JP2016025611A - 超音波振動子、超音波探触子および超音波撮像装置 - Google Patents

超音波振動子、超音波探触子および超音波撮像装置 Download PDF

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Abstract

【課題】生産性が高く、かつ環境変化に対する安定性が高い超音波振動子、当該超音波振動子を有する超音波探触子および当該超音波探触子を有する超音波撮像装置、を提供する。【解決手段】超音波振動子100は、圧電素子が構成されるように圧電材料層130を区画している溝140を有し、溝140内および圧電材料層130の表面に配置され、圧電材料層130に音響整合層160を接着させる充填材150を有する。充填材150は、エポキシ樹脂を含み、その体積弾性率は、2.5〜4.0GPaである。【選択図】図1

Description

本発明は、超音波振動子、超音波探触子および超音波撮像装置に関する。
超音波撮像装置は、超音波の送受信による被検体の内部構造の画像形成(撮像)が可能であり、例えば診断に使用されている。当該超音波撮像装置は、通常、超音波探触子を有し、当該超音波探触子は、超音波振動子を有する。当該超音波振動子は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料の層を溝で区画することにより構成される圧電素子と、当該圧電材料の層の表面および溝を一体的に覆う音響整合層と、当該溝に充填されているとともに当該圧電材料の層と当該音響整合層を接着させる充填材と、を有する。
当該充填材には、例えば、圧電性有機高分子(例えば、特許文献1参照)、第1の方向の上記溝に充填されるエポキシ樹脂系充填材と第2の方向の上記溝に充填されるシリコーン系充填材との組み合わせ(例えば、特許文献2参照)、および、中空粒子が分散されたウレタン樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)、が知られている。
このような充填材を上記溝へ充填することは、高い生産性で超音波振動子を製造する観点から好適な方法である。さらに、特許文献1および3の上記充填材は、いずれも、上記溝によって区画される、隣接する圧電素子間でのクロストークを低減するのに有効であり、特許文献2の上記充填材は、音響インピーダンスが比較的低い被検体に対する音響整合性を改善するのに有効である。
特開2005−110792号公報 特開平10−117399号公報 特開平09−238399号公報
上記充填材は、例えば、充填時における硬化収縮や、充填後に高湿環境下に置かれた場合の湿潤による膨張などの体積変化を生じることがある。当該体積変化が生じると、上記圧電素子に対して正圧または負圧がかかり、圧電材料層に面内応力が発生し、上記圧電素子が変形、破損することがあり、その結果、所期の音響効果が得られないことがある。このように、前述の従来の超音波振動子は、環境変化に対する安定性の観点から、検討の余地が残されている。
本発明は、生産性が高く、かつ環境変化に対する安定性が高い超音波振動子を提供することを第1の課題とする。
また、本発明は、当該超音波振動子を有する超音波探触子を提供することを第2の課題とする。
さらに、本発明は、当該超音波探触子を有する超音波撮像装置を提供することを第3の課題とする。
本発明に係る超音波振動子は、圧電材料で構成された圧電材料層と、圧電素子が構成されるように前記圧電材料層を区画している溝と、前記圧電材料層および前記溝を覆う音響整合層と、前記溝内および前記圧電材料層の表面に配置され、前記圧電材料層に前記音響整合層を接着させる充填材と、を有し、前記充填材は、エポキシ樹脂を含み、前記充填材の体積弾性率は、2.5〜4.0GPaである。
また、本発明に係る超音波探触子は、上記超音波振動子を有する。
さらに、本発明に係る超音波撮像装置は、上記超音波探触子を有する。
本発明によれば、充填材の充填という生産性の高い方法によって、エポキシ樹脂による高い接着力と、湿潤などによる膨張が相殺される適度な弾性率とを有する充填材が、超音波振動子に含まれる。よって、生産性が高く、かつ環境変化に対する安定性が高い超音波振動子が提供される。
また、上記超音波振動子を超音波探触子に搭載し、当該超音波探触子を超音波撮像装置に搭載することにより、環境変化に対する信頼性が高い超音波探触子または超音波撮像装置を提供することが可能となる。
