JP6353308B2 - 配線材料、配線材料の製造方法、および配線材料を用いた配線板の製造方法 - Google Patents

配線材料、配線材料の製造方法、および配線材料を用いた配線板の製造方法 Download PDF

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本発明は、従来の銅配線と同等以上の耐電流密度特性を持つグラファイトと銅の積層配線材料、グラファイトと銅の積層配線材料の製造方法、およびグラファイトと銅の積層配線材料を用いた配線板の製造方法に関する。
電気配線材料としての銅は、現在の産業を支える基礎素材として長年に渡って使用されてきた。その理由としては、銅が銀についで高い電気伝導性(比抵抗:1.72×10-6Ωcm)を有する金属である事、銀よりもはるかに安価である事、耐熱性、耐久性、柔軟性に優れる事、線状やフィルム状などの形状への成型が容易である事、エッチング等により加工(回路形成)が容易である事などが挙げられる。しかしながら、最近の技術の進歩に伴い、配線回路により大きな電流を流したいと言う、より過酷な要望が課せられるようになり、銅配線の問題点も顕在化する様になってきた。特に半導体集積回路などにおける微細銅配線回路において深刻な問題となりつつある。
この問題は具体的には銅の耐電流密度特性(単位面積当たりに流す事が可能な電流の大きさ)として記述する事が出来る。一般的に銅配線材の耐電流密度特性は2〜3×106A/cm2程度であると言われている。しかしながら、銅配線材料における耐電流密度特性は配線の太さ(断面積)によって変化し、線幅が100nm以下になると銅のグレインバウンダリーや配線側面でのキャリア電子の散乱によってその抵抗値が急激に増加し、耐電流密度が小さくなる事が知られている(非特許文献1、非特許文献2)。さらに、銅の微細配線回路は電流印加によって大きな発熱を生じ、この事がCPUなどの半導体素子における大きな問題となっている。
この様な問題点を解決し、銅配線に代わる材料と成り得る候補の一つにグラファイトがある。グラファイトが期待されている理由は以下の4点である。(1)グラファイトの耐熱温度(分解・昇華温度)はおよそ3000℃であり、銅の融点(1084℃)を遥かに上回る、(2)高品質グラファイトの場合、銅に比べてその熱伝導率が大きく(グラファイトa−b面方向の熱伝導率:1900W/mK、Cu:400W/mK)、放熱効率を高く出来る、(3)銅は金属的な伝導特性(温度が上がると抵抗が増加する)であるため、温度が上昇するとさらに大きな発熱を起こすが、グラファイトは温度が上がっても抵抗値がほとんど変化しない、(4)高品質グラファイトは銅に比べるとキャリア数は1/10000〜1/20000、キャリア移動度はおよそ800倍であり(非特許文献3)、その結果、線幅が小さくなっても電子キャリアの散乱が抑えられ、微細回路における発熱が抑えられる可能性がある。
しかし、上記のグラファイトの物性はあくまで理想的な結晶の特性であって、グラファイト単結晶と同等の物性値を有し、かつ配線材料として使用出来るような大面積フィルム状や線状のグラファイトは実現されていない。例えば、理想的なグラファイトにおけるキャリア移動度は8000〜14000cm2/V・secであるが、これは天然の微細な高品質グラファイト結晶、あるいは人工的に3300℃以上の高温で作製された高配向性グラファイト結晶(HOPG:Highly Ordered Pyrolytic Graphite)から剥離された極めて微細な結晶片での特性であるに過ぎない(非特許文献3)。
大面積グラファイトフィルムを得る方法として、特殊な高分子フィルムを直接熱処理してグラファイト化する方法が開発されている(以下、高分子焼成法と記載する)。この高分子焼成法で得られたグラファイトフィルムは、従来知られていた天然グラファイトを用いる作製法(エキスパンド法)と比べて、高品質で高い熱伝導特性を持つという特徴がある(非特許文献4)。そのため、高分子焼成法で作製されるグラファイトフィルムは放熱・熱拡散用途として広く使用されている。高分子法で作製されるグラファイトフィルムの厚さは一般的には20μm〜40μmの範囲(特殊な場合10μm〜75μm)であって、その電気伝導度は15000S/cm程度、熱伝導度は1500W/mK程度である(非特許文献5)。この様に高分子焼成法で作製されたグラファイト膜は比較的すぐれた電気伝導性や熱伝導性を有しているが、その値は前記の最高品質のグラファイト結晶と比較すると劣るものであった。そのため、高分子焼成法で作製されるグラファイト膜が銅配線材料に代わり得るとは考えられていなかった。
グラファイトを配線材料として用いるためには大面積で高品質である事はもちろん、その物性が均一である事が必要となる。一般に大面積試料では試料中に割れや結晶不整、不純物などが存在する確率が大きくなり、それらがキャリア移動度を低下させるため大面積で高いキャリア移動度を持つ材料の作製は極めて困難であると考えられる。すなわち、それまでの技術によって、例えば、4mm2以上の面積で8000cm2/V・sec以上のキャリア移動度特性を持ち、銅の耐電流密度特性を上回るような特性を持つグラファイトフィルムを作製する事は出来なかった。
特開2011−23670号公報 特開2012−238733号公報 特開2012−74682号公報 特表2010−508432号公報 特表2011−513596号公報 特開2000−223004号公報 特開2007−16262号公報 特開2007−224359号公報 特許第5384372号公報 特許第5236208号公報 特開2013−105980号公報 特開2010−248605号公報 特表2013−539583号公報 国際公開第2012/091139号
J.Tao,et al.,IEEE Electron Device Letters,14(5),249(1993) J.R.Lloyd,et al.,Thin Solid Films,262,135(1995) I.L.Spain,in:P.L.Warker Jr.,P.A.Thrower(Eds).Chemistry and Physics of Carbon,vol,8,Marcel Dekker,Inc.,New York,1973,pp1−150. M.Murakami,et al.,Carbon,30,255(1992) カタログ「グラフィニティ」,株式会社カネカ,2014年 C.Subramaniam,et al.,Nature Communications|4:2202|DOI:10.1038/ncomms3202| (第四版)実験化学講座9 電気・磁気(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行(平成3年6月5日発行) 松本里香 炭素TANSO 2003[No.209]174−178
以上の様な背景の中、本発明者らは高分子焼成法によるグラファイト膜を極限まで高品質化して、銅配線に代わり得る配線材料を開発する事を試みた。その結果、厚さが9.6μm〜20nmの範囲であり、面積が4mm2以上であり、25℃におけるフィルム面方向のキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上であることを特徴とするグラファイトフィルムの開発に成功し、その様なグラファイト配線材料は同じ断面積で測定した銅配線の耐電流密度特性を上回る事を発見し、すでに特許出願を済ませている(特願2014−049427号)。
しかしながら、上記グラファイト配線材料は配線板製造と言う観点からは幾つかの課題を含んでいた。その一つは、上記グラファイトフィルムは軽く、薄いためその取り扱いは極めて難しく、配線回路形成プロセスの確立が難しいという点である。また、この様なグラファイトフィルム自体は、例えばレーザー加工によるエッチングや反応性イオンエッチングによる回路形成が可能であるが、レーザーエッチングの際の熱により、グラファイトの支持体である絶縁基板が損傷・炭化するために、短絡が生じ微細な回路形成加工が出来なくなると言う課題があった。この様な事情は反応性イオンエッチングの場合も同様である。
本発明は、この様な新しいグラファイトを含む極めて薄いグラファイトフィルムを用いた場合の種々の課題、特に配線材料の配線板製造上・微細加工上の課題を解決するためになされたものである。すなわち本発明の課題は、前記厚さが9.6μm未満でかつ同じ単位断面積あたりで比較した時に銅と同等以上の耐電流密度特性を有し得るグラファイトフィルム(好ましくはキャリア移動度特性に優れるグラファイトフィルム)を用いた時に、微細な配線回路を容易に作製する事が可能な配線材料を提供すること、さらにはその配線材料を用いた配線板の作製手法を提供する事である。
本発明者らは、前記課題を解決するため、グラファイトを金属と複合体にする方法について検討した。グラファイトと金属の複合体に関する特許文献としては、熱源の熱を熱伝導体素子の厚み方向に効率的に伝導させる事を目的としてグラファイトの端面(a−c面、またはc−b面)に金属層を設けた異方性熱伝導素子、およびその製造法に関するものがある(特許文献1、2)。しかし、これらの方法は比較的接合し易いグラファイト端面と金属を接合させるものであって、その目的は異方性熱伝導素子の作製である。従って、これらの先行文献は目的も手法も本発明とは異なるものである。グラファイトはa−b面方向に優れたキャリア移動度特性を有しており、このa−b面を生かす接合が必要である。グラファイト端面で接合してしまうと、a−b面方向の連続性が途絶えてしまうため、特許文献1,2の方法は適切ではない。グラファイトのa−b面は化学的に極めて安定であるため、それを金属で接合する事は、a−c面やc−b面と接合するよりも非常に難しい。また、グラファイト配線パターンの形成方法として、触媒層の凝集を抑制し、炭素の拡散速度を適切に調整する事ができる合金または積層体からなる触媒層を利用した、グラフェン構造を有するグラファイト膜で構成された配線パターンの形成法がある(特許文献3)。しかし、この方法は、従来知られたグラフェンの作製方法を改良したものであり、その手法、構成、厚さの何れも本発明とは全く異なるものである。
