JP2016013103A - 低級脂肪酸を含有する固形物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭素数3〜5の脂肪酸の風味を抑制することなく、当該脂肪酸の保持力に優れる固形物を製造でき、更にコストも低い方法の提供。【解決手段】炭素数3〜5の脂肪酸水溶液をpH5以上に調整した後、乾燥することを特徴とする、炭素数3〜5の脂肪酸を含有する固形物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素数3〜5の脂肪酸水溶液を乾燥して、当該脂肪酸を含有する固形物を製造する方法に関する。
低級脂肪酸は、特有の風味を有し、従来より、食品用香料や調味料の原料等として用いられている(例えば、特許文献1等)。低級脂肪酸の多くは液体であるが、着香料や調味料の原料には、粉末状や顆粒状等であるものも少なくない。そのような原料に液体の低級脂肪酸を混合して均一な混合物を得ることは容易でないため、通常、液体の低級脂肪酸を予め粉末等の固形物にした後で混合することが行われている。
特許文献2及び3には、有機酸の粉末化方法として、サイクロデキストリンを添加する方法、又は粉末化基材としてアルケニルコハク酸エステル化澱粉を使用する方法が報告されている。しかし、これらの方法によって低級脂肪酸を粉末化した場合、得られた粉末は低級脂肪酸の保持力は高いものの、低級脂肪酸の風味が抑制されるという問題や、コストが高いという問題があった。
特開2008−263903号公報 特開昭62−143681号公報 特開2010−4865号公報
本発明の目的は、炭素数3〜5の脂肪酸の風味を抑制することなく、当該脂肪酸の保持力に優れる固形物を製造でき、更にコストも低い方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、低級脂肪酸水溶液をpH5以上に調整した後に乾燥することによって、固形物の製造時における低級脂肪酸の揮発量が抑えられ、低級脂肪酸の保持力が高い固形物を製造できることを見出し、更に、低級脂肪酸として炭素数3〜5の脂肪酸を用いて得られた固形物は、その使用時において所望の風味が抑制されないことも見出した。本発明者は、これらの知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 炭素数3〜5の脂肪酸水溶液をpH5以上に調整した後、乾燥することを特徴とする、炭素数3〜5の脂肪酸を含有する固形物の製造方法。
[2] 前記水溶液中の炭素数3〜5の脂肪酸濃度が、10重量ppm〜50000重量ppmである、[1]記載の方法。
[3] 前記水溶液が、炭素数3〜5の脂肪酸を生産する能力を有する微生物の発酵液である、[1]又は[2]記載の方法。
[4] 炭素数3〜5の脂肪酸が、イソ吉草酸である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の方法。
[5] 前記水溶液に賦形剤を添加することを含む、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の方法。
[6] 賦形剤が、デキストリン及び澱粉から選ばれる少なくとも1種である、[5]記載の方法。
[7] 前記水溶液の乾燥方法が、真空乾燥又は噴霧乾燥である、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の方法。
[8] [1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法で得られる固形物。
[9] [8]記載の固形物を添加してなる食品。
[10] 粉末調味料、固形調味料、ペースト状調味料、半練り調味料、粉末スープ及び粉末ドレッシングから選ばれる1種である、[9]記載の食品。
[11] [8]記載の固形物を添加することを含む、食品の製造方法。
[12] 食品が、粉末調味料、固形調味料、ペースト状調味料、半練り調味料、粉末スープ及び粉末ドレッシングから選ばれる1種である、[11]記載の方法。