本発明の一実施の形態に係る超音波振動子の構成を模式的に示すための図である。 図2Aは、本発明の一実施の形態に係る超音波撮像装置の構成を模式的に示す図であり、図2Bは、当該超音波撮像装置の電気的な構成を示すブロック図である。 上記超音波撮像装置における超音波探触子の構成を模式的に示す図である。 上記超音波撮像装置における超音波探触子の送受信感度を測定するための装置の構成を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[超音波振動子]
本実施の形態に係る超音波振動子は、圧電材料で構成された圧電材料層と、圧電素子が構成されるように上記圧電材料層を区画している溝と、当該圧電材料層および当該溝を覆う音響整合層と、当該溝内および当該圧電材料層の表面に配置され、当該圧電材料層に当該音響整合層を接着させる充填材と、を有する。本実施の形態に係る超音波振動子は、上記溝内および圧電材料層の表面に配置される充填材に、後述の充填材を用いる以外は、複数の圧電素子を音響整合層が一体的に覆う構造を有する従来の超音波振動子と同様に構成することが可能である。
図1は、本実施の形態に係る超音波振動子の構成を模式的に示すための図である。超音波振動子100は、バッキング層110、フレキシブルプリント基板(FPC)120、圧電材料層130、溝140、141、充填材150、音響整合層160および音響レンズ170を有する。
バッキング層110は、圧電材料層130に発生する不要な振動を減衰するなどの機能を有する。バッキング層110は、適当なバッキング材によって構成されており、その厚さは、超音波振動子100における中心周波数にもよるが、おおよそ0.5〜10mmである。
上記バッキング材の例には、熱可塑性樹脂、天然ゴム、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、樹脂複合材料、複合硬化材料、マコールガラスなどの無機材料、および、空隙を有する多孔質材料、が含まれる。
上記熱可塑性樹脂の例には、塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ABS樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂、ポリエチレングリコール、および、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレングリコール共重合体、が含まれる。
上記樹脂複合材料は、上記の樹脂などの高分子化合物に、酸化タングステン、酸化チタンまたはフェライトなどの粉末を混合し、例えばプレス成形によって成形された材料である。上記複合硬化材料は、上記樹脂複合材料の粉砕物を、上述した樹脂などの高分子化合物と混合し、硬化させた材料である。
上記無機材料または上記多孔質材料は、例えば、音響インピーダンスを調整する目的で使用される。上記バッキング材は、上記樹脂複合材料が好ましく、中でもゴム系複合材料やエポキシ樹脂複合材料などがより好ましい。バッキング層110の形状は、圧電材料層130の平面形状や超音波振動子100、これを含む超音波探触子などの形状に応じて、適宜に決めることができる。
FPC120は、圧電材料層130のための電極となる、後述の圧電素子に対応したパターンの配線を有する。FPC120は、上記の適当なパターンを有していれば、市販品であってもよい。
圧電材料層130は、圧電材料で構成される層である。当該圧電材料の例には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム(K(Ta,Nb)O)、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、Pb(Zn1/3Nb2/3)OとPbTiOとの固溶体(PZN−PT)、および、マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体(PMN−PT)、が含まれる。圧電材料層130の厚さは、超音波振動子100における中心周波数にもよるが、例えば、当該中心周波数が2〜20MHzとすると、0.05〜0.4mmである。
