JP2016022730A - グラファイトとグラファイトの接合体、グラファイトと金属の接合体、グラファイト接着用積層体、およびそれらの製造方法 - Google Patents

グラファイトとグラファイトの接合体、グラファイトと金属の接合体、グラファイト接着用積層体、およびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】グラファイトフィルムのa−b面同士、あるいはグラファイトフィルムのa−b面と金属を有機系接着剤やシリコーン系接着剤を用いないで接合する技術を確立することを目的とし、特にグラファイト自体の優れた物理的な性質(電気伝導度、熱伝導度など)を大きく劣化させること無く、グラファイトを接合し得る技術を確立することを目的とする。
【解決手段】複数枚のグラファイトフィルムのa−b面同士が、ニッケルまたはニッケル合金層を介して接合される。またグラファイトフィルムのa−b面と金属が、ニッケルまたはニッケル合金層を介して接合される。
【選択図】図1

Description

本発明は、グラファイトフィルムの平面(a−b面)同士の接合体、グラファイトフィルムの平面(a−b面)と金属との接合体、これら接合体に用いられるグラファイト接着用積層体及びこれら接合体の製造方法(接合方法)に関する。
グラファイトは優れた耐熱性、耐薬品性、高熱伝導性、高電気伝導性などの性質を有するため、工業材料として重要な位置をしめ、放熱材、電極、耐熱シール材、ガスケット、発熱体等として広く使用されている。
グラファイト結晶の基本的な構造は、六角網目状に結ばれた炭素原子のつくる基底面が規則正しく積み重なった層状構造(層が積み重なった方向をc軸と言い、六角網目状に結ばれた炭素原子のつくる基底面の広がる方向をa−b面方向と言う)である。基底面内の炭素原子は共有結合で強く結ばれ、一方、積み重なった層面間の結合(c軸方向)は比較的弱いVan der Walls力によるものであり、理想的なグラファイト層間距離は0.3354nmである。通常グラファイト層間距離はX線測定によって決定されるが、グラファイトの理想的な構造から乱れるに従って層間距離が大きくなる事が知られている。グラファイトはこの様な構造を有しているので電気伝導度、熱伝導度などの物性はa−b面方向に大きく、c軸方向には小さい。また、層間での剥離が起こり易いと言う特徴がある。
グラファイト材料を実用化する場合、a−b面は化学的に極めて安定であるため2枚のグラファイトフィルムをそれらのa−b面で接合する事、あるいはグラファイトフィルムのa−b面と金属を接合する事は非常に難しいと言う問題点がある。無論、エポキシなどの有機系接着剤やシリコーン系接着剤を用いて接着する事は可能であるが、この様な接着剤を用いると、グラファイトの特徴である耐熱性、耐薬品性、高熱伝導性、高電気伝導性などの性質が失われる事になる。この様なグラファイトa−b面同士、あるいはグラファイトa−b面と金属を、グラファイト自体の電気伝導度特性や熱伝導度特性を失う事無く接合・接着したいと言う要求はグラファイトがフィルム状である場合には特に大きい。
フィルム面方向と並行にグラファイトa−b面が発達しているフィルム状の高品質グラファイトを得る方法として特殊な芳香族高分子を直接熱処理、炭素化・グラファイト化する方法(以下、高分子焼成法と略す)が開発されている(例えば、特許文献1〜3)。この様な方法で得られる高熱伝導性グラファイトフィルムは熱伝導(熱拡散)シートとして広く使用されている(例えば、特許文献1〜4)。熱拡散シートは、CPUやLEDなどの発熱源の熱を広範囲に広げることで冷却し、その放熱効率を向上する事を目的に使用されるものである。グラファイトフィルムがこの様な目的に用いられるのは、そのa−b面方向の熱伝導度が大きく、携帯電話などの小型電子機器において熱問題が発生した場合の熱対策材料として最適であるためである。この様な熱拡散フィルムにおいて、熱拡散能力は熱拡散率のみでなくフィルムの厚さにも比例するために、より高い熱拡散能力を発現させるには、より厚いフィルムが望まれている。
高分子焼成法に使用される芳香族高分子としては、ポリオキサジアゾール、芳香族ポリイミド類、ポリフェニレンビニレンなどがあり、中でも芳香族ポリイミドは工業的に最も良く利用される原料高分子である(特許文献1、2、非特許文献1、2)。しかしながら、現在高分子焼成法で作製できるフィルムの厚さの限界は100μmであると言われている。すなわち、高分子焼成法で作製した100μm以上の厚さのグラファイトフィルムの熱伝導度特性や電気伝導度特性は100μm未満の厚さのグラファイトフィルムより極端に悪くなり、フィルム自体の機械的な特性も劣ると言う問題があった。
これは一般に、高分子におけるグラファイト化反応は高分子フィルムの表面から発達し、その結果、100μm以上の厚さのフィルムでは、その表面は比較的良好なグラファイト構造であっても、その内部はグラファイト構造の未発達の部分が形成されるためである。また、100μm以上の厚さのフィルムでは、熱処理の途中でグラファイト構造が未発達であるフィルム内部から発生するガスにより、形成された表面のグラファイト構造が破壊されるため、機械的特性の劣るフィルムしか製造できない。すなわち、100μm以上の厚さを有し、フィルム全体にグラファイト構造の発達した高品質グラファイトを作製する事は極めて困難であった。
一方、100μm未満の薄いグラファイトであれば、電気伝導度や熱伝導度の観点からは高性能なものが得られ、熱拡散フィルムとして広く利用されている。しかしながら、熱の移動量は膜厚に比例することから、薄いグラファイトフィルムの場合、熱の移動量(運ばれる熱量)は少なくなってしまうという問題があった。
グラファイト熱拡散フィルムにおいては通常接着性の付与、機械的強度の改良、あるいは絶縁性付与のために各種の高分子フィルムと複合化したり(特許文献5〜7)、有機接着剤を用いて金属と複合化したりされている(特許文献4)。しかし、この様な手法は前記のようにグラファイト本来の耐熱性や熱伝導率を犠牲にして成されているものである。電気伝導体などの熱拡散用途以外の用途にとっても、絶縁性である有機接着剤やシリコーン接着剤をもちいてグラファイト複合材を作製する場合に、同様の問題がある事は言うまでもない。
グラファイトと金属の接合体に関する技術としては、熱源の熱を熱伝導体素子の厚み方向に効率的に伝導させる事を目的として、グラファイトの端面(a−c面、またはc−b面)に金属層を設けた異方性熱伝導素子、およびその製造法に関するものがある(特許文献8,9)。しかし、この技術は比較的接合し易いグラファイト端面と金属を接合させるものであって、その目的は異方性熱伝導素子の作製である。また、グラファイトの表面にモリブデンやタングステンをメタライズした部材が報告されているが(特許文献10)、この先行文献は目的も手法も本発明とは異なるものである。後述するように、今般、本発明者らが明らかにしたことであるが、モリブデンやタングステンなどの炭化物形成元素は、グラファイトの接合に不適切である。
一方、複数枚のグラファイトを接着材を用いずに接着・積層するために、2500℃以上の温度領域で、100kgf以上の圧力を印加して高温プレスする方法が報告されている(特許文献11、非特許文献1)。しかしながら、この方法は極めて高温を必要とする特殊な方法であって、工業的にも、コストの面からも大きな問題を抱えている。
