JP2015534946A - がんの標的治療およびがんの再発予防のためのヘモグロビンベース系酸素運搬体含有医薬組成物 - Google Patents

がんの標的治療およびがんの再発予防のためのヘモグロビンベース系酸素運搬体含有医薬組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、がんの治療、がん性腫瘍の再発および転移の予防のためのヘモグロビン系酸素運搬体を含む医薬組成物を提供する。この組成物は単独でまたは5FU、ボルテゾミブ、ドキソルビシン、シスプラチン、またはその任意の組み合わせなどの化学療法剤と組み合わせて使用できる。組成物中のヘモグロビン系酸素運搬体は、がん性細胞上に発現した表面の受容体を標的とし、受容体開税制機構を経てがん性細胞によるヘモグロビン系酸素運搬体および化学療法剤の両方の取り込みを促進することができる。ヘモグロビン系酸素運搬体は、HIF1a、VEGF、ET1、VHLなどの低酸素応答領域の発現を抑制する。本発明の医薬組成物は、がん性腫瘍の低酸素状態の適所(ニッチ)に位置するおよびがん幹細胞と呼ばれる、自己再生能および腫瘍形成能を有するタイプの細胞のアポトーシスまたは細胞死を誘発するために有用である。

Description

本発明は、人体および他の動物におけるがんの標的治療および腫瘍の再発予防のためのヘモグロビン系酸素運搬体を含む医薬組成物に関する。特に、本発明は、がん治療、がん細胞/がん幹細胞/これらの細胞のいずれかを含む組織の標的化および腫瘍の再発予防のために、単独でまたは少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせて投与されるヘモグロビン系酸素運搬体を含む組成物に関する。
ヘモグロビンは、ほとんどの脊椎動物において、脈管系と組織との間のガス交換のために重要な役割を果たす。ヘモグロビンは血液循環によって呼吸器系から体細胞へ酸素を運搬することに関与し、また代謝老廃物の二酸化炭素を体細胞から二酸化炭素を排出する呼吸器系へ運搬することに関与する。ヘモグロビンは、この酸素運搬という特性を有しているので、生体外で安定化でき生体内で使用することができれば、強力な酸素供給体として利用することができる。
天然に存在するヘモグロビンは四量体であり、赤血球内に存在するときは通常安定している。しかしながら、天然に存在するヘモグロビンを赤血球から取り出すと、血漿内で不安定となり二つのα―β二量体に分裂する。これらの二量体はいずれも分子量がおよそ32kDaである。これらの二量体は腎臓でろ過され排出される際に深刻な腎損傷の原因となりうる。また、四量体の結合の分解は、血中で循環している機能性ヘモグロビンの持続可能性に悪影響を与える。
この問題を解決するために、ヘモグロビン加工における最近の発展では、四量体内に分子内結合を作るとともに、ヘモグロビン重合体を形成するために四量体間の分子間結合を作るような様々な架橋技術を取り込んでいる。
低酸素状態は、がんでは一般的である。低酸素状態は、化学治療剤の細胞障害活性に必要な酸素を腫瘍細胞から奪うことによって電離放射線治療および化学療法への抵抗性を導く。また、低酸素状態では、プロテオミクスおよびゲノミクスの変化を含む一つ以上のまたは間接的なメカニズムにより放射線治療および化学療法に対する腫瘍の感受性を減じる。したがって、がん治療組成物を改良する、特に細胞障害についての有効性を高めるがん治療組成物を改良する必要がある。
腫瘍の転移ががん死の原因の約90%であるにもかかわらず、がん細胞が身体の一つの箇所から別の箇所へ広がることを可能にする正確なメカニズムはよく理解されていない。したがって、がんの再発を予防する改良されたがん治療組成物は重要である。
多くの最近の研究では、がん幹細胞(CSC)ががんおよび腫瘍の発育に重要な役割を果たすことがわかった。Wang and Dick(2005)は、以前に提案された確率モデルおよびがん幹細胞モデルを用いて腫瘍内に発見された白血病幹細胞の自己再生能および腫瘍細胞の増殖可能性について再考した。確率モデルによると、通常、機能的に同質な一群の腫瘍細胞があり、遺伝子変化はこれらすべての腫瘍細胞内の悪化進行を導く能力がある。対照的に、がん幹細胞モデルでは、腫瘍の発育を継続的に開始させる際立った能力を持ち、機能的に異なる種別の細胞階層を再生することができる希少な細胞群が、腫瘍内の大多数の細胞とは異なる腫瘍化の経路を持つことができると提唱する。がん幹細胞モデルで提唱された腫瘍始原細胞は他の細胞から累進的に同定し、精製することができる。これらの細胞ががん幹細胞(CSC)と呼ばれる。白血病幹細胞と同様に、乳がんなどの他のがんは希少な腫瘍始原細胞集団によって引き起こされるように見える。二つの表現型の細胞が乳がんにおいて同定されており、一つの少数の表現型は乳房腫瘍を形成する能力を持ち、もう一方の表現型はその能力を持たない。脳がんでは、二つのタイプの細胞が発見されている:CD133細胞は、生体内で分化能、自己再生能、および腫瘍始原能力を有するが、CD133細胞はそれらの能力を有さない。
これらのがん幹細胞がすべての腫瘍性システムの頂点であり、それゆえがん治療の新たな標的となりうることを支持する多くの証拠が発見されている。総説(Mohyeldin et al.,2010)には、がん幹細胞の適所(ニッチ)はより低い酸素分圧であることが示唆されている。。低酸素状態の適所(ニッチ)は、腫瘍の脈管系から遙かに離れた場所に位置して見つけられ、低酸素状態に関する別のHIF(低酸素誘導要因)、特にHIF−2α誘導パターンとは異なった反応をするがん幹細胞を含む。低酸素状態の適所(ニッチ)は、がん幹細胞の自己再生能、増殖、および生存を調整するシグナル伝達経路、並びに発癌能を減弱する阻害において新たな標的となる。
それゆえ、がん幹細胞に高い酸素分圧を与える組成物のための技術の要求がある。そのような組成物は、DNA損傷およびその後に続くDNA損傷に誘発されたがん幹細胞内でアポトーシスをもたらす酸化ストレスまたはショックを作り出すために使用することができる。
本発明は、ヒトおよび他の動物におけるがんの標的治療およびがん再発予防を目的としたヘモグロビン系酸素運搬体を含む医薬組成物に関する。本発明の第一の側面は、標的がん細胞、がん幹細胞(CSC)および/またはがん始原細胞、および/またはヒト或いは動物の体内においてこれらの細胞のいずれかを含む組織に適し受容体介在性機構を誘発し、ヘモグロビン系酸素運搬体と化学療法剤の両方の有効性を高めるために、併用する化学療法剤とともに、がん細胞の細胞質、CSC、および/またはこれらの細胞のいずれかを含む組織に局在化させるヘモグロビン系酸素運搬体を提供することである。局在化されたヘモグロビン系酸素運搬体は、がん細胞およびCSCが化学療法剤に対する感受性が高くなるようにがん細胞とCSCを感作することも分かっている。本発明の第二の側面は、種々の腫瘍、がん若しくは腫瘍またはがんに伴う疾病に罹患しておりその必要がある被験体に前記組成物を投与することによりがん治療とがんの再発予防のために本発明のヘモグロビン系酸素運搬体を含む医薬組成物を用いる方法を提供することである。
本発明に用いられているヘモグロビン系酸素運搬体は、熱安定性の架橋四量体、重合体、ペグ化、または組換え/改変されたヘモグロビンであり、化学療法剤の少なくともひとつと組み合わせて、白血病、頭頚部がん、大腸がん、肺がん、乳がん、肝臓がん、上咽頭がん、食道がんおよび脳がんなどの種々のがんの治療のために使用される。またはヘモグロビン系酸素運搬体自体は、低酸素状態にある腫瘍への酸素取り込みを改善することにより放射線および化学療法剤に対する感受性を増大させることにより、がん細胞を破壊する能力があることも見出している。
さらに、本発明のヘモグロビン系酸素運搬体はがん性腫瘍の再発を減少させるおよび腫瘍細胞の転移を最小限にするために単独でも使用できる。前記ヘモグロビンは、腫瘍除去手術のための虚血に先立って、および腫瘍除去時における血液の供給の再開(再かん流)の間に投与する。ヘモグロビン系酸素運搬体は、がん性組織の酸素の取り込みを増加させ、および化学療法剤と併用することで引き続いて腫瘍の大きさを縮小させるためにも使用できる。結果として、本発明のヘモグロビン系酸素運搬体を含む組成物はがん性腫瘍の治療若しくは再発予防のために単独で投与してもよく、または少なくともひとつの化学療法剤と組み合わせて投与してもよい。
本発明の方法は、がん治療と腫瘍の再発予防に相乗効果をもたらすために、異なる化学療法薬および/または放射線治療とを組み合わせて本発明のヘモグロビン系酸素運搬体を使用することも含む。
本発明の第三の側面は、がん幹細胞として知られている自己再生能および腫瘍形成能を有する細胞の希少な個体群を破壊するために、腫瘍に対する酸化ストレスまたはショックを提供するための本発明の組成物に関する。腫瘍に対して高い酸素分圧を与える本発明の組成物は、検知されない量の二量体と少ない割合のメトヘモグロビンを含むよう調製されている、四量体架橋ヘモグロビンまたは重合ヘモグロビンを含有するヘモグロビン系酸素運搬体で構成される。前記組成物中のヘモグロビン系酸素運搬体は、がん幹細胞が腫瘍内で選択的に増殖していると判明している腫瘍のがん性組織に入り込むよう構成されている。前記ヘモグロビン系酸素運搬体は、単独で使用してもよく、ボルテゾミブ、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、シスプラチンの少なくとも一つ、または腫瘍に酸素を取り込ませるための任意の組み合わせを含む化学治療剤と組み合わせて使用してもよく、組み合わせにより、がんの再発またはがん性腫瘍の治療と再発予防に効果をもたらす結果となり、前記がん幹細胞のアポトーシスまたは死を誘発するために前記がん幹細胞に酸化ストレスまたはショックを与える。またはおよびまたは本発明のヘモグロビン系酸素運搬体は、より安定化し、循環中で長い半減期となるよう、二量体へと解離することを防ぐために修飾することもある。天然に存在するヘモグロビンとは異なり、長い半減期というこの特性は、ヘモグロビン系酸素運搬体ががん細胞、がん幹細胞および/またはがん前駆細胞のいずれをも含む標的細胞への入り込みを促進する。がん細胞への効果と同様に、本発明の組成物中のヘモグロビン系酸素運搬体はがん幹細胞を化学療法剤または放射線治療を感作する。言い換えれば、本発明の組成物は化学療法剤および/または放射線治療の前に、またはこれらと組み合わせて投与することができる、有効な補助的な療法である。ここに記した本発明のいずれの側面においても、ヘモグロビン系酸素運搬体は、がん組織または腫瘍内の細胞を標的とし、受容体介在性機構を作動し、がん組織若しくは腫瘍細胞に入り込みおよび局在化し、がん組織若しくは腫瘍細胞のアポトーシスを誘発し、がん組織若しくは腫瘍の外科切除の前、切除の間または後のいずれかにおいて、化学療法剤若しくは放射線治療と同時にまたは続いて投与してそれらの細胞を感作することを目的に、9.5g/dL−10.5g/dLの濃度で、投与の必要のある被験体に投与することができる。