本発明の方法によれば、炭素数3〜5の脂肪酸の風味を抑制することのない、炭素数3〜5の脂肪酸の保持力に優れる固形物を製造できる。
また、本発明の方法は、特殊な原料を必要としないため、低コストで炭素数3〜5の脂肪酸の保持力が高い固形物を製造できる。
さらに本発明の方法は、固形物の製造時における炭素数3〜5の脂肪酸の揮発量が少ないため、該製造時の環境負荷(臭気放散量)が低いという利点も有する。
実施例1〜4及び比較例1のイソ吉草酸残存率を示すグラフである。 実施例1〜4及び比較例1のイソ吉草酸含有粉末をポリ袋に入れて24℃で1か月間保管した際の、各粉末のイソ吉草酸濃度変化を示すグラフである。 実施例5〜9の各イソ吉草酸残存率を縦軸にプロットし、出口噴霧温度を横軸にプロットしたグラフである。 実施例5〜9の各イソ吉草酸残存率を縦軸にプロットし、入口噴霧温度を横軸にプロットしたグラフである。 実施例5〜9の各イソ吉草酸残存率を縦軸にプロットし、噴霧流量を横軸にプロットしたグラフである。 実施例5〜9のイソ吉草酸残存率の平均値及び実施例10のイソ吉草酸残存率を示すグラフである。
本発明の方法は、炭素数3〜5の脂肪酸水溶液をpH5以上に調整した後、乾燥することを主たる特徴とする。
本発明において用いられる炭素数3〜5の脂肪酸は、飽和及び不飽和のいずれであってもよい。また当該脂肪酸は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。当該脂肪酸の炭素数は、好ましくは4〜5であり、より好ましくは5である。
炭素数3〜5の脂肪酸の具体例としては、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸及びイソ吉草酸等が挙げられるが、閾値が低く、食品へ低濃度で添加しても所望の効果が発揮できる点で、好ましくはイソ吉草酸である。
本発明において用いられる炭素数3〜5の脂肪酸の製造方法は特に制限されず、当該脂肪酸は、酵母や細菌類等の微生物によって生産されたものであってよく、又は合成化合物等であってもよいが、異風味が少なく食品用途に適しているという観点から、炭素数3〜5の脂肪酸を生産する能力を有する微生物によって生産された脂肪酸が好ましい。ここで「炭素数3〜5の脂肪酸を生産する能力を有する微生物」とは、それを培地に培養したときに、培地中に有意な量の炭素数3〜5の脂肪酸を蓄積する微生物をいう。
炭素数3〜5の脂肪酸を生産する能力を有する微生物の具体例としては、Saccharomyces cerevisiae(例、Saccharomyces cerevisiae ATCC 201390株等)、Phichia anomala(例、Phichia anomala NRBC 10213株等)、Phichia robertsii(例、Phichia robertsii ATCC 22312株等)等の酵母;Gluconobacter thailandicus(例、Gluconobacter thailandicus NRBC 3254株等)、Gluconobacter roseus(例、Gluconobacter roseus NBRC 3990株等)等の酢酸菌等が挙げられる。これらの微生物は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって培養できる。例えば、Saccharomyces cerevisiaeは、Food Microbiology 24 (2007) 139-148記載の方法又はそれに準ずる方法によって培養でき、Phichia anomala及びPhichia robertsiiは、特開2013−223485号公報記載の方法又はそれに準ずる方法によって培養でき、Gluconobacter thailandicus及びGluconobacter roseusは、米国特許第5468627号明細書記載の方法又はそれに準ずる方法によって培養できる。また、上記の菌株はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NBRC)等から容易に入手することができる。
