JPH06279945A - 高強度低熱膨張線およびその製造方法 - Google Patents

高強度低熱膨張線およびその製造方法

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JPH06279945A
JPH06279945A JP6780793A JP6780793A JPH06279945A JP H06279945 A JPH06279945 A JP H06279945A JP 6780793 A JP6780793 A JP 6780793A JP 6780793 A JP6780793 A JP 6780793A JP H06279945 A JPH06279945 A JP H06279945A
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JP6780793A
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English (en)
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Koji Sato
光司 佐藤
Takehiro Oono
丈博 大野
Yoshiki Masukata
芳樹 舛形
Minoru Takuwa
実 多久和
Shigeaki Sato
重明 佐藤
Yoshimi Senda
嘉美 仙田
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ピアノ線に匹敵する引張強さを有し、煩雑な
工程を経ずとも安定して高い捻回特性を有する高強度低
熱膨張線および製造方法を提供する。 【構成】 本発明は、重量%で、C0.06〜0.50
%を含み、Co65%以下、Ni30%以下の1種また
は2種をCo+Niで25〜65%含有し、残部がFeを
主成分とする組成からなるオーステナイト相を主体とす
る高強度低熱膨張線であって、加工誘起マルテンサイト
相を含有することを特徴とする高強度低熱膨張線であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は低弛度耐熱送電線用芯線
等に使用される高強度低熱膨張線の製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来より、架空送電線については、鋼芯
アルミ撚線(ACSR線)が使用されてきたが、近年の
電力需要の増大と地価高騰が相まって従来の鋼芯アルミ
撚線に代わる高強度で低い熱膨張係数をもつ芯線が望ま
れるようになった。この用途では、高強度低熱膨張線を
アルミ撚線の芯材として使用するので、複数本の線材を
撚って束ねる作業が入る。この撚線作業の性能を評価す
る手法として、線材の一端を固定して他端をねじる捻回
試験を実施し、捻回値として要求されている。
【0003】このような用途に対し、強度や捻回特性を
改善する目的で特公昭56−45990号、特開昭55
−41928号、特公昭57−17942号、特開昭5
5−122855号、特開昭55−128565号、特
開昭55−131155号、特開昭56−142851
号、特開昭57−26144号、特開昭58−1176
7号および特開昭58−11768号等のFe−Ni系
合金が提案されている。さらに、これらの合金の強度と
捻回特性を向上させる目的で、特公昭60−34613
号、特公平2−15606号、特公平2−41577号
および特公平2−55495号等の高強度低熱膨張合金
線(ACIR線)あるいは合金線の製造方法が提案され
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の高強度
低熱膨張合金はいずれもNiまたはNi+Coを35〜
50%の範囲で含み、さらにCやNの侵入型固溶強化元
素やCr、Moなどの数種の置換型固溶強化元素やT
i、Nbなどの数種の析出強化型元素を低熱膨張特性を
損なわない範囲で含み残部Feからなる合金組成をも
つ。これらの合金はいずれも固溶化熱処理あるいは、焼
鈍熱処理状態においては、良好な捻回特性が得られるも
のの、引張強さはたかだか50〜80kgf/mm2の範囲で
あり、この状態では低弛度架空送電線用芯線の用途には
適さない。そこで、これらの合金はいずれも加工硬化能
が、従来の低熱膨張合金である36%Ni−Fe合金
や、42%Ni−Fe合金に比べて大きく、冷間加工に
よって100〜130kgf/mm2の引張強さが得られ、一
部で実用化されるようになった。
【0005】しかし、従来の鋼芯アルミ撚線の芯線に用
いられているピアノ線の強度は、170kgf/mm2クラス
のものがより多くをしめており、これらの送電線の送電
容量を鉄塔の建て替えなしに高めるためには、170kg
f/mm2クラスのピアノ線と同程度あるいはそれに近い引
張強さをもつ、低熱膨張合金線が必要となっていた。ま
た、ここで述べた従来の高強度低熱膨張合金線は、単純
に冷間域で強加工を加えただけではねじりに対する変形
能を表わす捻回特性は大きく低下してしまうので、引張
強さと捻回特性を両立させるために上記の合金に加え
て、種々の煩雑な製造方法が提案されている。たとえ
ば、特公昭60−34613号や特公平2−15606
号では、いずれも冷間加工の前段階または冷間加工の途
中で歪取焼鈍を実施し、強度と捻回特性の両立が試みら
れている。これらの製造方法には皮剥によって生じる表
面の歪みを焼鈍熱処理で除去することにより、良好な捻
回特性が得られることが開示されている。
【0006】これに対し、特公平2−41577号およ
び特公平2−55495号に開示される合金線は上記の
特公昭60−34613号や特公平2−15606号と
ほぼ同一の製造プロセスをとるが、ここでは、冷間加工
後の焼鈍時に生成するMo2C炭化物が強度と捻回特性
の向上に寄与すると述べられている。しかし、特公平2
−41577号および特公平2−55495号の発明人
の1人は「Effect ofprocesses of drawing on torsion
al property of high-tensile strength Invar alloy w
ire」(Wire Journal International vol.21,No.4(1988),
P84)と題して捻回特性の改善に触れている。この論文に