図1は、(A)蛍光標識された熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体および(B)蛍光標識された高分子ヘモグロビンの肝臓がん細胞への取り込みを示す、同一拡大の一組の顕微画像を示す。 図2は、蛍光標識された熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体が、カベオリン1介在経路(下パネル)を介さずに、クラスリン介在経路(上パネル)を介して肝臓がん細胞への取り込まれていることを示す、同一拡大の二組の顕微画像を示す。 図3は、異なる濃度の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体で処理した後の肝臓がん細胞における異なるタンパク質の発現を示す。 図4は、異なる濃度の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体をおよび正常酸素圧と低酸素状態下において処理した後の、肝臓がん細胞(HepG2およびHuh7)における低酸素誘導因子1(HIF1a)遺伝子の発現を示す。 図5は、異なる濃度の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体をおよび、正常酸素圧と低酸素状態下において処理した後の、肝臓がん細胞(HepG2およびHuh7)における血管内皮細胞成長因子(VEGF)遺伝子の発現を示す。 図6は、異なる濃度の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体をおよび、正常酸素圧と低酸素状態下において処理した後の、肝臓がん細胞(HepG2およびHuh7)におけるエンドセリン‐1(ET1)遺伝子の発現を示す。 図7は、異なる濃度の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体をおよび、正常酸素圧と低酸素状態下において処理した後の、肝臓がん細胞(HepG2およびHuh7)における誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)遺伝子の発現を示す。 図8は、異なる濃度の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体をおよび、正常酸素圧と低酸素状態下において処理した後の、肝臓がん細胞(HepG2およびHuh7)におけるフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)遺伝子の発現を示す。 図9は、異なる濃度の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体をおよび、正常酸素圧と低酸素状態下において処理した後の、肝臓がん細胞における熱ショックタンパク質90(HSP90)遺伝子の発現を示す。 図10は、腫瘍の再発に対する熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体の抑制効果にかかわる提案されたメカニズムおよびシグナル伝達カスケードを示す概略図である。 図11は、異なる濃度の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体をおよび、正常酸素圧を低酸素状態下において処理した後の、肝臓がん細胞における熱ショックタンパク質7C(HSP7C)遺伝子の発現を示す。 図12は、異なる濃度の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体をおよび、正常酸素圧と低酸素状態下において処理した後の、肝臓がん細胞における高移動群ボックス3(HMGB3)遺伝子の発現を示す。 図13は、異なる濃度の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体をおよび、正常酸素圧と低酸素状態下において処理した後の、肝臓がん細胞における複製因子1C(RFC1)遺伝子の発現を示す。 図14は正常組織における酸素取り込みの改善を示す。0.2g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビン溶液の注射は、(A)血漿ヘモグロビンの濃度および(B)筋肉への酸素供給の顕著な増大をもたらす。 図15は低酸素の腫瘍組織における酸素取り込みの改善を示す。0.2g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビン溶液の注射は、頭頚部扁平上皮細胞がん(HNSCC)異種移植片への酸素供給の顕著な増大をもたらす。 図16は、(A)上咽頭がん(NPC)および(B)肝臓腫瘍の齧歯類モデルにおける腫瘍の部分的な縮小を示す。 図17は、肝臓切除術の間の手術およびヘモグロビン製品の投与処置を概括する略図を示す。 図18は、肝臓切除術および虚血/再かん流処置の後、IR損傷したラットの群において誘発した肝臓内における肝臓がんの再発および転移並びに遠隔肺転移の代表的な実施例、および本発明の熱安定性四量体ヘモグロビンを用いるそれらの予防を示す。 図19は、肝臓切除術およびIR損傷処置から4週間後の実験群および対照群の組織学的検査を示す。 図20Aは、肝臓切除術およびIR処置の後のIR損傷群(対照群)のラットおよび本発明の熱安定性四量体ヘモグロビンで治療したラット(Hb治療群)における再発肝臓腫瘍の体積(cm)を示す。 図20Bは、肝臓切除術およびIR手続きの後のIR損傷ラット(対照群)および本発明の熱安定性四量体ヘモグロビンで処理したラット(Hb群)における肝臓再発率(左)および再発腫瘍の大きさの平均(右)を示す。 図21は、肝臓切除術および虚血/再かん流処置の後にIRで損傷したラット(対照群:C10およびC13)および本発明の熱安定性四量体ヘモグロビンで処理したラット(Hb治療群:Y9、Y10およびY11)において誘発された肝臓内肝臓がんの再発および転移並びに遠隔肺転移の代表例を示す。 図22は、肝臓手術および再かん流の全体を通して、本発明のヘモグロビン製品またはRA緩衝液(対照群)を最初に投与してからおよびかん流を通しての、肝臓の酸素分圧(mmHg)の代表例を示す。 図23は、肝臓手術後28日間の、本発明のヘモグロビン製品で処理する、または処理しないまたは場合におけるラットの抹消血液中を循環している血管内皮前駆細胞(EPC)レベルの比較を示す。 図24は、上咽頭がんの異種移植片内の熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体の経時的な局在化を示す。 図25は、Hep−2喉頭がんモデルにおけるヘモグロビン系酸素運搬体単独または放射線療法を組み合わせた腫瘍成長抑制効果を示す。下のパネルは異なる処理群から得た腫瘍の異種移植片の代表的な画像を示す。*p<0.05,**p<0.01対対照群。 図26は、C666−1上咽頭がんモデルにおけるヘモグロビン系酸素運搬体に放射線療法を組み合わせた場合の腫瘍成長抑制効果を示す。下のパネルは異なる処理群から得た、腫瘍の異種移植片の代表的な画像を示す。**p<0.01対対照群、#p<0.05対放射線治療のみ。 図27は、脳のがん細胞においてヘモグロビン系酸素運搬体がテモゾロミド(TMZ)誘発性の細胞毒性を強めることを示す。 図28は、がん幹細胞による腫瘍様塊形成物の形態変化を示す顕微画像である:(A)0日、(B)3日、(C)6日、(D)9日−20日、(E)対照(乳房上皮細胞からの中空の腫瘍様塊)。 図29は、異なる継代から採取した分類されていない腫瘍様塊および分類されたMCF7 CD44/CD24細胞における異なるマーカーOct−4およびSox−2の発現レベルを示すウェスタンブロットである。 図30は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)活性に関する、MCF7細胞の異なる継代のドットプロットである。(A)対照(ジエチルアミノベンズアルデヒド(DEAB)を使用して培養された分類されたMCF7細胞);(B)初代細胞の分類されたMCF7細胞;(C)第3継代の分類されたMCF7細胞;(D)第5継代の分類されたMCF7細胞。 図31は、フローサイトメトリー分析において、低酸素状態下でCD24(PE−A)およびCD44(APC−A)抗体で標識された、MCF7細胞のドットプロットである。四分区間1(Q1)はCD44highおよびCD24lowの細胞である。 図32は、DMSO(対照)および90nMのタキソールで処理し、16時間および4日間培養した後の、分類されていないMCF7細胞およびCD24/CD44で分類されたMCF7細胞の形態変化を示す顕微画像である。定義
「がん幹細胞」という語は、生体内で腫瘍の成長を引き起こし維持させることができる腫瘍クローンのうち生物学的に異なる細胞(すなわち発癌性細胞)をいう。
ここで用いる「Hb」は、熱安定性であり検知できない量の二量体および少ない割合のメトヘモグロビンを有する架橋四量体ヘモグロビンである。この熱安定性架橋四量体ヘモグロビンは、分子量が60−70kDaであり、合成の際に熱処理がされ、0.05%〜0.4%のN−アセチルシステインが添加されている。結果として得られる熱安定性架橋四量体ヘモグロビンは、検知できない量の二量体および5%以下のメトヘモグロビンを有する。熱安定性架橋四量体ヘモグロビンは、血管収縮作用を有する不純物およびタンパク質不純物を含まず、非発熱性、内毒素フリー、リン脂質フリー、ストローマフリーである。四量体ヘモグロビン分子内の架橋は、α/αサブユニット間、α/βサブユニット間またはα―βサブユニット間であってもよい。
「修飾ヘモグロビン」または「組換えヘモグロビン」は、天然のヘモグロビンまたは精製ヘモグロビンが少なくとも一つの化合物と化学的に共役した結合をしている、または少なくとも一つの化合物で表面修飾されているものと定義される。前記化合物は、ポリ(エチレン)グリコール(PEG)を含んでいてもよい。本発明で用いられる修飾ヘモグロビンの一例は、ペグ化されたヘモグロビンである。