溝140は、圧電材料層130の表面からバッキング層110に至る深さを有し、溝141は、圧電材料層130の表面から圧電材料層130内に至る深さを有している。溝140は、圧電素子の主素子を区画しており、溝141は、1主素子中に並列する三つの副素子を区画している。溝140、141は、いずれも、例えばダイシングソーによる溝切り加工によって形成されており、その幅は、例えば15〜30μmである。
なお、上記主素子におけるピッチ(溝140の中心間距離)は、例えば0.15〜0.3mmであり、上記副素子におけるピッチ(隣り合う溝(溝141または溝140)の中心間距離)は、超音波振動子100における中心周波数にもよるが、例えば0.05〜0.15mmである。
充填材150は、硬化したエポキシ樹脂である。充填材150は、溝140および141に充填されている。また、充填材150は、圧電材料層130と音響整合層160との間にも介在しているが、図1ではその存在を強調しており、圧電材料層130と音響整合層160との間では、実際は両者を接着するための接着剤として機能する程度の厚さで存在している。
充填材150は、エポキシ樹脂のみから構成されていてもよいし、エポキシ樹脂と他の樹脂などの添加剤とを含有していてもよい。上記エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂のプレポリマーと、当該プレポリマー間に架橋ネットワークを形成するための硬化剤とを含有するプレポリマー組成物の硬化物として構成される。
充填材150の体積弾性率は、2.5〜4.0GPaである。当該体積弾性率が2.5GPaよりも低いと、圧電材料層130と音響整合層160との接着力が不十分となることがあり、4.0GPaよりも高いと、高温高湿環境などの過酷な環境との環境変化により、圧電材料層130に面内応力が発生し、圧電素子が変形、破損して圧電素子の所期の性能が発現しなくなることがある。
上記体積弾性率Kは、ヤング率Eとポアソン比νより、下記式(1)で表される。ヤング率Eは、下記式(2)で表され、ポアソン比νは、下記式(3)で表される。下記式中、Vは上記充填材における縦波音速を、Vは上記充填材における横波音速を、ρは上記充填材の密度を、それぞれ示す。このように、体積弾性率Kは縦波音速Vと横波音速Vと密度ρとより求めることができる。
Figure 2016025611
上記音速V、Vは、どのような方法で求めても構わないが、例えば、超音波工業株式会社製のシングアラウンド式音速測定装置UVM−2を使用して求めることができる。また、上記密度ρも、どのような方法で求めても構わないが、例えば、アルキメデス法を用いて求めることができる。
また、上記体積弾性率は、上記プレポリマーおよび硬化剤の種類や、弾性樹脂粒子などの添加剤の添加などによって調整することが可能である。
上記プレポリマーの例には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂などのフェノール樹脂が含まれる。
上記硬化剤の例には、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンなどのトリアジン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、鎖状脂肪族ポリアミン、環状脂肪族ポリアミンおよび脂肪芳香族ポリアミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンおよびジアミノジフェニルスルフォンなどの芳香族アミン、および、アミンアダクトやケチミンなどの変性アミン、が含まれる。
上記鎖状脂肪族ポリアミンの例には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロプレンジアミンおよびジエチルアミノプロピルアミンが含まれる。
上記環状脂肪族ポリアミンの例には、N−アミノエチルピベラジン、ラミロンC−260、Araldit HY−964、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、S Cure211、S Cure212、ワンダミンHM、および1.3 BAC(いずれもスリーボンド社製)が含まれる。
上記脂肪芳香族ポリアミンの例には、m・キシレンジアミン、ショーアミンX、アミンブラック、ショーアミンブラック、ショーアミンN、ショーアミン1001およびショーアミン1010(いずれもスリーボンド社製)が含まれる。
