JP6498986B2 - ピストンリング - Google Patents

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Description

本発明は、自動車エンジン用ピストンリングに関し、特に、耐スカッフ性、耐摩耗性、さらに耐皮膜剥離性に優れた硬質皮膜をPVD(Physical Vapor Deposition)により被覆したピストンリングに関する。
近年、ピストンリングは、エンジンの高出力化や排気ガス規制対応に伴う燃焼温度の高温化や面圧負荷の増大、また、低粘度潤滑油の採用、バイオエタノール等の燃料の多様化、さらには高圧燃料噴射等により、その使用環境は年々過酷になってきている。耐スカッフ性及び耐摩耗性が最も優れるといわれているイオンプレーティングによる硬質窒化クロム(CrN)被覆ピストンリングでも、クラックや欠けの発生を含む皮膜剥離の問題により、十分な性能を発揮できない状況が散見されるようになってきた。従って、従来になく、耐スカッフ性、耐摩耗性、さらに耐皮膜剥離性に優れたピストンリングが強く求められている。
上記のイオンプレーティングによる窒化クロムは、一般的には、硬いが欠けやすいという課題があり、これまで、結晶方位、組織制御、空隙率(空孔率)制御、あるいは第三元素の添加、皮膜の積層化等、様々な改良がなされてきた。
窒化クロムへの第三元素の添加については、CrNの靱性を向上させるため、特許文献1は酸素(O)を、特許文献2は炭素(C)を固溶させることを教示している。さらに特許文献3は、窒化クロム皮膜が皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、クロムと窒素と炭素からなる主成分の合計に対する炭素濃度が4〜8重量%で、ビッカース硬度が1600以上、破壊靱性値が3 MPa√m以上の耐摩耗性に優れ、欠けの発生しにくいCrCN皮膜を開示している。
また、皮膜の積層化については、例えば、特許文献4には、ピストンリング外周皮膜表面のピッチング疲労に起因する欠け状剥離の問題を解決するため、皮膜破断面のCrN結晶が基材面から皮膜表面の方向に向かう柱状層と平滑状層を交互に積層させた皮膜、又は、空孔率0〜0.5体積%の層と空孔率1.5〜20体積%の層を交互に積層させた皮膜が開示されている。さらに、特許文献5には、同様な観点で、例えば、CrSiNやTiSiNの複合窒化物皮膜について、柱状晶ができる高バイアス電圧条件と、柱状晶ができない低バイアス電圧条件を一定時間毎に交互に繰り返して、柱状晶の複合窒化物の硬質皮膜の中に、一定間隔毎に一定厚みの柱状晶ではない構造の該複合窒化物の応力緩和層を挟み込んで、内部応力を低減し、高い密着力をもった硬質厚膜皮膜が開示されている。
上記の特許文献4及び特許文献5は、いずれも、同じ窒化物の範囲内で、異なる組織(柱状組織層/非柱状組織層、又は多孔質組織層/緻密質組織層)の窒化物層を積層したものであるが、特許文献6には、特許文献5でいう応力緩和層として金属層を利用した異なる組成を含む積層皮膜が開示されている。
特許文献7は、耐クラック性に優れた積層皮膜を有するピストンリングを提供することを目的に提案されたもので、異なる2種以上の窒化物の積層皮膜中に金属層を導入することでクラックの進展が抑制され、クラックが生じても最も近い相境界のみに拡張するため、積層皮膜全体に亘った大きな剥離に至りにくいことが教示されている。
特開平6-265023号公報 特開平6-300130号公報 国際公開第2008/059791号 特開平8-312779号公報 特開2005-187859号公報 特開2005-82822号公報 特許5372760号公報
しかし、上記特許文献7においては、異なる2種以上の窒化物の積層皮膜中に金属層を導入することによってクラックの進展を抑制することを意図しているものの、金属層がTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWから選択されるため、隣接する窒化物からの窒素(N)の拡散により、金属層が一部変質する傾向があり、例えば、CrN層に隣接して金属Ti層が導入された場合、Ti2NやCr2Nが形成され、これらは硬く脆い性質を有しており、クラックが進展しやすくなるという問題を有している。
本発明は、上記問題を解決し、エンジンの機械的及び熱的負荷の高い環境で使用することが可能な、耐スカッフ性、耐摩耗性、さらには耐皮膜剥離性に優れた硬質皮膜をPVDにより被覆したピストンリングを提供することを課題とする。
