JP2016018822A - 半導体基板表面の有機物汚染評価方法およびその利用 - Google Patents

半導体基板表面の有機物汚染評価方法およびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】半導体基板表面の有機物汚染の新たな評価方法を提供すること。
【解決手段】評価対象半導体基板表面においてフォトルミネッセンス強度情報を取得すること、ならびに、取得したフォトルミネッセンス強度情報に基づき、評価対象半導体基板表面の有機物汚染の有無、程度および面内分布からなる群から選ばれる評価項目の評価を行うこと、を含む半導体基板表面の有機物汚染の評価方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、半導体基板表面の有機物汚染評価方法およびその利用に関するものであり、詳しくは、フォトルミネッセンスを利用して半導体基板表面の有機物汚染を評価する評価方法およびその利用に関するものである。
半導体基板表面を汚染する汚染物質としては、半導体基板の製造装置や収容容器由来の有機物が挙げられる。
半導体基板表面の有機物汚染は、ゲート絶縁膜の経時絶縁破壊現象における偶発故障の発生、酸化膜耐圧の劣化等のデバイス性能低下の原因となる現象を引き起こす。そのため、高品質なデバイスを製造可能な半導体基板を安定供給するためには、半導体基板表面の有機物汚染を評価し、出荷される製品基板から排除すべき不良品基板(汚染された半導体基板)を判別すること、製品基板出荷前に有機物除去のための再洗浄を行うべきか否か(再洗浄の必要性)を判断すること、汚染原因を排除するための工程管理を行うこと、等が求められる。そこで従来、半導体基板表面の有機物汚染を評価するための方法が各種提案されていた(例えば、特許文献1〜3に記載の方法等)。
特開2002−368050号公報 特開平8−220071号公報 特開平6−283582号公報
しかし、上記の従来の評価方法は、測定に長時間を要する、測定感度、分解能が低い、破壊検査である、等の点で課題を有するものであった。
そこで本発明の目的は、半導体基板表面の有機物汚染の新たな評価方法を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、従来、半導体基板中の欠陥や金属汚染の分析のために用いられていた手法であって半導体基板の表面付着物による汚染分析のために用いられることのなかったフォトルミネッセンス法により、半導体基板表面の有機物汚染の評価が可能であるという、新たな知見を得るに至った。なおフォトルミネッセンス法は、測定原理上、測定感度および分解能が高く、また、測定に長時間を要さない非破壊検査である点で、優れた手法である。
より詳細に説明すると、半導体基板表面は、自然酸化膜の影響により正電荷を帯びやすい傾向があるため、負電荷を帯びた有機物が付着しやすい。そして負電荷を帯びた有機物が付着すると、負電荷によりエネルギーバンドが、p型では蓄積側に、n型では反転側に傾けられ、電子により充填されていない表面準位が多くなるため、表面準位でのSRH再結合が起こりやすくなる。その結果、半導体基板表面の有機物が付着した部位ではフォトルミネッセンス(以下、「PL」とも記載する。)信号(PL強度)が弱まる。この点を利用することにより、PL強度に関する情報(PL強度情報)によって、半導体基板表面の有機物汚染の評価が可能となることが、本発明者らの鋭意検討の結果、新たに見出されたものである。したがって、例えば有機物汚染のない(または有機物汚染の少ない)参照基板のPL強度情報との対比により、評価対象半導体基板表面の有機物汚染の有無や程度を評価することができる。また、評価対象半導体基板表面において取得されるPL強度の面内分布情報により、評価対象半導体基板表面の有機物汚染の面内分布(面内のどの部分に有機物が付着しているか、面内のどの部分に有機物が多く付着しているか等)を評価することも可能となる。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
即ち、本発明の一態様は、
評価対象半導体基板表面においてフォトルミネッセンス強度情報を取得すること、ならびに、
取得したフォトルミネッセンス強度情報に基づき、評価対象半導体基板表面の有機物汚染の有無、程度および面内分布からなる群から選ばれる評価項目の評価を行うこと、
を含む半導体基板表面の有機物汚染の評価方法、
に関する。
一態様では、フォトルミネッセンス強度情報は、評価対象半導体基板表面におけるフォトルミネッセンス強度の面内分布情報を含む。
