JP4048914B2 - 回路基板の製造方法および回路基板 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、回路基板の製造方法および回路基板に係り、特に、パワーモジュール等に使用される回路基板の製作に有用なセラミックス基板と金属板との接合体の製造に用いて好適な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、パワーモジュール等に利用される半導体装置においては、アルミナ、ベリリア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等のセラミックス基板の表裏面に、Cu、Al、それらの金属を成分とする合金等の金属回路と放熱板とがそれぞれ形成されてなる回路基板が用いられている。このような回路基板は、樹脂基板と金属基板との複合基板ないしは樹脂基板よりも、高絶縁性が安定して得られることが特長である。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−32204号公報
【特許文献2】
特開平10−178270号公報
【特許文献3】
特開2000−335983号公報
【0004】
セラミックス基板と金属回路又は放熱板の接合方法としては、大別してろう材を用いたろう付け法がある。代表的な例としては、純アルミ板と窒化アルミニウムをAl−Siの共晶点を利用して接合する方法がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、加熱接合時にセラミックス基板とろう材、および、ろう材と金属板、においてそれぞれの接触が完全でない場合があり、セラミックス基板と金属板との接合が不十分になってしまい製造歩留まりが悪くなり製造コストが上昇するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、セラミックス基板と金属板との接続面積を増大して接合率を向上し、パワーモジュール用回路基板として充分に高い接合を持つ接合体を容易かつ安価に製造するという目的を達成しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明回路基板の製造方法は、セラミックス基板と金属板とを接触させ、高温下で加圧接合して回路基板を製造する際に、
ろう材粉末によってブラスト処理して前記金属板の接合面積を増大させ、この金属板を前記セラミックス基板と接合することにより上記課題を解決した。
本発明において、前記ろう材粉末が、前記セラミックス基板または前記金属板と加熱した際に、合金としての共晶点が低下するものとされることが望ましい。
また、本発明において、前記ろう材粉末がSiを含み、前記金属板がAlとされる手段か、前記ろう材粉末がGeを含み、前記金属板がCuとされる手段か、前記ろう材粉末がGeを含み、前記金属板がAlとされる手段か、前記ろう材粉末がCuを含み、前記金属板がAlとされる手段か、前記ろう材粉末がAlを含み、前記金属板がCuとされる手段を採用することもできる。
本発明回路基板は、上記の製造方法により製造されたことにより上記課題を解決した。
【0008】
本発明回路基板の製造方法は、ろう材粉末によってブラスト処理することで、ろう材粉末が金属板表面内にくいこむか埋め込まれるため、このろう材と金属板との接触面積を、シート状のろう材を使用した場合に比べて増大することができる。従って、金属板をセラミックス基板に圧接して高温で加圧接合する際に、シート状のろう材を使用するよりもセラミックス基板と金属板の接合状態を良好にすることができ、これにより、充分な接合状態とされた回路基板を製造して、回路基板の製造における歩留まりを向上して、製造コストを制限することが可能となる。
また、ろう材粉末をブラスト処理するだけですむため、金属板とろう材箔との接合部材(クラッド)を製造しこれをセラミックス基板と接合するものに比べて工程数が少なく低コストに製造することが可能となる。さらに、あらかじめ、ろう材粉末のブラスト処理を施したAl板を、プレス加工等により任意のパターン形状に打ち抜き、または、打ち抜き後にブラスト処理を施したAl板を接合することにより、パターニングされた接合体を得ることも可能である。
【0009】
本発明において、前記ろう材粉末が、前記金属板と加熱した際に、合金としての共晶点が低下するものとされることにより、金属板表面にくい込んだろう材粉末により、金属板の融点よりも低い温度状態の熱処理で、金属板とセラミックス基板とを容易に接合することが可能となる。
【0010】