特許第4512802号公報 特許第4657649号公報 特開2010−168281号公報 特開2007−273943号公報 特許第5089233号公報 特許第5329135号公報 特開2010−234556号公報 特開2011−023670号公報 特開2012−238733号公報 特開平3−54182号公報 特許第4864293号公報
M. Murakami, N. Nishiki,K. Nakamura, J.Ehara, H. Okada, T. Kouzaki,K. Watanabe,T. Hoshi, and S. Yoshimura, Carbon, vol.30, 2, 255(1992) M.Inagaki, T.Takechi, Y.Hishiyama, and A. Oberin, Chem. Phys. Carbon, 26, 245(1999)
本発明は以上の様な問題点を解決するためになされたものであって、グラファイトフィルムのa−b面同士、あるいはグラファイトフィルムのa−b面と金属を有機系接着剤やシリコーン系接着剤を用いないで接合する技術を確立することを目的とする。特に本発明は、グラファイト自体の優れた物理的な性質(電気伝導度、熱伝導度など)を大きく劣化させること無く、グラファイトを接合し得る技術を確立することを目的とする。なお、グラファイトのa−b面間は層間剥離し易いため、そのa−b面間同士の接合やa−b面と金属との接合に求められる接着強度は、a−b面間の層間剥離強度よりも高くなることである。すなわち、グラファイト同士を接着させた場合、グラファイトの層間剥離が接合界面で起こらなければ必要十分な接着が成されていると判断できる。また、グラファイトと金属の接着を行う場合には接合界面でグラファイトが剥がれず、グラファイト内部のa−b面間で層間剥離が起これば十分な接着力が発現していると考えられる。
以上をまとめると、本発明の課題は、グラファイトフィルムのa−b面同士、あるいはグラファイトフィルムのа−b面と金属を、グラファイトの物性を損なう事無く、グラファイトの層間剥離強度以上の強度で接合する事である。
我々は上記問題を解決するべく検討を重ね、グラファイトフィルムのa−b面同士、あるいはグラファイトフィルムのa−b面と金属とを接合するには、炭素を溶解する又は炭素に溶解する所定の金属接着用(接合用)金属を用いるのがよい事、そして前記接合面にこの所定の接着用(接合用)金属を介入させ、最適温度で熱圧着する事により、グラファイトの物性を損なう事無く、層間剥離強度以上の強度を持つ接着ができる事を発見して本発明を成すに至った。なお前記接着用(接合用)金属は、ニッケルまたはニッケル合金であり、以下に、ニッケルまたはニッケル合金に至った経緯について説明する。
「炭素を溶解する金属又は炭素に溶解する金属」について説明するために、まずグラファイト(炭素)と金属の反応について説明する。グラファイトと金属の反応は大きく4つのケースに分類できる。第一のケースはほとんど反応しない場合であって、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)などの金属がこの範疇に分類される。第二のケースはグラファイトと層間化合物を形成する場合であって、セシウム(Cs)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)などの金属がこの範疇に分類される。第三はグラファイトと金属炭化物を形成する場合であって、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)などがこの範疇に分類される。第四は炭素を溶解(固溶)する、または炭素に溶解するケースであって、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、鉄(Fe)がこの範疇に分類される。鉄はその温度によって溶解と金属炭化物形成の二つの反応を起こす。
ちなみに、第三のケースである金属炭化物を作る場合、形成される金属炭化物とその形成温度は以下の通りである。アルミニウム(Al43:600〜800℃)、ホウ素(BC4:1400〜1600℃)、コバルト(CoC:200〜220℃)、鉄(Fe3C:700〜800℃)、モリブデン(Mo2C:600〜700℃)、シリコン(SiC:1000〜1100℃)、タンタル(TaC:1800〜2200℃)、タングステン(W2C:1000〜1400℃)である。また、第四の炭素−金属間の溶解性を利用するケースでは、ニッケルの場合は700〜1300℃の範囲でNiの中に炭素が溶解(固溶)し、ビスマスの場合には1420〜1560℃の範囲でビスマスが炭素の中に浸透し、鉄の場合には500〜700℃の範囲で鉄の中に炭素が溶解(固溶)する。
本発明者らは、この様な金属とグラファイトの反応性に着目し、金属を用いてグラファイト同士の接合、あるいはグラファイトと金属の接合を試みた。その結果、第四のケースに分類されるニッケルまたはニッケル合金が優れた接着能力を持つ事を発見して本発明を成すに至った。具体的にはニッケル金属層を蒸着、スパッタリングなどの方法でグラファイトa−b面上に形成し、不活性ガス中あるいは真空中で、加圧・加熱処理する事によってグラファイトa−b面とグラファイトa−b面同士を接合、あるいはグラファイトa−b面と金属を接合すればよいことを発見した。無論、グラファイトと金属を接合する場合、ニッケルまたはニッケル合金層を金属上に形成してから接合を行っても良い。
原理的には、本発明の方法はニッケル、ビスマス、鉄のいずれか、または少なくともこれらの金属元素を含む合金であれば良いと考えられる。しかしながら、ニッケルやニッケル合金と比較して、ビスマスの薄膜を形成するためには極めて特殊な方法が必要であるので、実用的な観点から本発明の接合層として好ましくない。また、鉄は上記の様に、溶解するのみでなく炭化鉄(Fe3C)を形成し、この炭化鉄はグラファイト層を破壊してグラファイトの電気伝導度や熱伝導度を劣化させる要因となる事が分かった。したがって鉄を用いて接合する事は本発明の目的には好ましくない。
これらに対してニッケルの場合には、700℃〜1300℃の範囲でニッケル中に炭素が溶解(固溶)し、これを700℃未満の温度に下げた時に、溶解した炭素はニッケル層表面に析出し、析出した炭素はニッケルの触媒作用によって、極めて高品質なグラファイトとなる。また、すべての溶解炭素(固溶炭素)が析出するわけではなく、一部はニッケル中に残存する。したがって、ニッケルを用いた接合によってグラファイトの熱的特性、あるいは電気的特性が失われる事はない。ニッケルから析出して形成されたグラファイト層が強固にニッケル層と接着している事、そしてニッケル層中に一部炭素原子が残存する事などのためにグラファイトa−b面とニッケルとの間に接合力が出現すると考えている。
この様なニッケルとグラファイトa−b面との接合機構を図1に示した。図1(a)はグラファイト1aとニッケル2を接触させた状態を示す概略断面図であり、例えば、常温〜700℃未満の温度域がこの状態に該当する。圧力を印加した場合であってもグラファイト界面とニッケル表面の間隔4はグラファイト層間距離の0.3345nmよりも広くなっており結合力は発生しない。図1(b)はニッケル・グラファイト積層体を加圧加熱した状態を示す概略断面図であり、例えば、700℃〜1300℃に加熱した時にこの状態になる。この状態では、グラファイト表面の炭素の一部がニッケル金属中に溶解し、固溶炭素3aになる。図1(c)は加圧加熱の後、温度が低下した状態を示す概略断面図であり、例えば、700℃未満に温度が低下した時にこの状態になる。この状態では、ニッケル金属中に溶解していた炭素3aが再びニッケル表面に移動し、析出する。図1(d)はさらに温度が低下した場合であって、ニッケル表面に移動して析出した炭素3bがニッケルの触媒作用によって結晶化し、グラファイト構造のグラファイト1bとなる。この時グラファイト構造の形成反応はニッケル表面で起こり、形成されたグラファイト層はニッケル金属表面と強く結合する。ニッケルの触媒作用によって形成される炭素は良質なグラファイトであるために、この接合反応によってグラファイトの品質が低下する事はない。
