍後の値の冷間圧延後に対する比率(%)を算出し、40以下を充分な効果有りとして 0〜20を○、20〜40を△、40以上を効果が低いとして×にて評価した。
【0060】
表2に本発明鋼および比較鋼の薄板材の製造工程、特性および評価の結果を示す。
同表より明らかように、本発明鋼は硬度減少率が−1よりも小さく、張力付与調質焼鈍法の適用が可能である。また、冷間圧延後に対する同焼鈍後の板反りおよび残留応力の比率はほぼ20以下であり、平坦度および残留応力が大きく改善される。なお、同焼鈍後の組織が全て再結晶粒と未再結晶部の混合状態となっていることも確認された。
【0061】
これらに対し、比較鋼は硬度減少率が−2.5よりも大きく、張力付与調質焼鈍の適用が困難と考えられる。また、張力付与しても平坦度および残留応力の改善効果は低い。更に、調質焼鈍後の組織は加工組織のみからなる未再結晶(回復) 状態であり、オーステナイト安定化元素である C、 Mn 、 Ni 等の高い鋼種7ないし9では冷間加工後に加工誘起マルテンサイト相が殆ど確認されず、フェライト安定化元素であるSiの高い鋼種10は中間焼鈍後に比較的多くのフェライト相が観察され、同様に加工誘起マルテンサイト相が得られ難くなった。
これらを総合して、本発明鋼によれば従来材と比較して、板反りが1/2 、残留応力が1/3 となり、歩留が十数パーセント向上した。
【0062】
【表1】
Figure 0003603726
【0063】
【表2】
Figure 0003603726
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、合理的かつ効率的工程によって製造した電子機器部品に最適な高強度、高平坦度、低残留応力オーステナイト系ステンレス鋼板を安価かつ安定供給することができる。したがって、本発明にかかるステンレス鋼板は、例えば電子機器用の各種バネ、メタルフィルター、リードフレーム、ジンバル等に用いた場合、大幅な性能の改善が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a),(b)は、それぞれ従来例、本発明例の製造工程の略式説明図である。
【図2】薄板材の各測定温度での0.2%耐力を示すグラフである。
【図3】薄板材の張力有無での調質焼鈍後の硬度と伸びを示すグラフである。
【図4】薄板材の張力有無での調質焼鈍後の板反りと表層部残留応力を示すグラフである。
【図5】本発明鋼薄板の張力付与調質焼鈍後のTEM 観察図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C : 0.01%以上 0.08 %以下、 Si : 0.1 %以上 2.0%以下
    Mn : 3.0 %以下、 Cr : 10.0%以上20.0%以下
    Ni : 3.0 %以上12.0%以下、 N : 0.08%以上 0.25 %以下
    Nb : 0.01%以上 0.50 %以下
    を含み、かつ
    Md=500 −458(C+N) −9(Si+Mn) −14Cr−20Ni−65Nb
    としたときのMd値が0以上80以下を満足し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、金属組織が再結晶粒と前加工の影響を残す未再結晶部の混合組織であることを特徴とする電子機器部品用オーステナイト系ステンレス鋼板。
  2. 金属組織中にNb窒化物が存在する請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の化学組成を備える素材に対して、熱間加工後、冷間圧延および焼鈍を1回もしくは2回以上行って鋼板を製造する方法であって、圧下率20%以上で最終の冷間圧延を行った後は、 650℃以上1000℃以下の温度でその温度での0.2 %耐力以下に相当する張力を付与しつつ、300 秒以下の時間保持する調質焼鈍を行うことによって、再結晶粒と前加工の影響を残す未再結晶部の混合組織を有する鋼板を製造することを特徴とする電子機器部品用オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
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