具体的には、前記金属板が融点660℃のAlとされた際に、ろう材としてSi粉末を使用することにより金属板表面で共晶点を577℃とすることや、前記金属板が融点1083℃のCuとされた際に、ろう材としてGe粉末を使用することにより金属板表面で共晶点を640℃付近とすることができる。
【0011】
本発明回路基板は、上記の製造方法により製造されたことで、接合率を向上するとともに製造コストを低減することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る回路基板の製造方法および回路基板の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態の回路基板の製造方法におけるアルミニウム板を示す断面図(a)と、そのブラスト面付近の拡大図(b)であり、図において、符号Mはアルミニウム板、Bはろう材粉末である。
【0013】
本実施形態は、セラミックス基板とアルミニウム板(金属板)とを接触させ、高温下で加圧接合して回路基板を製造する回路基板の製造方法である。この際、図1(a)に矢印Aで示すように、ろう材粉末Bによってブラスト処理することでアルミニウム板(金属板)Mの接合面積を増大させ、この金属板Mのブラスト処理した面をセラミックス基板の両面に当接し、この状態で高温加圧接合するものである。
【0014】
ここで、セラミックス基板としては、例えば、AlN,Al2O3、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)等が用いられる。パワーモジュール用回路基板の作製には絶縁性の良好な窒化ケイ素基板又は窒化アルミニウム基板が望ましい。また、セラミックス基板の形状は通常矩形であることが多いが、形状は用途によって適宜選択されるものであり、回路基板の形状に何ら制約を受けるものではない。セラミックス基板の厚さは、要求される回路基板の強さによって異なるが、通常、0.1mmから2.0mmのものが使われる。
【0015】
接合する金属板Mは、本実施形態ではアルミニウムからなる板とされ、特に、99.99%程度の純度の高いアルミニウムからなるものとされることが好ましい。
【0016】
ろう材粉末Bは、使用するセラミック基板や金属板Mの材質により適宜選択可能であるが、アルミニウム板(金属板)Mと加熱した際に、合金としての共晶点が低下するものとされ、本実施形態では、例えばSi粉末や、Al−Si系合金、Al−Ge系合金、Al−Cu系合金が適用可能であり、具体的にはSi粉末とされる。
また、ろう材粉末Bは粒径が5μm〜150μmのものとされることが好ましく、より好ましくは、10〜70μm程度の粒径とされる。
【0017】
本実施形態の製造方法においては、98.1〜490kPa(1〜5kgf/cm2 )程度の圧力により、ろう材粉末Bによってアルミニウム板Mをブラスト処理する。これにより、図1(b)に示すように、ろう材粉末Bがアルミニウム板Mの全表面にくいこむか埋め込まれた状態となり、アルミニウム板Mの片側表面における全体に微細な凹凸が形成された状態となる。
次いで、アルミニウム板M表面に付いた余計なろう材粉末Bを払い落とす。
【0018】
この後、アルミニウム板Mのブラスト処理面をセラミックス基板の両面に当接し、均等に加圧した状態で、熱処理炉等に入れることにより、セラミックス基板面内方向においてセラミックス基板とアルミニウム板Mとを均一に加熱接合し接合体を形成する。ここで、アルミニウム板Mに対して垂直方向に付与する圧力を9.8×10−4Pa〜39.2×10−4Pa(1〜4kgf/cm2 )として調整した状態でアルミニウム板Mへの加圧状態を維持し、577℃以上、具体的には600〜650℃程度の温度条件として加熱接合をおこなう。
この際、アルミニウム板Mの接合面積がブラスト処理により増大しているため、アルミニウム板Mをセラミックス基板に圧接して高温で加圧接合する際に、シート状のろう材を使用するよりもセラミックス基板とアルミニウム板Mとの接合状態を改善することができる。同時に、ろう材粉末Bがアルミニウム板M表面内にくいこむか埋め込まれるため、このろう材粉末Bとアルミニウム板Mとの接触面積を、シート状のろう材を使用した場合に比べて増大することができる。
【0019】
図2はAl−Siにおける金属および合金の状態図である。
ここで、加圧接合時の温度条件を577℃以上としたのは、図2に示すように、アルミニウムAlとシリコンSiとの共晶点が577℃であり、ろう材粉末Bがアルミニウム板M表面にくい込んで互いに接していることにより、この577℃以上という温度条件で液相を出現させてアルミニウム板Mとセラミックス基板とを接合することが可能になるためである。
【0020】