第三のケースである金属炭化物を作るアルミニウム、ホウ素、コバルト、モリブデン、シリコン、タンタル、タングステンなどの金属も、それぞれの金属炭化物を形成する温度付近で加圧プレス処理をする事で、グラファイトa−b面同士の接合を行う事ができ、強い接着強度を実現する事が出来る。しかしながら、これらの金属での接合はグラファイトと金属で金属炭化物を形成する事によるものであるので、基本的に接合に際してグラファイト層が破壊される事になる。そのためグラファイトフィルム面同士を接合する場合、グラファイト層の破壊による電気伝導度や熱伝導度の低下を避ける事ができない。これらの事情は、先の鉄における記述と同じである。
以上の通り、前記接着用(接合用)金属としてニッケルまたはニッケル合金が特に優れており、これらを用いることで、グラファイトの物性を損なう事無く、層間剥離強度以上の強度を持つ接着が可能になった。
すなわち本発明は以下の通りである。
(1)複数枚のグラファイトフィルムのa−b面同士が、ニッケルまたはニッケル合金層を介して接合されている事を特徴とするグラファイト接合体。
(2)グラファイトフィルムのa−b面と金属が、ニッケルまたはニッケル合金層を介して接合されている事を特徴とするグラファイトと金属の接合体。
(3)前記グラファイトフィルムが、芳香族高分子フィルムを炭素化し、不活性ガス中で2400℃以上の温度で処理することによって作製されたものである(1)または(2)に記載の接合体。
(4)前記芳香族高分子が芳香族ポリイミドである(3)に記載の接合体。
(5)複数枚のグラファイトフィルムのa−b面同士を、ニッケルまたはニッケル合金層を用いて接着する事を特徴とするグラファイトの接合方法。
(6)グラファイトフィルムのa−b面と金属を、ニッケルまたはニッケル合金層を用いて接着する事を特徴とするグラファイトと金属の接合方法。
(7)ニッケルまたはニッケル合金層の厚さが0.5nm〜1μmの範囲である(5)または(6)に記載の接合方法。
(8)複数枚のグラファイトフィルムのa−b面同士の間に、またはグラファイトフィルムのa−b面と金属の間に、ニッケルまたはニッケル合金層を介入することによって得られる積層体を、不活性ガス中または真空中、700℃以上、1300℃以下の温度範囲で加圧する(5)〜(7)のいずれかに記載の接合方法。
(9)前記加圧の条件が0.02〜9.8MPaの範囲で加圧することを特徴とする(8)に記載の接合方法。
(10)前記グラファイトフィルムが、芳香族高分子フィルムを炭素化し、不活性ガス中で2400℃以上の温度で処理することによって作製されたものである(5)〜(9)のいずれかに記載の接合方法。
(11)前記芳香族高分子が芳香族ポリイミドである(10)に記載の接合方法。
(12)グラファイトフィルム又は金属の少なくとも片面に、ニッケルまたはニッケル合金層が積層されているグラファイト接着用積層体。
なお本明細書において、用語「シート」、「フィルム」、「膜」は厚みを特に限定するものでなく、柔軟性を有する平面体の意味で使用し、好ましくは平面方向の最長長さが、厚さの500倍以上であるものを指す。
本発明によれば、ニッケルまたはニッケル合金を接着層として用いているため、グラファイト本来の高耐熱性、高電気伝導性、高熱伝導性などの性質を失う事無く、グラファイトa−b面同士、あるいは、グラファイトa−b面と金属とを、グラファイトの層間剥離強度以上の強さで接合できる。
図1はニッケル金属とグラファイトの反応と接着の機構を示す概略断面図である。図1(a)はニッケル金属とグラファイトを接触させた状態を示し、図1(b)は加圧加熱によってグラファイトを構成する炭素がニッケル中に溶解する状態を示し、図1(c)は溶解した炭素が冷却過程でニッケル表面に析出する状態を示し、図1(d)は析出した炭素が再結晶してグラファイト構造を形成する状態を示す。
以下に本発明の詳細について述べるが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
<グラファイト>
また本発明では、グラファイトとはグラファイト層間距離が0.3354〜3.6nmの範囲にあるものであると定義される。また、電気伝導度の値はグラファイトの品質を判定する簡便な指標となるので、本発明におけるグラファイトとは、グラファイトa−b面方向の電気伝導度が1000S/cm以上のものであるとも定義される。さらに、グラファイト構造体がその結晶構造の異方性を反映している事から、電気伝導度の異方性(a−b面方向とc軸方向の比)が100倍以上異なるものもグラファイトであると定義される。本発明では、これら3つの定義、すなわち、(1)層間距離、(2)a−b面方向の電気伝導度、(3)伝導度の異方性の内、少なくとも何れか一つ、好ましくは少なくとも何れか二つ、より好ましくは三つを満足する炭素材料がグラファイトであると定義される。
本発明に用いられるグラファイトは、前記定義に該当する限り特に制限はない。本発明の目的の一つが、本来接着する事が極めて困難なグラファイトa−b面同士、あるいはグラファイトa−b面と金属を接着・接合させる事にあるので、グラファイトa−b面がグラファイトフィルム面と平行になる様に発達したグラファイトフィルム(グラファイト膜)は本発明のグラファイトとして特に好ましい。
この様なグラファイトフィルムとしては高分子フィルムから得られるグラファイトフィルム、膨張グラファイトから得られるグラファイトフィルム、メソフェーズピッチから得られるグラファイト、炭化水素ガスから得られる高配向性グラファイトなどを例示する事が出来る。中でも高分子から得られるグラファイトフィルムは本発明に用いられるグラファイトとして特に好ましい。その理由は高分子から得られるグラファイトはフィルム平面方向にa−b面が良く発達した高品質フィルムになるためであり、また100μm以上の厚さのフィルムを高品質で得ることは極めて困難であるためである。厚さ100μm未満(例えば40μm)の高品質フィルムを作製し、それを本発明の接合方法で複数毎(例えば3枚)接合すれば、品質を劣化させることなく厚さ100μm以上(例えば120μm)の高品質グラファイトが得られる。このように本発明によれば、従来困難であった100μm以上の厚さの高品質グラファイトフィルムを得るという課題を解決できる。
<高分子から作製されるグラファイト>
本発明のグラファイトとして好ましく用いられる、高分子から作製されるグラファイトフィルムについて述べる。このグラファイトフィルムの作製に好ましく用いられる高分子原料は芳香族高分子である。芳香族高分子としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらのフィルムは公知の製造方法で製造すればよい。