上記弾性樹脂粒子は、充填材150の耐久性を高める観点から、その表面に反応性官能基を有することが好ましい。当該反応性官能基は、反応性官能基同士の反応性を有する基であってもよいし、エポキシ樹脂中の特定の分子構造に対する反応性を有する基であってもよい。当該弾性樹脂粒子の例には、変性シリコーンゴム粒子が含まれる。当該変性シリコーンゴム粒子の例には、シリコーンエラストマーの粒子と、当該粒子を覆う(例えばポリシロキサンなどの)シェルと、当該シェルの表面に配置されている反応性官能基とを有する粒子が含まれる。
上記プレポリマー組成物における当該弾性樹脂粒子の含有量は、プレポリマーおよび硬化剤の種類や、エポキシ樹脂の所期の体積弾性率などに応じて適宜に決められ、例えば変性シリコーンゴム粒子であれば、プレポリマーおよび硬化剤の総量に対して8〜35質量%であることが、充填剤150の体積弾性率を所期の値に調整する観点から好ましい。
上記樹脂組成物は、上記プレポリマー、硬化剤および弾性樹脂粒子を含有する市販品であってもよい。当該市販品の例には、ALBIDUR EP2240AおよびALBIDUR EP5340(いずれもエボニク社製)が含まれる。
音響整合層160は、前述の圧電材料層130と後述の音響レンズ170との音響特性を整合させるための層である。音響整合層160は、単層でも積層でもよいが、音響特性の調整の観点から、音響インピーダンスが異なる複数の層の積層体であることが好ましい。音響整合層160は、エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物で構成することが可能である。音響整合層160の音響インピーダンスは、例えば、当該樹脂組成物中に添加される添加剤の種類および含有量によって調整することが可能である。当該添加剤の例には、フェライトなどの無機微粒子、および、シリコーン微粉末などの有機微粒子が含まれる。音響整合層160におけるエポキシ樹脂は、充填材150のエポキシ樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
音響レンズ170は、被検体、例えば生体、と当接可能で、当該被検体に適した音響特性を有する材料で構成されている。たとえば、音響レンズ170は、シリコーンゴムで構成されている。シリコーンゴムは、人体に比較的近い音響インピーダンスを有している。
なお、バッキング層110とFPC120、音響整合層160の各層、および音響整合層160と音響レンズ170、は、それぞれ、当該技術分野で通常使用される接着剤(例えば、エポキシ系接着剤)で接着されている。また、FPC120と圧電材料層130は、導電性接着剤で接着されている。当該導電性接着剤は、例えば、銀粉、銅粉およびカーボンファイバーなどの導電性材料を含有する接着剤である。
超音波振動子100では、電圧の印加により圧電材料層130の各副素子が振動して超音波を発生させる。発生した超音波は、音響整合層160および音響レンズ170を介して、音響レンズ170に接する被検体に出射される。一方、当該被検体から音響レンズ170に超音波が入射すると、入射した超音波は、音響レンズ170、音響整合層160を介して圧電材料層130の副素子に到達する。圧電材料層130では、到達した超音波に応じた電気が副素子単位で発生し、当該超音波に応じた電気信号が主素子単位でFPC120から出力される。
超音波振動子100は、保管、輸送時では、使用環境よりも過酷な環境下、例えば、高温環境(例えば60℃以上)下または高湿環境(例えば80RH%程度)下、に置かれることがある。エポキシ系の接着剤は、耐久性、耐熱性、耐候性などに優れるので、材料を接着させている当該接着剤は、高温環境下または高湿環境下に置かれても、実質的な悪影響を受けない。
充填材150は、圧電材料層130と音響整合層160との接着剤としてだけでなく、圧電素子を区画する溝140、141に充填されている。充填材150は、前述したように、エポキシ樹脂を含有するので、圧電材料層130と音響整合層160とを接着するための接着剤として、十分な接着力を発現する。
また、充填材150は、2.5〜4.0GPaの体積弾性率を有する。よって、充填材150が膨張、膨潤するような高温環境下または高湿環境下に超音波振動子100が置かれても、当該膨張などによる充填材150の体積変化は、充填材150に吸収され、圧電材料層130における面内応力の発生が抑制される。よって、上記主素子、副素子を高密度に配置しても、上記の過酷な環境への環境変化に伴う上記面内応力による上記主素子、副素子への変形や損傷などが発生せず、超音波振動子100は、上記の環境変化に対する高い安定性を呈する。
