以下、図面を参照して本開示に係る実施形態を説明する。なお、以下の図面は、模式的なものである。従って、細部は省略されることがあり、また、寸法比率等は現実のものと必ずしも一致しない。また、複数の図面相互の寸法比率も必ずしも一致しない。
図面には、便宜上、直交座標系D1−D2−D3を付すことがある。なお、センサは、いずれの方向が上方または下方とされてもよいものであるが、実施形態の説明では、便宜上、D3軸方向の正側を上方として、上部または下部等の語を用いることがある。また、以下において平面視という場合、特に断りがない限りは、D3軸方向に見ることをいうものとする。
本実施形態の説明では、材料名を例示することがあるが、その材料名は、材料の主成分を指すものとし、適宜に添加物が含まれていてよいものとする。主成分は、例えば、その材料中の全ての原子に対する原子の比率が50%を超える成分である。
(センサの全体構成)
図1は、実施形態に係る超音波式のセンサ1の構成を示す断面図である。図2は、センサ1の構成を示す平面図である。なお、図1は、図2のI−I線に対応している。
センサ1は、例えば、pMUTとして構成されている。センサ1は、例えば、所定の波形(例えば矩形波または正弦波)で電圧が変化する電気信号が入力される。そして、センサ1は、その電気信号を当該電気信号の波形を反映した(例えば周波数を反映した)超音波に変換し、D3軸方向の正側へ発信する。また、例えば、センサ1は、D3軸方向の正側から超音波を受信し、その超音波を当該超音波の波形を反映した電気信号に変換する。なお、ここでいう超音波の発信および受信についてのD3軸方向の正側は、D3軸方向に平行とは限らない。
センサ1は、例えば、図1に示すように、センサ素子3と、センサ素子3が実装されている実装基体5と、センサ素子3と実装基体5とを接着している接着層7とを有している。センサ素子3は、超音波(振動)と電気信号との変換を担う。実装基体5は、例えば、センサ素子3と他の電子素子(例えばIC:Integrated Circuit)または電子機器(例えばコンピュータ)との仲介を担う。
(センサ素子の全体構成)
センサ素子3は、例えば、概略、直柱状の形状を有している。すなわち、互いに平行かつ合同な上面および下面を有しているとともに、上面および下面と側面とは概ね直交している。センサ素子3の平面形状は、円形または矩形等の適宜な形状とされてよく、図示の例では矩形である。なお、センサ素子3の平面形状は、後述するように(図5参照)、他のセンサ素子3とつながって外形を特定不可能であってもよい。
センサ素子3の厚さは、適宜に設定されてよく、センサ素子3の平面視における径(例えば最大径)、または後述する振動面9aの径(例えば最大径)よりも小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。一例を挙げると、センサ素子3の厚さは、50μm以上600μm以下である。
センサ素子3は、例えば、振動層9と、振動層9を支持している素子基体11とを有している。
振動層9の上面のうち、一部の領域は、超音波の送信および受信を担う振動面9aとなっている。なお、振動層9のうち、振動面9a下の、振動層9の厚さを有する部分(振動面9aを上面とする部分)を振動部9bということがある。振動面9a(振動部9b)は、当該振動面9aが面する方向(D3軸方向)における振動(面外振動、屈曲振動)によって超音波を生成および送信し、また、超音波を受信したときは面外振動を生じる。
素子基体11は、例えば、振動部9bの直下にキャビティ11cを有している。キャビティ11cによって、例えば、振動部9bの振動が容易化されている。別の観点では、振動層9の直下にキャビティ11cが形成されることによって、振動層9のうちキャビティ11cに重なる部分が振動部9bとなっている。
振動面9aの形状(キャビティ11cの開口形状)は適宜な形状とされてよく、図示の例では円形である。また、振動面9aの面積(径)も適宜に設定されてよい。一例を挙げると、振動面9aの径(円の直径または最大径)は、10μm以上100μm以下である。
振動面9a(振動部9b)は、その中央が振動の腹となり、外縁が振動の節となる1次モードの振動に関して、共振周波数が超音波の周波数帯に位置するように構成されている。超音波の周波数帯は、例えば、20kHz以上の周波数帯である。超音波の周波数の上限について、特に規定は存在しないが、例えば、上限は、5GHzである。
(振動層)
振動層9は、キャビティ11cを覆っている。振動層9の面積はキャビティ11cの面積よりも広く、振動層9は、キャビティ11cの周囲において素子基体11に固定されて支持されている。振動層9の厚さは適宜に設定されてよい。一例を挙げると、振動層9の厚さは、2μm以上20μm以下である。
振動層9は、例えば、下方(素子基体11側)から順に積層された、メンブレン13、下部電極15、圧電体層17および上部電極19を有している。
なお、特に図示しないが、振動層9は、この他、上部電極19を覆う保護膜等を有していてもよい。別の観点では、図示の例では、振動面9aは、上部電極19によって構成されているが、保護膜等の他の層によって構成されていてもよい。また、振動面9aは、外部に露出する面であってもよいし、振動面9aの振動を阻害しない媒質(例えば流体)を介してカバーによって覆われている面であってもよい。
メンブレン13は、例えば、一定の厚さの層状であり、その広さは振動層9の広さと同じである。メンブレン13の厚さは適宜に設定されてよい。例えば、メンブレン13の厚さは、圧電体層17の厚さよりも厚くてもよいし、同等でもよいし、薄くてもよい。
メンブレン13は、例えば、絶縁材料によって形成されている。絶縁材料は、無機材料でも有機材料でもよく、より具体的には、例えば、シリコン、二酸化シリコン(SiO2)または窒化シリコン(SiN)である。メンブレン13は、互いに異なる材料からなる複数の層が積層されて構成されていてもよい。例えば、メンブレン13は、シリコンと、その下面に重なるSiO2とによって構成されていてもよい。
圧電体層17は、例えば、一定の厚さの層状であり、その広さは振動層9の広さと同じである。圧電体層17の厚さは適宜に設定されてよい。一例を挙げると、圧電体層17の厚さは、0.5μm以上10μm以下である。