本発明の目的に特に好ましい芳香族高分子として、芳香族ポリイミドを例示する事ができる。芳香族ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、ポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤や、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用い、イミド転化するケミカルキュア法があり、そのいずれによる芳香族ポリイミドであっても用いることができる。好ましい芳香族ポリイミドは、ケミカルキュア法によるものである。
芳香族高分子フィルムの厚さは、例えば150μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下であり、例えば1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上である。この様な芳香族ポリイミドのフィルム(膜)を作製するには、エンドレスベルト、ドラム、金属フィルムなどの基板上へのワイヤバーによる膜作製法、スピンコート法による膜作製法などを好ましく用いる事が出来る。
芳香族高分子フィルムをグラファイト化するには、まず芳香族高分子フィルムを不活性ガス中で炭素化する。不活性ガスは、窒素、アルゴンあるいはこれらの混合ガスが好ましく用いられる。炭素化反応は通常800℃〜1400℃程度の温度で行う。炭素化の段階では出発高分子フィルムの配向性が失われない様に、フィルムの破壊が起きない程度の面方向の圧力を加える事が有効である。
前記炭素化したフィルムをグラファイト化することでグラファイトフィルムが得られる。このグラファイト化は、炭素化したフィルムを超高温炉内にセットして行われ、より具体的にはCIP材やグラッシーカーボン基板に挟んだ炭素化フィルムを炉内にセットして行う事が好ましい。グラファイト化は通常2400℃以上の高温で行う事が好ましく、2600℃以上、あるいは2800℃以上の温度でグラファイト化する事がより好ましい。この様な高温を作り出すには、通常グラファイトヒーターに直接電流を流し、そのジュ−ル熱を利用する。
グラファイト化は不活性ガス中で行なうが、不活性ガスとしてはアルゴンや窒素が用いられ、中でもアルゴンは最も適当であり、アルゴンに少量のヘリウムを加えても良い。またグラファイト化は、加圧雰囲気でおこなうことが好ましく、その圧力(ゲージ圧)の下限は、例えば、0.01MPa(0.1kg/cm2)以上、好ましくは0.03MPa(0.3kg/cm2)以上であり、より好ましくは0.05MPa(0.5kg/cm2)以上である。また圧力(ゲージ圧)の上限は、例えば、0.3MPa(3kg/cm2)以下、好ましくは0.2MPa(2kg/cm2)以下、より好ましくは0.15MPa(1.5kg/cm2)以下である。
芳香族ポリイミドからの炭素化フィルムを用いた場合、最終的に得られるグラファイトフィルムの厚さは、一般に出発高分子フィルムの90〜30%の範囲となる。
グラファイトフィルムの厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは4μm以上、より好ましくは6μm以上である。またその上限は、例えば、100μm未満、好ましくは80μm以下、より好ましくは65μm以下である。
グラファイトフィルムの面方向電気伝導度は、例えば、10000S/cm以上、好ましくは15000S/cm以上、より好ましくは17000S/cm以上である。またその上限は、例えば、20000S/cm以下、または18000S/cm以下であってもよい。
またグラファイトフィルムの面方向熱伝導度は、例えば、1000W/mK以上、好ましくは1500W/mK以上、より好ましくは1800W/mK以上である。またその上限は、例えば、1950W/mK以下、または1900W/mK以下であってもよい。
<接合対象金属>
本発明では、前記グラファイトフィルムのa−b面同士を接合するか、前記グラファイトフィルムのa−b面と金属とを接合する。接合対象となる金属は特に限定されず、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)などが挙げられる。本発明によれば、通常、接合が困難な金属をグラファイトと接合できる。特にCuはグラファイトと反応しない金属であり、通常の方法では、直接接合する事が出来ない。しかし、接着用金属層を用いる本発明の接合方法によれば、グラファイトとCuを強固に接合できる。
また接合対象金属の形状は特に限定されず、立体的形状、板状、フィルム状のいずれであってもよい。
<グラファイト接着用(接合用)金属>
本発明では、グラファイト接着用(接合用)金属として、金属ニッケル(純ニッケル)を用いるのが好ましく、ニッケル合金を使用することも可能である。金属ニッケルを用いると、グラファイトからの炭素を高温で固溶でき、ついで冷却時にニッケル表面に固溶炭素を析出でき、最後に自身の触媒作用によって析出炭素をグラファイト化できるため、有機系接着剤やシリコーン系接着剤によって接合を行う場合と異なり、グラファイトの物性を損なうことなく、グラファイトを接合でき、簡便に厚いグラファイトやグラファイト金属接合体を作製でき、大量の熱拡散が可能な高性能の熱拡散フィルムを製造できる。またニッケル合金も同様の作用を有し、有用である。
ニッケル合金としては、例えば、Ni−Fe系合金、Ni−Cu系合金、Ni−Al系合金、Ni−Co系合金、Ni−Cr系合金、Ni−Mo系合金、Ni−Ti系合金、Ni−Nb系合金などが本発明の本目的に好ましく用いられ、前記合金元素(Fe、Cu、Al、Co、Cr、Mo、Ti、Nb)を2種以上含むNi合金も同様に好ましく用いられる。Ni−Fe系合金は通称パーマロイやアンバーなどと呼ばれ、Ni−Cu系合金、Ni−Cr系、Ni−Mo系などの合金は、それぞれ、通称モネル、インコネル、ハステロイとして知られている。純Niは、中性およびアルカリ性環境において良好な耐食性を示すが、Cr、Mo、Cuなどが目的に応じて添加された各種Ni基合金も、それぞれの腐食環境下で良好な耐食性を示す。Nb、Ti、Alなどの元素を追加して、さらにクリープ強度、高温強度を高めたニッケル合金も本発明の接着層として好ましい。なお、本発明の目的からニッケル合金におけるニッケル含有量は40質量%以上である事が好ましく、50質量%以上である事はより好ましく、60質量%以上である事は最も好ましい。この様なニッケル合金の場合は、金属炭化物を形成する場合と炭素を溶解する場合の中間的な接合機構であると考えられるが、金属炭化物を形成する場合に比べてグラファイト自体の電気物性、熱物性が損なわれる程度は著しく小さくなる。したがってニッケル合金は本発明の接着層として好ましい。
<グラファイト接着用積層体と最終積層体>
本発明では、前記グラファイトフィルム、金属(接合対象金属)からなる接合対象の間に接着用金属を介入して積層体(以下、最終積層体と言うことがある)を形成し、この最終積層体を加圧・加熱する事によって接合体を製造する。具体的には、複数枚のグラファイトフィルムのa−b面同士の間に接着用金属層を介入させたもの、またはグラファイトフィルムのa−b面と金属の間に接着用金属層を介入させたものなどが最終積層体として使用できる。