一態様では、有機物汚染の面内分布の評価が少なくとも行われる。
この点に関し、有機物汚染の半導体基板表面の有機物汚染の原因を推定し、その原因を排除すべく工程管理を行うためには、半導体基板表面の有機物汚染の面内分布情報を得ることが望ましい。半導体基板の製造装置や収容容器において、面内分布情報により有機物汚染が多く発生されていることが確認された領域近傍に位置していた(または当該領域に接触していた)部材が、半導体基板表面の有機物汚染の発生原因である可能性が高いからである。しかし、上記の特許文献2、3に記載の評価方法では、半導体基板表面において、有機物汚染の面内分布情報を得ることはできない。一方、例えば半導体基板表面の接触角測定による評価方法や、特許文献1に記載の表面光電圧による評価方法によれば、半導体基板表面の有機物汚染の面内分布情報を得ることは可能である。しかしこれら評価方法は測定感度の点で、より一層の改善が求められる。これに対し、上記評価方法によれば、半導体基板表面の有機物汚染の面内分布情報を高感度に評価することができる。そして、こうして得られた評価結果に基づき、表面有機物汚染の発生原因を推定することができる。
上記半導体基板は、p型、n型のいずれであってもよく、一態様ではp型半導体基板である。有機物が付着した部位と未付着部位とのPL強度差や付着量の違いによるPL強度差は、n型と比べp型が大きくなるため、p型半導体基板において、より高コントラストの面内分布情報を得ることができる。
更に、前述のように、半導体基板表面の有機物汚染の評価を行うことができるため、本発明の他の一態様によれば、製造または保管中に半導体基板が配置される装置による有機物汚染の発生の有無や程度を評価することも可能となる。
即ち、本発明の他の一態様は、
製造または保管時に半導体基板が配置される装置の評価方法であって、
前記装置に配置されていた半導体基板表面においてフォトルミネッセンス強度情報を取得すること、ならびに、
取得したフォトルミネッセンス強度情報に基づき、前記装置による半導体基板表面の有機物汚染の発生の有無および程度からなる群から選ばれる評価項目を評価すること、
を含む、前記装置の評価方法、
に関する。
一態様では、フォトルミネッセンス強度の面内分布情報に基づき、前記装置による半導体基板表面の有機物汚染の発生原因を推定することができる。
一態様では、前記装置は、半導体基板の収容容器である。
本発明の更なる一態様は、
複数の半導体基板からなる半導体基板のロットを準備する工程と、
前記ロットから少なくとも1つの半導体基板を抽出する工程と、
前記抽出された半導体基板を評価する工程と、
少なくとも、前記評価により良品と判定された半導体基板および該半導体基板と同一ロット内の他の半導体基板からなる群から選ばれる少なくとも1つの半導体基板を、製品基板として出荷すること、または、前記評価により不良品と判定された半導体基板および該半導体基板と同一ロット内の他の半導体基板からなる群から選ばれる少なくとも1つの半導体基板を、洗浄処理を施し表面有機物汚染を低減した後に製品基板として出荷すること、を含み、
前記抽出された半導体基板の評価を、上述の半導体基板表面の有機物汚染の評価方法によって行う、半導導体基板の製造方法、
に関する。
本発明の更なる一態様は、
評価対象半導体基板表面においてフォトルミネッセンス強度情報を取得する測定部と、
取得したフォトルミネッセンス強度情報に基づき、評価対象半導体基板表面の有機物汚染の有無、程度および面内分布からなる群から選ばれる評価項目の評価を行う評価部と、
を含む半導体基板表面の有機物汚染の評価装置、
に関する。
本発明によれば、半導体基板表面の有機物汚染の有無、程度、および面内分布を評価することができる。更にこれにより、半導体基板の製造装置や収容容器からの有機物汚染原因の推定が可能となる。推定結果に基づき、汚染原因を排除する装置補修や容器変更等の工程管理を行うことで、表面有機物汚染の少ない高品質な半導体基板を安定供給することができる。
強励起顕微フォトルミネッセンス法に基づく測定装置の概略図である。 実施例において用いた半導体ウェーハ出荷容器に半導体ウェーハを収容した状態を示す概略断面図である。 図3上段に実施例1において得たPL強度のマッピングプロファイル、図3下段に比較例1で得た接触角測定値のマッピングプロファイルを示す。 GC−MS分析による有機物付着量定量結果を示す。
本発明の一態様は、半導体基板表面の有機物汚染の評価方法であって、以下の工程を含むものである。