おいて、捻回特性の改善は冷間加工後にMo2C炭化物
を析出させる焼鈍熱処理を実施するだけでは不十分で、
とくに引抜後の合金線の横断面の硬さ分布において、中
心部の硬さがもっとも高くなるように、ダイスの引抜角
を小さく、かつ潤滑性を高めるためのクリストファーソ
ンチューブと称される特殊な治具が必要であると報告さ
れている。
【0007】しかし、ダイスの引抜角を小さくしたり、
潤滑性を高めるためのクリストファーソンチューブと称
される特殊な治具を使用して捻回特性を高めることは、
引抜パス回数の増大(引抜角が小さくなると1パスあた
りの減面率を高くとることができない)を招き、ライン
の工程変更にも時間がとられ、全長数kmにもおよぶ合
金線の製造に対してははなはだ効率の悪い製造方法であ
る。以上の問題点を鑑み、本発明は、従来のFe−Ni
系高強度低熱膨張線よりも、さらにワンランク上、つま
りピアノ線に匹敵する引張強さをもち、かつ煩雑な工程
を経ずとも安定して高い捻回特性をもつ高強度低熱膨張
線を得ること、さらにはその製造方法を提供することを
目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Fe−C
o−Ni系合金に種々の合金元素を添加した組成の合金
の熱間圧延素材を用い、その合金線の引張特性、捻回特
性および熱膨張係数を調査した。その結果、従来のFe
−Ni系高強度低熱膨張合金線ではオーステナイト相が
強度の冷間加工を加えても安定なため、加工硬化能に限
界があり、ピアノ線並みの高強度を得ることができない
ことがわかった。そこで、本発明が目的とするレベルの
高強度の低熱膨張線を得るためには、強度の冷間加工に
よってオーステナイト相の一部がマルテンサイト相に変
態するような合金組成を選び、さらにその時の冷間加工
前の合金組成が、もっとも低熱膨張係数が得られる組成
に最適化しておくことで、高強度と低熱膨張特性の両立
が可能であることを見いだした。
【0009】特に、このような加工誘起変態能を有する
芯線が高強度と低熱膨張特性を両立するためには、低熱
膨張特性を有する組成としてステンレスインバーと呼ば
れるFe−54Co−9Cr合金と、スーパーインバー
と呼ばれるFe−31Ni−6Co合金において、両者
のNi量とCo量を直線関係で結ぶ領域をよりオーステ
ナイト相が不安定な方向の組成とすることで達成でき
る。より具体的には、図1に示すようにNiとCoの関
係を比例関係で結ぶ領域と、これにFeを加えた組成
に、Cを0.06〜0.50%の範囲で添加すること
で、より一層オーステナイト相の加工硬化と加工誘起マ
ルテンサイトの強度向上を図ることができ、それによっ
て、目的とするレベルの高強度低熱膨張線が得られるこ
とがわかった。
【0010】このような高強度低熱膨張特性が得られる
基本合金組成範囲は、C0.06〜0.50%を含み、
Co65%以下、Ni30%以下の1種または2種をC
o+Niで25〜65%含有し、残部がFeを主成分と
する組成で構成される。前記の主成分とする組成には、
さらに強度、熱膨張特性の性能の改善、安定化のために
Si,Mn,Cr,W,Mo,B,Mg,Ca等の元素
が添加できる。さらに、積極的な添加はむしろ好ましく
ないが、V,Ti,Nb,Ta,Hf,Zr等の一次炭
化物生成元素も本発明高強度低熱膨張線の性能を低下さ
せない範囲での適量の添加範囲が存在する。また低弛度
耐熱送電線用芯線として、上記の加工誘起変態能を有す
る高強度低熱膨張線は、熱間加工後の通常の冷間伸線工
程でとくに中間で煩雑な焼鈍工程を入れる必要もなく、
単純な冷間伸線工程を行なうだけで、従来のピアノ線と
同じレベルの捻回値と捻回値の安定化をもたらすことが
明らかとなり、送電線用芯線としてとくに適している製
造方法であることがわかった。
【0011】さらに、加工誘起変態能は合金組成の変化
に敏感であるが、熱間圧延後、または熱間圧延後の冷間
伸線工程で、加工誘起変態能の調整加熱処理を実施する
ことで、加工誘起変態能を安定化させることができ、そ
のために多少の成分変動があっても、次工程の冷間加工
率が一定の条件下で、強度、捻回特性に大きな変化なく
低弛度耐熱送電線用芯線の製造が可能となった。この加
工誘起変態能の安定化は組織的には、加工誘起変態能の
調整加熱処理時に、Fe,Cr,W,Moといった合金
元素の炭化物を固溶あるいは析出させることによって調
整が可能となる。さらに、冷間加工を経て得られた加工
誘起マルテンサイト相を含有する高強度低熱膨張線は、
仕上げ時に時効処理を行なうことで、強度ならびに延性
をともに向上させることができることをあきらかにし
た。この時効処理による強度、延性の向上メカニズム
は、現時点では明らかではないが、ひずみ時効、炭化物
の析出による時効、加工誘起変態でできたマルテンサイ
ト相が再びオーステナイト相へ逆変態することによる時
効等が原因として挙げられる。
【0012】すなわち、本発明は、重量%で、C0.0
6〜0.50%を含み、Co65%以下、Ni30%以
下の1種または2種をCo+Niで25〜65%含有し、
残部がFeを主成分とする組成からなるオーステナイト
相を主体とする高強度低熱膨張線であって、加工誘起マ
ルテンサイト相を含有することを特徴とする高強度低熱
膨張線である。
【0013】前記高強度低熱膨張線の具体的な化学組成
は、重量%で、C0.06〜0.50%、Si1.5%
以下、Mn3.0%以下を含み、Co2〜65%、Ni
30%以下でCoとNiの関係が、52−(5/3)Ni
≦Co≦65−(5/3)Niを満足し、残部が不可避
的不純物を除き、実質的にFeからなる組成であり、重
量%で、C0.06〜0.50%、Si1.5%以下、
Mn3.0%以下、Co52〜65%を含み、さらにC
r10%以下、Mo3%以下、W6%以下の1種または
2種以上を含有し、残部が不可避的不純物を除き、実質
的にFeからなる組成であり、重量%で、C0.06〜
0.50%、Si1.5%以下、Mn3.0%以下を含
み、Co2〜65%、Ni30%以下でCoとNiの関係
が、52−(5/3)Ni≦Co≦65−(5/3)N
iを満足し、さらにCr10%以下、Mo3%以下、W
6%以下の1種または2種以上を含有し、残部が不可避
的不純物を除き、実質的にFeからなる組成である。
【0014】また、上記組成の高強度低熱膨張線には、
必要に応じてFeの一部をB0.02%以下、Mg0.
