ところで、何らかの製品を製造する場合には、不可避的に寸法誤差が生じることが知られている。そのため、品質管理を徹底したり、法定寸法を遵守したりするためには、定期的な抜き取り検査が必要になる。
かかる抜き取り検査において、検査対象物が比較的大きい場合には、ノギス等を用いて寸法を測定することが可能であるが、検査対象物が比較的小さい場合には、ノギス等を用いて寸法を測定することが困難なことがある。このため、最近では、コンピュータの画像処理技術を利用して、例えば輪切りにした検査対象物の切断片の断面を画像にし、10〜100倍程度に拡大して形状および寸法を測定することが行われている。
しかしながら、画像処理技術を利用した寸法測定法には、以下のような問題がある。すなわち、例えば検査対象物の断面(肉厚)が長手方向に繰り返し変化するような場合には、輪切りにした切断片に断面変化部(肉厚の厚い部分と薄い部分と)が含まれることがある。かかる肉厚の厚い部分と肉厚の薄い部分とを含む切断片を画像処理すると、本来肉厚の薄い部分の寸法を測定しなければならないのに、肉厚の厚い部分を画像にして寸法を測定してしまうという問題がある。
このような問題を解決するには、肉厚の厚い部分が含まれないように、検査対象物をできるだけ薄く切断することが有効になる。しかしながら、現状は、例えば刃物を用いて作業者の手作業で検査対象物(軟質部材)を輪切りにしているため、作業者の熟練度合いによって、切断片の厚さが区々になっている。
そこで、作業者の熟練度合いに拘わらず軟質部材を所望の厚さに切断することができるように、例えば上記特許文献1に開示されているような切断装置を用いることが考えられるが、この種の切断装置には以下のような問題がある。すなわち、上記特許文献1のものでは、軟質部材(樹脂製パイプ)を切断したカッター刃は、離間した一対のフレーム板の間に収まるが、これは、切断の最終段階において、軟質部材が宙に浮いた状態で切断されることを意味する。このため、上記特許文献1のものと同様の切断装置では、例えば、図10(a)に示すように、セット面102に載置した軟質部材80の端部をカッター刃101で切断する場合や、図10(b)に示すように、セット面102に載置した軟質部材80を2枚のカッター刃101を用いて切断する場合に、軟質部材80における最後に切断される部位に切断バリ80aが生じるという問題がある。
このような切断バリが生じると、検査対象物の寸法を正確に測定することが困難になる。そうして、かかる切断バリの発生は、検査対象物の寸法を測定する場合のみならず、様々な分野において、軟質部材を容易且つ正確に切断したいという要望に応える上で支障となる。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切断装置において、切断バリを生じさせることなく、軟質部材を容易且つ正確に切断する技術を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明では、「刃先の長手方向に沿って引いて切る力または押して切る力」を軟質部材に作用させるとともに、軟質部材が載置される載置面と切断刃の刃先との間に隙間が生じないように工夫を凝らしている。
具体的には、本発明は、切断対象である軟質部材が載置されるステージと、上記ステージと間隔をあけて配置され、上記ステージに向かって移動可能な切断刃と、を備えた切断装置を対象としている。
そして、上記切断装置は、上記切断刃の刃先の長手方向が、当該切断刃の移動方向と直交する面に対して所定角度で傾斜しており、上記ステージの載置面が、上記傾斜した刃先と略平行に設定されていることを特徴としている。
なお、本発明において「軟質部材」とは、刃物で切断可能な材料からなる部材を意味し、例えば樹脂、ゴム等からなる部材を挙げることができる。
また、「切断刃の刃先の長手方向が、当該切断刃の移動方向と直交する面に対して所定角度で傾斜」しているとは、例えば、切断刃が上下に移動する場合には、切断刃の刃先の長手方向(延びる方向)が水平面に対して所定角度で傾斜していることを意味する。そうして、切断刃の刃先の長手方向が傾斜している場合としては、刃先が真っ直ぐな切断刃自体を傾斜させて用いる場合と、斜め刃を用いる場合の両方を含む。
さらに、「略平行」とは、平行を含み、また、例えば加工誤差や載置面の変形等による、平行からの多少のずれを含むものである。
この構成によれば、切断刃の刃先の長手方向が移動方向と直交する面に対して所定角度で傾斜していることから、切断刃を移動させて軟質部材に押し付けると、傾斜した刃先の長手方向(斜め方向)に沿って「引いて切る力または押して切る力」が軟質部材に作用する。このように、摩擦力の大きい移動方向に押して切るのではなく、摩擦力の小さい斜め方向に引いてまたは押して切ることから、切断対象である軟質部材を容易に切断することができる。
なお、「所定角度」は、斜め方向に沿って「引いて切る力または押して切る力」が小さくなり過ぎず(下限)、且つ、切断刃の長さや移動距離が長くなり過ぎない(上限)角度範囲で、適宜設定することができ、15°〜70°が好ましく、30°〜60°がより好ましい。