(1)評価対象半導体基板表面においてフォトルミネッセンス強度(PL強度)情報を取得すること;ならびに、
(2)取得したPL強度情報に基づき、評価対象半導体基板表面の有機物汚染の有無、程度および面内分布からなる群から選ばれる評価項目の評価を行うこと。
以下、各工程について、順次説明する。
工程(1)
本工程では、評価対象半導体基板表面においてPL強度情報を取得する。先に説明した通り、半導体基板表面の有機物付着部位では未付着部位と比べてPL強度は弱まり、また付着量が多いほどPL強度は弱まる。したがって、本工程で取得されるPL強度情報によれば、例えば、PL強度が弱く観察される部位は表面有機物付着が発生している部位であると判定することができ、PL強度が弱いほど、当該部位における有機物付着量が多いと判定することができる。このようなPL強度の面内分布情報により、有機物汚染の面内分布を評価することができる。また、評価対象半導体基板表面において取得されるPL強度(例えば面内全面または一部領域において測定されるPL強度の平均値、最大値、最小値等)と、有機物汚染がないか、または有機物汚染がごくわずかで製品に許容される閾値以下であることが確認されている参照半導体基板表面において取得されるPL強度とを対比することにより、評価対象半導体基板表面における有機物汚染の有無や程度を判定することもできる。本発明におけるPL強度情報には、上記のようなPL強度の平均値、最大値、最小値、および面内全面または一部領域におけるPL強度の分布情報(面内分布情報)等のPL強度に関する各種情報が包含される。
判定の詳細については、工程(2)について後述する。
評価対象半導体基板は、例えばシリコン基板であるが、特に限定されるものではない。例えば化合物半導体基板にも、上述の評価方法は適用可能である。半導体基板の導電型は、p型であってもn型であってもよい。評価対象半導体基板がいずれの導電型の半導体基板であっても、フォトルミネッセンス法によれば、表面有機物汚染の有無や程度、面内分布を、高感度に評価することができる。p型とn型とを対比すると、n型では、有機物付着のない状態では電子で充填された表面準位が多く、有機物付着した状態では反発によってできる電子に充填されていない表面準位量が少なくなるため、p型と比べて有機物付着部位と未付着部位とのPL強度差や、付着量の違いによるPL強度差は小さくなる。そのため、p型ではn型に比べて、表面有機物汚染の有無や程度、面内分布を、より高感度に評価することができる。例えばPL面内分布情報をマッピングプロファイルにより得る場合、より高コントラストのマッピングプロファイルを得ることができることは、より高感度に評価を行ううえで好ましい。また、高コントラストのPL面内分布情報が得られることは、評価の容易性の観点からも好ましい。
本発明におけるPL強度情報の取得方法は、フォトルミネッセンス法によるものであればよく特に限定されるものではない。操作の簡便性の観点からは、温度制御が不要な室温フォトルミネッセンス法(室温PL法)により行うことが好ましい。シリコン基板を例にとると、室温PL法では、試料基板表面から入射させた、シリコンのバンドギャップよりエネルギーの大きな励起光により表面近傍で発生させた電子正孔対(すなわちキャリア)が、ウェーハ内部に拡散しながら発光して消滅していく。この発光は、バンド端発光と呼ばれ、室温(例えば20〜30℃)での波長が約1.15μmの発光強度を示す。通常、フォトルミネッセンス法では、励起光として可視光が使用されるため、PL強度としては、波長950nm以上の光強度を測定すれば励起光から分離することができるため高感度な測定が可能となる。この点からは、PL強度としてバンド端発光強度を測定することが好ましい。ここで前述のように、半導体基板表面の有機物付着部位では、エネルギーバンドが蓄積側(p型)または反転側(n型)に傾けられることにより発光強度が低下するため、表面有機物付着の有無や程度により、半導体基板表面においてPL強度の高低の違いが生じることになる。