ヘモグロビンは、哺乳類および他の動物の血液の赤血球中の鉄含有酸素輸送タンパク質である。ヘモグロビンは、タンパク質の三次構造と四次構造の両方の特徴を示す。ほとんどのヘモグロビン中のアミノ酸は、短い非らせんセグメントが結合したαヘリックスを形成している。水素結合は、ヘモグロビンの内側のらせん部分を安定させて、分子内でのこれらのらせん部分に向く引力を生じることにより、各ポリペプチド鎖を特定の形状に折畳む。ヘモグロビン分子は、四つの球状タンパク質サブユニットから組み立てられる。各サブユニットは、埋め込まれたヘム基と共に、「ミオグロブリン畳み込み(myoglobin fold)」配列で結合した一組のαヘリックス構造セグメントに配置されるポリペプチド鎖で構成される。
ヘム基は、ポルフィリンと呼ばれる、ヘテロ環に保持される鉄原子からなる。鉄原子は、同一面内にある環の中心にある四つの全ての窒素原子に等しく結合している。そして、酸素はポルフィリン環の平面に対して垂直に鉄中心と結合することができる。従って、単一のヘモグロビン分子は、四つの酸素分子と結合することができる。
成人における最も多くみられるヘモグロビンは、ヘモグロビンAと呼ばれる四量体であり、α2β2と称する非共有結合で結合された二つのαサブユニットと二つのβサブユニットとからなり、各サブユニットは、それぞれ141および146のアミノ酸残基からなる。αサブユニットおよびβサブユニットの大きさおよび構造は、互いによく似ている。約65kDaの四量体の全分子量に対して、各サブユニットは約16kDaの分子量である。四個のポリペプチド鎖は、塩橋、水素結合および疎水性相互作用によって相互に結合する。ウシヘモグロビンの構造は、ヒトヘモグロビンに似ている(α鎖で90.14%の同一性;β鎖で84.35%の同一性。)。相違点は、ウシヘモグロビンの二つのスルフヒドリル基がβCys93に位置するのに対して、ヒトヘモグロビンのスルフヒドリル基はそれぞれαCys104、βCys93およびβCys112に位置することである。
天然に通常存在する赤血球の内部のヘモグロビンにおいて、α鎖とそれに対応するβ鎖との会合は非常に強く、生理的条件下では解離しない。しかし、赤血球の外部では、一個のαβ二量体と他の1個のαβ二量体との会合は非常に弱い。その結合は、各々が約32kDaの二つのαβ二量体に分離する傾向を有する。これらの望ましくない二量体は、腎臓で濾過され、および排泄されるほど小さいため、潜在的な腎損傷をもたらし、実質的に血管内滞留時間を減らす。従って、安定化した架橋四量体、ポリマーおよび/または組換え/修飾ヘモグロビンは、酸素供給のための医薬組成物において重要な分子である。ヘモグロビン源は、ヒト、ウシ、ブタ、ウマおよびイヌの全血であってよいが、これらに限定されない。
本発明の医薬組成物は熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体を含み、この熱安定性ヘモグロビン系酸素運搬体は、正常な非低酸素の健康な組織よりも低酸素腫瘍細胞を選択的に標的化することを促進するために、腫瘍細胞の受容体に付着し、がん細胞に優先的に取り込まれることができるため、がん治療に使用できる。図1Aでは、熱安定性四量体ヘモグロビン(Hb)が肝臓がんに対してどのように有効であるかを生細胞画像によって示す。Nでパージされた密閉式システムの中で、室温で1時間、Hbとおよびフルオロセインチオイソシアネート(FITC)(NaHCOでpH9.3に緩衝)を結合させて、蛍光共役化Hbを調製する。次いで、タンパク質精製カラム(Millipore)を使用して、共役されていないHbおよび遊離のFITCを除去して、精製を行う。新たに作られたHb−FITC共役プローブを直ちに生細胞取り込み実験で用いる。生細胞を取得する前に、肝臓がん細胞HepG2および転移性肝臓がん細胞Huh7を15分間、0.0125g/dL(のHb−FITC共役プローブ溶液)に曝露する。15分間曝露した後、両タイプの肝臓がん細胞へのHb−FITCの取り込みを観察する(図1A)。Hb−FITCの取り込みは、曝露の1時間後にピークとなる(図1A)。低酸素状態では、単層の肝臓がん細胞は三次元構造に丸まることが観察され、Hb−FITCは正常な細胞よりもより優先的にこれらのがん細胞に取り込まれることがわかる。重合ヘモグロビンの肝臓がん細胞への取り込みを図1Bに示す。
ヘモグロビン分子の細胞への取り込み機能は、タンパク膜ベシクルのエンドサイトーシスを経由してなされる。内部移行が可能な2つの一般的なタンパク膜は、クラスリンとカベオリン1である。赤色蛍光タンパク質で標識された、クラスリン(RFP−クラスリン)およびカベオリン1(mCherry−カベオリン1)のプラスミドを作製し、それらのプラスミドはFITC共役Hbと共に取り込まれ、HepG2またはHuh7細胞内で、独立に発現する。経時的画像解析(図2)は、Hb−FITCはRFP−クラスリンとは共存するがmCherry−カベオリン1とは共存しないことを示しており、ヘモグロビン分子はクラスリン媒介エンドサイトーシスを経由して肝臓がん細胞に入ることを示唆する。
本発明において、非転移性および転移性の肝臓がん細胞におけるヘモグロビン単独および補助療法との組み合わせの有効性は、2つの肝臓がんモデル、HepG2およびHuh7を用いて、正常酸素圧状態および低酸素状態の両方で、様々な薬のIC50を調査することにより、明らかにする(表1に結果を示す)。正常酸素圧状態では、HepG2細胞におけるシスプラチン、ドキソルビシン、ボルテゾミブおよび5‐フルオルウラシル(5FU)のIC50はそれぞれ130uM、10uM、0.5uMおよび4mMであり、Huh7細胞におけるシスプラチン、ドキソルビシン、ボルテゾミブおよび5FUのIC50はそれぞれ70uM、5uM、55uMおよび3.5mMである。低酸素状態では、HepG2細胞におけるシスプラチン、ドキソルビシン、ボルテゾミブおよび5FUのIC50はそれぞれ170uM、30uM、0.7uMおよび4mMであり、Huh7細胞におけるシスプラチン、ドキソルビシン、ボルテゾミブおよび5FUのIC50はそれぞれ100uM、6uM、60uMおよび4mMである。3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)アッセイの結果は、正常酸素圧状態においては、Huh7細胞は正常酸素圧状態のHepG2細胞と比較してシスプラチンおよびドキソルビシンに対する感受性がより高いが、ボルテゾミブに対する抵抗性が110倍高いことを示唆している(プロテアソームサブユニットPSMB1、5、および6に対する標的薬剤)。低酸素状態においては、Huh7細胞はシスプラチンおよびドキソルビシンに対する感受性がより高まり、また低酸素状態のHepG2細胞と比較してボルテゾミブに対する抵抗性も非常に高い(86倍)。この結果は、正常酸素圧状態または低酸素状態にかかわらず、転移性肝臓がん細胞(Huh7)は、非転移性肝臓がん細胞(HepG2)よりも、ボルテゾミブに対する抵抗性が一般的により高いことを表している。
またMTTの結果は、Hb単独では細胞死を一切生じさせないことを示している。しかし、それぞれのIC50で5FUおよびボルテゾミブを、0.2g/dLのHbとともに処理すると、顕著な化学増感が観察された。正常酸素圧状態では、5FUおよびHbで処理したHepG2細胞において新たに33%(合計83%)の細胞死が検出され、ボルテゾミブおよびHbで処理したHuh7細胞においては新たに20%(合計50%)の細胞死が検出さるた。低酸素状態では、ボルテゾミブおよびHbで治療したHepG2細胞において新たに42%(合計92%)の細胞死が観察され、5FUおよびHbで治療したHepG2細胞においては35%増加した(合計85%)細胞死が検出される。同じ低酸素状態において、5FUおよびHbで治療したHuh7細胞において新たに20%(合計72%)の細胞死が観察される。5FUは、チミジル酸シンターゼを阻害するピリミジンアナログである。ボルテゾミブは、主に骨髄腫患者の治療に使用される、第一の治療用プロテアソーム阻害剤である。ボルテゾミブは、肝臓がん細胞にアポトーシスを引き起こすことが報告されている(Koschny et AL.,Hepatology,2007)。ヘモグロビン分子は、5FUおよびボルテゾミブとともに併用することにより、非転移性および転移性がんの両方に対して顕著な相乗効果を発揮することが観察される。
低酸素状態は、腫瘍に共通の生理学的特性である。腫瘍内低酸素状態も肝臓がんに共通している。低酸素状態の条件では、低酸素誘導因子1(HIF1a)転写因子の安定化および低酸素応答領域(HRE)を有するHIF1αエフェクター遺伝子(60遺伝子を超える)の活性化をもたらす、シグナル伝達カスケードを活性化することが知られている。これらのHIF1α下流エフェクターは、細胞の生存、適応、嫌気代謝、免疫反応、サイトカイン生成、血管新生および通常の組織の恒常性に関係している。
図3は、HepG2および転移性Huh7の肝臓がんモデルにおいて、HbがHIF1αタンパク質の発現に作用することを示している。Hbは、酸素正常状態および低酸素状態のいずれにおいても、HbがHIF1αを下方制御することが、Hb単独によるHIF1αの枯渇(治療していない対照と比較して40%)がHIF1αとその下流エフェクターとの結合に影響を及ぼし、これらのエフェクター遺伝子の転写抑制をもたらすことを示唆する。同様の下方制御のパターンが、Hbでの処理後に、HIF1α(図4)、熱ショックタンパク質90(HSP90)(図9)およびフォン・ヒッペル−リンダウ(VHL)(図8)の上流調整因子に認められる。
肝臓がん細胞をHbおよび5FU(95%抑制)またはHbおよびボルテゾミブ(80%抑制)で処理すると、定量qPCRおよびウェスタンブロット研究のそれぞれにより例証される転写およびタンパク質レベルのいずれからも、HIF1αの大幅な減少が認められる。これらのデータは、Hb単独、Hbと5FUまたはボルテゾミブとの組み合わせ処理により、低酸素誘導性のHIF1α mRNAおよびタンパク質の安定性を破壊することができることを示唆する。結果として、Huh7における血管内皮成長因子(VEGF)(図5)およびエンドセリン−1(ET1)(図6)の発現の下流制御が観察され、血管新生の抑制が転移の発現に本質的に関連する肝臓の転移性モデルにおいて、Hbと5FUまたはHbとボルテゾミブの組み合わせは、血管新生および血管緊張を抑制できることを示唆している。併用処理では、Huh7において誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)(図7)の発現を低減させることが観察され、肝臓の転移性モデルにおいて血管構造および血管新生の程度も低下させることが可能であることを示唆する。全体として、我々の発見は、Hbを5FUまたはボルテゾミブとの組み合わせ投与は、HIF1αを阻害することにより、VEGF、ET1およびiNOSの発現による低酸素誘導を相乗的に阻害することができることを示唆する。腫瘍再発に対するHbの促成効果およびそのシグナル伝達カスケードに関して提案されるメカニズムを図10に示す。酸素供給、プロリルヒドロキシラーゼドメイン含有たんぱく質(PDH)、HIFおよび内皮前駆細胞(EPC)の関係が明確に示されている。