もっとも、軟質部材が載置されるステージの載置面が移動方向と直交していると、傾斜した刃先の先端しか載置面に到達しないので、軟質部材を切断することが困難となる。また、載置面に溝を設けて、かかる溝に切断刃を挿入するようにすると、軟質部材を切断することはできるものの、軟質部材が宙に浮いた状態で切断されるため、軟質部材における最後に切断される部位に切断バリが発生するおそれがある。
そこで、本発明では、ステージの載置面を、傾斜した刃先と略平行に設定している。これにより、ステージの載置面と切断刃の刃先との間に隙間が生じないので、軟質部材における最後に切断される部位に切断バリが発生するのを抑えて、軟質部材を正確に切断することができる。
以上より、本発明によれば、切断バリを生じさせることなく、軟質部材を容易且つ正確に切断することができる。
また、上記切断装置では、上記切断刃における刃先の長手方向の傾斜角度および上記ステージの傾斜角度の少なくとも一方が、調整可能に構成されていることが好ましい。
この構成によれば、例えば、ステージの傾斜角度が固定されている場合には、切断刃の傾斜角度を調整することで、ステージの載置面と傾斜した刃先とを略平行に設定することができる。逆に、切断刃の傾斜角度が固定されている場合には、ステージの傾斜角度を調整することで、ステージの載置面と傾斜した刃先とを略平行に設定することができるので、例えば切断刃を交換した際に、刃先の傾斜角度が微妙にずれても、ステージの載置面と傾斜した刃先とを容易に略平行にすることができる。また、ステージおよび切断刃の両方を角度調整可能に構成すれば、軟質部材の形状や大きさに合わせて両者の角度を調整することで、形状や大きさの異なる軟質部材を容易に切断することができる。
さらに、上記切断装置は、上記軟質部材の切断厚さを所定値に調整するための厚さ調整手段をさらに備え、上記厚さ調整手段は、上記切断刃と直交する方向に移動可能な位置決め部材と、上記切断刃の切断位置と上記位置決め部材の先端との間隔が上記所定値になるように、上記位置決め部材を上記切断位置側に付勢する付勢手段と、を有していることが好ましい。
なお、「所定値」は、軟質部材の形状や切断片の用途に応じて適宜設定される値である。
この構成によれば、位置決め部材が、その先端と切断位置との間隔が所定値になるように、付勢手段によって切断位置側に付勢されているので、軟質部材を位置決め部材の先端に当てた状態で切断すれば、切断厚さが所定値に調整された切断片を得ることができる。
ここで、切断刃が軟質部材に食い込んでいく過程で、軟質部材は切断刃の厚さ分だけ切断刃と直交する方向に拡がろうとするが、仮に固定式の位置決め部材を採用すると、軟質部材の拡がりが制限されるため、切断刃が軟質部材に喰い込み難くなり、切断が困難になるおそれがある。この点、本発明では、位置決め部材を付勢手段によって付勢する構成を採用していることから、切断刃が軟質部材に喰い込むと、軟質部材が付勢手段の付勢力に抗して切断刃の厚さ分だけ切断刃と直交する方向に拡がるので、軟質部材を容易に切断することができる。
また、上記ステージには、上記軟質部材を当該ステージの傾斜方向に挟む一対のガイド部材が設けられており、上記ガイド部材の少なくとも一方における、上記軟質部材に当接する当接面が、上記ステージの載置面と鋭角をなしていることが好ましい。
この構成によれば、一対のガイド部材で軟質部材を挟むことから、載置面が傾斜していても、軟質部材をステージの傾斜方向に固定することができる。
ここで、軟質部材の一端部に切断刃を押し付けると、反対側の端部が浮き上がろうとするが(図10(c)参照)、本発明では、ステージの載置面と鋭角をなすようにガイド部材の当接面を構成することで、かかる浮き上がりを抑えるようにしている。すなわち、ステージの載置面と鋭角をなす当接面を軟質部材に当接させると、載置面と当接面との間に軟質部材の一部が挟まれるので、軟質部材の浮き上がりを抑えることができる。したがって、軟質部材が載置面と接触した状態で、当該軟質部材を正確に切断することができる。
もっとも、軟質部材がガイド部材よりも大きい場合には、一対のガイド部材によって軟質部材をステージの傾斜方向に挟むことはできるものの、載置面と当接面との間に軟質部材の一部を挟むのが困難な場合がある。
そこで、上記切断装置は、上記切断刃の上記ステージ側への移動に伴って上記軟質部材に当接し、当該軟質部材を上記載置面に対して押圧するストッパーをさらに備えていることが好ましい。
この構成によれば、軟質部材がガイド部材よりも大きい場合でも、切断刃の移動に伴って、ストッパーが軟質部材を載置面側に押圧するので、切断刃を移動させるという一回の動作で、軟質部材の浮き上がりを抑えつつ軟質部材を切断することができる。
以上、説明したように本発明に係る切断装置によれば、切断バリを生じさせることなく、軟質部材を容易且つ正確に切断することができる。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る切断装置1を模式的に示す斜視図であり、図2は切断装置1の正面図であり、図3は切断装置1の一部を示す部分側面図であり、図4は切断装置1を用いた切断状況を模式的に示す斜視図である。この切断装置1は、作業者がレバー41を押し下げることによって、図4に示すように、刃先61aが傾斜した切断刃61を、当該傾斜した刃先61aと平行なステージ21に載置された軟質部材80に上方から押し当てて、軟質部材80を所望の厚さに切断する手動式切断装置である。ここで、「軟質部材」とは、例えばカミソリの刃やカッターといった刃物で切断可能な材料からなる部材を意味し、例えば、塩化ビニルやポリエチレンといった樹脂やゴム等からなる部材を挙げることができる。具体例としては、電線の導体を覆うポリエチレン製の絶縁被覆体や、車両の窓開口部に沿って取り付けられるゴム製のウエザーストリップ等を挙げることができる。なお、以下では、導体を抜き取った筒状の絶縁被覆体80を切断対象とした場合について説明する。
