JP2015230086A - ピストンリング - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンの機械的及び熱的負荷の高い環境で使用することが可能な、耐スカッフ性、耐摩耗性及び耐皮膜剥離性に優れた積層硬質皮膜被覆ピストンリングを提供する。
【解決手段】CrN型の窒化クロムとTiN型の窒化チタンを交互に積層したCrN/TiN積層皮膜中に少なくとも1種の金属Mからなる少なくとも1層の金属層を含有する硬質皮膜をピストンリング外周面に被覆する。その際、金属Mの窒化物の標準生成自由エネルギーΔGM-Nと窒化クロムの標準生成自由エネルギーΔGCrNがΔGM-N>ΔGCrNの関係を満たす金属Mを選択する。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車エンジン用ピストンリングに関し、特に、耐スカッフ性、耐摩耗性、さらに耐皮膜剥離性に優れた積層硬質皮膜をPVD(Physical Vapor Deposition)により被覆したピストンリングに関する。
近年、ピストンリングは、エンジンの高出力化や排気ガス規制対応に伴う燃焼温度の高温化や面圧負荷の増大、また、低粘度潤滑油の採用、バイオエタノール等の燃料の多様化、さらには高圧燃料噴射等により、その使用環境は年々過酷になってきている。耐スカッフ性及び耐摩耗性が最も優れるといわれているイオンプレーティングによる硬質窒化クロム(CrN)被覆ピストンリングでも、クラックや欠けの発生を含む皮膜剥離の問題により、十分な性能を発揮できない状況が散見されるようになってきた。従って、従来になく、耐スカッフ性、耐摩耗性、さらに耐皮膜剥離性に優れたピストンリングが強く求められている。
上記のイオンプレーティングによる窒化クロムは、一般的には、硬いが欠けやすいという課題があり、これまで、結晶方位、組織制御、空隙率(空孔率)制御、あるいは第三元素の添加、皮膜の積層化等、様々な改良がなされてきた。
窒化クロムへの第三元素の添加については、CrNの靱性を向上させるため、特許文献1は酸素(O)を、特許文献2は炭素(C)を固溶させることを教示している。さらに特許文献3は、窒化クロム皮膜が皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、クロムと窒素と炭素からなる主成分の合計に対する炭素濃度が4〜8重量%で、ビッカース硬度が1600以上、破壊靱性値が3 MPa√m以上の耐摩耗性に優れ、欠けの発生しにくいCrCN皮膜を開示している。
また、皮膜の積層化については、例えば、特許文献4には、ピストンリング外周皮膜表面のピッチング疲労に起因する欠け状剥離の問題を解決するため、皮膜破断面のCrN結晶が基材面から皮膜表面の方向に向かう柱状層と平滑状層を交互に積層させた皮膜、又は、空孔率0〜0.5体積%の層と空孔率1.5〜20体積%の層を交互に積層させた皮膜を開示している。さらに、特許文献5には、同様な観点で、例えば、CrSiNやTiSiNの複合窒化物皮膜について、柱状晶ができる高バイアス電圧条件と、柱状晶ができない低バイアス電圧条件を一定時間毎に交互に繰り返して、柱状晶の複合窒化物の硬質皮膜の中に、一定間隔毎に一定厚みの柱状晶ではない構造の該複合窒化物の応力緩和層を挟み込んで、内部応力を低減し、高い密着力をもった硬質厚膜皮膜を開示している。
上記の特許文献4及び特許文献5は、いずれも、同じ窒化物の範囲内で、異なる組織(柱状組織層/非柱状組織層、又は多孔質組織層/緻密質組織層)の窒化物層を積層したものであるが、特許文献6には、特許文献5でいう応力緩和層として金属層を利用した異なる組成を含む積層皮膜が開示されている。
特許文献7は、耐クラック性に優れた積層皮膜を有するピストンリングを提供することを目的に提案されたもので、異なる2種以上の窒化物の積層皮膜中に金属層を導入することでクラックの進展が抑制され、クラックが生じても最も近い相境界のみに拡張するため、積層皮膜全体に亘った大きな剥離に至りにくいことが教示されている。
特開平6−265023号公報 特開平6−300130号公報 国際公開第2008/059791号 特開平8−312779号公報 特開2005−187859号公報 特開2005−82822号公報 特許5372760号公報