本発明において、室温PL法によるPL強度の測定に使用可能な装置の一例としては、強励起顕微フォトルミネッセンス法に基づいた測定方法を挙げることができる。強励起顕微フォトルミネッセンス法とは、可視光レーザーによりシリコン中のキャリアを励起させ、さらに励起されたキャリアが直接、バンドギャップ間で再結合する際に発生する発光(バンド端発光)強度を検出するものである。図1は、強励起顕微フォトルミネッセンス法に基づく測定装置の概略図であり、同図において、10は測定装置、1はレーザー光源、2はハーフミラー、3はフォトルミネッセンス検出器、4はオートフォーカス用検出器、5はバンドパスフィルター、6は入力計、7は出力計、8は表面散乱光検出器、Wは測定対象試料(半導体基板)である。測定対象試料Wは、図示しないX・Yステージ上に載置されており、X・Yステージが作動することで、励起レーザー光が基板面のX方向、Y方向にスキャニングされる。これにより評価対象半導体基板のPL強度情報が取得される。PL強度情報は、評価対象試料表面の全面において取得してもよく、一部において取得してもよい。また、PL強度情報としてPL面内分布情報を取得する場合、取得される面内分布情報は、PL強度のラインプロファイルであっても、マッピングプロファイルであってもよい。面内全域にわたり有機物付着の有無、程度、および分布を評価するためには、マッピングプロファイルを取得することが好ましい。マッピングプロファイルでは、PL強度の高〜低を、例えば黒〜白の輝度(明暗の度合い)に割り当てることでマッピング画像の明暗によりPL強度の高低を評価することができる。なお本発明において、面内分布情報とは、面内全面における分布情報に限られるものではなく、面内の一部領域における分布情報も包む意味で用いるものとする。例えば、面内のある領域におけるPL強度情報(例えばPL強度の平均値、最大値、最小値)と、面内の他の1つ以上の領域におけるPL強度情報を取得することも、PL面内分布情報の取得に包含される。
工程(2)
本工程は、工程(1)により取得されたPL強度情報に基づき、評価対象半導体基板表面の有機物汚染の有無、程度および面内分布からなる群から選ばれる評価項目の評価を行う工程である。一態様では、取得されたPL強度情報(例えば上述のPL面内分布情報)において、PL強度の高低の違いが確認されることにより、シリコンウェーハ表面に有機物汚染が発生している(より詳しくは、有機物汚染が局所的に発生している)と判定することができる。また、他の一態様では、先に記載したように、取得されたPL強度情報を、参照半導体基板について取得したPL強度情報と対比することにより、評価対象半導体基板における表面有機物付着の有無や汚染の程度(汚染が重度であるか軽度であるか)を、判定することができる。また、他の一態様では、工程(1)で取得されたPL面内分布情報において、PL強度が低い領域において表面有機物汚染が発生していると判定することで、表面有機物汚染の面内分布を評価することができる。
上述の評価方法では、評価対象半導体基板表面における有機物汚染の有無や程度だけではなく、面内分布も評価することができるため、半導体基板の表面有機物汚染の発生原因を推定することも可能である。この点について更に説明すると、半導体基板の有機物汚染の発生原因としては、半導体基板の製造装置や収容容器から脱ガスした有機ガス物質の付着、これら装置や容器の構成材料が半導体基板表面と接触した際に付着すること、これら装置や容器内部の雰囲気ガスに混入していた有機ガス物質の付着、などが挙げられる。例えば、PL面内分布情報において、局所的にPL強度が低下している領域が確認されたならば、製造装置や収容容器において、当該領域の近傍に位置していた部材や接触していた部材が、表面有機物汚染の発生原因であると推定することができる。または、汚染のない(または汚染がごくわずかな)参照半導体基板と対比し、面内全域にほぼ均等にPL強度の低下が確認されたならば、製造装置や収容容器内部の雰囲気ガスに混入していた有機ガス物質が、汚染原因であると推定することができる。
したがって本発明の一態様によれば、上述の評価方法を用いることにより、半導体基板の製造装置や収容容器による有機物汚染の発生の有無や程度を評価することもできる。
即ち、本発明の一態様は、
製造または保管時に半導体基板が配置される装置の評価方法であって、
前記装置に配置されていた半導体基板表面においてPL強度情報を取得すること、ならびに、
取得したPL強度情報に基づき、前記装置による半導体基板表面の有機物汚染の発生の有無および程度からなる群から選ばれる評価項目を評価すること、
を含む、前記評価方法、
に関する。評価の詳細は、先に記載した通りである。また、評価対象の装置としては、半導体基板の収容容器、および半導体基板が製造工程において配置される各種装置(例えば熱処理炉等)を挙げることができる。
前述のように、PL面内分布情報に基づき、半導体基板の表面有機物汚染の発生原因を推定することができる。これは即ち、半導体基板が製造または保管時に配置されていた装置による半導体基板表面の有機物汚染の発生原因の推定が可能であることを意味する。推定の詳細は、先に記載した通りである。更に、推定される発生原因を低減または排除するように、製造装置、収容容器の交換、補修、洗浄などの汚染低減処理を施すことにより、表面有機物汚染の少ない半導体基板を提供することが可能になる。