−全体構成−
切断装置1は、底板部10と、切断対象である絶縁被覆体(軟質部材)80が載置されるステージ21を有するステージ機構20と、絶縁被覆体80をステージ21に固定するためのガイド機構70と、絶縁被覆体80の切断厚さを調整するための厚さ調整機構30と、操作用のレバー41を有する手動式の押下げ機構40と、押下げ機構40を支持するための支持部50と、レバー41を押し下げることでステージ21に向かって移動する切断刃61を保持するための切断刃保持部60と、を備えている。なお、切断装置1は、軽量化を図るために主にアルミ合金で形成されている。
底板部10は、図2の左右方向を長手方向(図3の左右方向を長手直角方向)とする長方形状に形成されている。それ故、以下の説明では、便宜上、図2の左右方向を長手方向と称し、図3の左右方向を長手直角方向と称するとともに、図2および図3の天地方向を上下方向と称する。また、図2の右側を長手方向一方側、図2の左側を長手方向他方側、図3の右側を長手直角方向一方側、図3の左側を長手直角方向他方側と称する。
支持部50は、図1および図2に示すように、土台部51と、支柱52と、ストッパーリング53と、接続部54と、支持部本体55と、支点支持部56と、を有している。土台部51は、締結部材51aによって底板部10の長手方向他方側の端部に固定されている。支柱52は、締結部材52aによって下端部が土台部51に取り付けられていて、上方に延びている。接続部54は、支柱52を挟んだ状態で締結部材54aを締めることによって、支柱52の上端部に締付け固定されている。ストッパーリング53は、締結部材53aを締めることによって、接続部54の下側で支柱52に締付け固定されている。支持部本体55は、締結部材54bによって接続部54に固定されていて、切断装置1の中央部に位置している。支持部本体55には、上下方向に延びる断面円形の第1貫通孔57および第2貫通孔58が形成されている。また、支持部本体55の上面には、レバー41に接続されたアーム42の支点を支持するための支点支持部56が固定されている一方、支持部本体55の下面には、第2貫通孔58を塞ぐように底板59が締結部材59aによって取り付けられている。
これら底板部10および支持部50は、図2に示すように、長手直角方向から見て略U字状をなしていて、切断装置1のベース部分を構成している。そうして、押下げ機構40の主要部分を支持部本体55の上方に配置し、切断刃保持部60を支持部本体55の下方に配置し、厚さ調整機構30を支持部本体55の真下で底板部10に固定するとともに、ステージ機構20を底板部10の長手方向一方側(土台部51と反対側)の端部に固定することで、切断装置1が構成されている。
−ステージ機構−
ステージ機構20は、ステージ21と、固定板22と、第1支持壁部23と、第2支持壁部24と、保護板25と、角度調整ネジ26と、角度調節体27と、第1スプリング28と、を有している。
固定板22は、底板部10の長手方向を長手方向とする長方形状に形成されていて、締結部材22aによって底板部10の長手方向一方側の端部に固定されている。図3に示すように、固定板22の長手直角方向一方側の端部には、締結部材23aによって第1支持壁部23が取り付けられている。固定板22の長手直角方向他方側の端部には、締結部材24aによって第2支持壁部24が取り付けられている。第1支持壁部23は、図1に示すように、長手方向に延びる直方体状の底壁部23bと、底壁部23bの長手方向の両端部から上方に延びる一対の矩形柱状の支持柱部23cと、を有している。各支持柱部23cの上端部には、長手方向に延びる貫通孔23dが形成されている。一方、第2支持壁部24は、矩形板状をなしている。第2支持壁部24の長手方向中央部の上端部には、長手直角方向に延びる、内周面にネジ溝が形成された貫通孔24bが形成されている。
ステージ21は、矩形板状の本体部21aと、本体部21aの長手直角方向一方側の端部から突出する矩形板状の突出部21bと、を有している。突出部21bは、一対の支持柱部23cの間に挟まれていて、一対の支持柱部23cの貫通孔23dに挿入された締結部材23eによって第1支持壁部23と連結されている。これにより、ステージ21は、第1支持壁部23によって、締結部材23eの軸方向周りに回動自在に支持されている。本体部21aの上面における長手直角方向の中央部には、長手方向の全幅に亘って段差凹部21cが形成されている。この段差凹部21cには、金属製のステージ21に直接当たることによって切断刃61が傷むのを防ぐために、樹脂製の保護板25が嵌め込まれている。このため、本実施形態では、保護板25の上面25aが、本発明の「ステージの載置面」に相当する。