沖 猛雄、表面技術、Vol. 41、No. 5、1990、p. 462-470。
しかし、上記特許文献7においては、異なる2種以上の窒化物の積層皮膜中に金属層を導入することによってクラックの進展を抑制することを意図しているものの、金属層がTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWから選択されるため、隣接する窒化物からの窒素(N)の拡散により、金属層が一部変質する傾向があり、例えば、CrN層に隣接して金属Ti層が導入された場合、Ti2NやCr2Nが形成され、これらは硬く脆い性質を有しており、クラックが進展しやすくなるという問題を有している。
本発明は、上記問題を解決し、エンジンの機械的及び熱的負荷の高い環境で使用することが可能な、耐スカッフ性、耐摩耗性、さらには耐皮膜剥離性に優れた積層硬質皮膜をPVDにより被覆したピストンリングを提供することを課題とする。
本発明者らは、ピストンリングに被覆した耐スカッフ性、耐摩耗性、及び耐皮膜剥離性に優れたPVD積層硬質皮膜について、特にCrN/TiN積層硬質皮膜にさらに金属層を導入して耐皮膜剥離性を改善するべく鋭意研究した結果、CrN及びTiNと隣接しても窒素がCrN及びTiNから拡散しない金属層を導入することによって、さらに耐皮膜剥離性に優れた積層硬質皮膜を被覆したピストンリングとすることができることに想到した。
すなわち、本発明のピストンリングは、外周摺動面に硬質皮膜が被覆されたピストンリングであって、前記硬質皮膜がCrN型の窒化クロムとTiN型の窒化チタンを交互に積層した皮膜を含み、前記積層皮膜中に少なくとも1種の金属Mからなる少なくとも1層の金属層を有し、前記金属の窒化物の標準生成自由エネルギーΔGM-Nと前記窒化クロムの標準生成自由エネルギーΔGCrNがΔGM-N>ΔGCrNの関係を満たすことを特徴とする。
前記金属MはCo、Ni及びCuから選択された少なくとも1種であることが好ましい。また前記金属層の厚さは10〜1000 nmであることが好ましい。
本発明の耐スカッフ性、耐摩耗性及び耐皮膜剥離性に優れた金属層含有CrN/TiN積層硬質皮膜被覆ピストンリングは、例えば、特許文献7に開示された金属層含有積層窒化物皮膜被覆ピストンリングと異なり、CrNの標準生成自由エネルギーΔGCrNが金属Mの窒化物の標準生成自由エネルギーΔGM-Nより低く安定(TiNの標準生成自由エネルギーΔGTiNはΔGCrNより低いのでさらに安定)で、CrNから金属層への窒素の拡散が起こらない(ΔGTiNはΔGCrNより低いのでTiN層から金属層への窒素の拡散は当然に起こらない)ため、金属層本来の応力緩和層としての特性を維持することができ、耐皮膜剥離性をさらに改善することができる。
本発明の金属層含有CrN/TiN積層硬質皮膜被覆ピストンリングの皮膜断面の一例を模式的に示した図である。 本発明の金属層含有CrN/TiN積層硬質皮膜被覆ピストンリングの皮膜断面の別の一例を模式的に示した図である。 本発明で使用するPVD装置の概略図である。 転動すべり疲労試験機の概略図である。
本発明のピストンリングは、外周摺動面に硬質皮膜が被覆されたピストンリングであって、前記硬質皮膜がCrN型の窒化クロムとTiN型の窒化チタンが交互に積層した積層皮膜を含んでいる。さらに本発明のピストンリングは、前記積層皮膜中に少なくとも1種の金属Mからなる少なくとも1層の金属層を有し、前記金属Mの窒化物の標準生成自由エネルギーΔGM-Nと前記窒化クロムの標準生成自由エネルギーΔGCrNがΔGM-N>ΔGCrNの関係を満たすことを特徴としている。
CrN/TiN積層皮膜は、アークイオンプレーティング(Arc Ion Plating、以下「AIP」ともいう。)により形成されるが、本発明では、CrN/TiN積層皮膜の製造プロセス中に金属Mからなる金属層の形成プロセスを導入することによって金属層含有CrN/TiN積層硬質皮膜を形成する。本発明の金属Mからなる金属層は、その窒化物M-Nの標準生成自由エネルギーΔGM-NがCrNの標準生成自由エネルギーΔGCrNより大きいので、CrN層に隣接して金属層を形成してもCrN層は熱力学的に安定であり、CrN層から金属層に窒素が拡散することなく金属Mからなる金属層として形成される。TiN層はCrN層よりも熱力学的にさらに安定であるので、前記金属層がTiN層と隣接しても当然にTiN層から前記金属層に窒素が拡散することはない。