さらに、カーボンナノチューブ(CNT)と金属の複合体に関してもいくつかの提案が成されている。例えば、複数のCNTと金属粒子を機械的合金化によって複合化する方法(特許文献4)、反応装置内で1000℃以下の温度で気体の形で金属またはメタロイドをCNT上に沈着させる方法(特許文献5)、金属合金や金属粉末等の導電性材料粉体とCNTをプレス成型し、切断・研磨後に表面に突き出したCNTを整列させる方法(特許文献6)、均一分散を目的にCNT含有粉末をあらかじめ製造し、焼結する粉末冶金法(特許文献7、8)、CNTを含有するCNT鋼、特に刃物鋼、摺動鋼、工具鋼の製造法(特許文献9)、CNTを用いた低抵抗素線およびその製造方法(特許文献10)、層間接続部にCNTを良好に混入させた多層配線基板の製造法(特許文献11)、金属とCNTを均一に組成化させる方法とその複合金属素材(特許文献12)、複数のCNT浸出繊維を含んだ強化送電線(特許文献13)等がある。しかしながら、これらはCNTと金属の複合化により軽量性、強靭性、防錆性、滑り性、電気伝導度の改善を目的としたものであり、本発明とは目的、用いる炭素素材、用いる手法のいずれも異なるものである。
また、本発明と同じ配線回路の耐電流密度改善の目的で検討されたCNTと銅の複合材料の例としては、CNTの集合体に電解メッキ法で銅を充填して作製した複合体がある(特許文献14、非特許文献6)。これは銅微細配線において同じ太さの銅配線に比べ、はるかに大きな耐電流密度特性が実現されており、従来の銅微細配線の耐電流密度特性を大きく向上させたという点で優れた技術であるといえる。しかし、この様な配線材料は実際に微細配線回路製造の観点、および均一な大面積試料の作製と言う観点からは問題があるものであった。本発明は、微細配線回路形成の観点から、この様なCNT/銅複合体に比べてより優れた技術を提供するものでもある。
本発明者らは上記問題を解決するべく鋭意検討を重ね、配線材の構成を先の特許出願(特願2014−049427号)に係るグラファイトフィルム(厚さが9.6μm未満20nm以上の範囲、25℃におけるフィルムa−b面方向のキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上である)に代表されるような厚さ9.6μm未満のグラファイトフィルムと銅の積層構造とし、これらを接合する事で、通常取り扱いが困難な超箔膜領域の厚さのグラファイトフィルムであってもその取り扱い性を良好にでき、さらにはレーザーエッチングや反応性イオンエッチングでグラファイト層を除去して回路形成する時のパターンの微細化にも貢献する事を発見して、本発明を成すに至った。なお、先の特許出願ではグラファイトフィルムの厚さの範囲が9.6μm未満20nm以上であるが、銅層、または後述するニッケル層等を積層する事により、20nm〜10nmの範囲の薄いグラファイトフィルムも回路形成に用いる事が可能となった。従って、本発明に用いられるグラファイトの厚さの範囲は9.6μm未満10nm以上の範囲である。
さらに、本発明者らは、ニッケルまたはニッケル合金でグラファイトフィルムと銅とを接合すると、接合体は同じ厚さの銅のみからなる配線材料と同等以上の耐電流密度特性を持つ事が可能になる事と、配線板形成時には、より一層、微細配線加工が可能となる事も発見した。本発明のグラファイトと銅積層接合体は配線材料であるので、積層構造とする事によってグラファイトと銅、それぞれの電気物性を損なわない事が実用上重要である。用いられるエポキシ樹脂などの有機接着剤やシリコーン接着剤などの絶縁材料を接着材料としてグラファイトと銅を接合する事は、電気物性の面から望ましくない。また蒸着法を含む様々な直接接合法でも接合は可能であるが、電気物性の面でより優れた接合法が開発されることはさらに好ましい事である。こうした好ましい態様についても我々は鋭意検討の結果、ニッケルまたはニッケル合金を接着層として、グラファイトフィルム面(a−b面)と銅を加圧・圧着すると言う極めて簡便な方法で、グラファイトの優れた特性を失う事無く銅との強固な接着を実現できる事を発見して好ましい態様の本発明を成すに至った。さらに、この様な接合体は同じ単位断面積で比較した場合、銅単体と同等以上の耐電流密度特性を持つばかりでなく、単にグラファイト層と銅層、それぞれの耐電流密度特性から予想される耐電流密度特性よりもさらに大きな耐電流密度特性を有する、という特異な効果がある事も明らかになった。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)厚さが9.6μm未満、10nm以上の範囲であるグラファイトフィルムのa−b面と銅が接合された接合体であって、該接合体を幅100μm以下の線状に加工した場合の接合体のフィルム面方向の耐電流密度特性が2×106A/cm2以上である事を特徴とする配線材料。
(2)温度25℃における前記グラファイトフィルムのa−b面方向のキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上である(1)に記載の配線材料。
(3)銅層の厚さが、前記グラファイトフィルムの厚さの2分の1倍以下であり、かつ4nm以上である(1)または(2)に記載の配線材料。
(4)前記グラファイトフィルムと前記銅層がニッケルまたはニッケル合金によって接合されている(1)〜(3)のいずれかに記載の配線材料。
(5)前記ニッケルまたはニッケル合金層の厚さが前記銅層の厚さの2分の1倍未満であり、かつ2nm以上である(4)に記載の配線材料。
(6)前記配線材料が、さらに絶縁性の有機高分子基板または絶縁性の無機基板を有しており、グラファイト;ニッケルまたはニッケル合金;銅;絶縁性の有機高分子基板または絶縁性の無機基板の順に積層されている(1)〜(5)のいずれかに記載の配線材料。
(7)前記グラファイトフィルムのa−b面と銅との間にニッケルまたはニッケル合金を介入し、得られる積層体を加圧・加熱処理してグラファイトフィルムと銅を接合する(4)または(5)に記載の配線材料の製造方法。
(8)ニッケルまたはニッケル合金によるグラファイトと銅の接合が、700℃〜1000℃の温度範囲で行われる(7)に記載の配線材料の製造方法。
(9)グラファイトフィルムと銅とを接合した後、銅の表面に、絶縁性の有機高分子基板または絶縁性の無機基板を接合する(7)または(8)に記載の配線材料の製造方法。
(10)前記(6)に記載の配線材料に対して、そのグラファイト層の一部をレーザーエッチング、または反応性イオンエッチング(RIE)技術を用いてパターニングする工程を含む事を特徴とする配線板の製造方法。
(11)前記レーザーエッチングが炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー、エキシマレーザー、またはファイバーレーザーによるエッチングである(10)に記載の配線板の製造方法。
(12)前記の反応性イオンエッチングが酸素系エッチングガスを用いて行われるエッチングである(10)に記載の配線板の製造方法。
(13)レーザーエッチングまたは反応性イオンエッチングによりグラファイト層の一部を除去した後、さらに銅層の一部を化学エッチングにより除去して回路形成を行う工程を含む(10)〜(12)のいずれかに記載の配線板の製造方法。
(14)厚さが9.6μm未満、10nm以上の範囲であり、温度25℃におけるフィルム面方向のキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上であるグラファイトと、厚さが4.8μm以下、4nm以上の厚さの銅を、厚さが500nm未満、2nm以上のニッケルまたはニッケル合金を用いて接合して接合体を作製する工程と、
前記接合体の銅層に絶縁性の有機高分子基板または無機基板と接合する工程と、
グラファイト層の一部をレーザーまたは反応性イオンエッチングによって除去して回路及び/又はホールを形成する工程と、
前記グラファイトの除去によって露出した銅の部分を化学エッチングによって除去する工程と、
を含む事を特徴とする配線板の製造方法。
なお本明細書において、用語「シート」、「フィルム」、「膜」は厚みを特に限定するものでなく、柔軟性を有する平面体の意味で使用し、好ましくは平面方向の最長長さが、厚さの500倍以上であるものを指す。
本発明によれば、9.6μm未満、10nm以上の範囲の厚さのグラファイトフィルムと銅とを積層接合しているため、微細配線回路を形成できる。またa−b面方向のキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上のグラファイトフィルムと銅フィルムをニッケル、またはニッケル合金を用いて接合した場合には、得られた積層接合体は、その耐電流密度特性が実用的な銅の耐電流密度特性を上回る。本発明によるグラファイト/銅接合体は配線材料として広く使用する事が出来る。