以上の説明から明らかなように、超音波振動子100は、圧電材料で構成された圧電材料層130と、圧電素子が構成されるように圧電材料層130を区画している溝140、141と、圧電材料層130および溝140、141を覆う音響整合層160と、溝140、141内および圧電材料層130の表面に配置され、圧電材料層130に音響整合層160を接着させる充填材150と、を有し、充填材150がエポキシ樹脂を含み、充填材150の体積弾性率が2.5〜4.0GPaである。よって、超音波振動子100は、生産性が高く、かつ環境変化に対する安定性が高い。
また、充填材150が、エポキシ樹脂に変性シリコーンゴム粒子が分散されてなるエポキシ樹脂組成物であることは、充填材150の接着力と所期の体積弾性率とを容易に両立させる観点から、より一層効果的である。
[超音波撮像装置および超音波探触子]
本実施の形態に係る超音波探触子は、前述した本実施の形態に係る超音波振動子を有する以外は、通常の超音波探触子と同様に構成することが可能である。また、本実施の形態に係る超音波撮像装置は、当該超音波探触子を有する以外は、通常の超音波撮像装置と同様に構成することが可能である。
図2Aは、本実施の形態に係る超音波撮像装置の構成を模式的に示す図であり、図2Bは、当該超音波撮像装置の電気的な構成を示すブロック図である。
超音波撮像装置200は、図2Aに示されるように、装置本体201と、装置本体201にケーブル203を介して接続されている超音波探触子202と、装置本体201上に配置されている入力部204および表示部209と、を有する。
装置本体201は、図2Bに示されるように、入力部204に接続されている制御部205と、制御部205およびケーブル203に接続されている送信部206および受信部207と、受信部207および制御部205のそれぞれと接続されている画像処理部208と、を有する。なお、制御部205および画像処理部208は、それぞれ表示部209と接続されている。
入力部204は、例えば、診断開始などを指示するコマンドや被検体の個人情報などのデータを入力するための装置であり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボードなどである。
制御部205は、例えば、マイクロプロセッサ、記憶素子およびその周辺回路などを備えて構成され、超音波探触子202、入力部204、送信部206、受信部207、画像処理部208および表示部209を、それぞれの機能に応じて制御することによって超音波診断装置200の全体の制御を行う回路である。
送信部206は、例えば、制御部205からの信号を超音波探触子202に送信する。受信部207は、例えば、超音波探触子202からの信号を受信して制御部205または画像処理部208へ出力する。
画像処理部208は、例えば、制御部205の制御に従い、受信部207で受信した信号に基づいて被検体内の内部状態を表す画像(超音波画像)を形成する回路である。たとえば、画像処理部208は、被検体の超音波画像を生成するDSP(Digital Signal Processor)、および、当該DSPで処理された信号をディジタル信号からアナログ信号へ変換するディジタル−アナログ変換回路(DAC回路)などを有している。
表示部209は、例えば、制御部205の制御に従って、画像処理部208で生成された被検体の超音波画像を表示するための装置である。表示部209は、例えば、CRTディスプレイ、LCD(液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイなどの表示装置や、プリンタなどの印刷装置などである。
図3は、超音波撮像装置200における超音波探触子202の構成を模式的に示す図である。超音波探触子202は、図3に示されるように、超音波振動子100と、超音波振動子100を収容するホルダ210とを有する。ホルダ210は、超音波探触子202の表面に音響レンズ170が露出するように、超音波振動子100を保持している。超音波振動子100のFPC120は、ケーブル203の先端に配置されたコネクタ211に接続されている。なお、図3中、超音波振動子100の構成の一部は、省略されている。