ΔGM-NがΔGCrNより大きい金属Mとして、特にCo、Ni及びCuから選択された少なくとも1種であることが好ましい。金属MとしてCuを選択すれば、極めて高い熱伝導率の金属層となってさらに好ましい。
図1は、本発明のピストンリングの皮膜断面を模式的に示した図であるが、基材(1)の上にCrN/TiN積層皮膜(2)が形成され、その中に金属Mからなる少なくとも1層(図1では3層)の金属層(3)が形成されている。金属層(3)は、CrN/TiN/M/CrN/TiN/M…や、CrN/TiN/CrN/M/TiN/CrN/TiN/M…や、CrN/TiN/CrN/TiN…/M/CrN/TiN…/M/CrN/TiN…、等のどのような配置でも良く、また金属層(3)の厚さは10〜1000 nmであることが好ましい。金属層(3)の厚さは25〜500 nmがより好ましく、50〜300 nmがさらに好ましい。金属層(3)の応力緩和層としての機能を重視し、硬質皮膜全体の残留応力(圧縮応力)を下げ、またクラック伝播を抑えるには、100 nmを超える厚さとすることが好ましい。本発明の硬質皮膜全体としては、CrN/TiN積層皮膜の耐スカッフ性及び耐摩耗性を生かし、金属層によるさらなる耐皮膜剥離性の向上を図るには、(3〜10μmのCrN/TiN積層皮膜)/(10〜1000 nmの金属層)を繰り返した硬質皮膜とすることが好ましい。
本発明の硬質皮膜の基礎を構成するCrN型の窒化クロムとTiN型の窒化チタンが交互に積層したCrN/TiN積層皮膜は、CrN皮膜に比べ熱伝導率が高く、ピストンリングが高い熱伝導機能を発揮するのに貢献する皮膜である。すなわち、ピストンヘッドの熱を冷却されたシリンダ壁に効率よく逃すだけでなく、発生する熱応力の低減にも繋げ、クラックや欠けの発生を抑える。ここで、CrN型の窒化クロムとは、Cr2N型の窒化クロムを含んでもよいが主たる窒化クロムがCrN型であることを意味し、TiN型の窒化チタンとは、Ti2N型の窒化チタンを含んでもよいが主たる窒化チタンがTiN型であることを意味する。
PVDによりピストンリングに被覆した硬質皮膜にクラック又は欠けが発生する場合、皮膜表面又は内部に存在する欠陥を起点とし、摺動によって発生する皮膜最表面の引張応力又は皮膜内部の剪断応力によりクラックが伝播し、皮膜の欠けや脱落あるいは皮膜剥離という形態で破壊に至る。また、異なる相を積層した積層皮膜は、一般には、その界面に歪みが残るため界面に沿ってクラックが伝播しやすい。しかし、本発明では、CrN/TiN積層皮膜は、CrNとTiNも格子常数がそれぞれ0.414 nm、0.424 nmと非常に近いため、整合性の高い強い界面を形成する。ここで、CrN/TiN積層皮膜における各1層当たりの厚さの和からなる積層単位厚さ、すなわち、CrN層1層の厚さとTiN層1層の厚さの和は20〜100 nmであることが好ましい。耐クラック伝搬の観点では20〜80 nmが好ましく、20〜60 nmがさらに好ましい。さらに、CrN層及びTiN層の厚さがCrN及びTiNの結晶子サイズに相当すれば、少なくとも膜厚方向には単結晶と見なすことができ、多結晶に比べ、剛性が格段に向上する。被覆面に平行な方向には小傾角境界をもつ多結晶と考えられ、これらの構成は、積層皮膜の界面、層内の両方でのクラックの伝播を抑制する。結晶子サイズに注目すれば、CrN層1層とTiN層1層からなる積層単位厚さは、CrNとTiNの各結晶子サイズの和の1〜1.3倍であることが好ましい。
本発明では、上述した耐クラック伝播性に優れたCrN/TiN積層皮膜中に、さらに耐クラック伝播性を向上させるため、金属Mからなる少なくとも1層の金属層を有している。CrN層及びTiN層から窒素が拡散していない金属層は十分な延性を有しており、クラックが万が一CrN/TiN積層皮膜中を伝播してきたとしても、金属層の存在がその界面でクラックの伝播を止め、皮膜の欠けや脱落を回避することを可能とする。