図1はニッケル金属とグラファイトの反応と接着の機構を示す概略断面図である。図1(a)はニッケル金属とグラファイトを接触させた状態を示し、図1(b)は加圧加熱によってグラファイトを構成する炭素がニッケル中に溶解する状態を示し、図1(c)は溶解した炭素が冷却過程でニッケル表面に析出する状態を示し、図1(d)は析出した炭素が再結晶してグラファイト構造を形成する状態を示す。 図2は、本発明によるグラファイトと銅の接合体を用いた配線板の製造プロセスの一例を示す概略断面図である。図2(a)はグラファイトフィルムを示し、図2(b)はグラファイトフィルムへのニッケル又はニッケル合金層の形成プロセスを示し、図2(c)はグラファイト/ニッケル又はニッケル合金層/銅の接合体の形成プロセスを示し、図2(d)は前記接合体と絶縁基板を積層する複合体の形成プロセスを示し、図2(e)は第1エッチングプロセスを示し、図2(f)は第2エッチングプロセスを示す。
以下に本発明の詳細について述べるが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
<グラファイトフィルム>
最初に本発明に使用されるグラファイトについて述べる。本発明のグラファイトフィルムとしては、高分子フィルムを炭素化し、次いでグラファイト化することによって得られるフィルムが好ましい。高分子フィルムを原料フィルムとして用いることで、大面積で高品質(高キャリア移動度)のフィルムを得ることが可能になる。本発明のグラファイトフィルムの作製に用いられる高分子フィルムは芳香族高分子である事が好ましく、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、ポリパラフェニレンビニレン、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらのフィルムは公知の製造方法で製造すればよい。特に好ましい高分子として芳香族ポリイミドを例示する事ができる。
芳香族ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、ポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤や、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用いてイミド転化するケミカルキュア法があり、ケミカルキュア法である事は好ましい。
高分子フィルム及びそれから得られるグラファイトフィルムは、いずれも薄いことが望ましい。高分子フィルムが薄いほど、後述するグラファイト化工程で優れたグラファイト構造を形成でき、大面積でも品質(キャリア移動度など)の優れたグラファイトフィルムが得られる。この様な観点から、本発明に用いられるグラファイトフィルムは厚さが9.6μm未満、10nm以上の範囲に設定されている。芳香族ポリイミドを用いた場合、最終的に得られるグラファイトフィルムの厚さは、一般に出発高分子フィルムの80〜30%の範囲となる事から、出発高分子フィルムの厚さは25μm以下、12.5nm以上の範囲である事が好ましい。一方、長さ方向は100〜70%程度に縮小する事が多いので、製造されるフィルムの面積はこの様な条件を考慮して決定すれば良い。
高分子フィルム(芳香族ポリイミド膜など)の作製時には通常製膜時の耐電防止、基板との接着防止、量産時の巻取りを容易にするなどのためにフィラーと言われる粉体が添加される。最も一般的に使用されるフィラーは燐酸カルシウムやシリカであり、通常ポリイミドの1質量%程度の量が添加され、フィラーの粒径は3〜1μm程度である事が多い。例えば、燐酸カルシウムの融点は1230℃、シリカは1650℃であって10μm以上の厚さのグラファイトを作製する場合に、フィラーが原料ポリイミド膜に含まれる事は問題にならない。しかしながら、本発明のグラファイトフィルムの場合にはフィラーは特性に悪影響を与える。具体的には本発明の様に9.6μm未満の薄いグラファイトフィルムの場合には炭素化の過程で分解・ガス化して抜け出したフィラーの後がグラファイト化過程でのグラファイト層形成を妨げ、結果的にキャリア特性や耐電流密度特性を低下させる。従って本発明においてフィラーは可能な限り含まない事が好ましい。フィラーの含有許容範囲は0.5質量%以下である事が好ましく、0.1質量%以下である事はより好ましく、実質的にフィラーを含まない事は最も好ましい。
高分子フィルムの炭素化は、高分子フィルムを不活性ガス中で加熱して行う。不活性ガスは、窒素、アルゴンあるいはアルゴンと窒素の混合ガスが好ましく用いられる。炭素化反応は通常800℃〜1400℃程度の温度で行う。予備処理の段階ではフィルムの破壊が起きない程度の面方向の圧力を加える事が有効である。
グラファイト化反応は炭素化されたフィルムを超高温炉内にセットして行う。炭素化フィルムのセットはCIP材やグラッシーカーボン基板に挟んで行う事が好ましい。グラファイト化は通常2800℃程度の高温で行われるが、本発明のグラファイトを得るための処理温度は2800℃では不足である。処理温度が高いほど良質のグラファイトに転化出来るためであり、本発明では、処理温度は3000℃以上が好ましく、3100℃以上がより好ましく、3200℃以上が最も好ましい。なお処理温度の上限は、例えば、3600℃以下、より好ましくは3500℃以下である。
グラファイト化は不活性ガス中で行なうが、不活性ガスとしてはアルゴンが最も適当であり、アルゴンに少量のヘリウムを加えても良い。また、本発明の様に薄いグラファイトフィルム作製の場合には前記3000℃以上の温度での処理を加圧下で行う事が好ましい。圧力(ゲージ圧)は0.06MPa(0.6kg/cm2)以上である事が好ましく、0.098MPa(1.0kg/cm2)以上である事はより好ましい。加圧下でグラファイト化反応を行う理由としては(1)加圧下での処理によりグラファイトの厚さが不均一となるのを防止する、(2)表面が荒れるのを防止する、(3)ヒーターの昇華による劣化を防止し長寿命化を実現する、の3点を挙げる事が出来る。圧力(ゲージ圧)の上限は特に限定されないが、例えば、5MPa以下であってもよい。
本発明で用いるグラファイトフィルムは厚さ9.6μm未満である。この様な薄いグラファイトフィルムにおいて、高いキャリア移動度を始めとする高い物性値が実現できる理由は以下の様に考えられる。すなわち、高分子焼成法によるグラファイトシート製造において、グラファイト化反応は最初に高分子炭素化シート最表面層でグラファイト構造が形成され、膜内部に向かってグラファイト構造が成長して行くと考えられる。従って、薄い場合には表面のグラファイト層構造が整った状態で内部までグラファイト化が進行し、結果としてシート全体に整ったグラファイト構造ができやすい。これに対して、グラファイトシートの膜厚が厚くなると、グラファイト化反応進行時にシート内部でグラファイト構造が乱れ、空洞や欠損が発生し易くなる。
一方、グラファイトフィルムの厚さは薄いほど良いと言う訳ではなく、厚さの下限は10nm以上である。10nm未満が好ましくない理由は、10nm未満のグラファイトフィルムが極めて取り扱い難く、配線板製造プロセスの確立が難しい事、さらにはグラファイトの高品質化(高キャリア移動度化)の実現が難くなる事の2点である。高品質化が困難となる理由は必ずしも明確ではないが、本発明の高分子焼成法では作製したグラファイトフィルムが10nm未満になるとひずみや皺の発生が顕著となるためであると考えられる。すなわち10nm未満のグラファイトフィルムでは皺に起因するひずみの導入が避けられないため、高品質化が難しいと推定される。従って、本発明のグラファイトフィルムの厚さの上限は、9.6μm未満、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは4μm以下、特に好ましくは3μm以下、最も好ましくは2μm以下である。厚さの下限は、例えば10nm以上、好ましくは20nm以上、最も好ましくは100nm以上である。
本発明のグラファイトフィルムは、キャリア移動度特性に優れているが、その値(25℃におけるフィルム面方向(a−b面方向)の値)はグラファイトフィルムの厚さのみでなく、面積にも影響される。グラファイトフィルムの特性の均一性が反映されるためである。例えば、測定面積が4mm2未満の場合には、3000℃以上の高温で処理した9.6μm以上の厚さのグラファイトフィルムや10nm未満の厚さのグラファイトフィルムにおいても、偶然に8000cm2/V・sec以上の高いキャリア移動度を満足する場合がある。しかしながら、キャリア移動度の測定面積が4mm2以上の場合、8000cm2/V・sec以上の高いキャリア移動度が測定されるのは本発明の9.6μm未満、10nm以上の範囲の厚さに限られ、4mm2以上の面積の測定で8000cm2/V・sec以上の移動度特性を持つ、厚さ9.6μm未満、10nm以上のグラファイトフィルムを作製する事は難しい。