第2支持壁部24の貫通孔24bには、角度調整ネジ26が挿入されている。この角度調整ネジ26は、当該角度調整ネジ26を回転させることで、長手直角方向に進退するようになっている。角度調整ネジ26の先端部には、固定板22とステージ21との間に挟まれるように、角度調節体27が取り付けられている。角度調節体27は、水平な底面と、垂直な長手直角方向他方側の側面とを、円弧状の曲面で繋いだような断面形状を有していて、長手方向に延びている。このように、角度調節体27における、ステージ21の下面に当たる部位を円弧状の曲面とすることで、ステージ21の傾斜角度を滑らかに変化させることが可能になっている。
このように構成されたステージ機構20では、図5に示すように、ステージ21の傾斜角度(保護板25の上面25aの傾斜角度)を調整可能になっている。具体的には、このステージ機構20では、角度調整ネジ26を一方向に回転させて、図5(a)に示すように、角度調節体27を長手直角方向他方側に後退させると、ステージ21の傾斜角度が小さくなる一方、角度調整ネジ26を反対方向に回転させて、図5(b)に示すように、角度調節体27を長手直角方向一方側に前進させると、ステージ21の傾斜角度が大きくなる。このようにステージ21の傾斜角度を調整可能とすることにより、例えば切断刃61を交換した際に刃先61aの傾斜角度が微妙にずれても、保護板25の上面25aを切断刃61の傾斜した刃先61aと平行に設定することが可能となっている。
なお、ステージ21は、下向きの力が作用しても、ステージ21の下面が角度調節体27に当たるので問題はないが、上向きの力が作用すると、ステージ21が回動してひっくり返るおそれがある。そこで、ステージ機構20では、ステージ21に取り付けたピン21dと、第2支持壁部24に取り付けたピン24cと、を第1スプリング28で繋ぎ、ステージ21に対し略下向きの付勢力を作用させている。これにより、上向きの力が作用した場合にも、ステージ21が回動してひっくり返るのを抑えられるようになっている。
−ガイド機構−
上記ステージ21上には、絶縁被覆体80をステージ21に固定するためのガイド機構70が設けられている。ガイド機構70は、固定側ガイド部71と、移動側ガイド部74と、固定部材75と、位置調整ネジ76と、を有している。
固定側ガイド部(ガイド部材)71は、図3に示すように、締結部材72aによってステージ21の長手直角方向一方側の端部に取り付けられた矩形板状の取付板72と、取付板72の長手直角方向他方側の端部から保護板25と垂直な方向に延びる当接部73と、を有している。それ故、絶縁被覆体80に当接する、当接部73における長手直角方向他方側の当接面73aは、保護板25と直角をなしている。
固定部材75は、締結部材(図示せず)によって、ステージ21の長手直角方向他方側の端部に取り付けられている。この固定部材75の上端部には、長手方向と直交し且つ保護板25の上面25aと平行に延びる、内周面にネジ溝が形成された貫通孔75aが形成されている。位置調整ネジ76は、貫通孔75aに挿入されていて、当該位置調整ネジ76を回転させることで、ステージ21の傾斜方向に進退するようになっている。位置調整ネジ76の先端部には、固定側ガイド部71の当接部73とステージ21の傾斜方向に対向するように、移動側ガイド部(ガイド部材)74が取り付けられている。移動側ガイド部74は、上底が下底よりも長い断面直角台形状に形成されていて、直角台形の傾斜辺に対応する長手直角方向一方側の傾斜面が、絶縁被覆体80に当接する当接面74aを構成している。それ故、移動側ガイド部74の当接面74aは、保護板25の上面25aと鋭角をなしている。
このように構成されたガイド機構70では、位置調整ネジ76を一方向に回転させて、移動側ガイド部74をステージ21の傾斜方向に沿って固定側ガイド部71側に前進させると、移動側ガイド部74と固定側ガイド部71の当接部73とによって絶縁被覆体80がステージ21の傾斜方向に挟まれるようになっている。これにより、保護板25の上面25aが傾斜していても絶縁被覆体80を傾斜方向に固定することができる。
もっとも、絶縁被覆体80を傾斜方向に固定しても、絶縁被覆体80はステージ21の法線方向については固定されていないことから、例えば図10(c)に示すように、絶縁被覆体80の一端部に切断刃61を押し付けると、絶縁被覆体80における反対側の端部が浮き上がり、絶縁被覆体80を正確に切断するのが困難になるおそれがある。
この点、本実施形態のガイド機構70では、移動側ガイド部74の当接面74aが保護板25の上面25aと鋭角をなすように構成することで、絶縁被覆体80が移動側ガイド部74よりも小さい場合における、絶縁被覆体80の浮き上がりを抑えるようにしている。すなわち、当接面74aを絶縁被覆体80に当接させると、図6(a)に示すように保護板25の上面25aと当接面74aとの間に絶縁被覆体80の一部が挟まれるので、絶縁被覆体80の浮き上がりを抑えることができる。なお、絶縁被覆体80が移動側ガイド部74よりも大きい場合における、絶縁被覆体80の浮き上がりを抑える構成については後述する。
−厚さ調整機構−
厚さ調整機構30は、下側架台31と、中間架台32と、上側架台33と、当接バー34と、第2スプリング35とを備えている。