たとえば、超音波撮像装置200では、制御部205が入力部204からの信号を受信し、生体などの被検体に対して超音波(第1超音波信号)を送信させる信号を送信部206に出力するとともに、当該第1超音波信号に基づく被検体内から来た超音波(第2超音波信号)に応じた電気信号を受信部207に受信させる。受信部207で受信した電気信号は、画像処理部208に送られて当該電気信号に応じた画像信号に処理される。当該画像信号は、表示部209に送られて、当該画像信号に応じた画像が表示部209に表示される。表示部209は、また、入力部204から入力された、制御部205を介して送られる情報に基づき、当該情報に応じた画像および操作(文字の表示、表示された画像の移動や拡大など)も表示する。
超音波探触子202の超音波振動子には、超音波振動子100が使用されている。よって、例えば、超音波振動子100の輸送、保管時に過酷な環境に置かれても、超音波振動子100は、上記のような環境変化に対して高い安定性を有することから、このような超音波振動子100を有する超音波探触子202および超音波撮像装置200は、環境変化に対して高い信頼性を有する。
超音波撮像装置200は、医療用の超音波診断装置に適用される。超音波撮像装置200は、この他にも、魚群探知機(ソナー)や非破壊検査用の探傷機などの、超音波による探査結果を画像や数値などで表示する装置に適用され得る。
[超音波振動子1の作製]
パターニングされたフレキシブルプリント基板(FPC)、バッキング層および固定板を上からこの順に接着剤で接着して積層し、FPCの表面に、両面に電極が形成された4.6mm×42.5mmの、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で構成された圧電材料層を接着した。そして、圧電材料層からバッキング層に至る溝を形成し、圧電素子の主素子を作製した。また、当該主素子において、積層方向における一部を残して圧電材料層を切断する平行な二本の溝を形成し、一つの主素子に、三つの並列する副素子を作製した。
次いで、音響整合層を用意した。当該音響整合層は、まず、第1から第4の層状の音響整合材を上からのこの順で積層し、2.94MPaの加圧条件下においてエポキシ接着剤で加熱硬化により接着し、4.6mm×42.5mmの大きさに成型することにより作製した。第1から第4の音響整合材は、いずれも、エポキシ樹脂とフェライトまたはシリコーン微粉末との混錬物の硬化物で構成されている。第1の音響整合材における音響インピーダンスは2.0MRayls(×10kg/(m秒))であり、厚みは40μmである。第2の音響整合材における音響インピーダンスは4.0MRaylsであり、厚みは40μmである。第3の音響整合材における音響インピーダンスは6.0MRaylsであり、厚みは50μmである。第4の音響整合材における音響インピーダンスは11.0MRaylsであり、厚みは60μmである。
次いで、上記圧電材料層の表面に、圧電材料層の溝にも充填されるように充填材1を塗布した。充填材1は、信越化学工業株式会社製のシリコーン系主剤「KE−1604」(以下、「主剤1」とする)と、信越化学工業株式会社製のアミン系硬化剤「CAT1604」(以下、「硬化剤1」とする)との混合物である。充填材1における主剤と硬化剤との質量含有比(主剤:硬化剤)は、90:10である。
なお、平面形状の大きさが20mm×20mmで、厚さがそれぞれ1mm、2mmおよび3mmの充填材1の試験片をそれぞれ作製し、これらの試験片における音の通過時間の差から上記縦波音速V1および横波音速Vsを求め、当該試験片を用いたアルキメデス法から上記密度ρを求め、前述の式(1)〜(3)から、充填材1の体積弾性率Kを求めたところ、充填材1の体積弾性率Kは、0.5GPaであった。
次いで、上記圧電材料層と上記音響整合層における第4の音響整合材とを合わせ、この状態で充填材1を硬化させ、圧電材料層および音響整合層を充填材1によって接着した。
次いで、上記音響整合層における第1の音響整合材の表面に、ポリパラキシリレンによる3μm程度の絶縁層を作製し、次いで、当該絶縁層の表面に音響レンズを接着した。こうして、超音波振動子1を作製した。
[超音波振動子2〜5の作製]