DNA損傷検知細胞調整機構を標的にするよう構成されたヘモグロビン系酸素運搬体を含む医薬組成物は、新規な調節経路を経由することも見出されている。本発明では、DNA損傷検知機構に固有な部分である2つのタンパク質、複製因子1C(RFC1)(図13)およびHSP7C(熱ショックタンパク質7C)(図11)は、Hbで処理した肝臓がん細胞において上方制御され、ボルテゾミブとの組み合わせ処理においては劇的に上方制御される(RFC1については3−10倍の上方制御、HSP7Cについては25−45倍の上方制御)。これらの新規のHb標的タンパク質は、Hbが潜在的に活性酸素種(ROS)誘発因子であり、転移性肝臓がん細胞Huh7がROSが介在するDNA損傷を検知し応答することは明らかに重要であることを示唆する。Hbとボルテゾミブに反応するDNA損傷応答タンパク質の大幅な上方制御は、その後の酸化的ストレス誘発性のアポトーシスをもたらすことがある。
がん治療に使用するためには、本発明の酸素運搬体含有医薬組成物は、腫瘍組織における酸素の取り込みを改善する組織酸素投与剤として機能し、それにより、化学療法感受性および放射線感受性を高める。
加えて、本発明においては、正常組織(図14)および極度の低酸素状態の腫瘍(図15)における酸素の取り込みを改善する熱安定性四量体ヘモグロビンの能力を示す。腫瘤内の酸素分圧(pO)は、微小位置決め装置(DTI (株)製)が接続された光ファイバー酸素センサ(オクスフォード オプトロニクス(株)製)によって直接モニターする。0.2g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビンを静脈注射した後、pO値の中央値は、15分間以内に基底ラインから相対的平均酸素分圧の約2倍まで上昇し、相対的平均酸素分圧の上昇は6時間に及ぶ。更に、平均酸素レベルは、注射後24〜48時間でも、基底ライン値より25%〜30%高いレベルを維持する。本発明で調製された酸素運搬体含有医薬組成物と比較して、このような高い有効性を示す市販製品または現存の技術はない。
腫瘍組織の酸素の取り込みに関し、ヒト頭部および頸部における扁平上皮細胞がん(HNSCC)異種移植片(FaDu)の代表的な酸素プロファイルを図15に示す。0.2g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビンを静脈注射した後、6.5倍および5倍を超える平均pOの顕著な増大を、それぞれ3時間および6時間の時点で観察する(図15)。
がん治療への適用について、本発明の酸素運搬体含有医薬組成物は、腫瘍組織における酸素の供給を改善する、組織酸素取り込み剤として機能し、それにより化学療法感受性および放射線感受性を高める。X線照射と熱安定性四量体ヘモグロビンとを組合せることにより、腫瘍の増殖は遅れる。図16Aにおいて、代表曲線は、上咽頭がんの齧歯類モデルにおける顕著な腫瘍の縮小を示している。CNE2異種移植片を有するヌードマウスを、X線を単独で(2Gy)、またはまたは熱安定性四量体ヘモグロビンと組合せ(2Gy+Hb)て処理する。X線照射の約3〜6時間前に1.2g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビンをマウスに静脈注射すると、上咽頭がん異種移植片の一部が縮小するという結果になる。
一つの実施形態においては、化学療法剤と組み合わせて本組成物を注入した後に、顕著な肝臓腫瘍の縮小を観察する。図16Bでは、代表的なチャートは、ラットの同所性肝臓がんモデルにおいて腫瘍が顕著に縮小していることを示している。肝臓腫瘍の同所移植片(CRL1601細胞株)を有するバッファロー系ラットを、3mg/kgのシスプラチン単独で、または0.4g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビンと組合せ(シスプラチン+Hb)て処理する。シスプラチン注射の前に熱安定性四量体ヘモグロビンを投与すると肝臓腫瘍の一部が縮小するという結果になる。
次の例は、如何なる意味でも本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の特定の態様を説明するものとして提供される。
(実施例1)
肝臓がん細胞株の培養および試薬
HepG2およびHuh7細胞株を使用する。これらの細胞は、37℃で10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM(インビトロジェン(Invitrogen)製)で培養する。正常酸素圧状態では、細胞は、大気の酸素濃度とおよび5%二酸化炭素で培養する。;低酸素状態では、細胞は、0.1−0.5%酸素(クオラム(Quorum)製 FC−7自動CO/O/Nガス混合器)および5%二酸化炭素で培養する。
(実施例2)
生細胞経時的顕微鏡検査法
HepG2またはHuh7細胞をガラス底マイクロウェル皿(マトテック社製)上に播種する。大気/温度制御されたチャンバおよび複数の位置取得のための電動ステージを具備するツァイス社 広視野顕微鏡Observer.Zlを使用して、規定のズーム(63倍、20倍)で生細胞を取得する。培養は、0.1%酸素および5%二酸化炭素(予混合)でパージされた密閉式生細胞撮影システムで行う。pcDNA3、pRFP−カベオリンlまたはpRFP−クラスリンを遺伝子導入した細胞は、2時間にわたり3分毎の画像取得に先立って、15分間HB−FITCに曝露する。画像は、デコンボリューション処理をし、MetaMorphソフトウェア(Molecular Device製)を使用して経時的に動画に圧縮する。
(実施例3)
細胞毒性アッセイ
細胞の生存は、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)増殖アッセイを使用して測定する。簡単にいうと、HepG2およびHuh7細胞を96ウェルの平底マイクロプレートに播種(6000個の細胞/ウェル)し、100μLの成長培地中で、37℃および5%二酸化炭素で24時間培養する。その後、各ウェル内の細胞培地を、薬剤を含まない、Hb単独またはHbとIC50濃度の他の化学療法剤とを併せたもののいずれかを含む、100μLの細胞増殖培地で置換する。Hbを24時間培養し、20μL MTT標識試薬(5mg/mL PBS溶液)を各ウェルに添加し、さらに37℃で4時間培養する。成長培地を穏やかに取り除き、その後、ホルマザン結晶を完全に溶解するための可溶化剤として、200μL DMSOを各ウェルに添加する。波長570nmにおける吸光度をMultiskan EX (Thermo Electron Corporation製)で測定し、各データ点は3個のウェルからの平均±標準偏差を表す。
(実施例4)
RNA分離および定量的リアルタイムPCR
全RNAは、トリゾール試薬(インビトロジェン製)を用いて、分離され、全RNAの5μgがオリゴdTプライマーおよびSuperscriptII逆転写酵素(インビトロジェン製)で逆転写する。一本鎖cDNAの10分の1を使用して、特異的プライマー(以下に示す)を用いてSYBR Green PCR Master Mix kit(アプライド バイオシステムズ製)により、HIF1α、VHL、HSP90、VEGF、iNOS、ETl、HSP7c、RFCl、HMGB3およびGAPDHの転写レベルを定量的に測定する。蛍光信号は、7900HT Fast Real Time PCR System(アプライド バイオシステムズ製)により、伸長反応の間リアルタイムで測定する。閾値サイクル(Ct)は、蛍光信号が基底ラインの標準偏差の10倍に達する時点の部分サイクル数フラクショナルなサイクル数として定義する(2サイクルから10サイクル)。GAPHD制御遺伝子に対する標的遺伝子の比率の変化は、2−ΔΔCt法により決定する。

HIF1a:
SEQ NO. 1: フォワードプライマー: 5-GGCGCGAACGACAAGAAAAAG-3 (420-440)
SEQ NO. 2: リバースプライマー: 5-CCTTATCAAGATGCGAACTCACA-3 (21-44)
SEQ NO. 3: フォワードプライマー: CAGAGCAGGAAAAGGAGTCA (2414-2433)
SEQ NO. 4: リバースプライマー: AGTAGCTGCATGATCGTCTG (2645-2625)
SEQ NO. 5: フォワードプライマー: 5′-AATGGAATGGAGCAAAAGACAATT-3′ (2694-2720)
SEQ NO. 6: リバースプライマー: 5′-ATTGATTGCCCCAGCAGTCTAC-3′ (2764-2743)

VEGF:
SEQ NO. 7: フォワードプライマー: GCTACTGCCATCCAATCGAG (1187-1206)
SEQ NO. 8: リバースプライマー: CTCTCCTATGTGCTGGCCTT (1395-1376)
SEQ NO. 9: フォワードプライマー: 5′-CTCTCTCCCTCATCGGTGACA-3′ (3146-3167)
SEQ NO. 10: リバースプライマー: 5′-GGAGGGCAGAGCTGAGTGTTAG-3′ (3202-3223)
SEQ NO. 11: フォワードプライマー: ACTGCCATCCAATCGAGACC (1190-1209)
SEQ NO. 12: リバースプライマー: GATGGCTGAAGATGTACTCGATCT (1265-1241)

INOS:
SEQ NO. 13: フォワードプライマー: 5'-ACAACAAATTCAGGTACGCTGTG-3' (2111-2137)
SEQ NO. 14: リバースプライマー: 5'-TCTGATCAATGTCATGAGCAAAGG-3 (2194-2171)