下側架台31は、上面が開口した矩形箱状に形成されている。下側架台31の下端部には、長手直角方向両側に突出するフランジ部31cが形成されている。下側架台31は、締結部材31dによってフランジ部31cが底板部10に取り付けられることで、その長手方向と底板部10の長手方向とが一致した状態で底板部10に固定されている。下側架台31の長手方向両側の側壁部31bにおける上端部には、大小2つの切欠きからなる略逆凸字状の切欠き部31eが形成されている(図4参照)。下側架台31の長手直角方向他方側の側壁部31aにおける上端部には、図2に示すように、目盛が印字されたプレート31fが取り付けられている。この側壁部31aには、各々長手直角方向に延び且つ内周面にネジ溝が形成された貫通孔(図示せず)が、長手方向に並んで3つ形成されている。中央の貫通孔には、厚さ調整ネジ36が挿入されている一方、両端の貫通孔には位置固定ネジ37がそれぞれ挿入されている。下側架台31の内部に位置する、厚さ調整ネジ36の先端部には、ピニオン38が取り付けられている(図7(a)参照)。また、下側架台31の内部に位置する、2つの位置固定ネジ37の先端部には、図7(b)に示すように、ストッパー部材39が取り付けられている。
中間架台32は、略矩形板状をなしていて、その下面に長手方向に延びるレール部32aが形成されている。レール部32aの下面には、長手方向に延びるラック32bが取り付けられている。中間架台32は、下側架台31の側壁部31bの切欠き部31eにおける、上側の大きい切欠きにレール部32aが摺動可能に嵌るとともに、下側の小さい切欠きにラック32bが嵌った状態で、下側架台31の上に載置されている。また、中間架台32の長手直角方向他方側の側面には、図2に示すように、目盛が印字されたプレート32cが取り付けられている。
厚さ調整ネジ36のピニオン38はラック32bと噛み合っており、これにより、厚さ調整ネジ36を回転させると、中間架台32が下側架台31上を長手方向に移動するようになっている。また、位置固定ネジ37を回転させると、ストッパー部材39がレール部32aに押し付けられて、中間架台32が下側架台31に対して固定されるようになっている。
上側架台33は、締結部材33fによって中間架台32の上面に取り付けられた略矩形板状の取付部33aと、取付部33aの上側に形成された略直方体状の本体部33bと、を有している。本体部33bには、長手方向に延びる貫通孔33cが形成されている。また、本体部33bには、長手方向に延びる第1溝33dと、長手直角方向に延びる第2溝33eとからなる平面視略T字状の溝が形成されている。これら貫通孔33c、第1溝33dおよび第2溝33eは互いに繋がっている。
当接バー(位置決め部材)34は、貫通孔33cに摺動可能且つ回転可能に挿入されていて、長手方向(切断刃61と直交する方向)に移動可能となっている。当接バー34の長手方向一方側の先端部には円盤状のヘッド34aが形成されている一方、当接バー34の長手方向他方側の先端部には円環状のストッパープレート34bが取り付けられている。ヘッド34aおよびストッパープレート34bの直径は、貫通孔33cの孔径よりも大きく形成されており、これにより、当接バー34は、貫通孔33cから抜けないようになっている。また、当接バー34には、当該当接バー34から長手方向と直交する方向に延びる、当該当接バー34の移動を制限するためのストッパーバー34cが形成されている。
本体部33bの長手方向一方側の側面とヘッド34aとの間には、当接バー34を囲むように第2スプリング(付勢手段)35が設けられている。このように、第2スプリング35を設けることで、図7(f)に示すように、ストッパーバー34cが第1溝33d内に位置している場合には、第2スプリング35の付勢力によって、本体部33bの長手方向他方側の側面にストッパープレート34bが当たるまで、当接バー34が長手方向一方側へ飛び出すようになっている。これに対し、図7(b)に示すように、ストッパーバー34cが第2溝33e内に位置している場合には、ストッパーバー34cが第2スプリング35の付勢力を抑えることで、当接バー34は長手方向他方側へ飛び出すようになっている。
なお、下側架台31の位置や当接バー34の長さ等は、例えば、下側架台31と中間架台32とが長手方向にずれていない状態で、且つ、本体部33bの側面にストッパープレート34bが当たるまで、当接バー34が長手方向一方側へ飛び出した状態において、ヘッド34aの先端と切断刃61の切断位置Pとが一致するように設定されている。
このように構成された厚さ調整機構30では、図7(a)および図7(b)に示す状態から、下側架台31のプレート31fに印字された目盛と、中間架台32のプレート32cに印字された目盛とを目印として、絶縁被覆体80の予定切断厚さ(所定値)に応じて、厚さ調整ネジ36を回転させると、図7(c)および図7(d)に示すように、中間架台32が下側架台31上を予定切断厚さの分だけ長手方向他方側に移動する。位置固定ネジ37を回転させて、中間架台32を下側架台31に対して固定した後、図7(e)および図7(f)に示すように、水平方向に倒れて第2溝33e内に位置しているストッパーバー34cを起こして、第1溝33d内に入れると、第2スプリング35の付勢力によって、当接バー34が長手方向一方側へ飛び出す。この状態では、中間架台32が下側架台31に対して予定切断厚さの分だけ長手方向他方側にずれていることから、切断刃61の切断位置Pとヘッド34aの先端との間隔が、絶縁被覆体80の予定切断厚さと等しくなる。これにより、絶縁被覆体80の長手方向の他方側端がヘッド34aの先端に当たるように、絶縁被覆体80を保護板25に載置すれば、絶縁被覆体80を予定切断厚さで切断することが可能となる。なお、本実施形態では、第2スプリング35が、本発明の「切断刃の切断位置と位置決め部材の先端との間隔が所定値になるように、位置決め部材を切断位置側に付勢する付勢手段」に相当する。