CrN層及びTiN層の厚さが、それぞれCrNとTiNの結晶子サイズに近づくことは、前述したように、欠陥の少ないCrN層及びTiN層を形成するためヤング率や強度を向上させる。さらに、粒界によるフォノン散乱を低減し、熱伝導率を向上させる。よって、本発明では、強度的な観点だけでなく、熱伝導率の観点からも、積層単位厚さを20〜100 nmとし、CrNとTiNの各結晶子サイズの和の1〜1.3倍とすることが好ましい。CrN/TiN積層皮膜が熱伝導率のさらに高い金属層を含むことは、硬質皮膜の熱伝導率をさらに向上させることにも貢献する。
AIPにより形成したCrNとTiNの熱伝導率は、非特許文献1によれば、それぞれ、0.0261〜0.0307 cal/cm・sec・deg(SI単位に換算すると10.9〜12.9 W/m・Kとなる)と0.07 cal/cm・sec・deg(SI単位に換算すると29.3 W/m・Kとなる)であり、TiNのほうがCrNの約2.5倍高い。一方、TiNはCrNに比べ耐腐食性に劣るという問題点も有している。よって、熱伝導率を考慮すればチタンの比率を増やし、耐腐食性を考慮すればクロムの比率を増やすことが好ましい。両者のバランスを考慮すれば3:7〜7:3の範囲とすることがさらに好ましい。
積層したCrN層とTiN層の成長方位は、成膜条件によって異なる。特に限定するものではないが、CrN層は(200)面で最大となり、TiN層も(200)面で最大の回折強度となることが好ましい。
また、本発明のピストンリングは、その外周摺動面の最表面がCrN及びTiNからなる複合組織、又はCrN、TiN及び金属Mからなる複合組織を有することが好ましい。また、耐スカッフ性や耐摩耗性を考慮すれば、金属Mからなる金属層のみ最表面に露出することがないようにすべきである。その点、金属層の厚さがCrN層及びTiN層の厚さに近づけば、金属含有CrN/TiN積層皮膜は、最表面で基本的にCrN、TiN及び金属Mからなる複合組織を示す。すなわち、図2に示すように、凹凸を形成した基材(1)面に積層皮膜を形成すれば、積層皮膜も波状に形成され、外周摺動面を平面に研磨すれば、CrN(5)とTiN(6)金属M(7)からなる複合組織がその最表面に得られる。一般に、基材面に凹凸を形成し、その上に金属層含有CrN/TiN積層硬質皮膜を形成することが好ましい。
最表面に現れるCrN(5)とTiN(6)と金属M(7)からなる複合組織は、積層厚さ、積層面と研磨面との角度、波状積層膜の波長、等に依存するが、等高線状の組織を含むことが好ましい。条件が整えば、層状のリング状形態となる。
なお、積層皮膜と基材との間に、その密着性を改善するための金属中間層(4)を形成してもよい。金属中間層(4)はCrからなることが好ましい。
さらに、本発明のピストンリングの硬質皮膜の硬度は1000 HV0.1以上であることが好ましい。高硬度側は、好ましくは1450 HV0.1以下とする。1100 HV0.1〜1300 HV0.1であればより好ましい。また、皮膜の残留応力は-500 MPa〜-1500 MPa(圧縮残留応力)であることが好ましい。-600 MPa〜-1400 MPaであればより好ましい。このようなバランスのとれた皮膜の圧縮残留応力は、摩擦による引張応力や剪断応力を低減し、クラックの伝播を抑制する。
本発明では、金属含有CrN/TiN積層硬質皮膜は、例えば、図3に示すような概略図(上から見た平面図)のPVD装置を用いて形成する。このPVD装置では、プロセスガス導入口(11)とプロセスガス排出口(12)を有する真空容器(10)中に、被処理物(18)(ピストンリングを重ねたもの)をセットし、回転テーブル(17)を挟んで対向した位置に、アークイオンプレーティングの金属Crカソード(13)と金属Tiカソード(14)を、及び、スパッタリングの金属Mのカソード(15,16)を配置している。回転テーブル(17)は被処理物(18)が自転する機構を有しており、さらに(図示しない)バイアス電源に接続されている。また装置の壁面にはヒーター(19)が設置されている。