本発明は、炭素数3〜5の脂肪酸として、市販品を用いてもよい。
本発明において、炭素数3〜5の脂肪酸として、炭素数3〜5の脂肪酸を生産する能力を有する微生物によって生産されたものを用いる場合、炭素数3〜5の脂肪酸水溶液として、炭素数3〜5の脂肪酸を生産する能力を有する微生物の発酵液を用いることができる。
炭素数3〜5の脂肪酸水溶液中の炭素数3〜5の脂肪酸濃度は特に制限されないが、環境負荷(より高濃度にすると、揮散量が多くなるため排気処理の負荷がかかる)と製造コスト(濃度が低い場合は、所望の量を得るために製造量を増やす必要が生じ、その結果製造コストが高くなる)の観点から、好ましくは10重量ppm〜50000重量ppmであり、より好ましくは100重量ppm〜10000重量ppmであり、特に好ましくは300重量ppm〜8000重量ppmである。
本発明において、炭素数3〜5の脂肪酸水溶液中の炭素数3〜5の脂肪酸濃度は、ガスクロマトグラフィー法(使用機器:アジレント・テクノロジー株式会社製GC/MS 5973)により測定される。
炭素数3〜5の脂肪酸水溶液は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、炭素数3〜5の脂肪酸以外の成分を含有し得る。そのような成分としては、例えば食塩、アミノ酸類、タンパク質、糖類等が挙げられる。
本発明の方法は、炭素数3〜5の脂肪酸水溶液のpHを特定の値に調整することが重要である。当該水溶液のpHを特定の値に調整することにより、固形物の製造時における炭素数3〜5の脂肪酸の揮発が抑えられ、炭素数3〜5の脂肪酸の保持力に優れる固形物が得られる。
具体的には、炭素数3〜5の脂肪酸水溶液は、pH5以上(より好ましくはpH5.5以上、特に好ましくは6.0以上)に調整することが好ましい。
炭素数3〜5の脂肪酸水溶液のpHの上限値は特に制限されないが、本発明の固形物を食品に使用した場合に、当該食品のpHに影響を及ぼしにくく、当該食品の味、風味を損なうことがない点から、通常10(好ましくは8.5)である。
炭素数3〜5の脂肪酸水溶液のpHの調整方法は特に制限されず、自体公知の方法により調整することができる。例えば、pH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム等)を適宜添加すること等により調整できる。
本発明の方法は、炭素数3〜5の脂肪酸水溶液に賦形剤を添加することを含んでよい。賦形剤を添加することにより、乾燥後に取扱いが容易な物性の固形物を得ることが可能となる。
炭素数3〜5の脂肪酸水溶液に賦形剤を添加する時期は特に制限されず、該水溶液のpHの調整前及び調製後のいずれであってもよいが、pHの調整前が好ましい。
本発明において用いられ得る賦形剤としては、例えば、デキストリン、澱粉、乳糖等が挙げられるが、食品の味や風味への影響が少ない点で、好ましくはデキストリン及び澱粉であり、より好ましくはデキストリンである。これらの賦形剤は1種単独で用いてよく、また2種以上を併用してもよい。
本発明の方法は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、賦形剤以外の添加物を、炭素数3〜5の脂肪酸水溶液に添加することを含んでよい。そのような添加物としては、例えば、食塩、アミノ酸類、タンパク質、糖類等が挙げられる。
炭素数3〜5の脂肪酸水溶液の乾燥方法は特に制限されず、例えば、真空乾燥、噴霧乾燥、棚段加熱乾燥、造粒乾燥、凍結乾燥等が挙げられるが、排気をトラップして排出できるため環境負荷が少なく、また製造効率にも優れている点から、好ましくは真空乾燥又は噴霧乾燥である。また2種以上の乾燥方法を組み合わせてもよい。
後述の実施例に示されるように、本発明の方法によれば、乾燥条件に拠らず、炭素数3〜5の脂肪酸の保持力に優れる固形物が得られる。従って、本発明の方法において乾燥条件は特に制限されず、乾燥方法に応じて適宜設定すればよい。乾燥の程度は特に制限されないが、得られる固形物における水分率が10重量%以下になるまで行うことが好ましい。