−押下げ機構−
押下げ機構40は、レバー41と、アーム42と、ハンドル43と、押下げ部44と、ストッパーネジ45と、第1スライドシャフト46と、第2スライドシャフト47と、第3スプリング48と、を有している。
押下げ部44は、直方体状の本体部44aの長手方向他方側の端部に一段低い直方体状の段差部44bが形成されたような形状をなしている。押下げ部44の本体部44aには、上下方向に延びる第1スライドシャフト46および第2スライドシャフト47が取り付けられている。第1スライドシャフト46は、第1貫通孔57に挿入されている。第1貫通孔57を通り抜けた第1スライドシャフト46の下端部には、切断刃保持部60が取り付けられている。第2スライドシャフト47は、第2貫通孔58に挿入されているが、第1スライドシャフト46とは異なり、その下端が第2貫通孔58を通り抜けていない。また、押下げ部44の本体部44aの下面と、支持部本体55の上面との間には、第2スライドシャフト47を囲むように第3スプリング48が設けられている。このように、第3スプリング48を設けることで、押下げ部44は第3スプリング48の付勢力によって、支持部本体55の上方で浮いたような状態で保持される。
一方、押下げ部44の段差部44bには、上下方向に延びる貫通孔44cが形成されている。ストッパーネジ45は、貫通孔44cに挿入されていて、ナット45aを回すことにより、段差部44bの下面からの突出長が調整可能になっている。ストッパーネジ45の下端部には樹脂製のキャップ45bが取り付けられている。なお、ストッパーネジ45の下端部にキャップ45bを取り付けるのは、レバー41を押し下げることによって、ストッパーネジ45の下端が支持部本体55の上面に当たった際に、支持部本体55が傷むのを抑えるためである。
アーム42は短冊状に形成されていて、その中央部に当該アーム42が延びる方向に延びる長穴42aが形成されている一方、その他方側の端部に丸穴42bが形成されている。アーム42の他方側の端部は、丸穴42bに挿入した取付ピン42cを介して、支点支持部56に回動自在に取り付けられている。また、アーム42の中央部は、長穴42aに挿入された取付ピン42dを介して、押下げ部44の本体部44aに取り付けられている。さらに、アーム42の一方側の端部には、レバー41が取り付けられている。
このように構成された押下げ機構40では、図8(a)に示す状態から、白抜き矢印の方向にレバー41を押し下げると、アーム42が取付ピン42cを中心として図8(a)における時計回りに回動する。アーム42が取付ピン42cを中心として回動すると、それに伴って、取付ピン42dが長穴42aにおける一方側の端部から他方側へ相対的に移動するとともに、この取付ピン42dを介して、押下げ部44に下向きの力が作用する。かかる下向きの力によって、第3スプリング48の付勢力に抗して押下げ部44が下方に移動すると、第1スライドシャフト46、第2スライドシャフト47およびストッパーネジ45が下方に移動する。そうして、図8(b)に示すように、ストッパーネジ45の下端が支持部本体55の上面に当たると、アーム42の回動および押下げ部44の移動が止まり、第1スライドシャフト46の下端部に取り付けられた切断刃保持部60が最下点に達する。この状態から、レバー41に加えていた力を弱めると、第3スプリング48の付勢力によって、押下げ機構40が図8(a)に示す状態に戻る。
なお、本実施形態では、レバー41の他に、手動用の操作部としてのハンドル43が、バー43aを介して押下げ部44に取り付けられている。このハンドル43は、例えば太い切断対象物を切断する際に、真上から力をかけることができるように設けられているものである。このハンドル43に対し、図8(a)の黒塗り矢印で示すように、真上から力をかけると、レバー41を押し下げた場合と同様に、切断刃保持部60が最下点に達するようになっている。
−切断刃保持部−
切断刃保持部60は、本体部62と、切断刃61と、切断刃取付部63と、ストッパー64と、第4スプリング65と、を有している。
本体部62は、第1スライドシャフト46の下端部に取り付けられている。それ故、切断刃保持部60は、作業者のレバー41操作やハンドル43操作によって、上下方向に移動する。切断刃取付部63は、長手方向と直交し且つ水平面に対し30°傾いた状態で、締結部材62aによって本体部62に取り付けられている。切断刃取付部63の下端部には、当該切断刃取付部63を長手方向に二分する溝部63aが形成されている。