アークイオンプレーティング法は、真空容器(10)中に窒素(N2)ガスを導入し、低圧雰囲気下で、金属Crカソード及び/又は金属Tiカソード表面にアークを発生させ、金属Cr及び/又は金属Tiを瞬時に溶解、窒素プラズマ中でイオン化し、被処理物(18)に印加した負のバイアス電圧によってクロムイオン、チタンイオン、あるいは窒素プラズマと反応したCrNやTiNとして被覆面に引き込むことで、CrN層やTiN層を形成する方法である。アークイオンプレーティングでは、高いエネルギー密度により、金属Cr及び金属Tiの高イオン化率を達成できる。よって、高い成膜速度が得られ、ピストンリングに要求される10〜60μmの成膜が工業的に可能となる。
また、スパッタリング法は、Arなどの不活性ガスを導入しながら、金属カソードに高電圧を印加して発生するグロー放電プラズマ中で、Arイオンが高エネルギーで金属カソード(15,16)(ターゲット)に衝突して、金属原子/分子を弾き飛ばし、それらを被処理物(18)上に堆積させて皮膜を形成する方法である。金属カソード(15,16)裏面に配置された(図示しない)磁石による磁場を利用したマグネトロンスパッタリングで、外側磁極の磁場を内側磁極の磁場より強くした非平衡磁場を生成すれば、ターゲット近傍に収束していたプラズマの一部が磁力線に沿って基材近傍まで拡散しやすくなり、被処理物(18)近傍のプラズマ密度を増大し、皮膜形成中に被処理物(18)に照射されるArイオン量を増大させて、皮膜界面の強化を図ることができる。
CrN/TiN積層皮膜の成膜は、金属Crカソードにおけるアーク放電と金属Tiカソードにおけるアーク放電を、時間をずらして行うことによりCrNの形成とTiNの形成を交互に行っても良いが、成膜速度を高め、生産性を高めるには、金属Crカソードと金属Tiカソードのアーク放電を同時に行うことが好ましい。金属(M)層は、金属Crカソードと金属Tiカソードのアーク放電を止め、N2雰囲気からAr雰囲気に置換して、所定の時間、金属Mカソードのグロー放電を行うことによって形成する。
窒化クロムと窒化チタンの組成は、金属Crカソード及び金属Tiカソードからの蒸発量と窒素ガス分圧によって決まるので、本発明では、CrN型窒化クロムとTiN型窒化チタンが主体となるように調整する。また、カソードからの金属の蒸発量は金属固有の融点における蒸気圧とアーク電流(温度)に依存するので、組成が変わらない(例えば、CrN主体の組成がCr2N主体の組成にならない)範囲内でアーク電流を変化させ、CrとTiの比率を変えることができる。よって、CrN層とTiN層の各層の厚さは、アーク電流と回転テーブル(17)の回転速度により制御可能である。CrN層とTiN層の厚さは、FE-SEM(Field Emission - Scanning Electron Microscope)等を利用した直接観察により測定できるが、少なくともCrN層1層とTiN層1層の和、すなわち回転テーブルが1回転する間に形成された積層単位厚さは、成膜速度(μm/min)をテーブルの回転速度(rpm)で除した値となる。ここで、成膜速度はアーク電流を上げると増加するので、アーク電流を下げるか又はテーブルの回転速度を上げれば積層単位厚さは小さくなる。
スパッタリングで形成した金属層の膜厚や膜質は、スパッタ電力や雰囲気ガスの圧力に依存する。一般に、スパッタ電力を上げ、雰囲気ガスの圧力を低圧にすれば、雰囲気ガスとの衝突、散乱が少なくなって成膜速度は増加する。
PVDによって形成した皮膜の結晶組織は、一般に、炉内圧やバイアス電圧により調整可能であり、炉内圧を高くし、バイアス電圧を低くすると柱状晶になり、逆に炉内圧を低くし、バイアス電圧を高くすると粒状組織が得られると言われている。しかし、特許文献2のようにバイアス電圧を高くすると柱状晶になるという教示もあり、一概にそういえないのが現実である。イオンプレーティングやスパッタリングの成膜環境は非常に複雑であり、例えば、装置を変更すれば、同じ放電電力、炉内圧、バイアス電圧を選択したとしても、同じ組織が得られる保証が全くないのが実情である。もちろん、基材の材質、結晶構造、温度、表面状態等にも関係するが、炉内の構造(被処理物とカソードの配置等)も比較的大きな影響を及ぼしており、成膜条件は装置毎に設定されなければならない。
実施例1