充填材1に代えて充填材2を用いる以外は超音波振動子1と同様にして、超音波振動子2を作製した。充填材2は、株式会社テスク製のエポキシ系主剤「C1163A」(以下、「主剤2」とする)と、株式会社テスク製のアミン系硬化剤「C1163B」(以下、「硬化剤2」とする)との混合物である。充填材2における主剤と硬化剤との質量含有比(主剤:硬化剤)は、66:34であり、充填材2のKは、4.6GPaであった。
充填材1に代えて充填材3を用いる以外は超音波振動子1と同様にして、超音波振動子3を作製した。充填材3は、三井化学株式会社製のエポキシ系主剤「EH−455NF」(以下、「主剤3」とする)と、三井化学株式会社製のアミン系硬化剤「EH−455NF硬化剤」(以下、「硬化剤3」とする)との混合物である。充填材3における主剤と硬化剤との質量含有比(主剤:硬化剤)は、81:19であり、充填材3のKは、5.5GPaであった。
充填材1に代えて充填材4を用いる以外は超音波振動子1と同様にして、超音波振動子4を作製した。充填材4は、エボニック社製のエポキシ系主剤「EP2240」(以下、「主剤4」とする)と、三菱化学株式会社製のアミン系硬化剤「ST12」(以下、「硬化剤4」とする)との混合物である。充填材4における主剤と硬化剤との質量含有比(主剤:硬化剤)は、75:25であり、充填材4のKは、2.8GPaであった。
充填材1に代えて充填材5を用いる以外は超音波振動子1と同様にして、超音波振動子5を作製した。充填材5は、主剤と硬化剤との混合物であり、当該主剤は、主剤2と主剤4との混合物であり、当該硬化剤は、硬化剤2と硬化剤4との混合物である。充填材5における主剤と硬化剤との質量含有比(主剤2:主剤4:硬化剤2:硬化剤4)は、33:37:17:13であり、充填材5のKは、3.5GPaであった。
[超音波探触子1〜5の作製]
超音波振動子1を、音響レンズを露出するようにケースに収納し、FPCにコネクタを接続した。こうして、超音波探触子1を作製した。
超音波振動子1に代えて超音波振動子2〜5のそれぞれを用いた以外は超音波探触子1と同様にして、超音波探触子2〜5をそれぞれ作製した。
[評価]
(1)接着力
超音波探触子1〜5のそれぞれにおける充填材1〜5の接着力を、90°ピール試験により求めた。当該試験にはテストピースを用い、当該テストピースは、スライドガラスに上記の各充填材を塗布し、その上に引っ張るための基材を積層し、一定の加圧条件下で各充填材の硬化条件にて硬化させて用意した。90°ピール試験には、90度剥離試験機ZP−20N(株式会社イマダ製)を用いた。引っ張り速度は20mm/minとし、接着強度(接着力)は、測定結果のうち、強度プロファイルが安定した部分の平均値として求め、得られた接着力を下記の基準により評価した。接着力がGであれば実用上問題ない。
G:接着色が200gf(1.96N)/10mm 以上
NG:接着色が200gf/10mm 未満
(2)送受信感度
超音波探触子1〜5のそれぞれを用いて、図4に示されるような測定装置を構成した。この測定装置は、図4に示されるように、SUS製の反射板(RE)がその底に配置されている水槽と、当該水槽の水面近傍に配置された超音波探触子(UP)と、当該超音波探触子に電気的に接続されたパルサーレシーバー(PR)と、当該パルサーレシーバーに電気的に接続されたオシロスコープ(OS)とからなる。当該パルサーレシーバーは、例えば、オリンパス株式会社製超音波パルサーレシーバー「MODEL5900PR」であり、当該オシロスコープは、例えば、株式会社TFF製オシロスコープ「TDS5032」である。
まず、構成で接続し、超音波探触子1〜5のそれぞれ(UP)の、水中に浸漬させたプローブヘッド部からSUS製の反射板(RE)に向かって超音波を送信し、反射波を受信することによって、超音波探触子1〜5のそれぞれの初期の送受信感度Siを求めた。次いで、超音波探触子1〜5のそれぞれを、65℃、95%RH環境に168時間放置した。そして、常温まで放冷後、超音波探触子1〜5のそれぞれを上記測定装置に搭載し、超音波探触子1〜5のそれぞれの放置後の送受信感度Sfを、上記Siと同様の方法により求めた。そして、SfからSiを引いた差ΔSを求めた。ΔSの絶対値が2.5以下であれば実用上問題ない。
(3)容量