圧電体層17は、単結晶によって構成されていてもよいし、多結晶によって構成されていてもよい。圧電体層17の材料は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸バリウム(BTO:BaTiO3)、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN:(K,Na)NbO3)、チタン酸ビスマスナトリウム(NBT:Na0.5Bi0.5TiO3)およびチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zrx,Ti1−x)O3)である。上記の例示からも理解されるように、圧電体は、強誘電体であってもなくてもよいし、焦電体であってもなくてもよい。また、結晶構造は、ペロブスカイト型またはウルツ鉱型等の適宜なものであってよい。
圧電体層17の分極軸方向(単結晶の電気軸、X軸)は、圧電体層17の厚み方向とされている。なお、圧電体層17が多結晶体である場合において、分極は、圧電体層17の全体に亘ってなされていてもよいし、振動部9b(その全部または一部)を含む一部においてのみなされていてもよい。
下部電極15および上部電極19は、圧電体層17をその厚さ方向(別の観点では分極方向)において挟んで対向している。下部電極15および上部電極19は、互いに同一の構成(平面形状、厚さおよび材料等)であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。
下部電極15および上部電極19それぞれは、例えば、一定の厚さの層状であり、平面視においてキャビティ11cに重なるベタ状電極である。平面視において、各電極の外縁は、例えば、キャビティ11cの外縁に概ね一致している。なお、下部電極15および上部電極19の少なくとも一方は、振動層9の広さと同じ広さを有していてもよい。各電極の厚さは適宜に設定されてよい。通常、各電極の厚さは、圧電体層17およびメンブレン13の厚さに比較して薄い。
各電極の材料は、例えば、適宜な金属とされてよい。金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)もしくはクロム(Cr)またはこれらを含む合金である。各電極は、互いに異なる材料からなる複数の層が積層されて構成されていてもよい。
下部電極15および上部電極19によって圧電体層17に分極の向きと同じ向きで電界が印加されると、圧電体層17の下部電極15および上部電極19に挟まれた部分は、平面方向(D1軸方向およびD2軸方向)に縮小する。この縮小は、メンブレン13によって規制されるから、振動部9bは、バイメタルのようにキャビティ11c側へ撓む(変位する)。逆に、分極の向きと逆の向きで電界が印加されると、振動部9bは、キャビティ11cとは反対側へ撓む。
上記のような振動部9bの変位によって、振動部9b(振動面9a)の周囲の媒質(例えば流体)においては圧力波が形成される。そして、所定の波形で電圧が変化する電気信号が下部電極15および上部電極19に入力されることによって、その電気信号の波形(例えば周波数)を反映した超音波が生成される。
なお、電気信号は、例えば、振動部9bをキャビティ11c側へ変位させる電圧印加と、振動部9bをキャビティ11cとは反対側へ変位させる電圧印加とが繰り返されるものであってもよい。すなわち、電気信号は、極性(正負)が反転する(電圧(電界)の向きがD3軸方向において交互に入れ替わる)ものであってよい。
また、例えば、電気信号は、振動部9bをキャビティ11c側へ変位させる電圧印加のみ、または振動部9bをキャビティ11cとは反対側へ変位させる電圧印加のみが繰り返されるものであってもよい。この場合、撓みと、復元力による撓みの解消との繰り返しによって、超音波が生成される。
また、電気信号の波形は適宜なものとされてよい。例えば、1つの超音波信号(エコー信号)において、波の数は適宜に設定されてよいし、また、周波数および電圧は一定であってもよいし、一定でなくてもよい。電気信号の極性が変化する場合において、正側の電圧と負側の電圧とは同一の大きさであってもよいし、異なっていてもよい。
超音波の発信について述べたが、超音波の受信は、発信時とは逆の原理によって実現される。センサ1は、例えば、超音波信号の発信を間欠的に行い、超音波信号の発信が行われていない間において超音波信号の受信を行う。これにより、センサ1は、例えば、自らが発信し、反射して帰ってきた超音波信号を受信する。
(素子基体)
素子基体11は、例えば、キャビティ11cを構成する凹部が上面(振動層9側の面)に開口している形状である。換言すれば、素子基体11は、振動層9の広さと同等の広さの下面(振動層9とは反対側の面)を有している形状である。別の観点では、素子基体11の下面は、平面透視において振動部9bに重なる領域とその周囲の領域とを有している。
既述のように、図示の例では、キャビティ11cの平面形状は円形であり、また、当該平面形状は、キャビティ11cの深さ方向(D3軸方向)において一定である。なお、図示の例とは異なり、キャビティ11cは、凹部の開口側(図示の例では振動層9側)ほど径が大きくなっていてもよい。
素子基体11の材料は任意であり、また、素子基体11は、一体的に形成されていてもよいし、複数の部材が組み合わされて構成されていてもよい。例えば、素子基体11の材料は、無機絶縁材料または有機絶縁材料である。より具体的には、例えば、素子基体11は、シリコン(Si)等の絶縁材料によって一体的に形成されてよい。また、例えば、素子基体11は、シリコン等の絶縁材料によって概ね全体が一体的に形成されているとともに、上面にSiO2等の他の絶縁材料からなる層を有していてもよい。
(実装基体)
実装基体5は、例えば、回路基板によって構成されている。回路基板は、例えば、リジッド式のプリント配線板である。実装基体5は、例えば、絶縁基体21と、絶縁基体21の表面上または内部に設けられた導体(例えば後述するパッド31)とを有している。
絶縁基体21は、例えば、概略、平板状に形成されている。絶縁基体21は、例えば、樹脂、セラミックおよび/またはアモルファス状態の無機材料を含んで形成されている。絶縁基体21は、単一の材料からなるものであってもよいし、基材に樹脂を含浸させた基板のように複合材料からなるものであってもよい。また、絶縁基体21は、単層基板であってもよいし、多層基板であってもよい。
なお、絶縁基体21の上面のうち、接着層7と接着される領域を含む少なくとも一部の領域には、接着剤との接着強度を向上させるための表面処理がなされていてもよい。また、上記一部の領域には、絶縁基体21の絶縁材料とは異なる絶縁層または導体層が設けられていてもよい