本発明の方法によって製造された、炭素数3〜5の脂肪酸を含有する固形物(以下、「本発明の固形物」とも称する)の形態は特に制限されず、例えば、粉末、微粒、細粒及び顆粒等が挙げられるが、好ましくは粉末及び顆粒である。本発明の固形物の成形方法は特に制限されず、所望の形態に応じて、自体公知の方法で適宜行えばよい。例えば、粉末は、得られた粉末状の乾燥物をそのまま用いるか、又は乾燥物を自体公知の方法で適宜粉砕すること等によって得ることができる。また顆粒は、粉末を自体公知の方法で適宜造粒すること等により得ることができる。あるいは、炭素数3〜5の脂肪酸水溶液をpH5以上に調整した後、該水溶液を核粒に噴霧して乾燥することによっても、顆粒を得ることができる。
本発明の固形物における炭素数3〜5の脂肪酸の含有量は特に制限されないが、製造コスト(濃度が低い場合は、所望の量を得るために製造量を増やす必要が生じ、その結果製造コストが高くなる)の観点から、好ましくは10重量ppm以上であり、より好ましくは100重量ppm以上であり、特に好ましくは300重量ppm以上である。また当該含有量の上限は特に制限されないが、通常50000重量ppmであり、好ましくは10000重量ppmである。
本発明の固形物における炭素数3〜5の脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフィー法により測定される。
本発明の固形物は、炭素数3〜5の脂肪酸の保持力に優れ、且つ、その使用時において炭素数3〜5の脂肪酸の風味を抑制することがないため、当該風味を食品等に付与するために好適に用いられる。
従って本発明は、本発明の固形物を添加してなる食品(以下、「本発明の食品」とも称する)及びその製造方法も提供する。本発明において「食品」とは、経口摂取し得るものを広く包含する概念であり、飲料や調味料等も含まれる。
本発明の食品は、炭素数3〜5の脂肪酸の風味を付与されることを所望されるものであれば特に制限されないが、例えば、調味料(例、粉末調味料、固形調味料、ペースト状調味料、半練り調味料、風味調味料等);畜肉、鶏肉、魚介等を加工した加工食品(例、スープ(例、中華スープ、魚介スープ等)、粉末スープ、ハンバーグ、餃子、めんつゆ、カレー、即席めん、たれ、ソーセージ等);ドレッシング(例、粉末ドレッシング等)が挙げられる。特に、原料由来の水分の持ち込みが制限される粉末調味料、固形調味料、ペースト状調味料、半練り調味料、粉末スープ、粉末ドレッシングに好適に使用できる。
本発明の食品に対する、本発明の固形物の添加量は特に制限されず、本発明の食品中の炭素数3〜5の脂肪酸濃度が、0.1重量ppm〜1000重量ppm(より好ましくは10重量ppm〜100重量ppm)の範囲になるよう添加されることが好ましい。 本発明の食品中の炭素数3〜5の脂肪酸濃度は、ガスクロマトグラフィー法により測定される。
本発明の食品の製造方法は、本発明の固形物を添加することを含む以外は特に制限されず、公知の食品と同様の原料を用い、公知の食品の製造方法と同様に行えばよい。本発明の固形物の添加は、例えば、本発明の食品を製造するときに他の原料に混合してもよいし、本発明の食品の製造後(例えば、食品の喫食前、喫食中等)に添加してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。
[試験例1]
(実施例1)
イソ吉草酸産生菌の発酵液(Gluconobacter thailandicusの発酵液)として得られたイソ吉草酸水溶液(イソ吉草酸濃度:500重量ppm)に、水酸化ナトリウムを添加してpH5(実測pH:5.04)に調整した。当該イソ吉草酸水溶液70gに、デキストリン(商品名「パインデックス#2」、松谷化学工業株式会社製)30gを添加した後、70℃の水浴中で1時間、スターラー攪拌して溶解させた。得られた溶液を、アルミトレイ上に薄く広げ、真空棚段乾燥機(ヤマト科学株式会社製)にて50℃で3時間乾燥し、イソ吉草酸含有粉末を得た。ガスクロマトグラフィー法により、得られたイソ吉草酸含有粉末中のイソ吉草酸の濃度を測定した後(実測値)、イソ吉草酸の揮発が全くなかったと仮定してイソ吉草酸濃度の理論値を算出し、該理論値(1167重量ppm)に対する実測値の割合を、イソ吉草酸残存率(%)として求めた。 本実施例において、ガスクロマトグラフィー法によるイソ吉草酸含有粉末中のイソ吉草酸濃度の測定は、GC/MS 5973(アジレント・テクノロジー株式会社製)により行った。