超音波探触子1〜5のそれぞれの初期の1ch(主素子)ごとの素子の静電容量Sciを、FirstCall 2000(Sonora Medical Systems社製)を用いて求めた。次いで、超音波探触子1〜5のそれぞれを、65℃、95%RH環境に168時間放置した。そして、常温まで放冷後、超音波探触子1〜5のそれぞれの放置後の静電容量Scfを、上記Sciと同様の方法により求めた。そして、ScfからSciを引いた差ΔScを求め、Sciに対するΔScの割合Scr(%)を下記式から求めた。ΔScの絶対値が10未満であれば実用上問題ない。
Scr=(ΔSc/Sci)×100
超音波振動子の充填材の組成および弾性体積率、および上記の評価の結果を表1に示す。
Figure 2016025611
表1より明らかなように、超音波探触子4、5では、いずれも、充填材4、5が十分な接着力を有し、また前述の試験環境前後において、送受信感度および容量の変化が抑制されており、超音波探触子4、5はいずれも高温高湿環境への環境変化に対する高い信頼性を有していることが分かる。これは、超音波探触子4、5のいずれの充填材4、5も、エポキシ樹脂を含有しているため、十分な接着力を発現するとともに、充填材4、5がそれぞれ適切な体積弾性率を有するため、圧電材料層の面内応力の発生が抑制され、その結果、圧電素子の上記環境変化による変形、破損が防止されるため、と考えられる。
特に、超音波探触子4では、送受信感度および容量のいずれの値(差)もが、超音波探触子5のそれに比べて小さく、上記試験環境への環境変化に対する信頼性がより高いことが分かる。これは、充填材4の体積弾性率が、充填材4の接着力を十分に発現可能な範囲内にあり、かつより小さいため、上記面内応力の発生がより一層抑制されるため、と考えられる。
一方、超音波探触子1では、充填材1の接着力が不十分であった。これは、充填材1の主剤がシリコーン系の主剤であり、音響整合層に対する親和性を欠き、その結果、接着力が低下したため、と考えられる。
また、超音波探触子2、3では、いずれも容量変動の点が不十分であった。これは、充填材2、3の硬化収縮と体積弾性率が高すぎ、圧電材料層に面内応力が発生したため、と考えられる。また、超音波探触子2は、感度変動の点で不十分であったが、これは、充填材2が高温高湿環境で硬化時の収縮を上回る程湿潤により膨張し、その結果、振動を束縛する面内応力が圧電材料層に発生したためと考えられる。一方、超音波探触子3では、超音波探触子2よりも充填材の体積弾性率がさらに高い。このため、超音波振動子3では、超音波振動子2に比べて、高温高湿環境での充填材の湿潤膨張が上記面内応力による圧電材料層の束縛をより抑制するように作用したため、すなわち、超音波振動子3の充填材における硬化収縮による上記面内応力が、超音波振動子2の充填材におけるそれよりも緩和されたため、感度変動が十分に小さくなっている、と考えられる。
本発明によれば、高温高湿環境下に放置されても、高い信頼性を維持する超音波探触子が得られる。したがって、本発明によれば、超音波振動子、超音波探触子、超音波撮像装置の輸送、保管に係る過酷な環境変化に対しても、高い信頼性を有する超音波撮像装置が提供され、超音波撮像装置の利用のさらなる普及が期待される。
100 超音波振動子
110 バッキング層
120 フレキシブルプリント基板(FPC)
130 圧電材料層
140、141 溝
150 充填材
160 音響整合層
170 音響レンズ
200 超音波撮像装置
201 装置本体
202 超音波探触子
203 ケーブル
204 入力部
205 制御部
206 送信部
207 受信部
208 画像処理部
209 表示部
210 ホルダ
211 コネクタ

Claims (4)

  1. 圧電材料で構成された圧電材料層と、
    圧電素子が構成されるように前記圧電材料層を区画している溝と、
    前記圧電材料層および前記溝を覆う音響整合層と、
    前記溝内および前記圧電材料層の表面に配置され、前記圧電材料層に前記音響整合層を接着させる充填材と、を有し、
    前記充填材は、エポキシ樹脂を含み、
    前記充填材の体積弾性率は、2.5〜4.0GPaである、超音波振動子。
  2. 前記充填材は、エポキシ樹脂に変性シリコーンゴム粒子が分散されてなるエポキシ樹脂組成物である、請求項1に記載の超音波振動子。
  3. 請求項1または2に記載の超音波振動子を有する超音波探触子。
  4. 請求項3に記載の超音波探触子を有する超音波撮像装置。
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