(接着層)
接着層7は、例えば、母材23(マトリックス)と、母材23内に配置されている第1粒子25および第2粒子27とを有している。母材23は、例えば、センサ素子3(素子基体11)と実装基体5(例えば絶縁基体21)との接着に直接に寄与している。第1粒子25は、例えば、接着層7の厚さの制御に寄与している。第2粒子27は、例えば、接着層7の種々の特性(例えば音響インピーダンス)の調整に寄与している。
なお、音響インピーダンスは、公知のように、簡便には、以下の式によって表される。
Z=ρ×c=ρ×√(E/ρ)=√(ρ×E)
ここで、Z:音響インピーダンス、ρ:媒質の密度、c:媒質中の音速、E:媒質の弾性率(ヤング率)である。
(母材)
母材23は、いわば狭義の接着剤であり、流動性を有する状態から硬化して実装基体5および素子基体11に固着している部分である。母材23の材料は、無機材料であってもよいし、有機材料であってもよい。有機材料は、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂を挙げることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂およびポリ酢酸ビニルを挙げることができる。
また、別の観点では、母材23となる材料は、例えば、化学反応によって硬化するものであってもよいし、物理架橋によって硬化するものであってもよいし、加熱によって硬化するものであってもよいし、(加熱後に)冷却によって硬化するものであってもよい。また、母材23となる材料は、実装基体5または素子基体11に配された時点で流動性を有していてもよいし、当該時点においては固体であってもよい。
(第1粒子)
第1粒子25は、接着層7となる材料が素子基体11の下面または実装基体5の上面に配置される前から固体状態で母材23に混入されているものである。また、第1粒子25は、概ね、接着層7と同等の径を有している。従って、例えば、素子基体11と実装基体5との間に接着層7となる材料が介在しており、かつ母材23が流動性を有している状態において、第1粒子25は、素子基体11と実装基体5との距離を確保するスペーサとして機能する。その結果、例えば、接着層7の厚さは、第1粒子25の径と同程度の厚さとなる。
現実には、各第1粒子25は、完全な球体ではなく、方向によって径が異なる。また、現実には、複数の第1粒子25間で径にばらつきが存在する。従って、複数の第1粒子25のうち少なくとも一部の第1粒子25において、接着層7の厚さ方向(D3軸方向)の径が接着層7の厚さと同等であればよい。
また、第1粒子25がスペーサとして機能したとしても、硬化前に第1粒子25の表面を濡らしていた母材23が、硬化後まで第1粒子25と素子基体11または実装基体5との間に残存し得る。従って、第1粒子25のD3軸方向の径が接着層7の厚さと同等といっても、実際には、接着層7の厚さよりも若干小さくてもよい。例えば、同等は、接着層7の厚さの10%未満または5%未満の差を含んでよい。
少なくとも一部の第1粒子25において、D3軸方向の径が接着層7の厚さと同等であるか否かは適宜に確認可能である。例えば、接着層7のD3軸に平行な断面を光学式または電子式の顕微鏡を用いて撮像し、第1粒子25のD3軸に平行な径を測定すればよい。このとき、D1軸方向および/またはD2軸方向の位置が互いに異なる複数の断面を観察してよい。
なお、撮像した断面は、第1粒子25と素子基体11との接触位置、および第1粒子25と実装基体5との接触位置を通過するとは限らない。従って、例えば、D3軸方向の径が接着層7の厚さの80%以上または90%以上の第1粒子25の存在を確認できれば、D3軸方向の径が接着層7の厚さと同等の第1粒子25が存在するとみなしてもよい。
また、第1粒子25の扁平率が極端に大きくなければ、接着層7の任意の方向の断面を撮像してよい。そして、例えば、第1粒子25の最大径を測定して、当該最大径が接着層7の厚さと同等の第1粒子25を確認できれば、D3軸方向の径が接着層7の厚さと同等の第1粒子25が存在するとみなしてもよい。
第1粒子25のD3軸方向の径に着目したが、例えば、他の方向の径も、接着層7の厚さと同等でよい。また、例えば、第1粒子25の粒子が球形であると仮定したときのその直径(粒径)が、接着層7の厚さと同等とされてよい。また、複数の第1粒子25の粒径の代表値(例えば最頻値、中央値または平均値)が接着層7の厚さと同等とされてもよい。
体表値が接着層7の厚さと同等というときも既述のように10%未満または5%未満の差があってもよい。また、複数の第1粒子25のうち、上記の代表値よりも大きい粒径を有する第1粒子25の方が、スペーサとしての機能が相対的に高いから、代表値は、接着層7の厚さよりも30%未満の差で小さくてもよい。換言すれば、代表値は、接着層7の厚さの0.7倍以上とされてよい。
粒径は、例えば、粒子が母材23に混入される前等においては、従来公知のレーザ回析散乱法によって粒径が測定されてよい。母材23の材料および粒子の材料によっては、接着層7の母材23(硬化後の母材23)を溶解して粒子を取り出してレーザ回析散乱法によって粒径を測定してもよい。その他、例えば、X線マイクロCT装置によって接着層7内(硬化後の母材23内)の第1粒子25の粒径を測定してもよい。
複数の第1粒子25間の相違を意識して第1粒子25の径について説明した。しかし、複数の第1粒子25は、例えば、基本的に、互いに同一の形状および大きさで形成されることが意図されてよい。従って、製造上不可避な誤差を除いては、複数の第1粒子25は、互いに同一の形状および大きさであってよい。
第1粒子25の形状は、例えば、概略、球形である。この場合、例えば、母材23に均等に分散しやすく、また、スペーサとしての機能にもばらつきが生じにくい。扁平率は、例えば、0.5以下または0.2以下である。ただし、第1粒子25は、針状または板状のものであってもよい。
複数の第1粒子25の接着層7における含有率(例えば体積%)は適宜に設定されてよく、特に制限はない。例えば、複数の第1粒子25の体積の合計は、接着層7の体積の5%以上または10%以上である。このように、ある程度の含有率が確保されることによって、例えば、複数の第1粒子25が接着層7の全体に分布してスペーサとしての機能が確実に奏される。