(実施例2〜4)
イソ吉草酸水溶液のpHを、それぞれ6、7及び8(実測pH:6.03、7.09及び8.06)に調整した以外は、実施例1と同様にして、イソ吉草酸含有粉末を得、イソ吉草酸残存率を求めた。
(比較例1)
イソ吉草酸水溶液のpHの調整を行わなかった(実測pH:3.54)以外は、実施例1と同様にして、イソ吉草酸含有粉末を得、イソ吉草酸残存率を求めた。
結果を表1及び図1に示す。
Figure 2016013103
表1及び図1に示す結果から明らかなように、本発明の方法により得られた実施例1〜4のイソ吉草酸含有粉末は、いずれもイソ吉草酸残存率が高く、イソ吉草酸保持力に優れることが確認された。
一方、イソ吉草酸水溶液のpHの調整を行わなかった比較例1のイソ吉草酸含有粉末は、実施例1〜4に比べて、イソ吉草酸残存率が低かった。
実施例1〜4及び比較例1のイソ吉草酸含有粉末10gをそれぞれポリ袋に入れ、24℃で1か月間保管した後、各粉末のイソ吉草酸濃度を測定した。
結果を表2及び図2に示す。
Figure 2016013103
[試験例2]
(実施例5〜9)
イソ吉草酸産生菌の発酵液(Gluconobacter thailandicusの発酵液)として得られたイソ吉草酸水溶液(イソ吉草酸濃度:5603重量ppm)に、水酸化ナトリウムを添加してpH7に調整した。当該イソ吉草酸水溶液800gに、デキストリン(商品名「パインデックス#2」、松谷化学工業株式会社製)200gを添加した後、70℃の水浴中で1時間、スターラー攪拌して溶解させた。得られた溶液(全量1000g、固形分濃度37.6重量%)を、スプレードライヤ(スプレードライL―12型、大川原化工機株式会社製、アトマイザー回転数:18000rpm)を用いて、表3に示す条件で乾燥し、イソ吉草酸含有粉末を得た。ガスクロマトグラフィー法により、得られたイソ吉草酸含有粉末中のイソ吉草酸の濃度を測定した後(実測値)、イソ吉草酸の揮発が全くなかったと仮定してイソ吉草酸濃度の理論値を算出し、該理論値(11910重量ppm)に対する実測値の割合を、イソ吉草酸残存率(%)として求めた。
結果を表3に示す。また、図3〜5には、縦軸に実施例5〜9の各イソ吉草酸残存率(%)をプロットし、横軸に出口噴霧温度(℃)、入口噴霧温度(℃)及び噴霧流量(L/hr)をプロットしたグラフを示す。
Figure 2016013103
表3及び図3〜5に示す結果から明らかなように、pH7に調整したイソ吉草酸水溶液を噴霧乾燥した実施例5〜9も、実施例1〜4と同様に、イソ吉草酸保持力に優れるものであった。また、噴霧乾燥の条件が異なる実施例5〜9が、いずれもイソ吉草酸保持力に優れていたことから、本発明の方法によれば、乾燥方法や乾燥条件に拠らず、イソ吉草酸保持力に優れる固形物が得られることが明らかとなった。
[試験例3]
(実施例10)
イソ吉草酸産生菌の発酵液(Gluconobacter thailandicusの発酵液)として得られたイソ吉草酸水溶液(イソ吉草酸濃度:5603重量ppm)に、水酸化ナトリウムを添加してpH7に調整した。当該イソ吉草酸水溶液560gに、デキストリン(商品名「パインデックス#2」、松谷化学工業株式会社製)373gを添加した後、70℃の水浴中で1時間、スターラー攪拌して溶解させた。得られた溶液(全量933g、固形分濃度53.2重量%)を、真空式ドラムドライヤ(カツラギ工業株式会社製)を用いて、表4に示す条件で乾燥し、イソ吉草酸含有粉末を得た。ガスクロマトグラフィー法により、得られたイソ吉草酸含有粉末中のイソ吉草酸の濃度を測定した後(実測値)、イソ吉草酸の揮発が全くなかったと仮定してイソ吉草酸濃度の理論値を算出し、該理論値(6320重量ppm)に対する実測値の割合を、イソ吉草酸残存率(%)として求めた。