切断刃61は、例えば、市販のカッター、カミソリの刃等を用いることができる。本実施形態では、切断刃61として、矩形板状をなしていて、刃先61aの片側のみに傾斜面を有する片刃のカミソリの刃を用いている。切断刃61は、その上端部が溝部63aに挿入されている。溝部63aに挿入された切断刃61の上端部は、締結部材63bによって切断刃取付部63に固定されている。このように、長手方向と直交し且つ水平方向に対し30°傾いた切断刃取付部63に固定されることで、切断刃61は、長手方向と直交するとともに、その刃先61aの長手方向が水平面(切断刃61の移動方向(上下方向)と直交する面)に対して30°(所定角度)で傾斜している。なお、切断刃61は、刃先61aの傾斜面が長手方向他方側を向くように、切断刃取付部63に固定されている。
また、本体部62には、長手方向一方側に突出する直方体状のストッパー支持部66が形成されている。ストッパー支持部66には上下方向に延びる貫通孔66aが形成されている。ストッパー64は、先端部に円盤状のヘッド64aを有していて、ヘッド64aが下側に位置するように貫通孔66aに挿入されている。ストッパー支持部66の下面とヘッド64aとの間には、ストッパー64を囲むように第4スプリング65が設けられている。第4スプリング65は、ストッパー64を下側に付勢している。
このように構成された切断刃保持部60では、レバー41を押し下げると、図8(b)に示すように、ストッパー64が下方に移動して、絶縁被覆体80を保護板25の上面25aに対して上方(切断刃61の移動方向)から押圧するとともに、切断刃61が絶縁被覆体80を切断する。
より詳しくは、絶縁被覆体80が移動側ガイド部74よりも大きい場合には、図6(b)に示すように、ストッパー64のヘッド64aが絶縁被覆体80に当接することで、絶縁被覆体80の浮き上がりが抑えられる。この場合、レバー41を押し下げる過程でストッパー64のヘッド64aが絶縁被覆体80に当接した後は、レバー41の押下げに合わせて第4スプリング65が縮むので、絶縁被覆体80が過度に押圧されて拉げるのを抑えることができる。なお、絶縁被覆体80が移動側ガイド部74よりも小さい場合には、図6(a)に示すように、ストッパー64のヘッド64aは移動側ガイド部74に当たる。
一方、切断刃61の刃先61aの長手方向が水平面に対して30°で傾斜していることから、切断刃61を下方に移動させて絶縁被覆体80に押し付けると、傾斜した刃先61aの長手方向(斜め方向)に沿って「引いて切る力または押して切る力」が絶縁被覆体80に作用する。このように、摩擦力の大きい上下方向に押して切るのではなく、摩擦力の小さい斜め方向に引いてまたは押して切ることから、絶縁被覆体80を容易且つ正確に切断することができる。また、本実施形態では、保護板25の上面25aが、傾斜した刃先61aと平行に設定されていることから、保護板25の上面25aと切断刃61の刃先61aとの間に隙間が生じないので、絶縁被覆体80における最後に切断される部位に切断バリ80aが発生するのを抑えることができる。
−使用手順−
次いで、以上のように構成された切断装置1の使用手順について説明する。
先ず、絶縁被覆体80の切断に先立ち、切断刃61の移動ストロークの調整を行う。移動ストロークの調整は、大きな調整をストッパーリング53および接続部54で行い、細かい調整をストッパーネジ45で行う。例えば、レバー41を押し下げた場合に切断刃61がステージ21に近づくような高さまで、先にストッパーリング53を支柱52に沿って下げ、締結部材54aを緩めてもストッパーリング53が受け止める状態にしてから、接続部54を支柱52に沿って下げて支持部本体55の大まかな高さを決める。その後、ナット45aを回して、段差部44bの下面からのストッパーネジ45の突出長を最大にしておく。そうして、ストッパーネジ45の下端が支持部本体55の上面に当たるまでレバー41を押し下げ、その状態における切断刃61の刃先61aと保護板25の上面25aとの間隔を確認し、当該間隔の分だけ、段差部44bの下面からのストッパーネジ45の突出長を短くする。これにより、切断刃61の移動ストロークの調整が完了する。なお、図8(b)では、レバー41およびアーム42が水平になったときに、ストッパーネジ45の下端が支持部本体55の上面に当たるように設定しているが、これに限らず、例えば、レバー41およびアーム42が水平になる前に、ストッパーネジ45の下端が支持部本体55の上面に当たるように設定してもよい。
次いで、保護板25の上面25aが、傾斜した刃先61aと平行になるようにステージ21の角度を調整する。具体的には、例えば、図5(a)に示すように、ステージ21を最も寝かせた状態にし、この状態でレバー41を押し下げて切断刃61を下げる。そして、図5(b)に示すように、保護板25の上面25aが切断刃61の刃先61aに当たるまで、角度調節体27を長手直角方向一方側に前進させる。これにより、保護板25の上面25aと切断刃61の刃先61aとを容易に平行に設定することができる。
次いで、絶縁被覆体80の切断厚さの調整を行う。具体的には、図7(a)〜(f)に示すように、絶縁被覆体80の予定切断厚さ(例えば0.5mm)に応じて、厚さ調整ネジ36を回転させて中間架台32を移動させた後、位置固定ネジ37を回転させて中間架台32を固定する。その後、第2溝33e内に位置しているストッパーバー34cを起こして、第1溝33d内に入れることで、ストッパーバー34cによる制限を解除し、切断刃61の切断位置Pの0.5mm手前(長手方向他方側)にヘッド34aの先端を位置させる。