第1粒子25の材料は、無機材料であってもよいし、有機材料(例えば樹脂)であってもよく、また、絶縁材料であってもよいし、導電材料(例えば金属)であってもよい。例えば、第1粒子25の材料としては、シリカ、アルミナ、ガラス、グラファイト、フェノール樹脂、ポリエチレンおよびタングステンを挙げることができる。第1粒子25の材料は、母材23の材料と異なっていてもよいし、同一であってもよい。
第1粒子25の材料が有機材料である場合、第1粒子25が弾性変形し易くなるため、接着層7を圧縮して第1粒子25をある程度変形させることによって、接着層7の厚みを精度よく制御することができる。
第1粒子25の材料の物性値は、適宜なものであってよい。物性値としては、例えば、音響インピーダンス、密度、ヤング率、熱膨張率、熱伝導率および電気抵抗率を挙げることができる。第1粒子25のこれらの物性値のいずれかは、母材23のものと異なっていてもよいし、同一であってもよい。別の観点では、第1粒子25は、接着層7のこれらの物性値の調整に寄与してもよい。
例えば、母材23の音響インピーダンスが素子基体11の音響インピーダンスよりも低い場合において、第1粒子25の音響インピーダンスは母材23または素子基体11の音響インピーダンスよりも高くてもよい。この場合、素子基体11の音響インピーダンスと接着層7の音響インピーダンスとの差を緩和して、両者の界面における超音波の反射を抑制することができる。
(第2粒子)
第2粒子27は、第1粒子25と同様に、接着層7となる材料が素子基体11の下面または実装基体5の上面に配置される前から固体状態で母材23に混入されているものである。第2粒子27は、例えば、母材23と所定の物性値が異なっており、接着層7の当該所定の物性値の調整に寄与している。物性値は、例えば、第1粒子25の説明で例示したものである。
第2粒子27は、第1粒子25よりも径が小さい粒子である。第2粒子27は、例えば、その径のみによって第1粒子25と区別されてよい。
例えば、図1では、複数の第1粒子25の径は互いに概ね同等であり、複数の第2粒子27の径が互いに概ね同等であり、また、第1粒子25の径と第2粒子27の径との差は比較的大きい。このような場合において、互いに径が異なる2種の粒子(第1粒子25および第2粒子27)が存在することは明らかである。
また、例えば、種々の径の複数の粒子が存在して混沌としている場合においては、所定の径以上の粒子を第1粒子25とし、所定の径未満の粒子を第2粒子27としてもよい。所定の径は、適宜に設定されてよいが、例えば、接着層7の厚さの1/2または3/4である。
既述のように、各粒子の径は、方向によって異なる。第1粒子25と第2粒子27とで上記のように径を比較するときは、例えば、D3軸方向の径を比較してもよいし、最大径を比較してもよいし、粒子が球形であると仮定したときのその直径(粒径)を比較してもよい。
例えば、D3軸に平行な断面を光学式または電子式の顕微鏡を用いて撮像する。当該断面は、各粒子において、そのD3軸方向の径または最大径の測定に適した断面とは限らない。ただし、複数の粒子が互いに密集している(互いに当接しているように見える)領域においては、概ね、D3軸方向の径または最大径の測定に適した断面が撮像されていると考えられてよく、ひいては、第2粒子27の存在を確認できる。
また、例えば、第1粒子25の粒径の測定方法で述べたように、レーザ回析散乱法またはX線マイクロCT装置が用いられてもよい。第2粒子27の径によっては、X線小角散乱法によって、母材23への混入前の第2粒子27または硬化した母材23内の第2粒子27の粒径が測定されてもよい。
上記のように径のみによって第1粒子25と第2粒子27とを区別する場合、第1粒子25および第2粒子27は互いに同一の材料によって構成されていてもよいし、互いに異なる材料によって構成されていてもよい。また、複数の第1粒子25に互いに材料が異なるものが含まれ、および/または複数の第2粒子27に互いに材料が異なるものが含まれていてもよい。
第2粒子27は、第1粒子25の材料とは異なる材料によって構成され、これにより、第1粒子25と区別されてもよい。ただし、この場合でも、少なくとも一部の第1粒子25は、D3軸方向の径が接着層7の厚さと同等である。また、複数の第2粒子27は、例えば、少なくとも一部において、D3軸方向の径が接着層7の厚さよりも小さい。なお、複数の第2粒子27は、D3軸方向の径が接着層7の厚さと同等のものを含んでいてもよい。
第2粒子27の形状は、例えば、概略、球形である。ただし、第2粒子27は、針状または板状のものであってもよい。また、複数の第2粒子27の接着層7における含有率(例えば体積%)は、第2粒子27を接着層7に混入する目的に応じて(物性値の所望の調整量が得られるように)適宜に設定されてよい。例えば、複数の第2粒子27の体積の合計は、接着層7の体積の5%以上または10%以上である。また、複数の第2粒子27は、可能な限り母材23に密に充填されてもよい。例えば、複数の第2粒子27は、接着層7の80体積%または90体積%を占めてもよい。
第2粒子27の材料は、第2粒子27を混入する目的に応じて適宜に選択されてよい。第2粒子27は、第1粒子25と同様に、無機材料であってもよいし、有機材料(例えば樹脂)であってもよく、また、絶縁材料であってもよいし、導電材料(例えば金属)であってもよい。具体的な材料としては、第1粒子25の材料の具体例として挙げたものを例示することができる。
ただし、第2粒子27は、第1粒子25とは異なり、何らかの物性値が母材23とは異なる材料である。例えば、母材23の音響インピーダンスは素子基体11の音響インピーダンスよりも低く、第2粒子27の音響インピーダンスは母材23または素子基体11の音響インピーダンスよりも高い。この場合、素子基体11の音響インピーダンスと接着層7の音響インピーダンスとの差を緩和して、両者の界面における超音波の反射を抑制することができる。
第1粒子25の材料が有機材料であり、第2粒子27の材料が金属である場合、大きな第1粒子25よりも小さな第2粒子27の方が超音波を乱反射させ易くなる。その結果、超音波を接着層7内で散乱させることができ、超音波を減衰させることができる。
(接着層7の厚さ)
接着層7の厚さ(別の観点では第1粒子25の径)は、適宜に設定されてよい。例えば、接着層7の厚さは、圧電体層17の厚さ、振動層9の厚さまたは素子基体11の厚さよりも厚くされてもよい。接着層7を比較的厚くすることによって、例えば、振動部9bから接着層7に入射した音波を接着層7で減衰させることが容易になる。その結果、例えば、接着層7と実装基体5との界面で反射した音波が振動部9bに戻って振動部9bの振動に影響を及ぼすおそれが低減される。