02%以下、Ca0.02%以下の1種または2種以上
と、V,Ti,Nb,Ta,Hf,Zrの1種または2
種以上を各々の0.5%以下の範囲で適宜添加すること
ができる。さらに、本発明の高強度低熱膨張線の望まし
い加工誘起マルテンサイト量は、35%以下である。ま
た、本発明の高強度低熱膨張線は、常温の引張強さが1
50kgf/mm2以上、常温から230℃までの平均熱膨張
係数が6×10マイナス6乗/℃以下、掴み間が自己径
の100倍の時の捻回値が15回以上、表面粗さが最大
高さ(Rmax)で3μm以下、であることが望ましいが、上
記の各特性は必ずしも同時に全部を満足する必要はな
く、使用条件に応じて適宜組合せの特性として満足すれ
ばよい。
【0015】本発明の高強度低熱膨張線の製造方法は、
請求項1ないし6のいずれかに記載の組成からなる高強
度低熱膨張線を冷間加工により、オーステナイト相の一
部を加工誘起マルテンサイト相に変態させることを特徴
とする高強度低熱膨張線の製造方法である。もちろん本
発明の製造方法は、上記に開示する本発明の合金組成か
らなる高強度低熱膨張線すべてに適用できるものである
から、主要成分以外に固溶強化元素を含む線材、析出強
化元素を含む線材などに幅広く適用できるものである。
【0016】本発明の方法は、望ましくは、熱間圧延
後、または熱間圧延後の冷間加工途中に、500〜12
00℃の温度範囲で加工誘起変態能調製加熱処理を行な
い、その後さらに冷間加工するのが良く、また、最終冷
間加工後に、200〜650℃の温度範囲で時効処理を
行なうのが良く、さらに冷間加工の前後、またはいずれ
か一方を冷却手段により冷却し、少なくとも冷間加工直
前の高強度低熱膨張線の温度を100℃以下にするのが
良く、特に変態量を増加させたい場合は、室温からさら
に低い温度に加工温度を制御することもできる。上記の
望ましい高強度低熱膨張線の製造方法は、必要に応じて
適宜選択して製造することができる。
【0017】
【作用】本発明の高強度低熱膨張線が最も特徴とする点
は、加工誘起マルテンサイト相を含有していることであ
る。従来、低弛度耐熱電線用伸線として提案されてきた
Fe−Ni系またはFe−Co−Ni系低熱膨張線は、
強度や捻回特性などの改良を目的とし、組成や製造方法
に特色を有しているが、その組織はいずれもオーステナ
イト相が大部分を占めることを特徴とするものである。
【0018】本発明の高強度低熱膨張線は、熱間加工後
あるいは固溶化熱処理後に急冷しても常温ではオーステ
ナイト相が主相として安定であるが、伸線工程時に、十
分な冷間加工を加えることで、加工誘起変態によって、
マルテンサイト変態を生じる。冷間加工による加工硬化
は、C添加によるオーステナイト基地の加工硬化能アッ
プに加え、マルテンサイト変態による効果が大きい。ま
た、本発明の合金組成からなる高強度低熱膨張材料を線
材に加工すると、特に冷間引抜の中間工程で焼鈍処理を
行なわなくても、40回前後の安定した捻回値が得られ
る。このレベルの捻回値は従来のピアノ線の捻回値のレ
ベルと同等のものであり、これは、冷間加工によってす
でに存在する加工誘起マルテンサイト相あるいは捻回中
におきるオーステナイト相からマルテンサイト相への変
態による応力の緩和による効果が大きいものと推察され
る。
【0019】インバー合金の基地が強度の冷間加工を加
えても、オーステナイト相が安定の場合は、熱膨張係数
は低いが引張強さが不十分であったり、線材に冷間加工
した際、単純な冷間引抜の工程では、捻回特性が不十分
になったりする。逆に、オーステナイト相が不安定にな
りすぎると、熱間加工後あるいは、固溶化処理後の冷却
過程で、マルテンサイト変態が過度に生じて、もはやイ
ンバー特性を得ることができなくなる。以上述べた理由
により、本発明線が高い強度と低い熱膨張係数および高
い捻回値を同時に得るためには、オーステナイト相と加
工誘起変態によって生じるマルテンサイト相との2相を
あわせもつ必要がある。
【0020】しかし、加工誘起変態によって生じるマル
テンサイト量は、X線回折によって求められるマルテン
サイト量/(マルテンサイト量+オーステナイト量)比
において35%以下であることが強度と低熱膨張特性の
バランス上好ましい範囲である。なお、加工誘起によっ
て得られるマルテンサイトの一部をドライアイス+アル
コール中(−75℃付近)や、それよりもさらに低温で
の焼入れ処理による熱的なマルテンサイト変態で置換す
ることは可能であるが、変態量のバラツキと量産性を考
慮すると加工歪を駆動力とする変態を利用する方が製造
するうえで好ましい。
【0021】このような加工誘起マルテンサイトのオー
ステナイトへの逆変態温度は550℃以上の温度である
ため、送電線として使用される最高温度と言われている
300℃前後の連続的な使用に対して本発明の高強度低
熱膨張線は特性上なんら問題はない。また、加工誘起マ
ルテンサイトは、送電線として使用される際の中間およ