実用上、グラファイトフィルムを配線材料として使用する場合には4mm2以上の面積が必要であるので、より大面積のグラファイトフィルムの場合のキャリア移動度特性が重要である。本発明者らは本発明のグラファイトフィルムを用い、さらに大面積(1×1cm2、10×1cm2、10×10cm2など)でキャリア移動度の測定を行ったが、その値は2×2mm2での測定結果とほとんど変わらなかった。従って、本発明に用いられるグラファイトフィルムはグラファイト配線材料の作製のため好ましい厚さである事が分かる。即ち本発明に用いられるグラファイトフィルムは厚さが9.6μm未満、10nm以上の範囲であり、好ましくは面積が4mm2以上であるグラファイトフィルムであって、そのキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上のフィルムである。前記キャリア移動度は、好ましくは8500cm2/V・sec以上、より好ましくは9000cm2/V・sec以上である。キャリア移動度の上限は達成可能な限り特に限定されず、本発明によれば、例えば、10000cm2/V・sec程度、より好ましくは12000cm2/V・sec程度は可能である。
<グラファイトフィルムと銅の接合>
本発明では前記グラファイトフィルムを銅と積層し、接合する。銅層を形成する事で通常取り扱いが極めて困難な超薄膜領域の厚さのグラファイトフィルムの取り扱いが容易になると言う効果があり、銅層形成によって、従来取り扱う事が困難であった20nm〜10nmの範囲のグラファイト超薄膜にも配線板作製プロセスを適用する事が出来るようになる。
銅層の好ましい厚さは、(1)接合体の耐電流密度特性が同じ厚さの銅配線よりも優れる事、(2)レーザーエッチングによってグラファイト層を除去する際に発生する熱から基板を保護できる厚さである事、(3)化学的エッチングによって銅層を除去する際にグラファイト層に悪影響を与えない事の条件から設定される。
従って、本発明において好ましい銅層の厚さはグラファイトフィルムの厚さの10倍以下、より好ましくは9倍以下、さらに好ましくは2分の1倍以下である。具体的には、用いるグラファイトの厚さに従い4.8μm以下4nm以上の範囲となり、さらに好ましくは2μm以下10nm以上の範囲、最も好ましくは1μm以下50nm以上の範囲となる。銅層が4.8μm超の場合、化学的エッチングによって銅層を除去する際に、エッチング時間が長くなり、オーバーエッチングやグラファイト層の剥離が起こる可能性が大きくなる。また、グラファイトと銅積層体配線材料の特性が銅層の部分によって支配されるため、グラファイトと銅の積層体配線材料の特徴が失われる事になる。
一方、本発明による銅層の厚さの下限はエッチング工程の銅層の機能に鑑みて決定される。グラファイトフィルムと銅層との積層体(接合体)は、銅層側に絶縁基板を積層した後、グラファイトフィルムをレーザーエッチングや反応性イオンエッチングで除去し、パターニングする。このグラファイトフィルムのエッチング除去の時に発生する熱から絶縁基板を保護する機能を銅層は有しており、銅層の厚さの下限は、この保護機能を果たすかどうかで決定される。好ましい厚さは4nm以上であり、より好ましくは10nm以上であり、特に好ましくは50nm以上である。銅層が薄すぎる場合には、例えば、レーザーエッチングによりグラファイト層を除去する工程で発生する熱から基板を保護する能力が小さくなり、基板に熱による損傷を与える事になる。
グラファイトフィルムと銅の積層接合体の作製方法には基本的には制限はなく、グラファイト層間剥離強度以上の強さでグラファイトと銅とを接合できればよく、例えば、グラファイトフィルムに銅層を直接接合する方法であってもよい。このような直接的銅層の形成方法としては化学的メッキ法の他、溶射法、蒸着法(真空蒸着法)、スパッタリング法、イオンミリング法、イオンビーム法などの物理的箔膜形成法を用いる事が出来る。しかしながら、一般的に、グラファイトa−b面は化学的に安定であり、グラファイト層間剥離強度以上の強さで銅を接合するのは容易ではない。上記手法で層間剥離強度以上の接合強度を実現するためには、グラファイト層表面をUV照射することによって清浄化する事や酸素プラズマなどによって、部分的にOH官能基やCOO置換基などを導入する事は有効である。
また本発明者らは、この様な直接接合法よりも優れた方法も開発している。この方法では、ニッケルまたはニッケル合金を接着層として用いて強固なグラファイトと銅の接合を実現する。また、この方法で作製したグラファイトと銅の接合体は、後述する配線板作製プロセスによって、微細配線回路形成に特に有利である事が分かった。以下、この方法について記載する。
グラファイトと金属の反応は大きく4つのケースに分類できる、第一のケースは反応しない場合であって、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)などの金属がこの範疇に分類される。したがって、例えば銅とグラファイトを直接接合させるには、上述した様に官能基処理等が必要になる。第二のケースはグラファイトと層間化合物を形成するケースであって、セシウム(Cs)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)などの金属がこの範疇に分類される。この第二のケースに分類される金属も接合に用いる事は出来ない。第三はグラファイトと金属炭化物を形成する場合であって、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)などがこの範疇に分類される。第四は炭素を溶解(固溶)又は炭素に溶解するケースであって、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、鉄(Fe)がこの範疇に分類される。
ちなみに、第三のケースである金属炭化物を作る場合、形成される金属炭化物とその形成温度は以下の通りである。アルミニウム(Al43:600〜800℃)、ホウ素(BC4:1400〜1600℃)、コバルト(CoC:200〜220℃)、鉄(Fe3C:700〜800℃)、モリブデン(Mo2C:600〜700℃)、シリコン(SiC:1000〜1100℃)、タンタル(TaC:1800〜2200℃)、タングステン(W2C:1000〜1400℃)である。また、炭素−金属間の溶解性を利用する第四のケースでは、Niの中に炭素が溶解(固溶)する温度は700〜1300℃であり、ビスマスが炭素の中に浸透する温度は1420〜1560℃であり、鉄の中に炭素が溶解(固溶)する温度は500〜700℃である。
本発明者らは、この様な金属とグラファイトの反応性に着目し、金属をもちいてグラファイトと銅を接合する事を試みた。その結果、第三、第四のケースに分類される金属は加圧・圧着する事によってグラファイトa−b面との接着力が発現する事が分かった。中でも第四のケースに分類される金属であるニッケル、あるいはニッケル合金を用いれば、グラファイトの物性を全く劣化させることなく銅との接着が実現できる事を発見した。第三のケースに分類される金属でも接合は可能であるが、その場合にはグラファイト層が部分的に破壊された状態となるためグラファイト物性の劣化を避ける事が出来ない。すなわち、第三のグループに属する金属(アルミニウム、鉄、コバルトなど)を用いた場合、その接着は金属炭素化合物の形成によって起きるためにグラファイトの物性値が劣化するという問題があり、本発明の様に極めて薄いグラファイトの接合体を作製する場合にはその影響は大きい。
ニッケル合金としては、例えば、Ni−Fe系合金、Ni−Cu系合金、Ni−Al系合金、Ni−Co系合金、Ni−Cr系合金、Ni−Mo系合金、Ni−Ti系合金、Ni−Nb系合金などが本発明の本目的に好ましく用いられ、前記合金元素(Fe、Cu、Al、Co、Cr、Mo、Ti、Nb)を2種以上含むNi合金も同様に好ましく用いられる。Ni−Fe系の合金は通称パーマロイやアンバーなどと呼ばれ、Ni―Cu系、Ni―Cr系、Ni―Mo系などの合金は、それぞれ、通称モネル、インコネル、ハステロイとして知られている。純Niは、中性およびアルカリ性環境において良好な耐食性を示すが、Cr、Mo、Cuなどが目的に応じて添加された各種Ni基合金は、それぞれの腐食環境下で良好な耐食性を示す。Nb、Ti、Alなどの元素を追加して、さらにクリープ強度、高温強度を高めたニッケル合金も本発明の接着層として好ましい。なお、本発明の目的からニッケル合金におけるニッケル含有量は40質量%以上である事が好ましく、50質量%以上である事はより好ましく、60質量%以上である事は最も好ましい。
以上の知見と実験結果を基に、本発明者らはニッケルまたはニッケル合金による接合法を、厚さが9.6μm未満、10nm以上の範囲のグラファイトフィルム(特にキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上であるグラファイトフィルム)に適用する事によって、グラファイトフィルムの特性が、グラファイトと銅の接合体を形成する事によって全く劣化せず、その結果、銅配線と同等以上の耐電流密度特性(例えば、グラファイトフィルムと銅との接合体を幅100μm以下の線状に加工した場合の接合体のフィルム面方向の耐電流密度特性が2×106A/cm2以上)を実現できる事が分かった。原理的には、第四のグループに分類される鉄、ビスマスでも同様の接着効果はあると考えられるが、ニッケルと比較して純粋なビスマスの薄膜を形成するためには特殊な方法が必要であり、実用的にはニッケルまたはニッケル合金である事が本発明の接着層として好ましい。
接合体の線状加工物は、幅100μm以下であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下であり、幅の下限は、銅と同等以上の耐電流密度特性を示す限り特に限定されるものではない。