次いで、図4に示すように、絶縁被覆体80の長手方向の他方側端がヘッド34aの先端に当たるように、絶縁被覆体80を保護板25の上面25aに載置した後、例えば図6(a)に示すように、位置調整ネジ76を操作して移動側ガイド部74と固定側ガイド部71とで絶縁被覆体80を固定する。
このような状態で、レバー41を押し下げると、図8(b)に示すように、切断刃61が絶縁被覆体80を切断する。ここで、本実施形態では、当接バー34を第2スプリング35によって付勢する構成を採用していることから、切断刃61が絶縁被覆体80に喰い込むと、絶縁被覆体80が第2スプリング35の付勢力に抗して切断刃61の厚さ分だけ長手方向に拡がるので、絶縁被覆体80を容易に切断することができる。
以上のように、本実施形態の切断装置1によれば、切断バリ80aを生じさせることなく、絶縁被覆体80を容易且つ薄く切断することができるので、例えば画像処理技術を利用した寸法測定を行う場合に極めて有用である。また、薄く切断する場合に限らず、厚さ調整機構30を用いることによって、軟質部材80を所望の厚さに切断することができるので、様々な分野において、軟質部材80を容易且つ正確に切断したいという要望に応えることが可能となる。
最後に、切断刃61の移動方向と直交する面に対する、刃先61aの長手方向の傾斜角度である「所定角度」の好ましい範囲について説明する。
所定角度の好ましい範囲を求めるために、上記切断装置1と同種の切断装置(図示せず)を用いて、各々PVC(ポリ塩化ビニル)材料およびPE(ポリエチレン)材料からなるφ3.0mm(小)、φ7.5mm(中)およびφ10.0mm(大)の円筒部材を、刃先61aの長手方向の傾斜角度を変化させて切断した。なお、用いられた切断装置は、切断刃61が角度調整可能であること、および、移動ストロークが長いことを除けば、切断装置1とほぼ同様に構成されている。
図9(a)は所定角度を評価した結果表の一例を示す図であり、図9(b)は所定角度と切断可能な円筒部材(軟質部材)の寸法との関係を説明する模式図である。なお、図9(a)の結果表における、「○」は容易に切断することができたことを、「△」は切断し難かったことを、「×」は切断することが困難であったことを意味する。
所定角度が小さくなれば、斜め方向に沿って「引いて切る力または押して切る力」が小さくなるが、図9(a)に示すように、所定角度が15°の場合でも、PE材料からなる円筒部材については大中小いずれの寸法でも容易に切断することができ、また、PVC材料からなる円筒部材についてもφ3.0mmであれば容易に切断することができた。また、所定角度が30°以上の場合には、PE材料のみならずPVC材料についても、大中小いずれの寸法でも容易に切断することができた。よって、「所定角度」の下限は、15°が好ましく、30°がより好ましい。
一方、所定角度が大きくなれば、切断刃61の長さや移動距離が長くなる。換言すると、同じ大きさの切断刃61を用いた場合、所定角度が大きくなれば、切断可能サイズが小さくなる。例えば、切断刃61として、長さ39.3mm且つ高さ25.8mmのカミソリの刃を用いた場合には、図9(b)に示すように、所定角度が70°でもφ10.0mmの円筒部材を切断することができる。もっとも、所定角度が60°であれば、同じ大きさの切断刃61を用いた場合にも、φ15.0mmの円筒部材を切断することができ、切断対象となる軟質部材のサイズの選択の幅が広がる。よって、「所定角度」の上限は、70°が好ましく、60°がより好ましい。
以上より、切断刃61の移動方向と直交する面に対する、刃先61aの長手方向の傾斜角度である「所定角度」は、15°〜70°が好ましく、30°〜60°がより好ましい。
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
上記実施形態では、切断刃61の移動方向を上下方向としたが、これに限らず、例えば、切断刃61の移動方向を斜め方向や水平方向にしてもよい。
また、上記実施形態では、手動式切断装置に本発明の切断装置1を適用したが、これに限らず、例えば、電動式アクチュエータを用いて切断刃61を移動させる電動式切断装置やエアシリンダ式切断装置に、本発明の切断装置1を適用してもよい。
さらに、上記実施形態では、切断装置1にレバー41およびハンドル43を設けたが、これに限らず、どちらか一方だけを設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、切断刃61の角度を固定してステージ21を角度調整可能としたが、これに限らず、例えば、ステージ21の角度を固定して切断刃61を角度調整可能としてもよいし、ステージ21および切断刃61の両方を角度調整可能に構成してもよい。
さらに、上記実施形態では、固定側ガイド部71の当接面73aが保護板25と直角をなすとともに、移動側ガイド部74の当接面74aが保護板25と鋭角をなすようにしたが、これに限らず、例えば、移動側ガイド部74の当接面74aが保護板25と直角をなすとともに、固定側ガイド部71の当接面73aが保護板25と鋭角をなすようにしてもよいし、当接面73aおよび当接面74aの両方が保護板25と鋭角をなすようにしてもよい。
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。