本発明者らは、ピストンリングに被覆した耐スカッフ性、耐摩耗性、及び耐皮膜剥離性に優れたPVD積層硬質皮膜について、特にCrN型の窒化クロム層からなる硬質皮膜に金属層を導入して耐皮膜剥離性を改善するべく鋭意研究した結果、CrN層と隣接しても窒素がCrN層から拡散しない金属層を導入することによって、さらに耐皮膜剥離性に優れた硬質皮膜を被覆したピストンリングとすることができることに想到した。
すなわち、本発明のピストンリングは、外周摺動面に硬質皮膜が被覆されたピストンリングであって、前記硬質皮膜がCrN型の窒化クロム層と少なくとも1種の金属Mからなる少なくとも1層の金属層を含み、前記金属Mの窒化物の標準生成自由エネルギーΔGM-NとCrNの標準生成自由エネルギーΔGCrNがΔGM-N>ΔGCrNの関係を満たし、前記外周摺動面の最表面がCrN型窒化クロム相と金属M相からなる複合組織を有することを特徴とする。
前記金属MはCo、Ni及びCuから選択された少なくとも1種であることが好ましい。また前記金属層の厚さは10〜1000 nmであることが好ましい。
前記CrN型の窒化クロム層は、CrN層及びCrN層にCを固溶したCrCN層の少なくとも一を含むことが好ましく、前記CrCN層の炭素濃度は2〜8質量%であることが好ましい。
さらに、前記CrN型の窒化クロム層は、前記CrN層と前記CrCN層の交互に積層したCrN/CrCN積層皮膜を含むことが好ましい。前記CrN/CrCN積層皮膜の前記CrN層1層と前記CrCN層1層からなる積層単位厚さは30〜100 nmであって、前記CrN/CrCN積層皮膜のX線回折データから得られるCrN(CrCNもCrNとして同定される)の結晶子サイズの2〜6倍の範囲内にあることが好ましい。
また、本発明の硬質皮膜は、被覆面のX線回折強度がCrN(200)面で最大となることが好ましい。
また、本発明のピストンリングは、外周摺動面の最表面がCrN型窒化クロム相と金属M相からなる複合組織を有するものとし、前記CrN型窒化クロム相はCrN相とCrNにCを固溶したCrCN相からなることが好ましい。
さらに、本発明のピストンリングは、前記硬質皮膜の硬度が1000 HV0.1以上であることが好ましく、前記硬質皮膜の残留応力が-500 MPa〜-1500 MPaであることが好ましい。
本発明の耐スカッフ性、耐摩耗性及び耐皮膜剥離性に優れた金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングは、例えば、特許文献7に開示された金属層含有積層窒化物皮膜被覆ピストンリングと異なり、CrNの標準生成自由エネルギーΔGCrNが金属Mの窒化物の標準生成自由エネルギーΔGM-Nより低く安定で、CrNから金属層への窒素の拡散が起こらないため、金属層本来の応力緩和層としての特性を維持することができ、耐皮膜剥離性をさらに改善することができる。
本発明の金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングの皮膜断面の一例を模式的に示した図である。 本発明の金属層含有CrN/CrCN積層硬質皮膜被覆ピストンリングの皮膜断面の一例を模式的に示した図である。 本発明の金属層含有CrN/CrCN積層硬質皮膜被覆ピストンリングの皮膜断面の別の一例を模式的に示した図である。 本発明で使用するPVD装置の概略図である。 転動すべり疲労試験機の概略図である。
本発明のピストンリングは、外周摺動面に硬質皮膜が被覆されたピストンリングであって、前記硬質皮膜はCrN型の窒化クロム層を含んでいる。CrN型の窒化クロム層は、CrN層及び/又はCrN層にCを固溶したCrCN層でもよく、CrN層とCrCN層が交互に積層した積層皮膜でもよい。さらに本発明のピストンリングは、前記硬質皮膜中に少なくとも1種の金属Mからなる少なくとも1層の金属層を有し、前記金属Mの窒化物の標準生成自由エネルギーΔGM-NとCrNの標準生成自由エネルギーΔGCrNがΔGM-N>ΔGCrNの関係を満たし、前記外周摺動面の最表面がCrN型窒化クロム相と金属M相からなる複合組織を有することを特徴としている。
CrN型の窒化クロム層は、アークイオンプレーティング(Arc Ion Plating、以下「AIP」ともいう。)により形成されるが、本発明では、窒化クロム層の製造プロセス中に金属Mからなる金属層の形成プロセスを導入することによって金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜を形成することができる。本発明の金属Mからなる金属層は、その窒化物M-Nの標準生成自由エネルギーΔGM-NがCrNの標準生成自由エネルギーΔGCrNより大きいので、CrN層に隣接して金属層を形成してもCrN層は熱力学的に安定であり、CrN層から金属層に窒素が拡散することなく金属Mからなる金属層として維持される。