さらには、本発明に使用されるグラファイト膜は非常に薄く軽いため、その取り扱いは極めて難しいが、この様なニッケル、またはニッケル合金層をグラファイト上に形成する事でグラファイトフィルムの取り扱いが容易になると言う効果がある事は、先に述べた銅層形成の場合と同じである。この様なグラファイトと銅の接合体構成とする事によって、グラファイト配線回路形成における微細配線回路の作製を容易に行う事も出来る。
具体的なプロセスは、図示例を用いて説明できる。図2(a)(b)の例に示す様に、まずニッケルまたはニッケル合金の層20をグラファイトフィルム10の表面(a−b面)上に形成して予備積層体50を形成し、この予備積層体50のニッケルまたはニッケル合金層20に銅層30を積層して最終積層体(グラファイト/銅積層体)60にし、この最終積層体60を加圧・加熱してグラファイトフィルム10と銅層30とを接着(接合)する。
まず予備積層体50を形成しておくのは、グラファイトフィルムの取り扱い性を良好にするためである。本発明のグラファイトフィルムは薄く、その取り扱いは極めて難しいが、予備積層体50を形成しておくことにより、グラファイトフィルムの取り扱いが極めて容易になり、配線回路の形成プロセスの確立が容易になる。
この予備積層体50の形成方法は特に限定されないが、ニッケルまたはニッケル合金層の厚さは以下に述べる薄さである事が好ましいので、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンミリング法、イオンビーム法などの物理的な薄膜形成法を好ましく用いる事が出来る。ニッケルまたはニッケル合金層の厚さは極めて薄くて良く、好ましい厚さは銅層の2倍以下、より好ましくは1倍以下、さらに好ましくは2分の1倍未満である。例えばニッケルまたはニッケル合金層の厚さは、500nm未満、好ましくは300nm以下、より好ましくは150nm以下である。一方、ニッケルまたはニッケル合金層の下限は接着力を発現できるかどうかで決定され、検討の結果、例えば2nm以上、好ましくは2.5nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは8nm以上の厚さが必要である事が分かった。
なおグラファイトフィルムと銅との間にニッケルまたはニッケル合金を介入して最終積層体(グラファイト/銅積層体)60を製造可能である限り、そこに至るプロセスは特に限定されず、例えば、銅層に、前記と同じ方法でニッケルまたはニッケル合金層を形成して別の予備積層体を形成し、この予備積層体にグラファイトフィルムを積層して最終積層体60にしてもよい。こういった最終積層体でも、加圧・加熱することによってグラファイトフィルムと銅層とを接着(接合)可能である。
<グラファイト/銅積層体の加圧・加熱>
最終積層体(グラファイト/銅積層体)を加圧・加熱する工程では、具体的には該最終積層体を、不活性ガス中あるいは真空中、炭素がニッケルに溶け込む温度近く(700〜1000℃程度)で加圧処理する。この様な手法を用いればグラファイトの物性を損なう事無くグラファイトa−b面と銅の接合が可能になる。この方法を用いれば、有機系接着剤やシリコーン系接着剤などの絶縁材料によって接合を行う場合と異なり、グラファイトの耐熱温度特性、熱伝導特性、電気伝導特性などの優れた性質を全く失う事無くグラファイト/銅接合体を作製する事ができる。
前記加圧・加熱でグラファイトの物性を全く損なう事無くグラファイトa−b面と銅との接合が可能となるのは、そもそも一般に接合が困難と考えられていたグラファイトフィルムのa−b面にニッケル又はニッケル合金層がグラファイトの物性を損なうことなく接合されたためであり、こうしたことが可能となる機構は以下の様に考えられる。すなわち、熱処理によって接合面におけるグラファイト層の内の数層はニッケルと互いに溶融した状態となり、その時グラファイト層の構造は破壊されると考えられる。冷却時には溶解した炭素の多くは再び析出し、その時には非常に構造の整ったグラファイト層構造が形成されるが、このグラファイト層はニッケル金属から析出した物であるのでニッケル表面と強く接合している。また、ニッケル層中にはわずかな炭素が残存し、この事も結合力が発現する理由の一つと思われる。この時析出したグラファイト層は極めて結晶性に富み、グラファイトの電気的性質や熱的性質が失われる事無く接合を実現できる。
この様なニッケルによる接合の機構を図1に示した。図1(a)はグラファイト1aとニッケル2を接触させた状態を示す概略断面図であり、例えば、常温〜700℃未満の温度域がこの状態に該当する。圧力を印加した場合であってもグラファイト界面とニッケル表面の間隔4はグラファイト層間距離の0.3354nmよりも広くなっており結合力は発生しない。図1(b)はグラファイト/ニッケル積層部分を加圧・加熱した状態を示す概略断面図であり、例えば、700℃〜1000℃に加熱した時にこの状態になる。この状態では、グラファイト表面の炭素の一部はニッケル金属中に溶解し、固溶炭素3aになる。図1(c)は加圧・加熱の後、温度が低下した状態を示す概略断面図であり、ニッケル金属中に溶解していた炭素3aは再びニッケル表面に移動、析出する。図1(d)はさらに温度が低下した状態(例えば、700℃未満になった状態)を示す概略断面図であり、ニッケル表面に移動して析出した炭素原子3bが、ニッケルの触媒作用によって結晶化し、グラファイト構造を持つ炭素1bとなる。この時グラファイト構造の形成反応はニッケル表面で起こり、形成されたグラファイト層1bはニッケル表面と強く結合している。ニッケルの触媒作用によって形成される炭素は良質なグラファイトであるために、この接合反応によってグラファイトの品質が低下する事はない。前述したニッケルまたはニッケル合金層の厚さの下限は、この接合を実現するために設定されたものである。
加熱温度は、炭素がニッケルまたはニッケル合金に溶解可能な温度以上であり、例えば、700℃以上、好ましくは720℃以上、さらに好ましくは750℃以上である。加熱温度の上限は、銅の融点を超えない範囲で設定でき、例えば、1000℃以下、好ましくは950℃以下、より好ましくは920℃以下、特に好ましくは900℃以下である。
加圧圧着に用いる圧力の大きさには特に制限は無いが、圧力が小さすぎる場合には、面全体での十分な接触が実現できなくなるので好ましくない。圧力の大きさは0.02MPa(0.2kg/cm2)以上である事が好ましく、より好ましくは0.05MPa(0.5kg/cm2)以上、さらに好ましくは0.1MPa(1kg/cm2)以上である。圧力の上限には特に制限されず、加圧冶具の破損しない範囲で適宜選択でき、例えば、9.8MPa(100kg/cm2)以下、好ましくは4.9MPa(50kg/cm2)以下、より好ましくは1MPa(10kg/cm2)以下である。
加圧・加熱の時間は温度と圧力によって異なるが、最適な温度と圧力を用いれば圧着時間は極めて短時間でよく、例えば、10秒〜20分程度でもよい。加圧圧着時間が長くなり過ぎるとニッケルがグラファイト中に拡散してしまい接着力が失われる事になるので好ましくない。
<グラファイト/銅接合体>
以上のようにしてグラファイト/銅積層体(最終積層体)を加圧・加熱することによってグラファイトと銅とを接合し、グラファイト/銅接合体を得ることができる。この様にして得られるグラファイト/銅接合体は、この接合体を幅100μm以下の線状に加工した場合の接合体のフィルム面方向の耐電流密度特性が2×106A/cm2以上となり、耐電流密度特性に優れている。具体的な耐電流密度の値は、該接合体を構成するグラファイトフィルムや銅層の厚さ及び特性に応じて異なるが、グラファイトフィルムと銅層の厚さが本発明の範囲内である場合、耐電流密度特性は同じ厚さの銅箔と同等以上であり、同じ厚さのグラファイト単体とほとんど変わらない。
具体的にはキャリア移動度が8000cm2/V・secのグラファイトフィルム単体は、ほぼ銅と同等の耐電流密度特性(2×106A/cm2)を示し、同じグラファイトを用いたグラファイト/銅接合体(グラファイト厚さ2μm、銅の厚さ0.1μm)でもその耐電流密度特性はほぼ銅と同等である。また、キャリア移動度が9000cm2/V・secのグラファイトフィルム単体の耐電流密度特性は4×106A/cm2であり、同じグラファイトを用いたグラファイト/銅接合体(グラファイト厚さ2μm、銅の厚さ0.1μm)もほぼ同じ耐電流密度特性を有している。さらに、キャリア移動度が10000cm2/V・sec以上のグラファイトフィルム単体の耐電流密度特性はおよそ1×107A/cm2であり、同じグラファイトを用いたグラファイト/銅接合体(グラファイト厚さ2μm、銅の厚さ0.1μm)の耐電流密度特性も変わらない。以上より、本発明のグラファイト/銅接合体の耐電流密度は、接合前のグラファイトフィルムと同等であるといえ、その値は、例えば2×106〜30×106A/cm2程度、好ましくは2×106〜20×106A/cm2程度、より好ましくは3×106〜10×106A/cm2程度の範囲で設計できる。
本発明の接合体の耐電流密度特性が同じ厚さのグラファイトフィルム単体の耐電流密度特性が変わらないまたはそれよりも高くなると言うことは、グラファイト/銅接合体とする事によって、耐電流密度特性が単純に銅とグラファイトの特性を足し合わせものではなく、なんらかの相乗効果が働き、耐電流密度特性が向上した事を示している。
<絶縁性基板との接合>