なお前記最終積層体を製造するに当たっては、金属又はグラファイトフィルムのいずれかの表面に前記接着用金属(ニッケル、ニッケル合金など)の層を積層しておいたもの(グラファイト接着用積層体)を予め製造しておき、その接着用金属層面に残りの接合対象を接触させて最終積層体にするのが、接合を簡便に実施する上で推奨される。具体的には、金属と接着用金属層の積層体を形成しておいた場合には、接着用金属側にグラファイトフィルムを積層することで、最終積層体を形成でき、これを加圧・加熱することでグラファイトフィルムと金属とを接着(接合)できる。またグラファイトフィルムと接着用金属層の積層体を形成しておいた場合には、接着用金属層側に別のグラファイトフィルムをさらに積層して最終積層体を形成でき、これを加圧・加熱することによってグラファイトフィルム同士を接着(接合)でき、或いは前記接着用金属層側に接着対象となる金属を接触することによっても最終積層体を形成することができ、これを加圧・加熱することでグラファイトフィルムと金属とを接着(接合)できる。さらに、グラファイトフィルムと接着用金属層の積層体を、その向きをそろえて複数枚重ね合わせることでも、接着体(接合体)を形成できる。なお必要に応じて、グラファイトフィルムの両面或いは金属の複数面に接着用金属層を積層してもよい。
グラファイトフィルム又は金属の表面に接着用金属(ニッケル、ニッケル合金など)の層を形成する方法は特に限定されず、公知の金属膜形成法、例えば、加熱蒸着法、エレクトロンビーム法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、溶射法などの物理的方法;電解メッキ、無電解メッキなどのメッキ法のいずれであってもよく、各金属膜に最も適した形成方法を用いればよい。
一方、前記最終積層体を形成可能である限り、必ずしも接着用金属層を予め金属又はグラファイトフィルムの表面に積層しておく必要はない。例えば、接着用金属層が単独で存在可能な場合、グラファイトフィルム同士の間に単独の接着用金属層を介入して最終積層体を形成してもよく、金属とグラファイトフィルムの間に単独の接着用金属層を介入して最終積層体を形成してもよい。こういった単独の接着用金属層としては、ニッケル箔膜、ニッケル合金箔膜などが挙げられる。
グラファイト本来の性質を可能な限り失わないで接合するためには、前記接着用金属層の厚さは薄い方が好ましい。極めて薄くてもグラファイト層間剥離強度以上の、十分な接着強度を発揮できる。好ましい接着金属層の薄さの下限は0.5nmである。この接着用金属層は接着面全体を覆う事が好ましいが、必ずしも表面全体を覆っていなくてもグラファイト層間剥離強度以上の接着強度を実現する事ができる。しかしながら、場合によっては圧力印加時間が長すぎると接着用金属層の金属がグラファイト中に拡散してしまい、接着力が発現しない事がある。そのため、接着用金属層が0.5nm未満の厚さである場合、加熱圧着工程での温度制御、および圧力印加時間の制御が難しくなると言う問題点がある。
一方、接着用金属層の厚さの上限は特に制限はないが、1μm超の厚さの場合には、接合体の電気物性や熱物性が接着用金属層(ニッケル層、またはニッケル合金層など)の物性も反映する事になるので好ましくない。すなわち、本発明において、接着用金属層の好ましい厚さの下限は、0.5nm以上、より好ましくは1nm以上、最も好ましくは2nm以上であり、前記厚さの好ましい上限は、1μm以下、より好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下である。
最終積層体の好ましい製造例には、例えば、2枚のグラファイトフィルム同士を接合する場合には、一方のグラファイトフィルムの表面の少なくとも片面に接着用金属層を形成し、a−b面同士がこの接着用金属層を介して互いに接触するように他方のグラファイトフィルムを積層して最終積層体にする例が含まれる。また、金属とグラファイトを接合する場合には、例えば、グラファイトフィルムのa−b面に接着用金属を積層し、この接着用金属層と接着対象金属とを接触させたものを最終積層体にする例が含まれる。本発明によれば、銅の様にグラファイトと反応しない金属と、グラファイトとを接合することも可能であり、こういった接合を行う場合には、例えば、銅箔上に接着用金属層(特にニッケル層)を真空蒸着、スパッタリングなどの方法で形成し、この接着用金属層にグラファイトフィルムを積層することで最終積層体とし、これを加圧・加熱すればよい。
<加圧・加熱工程>
以上のようにして得られる最終積層体は、炉内部にセットし加熱しながら加圧することによって接合体となる。この様な加圧・加熱処理をすると、接合面におけるグラファイト層の内の数層は接着用金属と互いに溶融した状態となり、層構造は失われる。しかし、互いに溶融した状態となるのはグラファイトの表面1〜3層程度に限られ、さらに接合の後に温度が低下するに従いニッケル層からグラファイト構造をもった炭素が析出するので、本発明の方法によってグラファイトの電気的性質や熱的性質が失われる事はない。そして本発明の方法によれば、接合面の接着強度は、グラファイトの層間強度よりも高くなる。
加熱温度は、炭素が接着用金属に溶解可能な温度以上であり、例えば(特に接着用金属がニッケルの場合には)、700℃以上、好ましくは750℃以上、さらに好ましくは800℃以上である。加熱温度が700℃未満であると、グラファイトフィルムのa−b面同士の接着が出来ない虞がある。加熱温度の上限は、接着用金属がグラファイトに拡散して消失しない範囲で適宜設定でき、例えば、1300℃以下、好ましくは1200℃以下、さらに好ましくは1100℃以下である。なお金属と接合する場合、加熱温度は金属の融点を超えない必要がある。例えば銅と接合する場合、銅の融点が1084℃であるので、加熱温度は1000℃以下にする事が望ましい。
加圧圧力には特に制限はないが、圧力が小さすぎると、面全体での接合が難しくなって好ましくない。従って加圧圧力は0.02MPa(0.2kg/cm2)以上である事が好ましく、より好ましくは0.05MPa(0.5kg/cm2)以上、さらに好ましくは0.1MPa(1kg/cm2)以上である。一方、圧力の上限には特に制限されず、加圧冶具の破損しない範囲で適宜選択でき、例えば、9.8MPa(100kg/cm2)以下、好ましくは4.9MPa(50kg/cm2)以下、より好ましくは1MPa(10kg/cm2)以下である。
加圧圧着の時間は温度と圧力に応じて設定でき、最適な温度と圧力を用いれば圧着時間は極めて短時間でよい。例えば、加熱温度が800℃前後(例えば、700〜900℃程度)である場合には1時間前後(例えば、5分〜2時間程度)が好ましく、1000℃前後(例えば、900〜1200℃程度)である場合には1分前後(例えば、10秒〜20分程度)が好ましく、1300℃程度(例えば、1200〜1300℃程度)の場合には1分以内の加圧時間で十分な接着力を発現させる事が出来る。加圧圧着時間が長すぎると金属接着層がグラファイトの中に完全に拡散してしまい、接着力が失われてしまうので好ましくない。例えば、ニッケルの場合、上記温度範囲での加圧時間は10秒〜2時間程度で十分である。
前記加圧加熱は、不活性ガス中または真空中のいずれで行ってもよい。不活性ガスは、例えば、芳香族高分子フィルムをグラファイト化に用いる際に例示した不活性ガスと同様の範囲から選択できる。
<接合体>