ΔGM-N>ΔGCrNの関係を満たす金属Mは、Co、Ni及びCuから選択された少なくとも1種であることが好ましい。金属MとしてCuを選択すれば、極めて高い熱伝導率の金属層となってさらに好ましい。
CrN層がCを固溶したCrCN層の場合には、CrCN層からの窒素(N)の拡散だけでなく、炭素(C)の拡散も生じにくいこと、すなわち、金属Mからなる金属層は、炭化物を作りにくく、Cを固溶しにくいことが必要である。この点、上記のCo、Ni及びCuはAIPのプロセス温度領域(500℃以下)では、炭化物を形成することがなく、Cもほとんど固溶しない。
金属層の厚さは10〜1000 nmであることが好ましい。金属層の厚さは25〜500 nmがより好ましく、50〜300 nmがさらに好ましい。金属層の応力緩和層としての機能を重視し、硬質皮膜全体の残留応力(圧縮応力)を下げ、またクラック伝播を抑えるには、100 nmを超える厚さとすることが好ましい。
図1は、本発明のピストンリングの皮膜断面を模式的に示した図であるが、基材(1)の上にCrN型の窒化クロム層(2)が形成され、その上に金属Mからなる金属層(3)が形成される。金属層(3)は、少なくとも1層(図1では3層)形成されている。この窒化クロム層(2)は、前述したとおり、CrN層だけでなく、CrN層にCを固溶したCrCN層でもよいことはいうまでもない。
ここで、CrN型の窒化クロムとは、Cr2N型の窒化クロムを含んでもよいが、主たる窒化クロムがCrN型であることを意味する。CrCNも結晶構造はCrN型であり、CrNのNの格子位置の一部にCが置換型に固溶したものである。従って、CrCN層においては、Cの固溶がCr及びC又はNの両方のイオン半径を歪ませ、格子内の局部応力を増加させて、硬度を増加する。一方、Cの固溶が、高硬度を維持しつつ結晶成長中に蓄積される内部エネルギーを低減して、マクロな残留応力を低く抑え、破壊靱性を高めているともいわれている。それらの特性を得るためには、CrCN層中の炭素濃度は2〜8質量%が好ましい。
図2は、本発明のピストンリングの別の皮膜断面を模式的に示した図で、基材(1)の上にCrN/CrCN積層皮膜(4)が形成され、その上に金属Mからなる金属層(3)が形成されている。金属層(3)は、少なくとも1層(図2では3層)形成されている。金属M層(3)は、CrN/CrCN/M/CrN/CrCN/M…や、CrN/CrCN/CrN/M/CrCN/CrN/CrCN/M…や、CrN/CrCN/CrN/CrCN…/M/CrN/CrCN…/M/CrN/CrCN…、等のどのような配置でもよい。
本発明の硬質皮膜全体としては、CrN型窒化クロム層の耐スカッフ性及び耐摩耗性を生かし、金属層によるさらなる耐皮膜剥離性の向上を図るには、(3〜10μmのCrN型窒化クロム層、すなわち、CrN層、CrCN層、又はCrN/CrCN積層皮膜層)/(10〜1000 nmの金属層)を繰り返した硬質皮膜とすることが好ましい。
前述したようにCrCN層中の炭素濃度は2〜8質量%が好ましいので、CrN層とCrCN層の厚さが1:1とすれば、CrN/CrCN積層皮膜の炭素濃度は1〜4質量%となることが好ましい。
PVDによりピストンリングに被覆した硬質皮膜にクラック又は欠けが発生する場合、皮膜表面又は内部に存在する欠陥を起点とし、摺動によって発生する皮膜最表面の引張応力又は皮膜内部の剪断応力によりクラックが発生、伝播し、皮膜の欠けや脱落あるいは皮膜剥離という形態で破壊に至る。本発明では、CrN型の窒化クロム層の間に、耐クラック伝播性を向上させるため、金属Mからなる少なくとも1層の金属層を有している。金属層は、CrN層及び/又はCrCN層から窒素及び/又は炭素が拡散することなく、十分な延性を有しており、クラックが万が一窒化クロム皮膜中を伝播してきたとしても、金属層の存在がその界面でクラックの伝播を止め、皮膜の欠けや脱落を回避することを可能にする。