SWOSC-V相当材の線材から呼称径(d)96 mm、厚さ(a1)3.8 mm、幅(h1)2.5 mmの矩形断面で、外周面をバレルフェイス形状としたピストンリングを作製し、このピストンリングを50本重ね、外周面をショットブラストにより数μmの表面粗さ(Ry)に調整し、アークイオンプレーティングとスパッタリングの機能を併せ持つ複合装置内にセットした。ターゲットは、純度99.9%の金属Crと純度99.9%の金属Ti、純度99.9%の金属Cuを使用した。装置内を1.0×10-2 Paまで真空引きした後、Arガスを1.0 Paまで導入、-900 Vのバイアス電圧を印加してボンバードメント処理により基材となるピストンリング外周面を清浄化した。Arガスは99.99 %の純度のものを用いた。その後、純度99.999 %のN2ガスを4 Paまで導入し、金属Crカソードのアーク電流を120 A、金属Tiカソードのアーク電流を170 A、バイアス電圧-9 V、テーブル回転速度2 rpmで、100分間のイオンプレーティング処理によるCrN/TiN積層皮膜の形成を行った。続いて、金属Crカソードと金属Tiカソードのアーク放電を停止し、N2ガスを真空排除した後、Arガスを0.4 Paまで導入、金属Cuカソードの電圧を400 Vとして、UBM(Unbalanced Magnetron)スパッタリング処理による金属Cuの金属層の形成を行った。ここで、バイアス電圧とテーブル回転速度は変更せずに、処理時間は5分間とした。上記の条件で、イオンプレーティングによるCrN/TiN積層皮膜の形成とスパッタリングによるCu金属層の形成を繰り返し、最終的に、CrN/TiN積層皮膜の中にCu金属層を2層含む硬質皮膜を被覆したピストンリングを作製した。なお、密着性改善を目的とし、基材と積層皮膜との間に金属中間Cr層を形成した。得られた金属(Cu)層含有CrN/TiN積層硬質皮膜被覆ピストンリングは、次の各種測定に供した。
[1] 膜厚測定
膜厚測定は、被覆面に垂直な鏡面研磨したピストンリング断面について、走査電子顕微鏡(SEM)による写真から、皮膜の基材面から表面までの長さを測定し、試料の膜厚とした。実施例1の膜厚は22.8μmであり、また、高倍率で観察したCu金属層の厚さは0.16μm(160 nm)と0.14μm(140 nm)であった。CrN/TiN積層皮膜の膜厚は22.5μmとなり、回転テーブルが1回転する間に形成された積層単位厚さ(窒化クロム1層+窒化チタン1層)は、上記膜厚22.5μmとコーティング時間(300分間)とテーブルの回転数(2 rpm)から0.0375μm(37.5 nm)と算出された。
[2] 硬度測定
硬度測定は、鏡面研磨した被覆面に平行な表面について、マイクロビッカース硬度計を使用し、試験力0.9807 Nで行った。実施例1の金属層含有CrN/TiN積層硬質皮膜の硬度は1210 HV0.1であった。
[3] 残留応力測定
皮膜の残留応力σは、次のStoneyの式により算出した。
σ=−{Es(1-νs)hs 2}/6hfΔR …………………………………………………(1)
ここで、Esは基材のヤング率(N/mm2)、νsは基材のポアソン比、hsは基材の厚さ、hfは皮膜厚さ、ΔRは曲率変化量である。なお、Es及びνsは、それぞれ、200,000 N/mm2及び0.3とした。実施例1の金属層含有CrN/TiN積層硬質皮膜の残留応力は-1170 MPa(圧縮で1170 MPa)であった。
[4] X線回折測定
X線回折強度は、鏡面研磨した被覆面に平行な表面について、管電圧40 kV、管電流30mAのCu-Kα線を使用して2θ=35〜70°の範囲で測定した。実施例1の金属層含有CrN/TiN積層硬質皮膜のX線回折パターンは、TiN(200)面で最大ピーク強度を示し、続いてCrN(200)面、TiN(111)面、CrN(111)面、TiN(220)面、CrN(220)面と続き、僅かであったがCu(111)面の回折ピークも検出された。また、TiN(200)面とCrN(200)面にて、次のScherrerの式を用いて結晶子サイズDhklを算出した。
Dhkl=Kλ/βcosθ…………………………………………………………………(2)