SEQ NO. 15: フォワードプライマー: GTTCTCAAGGCACAGGTCTC (121-140)
SEQ NO. 16: リバースプライマー: GCAGGTCACTTATGTCACTTATC (225-247)

ET1:
SEQ NO. 17: フォワードプライマー: TGCCAAGCAGGAAAAGAACT (701-720)
SEQ NO. 18: リバースプライマー: TTTGACGCTGTTTCTCATGG (895-876)

HSP90:
SEQ NO. 19: フォワードプライマー: TTCAGACAGAGCCAAGGTGC (640-659)
SEQ NO. 20: リバースプライマー: CAATGACATCAACTGGGCAAT (807-787)
SEQ NO. 21: フォワードプライマー: GGCAGTCAAGCACTTTTCTGTAG (1032-1054)
SEQ NO. 22: リバースプライマー: GTCAACCACACCACGGATAAA (1230-1210)

VHL:
SEQ NO. 23: フォワードプライマー: ATTAGCATGGCGGCACACAT (2806-2825)
SEQ NO. 24: リバースプライマー: TGGAGTGCAGTGGCATACTCAT (2921-2900)
(実施例5)
ウェスタンブロット分析
細胞を回収し、タンパク質濃度を決定する。タンパク質(30μg)を10%SDS−PAGEで分離し、ニトロセルロース膜(PVDF,BioRad)上に移動させる。装填対照としてアクチンを使用する。ゲルドキュメンテーションシステム(ウルトラ−バイレット プロダクト(株)製)により、相対的なタンパク質発現量を定量する。
(実施例6)
酸素取り込みの改善
(6a)正常組織における酸素取り込みの改善
熱安定性四量体ヘモグロビンによる正常組織の酸素取り込みについての幾つかの研究(図14に示した)が行われている。バッファロー系ラットを用いて比較薬物動態学研究および薬力学的研究を行う。雄の近交系バッファロー系ラットに、個別に0.2g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビン溶液または酢酸リンゲル緩衝液(対照群)を投与する。1、6、24、48時間に、HemocueTM(登録商標)光度計によって血漿ヘモグロビンの濃度−時間プロファイルを測定し、基底ラインの測定値と比較する。この方法はヘモグロビンの光度測定に基づいており、ヘモグロビンの濃度をg/dLとして直接表示する。酸素分圧(pO)は、OxylabTM(登録商標)組織酸素取り込みおよび温度モニター(オクスフォード オプトロニクス(株)製)を用いて、バッファロー系ラットの後脚筋肉中で直接測定する。ラットを30〜50mg/kgのペントバルビトン溶液を腹腔内に注射して麻酔し、続いて酸素センサを筋肉内に挿入する。全てのpOの測定値は、Datatrax2データ取得システム(ワールド プレジション インストルメント製)によりリアルタイムに記録する。結果としては、0.2g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビンの静脈注射後15分以内に、平均pO値が基底ラインから平均酸素分圧の約2倍に上昇し、6時間まで伸びている。また、注射後24〜48時間でも、平均の酸素レベルは基底ラインより25%〜30%高く維持される(図14B)。
(6b)極度の低酸素状態の腫瘍領域における酸素取り込みの顕著な改善
極度の低酸素状態の腫瘍領域における酸素取り込みの改善を、ヒトの頭部および頸部の扁平上皮がん(HNSCC)異種移植片モデルによって評価する。下咽頭扁平上皮がん(FaDu細胞系)を、American Type Culture Collectionから入手する。約1×10個のがん細胞を4〜6週齢の近交系BALB/cAnN−nu(ヌード)マウスに皮下注射する。腫瘍異種移植片の直径が8〜10mmに達したときに、腫瘍塊内の酸素分圧(pO)をOxylabTM組織酸素取り込みおよび温度モニター(オクスフォード オプトロニクス(株)製)を用いて直接測定する。全てのpOの測定値は、Datatrax2データ取得システム(ワールド プレジション インストルメント製)によりリアルタイムで記録される。pOの測定値が安定化した時に、0.2g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビン溶液をマウスの尾の静脈に静脈注射し、組織への酸素の取り込みを測定する。結果としては、0.2g/kgの前記熱安定性四量体ヘモグロビンの静脈注射の後に、6.5倍および5倍以上の平均pOの顕著な増大が、それぞれ3時間および6時間で観察される(図15)。
(実施例7)
がん処理研究:上咽頭がんにおける顕著な腫瘍の縮小
X線照射と併用して熱安定性四量体ヘモグロビン溶液を投与した後に、顕著な腫瘍の縮小が観察される(図16A)。ヒト上咽頭がん異種移植片モデルが用いられる。約1×10個のがん細胞(CNE2細胞系)を、4〜6週齢の近交系BALB/cAnN−nu(ヌード)マウスに皮下注射する。腫瘍異種移植片の直径が8〜10mmに達したときに、腫瘍を保有するマウスを次の三つの群に無作為に選ぶ。
第1群:酢酸リンゲル緩衝液(対照群)
第2群:酢酸リンゲル緩衝液+X線照射(2Gy)
第3群:熱安定性四量体ヘモグロビン+X線照射(2Gy+Hb)
CNE2異種移植片を保有するヌードマウスにX線照射を単独で(第2群)または熱安定性四量体ヘモグロビンを併用して(第3群)行う。X線照射(第2群および第3群)については、50mg/kgのペントバルビトン溶液を腹腔内注射して、マウスを麻酔する。線形加速器システム(バリアン メディカル システムズ製)により、2GrayのX線を、腫瘍を保有するマウスの異種移植片に与える。第3群については、X線治療の前に、1.2g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビンを、尾の静脈を通してマウスに静脈注射する。腫瘍の大きさおよび体重を、処理の初日から始めて2日ごとに記録する。腫瘍の重量は、式(1/2)×LW(ここで、LおよびWは、腫瘍塊の長さおよび幅を示す)を使用して計算し、各々の測定値は、およびデジタル測径器(ミツトヨ(株)製、東京、日本)により計測するおよび。第1群は、非処理対照群である。結果(図16に示す)として、X線照射と併用して熱安定性四量体ヘモグロビン溶液で処理したマウスにおいて、CNE2異種移植片の顕著な縮小が観察される(第3群、図16A)。
(実施例8)
がん処理研究:肝臓腫瘍の顕著な縮小
また、シスプラチンを併用して熱安定性四量体ヘモグロビン溶液を投与した後に、顕著な腫瘍の縮小が観察される(図16B)。ラットの同所性肝臓がんモデルが用いられる。ルシフェラーゼ遺伝子(CRL1601−Luc)で標識された約2×10個のラット肝臓腫瘍細胞を、バッファロー系ラットの肝臓の左葉に注入する。Xenogen製の生体内イメージングシステムによって、腫瘍の成長をモニターする。注入の2〜3週後に、腫瘍組織を回収し、小片に切断して、第2群のラットの肝臓の左葉に同所性移植する。腫瘍をもつラットを、以下のように三つの群に無作為に選ぶ。
第1群:酢酸リンゲル緩衝液(対照群)
第2群:酢酸リンゲル緩衝液+シスプラチン(シスプラチン)
第3群:熱安定性四量体ヘモグロビン+シスプラチン(シスプラチン+Hb)
肝臓腫瘍組織を移植したラットを、3mg/kgのシスプラチンを単独で(第2群)または熱安定性四量体ヘモグロビンを併用して(第3群)処理した。第2群および第3群については、30〜50mg/kgのペントバルビトン溶液を腹腔内に注射してラットを麻酔し、左門脈を通してシスプラチンを投与する。第3群については、0.4g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビンを、シスプラチン処理の前に静脈注射する。第1群1は、非処理対照群である。重要なこととしては、処理の3週後に肝臓腫瘍の顕著な縮小が観察される(図16B)。
(実施例9)
肝臓腫瘍の術後の再発および転移を予防する方法
肝臓腫瘍の外科的切除は、肝臓がんの最先端の治療である。しかし、がんの術後の再発および転移は、これらの患者にとって予後不良の主な特性である。例えば、以前の研究によると、肝臓切除が、50%の5年生存率だけでなく70%の再発率と関連する。肝細胞がん(HCC)の患者についての追跡研究は、原発性HCCによる肝臓外転移が約15%のHCC患者で検出され、肺が最も頻発する肝臓外転移であることも明らかにされている。外科的侵襲、特に肝臓手術の間の虚血/再かん流(IR)損傷が、腫瘍の進行をもたらす主因であると示唆されている。通常、肝臓の血管制御が肝臓の切除の間に大量出血を防止するために外科医によって行われる。例えば、門脈三管の固定(Pringle法)による流入の閉塞は、失血を最小限にして、手術の輸血の必要量を減少するために用いられている。最新の日本の研究では、25%の外科医が常にPringle法を採用している。しかし、Pringle法は、残余の肝臓に種々な程度の虚血性損傷を誘導し、がんの再発および転移を伴う。
IR損傷と腫瘍の進行との関連は、以前の動物実験によっても示唆されている。最初に、同所性の肝臓がんモデルを用いた最新の研究では、肝臓がんの再発および転移についてのIR損傷および肝臓切除による影響およびが明らかにされた。肝臓のIR損傷および肝臓切除は、顕著な肝臓腫瘍の再発および転移をもたらした。同様の結果は、IR損傷の導入が大腸がん肝転移の進行を加速する、大腸がん肝転移マウスモデルから得られた。
従来から、切除中のIR損傷を減少するために、幾つかの保護戦略が研究されている。例えば、虚血プレコンディショニング(IP)として知られている、長時間のクランプの前の短期間の虚血の利用は、、肝臓細胞の防御機構を誘発することが示唆され、肝切除中のIR損傷を減少するために使用されている。他には、流入血行を遮断し、その後に続く再かん流の循環の繰り返しをさせる間欠型クランプ(IC)処置を適用する。この2つの方法は、大きな肝臓手術を受けた非肝硬変患者の術後肝臓損傷から保護することに有効であることが示唆された。しかし、腫瘍の場合には、動物実験は、IPがIR損傷により加速された腫瘍の成長から肝臓を保護することができないことも明らかにする。また、幾つかのグループは、IR損傷から肝臓を保護するために酸化防止剤(例えば、α−トコフェノールおよびアスコルビン酸)を使用することにより、肝転移を予防することを試みている。しかし、二種類の酸化防止剤はいずれも、IRによる肝内の腫瘍成長を規制することができなかった。