その後接合体から回路基板を製造する方法として、フルエッチ法では金属板部分を、目的形状とするため、化学エッチング等の方法で不要な金属板及びろう材を除去して、パターニングすなわち金属回路を形成して回路基板を製造する。さらに、パターニングして回路形成後、ハンダ濡れ性や耐候性の向上のために金属部分にNi系などのメッキ処理を施すのが一般的である。メッキ方法は電解メッキ法や無電解メッキ法など特に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態の回路基板およびその製造方法においては、ろう材粉末Bによってアルミニウム板Mをブラスト処理することで、ろう材粉末Bがアルミニウム板M表面内にくいこむか埋め込まれるため、このろう材とアルミニウムとの接触面積を、シート状のろう材を使用した場合に比べて著しく増大することができる。
【0022】
従って、アルミニウム板Mをセラミックス基板に圧接して高温で加圧接合する際に、シート状のろう材を使用するよりもセラミックス基板とアルミニウム板Mの接合状態を良好にすることができ、これにより、充分な接合状態とされた回路基板を製造して、回路基板の製造における歩留まりを向上して、製造コストを制限することが可能となる。
また、ろう材粉末をブラスト処理するだけですむため、アルミニウム板とろう材箔との接合部材(クラッド)を製造しこれをセラミックス基板と接合するものに比べて工程数が少なく製造コストを低減することが可能となる。さらに、あらかじめ、ろう材粉末のブラスト処理を施したAl板を、プレス加工等により任意のパターン形状に打ち抜き、または、打ち抜き後にブラスト処理を施したAl板を接合することにより、パターニングされた接合体を得ることも可能である。
【0023】
本実施形態において、ろう材粉末Bがアルミニウム板M表面内にくいこむか埋め込まれるために、共晶点まで合金化がすすみ液相を出現させることが可能となる。このため、融点1430℃のSiを含むセラミックス基板と、融点660℃のアルミニウム板Mとを加熱した際に、ろう材粉末BであるSiとアルミニウムとの合金としての共晶点を低下させて、アルミニウム板Mの融点よりも低い577℃以上程度の温度状態で、アルミニウム板Mとセラミックス基板とを容易に接合することが可能となる。
【0024】
また、金属板Mとしてはアルミニウム単層でもよいが、これ以外にも、二種または三種以上のクラッド等の積層体であってもよい。積層体の例をあげれば、Al−Ni、Al−Ni−Cu、Al−Mo、Al−W、Al−Cu等である。これらは、使用目的や接合方法により適宜選択されることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、Al−Si合金系における共晶点の低下を利用したが、金属板を99.99%純度のCuとするとともに、セラミックス基板をAl2O3からなるものとし、ろう材粉末をGeとして、図3に示すようにCu−Ge合金系の共晶点の低下を利用することもできる。この場合にも、上記の実施形態のように、金属板表面における接合面積の増大の効果を得ることができるのは言うまでもない。
さらに、図示しないが、Al−Cu合金系の共晶点の低下を利用することもできる。この場合にも、上記の実施形態のように、金属板表面における接合面積の増大の効果を得ることができる。
【0026】
なお、接合温度は、Ag−Cu−Ti系ろう材粉末を用いて無酸素銅板を接合する場合は、800〜850℃、Cu−Ge系合金粉末を接合材として用いる場合は、650〜700℃程度である。
【0027】
また、これ以外にも共晶点の低下を利用できる組み合わせとしては、AlまたはCu板を接合する場合に、Al−Cu系合金粉末を接合剤として用いる場合がある。
【0028】
また、ろう材粉末として、一種類の材質でなく、複数の材質からなるものを混合して適応することができる。例えば、Si+Al8Si等がある。このようにAl8Si粉末をSi材粉末に追加することにより、Si粉末とAl板の反応性を向上させることが可能となる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例と比較例をあげてさらに具体的に説明する。セラミックス基板として窒化アルミニウム焼結基板を用いた。この窒化アルミニウム焼結基板は窒化アルミニウム粉末に酸化イットリウム粉末3重量%配合しドクターブレード法を用いて成形した成型体を1870℃で窒素雰囲気中で焼成して得られた熱伝導率150W/(m・K)、相対密度99.9%、厚み0.63mmのものを用いた。
【0030】
ろう材粉末としては、平均粒径45μmのSi粉末を用い、回路形成用としての厚さ0.5mmのアルミニウム板の片側表面をブラスト処理した。このときのブラスト条件としては、吹き付け圧力を0〜9.8×10−5Pa(0〜10kgf/cm2 )の範囲に設定したる。また、粉塵爆発防止のため、ガスは高純度アルゴンを使用した。