CrN/CrCN積層皮膜について特記すれば、CrNとCrCNは、基本的に同じ結晶構造を有し、格子常数も非常に近いため、整合性の高い、強い界面が形成される。CrN層及びCrCN層の厚さが、それぞれCrN層及びCrCN層の結晶子サイズに近づけば、少なくとも膜厚方向には単結晶と見なすことができ、多結晶に比べ、剛性が格段に向上する。但し、X線回折の測定ではCrN相とCrCN相のピークを区別できないため、両相とも同水準の結晶子サイズを持つものとして求めている。CrN層及びCrCN層は、被覆面に平行な方向には小傾角境界をもつ多結晶と考えられ、この構成は、積層皮膜の界面、層内の両方でのクラックの伝播を抑制する。CrN層1層とCrCN層1層からなる積層単位厚さは30〜100 nmであって、CrN/CrCNの結晶子サイズの2〜6倍の範囲内にあることが好ましく、2〜4倍の範囲内であればより好ましい。
CrN層及びCrCN層の厚さが、CrNとCrCNの結晶子サイズに近づくことは、前述したように、欠陥の少ないCrN層及びCrCN層を形成するためヤング率や強度を向上させる。さらに、粒界によるフォノン散乱を低減し、熱伝導率を向上させる。CrN/CrCN積層皮膜が熱伝導率のさらに高い金属層を含むことは、硬質皮膜の熱伝導率をさらに向上させることにも貢献する。
積層したCrN層とCrCN層の成長方位は、成膜条件によって異なる。特に限定するものではないが、CrN(CrCN)層は(200)面で最大の回折強度となることが好ましい。
また、本発明のピストンリングは、その外周摺動面の最表面がCrN型の窒化クロム相と金属M相からなる複合組織を有するものとする。また、前記CrN型の窒化クロム相は、CrN相とCrNにCを固溶したCrCN相からなることが好ましい。また、耐スカッフ性や耐摩耗性を考慮すれば、金属Mからなる金属層のみ最表面に露出することがないようにすべきである。その点、金属層含有CrN/CrCN積層皮膜において、金属層の厚さがCrN層及びCrCN層の厚さに近づけば、最表面で基本的にCrN、CrCN及び金属Mからなる複合組織を示す。すなわち、図3に示すように、凹凸を形成した基材(1)面に積層皮膜を形成すれば、積層皮膜も波状(凹凸)に形成され、外周摺動面を平面に研磨すれば、CrN(6)とCrCN(7)と金属M(8)からなる複合組織がその最表面に得られる。一般に、基材面に凹凸を形成し、その上に金属層含有CrN/CrCN積層硬質皮膜を形成することが好ましい。
最表面に現れるCrN(6)とCrCN(7)と金属M(8)からなる複合組織は、積層厚さ、積層面と研磨面との角度、波状(凹凸)積層膜の波長、等に依存するが、等高線状の組織を含むことが好ましい。条件が整えば、層状のリング状形態となる。
なお、積層皮膜と基材との間に、その密着性を改善するための金属中間層(5)を形成してもよい。金属中間層(5)はCrからなることが好ましい。
さらに、本発明のピストンリングの硬質皮膜の硬度は1000 HV0.1以上であることが好ましい。高硬度側は、好ましくは1450 HV0.1以下とする。1150 HV0.1〜1350 HV0.1であればより好ましい。また、皮膜の残留応力は-500 MPa〜-1500 MPa(圧縮残留応力)であることが好ましい。-600 MPa〜-1400 MPaであればより好ましい。このようなバランスのとれた皮膜の圧縮残留応力は、摩擦による引張応力や剪断応力を低減し、クラックの伝播を抑制する。
本発明のピストンリングの製造方法は、外周摺動面に、CrN型の窒化クロム層と少なくとも1種の金属Mからなる少なくとも1層の金属層を有する硬質皮膜が被覆されたピストンリングの製造方法であって、前記ピストンリングの基材外周表面の表面粗さをRzjis82で0.5〜3μmに調整し、PVDによりCrN型の窒化クロム層と金属Mからなる少なくとも1層の金属層を含む硬質皮膜を形成した後、前記硬質皮膜を研磨加工することを特徴とする。ピストンリングの基材外周表面は、積層皮膜の基材への密着性確保と、外周摺動面の最表面が窒化クロム相と金属相からなる複合組織となるよう、ショットブラスト処理のような表面粗さ調整手段により、Rzjis82で0.5〜3μmの表面粗さに調整する。また、PVDにより硬質皮膜を形成した後の研磨加工は、ラップ研磨や砥石による研削加工を含み、外周形状形成の目的も含めればプランジ研磨が好ましい。
本発明では、金属層含有窒化クロム硬質皮膜は、例えば、図4に示すような概略図(上から見た平面図)のPVD装置を用いて形成する。このPVD装置では、プロセスガス導入口(11)とプロセスガス排出口(12)を有する真空容器(10)中に、被処理物(18)(ピストンリングを重ねたもの)をセットし、回転テーブル(17)を挟んで対向した位置に、アークイオンプレーティングの金属Crカソード(13,14)、及びスパッタリングの金属Mのカソード(15,16)を配置している。回転テーブル(17)は被処理物(18)が自転する機構を有しており、さらに(図示しない)バイアス電源に接続されている。また装置の壁面にはヒーター(19)が設置されている。