び仕上げ製造工程におけるAl被覆処理やZnメッキ処理
のような400〜500℃の加熱で一部が炭化物とフェ
ライトに分解することもあるが、本発明の高強度低熱膨
張線において、少量のフェライトの存在は、特性上なん
ら問題はない。
【0022】続いて、本発明の高強度低熱膨張線に適す
る化学組成範囲について成分限定理由を述べる。Cは、
高強度低熱膨張線の冷間加工時にオーステナイト相の加
工硬化と加工誘起マルテンサイトの強度向上にもっとも
寄与する元素で、本発明の高強度低熱膨張線の製造方法
において成分上最も特色ある元素である。また、オース
テナイト安定化元素としてNiやCoの一部を置換する
こともできる。このような効果を得るために、Cは、最
低0.06%を必要とするが、逆に0.50%を越える
Cは、オーステナイト相を過度に安定化させて、マルテ
ンサイト変態を起こしにくくするとともに、熱膨張係数
の増加を招く。したがって、C量は、0.06〜0.5
0%に限定する。
【0023】Si,Mnは脱酸元素として本発明合金に
含まれる。だだし、過度のSi,Mnは熱膨張係数の増
加を招くため、それぞれ1.5%以下および3%以下の
添加にとどめる。CoとNiは、本発明の高強度低熱膨
張線において、残部を構成するFeとともに合金にイン
バー特性を与えるのに必要な元素である。広い成分範囲
として、Coは65%以下、Ni30%以下の1種また
は2種をCo+Niで25〜65%の範囲にあれば、F
e−Ni−Co−C系またはFe−Ni−Co−C系に
さらにSi,Mn,Cr,W,Mo,B,Mg,Ca等
の元素が加わった合金系を選ぶことで、本発明の製造方
法により所望する加工誘起変態能をもつ合金線が得られ
る。
【0024】さらに、NiとCoの成分範囲は、図1の
(Ni,Co)の関係が、(30,2),(30,1
5),(0,65),(0,52)の4点で囲まれた領
域内において、特に最適な低熱膨張特性と高強度化の両
立が可能である。本発明において好ましい領域とその右
上の領域Aは、Co=65−(5/3Ni)の関係式で
隔てられ、領域Aの合金組成になると、オーステナイト
相が強度の冷間加工を加えてもかなり安定になり、領域
Aの中でも最適な組成を選ぶことで、熱膨張係数を十分
に低めることができるが引張強さが不十分となる。一方
本発明において好ましい領域とその左下の領域Bは、C
o=52−(5/3Ni)の関係式で隔てられ、領域B
の合金組成になると、オーステナイト相がもはや冷間加
工の前段階で常温で安定に存在しにくく、マルテンサイ
ト相が生成しやすくなるために、低熱膨張特性が失われ
るようになる。
【0025】したがって、本発明合金のNiとCoは、
図1に示すごとく、Co65%以下、Ni30%以下の
1種または2種をCo+Niで25〜65%の範囲の組
成範囲が良く、さらに以下のNiとCoの関係を満たす
範囲内が望ましい。 52−(5/3)Ni≦Co≦65−(5/3)Ni ・・・(1) また、Niを無添加とした場合、Coの望ましい成分範
囲は52〜65%である。
【0026】Cr、MoおよびWは同族の元素であり、
オーステナイト基地の加工硬化能を高め、また一部は炭
化物として析出強化作用をもたらすので必要に応じて添
加する。そのためにこれらの元素は1種または2種以上
を単独または複合して添加できる。とくにCrは、図1
の斜線部内において、高Co領域側ほど、Crの添加量
を高めることがオーステナイトの安定化と加工硬化能の
向上および低熱膨張化に有利である。一方、図1の斜線
部内において、低Co領域ではCrの添加量は低めの方
が低熱膨張化に有利である。このような強度、熱膨張特
性に及ぼすCr添加の効果は少量から現れるが、10%
を超える過度の添加はオーステナイト組織を過度に安定
化させ、加工誘起変態を起こしにくくして目標とする高
強度が得られなくなるため、Crは10%以下の添加と
する。また、MoとWの添加の上限については、それぞ
れ3%、6%を超える過度の添加は熱膨張係数を高め、
本発明線が目的とする低熱膨張特性が得られなくなるた
め、MoとWは各々3%以下および6%以下の範囲とす
る。
【0027】Bはオーステナイト結晶粒界に偏析して粒
界を強化し、本発明合金の熱間加工性の改善や常温の延
性改善に役立つ。また、MgやCaは、Sと結びついて
粒状の硫化物をつくり、Bと同様、熱間加工性の改善や
常温の延性改善に役立つ。このような効果のために、
B、MgおよびCaは1種または2種以上を同時に添加
することができるが、いずれも0.02%を超える過度
の添加は、合金の融点を下げて、逆に熱間加工性を低下
させるのでB、MgおよびCaはいずれも0.02%以
下の添加とする。なお、Fe−Ni−Co系合金を強化
する添加元素は上記したCやCr、Mo以外に種々考え
られるが、V,Ti,Nb,Ta,Hf,Zr等の元素
はCとの親和力が強く、塊状の硬い1次炭化物を生成