機構的には、低酸素状態が多くの原因で腫瘍再発および転移に関連することを方向の異なる証拠が示唆している:(1)研究によると、低酸素状態の腫瘍は、放射線療法および化学療法に対してより強い抵抗性があり、治療で生き残った腫瘍細胞は、再発する傾向がある;臨床証拠は、より低酸素状態の腫瘍領域を有する患者がより高い転移率を有することを示唆する;(2)低酸素状態の下では、がん細胞は、低酸素誘導因子−1(HIF−1)経路が活性化されることによってより侵攻性になる。すなわち、これは、細胞運動性を増強し、特定の遠隔臓器に向かう、血管新生促進因子に関する血管内皮成長因子(VEGF)と、受容体(例えばc−MetおよびCXCR4)との相補的反応を誘発する;(3)最新の研究は、血中循環がん細胞(CTC)が低酸素状態の下でより侵攻性になることも明らかにした。がん患者の抹消血で検出した循環腫瘍細胞は、遠隔転移患者の疾病侵襲指数として示されるが、低酸素状態は、それらの細胞をより侵襲性の侵略的な表現型にし、アポトーシスを起こす潜在能力を減らす。具体的には、放射線抵抗性がより大きいがん幹細胞集団は、脳腫瘍の酸素濃度が減少している下で増えた。
従って、前記観察および研究に鑑みて、本発明による架橋四量体ヘモグロビンは、肝臓切除後の術後肝臓腫瘍の再発および転移を予防するために使用される。ラットの同所性肝臓がんモデルを樹立する。バッファロー系ラット(雄、300〜350g)に同所性肝臓がんモデルを樹立するために、肝臓細胞がん細胞系(McA−RH7777細胞)を用いる。図17は、手術およびヘモグロビン製品の投与手順をまとめた概略図を示す。McA−RH7777細胞(約1×10細胞/100μl)を、固形腫瘍の成長を誘発するためにバッファロー系ラットの肝臓被膜に注入した。2週間後(腫瘍の体積が約10×10mmに達した時)、腫瘍組織を回収し、1〜2mmの立方体に切断して、新たなバッファロー系ラットのグループの肝臓の左葉に移植する。肝臓腫瘍を同所性に移植した後2週間で、ラットは、肝臓の切除(肝臓腫瘍を有する左葉)および部分的に肝臓のIR損傷(30分間の右葉における虚血)を受ける。
腫瘍の再発および転移を比較するために、腫瘍組織を移植した2つのラットの群を使用する。第1群においては、虚血の1時間前に、ラットをペントバルビトンによって麻酔し、0.2g/kgの本発明の熱安定性四量体ヘモグロビンを10g/dLの濃度で静脈内投与する。ブルドック鉗子で肝門脈および肝動脈の右枝をクランプすることにより、虚血を肝臓の右葉に導入する。次いで、肝臓の左葉で結紮が行われた後、肝臓腫瘍を有する肝臓の左葉を切除する。虚血から30分後に、追加の0.2g/kgの熱安定性四量体ヘモグロビンを下大静脈に注射した後、再かん流する。グループ2においては、酢酸リンゲル緩衝液を媒体対照として同様の処置で注射する。全てのラットは、肝臓切除術プロセスから4週間後に殺す。
腫瘍の成長および転移を検査するために、および虚血/再かん流および肝臓切除処置から4週間後に、形態学的検査のためにバッファロー系ラットの肝臓および肺を採取する。組織を回収し、パラフィルムに包埋し、薄片に切り分けて、ヘマトキシリンおよびエオシン(HおよびE)染色をする。局所的な再発/転移(肝内)および遠隔転移(肺)は、組織学的検査により確認する。表2に、ラットの同所性肝臓がんモデルにおける肝臓切除およびIR損傷から4週間後の腫瘍の再発/転移の比較をまとめた。
肝臓腫瘍の再発および転移ついての、非ポリマー性熱安定性四量体ヘモグロビンの予防作用を試験するために、肝臓切除およびIR処置から4週間後に、全てのラットを殺す。肺および肝臓の組織を採取する。;肝臓腫瘍の再発/転移および遠隔肺転移を両グループにおいて比較する。結果は、ヘモグロビン処理が二種類の臓器における再発および転移の発生率を減少させることを示す。
図18は、肝臓切除および虚血/再かん流処置後のIR損傷群のラットに誘発された肝内肝臓がんの再発および転移並びに遠隔肺転移の代表的な例、および本発明の熱安定性四量体ヘモグロビンによるそれらを予防した代表的な例を示す。図18Aでは、IR損傷群において、広範囲の肝内肝臓がんの再発/転移が観察される。遠隔肺転移も同じラットに発生する(実線矢印で示す)。図18Bでは、IR損傷群の別の例において、肝内肝臓がん再発/転移が観察される(点線矢印で示す)。同じ例において、広範囲の肺転移が観察される(実線矢印で示す)。一方、図18Cには、本発明による熱安定性四量体ヘモグロビンで処理したラットにおける肝内肝臓がんの再発/転移および遠隔肺転移から保護された代表的な例を示す。
図19は、肝臓切除およびIR損傷処置後4週間の2つの群についての組織学的検査を示す。IR損傷およびヘモグロビン処理の両方の群の肝臓および肺組織の組織学的検査(HおよびE染色)は、腫瘍の結節の同一性を確認するために行う。IR損傷群における肝内再発(T1およびT2)および肺転移(M)を示す代表的な領域を示す(上部)。比較のために、処理群における正常な肝臓構造(N1)およびヘモグロビン処理後に肝内で検出された腫瘍の結節(T3)の組織学的検査を示す(下部)。また比較のために、処置群(N2)における転移のない肺組織を示す。
熱安定性四量体ヘモグロビンによる腫瘍の再発および転移の予防作用を更に確認するために、虚血/再かん流および肝臓切除処置後の腫瘍の再発率および再発腫瘍の大きさを調べる。再び、前記したようにMcA−RH7777細胞を注射して調製された腫瘍組織を移植したラットは、図17に述べたように、肝臓切除処置の虚血および再かん流時に先立ち、約0.2〜0.4g/kgの本発明に係る熱安定性四量体ヘモグロビンまたは負の対照である酢酸リンゲル(RA)緩衝液を静脈内に処理する。合計26匹のラットを試験し、そのうち、13匹のラットは本発明のヘモグロビンで処理し、13匹のラットは、単にRA緩衝液で処理された、負の対照ラットである。肝臓および肺の腫瘍の再発/転移全てのラットは肝臓切除およびIR処置後4週間後で殺され、試験ラットの肝臓および肺は、腫瘍の再発/転移の検査をし、再発腫瘍の相対的な大きさを測定する。
図20Aは、試験ラットにおける肝臓腫瘍の再発および個々の再発腫瘍の体積を示す。13匹の未処理の対照ラットのうち9匹に肝臓腫瘍が再発し/転移していたが、13匹の処理ラットでは、4匹にのみ腫瘍の再発/転移がみられた。腫瘍の再発が見られた場合、本発明に係るヘモグロビンで処理したラットの再発した腫瘍の大きさは、未処理のラットの再発した腫瘍の大きさよりも有意に小さいことも明らかである。図20Bに概括するとおり、この結果は、本発明の処理をすることで、腫瘍の再発率は大きく低下し、再発腫瘍の大きさが有意に減小することを示す。
図21は、本発明の熱安定性四量体ヘモグロビンで処理したラットおよびIR損傷(負の対照)群における、肝臓切除およびIR処置後4週間後に採取した肝臓およびおよび肺組織の代表的な実施例を説明する。未処理の負の対照群、ラットC10およびおよび13の代表的な実施例に見られるように、広範囲の肝内肝臓がんの再発/転移および遠隔肺転移が観察される(円)。一方、ラットY9、Y10およびY11に見られるように、本発明の主題のヘモグロビンの処理によって、肝内肝臓がんの再発/転移および遠隔肺転移を予防する。
(実施例10)
熱安定性四量体ヘモグロビンによる処理は虚血を減少させる
実施例6に示されるように、主題の熱安定性四量体ヘモグロビンを低酸素状態の腫瘍へ静脈注射することで、腫瘍の酸素取り込みを顕著に改善する。したがって、腫瘍切除およびIR処置における中の主題のヘモグロビン製品の酸素取り込み作用を調査する。McA−RH7777細胞を注射することにより調製された肝臓腫瘍組織を移植したラットを使用し、ラットに図17に概述したような手術および0.2〜0.4g/kgの本発明に係るヘモグロビン製品またはRA緩衝液の投与処置をする。肝臓腫瘍に本発明に係るヘモグロビン製品/RA緩衝液を初めて投与する時からIR処置、肝臓腫瘍切除術および再かん流後を通して、肝臓の酸素分圧を測定する。その結果(図22)は、虚血を導入した後、本発明のヘモグロビンの処理による酸素取り込みの増加が観察されることを示す。また、図22に見られるように、本発明のヘモグロビンで処理した肝臓の酸素分圧は、再かん流後に処理されていないものの約3倍である。虚血の前および腫瘍切除術時の再かん流時において本発明のヘモグロビンで処理することは、未処理の場合と比べて、肝臓組織への酸素の取り込みを顕著に改善することが確認される。本技術において示唆される、低酸素状態の腫瘍と腫瘍の再発/転移の可能性の増加との間の強い関連性、本ヘモグロビン製品の広範囲の酸素取り込み効果および本実施例で説明したような腫瘍切除処置の間におけるその使用を考慮すると、腫瘍の再発および転移の減少のための本ヘモグロビン製品の有用性が明らかに確認される。
(実施例11)
熱安定性四量体ヘモグロビンによる処理は循環する内皮前駆細胞レベルを減少することができる
肝臓がんの進行におけるがん幹細胞(CSC)および/または前駆細胞集団の重要性が明らかにされている。重要なことには、従来の研究では、HCC患者(肝臓切除術を受けている患者を含む)に顕著な高いレベルの循環する内皮前駆細胞(EPC)が見られることを示している。
したがって、循環するEPCのレベルをCD133、CD34およびVEGFR2のような表面分子の発現によって評価する。本発明のヘモグロビン製品の処理を行うまたは行わない場合の、肝臓切除手術およびIR処置の後に循環する内皮前駆細胞のレベルを調べる。図17に示すように、肝臓腫瘍を移植した2つのラットのグループに、虚血の前および肝臓切除後の再かん流時に、本発明に係るヘモグロビンまたはRA緩衝液(対照)による処置を行う。その後、肝臓切除およびIR処置後0、3、7、14、21および28日に2つのグループのラットにおける循環するEPCの数を測定する。その結果(図23)、処理群および未処理群のEPCレベルは、手術後0日目〜3日目では同じ程度である一方、ヘモグロビン処理群のEPCレベルはRA緩衝液治療群のそれよりも有意に低いことがわかる。この結果は、本発明のヘモグロビンの防止効果が腫瘍の再発/転移を減らし、腫瘍再発/転移を最小にすることができることを示す。
(実施例12)
腫瘍塊内への熱安定性四量体ヘモグロビンの局在化