また、例えば、接着層7の厚さは、振動部9bの振動によって生成される超音波(別の観点では振動部9bの共振周波数の音波)の、接着層7内における波長をλとしたときに、λ/4の整数倍と同等とされてもよい。この場合、例えば、振動部9bで生成され、素子基体11と接着層7との界面(界面S1とする。)で反射する反射波と、振動部9bで生成され、接着層7と実装基体5との界面(界面S2とする。)で反射する反射波とを、その少なくとも一部について互いに打ち消し合わせることができる。より具体的には、以下のとおりである。
界面S1と界面S2との距離(接着層7の厚さ)をdとする。このとき、界面S1を通過した通過波が界面S2で反射して界面S1に戻ってくるまでの間において、界面S1に入射する入射波の位相は、2π/λ×2dで進んでいる。
ここで、音波が第1媒質を進んで第2媒質に到達する場合を考える。この場合、第1媒質の音響インピーダンス(Zaする。)が、第2媒質の音響インピーダンス(Zbとする)と異なることにより、第1媒質と第2媒質との界面で反射波が生じる。第1媒質を第2媒質へ向かって進んだ入射波と、界面を通過して第2媒質を進む通過波との位相は、ZaおよびZbの大小関係によらず、同一である。Za<Zbの場合、反射波の位相は入射波の位相と同じである。一方、Za>Zbの場合、反射波の位相は入射波の位相に対して反転する(πずれる。)。
従って、界面S1および界面S2の双方において、位相が反転しない、または反転する場合においては、接着層7の厚さdは、λ/4の奇数倍とされてよい。換言すれば、nを0以上の整数とすれば、d=λ/4×(2n+1)とされてよい。この場合、界面S1で反射する反射波と、界面S2で反射して界面S1に到達した反射波とは、互いに位相が反転しており、互いに打ち消し合う。
また、上記以外の場合、すなわち、界面S1および界面S2の一方のみにおいて位相が反転する場合においては、接着層7の厚さdは、λ/4の偶数倍とされてよい。換言すれば、d=λ/4×2nとされてよい。この場合も、界面S1で反射する反射波と、界面S2で反射して界面S1に到達した反射波とは、互いに位相が反転しており、互いに打ち消し合う。
音響インピーダンスと界面S1およびS2における反射波の位相の変化との組み合わせは、具体的には、以下のとおりである。センサ素子3の接着層7と接着される部分(素子基体11)の音響インピーダンスをZ1とする。接着層7の音響インピーダンスをZ2とする。実装基体5の接着層7と接着される部分(絶縁基体21)の音響インピーダンスをZ3とする。このとき、Z3>Z2>Z1の場合は、界面S1およびS2の双方において位相の反転は生じない。また、Z1>Z2>Z3の場合は、界面S1およびS2の双方において位相の反転が生じる。それ以外の場合(Z1>Z3>Z2、Z2>Z3>Z1、Z2>Z1>Z3もしくはZ3>Z1>Z2)の場合は、界面S1およびS2の一方のみにおいて位相の反転が生じる。
接着層7の厚さdが正確にλ/4の整数倍でなくても、上記の2種の反射波同士が打ち消し合う効果が奏される。例えば、2種の反射波は、1/4×πまたは3/4×πで位相がずれているとき、互いに強め合う部分と互いに打ち消し合う部分とが同程度であり、平均的には強め合う効果も打ち消し合う効果も生じない。従って、例えば、2種の反射波の位相のずれは、3/8×π以上5/8×π以下であってもよい。すなわち、距離に換算すれば、2種の反射波の位相のずれは、3/16×λ以上5/16×λ以下であってもよい。界面S1と界面S2との往復距離2dが上記の範囲にあればよいから、厚さdは、λ/4(=4/16×λ)の整数倍に対して、±1/16λの範囲内としてよい。
式によってまとめると、以下が満たされるようにしてよい。
Z1>Z2>Z3もしくはZ3>Z2>Z1の場合は、
(1/4×(2n+1)−1/16)×λ < d
<(1/4×(2n+1)+1/16)×λ
また、Z1>Z3>Z2、Z2>Z3>Z1、Z2>Z1>Z3もしくはZ3>Z1>Z2の場合は、
(1/4×2n−1/16)×λ<d<(1/4×2n+1/16)×λ
なお、接着層7の音響インピーダンスZ2は、例えば、接着層7の全体(母材23、第1粒子25および第2粒子27)の平均的な値とされてよい。または、音響インピーダンスZ2は、接着層7の界面(S1および/またはS2)付近の値とされてよい。音響インピーダンスZ2は、母材23、第1粒子25および第2粒子27の物性値および体積割合等から理論的に導かれてもよいし、測定されてもよい。測定方法は、近接法、反射法および比較法等、種々のものが採用されてよい。
また、接着層7内における波長λは、例えば、接着層7の全体(母材23、第1粒子25および第2粒子27)の平均的な値とされてよい。当該波長は、母材23、第1粒子25および第2粒子27の物性値および体積割合等から理論的に導かれてもよいし、測定されてもよい。例えば、接着層7または接着層7と同じ材料からなる試料を音波が通過する時間と距離とから接着層7内の音速を求め、その音速と振動部9bで発生させた超音波の周波数とから波長が求められてよい。
(センサ素子と実装基体との電気的接続)
センサ素子3と実装基体5との電気的接続は適宜になされてよい。図2に示す例では、下部電極15および上部電極19に接続されている1対の引出電極29と、実装基体5に設けられている1対のパッド31とが1対のボンディングワイヤ33によって接続されている。
これらの構成も適宜なものとされてよい。図示の例では、下部電極15に接続されている引出電極29は、圧電体層17下にて下部電極15から延びている配線パターン(符号省略)と、当該配線パターンと接続されており、圧電体層17を貫通している貫通導体(符号省略)とを有している。上部電極19に接続されている引出電極29は、圧電体層17上にて上部電極19から延びている配線パターンを有している。1対のパッド31は、絶縁基体21の上面に位置している導体層によって構成されている。
(送信部および受信部)
図2では、センサ素子3に電気信号を出力する送信部51およびセンサ1からの電気信号が入力される受信部53も模式的に示されている。送信部51および/または受信部53は、センサ1の一部と捉えられてもよいし、センサ1と接続されている外部の機器と捉えられてもよい。