し、冷間加工時に欠陥を作りやすく、引張伸びの低下や
捻回値のばらつきの原因となるので、本発明線に対し、
過度の添加は好ましくない。したがって、これらの元素
はいずれも上限を0.5%以下に限定する。
【0028】また、O、N等のガス成分は合金中で介在
物を生成し、同じく捻回値のばらつきの原因となるの
で、本発明線においてはそれぞれ、0.01%以下に制
限するのが良い。また、脱酸や脱硫を目的として添加さ
れるAl,REM等の元素は通常含まれる下記に示す量
の含有にはなんら特性上に差し支えない。 Al,REM ≦ 0.1% 本発明にかかわる組成は、上述した化学元素と残部Fe
から構成される高強度低熱膨張線である。
【0029】次に、本発明の高強度低熱膨張線に係る好
ましい特性値および表面粗さ規定の限定理由について述
べる。本発明の高強度低熱膨張線の引張強さは、常温の
引張試験において150kgf/mm2以上の値に限定する。
引張強さが150kgf/mm2以上であれば、従来の架空耐
熱送電線用芯線として使用されていたピアノ線の設計強
度をそのまま利用できるため、鉄塔の建て替えなしに送
電線を張り替えることができ、低弛度化による送電容量
の増量が可能となる。
【0030】また、本発明の高強度低熱膨張線の熱膨張
係数は、常温から230℃までの温度範囲で6×10マ
イナス6乗/℃以下の範囲に限定する。230℃までの
温度範囲を規定するのは、電力を輸送する耐熱Al合金
線の常用使用最高温度が230℃であるためである。こ
の温度範囲での熱膨張係数が6×10マイナス6乗/℃
以下であれば、従来のピアノ線を芯線とする鋼芯アルミ
撚線(ACSR線)の約2倍の容量の送電が可能とな
る。さらに、本発明の高強度低熱膨張線の捻回特性は、
掴み間が自己径の100倍の時の捻回値で15回以上に
限定する。捻回値が15回を下回ると全長が数kmにわ
たる芯線を撚線作業する際に、芯線が切断する可能性が
あるためである。
【0031】上記の強度と低熱膨張特性、強度と捻回特
性、さらに強度、低熱膨張特性と捻回特性は、従来のオ
ーステナイト相を主体とする高強度低熱膨張線の範疇で
は同時に満足することが不可能であった。しかし、オー
ステナイト相がより不安定な組成となる側にシフトさ
せ、冷間加工時にオーステナイト相の一部が加工誘起マ
ルテンサイト変態するような組成を選ぶことで、上記の
強度と低熱膨張特性、強度と捻回特性、さらに強度、低
熱膨張特性と捻回特性を同時に満足することができる。
【0032】さらに、高強度低熱膨張線の表面肌をでき
るだけ平滑とすることも捻回試験中に表面の応力集中を
起こしにくくして、捻回値のばらつきを抑え、結果とし
て捻回値の平均値を高める。通常の低膨張線の表面粗さ
はJIS B0601号に記載される最大高さ(Rma
x)で、4〜10μm程度の表面肌が得られるが、この
表面粗さを3μm以下とすることで、通常レベルの表面
肌を持つ低膨張線よりも捻回特性を改善することができ
る。表面粗さを3μm以下とする製造方法としては、合
金線の最終の冷間加工の際に湿式潤滑剤を用いることが
有効である。
【0033】次に本発明線の製造方法について限定理由
を述べる。上述のように本発明線が低熱膨張特性と高強
度を両立するためには強度の冷間加工を加える必要があ
る。本発明線の特性を得るために必要な冷間加工率は、
合金組成と冷間加工温度の影響を受けるため一義的には
定められないが、冷間加工後のマルテンサイト量が35
%以下となるように加工率を調整することが望ましい。
さらに、上記の加工誘起変態能を有する線は、熱間加工
後の通常の冷間伸線工程でとくに中間で煩雑な焼鈍工程
を入れる必要もなく、単純な冷間伸線工程を行なうだけ
で、従来のピアノ線と同じレベルの捻回値が得られる。
これはねじり変形中にオーステナイト相からマルテンサ
イト相への加工誘起変態することによる応力緩和の影響
が大きいものと推察され、冷間加工の際にあえて中間焼
鈍を入れなくても高強度と高い捻回特性を両立できる点
が、本発明線の製造方法として最も特徴とするところで
ある。
【0034】また、本発明線を熱間圧延後、または熱間
圧延後の冷間加工途中において、加工誘起変態能の調整
加熱処理を行なうとより安定した特性の高強度低熱膨張
線が製造できる。加工誘起変態能は合金組成の変化に敏
感であるが、この調整加熱処理を実施することで、加工
誘起変態能を安定化させることができ、そのために多少
の成分変動があっても、次工程の冷間加工率が一定の条
件下で、強度、捻回特性に大きな変化なく低弛度耐熱送
電線用芯線の製造が可能となる。この加工誘起変態能の
安定化は組織的には、加工誘起変態能の調整加熱処理時
に、Fe,Cr,W,Moといった合金元素の炭化物を
固溶あるいは析出させることによって調整が可能とな
る。
【0035】調整加熱処理の温度が500℃を下回ると
各種元素の拡散が不十分となって、加工誘起変態能の調
整が不十分となる。一方、調整加熱処理の温度が120