本発明のグラファイトフィルム/銅接合体配線材料を用いて電気配線回路を作製するためには絶縁基板と複合する事が好ましい。例えば、図2(c)(d)の例で示す様に、グラファイト/銅接合体60の銅層30に、絶縁基板40を接着することで絶縁基板40との複合体70を得ることができる。銅層30と絶縁基板40との接着は、公知の接着剤(接着層)を用いて行っても良く、必要に応じて熱圧着等の物理的手段で接着してもよい。
絶縁基板としては特に制限は無く、有機高分子基板(有機高分子フィルム)及び無機基板のいずれも使用可能であり、通常の銅配線プリント基板製造のために用いられる各種の基板材料を用いる事が出来る。例えば、プリント配線板の絶縁性基板として広く使用されている耐熱性ポリイミド基板、PEN基板、あるいはガラスエポキシ基板等を例示する事が出来る。具体的な耐熱性ポリイミド基板の例として、商品名「アピカル(登録商標)」((株)カネカ製)、商品名「カプトン(登録商標)」(東レ・デュポン社製)、商品名「ユーピレックス(登録商標)」(宇部興産(株)製)を挙げる事ができる。また、熱圧着する場合には熱圧着用のポリイミドが好ましく用いられ、そのガラス転移点が500℃以下のものが好ましい。これらは、柔軟性を呈する限り、前記有機高分子基板又は前記無機基板をそれぞれ単独で又は組み合わせてもよく、予め一体化されていてもよい。
また接着剤(接着層)を用いて前記有機高分子基板または前記無機基板を接着する場合、接着剤(接着層)としては、例えば、ポリイミド樹脂が使用できる。ポリイミド樹脂は熱可塑性を有しており、基板としてではなく、接着層としても使用できる。また変性アクリレート系接着剤(例えば、デュポン社製パイララックス(登録商標)LFO100)等を使用することもできる。
また、前記熱圧着方法としては、熱プレス、真空プレス、ラミネート(熱ラミネート)、真空ラミネート、熱ロールラミネート、真空熱ロールラミネート等を挙げることができる。これらの熱圧着法では、最適な温度、圧力、処理時間を採用することができる。
<配線板の製造>
こうして作製された、グラファイト/ニッケル(合金)接合層/銅/絶縁基板からなる複合体70は次のステップである配線板形成工程に供される。図2(d)、(e)、(f)は配線板形成工程の一例を示す概略図である。この配線板形成工程では、図2(e)に示すように、第1のエッチングでグラファイト層の一部を除去して回路を形成(パターニング)し、この回路形成工程で露出した銅30を含む部分(図示例では銅30の表面のニッケル又はニッケル合金層20が露出している)を図2(f)に示す様に第2のエッチングで除去することで配線板90を製造する。
前記第1のエッチングでは、レーザーエッチングまたは反応性イオンエッチング(RIE)を採用できる。レーザーエッチングのレーザーは、固体レーザー、液体レーザー、ガスレーザーのいずれでもよく、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー、ファイバーレーザー、エキシマレーザーなどによるドライプロセスを好ましく用いる事ができ、特に好ましくはYAGレーザー、YVO4レーザーである。レーザーエッチングの場合、グラファイト層は炭素のみから成っているのでレーザーの熱によって照射部位は容易に燃焼して炭酸ガスとなり、除去される。通常、前記絶縁性基板が有機高分子フィルムである場合、レーザーエッチングの際にその熱によって高分子の一部が分解して炭素化する事が避けられず、微細回路作製時の大きな妨げとなる。しかしながら、本発明の手法では絶縁性基板とグラファイトの間に銅層が存在しており、この銅層によってレーザーの熱が拡散されるため、前記レーザーエッチングの工程での絶縁性基板の損傷を防止でき、微細な配線回路の作製が可能になる。
なお第1のエッチングでは、配線回路を形成する他、ホール(例えばビアホール)を形成してもよい。ホールを形成する場合には、レーザー以外に、NC(Numerical Control)ドリル等のドリル、NCパンチング等のパンチング、酸素またはアルゴンを用いたプラズマ等のプラズマ等を用いても良い。
反応性イオンエッチング(RIE)を行う場合は、反応室内でエッチングガスに電磁波などを与えてプラズマ化し、同時に試料を置く陰極に高周波を印加する。試料とプラズマの間に自己バイアス電位が生じ、プラズマ中のイオン種やラジカル種が試料方向に加速されて衝突し、その際にイオンによるスパッタリングとエッチングガスの反応が同時に起こり、高い精度での微細加工が可能になる。グラファイト膜は酸素系のエッチングガスを用いたRIEにより、グラファイト膜を所望の形状に容易にパターニングする事ができる。この様な反応性イオンエッチング工程においても、本発明の積層体構造において、絶縁性基板の間に存在する銅層(あるいはニッケル層)はエッチングガスから基板の損傷を防ぐと言う重要な役割を果たす。反応性イオンエッチング装置としては、(株)サムコのRIE−101Lを例示する事ができる。
前記第2のエッチングでは、化学エッチングを採用できる。上記レーザーエッチングによってグラファイト層が剥離した箇所は、銅層を含む層(特に金属層。図2の例では、銅層30とニッケル又はニッケル合金層20)が露出しており、こうした金属層は、化学エッチングによって溶解除去できる。化学エッチングに用いられるエッチャントとしては特に制限されないが、例えば塩化第二鉄溶液系、塩化第二銅溶液系、硫酸−過酸化水素系などの既知の銅エッチャントを好適に用いる事が出来る。具体的には市販の塩化第二鉄溶液の他に、大量の銅エッチングのためのメックパワーエッチHE−7000YやHE−7002A、微細なエッチングのためのメックブライトQE-7300、メックブライトCl-7200(以上、いずれもメック株式会社製)、アデカケルミカFE−200、アデカケルミカTFE−3000、アデカケルミカTFE−5000、アデカケルミカAD、アデカケルミカW(以上いずれも(株)ADEKA製)等を例示できる。
なお銅表面に存在するニッケル又はニッケル合金層は極めて薄いために銅層のエッチングの際に銅と共に取り除かれ、特にニッケル又はニッケル合金層除去のためのエッチングを行う必要はない事が多い。しかしながら、ニッケル又はニッケル合金接着層が比較的厚い場合には必要に応じてニッケル又はニッケル合金層除去のためのエッチングを行っても良い。具体的なニッケル又はニッケル合金層除去のためのエッチャントとしてはアルカリリムーバーNR((株)アデカ製)、メックリムーバーNH−1860、CHシリーズ(以上、メック株式会社製)等を例示する事ができる。
また、化学エッチングプロセスの際に銅層上に設けられたグラファイト回路パターンは銅層のみをエッチング除去する際のレジストとしての重要な役割を持っており、グラファイト回路層をレジストとして用いる事により、露出した銅層のみを除去できる。このとき、銅層除去のために用いられるエッチャントは基本的に銅用のエッチャントであるために、エッチャントがグラファイト−銅間(接合面)のニッケルまたはニッケル合金層を溶解する事は無く、化学エッチング工程で接合面が剥がされることも無い。
以上、説明した本発明の配線板の製造方法は、概略、以下の(A)〜(C)の工程を有することになる。
(A)グラファイトフィルム/銅接合体の銅層に、絶縁性の有機高分子基板または絶縁性の無機基板を接合して複合体を製造する工程
(B)前記複合体のグラファイトフィルム面にレーザーエッチング、または反応性イオンエッチング等によって配線回路及び/又はホールを形成する工程
(C)前記配線回路形成またはホール形成により露出した銅層を化学エッチングにより除去する工程
<工程(D)>
本発明では、前記(A)〜(C)の工程の他、さらに必要に応じて配線回路上に金属めっきを施す工程(工程(D))を実施してもよい。この工程(D)は、グラファイトフィルム面に形成された配線またはホールに、別途金属めっき層等の導体を形成する工程である。金属めっき層としては、蒸着、スパッタ、CVD等の各種乾式めっき、無電解めっき等の湿式めっきのいずれも適用可能である。無電解めっきの種類としては無電解銅めっき、無電解ニッケルめっき、無電解金めっき、無電解銀めっき、無電解錫めっき等を挙げる事ができる。金属めっき層の厚みとしては特に制限はない。
以上の工程(A)〜(D)の他に、金属層を所望の厚みまで形成する電解めっき、めっきレジスト、エッチング、レジスト剥離等の工程を行ってもよく、これらの工程を繰り返し行ってもよい。また、工程(A)〜(D)により作製したグラファイト配線材料を、基板から剥離して別の前記有機高分子基板または無機基板上に積層して配線板を作製することもできる。
<工程(E)>
本発明では、以上によって製造された配線基板上に、外装を施す工程(E)を実施してもよい。この外装は、製造された配線回路にフィルム状、あるいは溶液状のカバーレイ(絶縁膜)を施すことを言う。本発明のグラファイト配線材料には公知のカバーレイ材料を好ましく用いる事が出来る。
以下実施例を示し、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明はこれら実施例によって限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能である。
<<物性測定方法>>
<高分子フィルム厚さ・グラファイトフィルム厚さ>
原料である高分子フィルム、グラファイトフィルムの厚さは、プラス、マイナス5〜10%程度の誤差がある。そのため得られたフィルムの10点平均の厚さを本発明における試料の厚さとした。
<金属層厚さ>
金属層の厚さは水晶振動子の蒸着材料付着による振動数の変化により決定した。
<キャリア移動度>