送信部51および/または受信部53は、例えば、1対のパッド31を介して下部電極15および上部電極19に接続されている。送信部51および/または受信部53は、実装基体5に実装されている電子部品(例えばIC)によって構成されていてもよいし、実装基体5とは別個に設けられている電子部品によって構成されていてもよい。1対のパッド31と送信部51および/または受信部53とを接続する配線は、例えば、その少なくとも一部が絶縁基体21の表面上および/または内部の導体によって構成されている。
送信部51は、便宜的に電源を示す記号により示されているように、例えば、商業電源を適宜な波形の電圧の信号に変換して出力する電源回路を含んで構成されている。そして、送信部51は、発生させたい超音波の波形に相当する波形の電気信号を下部電極15および上部電極19に印加する。なお、電気信号の周波数は、例えば、振動部9bの共振周波数と概ね同等であり、振動部9bは、概ねその共振周波数において振動する。そして、上記の共振周波数付近において音圧が最も高くなる超音波が生成される。
受信部53は、便宜的に増幅器を示す記号により示されているように、例えば、入力された電気信号を増幅して出力するアンプを含んで構成されている。アンプは、例えば、電圧アンプであってもよいし、チャージアンプであってもよい。超音波が振動部9bに入力されると、振動部9bは振動して電気信号を生成する。このとき、振動部9bの振動は、共振周波数付近の周波数を有する超音波の影響を最も受ける。受信部53は、振動部9bにおいて生じた電気信号を増幅して出力する。
なお、特に図示しないが、センサ1またはセンサ1の外部には、送信部51からセンサ素子3への電気信号の送信タイミングと、受信部53によるセンサ素子3からの電気信号の受信タイミングとを、前者が後者の後に到来するように適宜に制御する制御部が設けられていてよい。
(粒度分布の例)
図3(a)は、接着層7における粒度分布の例を示す模式図である。この図において、横軸Dは、接着層7に含まれる粒子の粒径を示しており、紙面右側ほど粒径が大きい。縦軸Fは、粒径の度数を示しており、紙面上方ほど度数が高い。
接着層7の粒度分布においては、例えば、2以上(図示の例では2つ)の極大値が現れる。粒径が大きい極大値は、第1粒子25に対応しており、粒径が小さい極大値は、第2粒子27に対応している。また、2種の粒子に対応する2つの山は、その裾野が互いに重なっていない。このような場合は、例えば、既述のように第1粒子25と第2粒子27とをその径のみから区別可能である。
第1粒子25に対応する極大値の粒径D1は、適宜に設定されてよい。ここで、既述のように、厚さdは、λ/4の整数倍とされてよく、これに対して1/16λのずれがあってもよい。(1/16×λ)/(1/4×λ)は、0.25である。また、第1粒子25のうち粒径が大きいほど、スペーサとして機能しやすい。従って、例えば、第1粒子25の最頻値となる粒径D1が、接着層7の厚さdの0.7倍以上であれば、接着層7の厚さの調整を有効に行うことができる。
図3(b)は、接着層7における粒度分布の他の例を示す模式図であり、図3(a)と同様の図である。
この図においては、第1粒子25の粒度分布を示す山と、第2粒子27の粒度分布を示す山とは、裾野が互いに重なっている。このような場合、例えば、既述のように、所定の粒径を基準として、第1粒子25と第2粒子27とを区別してもよい。また、例えば、第1粒子25と第2粒子27とで材料が異なる場合は、その材料によって両者を区別してもよい。
なお、図3(a)および図3(b)のいずれにおいても、複数の第2粒子27の粒径の平均値(平均粒径)は、複数の第1粒子25の平均粒径よりも小さい。
特に図示しないが、図3(a)および図3(b)の例とは異なり、粒度分布を示す山は、1つまたは3つ以上現れてもよい。この場合も、図3(b)の例と同様に、第1粒子25および第2粒子27を区別可能である。
図3(a)および図3(b)のような粒度分布は、例えば、粒子が母材23に混入される前等においては、従来公知のレーザ回析散乱法によって測定されてよい。母材23の材料および粒子の材料によっては、接着層7の母材23を溶解して粒子を取り出してレーザ回析散乱法によって粒度分布が測定してもよい。その他、例えば、X線マイクロCT装置によって接着層7内(硬化後の母材23内)の粒度分布が測定されてもよい。
(センサの製造方法)
センサの製造方法において、センサ素子3および実装基体5それぞれの製造方法は、公知の種々の製造方法と同様とされてよい。例えば、センサ素子3は、素子基体11となるウェハに対して薄膜形成およびパターニングの工程を繰り返して、メンブレン13、下部電極15、圧電体層17および上部電極19を形成することによって作製される。実装基体5は、公知の回路基板と同様に作製される。
接着層7となる材料の製造方法も、第1粒子25および第2粒子27の粒径を始めとした各種の具体的な設定を除いては、他の用途に利用されている、フィラーを含んだ接着剤についての公知の種々の製造方法と同様とされてよい。また、他の用途の公知のフィラーは、例えば、無機材料または有機材料によって、また、10nm以上1mm以下の種々の径で作製されており、本実施形態の第1粒子25および第2粒子27に適用可能である。
センサ素子3と実装基体5とを接着する工程においては、例えば、まず、センサ素子3の下面および実装基体5の上面の一方に接着層7となる材料を配置する。当該配置は、印刷法またはディスペンサ法など、公知の適宜な手法によってなされてよい。そして、センサ素子3と実装基体5とを対向させ、両者を互いに近接させる方向に加圧する。これにより、接着層7となる材料は、第1粒子25の径と同等の厚さになるまでつぶされる。ひいては、第1粒子25の径と同等の厚さを有する接着層7が形成される。
なお、母材23が熱硬化性樹脂等の加熱処理によって硬化する、または硬化が促進されるものである場合においては、加圧と同時に加熱を行ってもよい。加圧および/または加熱のための冶具および装置等は、公知の種々の加圧および/または加熱のためのものを適用してよい。
以上のとおり、本実施形態では、センサ1は、センサ素子3と、実装基体5と、接着層7とを有している。センサ素子3は、面外振動の共振周波数が超音波の周波数帯域内にある振動面9aを有している。実装基体5は、センサ素子3に対して振動面9aとは反対側に位置している。接着層7は、センサ素子3と実装基体5との間でこれらに密着している。また、接着層7は、母材23と、母材23内に分布している複数の第1粒子25と、を有している。複数の第1粒子25の少なくとも一部は、接着層7の厚さ方向(D3軸方向)の径が接着層7の厚さと同等である。