腫瘍塊内での熱安定性四量体ヘモグロビンの局在化を視覚化するために、本発明のヘモグロビンをメーカーの指示に従いAlexa Fluor(登録商標) 750 SAIVI 抗体標識システムで標識する。簡単にいうと、蛍光標識された本発明のヘモグロビン(fl−Hb)を標識されていない対照物と約1:80の比率で混合する。この混合物を、上咽頭がん異種移植片(C666−1)を有するヌードマウスに静脈注射する。Maestro2イメージングシステムにより取得するために、十分な蛍光信号を確保するために、ヌードマウス1匹あたりのfl−Hbの量を約0.2mgとする。分析のためにMaestro2蛍光イメージングシステムに置かれる前に、ヌードマウスに異なる時点で麻酔をする。図24は、腫瘍の異種移植片内にHbが集中している代表的な画像である(矢印で表示)。
(実施例13)
喉頭がんにおける熱安定性四量体ヘモグロビンの放射線増感効果
頭部および頸部のがんにおける熱安定性四量体ヘモグロビンの放射線増感効果を評価するために、本発明のヘモグロビン系酸素運搬体を放射の前に1回投与し、Hep−2喉頭がんモデルにおいて腫瘍成長を抑制する効果を示す。実験の終わりに、高用量のHb(2.2g/kg)と放射を併用した腫瘍の体積は90.0mmであり、これは対照群よりも有意に小さい(336.1mm)(P<0.01)。放射線のみの場合、腫瘍の体積は143.1mmであり、高用量のHbの投与を併用したq値は1.17であり、この併用の相乗効果を示す(q>1.15、相乗効果)。図25は、本発明のヘモグロビン系酸素運搬体とその後の放射線による腫瘍成長抑制効果を示す。
(実施例14)
上咽頭がんにおける熱安定性四量体ヘモグロビンの放射線増感効果
上咽頭がんにおける熱安定性四量体ヘモグロビンの放射線増感効果を評価するために、本発明のヘモグロビン系酸素運搬体を放射線の前に1回投与し、C666−1上咽頭がんモデルにおいて腫瘍成長を抑制する効果を示す。実験の終わりに、高用量のHb(2.2g/kg)と放射線を併用した腫瘍の体積は110.3mmであり、これは対照群よりも有意に小さく(481.1mm)(P<0.01)、放射線単独群と比較しても有意に小さい(160mm)(P<0.05)。高用量のHbの投与を併用したq値は1.24であり、この併用の相乗効果を示す(q>1.15、相乗効果)。図26は本発明のヘモグロビン系酸素運搬体とその後の放射線の腫瘍成長抑制効果を示す。
(実施例15)
脳がんにおける熱安定性四量体ヘモグロビンの化学増感効果
多形性膠芽腫(GBM)は、最も一般的な成人の原発性脳腫瘍であり、ヒトにおいて最も侵襲的で、致死的な悪性腫瘍の一つであり、急速な増殖、侵襲性および早期の再発を特徴とする。GBM患者の予後は、平均生存期間は約1年間と、極めて不良である。アルキル化剤テモゾロミド(TMZ)は生存を有意に延長できるが、ほとんどの患者が新たにまたはTMZ抵抗性の獲得により腫瘍を再発する。
そこで、多形性膠芽腫におけるテモゾロミド誘発性の細胞毒性に対するHbの増感効果を調べた。テモゾロミドに対して感受性があるGBM細胞(D54−S)およびテモゾロミドに対して抵抗性があるGBM細胞(D54−R)を、低酸素状態(1%酸素)下で72時間、様々な濃度(0.015から0.03g/dL)のHb単独、TMZ単独または併用してまたはで処理し、次いで細胞生存性アッセイを行った。
Hbは、D54−SおよびD54−Rの両方のGBM細胞において、インビトロでTMZ誘発性の細胞毒性を高めることがわかる。図27Aは、異なる処理条件によるD54−SおよびD54−R細胞の代表的な96ウェルプレートを示す。図27Bは、HbによるTMZ誘発性の細胞毒性が用量依存的に増強していることを示す。
(実施例16)
フローサイトメトリーによるがん幹細胞の分離
乳がん細胞株である、MCF7細胞をCD24およびCD44抗体で標識し、およびそれぞれ488nm(青色レーザー)および633nm(赤色レーザー)で励起されるPEおよびAPCアイソタイプを用いてフローサイトメトリーにより分析し、各発光は、585nmおよび660nmのバンドパスフィルタで測定した。およびフローサイトメトリーの結果は、市販のMCF7細胞のうち、CD44を高発現するがCD24を発現しない細胞が占める割合は、全細胞数のわずか約0.5%であることを示す。
所望のがん幹細胞を得るために、MCF7細胞を、スフェロイド形成の前に少なくとも7−9日間、コーティングされていないペトリ皿でMammoCultTM培地中で浮遊培養した。培養培地はMammoCult基本培地(MammoCult Basal Medium)およびヒトの腫瘍様塊用のMammoCult増殖用サプリメント(MammoCult Proliferation Supplement)の両方を含む。培養培地には、使用前に、新たに溶解した0.48μg/mLのヒドロコルチゾンおよび4μg/mLのヘパリンも補充する。ペトリ皿内の培養培地は、1−2日毎に交換し、その頻度は培地の色によって決定される。細胞の形態は顕微鏡で観察する。図28は、光学顕微鏡下で位相差領域中で観察した細胞の形態を示す。乳房上皮細胞(E、対照)由来の中空の腫瘍様塊と比較して、中空ではない腫瘍様塊は、流動選別されたMCF7細胞をペトリ皿に注いだ後、成長の約9日から20日目に観察される。がん幹細胞を約9代まで継代培養することにより自己再生能力がさらに確認され、初代細胞(Passage0)に続く各継代培養は、中空ではない腫瘍様塊に発達するまで約9−14日間かかる。一の継代から別の継代に継代する際、化学的手段(例えばトリプシン処理)または無菌環境での機械的手段(例えばセルスクレーパを使用してペトリ皿から細胞集塊を剥離した後、ピペットの上下操作を行う)により中空ではない腫瘍様塊を単離細胞に分離する。各継代からの単離細胞を採取し、がん幹細胞の同一性および自己再生能力を確認するためにタンパク質分析を行う。図29は、異なる継代から採取された溶解した細胞のウェスタンブロットを示す。図29Aにおいて、サンプル1は腫瘍様塊の選別されていない細胞であり、サンプル2は第1継代の腫瘍様塊をCD44+/CD24−で選別した細胞である。図29Bにおいて、サンプル1は腫瘍様塊の選別されていない細胞であり、サンプル2、3および4はそれぞれ第1、第2および第3継代の腫瘍様塊をCD44+/CD22−で選別した細胞である。ウェスタンブロットによると、腫瘍様塊からの選別されていない細胞および選別された細胞の両方ともに、幹細胞マーカーであるOct−4(39kDa)およびSox−2(40kDa)を発現する。しかし、これらのマーカーの発現レベルは、選別されていない細胞と選別された細胞とでは異なる。同じ継代では、明らかに、CD44+/CD24−で選別された細胞のOct−4の発現レベルは、選別されていない細胞の発現レベルよりも高い。CD44+/CD24−細胞を選別することについて、各継代の細胞の別を適用するので、がん幹細胞の自己再生能力は、これらの幹細胞マーカーの発現レベルという点で、一継代から別の継代へと高まっていく。
がん幹細胞の腫瘍形成能力をさらに調べるために、異なる継代の腫瘍様塊から採取した細胞をアルデヒド脱水素酵素抗体(ALDH抗体)で標識し、標識された細胞をフローサイトメトリーで分析することにより、ALDH活性を調べた。図30Aは対照(ALDHの阻害剤であるジエチルアミノベンズアルデヒド(DEAB)で培養した細胞)に対する分析の結果である;図30Bは初代で採取された細胞の結果であり、細胞集団の1%がALDH活性を有することを示す;図30Cは第3継代で採取された細胞の結果であり、細胞集団の8.7%がALDH活性を有することを示す;第5継代で採取された細胞では細胞集団の10−13%がALDH活性を有する(図30D)。この分析によると、腫瘍様塊から分離された細胞は腫瘍形成能力および自己再生能力を有し、継代から継代へと選択淘汰され、がん細胞の細胞集団においてより優性になっていくがわかる。このことは、がん幹細胞に関する従来の研究とも一致している。
(実施例17)
がん幹細胞に対するヘモグロビン系酸素運搬体の効果
腫瘍におけるがん幹細胞に対するヘモグロビン系酸素運搬体の効果を調べるため、MCF7細胞を低酸素状態(5% COおよび1.1% O)で9−20日間培養した後、2つのフィルタ:CD24マーカーにはPE−A、CD44マーカーにはAPC−Aを使用するセルソーターに通すおよび。細胞がCD44に対して陽性でCD24に対して陰性である四分区間1(図31)を、さらなる分析のために選別する。
化学療法剤単独またはヘモグロビン系酸素運搬体と化学療法剤との併用療法に対するがん幹細胞の感受性を調べるために、複数の化学療法剤および/または本発明のヘモグロビン系酸素運搬体セットを、例えば第7継代および第8継代など後の継代から取得した腫瘍様塊から分離されたMCF7細胞に投与する。がん幹細胞の感受性を調査する前に、化学療法剤に対するCD44+/CD24−の薬剤抵抗性を図32に示す。選別されていないMCF7細胞およびCD44+/CD24−で選別された細胞を、DMSO(対照として)および90nMのタキソールと16時間および4日間培養する。各時間間隔(16時間および4日間)で各サンプルのセットの位相コントラスト画像(図32)を撮影し、4日間タキソール処理した後に選別された細胞は、化学療法剤に対するこれらの細胞の薬剤抵抗性を確認するために、MTTアッセイによりさらに調べる(実施例3に記載のとおり)。細胞の形態から、選別されていない細胞およびCD44+/CD24−で選別された細胞の両方の腫瘍様塊の形成は、90nMのTaxolにより阻害されていると思われる。しかし、タキソールで4日間処理した後に選別された細胞のMTTアッセイは、96%の生存を示し、これはCD44+/CD24−で選別された細胞はタキソールのみに対して高い抵抗性を有することを意味する。
化学療法剤に対するCSCの高い抵抗性は、腫瘍様塊をトリプシン処理する前に異なる化学物質の組み合わせで腫瘍様塊を少なくとも24時間処理した後の、2つの継代(第7および第8継代)からの単離細胞に対するMTTアッセイの結果により、さらに確認される。腫瘍様塊は、腫瘍の生理的環境を模倣するために低酸素状態条件下(5%CO、1.1%O)で培養する。MTTアッセイに使用する異なる化学物質の組み合わせには、Hb単独(0.2g/dL)、ボルテゾミブ(「Bort」、0.5μM)単独、5‐フルオロウラシル(「5FU」、5μM)単独、または上記の任意の組み合わせを含む。組み合わせ薬剤(すなわちHb+少なくとも1つの化学療法剤)の場合、トリプシン処理した細胞を0.2g/dLのHbで24時間培養し、次いで目的の化学療法剤を添加してさらに24時間培養する。吸光度を分光計で測定し、その吸光度の正規化された値を以下の表3に示す。正規化された値において「1」は100%の生存率、0.75は75%の生存率などを指す。