以上のようにして、グラファイト同士の接合体、またはグラファイトと金属の接合体が得られる。なおグラファイト同士が接着用金属層で接合された接合体のグラファイト面に、接着用金属層を介して金属が接合されたものも本発明の接合体に含まれる。本発明において、接合体(または積層体)は、接着用樹脂層を用いず、接着用金属層のみを用いてグラファイト同士またはグラファイトと金属を接合したものであることが好ましく、より好ましくは接着用樹脂層を用いず、ニッケル層またはニッケル合金層のみを用いてグラファイト同士またはグラファイトと金属を接合したものである。グラファイト同士を接合した場合、接合体の厚さは特に限定されないが、例えば、100μm以上、好ましくは200μm以上、より好ましくは500μm以上である。高分子焼成法で作製したグラファイトフィルムでは、厚さが100μm以上になると熱伝導性や電気伝導性が大きく劣化したが、本発明の接合体によれば、厚さ100μm以上でも、優れた熱伝導性や電気伝導性を示す。接合体の厚さの上限は特に限定されないが、例えば、5mm以下でもよく、3mm以下、または1mm以下でもよい。
接合体の面方向電気伝導度は、例えば、10000S/cm以上、好ましくは15000S/cm以上、より好ましくは17000S/cm以上である。またその上限は、例えば、20000S/cm以下、または18000S/cm以下であってもよい。
また接合体の面方向熱伝導度は、例えば、1000W/mK以上、好ましくは1500W/mK以上、より好ましくは1800W/mK以上である。またその上限は、例えば、1950W/mK以下、または1900W/mK以下であってもよい。
以下実施例を示し、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明はこれら実施例によって限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能である。
<<物性評価方法>>
<高分子フィルム厚さ・グラファイトフィルム厚さ>
原料である高分子フィルム、グラファイトフィルムの厚さは、プラス、マイナス5〜10%程度の誤差がある。そのため得られたフィルムの10点平均の厚さを本発明における試料の厚さとした。
<金属層厚さ>
金属層の厚さは水晶振動子の蒸着材料付着による振動数の変化より決定した。
<熱伝導度>
グラファイトフィルムの熱拡散率は、周期加熱法による熱拡散率測定装置(アルバック理工株式会社「LaserPit」装置)を用いて、20℃、真空下(10-2Pa程度)、10Hzの周波数を用いて測定した。これはレーザー加熱の点から一定距離だけ離れた点に熱電対を取り付け、その温度変化を測定する方法である。ここで熱伝導率(W/mK)は、熱拡散率(m2/s)と密度(kg/m3)と比熱(798kJ/(kg・K))を掛け合わせることによって算出した。
<電気伝導度>
グラファイトフィルムの電気伝導度の測定はファン・デル・ポー法によって行った。この方法は薄膜状の試料の電気伝導度を測定するのに最も適した方法である。この測定法の詳細は(第四版)実験化学講座9 電気・磁気(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行(平成3年6月5日発行))のP170に記載されている。この手法の特徴は、任意の形状の薄膜試料端部の任意の4点に電極をとり測定を行うことが出来る事であり、試料の厚さが均一であれば正確な測定が行える点である。本発明においては正方形に切断した試料を用い、それぞれの4つの角(稜)に銀ペースト電極を取り付けて行った。測定は(株)東洋テクニカ製、比抵抗/DC&ACホール測定システム、ResiTest 8300を用いて行った。
<製造例1A〜1D:グラファイト>
(株)カネカより厚みの異なる4種類のポリイミドフィルム(商品名AH;厚さ12.5μm、25μm、50μm、または75μm)を入手し原料高分子フィルムとした。これらのフィルムを電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って炭素化処理した。次に得られた炭素化フィルムを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で2900℃まで昇温した。2900℃で30分間保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイトフィルムを作製した。グラファイト化処理はアルゴン雰囲気でゲージ圧98kPa(1.0kg/cm2)の加圧下で行った。
得られたグラファイトフィルム厚さ、フィルム面方向の電気伝導度、フィルム面方向の熱伝導度は以下の通りであった。
製造例1A:グラファイトフィルムA(AH(12.5μm)より作製)
厚さ:7.4μm、電気伝導度:18000S/cm、熱伝導度1900W/mK
製造例1B:グラファイトフィルムB(AH(25μm)より作製)
厚さ:16μm、電気伝導度:16000S/cm、熱伝導度1600W/mK
製造例1C:グラファイトフィルムC(AH(50μm)より作製)
厚さ:40μm、電気伝導度:13800S/cm、熱伝導度1400W/mK
製造例1D:グラファイトフィルムD(AH(75μm)より作製)
厚さ:62μm、電気伝導度:11200S/cm、熱伝導度1100W/mK
<実施例1>
製造例1Aで作製したグラファイトフィルムA(面積4cm×4cm)の表面に真空蒸着法でニッケル金属層を厚さが約4〜5nmになるように形成し、第1積層体を製造した。この第1積層体のニッケル金属層面に、製造例1Aで作製した別のグラファイトフィルムAを積層し、アルゴンガス中で、0.98MPa(10kg/cm2)の圧力を加えながら、900℃で10分間処理をした。処理後室温にもどし、得られたグラファイト接合体の物性を測定した。厚さは14.6μm、電気伝導度は18000S/cm、熱伝導度は1900W/mKであり物性値はグラファイトフィルムAと全く変わりが無かった。つぎに得られたグラファイト接合体を4mm×4cmの長方形に切断し、両面にスコッチテープを貼り付けて試料の剥離実験をおこなった。その結果、剥離はすべてグラファイト層間で起こり、接合面、即ちグラファイトとニッケル層界面での剥離は観察されなかった。この事から本発明の接合方法がグラファイト本来の物性値を損なう事無く、グラファイトを極めて強固に接着できる方法である事が分かった。さらに、得られた試料を500℃で1時間加熱し、その後、上記剥離試験を行ったが接合強度に変化はなく、すべての剥離はグラファイト層間で起きる事が分かった。
<実施例2A〜2D>
実施例1と同じ条件でグラファイトフィルムAを積層し、アルゴンガス中で、0.98MPa(10kg/cm2)の圧力を加えながら、それぞれ700℃で1時間、800℃で20分間、1000℃で1分間、1100℃で20秒間、加熱・加圧処理した。いずれの条件でも良好な接着性を示し、実施例1と同様の剥離実験を行うと、剥離はすべてグラファイト層間で起こった。得られたグラファイト積層体の電気伝導度は18000S/cm、熱伝導度は1900W/mKであった。
<比較例1>
実施例1と同じ条件でニッケル金属層を介して2枚のグラファイトフィルムAを積層し、アルゴンガス中で、1.0MPaの圧力を加えながら、600℃で1時間の処理を行ったがグラファイトフィルムA同士を接着出来なかった。この結果からニッケルを用いた接合には700℃以上の温度が必要であると結論した。
<比較例2A〜2B>
実施例1と同じ条件でニッケル金属層を介して2枚のグラファイトフィルムAを積層し、アルゴンガス中で、1400℃で、0.98MPa(10kg/cm2)の圧力を加えながら、それぞれ10秒または1分間の処理を行ったがグラファイトフィルムA同士を接着出来なかった。この様な条件では、ニッケル層が完全に、グラファイト中に拡散してしまい接合に寄与できない事が分かった。