ここで、KはScherrerの定数で0.94、λはX線の波長(Cu:1.5406Å)、βは半値全幅(FWHM)、θはBragg角である。実施例1のCrN層の結晶子サイズは10.2 nm 、TiN層の結晶子サイズは20.8 nmであり、よってCrN層とTiN層の結晶子サイズの和は31.0 nmとなる。膜厚から計算した積層単位厚さ37.5 nmは、窒化クロムと窒化チタンの各結晶子サイズの和の1.21倍であった。
[5] 皮膜組成測定
CrN/TiN積層皮膜における組成の分析は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いて行った。Cr:Ti:Nは原子比率で17.2:29.3:53.5であり、CrとTiの原子比率は3.7:6.3であった。
[6] 転動すべり疲労試験
実機試験での皮膜脱落を再現可能とする評価として、転動すべり疲労試験を行った。図4に試験機の概略を示すが、転動すべり疲労試験では、回転するドラム(21)と摺動する試験片(20)に、繰り返し荷重が加えられ、比較的短時間で皮膜の脱落が再現される。皮膜の脱落は、同一潤滑条件下においては、摩擦係数と荷重(最大ヘルツ応力)と繰り返し回数に依存する。試験条件は、次のとおりである。
試験片:金属層含有CrN/TiN積層皮膜被覆ピストンリング切断片、
荷重:98〜196 N、サインカーブ 50 Hz、
相手材(ドラム):直径80 mmのSUJ2材、
摺動速度:正転逆転パターン運転(±2 m/秒)、速度±2 m/秒で10秒保持、
加速度0.08 m/秒2
潤滑剤:純水、4 cc/min、
温度:ドラム表面温度80℃、
試験時間:1時間。
なお、試験結果は、皮膜脱落の有無で判定した。実施例1の転動すべり疲労試験の結果、皮膜脱落は無かった。
実施例2〜3
CrN/TiN積層皮膜の成膜時間と回数を50分×6回、及びCu金属層の成膜時間と回数を5分×5回に変更した以外は実施例1と同じ条件で、金属(Cu)層含有CrN/TiN積層硬質皮膜の成膜を行った。
実施例4
イオンプレーティングにおけるアーク電流を金属Crカソードで160 A、金属Tiカソードで130 Aに変更し、Cu金属層の成膜時間と回数を10分×5回に変更した以外は実施例2と同じ条件で、金属(Cu)層含有CrN/TiN積層硬質皮膜の成膜を行った。
実施例5
スパッタリングのターゲットをCuからNiに、カソード電圧を500 Vに、成膜時間と回数を5分×5に変更した以外は実施例4と同じ条件で、金属(Ni)層含有CrN/TiN積層硬質皮膜の成膜を行った。
実施例6
スパッタリングのターゲットをNiからCoに変更した以外は実施例5と同じ条件で、金属(Co)層含有CrN/TiN積層硬質皮膜の成膜を行った。
上記実施例1〜6の成膜条件について表1に示す。
Figure 2015230086
いずれの実施例においても、バイアス電圧は -9 V、テーブル回転数は2 rpmであった。
膜厚測定の結果を表2に、X線回折測定の結果を表3に、EPMAによるCrN/TiN積層皮膜の組成測定の結果を表4に、皮膜硬度、残留応力、積層単位厚さの結晶子サイズの和に対する比(T/S)、及び転動すべり疲労試験の結果を表5に示す。但し、CrN/TiN積層皮膜の組成測定は、イオンプレーティング条件の異なる実施例1及び4についてのみ行った。
Figure 2015230086
* 実施例2〜4の金属層1層の厚さは、実施例1の測定値から成膜時間に基づき推定した値である。
Figure 2015230086
Figure 2015230086
Figure 2015230086
* T/Sは(積層単位厚さ/CrNとTiNの結晶子サイズの和)を示す。
膜厚は、実施例1〜6において、CrN/TiN積層皮膜はいずれも600積層単位を積んでおり、また金属層の厚さは成膜時間を変えて30〜300 nmの範囲で2〜59層を含む構成であり、皮膜全体の厚さとして19.7〜24.8μmであった。金属層を差し引いたCrN/TiN積層皮膜部分の膜厚から計算した積層単位厚さは31.8〜39.1 nmであった。