AIPによるCrN型の窒化クロム層は、真空容器(10)中に窒素(N2)ガスを導入し、低圧雰囲気下で、金属Crカソード表面にアークを発生させ、金属Crを瞬時に溶解、窒素プラズマ中でイオン化し、被処理物(18)に印加した負のバイアス電圧によってクロムイオン、あるいは窒素プラズマと反応したCrNとして被覆面に引き込むことによって形成される。CrN層にCを固溶したCrCN層を形成する場合は、プロセスガスとして窒素(N2)ガスと炭化水素(例えば、CH4)ガスに、さらにアルゴン(Ar)ガスを加えることが好ましい。AIP法では、高いエネルギー密度により、金属Crの高イオン化率を達成できる。よって、高い成膜速度が得られ、例えば、ピストンリングに要求される10〜60μmの成膜が工業的に可能となる。
また、金属Mの金属層は、スパッタリング法により、Arなどの不活性ガスを導入しながら、金属カソードに高電圧を印加して発生するグロー放電プラズマ中で、Arイオンが高エネルギーで金属カソード(15,16)(ターゲット)に衝突して、金属原子/分子を弾き飛ばし、それらを被処理物(18)上に堆積させることによって形成される。金属カソード(15,16)裏面に配置された(図示しない)磁石による磁場を利用したマグネトロンスパッタリングで、外側磁極の磁場を内側磁極の磁場より強くした非平衡磁場を生成すれば、ターゲット近傍に収束していたプラズマの一部が磁力線に沿って基材近傍まで拡散しやすくなり、被処理物(18)近傍のプラズマ密度を増大し、皮膜形成中に被処理物(18)に照射されるArイオン量を増大させて、皮膜界面の強化を図ることができる。
CrN/CrCN積層皮膜の成膜は、金属Crカソードにおけるアーク放電によりCrを蒸発、イオン化させ、プロセスガスを切り替えることによって形成することができる。プロセスガスは、圧力により制御してもよいが、早く安定させるためには、流量により制御することが好ましい。また、プロセスガスの切り替えは、金属Crカソードのアーク放電を維持したまま行うことが好ましい。CrN層とCrCN層を明確に区別できる積層皮膜を形成する上では、アーク放電を止めてプロセスガスの流量を安定させた後に再着火することが好ましいが、再着火の際にストライカーロッドに堆積した皮膜が飛散して一種のピット不良が増加するというデメリットがあるからである。
さらに、窒化クロムの組成は、金属CrカソードからのCrの蒸発量と窒素ガスの分圧によって決まるので、本発明では、CrN型の窒化クロム層が主体となるように蒸発源のアーク電流と窒素ガス分圧を調整する。CrCN層の炭素濃度は、もちろん炭化水素ガスの分圧によって調整する。CrN層とCrCN層の各層の厚さは、基本的に各層の形成時間により制御する。CrN層とCrCN層の厚さは、FE-SEM(Field Emission-Scanning Electron Microscope)等を利用した直接観察により測定できるが、CrN層1層とCrCN層1層の和の積層単位厚さは、膜厚を積層単位繰り返す数で除した値、又は、成膜速度(μm/min)にCrN層1層とCrCN層1層の成膜時間を乗じた値となる。成膜速度はアーク電流を上げると増加するので、アーク電流を下げるか又は各層の形成時間を短くすれば積層単位厚さは小さくなる。
スパッタリングで形成した金属層の膜厚や膜質は、スパッタ電力や雰囲気ガスの圧力に依存する。一般に、スパッタ電力を上げ、雰囲気ガスの圧力を低圧にすれば、雰囲気ガスとの衝突、散乱が少なくなって成膜速度は増加する。
実施例1
SWOSC-V相当材の線材から呼称径(d)96 mm、厚さ(a1)3.8 mm、幅(h1)2.5 mmの矩形断面で、外周面をバレルフェイス形状としたピストンリングを作製し、このピストンリングを50本重ね、外周面をショットブラストによりRzjis82で、2.2μmの表面粗さに調整し、アークイオンプレーティングとスパッタリングの機能を併せ持つ複合装置内にセットした。蒸発源のターゲットとしては、純度99.9%の金属Crと純度99.9%の金属Cuを使用した。装置内を1.0×10-2Paまで真空引きした後、Arガスを1.0 Paまで導入、-900 Vのバイアス電圧を印加してボンバードメント処理により基材となるピストンリング外周面を清浄化した。Arガスは99.99 %の純度のものを用いた。