また、本発明の更なる態様は、複数の半導体基板からなる半導体基板のロットを準備する工程と、前記ロットから少なくとも1つの半導体基板を抽出する工程と、前記抽出された半導体基板を評価する工程と、少なくとも、前記評価により良品と判定された半導体基板および該半導体基板と同一ロット内の他の半導体基板からなる群から選ばれる少なくとも1つの半導体基板を、製品基板として出荷すること、または、前記評価により不良品と判定された半導体基板および該半導体基板と同一ロット内の他の半導体基板からなる群から選ばれる少なくとも1つの半導体基板を、洗浄処理を施し表面有機物汚染を低減した後に製品基板として出荷すること、を含み、前記抽出された半導体基板の評価を、上述の本発明の一態様にかかる半導体基板表面の有機物汚染の評価方法によって行う、半導導体基板の製造方法、に関する。
上述の本発明の一態様にかかる半導体基板表面の有機物汚染の評価方法によれば、半導体基板の表面有機物汚染を高感度かつ高分解能で評価することができる。よって、一態様では、かかる評価方法により、表面有機物汚染の有無や程度、面内分布状態が、高品質なデバイスを製造するために使用可能な良品であると判定された半導体基板や、当該基板と同一ロット内の半導体基板を製品基板として出荷することにより、高品質なデバイスを作製可能な製品基板を、高い信頼性をもって提供することができる。なお、良品と判定する基準は、半導体基板の用途等に応じて基板に求められる物性を考慮して設定することができる。また1ロットに含まれる基板数および抽出する基板数は適宜設定すればよい。
また、他の一態様では、上記評価の結果、良品の判定基準に満たない不良品と判定された半導体基板や、不良品と判定された半導体基板と同一ロット内の他の半導体基板を、洗浄処理を施し表面有機物汚染を低減した後に製品基板として出荷することにより、高品質なデバイスを作製可能な製品基板を、高い信頼性をもって提供することもできる。洗浄処理は、公知の方法により行うことができる。また、表面有機物汚染を低減した後の半導体基板は、そのまま製品基板として出荷してもよく、上述の評価方法により良品であることを確認した後に、製品基板として出荷してもよい。
本発明の他の一態様は、
評価対象半導体基板表面においてPL強度情報を取得する測定部と、
取得したPL強度情報に基づき、評価対象半導体基板表面の有機物汚染の有無、程度および面内分布からなる群から選ばれる評価項目の評価を行う評価部と、
を含む半導体基板表面の有機物汚染の評価装置、
に関する。上記評価装置は、前述の評価方法に好適に使用することができる。
上記評価装置に含まれる測定部としては、市販のフォトルミネッセンス測定装置等の、公知のフォトルミネッセンス法に基づく測定装置を、何ら制限なく用いることができる。測定装置の一例については、先に記載した通りである。なお上記評価装置において測定部と後述の評価部は、別個の構成要素として含まれていてもよく、一体の構成要素として含まれていてもよい。測定部において取得されるPL強度情報の詳細は、先に記載した通りである。
評価部は、少なくとも、測定部で取得したPL強度情報を表示可能な表示部を含むことができる。一態様では、表示部に表示されたPL強度情報に基づく評価を、表示部に表示されたPL強度情報を目視により評価者が判定することにより行うことができる。本発明は下記態様に限定されるものではないが、具体的態様としては、マッピングプロファイルを目視判定することによる評価、面内のPL強度の最大値と最小値の差が閾値を超えているか否か、面内のPL強度の平均値が閾値を超えているか否か、製造装置や収容容器に起因する表面有機物汚染が発生する可能性のある特定領域のPL強度が閾値を超えているか否か、等を判定基準とする判定による評価等を挙げることができる。
以下、本発明を実施例に基づき更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。以下に記載の評価は、室温(約20℃)で行った。
評価対象シリコンウェーハの準備
下記3水準のボロンドープp型シリコンウェーハを、各水準について、それぞれ3枚準備した。同水準の中の1枚はPL法、他の1枚はGC−MS法、残りの1枚は接触角法による評価に付した。評価の詳細は後述する。すべてのシリコンウェーハは、同一ロットで製造したものである。したがって、水準間での評価結果の違いは、評価法の違いまたは保管時の汚染による影響によるものと判断することができる。