Hbのみを0.2g/dL投与するセットにおいて、2つの継代からの細胞の生存率は約61〜65%の生存率である。ボルテゾミブのみを0.5μM投与するセットにおいて、2つの継代からの細胞は生存率が約78〜91%である。5FUのみを5μM投与するセットにおいて、2つの継代からの細胞は生存率が約72〜87%である。Hbを0.2g/dL+ボルテゾミブを0.5μM投与するセットにおいて、2つの継代からの細胞の生存率は約38〜49%である。Hbを0.2g/dL+5FUを5μM投与するセットにおいては、2つの継代からの細胞の生存率は約52〜72%である。ボルテゾミブを0.5μM+5FUを5μM投与するセットにおいて、2つの継代からの細胞の生存率は約60〜64%である。Hbを0.2g/dL+ボルテゾミブを0.5μMおよび5FUを5μM投与するセットにおいては、2つの継代からの細胞の生存率は約33〜39%である。1つの化学療法剤を単独で投与するセットと、ヘモグロビン系酸素運搬体および同じ化学療法剤との組み合わせを比較すると、ボルテゾミブの場合では生存率がほぼ半減し、5FUの場合では生存率が約17%〜20%減少している。ボルテゾミブおよび5FUの組み合わせた場合の細胞生存率は約60%−64%であるが、ヘモグロビン系酸素運搬体とボルテゾミブで処理した細胞の生存率よりもまだ比較的高い。ヘモグロビン系酸素運搬体単独の場合は、ボルテゾミブと5FUを組み合わせた場合とほぼ同じパーセントでCSCを殺傷できることは興味深い。最終的に、本テストにおいてCSCを殺傷するのに最も効果的な組み合わせは、その生存率が本明細書で説明する他の如何なる組み合わせよりもはるかに低い約33%−39%であることから、ヘモグロビン系酸素運搬体+ボルテゾミブおよび5FUである。しかし、本発明のヘモグロビン系酸素運搬体とを組み合わせて投与される化学療法剤は、ボルテゾミブまたは5FUに限定されないことに留意すべきである。がん/腫瘍の治療に対する効果がより低いことが証明されている他の如何なる従来の化学療法剤または放射線治療などの他の如何なる療法も、本発明のヘモグロビン系酸素運搬体と組み合わせて使用し、CSCを殺傷する有効性を向上させることができる。
所望により、本明細書で論じられている異なる機能をそれぞれ異なる順序および/または同時に実行してもよい。さらに所望により、上記の機能の1つまたはそれ以上を任意で選択または組み合わせてもよい。
上記の研究の結果、本発明の熱安定性四量体ヘモグロビンを使用した治療は、肝腫瘍の再発および他の臓器への転移の両方に予防効果を有すると結論付けられる。
種々の態様に関して本発明を説明したが、このような態様は限定的なものではない。当業者は多くの変形および変更を理解するであろう。これらの変形および変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものと見なされる。
本発明の様々な態様は独立請求項に記載されているが、本発明の他の態様には、請求項に明確に記載されている組み合わせだけでなく、記載されている実施態様の特徴および/または独立請求項の特徴を有する従属請求項の他の組み合わせを含む。
上記は本発明の典型的な実施態様を示すが、これらの説明は限定的な意味で捉えるべきではないことにも留意するべきである。それどころか、以下の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲を逸脱するものでなければ、幾つかの変形および変更が可能である。

Claims (28)

  1. がん性組織の塊または腫瘍内のがん細胞の表面に発現した受容体を標的とするために構成されたヘモグロビン系酸素運搬体の医薬組成物であって、
    がんの再発を予防するために、自己再生能および腫瘍形成能を有する細胞を含む前記がん性組織または腫瘍内の細胞にアポトーシスを誘発し、
    酸化ストレスまたはショックを前記がん性組織または腫瘍に与え、
    および、前記がん性組織または腫瘍を、同時にまたは後から投与される化学療法剤または放射線治療に対して増感させるために、
    前記がん性組織の塊または腫瘍のがん細胞に、前記ヘモグロビン系酸素運搬体の取り込みおよび局在性を促進するための受容体介在性機構を標的とする、
    ヘモグロビン系酸素運搬体の医薬組成物。
  2. 前記がん性組織または腫瘍、および前記自己再生能と腫瘍形成能を有する細胞を含む前記がん性腫瘍細胞を相乗的に標的とするために、前記ヘモグロビン系酸素運搬体と化学的に共役する化学療法剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記化学療法剤は、5−フルオロウラシル、ボルテゾミブ、ドキソルビシン、シスプラチン、またはその任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
  4. 前記ヘモグロビン系酸素運搬体は、熱安定性架橋四量体ヘモグロビン、重合ヘモグロビン、または検知されない量の二量体濃度と低濃度のメトヘモグロビンを有する修飾ヘモグロビン分子から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
  5. 前記受容体介在性機構がクラスリン媒介エンドサイトーシスである、請求項1に記載の医薬組成物。
  6. 請求項1に記載の医薬組成物は、被験体から腫瘍の外科的除去に際し、血液供給の中断より前および/または血液供給の再建の間に必要な被験体に投与する、請求項1に記載の医薬組成物。
  7. 前記被験体の約0.2g/kg〜1.2g/kg体重の範囲で投与する、請求項6に記載の医薬組成物。
  8. 前記がん性組織または腫瘍が、肝臓がん、乳がん、脳がん、大腸がん、肺がん、頭頚部がん、上咽頭がん、および白血病を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
  9. 前記がん性組織または腫瘍が低酸素状態である、請求項1に記載の医薬組成物。
  10. 前記架橋四量体ヘモグロビンは、分子量60−70kDaであり、および0.05−0.4%の濃度のN−アセチルシステインを添加しながら熱処理される、請求項4に記載の医薬組成物。
  11. 前記医薬組成物は、血管収縮作用を有する不純物およびタンパク質不純物を含まず、非発熱性、エンドトキシンフリー、リン脂質フリー、ストローマフリーであり、該組成物のメトヘモグロビンレベルが5%未満である、請求項4に記載の医薬組成物。
  12. 前記ヘモグロビン系酸素運搬体は、前記がん性組織の塊または腫瘍に入り込み、前記自己再生能および腫瘍形成能を有する細胞を含む前記がん性組織または腫瘍の細胞にアポトーシスを誘発するために、前記腫瘍性組織または腫瘍に酸化的ストレスまたはショック与える、長い半減期を有するように修飾されている、請求項1に記載の医薬組成物。
  13. 前記自己再生能および腫瘍形成能を有する細胞ががん幹細胞および/または始原細胞である、請求項1に記載の医薬組成物。
  14. 前記ヘモグロビン系酸素運搬体は、単独で、または少なくとも一つの化学療法剤および/または放射線治療と組み合わせて投与され、前記ヘモグロビン系酸素運搬体は、補助的な療法として投与される、請求項12に記載の医薬組成物。
  15. 前記修飾ヘモグロビン分子は、ペグ化されたヘモグロビン分子である、請求項4に記載の医薬組成物。
  16. がん性組織の治療およびがん性腫瘍の再発を予防するのための医薬組成物の調製に使用されるヘモグロビン系酸素運搬体であって、前記組成物は、投与が必要な被験体に対して単独で、または少なくともひとつの化学療法剤とを組み合わせて投与される、ヘモグロビン系酸素運搬体の使用方法。
  17. 前記組成物は、がん性組織または腫瘍の除去を行う間または行った後に前記被験体に投与される、請求項16に記載の使用方法。
  18. 前記がん性組織または腫瘍が、肝臓がん、上咽頭がん、脳がん、大腸がん、肺がん、頭頸部がん、乳がんおよび白血病である、請求項16に記載の使用方法。
  19. 前記がん性組織または腫瘍が低酸素状態である、請求項16に記載の使用方法。
  20. 前記ヘモグロビン系酸素運搬体が、分子量60−70kDaの架橋四量体ヘモグロビンであり、および0.05−0.4%の濃度のN−アセチルシステインを添加しながら熱処理した後の熱安定性である、請求項16に記載の使用方法。
  21. 前記組成物が血管収縮作用を有する不純物およびタンパク質不純物を含まず、非発熱性、エンドトキシンフリー、リン脂質フリー、およびストローマフリーであり、前記熱処理および添加したN―アセチルシステインとの反応により5%未満のメトヘモグロビン濃度である、請求項20に記載の使用方法。
  22. 前記組成物は、約0.2−1.2g/kg体重の範囲で、および10ml/時/kg体重未満の割合で、点滴によって投与される、請求項16に記載の使用方法。
  23. 前記少なくとも一つの化学療法剤は、5−フルオロウラシル、ボルテゾミブ、ドキソルビシン、シスプラチン、またはその任意の組み合わせから選択されている、請求項16に記載の使用方法。
  24. 前記ヘモグロビン系酸素運搬体と少なくとも一つの化学療法剤との組み合わせは、前記がん性組織または腫瘍中の受容体が発現する細胞を相乗的に標的とするよう構成されており、受容体介在性機構を標的とし、それによってヘモグロビン系酸素運搬体と化学療法剤がより多く細胞に取り込まれ、細胞質に局在するようにがん性組織または腫瘍中の細胞を前記化学療法剤に対してさらに感受性を高めるようにがん性組織または腫瘍中の細胞を感作して、前記細胞が前記化学療法剤により感受性となる、請求項16に記載の使用方法。
  25. 前記ヘモグロビン系酸素運搬体は、がん性組織塊または腫瘍に酸化ストレスおよびショックを与え、自己再生能および腫瘍形成能を有する細胞を含む前記がん性組織または腫瘍の細胞にアポトーシスを誘発するように前記腫瘍組織または腫瘍を前記化学療法剤に感作するために、前記少なくとも1つの化学療法剤とともに、補助的な療法として投与される、請求項16に記載の使用方法。
  26. 前記自己再生能と腫瘍形成能をもつ細胞ががん幹細胞および/またはがん始原細胞である、請求項25に記載の使用方法。
  27. 前記がん性組織または腫瘍が肝臓がん、乳がん、脳がん、大腸がん、肺がん、頭頸部がん、上咽頭がん、および白血病を含む、請求項16に記載の使用方法。
  28. 前記受容体介在性機構がクラスリン媒介エンドサイトーシスである、請求項24に記載の使用方法。
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