金属Crカソードのアーク電流を150 A、バイアス電圧 0 V、テーブル回転速度3 rpmで、10分間AIP処理を行うことにより、密着性改善を目的とした中間層として金属Cr層を成膜し、その後、純度99.999%のN2ガスを4.5 Paまで導入したバイアス電圧-18Vで120分間のAIP処理によるCrN層の形成を行った。続いて、金属Crカソードのアーク放電を停止し、N2ガスを真空排除した後、Arガスを0.4 Paまで導入、金属Cuカソードの電圧を400 Vとして、UBM(Unbalanced Magnetron)スパッタリング処理(以下、「UBMS」ともいう。)による金属Cuの金属層の形成を行った。ここで、バイアス電圧とテーブル回転速度は変更せずに、処理時間は5分間とした。上記の条件で、イオンプレーティングによるCrN層の形成とスパッタリングによるCu金属層の形成を繰り返し、最終的に、CrN層3層とCu金属層2層を含む硬質皮膜を被覆したピストンリングを作製した。
実施例2
CrN層のAIP成膜処理を60分として、最終的にCrN層6層とCu金属層5層を含む硬質皮膜を被覆する以外は、実施例1と同様にして金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングを作製した。
実施例3
CrN層のAIP成膜処理を6分として、最終的にCrN層60層とCu金属層59層を含む硬質皮膜を被覆する以外は、実施例1と同様にして金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングを作製した。
実施例4
密着性改善を目的とした中間層として金属Cr層を成膜した後、CrN層の代わりにCrCN層を形成するために、純度99.999%のN2ガスを0.87 Pa、純度99.99%のArガスを0.09 Pa、純度99.9%のCH4ガスを0.54 Paとなるように流量調節し、バイアス電圧-16V、150分のAIP処理を行った以外は、実施例1と同様にして金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングを作製した。
実施例5
CrCN層の成膜処理を75分として、最終的にCrCN層6層とCu金属層5層を含む硬質皮膜を被覆する以外は、実施例4と同様にして金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングを作製した。
実施例6
CrCN層の成膜処理を7.5分として、最終的にCrCN層60層とCu金属層59層を含む硬質皮膜を被覆する以外は、実施例4と同様にして金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングを作製した。
実施例7
密着性改善を目的とした中間層として金属Cr層を成膜した後、硬質皮膜がCrN層/Cu層/CrCN層/Cu層/CrN層…の組合せとなるように、実施例1と同じ条件でCrN層の成膜処理を6分間、実施例4と同じ条件でCrCN層の成膜処理を7.5分間行って、実施例2又は実施例4と同様にして、CrN層を3層、CrCN層を3層、Cu金属層を5層とする金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングを作製した。
実施例1〜7までのイオンプレーティング条件及びスパッタリング条件を表1及び表2に示す。
Figure 0006498986
Figure 0006498986
実施例8
密着性改善を目的とした中間層として金属Cr層を成膜した後、120分のCrN層の成膜の代わりに、純度99.999%のN2ガス4.5 Paの雰囲気中、バイアス電圧-18V、時間24秒間のCrN層の成膜、N2ガス0.87 Pa、Arガス0.09 Pa、CH4ガス0.54 Paの雰囲気中、バイアス電圧-16V、時間30秒間のCrCN層の成膜からなるCrN/CrCN層の成膜を140回繰り返して、CrN/CrCN積層皮膜を形成した以外は、実施例1と同様にして金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングを作製した。
実施例9
CrN/CrCN層の成膜を70回繰り返してCrN/CrCN積層皮膜を形成し、最終的にCrN/CrCN積層皮膜6層とCu金属層5層を含む硬質皮膜を被覆する以外は、実施例1と同様にして金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングを作製した。
実施例10