<実施例3〜7>
実施例1と同じ方法でグラファイトフィルムA(面積4cm×4cm)の表面にスパッタリング法でニッケル金属層を形成し、第1積層体を製造した。ニッケル金属層の厚さは、0.5nm(実施例3)、2nm(実施例4)、50nm(実施例5)、200nm(実施例6)、または800nm(実施例7)である。この第1積層体のニッケル金属層面に、別のグラファイトフィルムAを積層し、アルゴンガス中で、0.98MPa(10kg/cm2)の圧力を加えながら、900℃で10分間処理をした。処理後室温にもどし、得られたグラファイト接合体の物性を測定した。実施例3〜6では、いずれの実施例でも電気伝導度は18000S/cm、熱伝導度は1900W/mKであり物性値はグラファイトフィルムAと変わりが無かった。実施例7では電気伝導度は17500S/cm、熱伝導度は1800W/mKであり物性値にやや低下が見られたが、基本的には優れた物性値である事に変わりが無かった。また、実施例3〜7のいずれの場合でも、極めて良好に接合されており、実施例1と同様の剥離実験を行うと、剥離はすべてグラファイト層間で起こった。
<比較例3>
実施例1と同じ方法でグラファイトフィルムA(面積4cm×4cm)の表面にスパッタリング法でニッケル金属層を厚さが0.2nmとなる様に形成し、第1積層体を製造した。なお、この様な厚さの測定を正確に行う事は極めて困難であるので、厚さはスパッタリング時間からの推定値である。次に、この第1積層体のニッケル金属層面に、別のグラファイトフィルムAを積層し、アルゴンガス中で、0.98MPa(10kg/cm2)の圧力を加えながら、900℃で10分間処理をした。処理後室温にもどし、得られたグラファイト接合体の物性を測定した。電気伝導度は18000S/cm、熱伝導度は1900W/mKであり物性値はグラファイトフィルムAと変わりが無かった。しかしながら、得られたグラファイト接合体を4mm×4cmの長方形に切断し、両面にスコッチテープを貼り付けて試料の剥離実験をおこなったところ、剥離はグラファイト層間、またはニッケル金属層とグラファイト層の間で発生し、どちらで発生するかはランダムであった。すなわちグラファイト層とニッケル金属層界面での剥離が部分的に観察された。この事からニッケル金属層の厚さが0.2nmでは不十分であると結論した。実施例3の場合と比較すると、強固な接着を実現するためには0.5nm以上のニッケル金属層の厚さが有効である事が分かった。
<比較例4>
実施例1と同じ方法でグラファイトフィルムA(面積4cm×4cm)の表面にスパッタリング法でニッケル金属層を厚さが1.2μmとなる様に形成し、第1積層体を製造した。第1積層体のニッケル金属層面に別のグラファイトフィルムAを積層し、アルゴンガス中で、0.98MPa(10kg/cm2)の圧力を加えながら、900℃で10分間処理をした。処理後室温にもどし、得られたグラファイト接合体の物性を測定した。電気伝導度は15500S/cm、熱伝導度は1600W/mKであり物性値の低下が観察された。これはニッケル金属層の厚さが厚くなったため、電気伝導度や熱伝導度の値にニッケル自体の物性値が反映された結果である。この実験結果と先に述べた実施例7との結果から、ニッケル金属の場合、本発明の接着層として1μm以下が好ましいと結論した。
<実施例8A〜8F>
実施例1と同じ方法でグラファイトフィルムA(面積4cm×4cm)の表面に真空蒸着法でニッケル金属層を厚さが約4〜5nmになるように形成し、第1積層体を製造した。第1積層体のニッケル金属層面に別のグラファイトフィルムAを積層し、アルゴンガス中で、900℃で10分間処理をした。この時加える圧力は、それぞれ、0.02MPa(0.2kg/cm2;実施例8A)、0.05MPa(0.5kg/cm2;実施例8B)、0.1MPa(1kg/cm2;実施例8C)、0.5MPa(5kg/cm2;実施例8D)、1.96MPa(20kg/cm2;実施例8E)、または4.9MPa(50kg/cm2;実施例8F)とした。処理後室温にもどし、得られたグラファイト接合体の物性を測定した。いずれのグラファイト接合体も、厚さは14.6μm、電気伝導度は18000S/cm、熱伝導度は1900W/mKであり、物性値はグラファイトフィルムAと全く変わりが無かった。つぎに得られたグラファイト接合体を4mm×4cmの長方形に切断し、両面にスコッチテープを貼り付けて試料の剥離実験をおこなった。その結果、剥離はすべてグラファイト層間で起こり、接合面、即ちグラファイトとニッケル層界面での剥離は観察されなかった。この事から0.02〜4.9MPa(0.2〜50kg/cm2)の範囲の圧力で実施する本発明の方法は、グラファイト本来の物性値を損なう事無く、グラファイトを極めて強固接着できる方法である事が分かった。さらに、得られた試料を500℃で1時間加熱し、その後、上記剥離試験を行ったが接合強度に変化はなく、すべての剥離はグラファイト層間で起きる事が分かった。
<比較例5A〜5B>
実施例1と同じ方法でグラファイトフィルムA(面積4cm×4cm)の表面に真空蒸着法でニッケル金属層を厚さが約4〜5nmになるように形成し、第1積層体を製造した。第1積層体のニッケル金属層面に別のグラファイトフィルムAを積層し、アルゴンガス中で、900℃で10分間処理をした。この時、この積層体の上に所定の重さのグラファイトブロックを置き、該積層体に加える圧力をそれぞれ、0.01MPa(0.1kg/cm2;比較例5A)、0.005MPa(0.05kg/cm2;比較例5B)とした。処理後室温にもどし、得られたグラファイト接合体の物性を測定した。いずれのグラフィ後接合体も、厚さは14.6μm、電気伝導度は18000S/cm、熱伝導度は1900W/mKであり、物性値はグラファイトフィルムAと全く変わりが無かった。つぎに得られたグラファイト接合体を4mm×4cmの長方形に切断し、両面にスコッチテープを貼り付けて試料の剥離実験をおこなった。その結果、剥離がグラファイト層間とニッケルとグラファイト層の間でランダムに起こり、部分的に接合できていない部分がある事が分かった。この事から本発明の手法では0.02MPa(0.2kg/cm2)以上の加圧圧力が必要であると結論した。
<実施例9>
製造例1Bで作製したグラファイトフィルムB(面積4cm×4cm)の表面に真空蒸着法でニッケル金属層を厚さが約4nmになるように形成し、第1積層体を製造した。この第1積層体を3枚作製し、ニッケル金属層の向きを揃えて積層した後、ニッケル金属層面にさらに別のグラファイトフィルムBを積層した。この全7層(グラファイトは4層)の積層体に、アルゴンガス中で、0.98MPa(10kg/cm2)の圧力を加えながら、900℃で1分間処理をした。処理後室温にもどし、得られたグラファイト接合体の物性を測定した。厚さは64μm、電気伝導度は16000S/cm、熱伝導度は1600W/mKであり物性値はグラファイトフィルムBと変わりが無かった。この電気伝導度と熱伝導度の値は同程度の厚さであるグラファイトフィルムDよりも優れており、本発明の方法が高熱伝導性、高電気伝導性の厚いグラファイトフィルム、あるいはグラファイトブロック作製手法として優れた方法である事が分かった。次に得られたグラファイト接合体を4mm×4cmの長方形に切断し、両面にスコッチテープを貼り付けて試料の剥離実験をおこなった。その結果、剥離はグラファイト層間で起こり、グラファイトとニッケル層界面での剥離は観察されなかった。この事から本発明の接合方法がグラファイト本来の物性値を損なう事無く、極めて強固にグラファイトを接着できる優れた方法である事が分かった。さらに、得られた試料を500℃で1時間加熱後、剥離試験を行ったが、剥離はいずれもグラファイト層間で発生し、その接合強度に変化はなかった。