結果を表4及び図6に示す。図6には、実施例5〜9のイソ吉草酸残存率の平均値を併記した。
Figure 2016013103
表4及び図6に示す結果から明らかなように、pH7に調整したイソ吉草酸水溶液を真空乾燥した実施例10も、実施例5〜9と同様に、イソ吉草酸保持力に優れるものであった。当該結果から、本発明の方法によれば、乾燥方法に拠らず、イソ吉草酸保持力に優れる固形物が得られることが明らかとなった。
[試験例4]
(実施例11)
実施例10にて製造したイソ吉草酸含有粉末0.01gを市販の中華スープ100ml(味の素株式会社製「丸鶏がらスープ」(商品名)1.5gに、お湯100mlを添加したもの)に添加して、実施例11のスープを調製した。実施例11のスープのイソ吉草酸濃度は、0.42重量ppmである。
(ポジティブコントロール及びネガティブコントロールの調製)
上記市販の中華スープに、純品のイソ吉草酸液体香料(シグマアルドリッチ社製)を、イソ吉草酸濃度が実施例11のスープと同様(0.42重量ppm)になるように添加して、ポジティブコントロールを調製した。ネガティブコントロール(無添加品)には、上記市販の中華スープをそのまま使用した。
(官能評価)
実施例11のスープの風味強度について、5名の専門パネラーにより官能評価を行った。評価は、ネガティブコントロールの官能評点を1とし、ポジティブコントロールの官能評点を5として行った。
結果を表5に示す。
Figure 2016013103
表5に示す結果から明らかなように、本発明の方法によって得られたイソ吉草酸含有粉末が添加されたスープ(実施例11)は、イソ吉草酸液体香料が添加されたスープ(ポジティブコントロール)と同等の風味強度を示したことから、本発明の方法によってイソ吉草酸水溶液を固形物化しても風味が低下しないことが示された。
本発明の方法によれば、炭素数3〜5の脂肪酸の風味を抑制することのない、炭素数3〜5の脂肪酸の保持力が高い固形物を製造できる。
また、本発明の方法は、特殊な原料を必要としないため、低コストで炭素数3〜5の脂肪酸の保持力が高い固形物を製造できる。
さらに本発明の方法は、固形物の製造時における炭素数3〜5の脂肪酸の揮発量が少ないため、該製造時の環境負荷(臭気放散量)が低いという利点も有する。

Claims (12)

  1. 炭素数3〜5の脂肪酸水溶液をpH5以上に調整した後、乾燥することを特徴とする、炭素数3〜5の脂肪酸を含有する固形物の製造方法。
  2. 前記水溶液中の炭素数3〜5の脂肪酸濃度が、10重量ppm〜50000重量ppmである、請求項1記載の方法。
  3. 前記水溶液が、炭素数3〜5の脂肪酸を生産する能力を有する微生物の発酵液である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 炭素数3〜5の脂肪酸が、イソ吉草酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記水溶液に賦形剤を添加することを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 賦形剤が、デキストリン及び澱粉から選ばれる少なくとも1種である、請求項5記載の方法。
  7. 前記水溶液の乾燥方法が、真空乾燥又は噴霧乾燥である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法で得られる固形物。
  9. 請求項8記載の固形物を添加してなる食品。
  10. 粉末調味料、固形調味料、ペースト状調味料、半練り調味料、粉末スープ及び粉末ドレッシングから選ばれる1種である、請求項9記載の食品。
  11. 請求項8記載の固形物を添加することを含む、食品の製造方法。
  12. 食品が、粉末調味料、固形調味料、ペースト状調味料、半練り調味料、粉末スープ及び粉末ドレッシングから選ばれる1種である、請求項11記載の方法。
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