CrN/CrCN層の成膜を7回繰り返してCrN/CrCN積層皮膜を形成し、最終的にCrN/CrCN積層皮膜60層とCu金属層59層を含む硬質皮膜を被覆する以外は、実施例1と同様にして金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングを作製した。
実施例11
スパッタリングのターゲットをCuからNiに、カソード電圧を500 Vに変更した以外は、実施例9と同じ条件で、金属(Ni)層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリングを作製した。
実施例12
スパッタリングのターゲットをNiからCoに変更した以外は、実施例11と同じ条件で、金属(Co)層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリング
実施例8〜12までのイオンプレーティング条件及びスパッタリング条件を表3及び表4に示す。
Figure 0006498986
Crカソードのアーク電流は全て150 A、CrN成膜の雰囲気ガスはN2ガス4.5 Pa、CrCN層成膜の雰囲気ガスはN2ガス0.87 Pa、Arガス0.09 Pa、CH4ガス0.54 Paで、合計1.5 Paである。
Figure 0006498986
実施例1〜12の金属層含有CrN層硬質皮膜被覆ピストンリングは、次の各種測定に供した。
[1] 膜厚測定
膜厚測定は、被覆面に垂直な鏡面研磨したピストンリング断面について、走査電子顕微鏡(SEM)による写真から、硬質皮膜の基材面(中間層が存在する場合は中間層と皮膜の界面)から表面までの長さを測定し、試料の膜厚とした。例えば、実施例1の膜厚は29.8μmであり、また、高倍率で観察したCu金属層の厚さは0.15μm(150 nm)と0.14μm(140 nm)であった。
[2] X線回折測定
X線回折強度は、鏡面研磨した被覆面に平行な表面について、管電圧40 kV、管電流30 mAのCu-Kα線を使用して2θ=35〜70°の範囲で測定した。例えば、実施例1の金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜のX線回折パターンは、CrN(200)面で最大ピーク強度を示し、続いてCrN(111)面、CrN(220)面と続き、僅かであったがCu(111)面の回折ピークも検出された。また、CrN型窒化クロムをCrN/CrCN積層皮膜とした実施例8〜12については、CrN(200)面のピークから、次のScherrerの式を用いて結晶子サイズDhklも算出した。
Dhkl=Kλ/βcosθ…………………………………………………………………(1)
ここで、KはScherrerの定数で0.94、λはX線の波長(Cu:1.5406Å)、βは半値全幅(FWHM)、θはBragg角である。例えば、実施例8のCrN層の結晶子サイズは32.4 nmとなる。
[3] 炭素濃度測定
CrN層中にCを固溶したCrCN層を含む実施例4〜12について、皮膜断面をEPMA(JEOL, JXA-8600S)にて炭素濃度の定量分析を行った。例えば、実施例4の炭素濃度は6.1%であった。
[4] 硬度測定
硬度測定は、鏡面研磨した被覆面に平行な表面について、マイクロビッカース硬度計を使用し、試験力0.9807 Nで行った。例えば、実施例1の金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜の硬度は1203 HV0.1であった。
[5] 残留応力測定
皮膜の残留応力σは、次のStoneyの式により算出した。
σ=−{Es(1-νs)hs 2}/6hfΔR …………………………………………………(2)
ここで、Esは基材のヤング率(N/mm2)、νsは基材のポアソン比、hsは基材の厚さ、hfは皮膜厚さ、ΔRは曲率変化量である。なお、Es及びνsは、それぞれ、200,000 N/mm2及び0.3とした。実施例1の金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜の残留応力は-1056 MPa(圧縮で1056 MPa)であった。
[6] 転動すべり疲労試験
実機試験での皮膜脱落を再現可能とする評価として、転動すべり疲労試験を行った。図5に試験機の概略を示すが、転動すべり疲労試験では、回転するドラム(21)と摺動する試験片(20)に、繰り返し荷重が加えられ、比較的短時間で皮膜の脱落が再現される。皮膜の脱落は、同一潤滑条件下においては、摩擦係数と荷重(最大ヘルツ応力)と繰り返し回数に依存する。試験条件は、次のとおりである。