<実施例10>
製造例1Cで作製したグラファイトフィルムC(面積4cm×4cm)の表面に真空蒸着法でニッケル金属層を厚さが約10nmになるように形成し、第1積層体を製造した。この第1積層体を19枚作製し、ニッケル金属層の向きを揃えて積層した後、ニッケル金属層面にさらに別のグラファイトフィルムCを積層した。この全39層(グラファイトは20層)の積層体に、アルゴンガス中で、0.98MPa(10kg/cm2)の圧力を加えながら、900℃で5分間処理をした。処理後室温にもどし、得られたグラファイト接合体の物性を測定した。厚さは800μm、電気伝導度は13800S/cm、熱伝導度は1400W/mKであった。前述の通り、高分子焼成法では高電気伝導度や高熱伝導度を持つ、厚いグラファイトフィルムの作製は困難である事が知られており、その厚さの上限は100μmである事が知られている。しかしながら、この方法を用いれば高電気伝導度や高熱伝導度特性を有する、厚い(100μm以上の厚さの)グラファイト膜、あるいはグラファイトブロックの作製が可能である事が分かった。
つぎに得られたグラファイト接合体を4mm×4cmの長方形に切断し、両面にスコッチテープを貼り付けて試料の剥離実験をおこなった。その結果、剥離はグラファイト層間で起こり、グラファイトとニッケル層界面での剥離は観察されなかった。この事から本発明の接合方法がグラファイト本来の物性値を損なう事無く、極めて強固に接着を実現できる方法である事が分かった。さらに、得られた試料を500℃で1時間加熱後、剥離試験を行ったが、剥離はいずれもグラファイト層間で発生し、その接合強度に変化はなかった。
<比較例6>
グラファイト表面にニッケル層を形成せず、20枚のグラファイトフィルムCを直接積層し、アルゴンガス中で、0.98MPa(10kg/cm2)の圧力を加えながら、900℃で20分間処理をした。加圧処理をしたグラファイト積層体は見かけ上接着している様に見えたが、4mm×4cmの長方形に切断する過程で、グラファイトフィルム面間で剥離し接着していない事が分かった。
<比較例7>
グラファイトフィルムCの表面を有機溶媒で洗浄後、UV光を照射して表面クリーニングを行った。次いでフィルムの片面にエポキシ樹脂(DIC社製、ビスフェノールF型380番)を塗布し、この塗布フィルムを20枚積層した後、所定の条件で硬化させた。作製したグラファイト接合体の厚さは860μm、電気伝導度は11000S/cm、熱伝導度は1050W/mKであり、電気物性、熱物性共にグラファイトフィルムCよりも低下していた。得られたグラファイト接合体を4mm×4cmの長方形に切断し、両面にスコッチテープを貼り付けて試料の剥離実験をおこなった。その結果、剥離はすべてグラファイト層間で起こり、層間剥離強度以上の接着を実現できている事が分かった。しかしながら、得られた試料を500℃で1時間加熱したところ、完全にグラファイトフィルム間で剥離し、加熱処理でその接着性が失われる事が分かった。したがって、この様な接着法ではグラファイトの耐熱性という特徴は失われる事が分かった。
<実施例11>
銅箔(三井住友金属鉱山伸銅(株)社製タフピッチ銅(C1100R)厚み16μm)を4cm×4cmのサイズに切断し、表面に真空蒸着法で20nmの厚さでニッケル金属層を蒸着し、第1積層体を作製した。第1積層体のニッケル金属層面にグラファイトフィルムDを積層し、アルゴンガス中で、1.96MPa(20kg/cm2)の加圧下、800℃で20分間の処理を行った。処理後室温にもどし、得られた接合体の熱伝導度は950W/mKであった。つぎに得られた接合体の接着強度をグラファイト面にスコッチテープを貼り付け剥離実験を行う事で実施した。その結果剥離はグラファイト内で起こり、ニッケル金属とグラファイトの界面での剥離は認められなかった。この事から本発明の手法で熱伝導度物性を損なう事無く銅とグラファイトの強固な接着が実現できる事が分かった。
<実施例12、13、14、15>
ニッケルと鉄の合金(78質量%パーマロイ;実施例12)、ニッケルと銅の合金(モネル400;実施例13)、ニッケルとクロムの合金(インコネル600;実施例14)、またはニッケルとモリブデンの合金(ハステロイB−2;実施例15)をターゲットとして用い、スパッタリング法により銅箔(三井住友金属鉱山伸銅(株)社製タフピッチ銅(C1100R)厚み16μm)の表面にそれぞれのニッケル合金からなる金属層を形成した。ニッケル合金層の厚さは20nm〜80nmの範囲であった。次にアルゴンガス中で、1.96MPa(20kg/cm2)の加圧下、800℃で20分間の処理を行い、グラファイトフィルムDと銅の接合体を作製した。次に得られた接合体の接着強度をグラファイト面にスコッチテープを貼り付け剥離実験を行う事で実施した。その結果剥離はいずれもグラファイト内で起こり、金属とグラファイトの界面での剥離は認められなかった。この事から本発明の手法で銅とグラファイトの強固な接着が実現できる事が分かった。
1a、1b グラファイト
2 ニッケル
3a 固溶炭素
3b 析出炭素

Claims (12)

  1. 複数枚のグラファイトフィルムのa−b面同士が、ニッケルまたはニッケル合金層を介して接合されている事を特徴とするグラファイト接合体。
  2. グラファイトフィルムのa−b面と金属が、ニッケルまたはニッケル合金層を介して接合されている事を特徴とするグラファイトと金属の接合体。
  3. 前記グラファイトフィルムが、芳香族高分子フィルムを炭素化し、不活性ガス中で2400℃以上の温度で処理することによって作製されたものである請求項1または2に記載の接合体。
  4. 前記芳香族高分子が芳香族ポリイミドである請求項3に記載の接合体。
  5. 複数枚のグラファイトフィルムのa−b面同士を、ニッケルまたはニッケル合金層を用いて接着する事を特徴とするグラファイトの接合方法。
  6. グラファイトフィルムのa−b面と金属を、ニッケルまたはニッケル合金層を用いて接着する事を特徴とするグラファイトと金属の接合方法。
  7. ニッケルまたはニッケル合金層の厚さが0.5nm〜1μmの範囲である請求項5または6に記載の接合方法。
  8. 複数枚のグラファイトフィルムのa−b面同士の間に、またはグラファイトフィルムのa−b面と金属の間に、ニッケルまたはニッケル合金層を介入することによって得られる積層体を、不活性ガス中または真空中、700℃以上、1300℃以下の温度範囲で加圧する請求項5〜7のいずれかに記載の接合方法。
  9. 前記加圧の条件が0.02〜9.8MPaの範囲で加圧することを特徴とする請求項8に記載の接合方法。
  10. 前記グラファイトフィルムが、芳香族高分子フィルムを炭素化し、不活性ガス中で2400℃以上の温度で処理することによって作製されたものである請求項5〜9のいずれかに記載の接合方法。
  11. 前記芳香族高分子が芳香族ポリイミドである請求項10に記載の接合方法。
  12. グラファイトフィルム又は金属の少なくとも片面に、ニッケルまたはニッケル合金層が積層されているグラファイト接着用積層体。
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