【0031】
このアルミニウム板を窒化アルミからなるセラミックス基板の両面にそれぞれ当接し、セラミックス基板に対して垂直方向に付与する圧力を19.6×10−4Pa(2kgf/cm2 )程度として、真空加熱炉に投入し、1.3×10−3Pa(1×10−5torr)の真空下、630℃で10min加熱した後、10℃/minの降温速度で冷却して接合体を製造した。
【0032】
また、接合強度測定用試料として、長さ100mm×5mm巾のアルミニウム板(ピール)の5mm×5mmの部分をセラミックス基板に接続し、残りの50mm×5mmの部分をセラミックス板の外側につきだした状態として接合体とした後、超音波探傷(SAT)で接合状態を観察し、1mmφ以上の未接合部又は5%以上の未接合面積が認められた場合を接合不良とした。その結果を表1,図4に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
この接合体に対して引き剥がし試験を実施した。
引き剥がし試験としては、セラミックス板縁部から、アルミニウム板(ピール)を引き剥がす方向に荷重をかけて、剥がれた時の荷重を測定した。
その結果を表1,図4に示す。
【0035】
上記の結果から、吹きつけ圧力によって接合率およびピール強度ともに吹きつけ圧が17.1×10−4Pa〜40.9×10−4Pa(1.5kgf/cm2 〜5kgf/cm2 )の範囲の場合に吹きつけ圧0の場合に比べて結果が向上していることが解る。
【0036】
【発明の効果】
本発明の回路基板の製造方法および回路基板によれば、ろう材粉末によってブラスト処理することで、ろう材粉末が金属板表面内にくいこむか埋め込まれるため、このろう材と金属板との接触面積を、シート状のろう材を使用した場合に比べて増大することができる。従って、金属板をセラミックス基板に圧接して高温で加圧接合する際に、シート状のろう材を使用するよりもセラミックス基板と金属板の接合状態を良好にすることができ、これにより、充分な接合状態とされた回路基板を製造して、回路基板の製造における歩留まりを向上して、製造コストを制限することが可能となる。
また、ろう材粉末をブラスト処理するだけですむため、金属板とろう材箔との接合部材(クラッド)を製造しこれをセラミックス基板と接合するものに比べて工程数が少なく低コストに製造することが可能となる。さらに、あらかじめ、ろう材粉末のブラスト処理を施したAl板を、プレス加工等により任意のパターン形状に打ち抜き、または、打ち抜き後にブラスト処理を施したAl板を接合することにより、パターニングされた接合体を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る回路基板の製造方法および回路基板の一実施形態を示す断面図(a)およびその拡大図(b)である。
【図2】 Al−Siにおける金属および合金の状態図である。
【図3】 Cu−Geにおける金属および合金の状態図である。
【図4】 本発明の実施例における吹きつけ圧力と接合率およびピール強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
M アルミニウム板(金属板)
B ろう材粉末
Claims (8)
- セラミックス基板と金属板とを接触させ、高温下で加圧接合して回路基板を製造する際に、
ろう材粉末によってブラスト処理して前記金属板の接合面積を増大させ、この金属板を前記セラミックス基板と接合することを特徴とする回路基板の製造方法。 - 前記ろう材粉末が、前記セラミックス基板または前記金属板と加熱した際に、合金としての共晶点が低下するものとされることを特徴とする請求項1記載の回路基板の製造方法。
- 前記ろう材粉末がSiを含み、前記金属板がAlとされることを特徴とする請求項1または2記載の回路基板の製造方法。
- 前記ろう材粉末がGeを含み、前記金属板がCuとされることを特徴とする請求項1または2記載の回路基板の製造方法。
- 前記ろう材粉末がGeを含み、前記金属板がAlとされることを特徴とする請求項1または2記載の回路基板の製造方法。
- 前記ろう材粉末がCuを含み、前記金属板がAlとされることを特徴とする請求項1または2記載の回路基板の製造方法。
- 前記ろう材粉末がAlを含み、前記金属板がCuとされることを特徴とする請求項1または2記載の回路基板の製造方法。
- 請求項1から7のいずれか記載の製造方法により製造されたことを特徴とする回路基板。
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