0℃を上回ると炭化物は十分固溶するが、結晶粒の粗大
化や表面の酸化や脱炭が顕著となり高強度低熱膨張線の
品質が安定しなくなるため、熱間圧延後、または熱間圧
延後の冷間加工途中における、加工誘起変態能の調整加
熱処理は500〜1200℃の温度範囲に限定する。な
お、調整加熱処理の保持時間は合金線全体が均熱であれ
ばその効果は短時間の加熱でも達成できる。
【0036】さらに、冷間加工を経て得られた加工誘起
マルテンサイト相を含有する高強度低熱膨張線は、仕上
げ時に時効処理を行なうことで、強度とまたはさらに延
性を向上させることができる。この時効処理による強
度、延性の向上メカニズムは、現時点では明らかではな
いが、ひずみ時効、炭化物の析出による時効、加工誘起
変態でできたマルテンサイト相が再びオーステナイト相
へ逆変態することによる時効等が原因として挙げられ
る。また、この時効処理は高強度低熱膨張線の熱膨張係
数の回復処理も兼ねる。
【0037】しかし、時効処理温度が200℃より低い
と、十分な時効の効果が現れず、逆に650℃より高過
ぎるとむしろ合金線が本発明が意図するレベルよりも軟
化するようになるので、時効処理の温度範囲は200〜
650℃に限定する。また、上記の製造方法において、
冷間加工温度は、通常の連続伸線機では、加工熱の発生
により150℃前後になるのが一般的であるが、本発明
の高強度低熱膨張線に対しては、できるだけ低くかつ一
定に抑えることが伸線時の製造を安定化させる上で重要
である。したがって、例えば連続引抜による伸線では巻
取りドラムを水冷したり、引抜ダイスの前後または一方
に冷却水を噴霧するなどの冷却手段を用いることによ
り、少なくとも冷間加工直前の高強度低熱膨張線の温度
を100℃以下にすることも変態能を安定化させる上で
重要である。
【0038】なお、本発明の高強度低熱膨張線の冷間加
工方法としては、ダイスやロールを用いた引抜、ロール
を用いた圧延、スェージング加工等の方法が一般的に用
いられる。また、熱間加工や変態能の調整加熱処理等で
発生する合金線の表面疵の除去を目的とした皮剥処理や
酸洗処理は必要に応じて適時実施することができる。ま
た、これらの処理は本発明の高強度低熱膨張線の特性を
なんら劣化させるものではない。さらに、本発明の高強
度低熱膨張線は、前述の化学組成の合金を溶製するが、
溶解方法としては、大気溶解、真空溶解のいずれにおい
ても製造が可能である。特に、加工誘起変態能を調整す
る上で、精錬と偏析低減効果の高いエレクトロスラグ再
溶解や真空アーク再溶解を用いることも有効な手段であ
る。
【0039】
【実施例】表1に示す組成のFe−Co−{Ni−(C
r+Mo+W)}系合金を溶製し、熱間加工によって直
径15.0mmの丸棒に仕上げた。その後、またはその後
の冷間引抜の途中で、種々の温度で1時間保持後水冷の
変態能の調整加熱処理を行なった。この調整加熱処理後
に表面の皮剥を行ない、その後、冷間引抜により種々の
加工率で、直径4.6mmから直径2.5mmのコイルを作
製した。さらにこれらのコイルの一部に種々の温度で2
時間保持後空冷の時効処理を行ない、種々の特性を評価
した。なお、合金線No.8のみは調整加熱処理は未実
施で、熱間加工後に表面の皮剥を行ない、その後、冷間
引抜により直径4.6mmのコイルを作製した。
【0040】これらの製造条件の詳細を表2に示す。表
2における略号W1,H1,W2およびH2は、それぞ
れ、熱間圧延後H1までの冷間加工率、加工誘起変態能
の調整加熱処理温度(1時間保持)、H1後の冷間加工
率、および時効処理温度(2時間保持)を示す。さらに
加工温度の欄は最終3パスの直前の線材の温度であり、
潤滑剤の欄には、最終引抜ダイスに用いた潤滑剤の種類
を示す。なお、冷間引抜は、ごく一般的なアプローチ角
12゜のWC製のダイスを使用し、1パスあたり、20
%前後の減面率で伸線した。その際の伸線速度は、通常
の鋼線の伸線速度と同程度の速度で行なった。これらの
線材を用いて最終加工ままの状態で表面粗さ測定、引張
試験、捻回試験、巻付・巻戻し試験、熱膨張試験および
線材中のマルテンサイト量の測定を実施した。この結果
も表2に併せ示す。
【0041】表面粗さは、JIS B0601号に基づ
く最大高さ(Rmax)を測定した。引張試験の伸びは標点間
250mmにおける弾性伸びと塑性伸びを合わせた全伸び
で測定し、引張強さと併せ、各5本の平均値を求めた。
また捻回試験は、掴み間を自己径の100倍とし、回転
数60rpmで破断までの捻回値をそれぞれ10本測定
して、平均値を求めた。巻付・巻戻し試験については、
自己径の1.5倍の芯線に各8回巻付・巻戻しした際に
試験片が破断するか否かを調査した。熱膨張係数の測定
は示差熱膨張計により、30℃から230℃の平均熱膨
張係数を求めた。さらに、マルテンサイト量について
は、低熱膨張線の横断面のX線回折を行ない、以下の式