皮膜構造は、各実施例で、CrN型窒化クロム及びTiN型窒化チタン並びに金属Cu又は金属Ni又は金属Coから構成され、窒化クロムはCrN(200)面、窒化チタンはTiN(200)で最大ピークが得られた。また、CrNとTiNの結晶子サイズは、CrNで10.2〜15.8 nm、TiNで11.5〜22.4 nmが得られ、CrNとTiNの結晶子サイズの和は25.7〜37.9 nmであった。
CrN/TiN積層皮膜におけるCrとTiの組成比は、原子比率で、実施例1は3.7:6.3、実施例4は5:5であった。
皮膜硬度は、1072 HV0.1〜1276 HV0.1、残留応力は-682〜-1170 MPa(負の記号は圧縮を示す)であり、金属層の厚さが300 nmの実施例4で皮膜硬度と残留応力が最も小さかった。なお、積層単位厚さのCrNとTiNの結晶子サイズの和に対する比(T/S)は、1.03〜1.26の間にあった。転動すべり疲労試験の結果としては、いずれの実施例も、微少脱落も表面クラックも生じなかった。
比較例1及び2
比較例1及び2として、金属層含有CrN/TiN積層硬質皮膜の代わりに、それぞれCrN及びTiNを被覆した市販のピストンリングを用いて、膜厚測定、硬度測定、残留応力測定、X線回折測定、転動すべり疲労試験を行った。その結果を表6に示す。比較例1は耐欠け性に優れると言われている比較的気孔率の高い皮膜で、皮膜硬度がHv 930と低く、一方、比較例2は、皮膜硬度は比較的高めの皮膜であった。いずれも厳しい条件の転動すべり疲労試験において皮膜脱落が観察された。
Figure 2015230086
1 基材
2 CrN/TiN積層皮膜
3 金属層(M)
4 金属中間層(Cr)
5 CrN層
6 TiN層
7 金属層(M)
10 真空容器
11 プロセスガス導入口
12 プロセスガス排出口
13 金属Crカソード
14 金属Tiカソード
15, 16 金属Mカソード
17 回転テーブル
18 被処理物(ピストンリングを重ねたもの)
19 ヒーター
20 試験片
21 ドラム

Claims (8)

  1. 外周摺動面に硬質皮膜が被覆されたピストンリングであって、前記硬質皮膜がCrN型の窒化クロムとTiN型の窒化チタンを交互に積層した積層皮膜を含み、前記積層皮膜中に少なくとも1種の金属Mからなる少なくとも1層の金属層を有し、前記金属Mの窒化物の標準生成自由エネルギーΔGM-Nと前記窒化クロムの標準生成自由エネルギーΔGCrNがΔGM-N>ΔGCrNの関係を満たすことを特徴とするピストンリング。
  2. 請求項1に記載のピストンリングにおいて、前記金属MがCo、Ni及びCuから選択された少なくとも1種であることを特徴とするピストンリング。
  3. 請求項1又は2に記載のピストンリングにおいて、前記金属層の厚さが10〜1000 nmであることを特徴とするピストンリング。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のピストンリングにおいて、積層した前記窒化クロムと前記窒化チタンの各1層当たりの厚さの和からなる積層単位厚さが20〜100 nmであり、前記窒化クロムと前記窒化チタンの各結晶子サイズの和の1〜1.3倍であることを特徴とするピストンリング。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記積層皮膜のクロムとチタンの原子比率が3:7〜7:3であることを特徴とするピストンリング。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記積層皮膜の被覆面のX線回折強度が、窒化クロムはCrN(200)面で最大となり、窒化チタンはTiN(200)面で最大となることを特徴とするピストンリング。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記硬質皮膜の残留応力が-500 MPa〜-1500 MPaであることを特徴とするピストンリング。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記硬質皮膜の硬度が1000 HV0.1以上であることを特徴とするピストンリング。
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