キャリア移動度の測定を行うに先立ち、まずグラファイトフィルムの電気伝導度を測定した。グラファイトフィルムの電気伝導度はファン・デル・ポー法によって行った。この方法は薄膜状の試料の電気伝導度を測定するのに最も適した方法である。この測定法の詳細は非特許文献7(P170)に記載されている。この手法では任意の形状の薄膜試料端部の任意の4点に電極を取り付けて測定を行うことが出来、試料の厚が均一であれば正確な測定が行う事が出来る。本発明においては5mm×5mmの正方形に切断した試料を用い、それぞれの4つの角(稜)に銀ペースト電極を取り付けて行った。測定は(株)東洋テクニカ製、比抵抗/DC&ACホール測定システム、Resi Test 8300を用いて行った。
キャリア移動度の測定は電気伝導度測定に用いた試料に磁場を印加し、そのホール係数を測定する事で行った。グラファイトの様に電子とホールがほぼ同じ数だけ存在する場合、その計算はNewton法を用いてその解析を行う事ができる(非特許文献8)。この計算では電子とホールの密度、両者の移動度で合計4個のパラメータがあり、3種の測定値、電気伝導度、ホール係数、磁気抵抗から3つの連立方程式となるので、電子とホールの移動度が等しいと仮定して実施した。この仮定は高品質グラファイトでは妥当である事が知られている(非特許文献8)。
<耐電流密度特性>
測定試料となる各実施例・比較例で得られたグラファイト/銅接合体を幅100μm、長さ2mmに切断し、電極間隔を1mmとしそこに直流電流を印加した。耐電流密度の測定は不活性ガス(アルゴン)中250℃の環境下で行い、印加電流を増加させ20分後の電圧値が変化しなければその電流値を耐電流密度とした。比較のために厚さ10μm〜3μmの範囲の銅箔を準備し、同じ厚さで同じ形状に切り出した銅箔の耐電流密度特性を測定して接合体フィルムとの比較を行った。接合体フィルムの破断電流値が銅の電流値を上回った場合、当該接合体フィルムの耐電流密度特性を銅以上であるとした。10μm〜3μmの範囲の厚さの銅箔の耐電流密度特性はおよそ2×106A/cm2の程度であった。ちなみに幅100μm、厚さ1μmの試料に2Aを印加した場合、その耐電流密度は2×106A/cm2と言う事になる。
<<グラファイトフィルムの作製>>
<原料高分子膜の作製>
ピロメリット酸無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で合成したポリアミド酸の18質量%のジメチルホルムアミド(DMF)溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミニウム箔上に流延塗布し、さらにワイヤバーを用いて厚さ調整を行った。この様な方法で50μmから1μmの範囲の厚さの異なるフィルムを調製した。1μm〜20nmの範囲の均一な厚さの高分子フィルムはこの様な方法では作製が困難であるため、スピンコーターを用いて、アミド酸溶液の濃度、回転数を変えることで厚さの異なる何種類かのフィルムを作製し、これらを熱処理する事でポリイミドフィルムを得た。熱処理条件は120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱であった。ポリイミドフィルム形成後、アルミニウム箔をエッチング除去しポリイミドフィルム(高分子試料A)を得た。本発明の実施例において特に記載のない場合には、製膜時にフィラー成分を一切添加せずに成膜しており、実質的にフィラー成分は0.1質量%以下であった。
<グラファイト化>
前記で作製した厚みの異なる6種類のポリイミドフィルムを用いて、電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理(炭素化処理)をした。次に得られた炭素化シートを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度でそれぞれ3000℃、3100℃、3200℃の最高処理温度まで昇温した。この温度で30分間(処理時間)保持し、その後40℃/分の速度で降温し、厚さの異なるグラファイトシート(厚さ:9μm、2μm、0.6μm、100nm、20nm、12nm)を作製した。処理はアルゴン雰囲気で0.1MPa(1.0kg/cm2)の加圧下で行った。得られたグラファイトシートの面積は厚さの違いによって収縮、膨張の比率が異なるために一定ではなかったが、いずれも7.5×7.5cm2〜9.5×9.5cm2の範囲にあった。フィルムの断面SEM写真を観察した結果グラファイトフィルムの内部は極めて綺麗に配向した層構造で形成されており、フィルム面がグラファイトa−b面であることが分かった。
以上のグラファイトフィルムのうち、各実施例で用いたものは以下の通りである。
グラファイトフィルム1:厚さ2μm、最高処理温度3200℃、キャリア移動度特性10000cm2/V・sec、耐電流密度特性1×107A/cm2
グラファイトフィルム2:厚さ2μm、最高処理温度3100℃、キャリア移動度特性9000cm2/V・sec、耐電流密度特性4×106A/cm2
グラファイトフィルム3:厚さ2μm、最高処理温度3000℃、キャリア移動度特性8000cm2/V・sec、耐電流密度特性2×106A/cm2
グラファイトフィルム4:厚さ9μm、最高処理温度3200℃
グラファイトフィルム5:厚さ0.6μm、最高処理温度3200℃
グラファイトフィルム6:厚さ100nm、最高処理温度3200℃
グラファイトフィルム7:厚さ20nm、最高処理温度3200℃
グラファイトフィルム8:厚さ12nm、最高処理温度3200℃
<実施例1>
厚さ100nmの銅箔を準備し、片方に窓が付いたステンレス冶具に挟持し、真空蒸着法で銅箔の片面に金属ニッケル層(接着層)を形成した。ニッケル層の厚さは10nmとした。作製したニッケル層を形成した銅箔とグラファイトフィルム1を、ニッケル層を挟んで積層し、加圧装置を備えた電気炉にセットした。10℃/分の速度で昇温し、800℃に到達後、0.49MPa(5kg/cm2)の圧力で5分間プレスした。プレス処理の後20℃/分の速度で400℃まで降温し、その後自然放冷した。
得られた試料を1×1cm2の大きさに切断し試料両面に粘着テープを貼り付け、何度か剥離試験を行った。剥離面はいずれもグラファイト層の層間で発生し、グラファイト−ニッケル層間、あるいはニッケル−銅層の間での剥離は認められなかった。この事からニッケル層を接着材料として、グラファイトと銅の接着がグラファイト層間剥離強度以上の強度で実現できる事が分かった。
次に耐電流密度特性を幅100μm、長さ2mmの大きさに切断した試料を用いて測定した。その結果、耐電流密度特性は1×107A/cm2であり、同じ厚さの銅の耐電流密度特性(2×106A/cm2)よりも優れ、グラファイトフィルム1の耐電流密度特性と同じ値であった。この事から本発明のグラファイト/銅接合体はグラファイト自体の特性を全く損なう事無く形成されている事が分かった。
<実施例2、3>
グラファイトフィルム2(実施例2)またはグラファイトフィルム3(実施例3)を用いる以外は、実施例1で記載した方法と全く同じ方法でグラファイト/銅接合体を作製した。
得られた2種類の試料を1×1cm2の大きさに切断し、試料両面に粘着テープを貼り付け何度か剥離試験を行った。剥離面はいずれの試料でもグラファイト層の層間で発生し、グラファイト−ニッケル層間、あるいはニッケル−銅層の間での剥離は認められなかった。この事からニッケル層を接着材料として、グラファイトと銅の接着がグラファイト層間剥離強度以上の強度で実現できる事が分かった。
次に耐電流密度特性を幅100μm、長さ2mmの大きさに切断した試料を用いて測定した。その結果、耐電流密度特性は、実施例2の試料では4×106A/cm2であり、実施例3の試料では2.5×106A/cm2であり、グラファイトフィルム2、及びグラファイトフィルム3の耐電流密度特性は、ほぼ同じ厚さの銅(耐電流密度特性:2×106A/cm2)と同等以上であった。この事から本発明のグラファイト/銅接合体はグラファイト自体の特性を全く損なう事無く形成されている事が分かった。
<実施例4〜8>
グラファイトフィルム4(実施例4)、グラファイトフィルム5(実施例5)、グラファイトフィルム6(実施例6)、グラファイトフィルム7(実施例7)、またはグラファイトフィルム8(実施例8)を用いる以外は実施例1と同じ方法で、グラファイト/銅の接合体を作製した。
得られた4種類の試料を1×1cm2〜1×1mm2の範囲の大きさの正方形に切断し、試料両面に粘着テープを貼り付け剥離試験を行った。剥離面はいずれの試料でもグラファイト層の層間で発生し、グラファイト−ニッケル層間、あるいはニッケル−銅層の間での剥離は認められなかった。この事からニッケル層を接着材料として、グラファイトと銅の接着がグラファイト層間剥離強度以上の強度で実現できる事が分かった。
次に耐電流密度特性を幅100μm、長さ2mmの大きさに切断した試料を用いて測定した。その結果、耐電流密度特性は、実施例4の試料ではほぼ1×107A/cm2であり、実施例5の試料ではほぼ8×106A/cm2、実施例6の試料ではほぼ6×106A/cm2であり、実施例7の試料では5×106A/cm2であり、実施例8の試料では4×106A/cm2であり、何れも同じ厚さの銅の耐電流密度特性を上回っていた。この事から本発明のグラファイト/銅接合体はグラファイト自体の特性を全く損なう事無く形成されている事が分かった。
<実施例9〜11>