によりマルテンサイト量を求めた。 マルテンサイト相(%)={Iα/(Iγ+Iα)}×
100 Iα=Iα(110)+Iα(200)+Iα(220)+Iα(211) Iα(110)等はマルテンサイトのX線回折強度 Iγ=Iγ(111)+Iγ(200)+Iγ(220)+Iγ(311) Iγ(111)等はオーステナイトのX線回折強度
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】表1に示す合金のうち、No.1〜18は本
発明の高強度低熱膨張線、No.31は、従来合金線で、
特開平3−115543号に開示される高強度低熱膨張
合金である。また、No.1〜18と31のNiとCoの
関係は図1にあわせ示している。表2より、本発明の高
強度低熱膨張線は種々の製造条件下において150〜2
10kgf/mm2の引張強さと6.0×10マイナス6乗/℃
以下の熱膨張係数をあわせもち、従来のピアノ線と同等
あるいはそれに近い引張強さとピアノ線の1/2以下の
熱膨張係数が得られることがわかる(ピアノ線の熱膨張
係数α30-230℃(11.5〜13×10マイナス6乗/
℃)。これらの特性は従来のFe−Ni系の高強度低熱
膨張線、たとえば、従来合金No.31と比べると、熱膨
張係数はやや劣るが、引張強度には格段の差が見られ
る。既存鉄塔の建て替えなしに、送電線を張り替えるた
めには、ピアノ線と同等の強度を持つことが絶対条件と
なるので、弛度の点では、やや従来のFe−Ni系の高
強度低熱膨張線に劣るが、強度面では、はるかに従来の
Fe−Ni系の高強度低熱膨張線を上回ることがわか
る。
【0045】また、表2より、本発明の高強度低熱膨張
線は高い捻回値と優れた巻付・巻戻し特性を有すること
がわかる。このような効果は、冷間加工時に存在する加
工誘起マルテンサイトおよびこれらの各種試験の塑性変
形中に生じるオーステナイト相から、マルテンサイト相
への変態によってもたらされる。表2より本発明の高強
度低熱膨張線は、5〜33%のマルテンサイト相と残部
が主としてオーステナイト相からなっていることがわか
る(正確には炭化物が第3相として少量存在しているこ
とが多く、さらに変態能の調整加熱処理後に一部焼入れ
マルテンサイトが存在する場合も有り得る)。
【0046】さらに種々の製造方法についてみると、製
法No.1bと1dの比較から、W2の加工率が高くな
るほど引張強さが高くなり、熱膨張係数も同時に高くな
っている。これはマルテンサイト変態量の増加に伴うも
のである。また、製法No.1bと1c、3aと3b、
9aと9b、10aと10bの比較から、いずれもH2
の時効処理を実施した方が、引張強さが高くなってい
る。また、No.2aと2bの比較から、加工温度は低
い方が加工誘起変態が進み、高強度化に対して有利とな
る。また、No.9a,9cおよび9dの比較から、H
1の温度を変化させることで、同じ加工率でも引張強さ
を変化させることができ、この熱処理を有効に利用する
ことで加工誘起変態能を調整することができる。さら
に、No.11aと11bの比較から、最終ダイスの潤
滑剤を湿式とすることで、表面粗さの最大高さが3μm
より小さくなり、捻回値の向上に効果を及ぼす。
【0047】一方、従来合金No.31は、皮剥後に単純
に冷間加工を行なうだけでは、捻回値が平均で4回と低
い値になり、送電線の芯線の用途に対しては適さないこ
とがわかる。よって本発明の高強度低熱膨張線の製造方
法は、加工誘起マルテンサイト相を含む低熱膨張線にお
いて、特に有効な製造方法であることがあきらかであ
る。
【0048】
【発明の効果】以上述べたように本発明の高強度低熱膨
張線は、従来の低熱膨張線より、ワンランク上、つまり
ピアノ線と同等あるいはそれに近い引張強さと、簡便な
製造工程でもピアノ線並みの安定して高い捻回値が得ら
れ、ピアノ線の1/2以下の低い熱膨張係数を有するも
のである。本発明の高強度低熱膨張線により、信頼性に
優れ、従来のピアノ線を芯線に用いた送電線よりも送電
容量が高い低弛度送電線の製造が可能となり、したがっ
て、比較的容易に送電線の送電容量アップが可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明合金組成および従来合金組成のうちの、
NiとCoの組成をプロットした図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22F 1/10 K J (72)発明者 多久和 実 島根県安来市安来町2107番地の2 日立金 属株式会社安来工場内 (72)発明者 佐藤 重明 島根県安来市安来町2107番地の2 日立金 属株式会社安来工場内 (72)発明者 仙田 嘉美 島根県安来市安来町2107番地の2 日立金 属株式会社安来工場内

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C0.06〜0.50%を含