従って、例えば、接着層7の厚さは、既に述べたように、第1粒子25の径によって規定されている。その結果、例えば、接着層7の厚さを比較的大きくして、界面S1を通過した音波の接着層7における減衰量を大きくすることができる。例えば、接着層7の厚さを圧電体層17の厚さ以上とすることもできる。また、例えば、接着層7の厚さをλ/4の整数倍として反射波同士を打ち消し合わせることができる。これらの作用によって、例えば、実装基体5側からの反射波が検出精度に及ぼす影響を低減できる。そのような接着層7の厚さの規定を第1粒子25によって行うことから、第1粒子25によって接着層7の物性値を調整することとすれば、部材点数の増加が低減される。
また、本実施形態では、接着層7は、母材23内に分布しており、複数の第1粒子25の材料とは異なる材料からなり、複数の第1粒子25よりも平均粒径が小さい複数の第2粒子27をさらに有している。
従って、例えば、2種の粒子によって接着層7の物性値を調整することができる。その結果、例えば、音響インピーダンス等の特定の物性値を1種の粒子によって調整する場合に比較して、当該物性値をより細かく調整することができる。
なお、上記とは逆に、第2粒子27の材料を第1粒子25の材料と同一の材料によって構成した場合においては、例えば、径が相対的に小さい第2粒子27によって、第1粒子25の材料と同等の材料を接着層7の隅々まで均等に分布させることができ、ひいては、接着層7の物性値を接着層7の隅々まで均等にすることができる。
また、本実施形態では、例えば、母材23の材料は樹脂であり、複数の第1粒子25の材料は絶縁材料であり、複数の第2粒子27の材料は金属である。
この場合、例えば、音響インピーダンスが比較的低い樹脂からなる母材23に、音響インピーダンスが比較的高い金属からなる複数の第2粒子27が充填されていることによって、一般に音響インピーダンスが樹脂よりも高い素子基体11と、接着層7との音響インピーダンスの差を緩和できる。一方で、例えば、絶縁材料からなり、径が比較的大きい第1粒子25によって、金属からなる複数の第2粒子27間の電気的接続を接着層7の厚みに亘って分断できることから、渦電流等の発生を抑制することができる。
(第2実施形態)
図4(a)は、第2実施形態に係るセンサ201の構成を示す断面図であり、図1に相当している。
センサ201は、センサ素子203が素子基体11と接着層7との間に中間層41を有している点のみが第1実施形態のセンサ1と相違する。ただし、中間層41の存在を考慮して、素子基体11および/または接着層7の具体的な物性値および/または寸法は適宜に調整されてよい。
中間層41の音響インピーダンス(Z4とする。)は、素子基体11の音響インピーダンス(Z1とする。)と、接着層7の音響インピーダンス(Z2とする。)との間の大きさとされている。すなわち、Z1<Z4<Z2またはZ1>Z4>Z2である。これにより、例えば、素子基体11と接着層7とが直接に密着して構成されている場合に比較して、界面の前後の音響インピーダンスの差を低減することができる。ひいては、反射波を低減することができる。
上記における接着層7の音響インピーダンスZ2は、例えば、第1実施形態と同様に、接着層7の全体の音響インピーダンスの平均値または接着層7の界面付近の音響インピーダンスとされてよく、また、理論値であっても計測値であってもよい。
中間層41の音響インピーダンスZ4は、より具体的には、例えば、Z1とZ2との中間値(Zm=(Z1+Z2)/2)に近い値とされている。例えば、Z1とZ2との差をΔZ(=|Z2−Z1|)としたときに、
Zm−ΔZ/4<Z4<Zm+ΔZ/4
とされてよい。
上記のように、Z1とZ2との間にZ4が位置する関係を満たす、素子基体11、中間層41および接着層7の材料の組み合わせは種々可能である。一例を挙げると、素子基体11の材料はSiであり、中間層41の材料はSiO2であり、接着層7の母材23の材料は、樹脂(例えばエポキシ樹脂)である。ただし、接着層7のZ2は、例えば、第1粒子25および第2粒子27によって母材23の音響インピーダンスよりも高くされている。
中間層41は、例えば、素子基体11の下面の全面に亘っている。また、中間層41の厚さは、適宜に設定されてよく、例えば、接着層7、素子基体11または振動層9よりも薄くてもよいし、同等でもよいし、厚くてもよい。一例を挙げると、中間層41の厚さは、20μm以上500μm以下である。
また、中間層41の厚さは、接着層7と同様に、振動部9bの共振周波数を有する音波の中間層41内における波長に対して1/4の整数倍であってもよい。この1/4の整数倍とすることに関しては、接着層7の厚さの説明を、接着層7を中間層41に置き換え、実装基体5を接着層7に置き換え、中間層41の厚さに適用してよい。
(変形例)
図4(b)は、変形例に係る中間層41の一部を示す断面図である。
この変形例では、中間層41は、複数の気孔43(ボイド、ポア)が形成されている。換言すれば、中間層41は、多孔質体(ポーラス)によって構成されている。
従って、例えば、複数の気孔43の総体積が接着層7の体積に占める割合(気孔率)等の調整によって中間層41の音響インピーダンスを調整することができる。また、例えば、複数の気孔43によって中間層41を通過する超音波を散乱させて、接着層7で反射する反射波がセンサ素子3に及ぼす影響を低減することができる。なお、上記から理解されるように、気孔率は、音響インピーダンスの調整量等に応じて適宜に設定されてよい。
複数の気孔43は、図示の例のように大部分が互いに離れていてもよいし、図示の例とは異なり、大部分が互いにつながっていてもよい。なお、ここでいう大部分は、例えば、複数の気孔43の体積の合計の8割以上である。また、複数の気孔43は、規則的に配列されていてもよいし、不規則に分布していてもよい。複数の気孔43の形状は適宜なものであってよい。図示の例では、気孔43の形状は、概略球形である。
複数の気孔43の径は、例えば、中間層41の厚さよりも小さく、気孔43は、中間層41を厚さ方向に貫通する貫通孔を構成してはいない。ただし、複数の気孔43が互いにつながって、結果として、中間層41の上下を連通する空洞が形成されることはあり得る。ここでいう気孔43の径は、例えば、最大径または気孔43が球形であると仮定したときの直径に相当する径である(以下、同様。)。気孔43の径の具体的な値は、適宜に設定されてよい。一例を挙げると、気孔43の径は、10nm以上100μm以下である。また、複数の気孔43は、径が概ね同等であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