厚さの異なる3種類の銅箔(実施例9:厚さ20nm、実施例10:厚さ400nm、実施例11:厚さ1μm)を用いた以外は、実施例1と同じ方法でグラファイト/銅接合体を作製した。
得られた3種類の試料を1×1cm2〜1×1mm2の範囲の正方形の大きさに切断し、試料両面に粘着テープを貼り付け剥離試験を行った。剥離面はいずれの試料でもグラファイト層の層間で発生し、グラファイト−ニッケル層間、あるいはニッケル−銅層の間での剥離は認められなかった。この事からニッケル層を接着材料として、グラファイトと銅の接着がグラファイト層間剥離強度以上の強度で実現できる事が分かった。
次に耐電流密度特性を幅100μm、長さ2mmの大きさに切断した試料を用いて測定した。その結果、耐電流密度特性は、実施例9の試料ではほぼ1.2×107A/cm2であり、実施例10の試料ではほぼ1×107A/cm2、実施例11の試料ではほぼ8×106A/cm2であり、何れも同じ厚さの銅の耐電流密度特性を上回っていた。この事から本発明のグラファイト/銅接合体はグラファイト自体の特性を全く損なう事無く形成されている事が分かった。
<実施例12〜14>
接着に用いるニッケル層の厚さを、20nm(実施例12)、50nm(実施例13)、または100nm(実施例14)に変更した以外は実施例1と同じ方法で、グラファイト/銅の接合体を作製した。その結果、いずれの厚さのニッケル層を用いても良好な接着が実現できる事がわかり、実施例1と同様の剥離実験を行うと、剥離はすべてグラファイト層間で起こった。
<比較例1>
接着に用いるニッケル層の厚さを2nm弱とし、実施例1と同じ方法でグラファイトと銅の接着を試みた。剥離実験の結果、部分的に接合界面での剥離が観察され、接合面全面での良好な接着は実現できない事が分かった。この結果からニッケルを用いた接着には2nm以上の厚さが好ましい事が分かった。
<比較例2>
接着に用いるニッケル層の厚さをほぼ1μmとし、実施例1と同じ方法によりグラファイトと銅の接着を試みた。剥離実験では良好な接着が出来たが、得られた接合体(グラファイト(2μm)/ニッケル層(1μm)/銅(100nm))では、その耐電流密度特性は銅の耐電流密度特性よりも低いものであった。この事から、本来接着層であるニッケル層が厚すぎると銅を上回る耐電流密度特性の実現は困難となる事が分かった。
<実施例15、16、17>
グラファイト/銅接合体をホットプレスで作製する際の最高処理温度条件を、700℃(実施例15)、900℃(実施例16)、または1000℃(実施例17)とした以外は実施例1と同様にして接合体を作製した。何れの条件でも良好な接着が実現でき、実施例1と同様の剥離実験を行うと、剥離はすべてグラファイト層間で起こった。
<比較例3>
ホットプレスの最高処理温度を650℃とする以外は実施例1と同様にして接合体の作製を試みたが、グラファイトフィルムと銅を接合出来なかった。また、1000℃超での接着は銅の融点を考慮すると不可能である事は明らかである。したがって本発明において好ましいホットプレスの温度条件は700℃〜1000℃の間である事が分かった。
<実施例18>
接着層としてニッケルの代わりにニッケル−クロム合金を用いた以外は実施例1と同じ方法で、グラファイト/銅接合体の作製を行った。ニッケル−クロム合金においてもニッケルと変わりなく接着ができ、実施例1と同様の剥離実験を行うと、剥離はすべてグラファイト層間で起こった。
<実施例19>
配線回路形成
実施例1で作製したグラファイト/銅接合体をもちいて配線板の作製を行った。絶縁性基板として用いたのは(株)カネカ製ポリイミド(厚さ、12μm)とデュポン社製パイララックスI.F0100(厚さ25μm)を貼り合わせた高分子フィルムである。最初に、グラファイト/銅接合体フィルムと基板高分子フィルムを、熱ラミネータを用いて150℃で貼り合わせた。
次に、IEC規格(IEC60825−1)でClass 4に相当するYVO4レーザーマーカー(KEYENCE社製MD−V9900)を用いてグラファイト層の剥離除去による回路形成加工を行った。このレーザーを用いて加工する事により幅10μm、配線間隔10μmのグラファイト回路形成を行った。この様なレーザーエッチングによって、グラファイトと金属間の剥離は全く生じなかった。
次に、グラファイト配線回路/ニッケル接着層(10nm)/銅(100nm)/ポリイミド基板からなる配線板を硫酸−過酸化水素系エッチャント(メック株式会社製、メックブライトQE−7300)をもちいて銅層のエッチングを行った。この操作によりアンダーカットをほとんど起こす事無く銅層の除去ができた。また、この様な化学エッチングの過程でグラファイトと金属間の剥離は全く生じなかった。
最後に上記方法でエッチング加工したグラファイト配線の表面を保護フィルムでカバーした。用いた保護フィルムはPET(厚さ12μm)/熱可塑性ポリエステルフィルム樹脂層(25μm)(Shinchang Hotmelt CO.,LTD製SC−501)である。
このようにして作製した配線板は優れた柔軟性を有しており、基本的にこの様な手法で本発明のグラファイト/銅積層配線板を作製する事が出来る事が分かった。また、用いられたグラファイト/銅積層配線回路は、銅に代わる配線材料として極めて優れた特性を有する事が分かった。
以上述べた様に、本発明は高いキャリア移動度と耐電流密度特性を有するグラファイトと銅の積層接合体シートを用いる事により、従来の銅配線材料を上回る耐電流密度特性を持つ配線材料が実現でき、しかも微細な配線回路形成が可能である事を発見して成されたものである。
1a、1b グラファイト
2 ニッケル
3a 固溶炭素
3b 析出炭素
10 グラファイトフィルム
20 ニッケルまたはニッケル合金層
30 銅層
40 絶縁基板
50 予備積層体
60 グラファイト/銅積層体、グラファイト/銅接合体
70 複合体
90 配線板

Claims (13)

  1. 厚さが9.6μm未満、10nm以上の範囲であるグラファイトフィルムのa−b面と銅が接合された接合体であって、該接合体を幅100μm以下の線状に加工した場合の接合体のフィルム面方向の耐電流密度特性が2×106A/cm2以上であり、前記グラファイトフィルムと前記銅がニッケルまたはニッケル合金によって接合されている事を特徴とする配線材料。
  2. 温度25℃における前記グラファイトフィルムのa−b面方向のキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上である請求項1に記載の配線材料。
  3. 銅層の厚さが、前記グラファイトフィルムの厚さの2分の1倍以下であり、かつ4nm以上である請求項1または2に記載の配線材料。
  4. ッケルまたはニッケル合金層の厚さが前記銅層の厚さの2分の1倍未満であり、かつ2nm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の配線材料。
  5. 前記配線材料が、さらに絶縁性の有機高分子基板または絶縁性の無機基板を有しており、グラファイト;ニッケルまたはニッケル合金;銅;絶縁性の有機高分子基板または絶縁性の無機基板の順に積層されている請求項1〜のいずれかに記載の配線材料。
  6. 前記グラファイトフィルムのa−b面と銅との間にニッケルまたはニッケル合金を介入し、得られる積層体を加圧・加熱処理してグラファイトフィルムと銅を接合する請求項1〜5のいずれかに記載の配線材料の製造方法。
  7. ニッケルまたはニッケル合金によるグラファイトと銅の接合が、700℃〜1000℃の温度範囲で行われる請求項に記載の配線材料の製造方法。
  8. グラファイトフィルムと銅とを接合した後、銅の表面に、絶縁性の有機高分子基板または絶縁性の無機基板を接合する請求項またはに記載の配線材料の製造方法。
  9. 請求項に記載の配線材料に対して、そのグラファイト層の一部をレーザーエッチング、または反応性イオンエッチング(RIE)技術を用いてパターニングする工程を含む事を特徴とする配線板の製造方法。
  10. 前記レーザーエッチングが炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー、エキシマレーザー、またはファイバーレーザーによるエッチングである請求項に記載の配線板の製造方法。
  11. 前記の反応性イオンエッチングが酸素系エッチングガスを用いて行われるエッチングである請求項に記載の配線板の製造方法。
  12. レーザーエッチングまたは反応性イオンエッチングによりグラファイト層の一部を除去した後、さらに銅層の一部を化学エッチングにより除去して回路形成を行う工程を含む請求項11のいずれかに記載の配線板の製造方法。
  13. 厚さが9.6μm未満、10nm以上の範囲であり、温度25℃におけるフィルム面方向のキャリア移動度が8000cm2/V・sec以上であるグラファイトと、厚さが4.8μm以下、4nm以上の厚さの銅を、厚さが500nm未満、2nm以上のニッケルまたはニッケル合金を用いて接合して接合体を作製する工程と、
    前記接合体の銅層に絶縁性の有機高分子基板または無機基板と接合する工程と、
    グラファイト層の一部をレーザーまたは反応性イオンエッチングによって除去して回路及び/又はホールを形成する工程と、
    前記グラファイトの除去によって露出した銅の部分を化学エッチングによって除去する工程と、
    を含む事を特徴とする配線板の製造方法。
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