    み、Co65%以下、Ni30%以下の1種または2種
    をCo+Niで25〜65%含有し、残部がFeを主成分
    とする組成からなるオーステナイト相を主体とする高強
    度低熱膨張線であって、加工誘起マルテンサイト相を含
    有することを特徴とする高強度低熱膨張線。
  2. 【請求項2】 重量%で、C0.06〜0.50%、S
    i1.5%以下、Mn3.0%以下を含み、Co2〜6
    5%、Ni30%以下でCoとNiの関係が、52−(5
    /3)Ni≦Co≦65−(5/3)Niを満足し、残
    部が不可避的不純物を除き、実質的にFeからなるオー
    ステナイト相を主体とし、かつ加工誘起マルテンサイト
    相を含有することを特徴とする高強度低熱膨張線。
  3. 【請求項3】 重量%で、C0.06〜0.50%、S
    i1.5%以下、Mn3.0%以下、Co52〜65%
    を含み、さらにCr10%以下、Mo3%以下、W6%
    以下の1種または2種以上を含有し、残部が不可避的不
    純物を除き、実質的にFeからなるオーステナイト相を
    主体とし、かつ加工誘起マルテンサイト相を含有するこ
    とを特徴とする高強度低熱膨張線。
  4. 【請求項4】 重量%で、C0.06〜0.50%、S
    i1.5%以下、Mn3.0%以下を含み、Co2〜6
    5%、Ni30%以下でCoとNiの関係が、52−(5
    /3)Ni≦Co≦65−(5/3)Niを満足し、さ
    らにCr10%以下、Mo3%以下、W6%以下の1種
    または2種以上を含有し、残部が不可避的不純物を除
    き、実質的にFeからなるオーステナイト相を主体と
    し、かつ加工誘起マルテンサイト相を含有することを特
    徴とする高強度低熱膨張線。
  5. 【請求項5】 高強度低熱膨張線のFeの一部をB0.
    02%以下、Mg0.02%以下、Ca0.02%以下
    の1種または2種以上で置換した請求項2ないし4のい
    ずれかに記載の高強度低熱膨張線。
  6. 【請求項6】 高強度低熱膨張線のFeの一部をV,T
    i,Nb,Ta,Hf,Zrの1種または2種以上を各
    々の0.5%以下の範囲で置換した請求項2ないし5の
    いずれかに記載の高強度低熱膨張線。
  7. 【請求項7】 加工誘起マルテンサイト相量が35%以
    下である請求項1ないし6のいずれかに記載の高強度低
    熱膨張線。
  8. 【請求項8】 高強度低熱膨張線の常温の引張強さが1
    50kgf/mm2以上である請求項1ないし7のいずれかに
    記載の高強度低熱膨張線。
  9. 【請求項9】 高強度低熱膨張線の常温から230℃ま
    での平均熱膨張係数が6×10マイナス6乗/℃以下で
    ある請求項1ないし8のいずれかに記載の高強度低熱膨
    張線。
  10. 【請求項10】 高強度低熱膨張線の掴み間が自己径の
    100倍の時の捻回値が15回以上である請求項1ない
    し9のいずれかに記載の高強度低熱膨張線。
  11. 【請求項11】 高強度低熱膨張線の表面粗さが最大高
    さ(Rmax)で3μm以下である請求項1ないし10のいず
    れかに記載の高強度低熱膨張線。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし6のいずれかに記載の
    組成からなる高強度低熱膨張線を冷間加工により、オー
    ステナイト相の一部を加工誘起マルテンサイト相に変態
    させることを特徴とする高強度低熱膨張線の製造方法。
  13. 【請求項13】 熱間圧延後、または熱間圧延後の冷間
    加工途中に、500〜1200℃の温度範囲で加工誘起
    変態能調製加熱処理を行ない、その後さらに冷間加工す
    る請求項12に記載の高強度低熱膨張線の製造方法。
  14. 【請求項14】 最終冷間加工後に、200〜650℃
    の温度範囲で時効処理を行なう請求項12または13に
    記載の高強度低熱膨張線の製造方法。
  15. 【請求項15】 冷間加工の前後、またはいずれか一方
    を冷却手段により冷却し、少なくとも冷間加工直前の高
    強度低熱膨張線の温度を100℃以下にする請求項12
    ないし14のいずれかに記載の高強度低熱膨張線の製造
    方法。
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KR20160004194A (ko) 2014-07-02 2016-01-12 신호코쿠 세이테츠 가부시키가이샤 저열팽창 주강품 및 그의 제조 방법
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