<評価対象シリコンウェーハ>
参照ウェーハ:出荷前洗浄を行った直後のシリコンウェーハ。
ウェーハ1:参照ウェーハと同じ出荷前洗浄を行った後、半導体ウェーハ出荷容器に1か月保管したシリコンウェーハ。
ウェーハ2:参照ウェーハと同じ出荷前洗浄を行った後、ウェーハ1の保管に用いた半導体ウェーハ出荷容器とは別の半導体ウェーハ出荷容器に3か月保管したシリコンウェーハ。
図2に、シリコンウェーハを収容した状態の半導体ウェーハ収容容器の断面図を示す。
[実施例1]
室温PL法による評価
図1に示す装置として、Nanometrics社製のPL測定装置SiPHERを用い、測定レーザーとして波長532nmの光源を利用し、参照ウェーハ、ウェーハ1およびウェーハ2について、500μmピッチでバンド端フォトルミネッセンス発光強度マップ測定を行った。
図3上段に、参照ウェーハ、ウェーハ1およびウェーハ2のPL強度のマッピングプロファイルを示す。マッピングプロファイルでは、PL強度の低い部分ほど暗く(黒く)、高い領域ほど明るく(白く)表示される。図3上段に示すマッピングプロファイル中、面内上方は半導体ウェーハ出荷容器において上方(ノッチ側)、面内下方は半導体ウェーハ出荷容器において下方に配置されていた領域の結果を示す。ウェーハ1およびウェーハ2のマッピングプロファイル中、面内上方に配置されていた領域にPL強度の低下が確認され、半導体ウェーハ出荷容器での保管期間が長いウェーハ2において、より重度のPL強度の低下が観察されている。これに対し、参照ウェーハでは、そのようなPL強度の低下は確認されず、面内全域でほぼ同等のPL強度を示している。
以上の結果から、ウェーハ1およびウェーハ2は、半導体ウェーハ出荷容器内で、ウェーハ上方の近傍に表面有機物汚染源が存在していたことが、ウェーハ面内の、半導体ウェーハ出荷容器内で上方に位置していた領域において、PL強度の低下が生じた理由と推定することができる。半導体ウェーハ出荷容器の構成部材の中で、上方にのみ位置し有機物汚染原因となり得る部材としては、ガスケット(シール部材)が挙げられる。以上より、半導体ウェーハ出荷容器のガスケットが、表面有機物汚染の発生原因と推定した。
GC−MSによる付着有機物の同定および有機物付着量の確認
参照ウェーハ、ウェーハ1およびウェーハ2を加熱することにより、ウェーハ表面に付着した有機物をガス化し回収した。回収した有機物をガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)による分析に付した。GC−MSのマススペクトルから、ウェーハ1およびウェーハ2には、半導体ウェーハ出荷容器のガスケットに含まれる可塑剤由来の有機物であることが確認された。可塑剤が脱ガスし、ウェーハ1およびウェーハ2に付着したものと考えられる。
標準物質を用いて作成した検量線から、ウェーハ1およびウェーハ2に付着した上記有機物量を定量した。結果を図4に示す。なお参照ウェーハを洗浄した有機溶媒からは、上記有機物は検出されなかった。ガスクロマトグラフィー分析では、半導体基板表面に付着した有機物の定量は可能であるが、表面有機物汚染の面内分布情報を得ることは困難である。これに対し、PL法によれば、実施例1に示したように、表面有機物汚染の面内分布情報の取得が可能である。更に、表面有機物汚染の面内分布情報に基づき、表面有機物汚染の発生原因を推定することもできる。この点からも、PL法による評価方法は、優れた手法である。
評価方法の具体的態様としては、例えば、図3に示すようにウェーハ1、ウェーハ2のPL強度のマッピングプロファイルにおいて面内にコントラスト差が確認されていることをもって、ウェーハ1、ウェーハ2に有機物汚染が発生していると判定することができる。また、ウェーハ1、ウェーハ2の各ウェーハについて、ウェーハ表面の一部領域(例えば面内上方)におけるPL強度の平均値と、他の一部領域(例えば面内下方)におけるPL強度の平均値とを算出し、一方の領域におけるPL強度の平均値が、他の一部領域におけるPL強度の平均値よりも低いことをもって、一方の領域(例えば面内上方)において、有機物汚染が発生していると判定することができる。または、ウェーハ1、ウェーハ2および参照ウェーハについて、面内のPL強度の平均値を算出し、参照ウェーハについて算出された平均値と比べ、ウェーハ1、ウェーハ2について算出された平均値が低いことをもって、ウェーハ1、ウェーハ2において有機物汚染が発生していると判定することもできる。更に、ウェーハ1について算出された平均値とウェーハ2について算出された平均値を対比し、ウェーハ2について算出された平均値がより低いことをもって、ウェーハ2において、ウェーハ1と比べ重度の有機物汚染が表面に発生していると判定することができる。