気孔43内は真空であってもよいし、ガスが充填されていてもよい。換言すれば、気孔43内の圧力は、大気圧よりも高くてもよいし、大気圧と同等でもよいし、大気圧よりも低くてもよい(真空であってもよい)。ガスは、例えば、空気または窒素である。
複数の気孔43を有する中間層41においても、その材料は、無機材料でもよいし、有機材料でもよい。気孔を有する無機材料としては、例えば、低誘電率(Low−k)絶縁膜に利用されている多孔質シリカ膜等が公知である。また、気孔を有する有機材料も、発泡性樹脂の名称で知られている。
(応用例)
図5は、センサ1の応用例としての超音波診断装置101の構成を模式的に示すブロック図である。
超音波診断装置101は、例えば、患者に当接されるプローブ103と、プローブ103に接続されている可撓性のケーブル105と、ケーブル105を介してプローブ103に接続されている装置本体107とを備えている。
プローブ103は、例えば、平面状に配列された複数のセンサ素子3と、複数のセンサ素子3に共通に接着された実装基体5とを有している。すなわち、複数のセンサ1によってセンサ109が構成されている。
複数のセンサ素子3は、互いに分離されていてもよいし、少なくとも一部が互いに一体的に形成されていてもよい。例えば、素子基体11および圧電体層17は、複数のセンサ素子3に亘って一体的に形成されていてよい。また、下部電極15および上部電極19の少なくとも一方も、複数のセンサ素子3に亘って一体的に形成されてよい。
複数のセンサ素子3は、互いに同一の電気信号が入力されるものであってもよいし、互いに異なる電気信号(例えば、電子式走査のための、位相が若干ずれた電気信号)が入力されるものであってもよい。後者の場合においては、例えば、下部電極15には複数のセンサ1に共通の電位が付与され、上部電極19に複数のセンサ素子3で別個の電位が付与されてよい。
なお、特に図示しないが、複数のセンサ素子3は、素子基体11となるウェハに対する加工処理によって同時形成されてよい。そして、そのウェハ状の複数のセンサ素子3と、実装基体5とが接着層7によって接着されてよい。
装置本体107は、例えば、ユーザ(例えば医師または技師)の操作を受け付ける入力部111と、入力部111からの信号に基づいて送信部51を制御する制御部113とを有している。なお、送信部51については既に述べたとおりである。また、装置本体107は、既に説明した受信部53からの信号および制御部113からの信号に基づいて画像処理を行う画像処理部115と、画像処理部115からの信号に基づいて画像を表示する表示部117とを備えている。
上記のような構成を備えていることにより、超音波診断装置101は、患者の断層画像を表示部117に表示することができる。なお、送信部51および受信部53の一部(例えば増幅器)は、プローブ103に設けられていてもよい。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
センサ素子は、超音波の送信および/または受信に供される振動面を有する種々の態様のセンサ素子とされてよい。
例えば、センサ素子は、圧電式のもの(pMUT等)ではなく、静電式のもの(cMUT等)であってもよい。
また、例えば、センサ素子は、圧電体層をその厚み方向に挟んでいる1対の電極を有するものに限定されず、圧電体層の一方の主面に1対の電極を有するものであってもよいし、そのような1対の電極を圧電体層の両主面に有しているものであってもよいし、電位が互いに異なる3種以上の電極を有しているものであってもよい。
また、例えば、センサ素子は、互いに分離された複数の領域を含む圧電体層を有していたり、互いに分極方向が異なる複数の領域を含む圧電体層を有していたりしてもよい。実施形態では、センサ素子は、1層の圧電体層を有した。センサ素子は、分極の向きが厚み方向の互いに逆向きとなるように貼り合わされた2層の圧電体層を有し、メンブレン13に相当する部材を有していないものであってもよい。
また、センサ素子は、超音波を送信および/または受信する表面の内側にキャビティを有するものに限定されない。例えば、圧電体層に対して下面側に重なる弾性体層が設けられ、この弾性体層が実装基体に支持される構成であってもよい。
実施形態では、電極層および圧電体層は、メンブレンに対してキャビティとは反対側に重ねられたが、キャビティ側に重ねることも可能である。また、実施形態では、素子基体11の上面に凹部が形成されることによってキャビティ11cが構成された。ただし、素子基体に貫通孔を形成したり、素子基体の下面に凹部を形成したりすることによってキャビティが構成されてもよい。メンブレンは、素子基体と同一材料からなり、素子基体と一体的に形成されていてもよい。電極がメンブレンとして機能してもよい。
実施形態では、振動面9a(振動部9b)は、超音波の送信と超音波の受信とに兼用された。ただし、送信用の振動面9aと、受信用の振動面9aとが設けられていてもよい。
接着層は、第2粒子を有していなくてもよい。また、逆に、第1粒子および第2粒子とは異なる他の粒子を有していてもよい。
なお、第2実施形態からは、第1粒子の存在を問わない、以下の概念を抽出可能である。
(第1概念)
面外振動の共振周波数が超音波の周波数帯域内にある振動面を有しているセンサ素子と、
前記センサ素子に対して前記振動面の反対側に位置している実装基体と、
前記センサ素子と前記実装基体との間でこれらに密着している接着層と、
を有しており、
前記センサ素子は、
前記振動面を構成している振動層と、
凹部を有しており、前記凹部の周囲部分にて前記振動層を前記振動面とは反対側から支持している素子基体と、を有しており、
前記素子基体の前記凹部とは反対側の面と前記接着層との間でこれらに密着しており、前記素子基体の音響インピーダンスと前記接着剤の音響インピーダンスとの間の大きさの音響インピーダンスを有している中間層と、を有している
超音波センサ。
(第2概念)
面外振動の共振周波数が超音波の周波数帯域内にある振動面を有しているセンサ素子と、
前記センサ素子に対して前記振動面の反対側に位置している実装基体と、
前記センサ素子と前記実装基体との間でこれらに密着している接着層と、
を有しており、
前記センサ素子は、
前記振動面を構成している振動層と、
前記振動層と前記接着層との間に位置している多孔質体層と、を有している
超音波センサ。