[比較例1]
接触角測定による評価
上記評価により、半導体ウェーハ出荷容器のガスケットが、ウェーハ表面有機物汚染の発生原因であることが推定された。そこで、参照ウェーハ、ウェーハ1およびウェーハ2の面内において、半導体ウェーハ出荷容器内で上方に位置していた面内領域を中心として、面内の複数点において、市販の接触角測定装置により、水に対する接触角を測定した。水に対する接触角が大きいほど、有機物付着量が少ないと判定することができる。測定値をカラースケーリングし得たマッピングプロファイルを、図3下段に示す。
図3下段に示す接触角測定値のマッピングプロファイルでは、実施例1で得たPL強度のマッピングプロファイルのような面内での明瞭なコントラスト差は確認できなかった。
以上の結果から、PL法によれば、半導体ウェーハの表面有機物汚染を接触角測定による評価と比べて高感度に評価可能であることが確認できる。
本発明は、半導体基板の製造分野において、有用である。

Claims (10)

  1. 評価対象半導体基板表面においてフォトルミネッセンス強度情報を取得すること、ならびに、
    取得したフォトルミネッセンス強度情報に基づき、評価対象半導体基板表面の有機物汚染の有無、程度および面内分布からなる群から選ばれる評価項目の評価を行うこと、
    を含む半導体基板表面の有機物汚染の評価方法。
  2. 前記フォトルミネッセンス強度情報は、評価対象半導体基板表面におけるフォトルミネッセンス強度の面内分布情報を含む請求項1に記載の半導体基板表面の有機物汚染の評価方法。
  3. 有機物汚染の面内分布の評価を少なくとも行い、得られた評価結果に基づき、表面有機物汚染の発生原因を推定することを更に含む請求項1または2に記載の有機物汚染の評価方法。
  4. 前記半導体基板は、p型半導体基板である請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機物汚染の評価方法。
  5. 製造または保管時に半導体基板が配置される装置の評価方法であって、
    前記装置に配置されていた半導体基板表面においてフォトルミネッセンス強度情報を取得すること、ならびに、
    取得したフォトルミネッセンス強度情報に基づき、前記装置による半導体基板表面の有機物汚染の発生の有無および程度からなる群から選ばれる評価項目を評価すること、
    を含む、前記装置の評価方法。
  6. 前記フォトルミネッセンス強度情報は、前記装置に配置されていた半導体基板表面におけるフォトルミネッセンス強度の面内分布情報を含む請求項5に記載の装置の評価方法。
  7. 前記フォトルミネッセンス強度の面内分布情報に基づき、前記装置による半導体基板表面の有機物汚染の発生原因を推定することを更に含む請求項6に記載の装置の評価方法。
  8. 前記装置は、半導体基板の収容容器である請求項5〜7のいずれか1項に記載の評価方法。
  9. 複数の半導体基板からなる半導体基板のロットを準備する工程と、
    前記ロットから少なくとも1つの半導体基板を抽出する工程と、
    前記抽出された半導体基板を評価する工程と、
    少なくとも、前記評価により良品と判定された半導体基板および該半導体基板と同一ロット内の他の半導体基板からなる群から選ばれる少なくとも1つの半導体基板を、製品基板として出荷すること、または、前記評価により不良品と判定された半導体基板および該半導体基板と同一ロット内の他の半導体基板からなる群から選ばれる少なくとも1つの半導体基板を、洗浄処理を施し表面有機物汚染を低減した後に製品基板として出荷すること、を含み、
    前記抽出された半導体基板の評価を、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法によって行う、半導導体基板の製造方法。
  10. 評価対象半導体基板表面においてフォトルミネッセンス強度情報を取得する測定部と、
    取得したフォトルミネッセンス強度情報に基づき、評価対象半導体基板表面の有機物汚染の有無、程度および面内分布からなる群から選ばれる評価項目の評価を行う評価部と、
    を含む半導体基板表面の有機物汚染の評価装置。
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