試験片:金属層含有CrN型窒化クロム硬質皮膜被覆ピストンリング切断片、
荷重:98〜196 N、サインカーブ 50 Hz、
相手材(ドラム):直径80 mmのSUJ2材、
摺動速度:正転逆転パターン運転(±2 m/秒)、速度±2 m/秒で10秒保持、
加速度0.08 m/秒2
潤滑剤:純水、4 cc/min、
温度:ドラム表面温度80℃、
試験時間:1時間。
なお、試験結果は、皮膜脱落の有無で判定した。例えば、実施例1の転動すべり疲労試験の結果は、皮膜脱落が無かった。
実施例1〜12の上記測定結果は、金属M層1層の厚さや層数、CrN型窒化クロム層の膜厚やCrN/CrCN積層皮膜層の場合の積層単位厚さ等、膜厚については表5、X線回折測定に基づく結晶相、最大ピーク面、CrN結晶子サイズ、積層単位厚さの結晶子サイズに対する比(T/S)、及びEPMAによる炭素濃度等の皮膜構造については表6、皮膜硬度、残留応力、転動すべり疲労試験結果の被膜特性については表7に示す。
Figure 0006498986
** 実施例3〜10の金属M層1層の厚さは、実施例1の測定値から成膜時間に基づき
推定した値である。
Figure 0006498986
*** T/Sは(積層単位厚さ/CrNの結晶子サイズ)を示す。
Figure 0006498986
実施例1〜12において、CrN型窒化クロム層は、CrN層(実施例1〜3)、CrCN層(実施例4〜6)、CrN及びCrCN層(実施例7)、及びCrN/CrCN積層皮膜層(実施例8〜12)が選択され、金属M層は、Cu層(実施例1〜10)、Ni層(実施例11)及びCo層(実施例12)が選択されている。金属M層の厚さは成膜時間を変えて29〜145 nmの範囲で2〜59層を含む構成であり、硬質皮膜としての皮膜全体の厚さは27.8〜35.8μmであった。CrN/CrCN積層皮膜の積層単位厚さは、硬質皮膜全体の厚さから金属層を差し引いたCrN/CrCN積層皮膜の厚さから、積層単位繰り返し数と層数の積で除して求め、64.7〜82.6 nmであった。
皮膜構造は、全ての実施例でCrN相が同定され、CrN(200)面で最大ピークが得られた。すなわち、CrCN層はX線回折チャート上ではCrN層と区別できなかった。金属M層は、実施例1〜10ではCu、実施例11ではNi、実施例12ではCoが同定された。CrN/CrCN積層皮膜を有する実施例8〜12についての、CrN(200)のピークを用いて結晶子サイズを測定した結果は、27.6〜35.4 nmであった。なお、上記積層単位厚さのCrNの結晶子サイズに対する比(T/S)は、2.1〜2.9の間にあった。
また、CrN型窒化クロム層がCrCN層で構成される実施例4〜6の皮膜の炭素濃度は、6.1〜6.4質量%、CrN層とCrCN層の両方で構成される実施例7〜12の皮膜の炭素濃度は、2.6〜2.8質量%であった。なお、CrN/CrCN積層膜におけるCrN層とCrCN層の厚さの比は、ほぼ1:1であった。
皮膜硬度は、1186 HV0.1〜1342 HV0.1、残留応力は-1024〜-1249 MPa(負の記号は圧縮を示す)であった。また、転動すべり疲労試験の結果としては、いずれの実施例も、微少脱落も表面クラックも生じなかった。
比較例1
比較例として、CrNを被覆した市販のピストンリングを用いて、膜厚測定、X線回折測定、硬度測定、残留応力測定、転動すべり疲労試験を行った。その結果を表6に示す。比較例1は耐欠け性に優れると言われている比較的気孔率の高い皮膜で、皮膜硬度がHv 925と低く、厳しい条件の転動すべり疲労試験において皮膜脱落が観察された。
Figure 0006498986
1 基材
2 CrN型窒化クロム層
3 金属層(M)
4 CrN/CrCN積層皮膜層
5 金属中間層(Cr)
6 CrN層
7 CrCN層
8 金属層(M)
10 真空容器
11 プロセスガス導入口
12 プロセスガス排出口
13, 14 金属Crカソード
15, 16 金属Mカソード
17 回転テーブル
18 被処理物(ピストンリングを重ねたもの)
19 ヒーター
20 試験片
21 ドラム

Claims (11)

  1. 外周摺動面に硬質皮膜が被覆されたピストンリングであって、前記硬質皮膜がCrN型の窒化クロム層と少なくとも1種の金属Mからなる少なくとも1層の金属層を含み、前記金属Mの窒化物の標準生成自由エネルギーΔGM-NとCrNの標準生成自由エネルギーΔGCrNがΔGM-N>ΔGCrNの関係を満たし、前記外周摺動面の最表面がCrN型窒化クロム相と金属M相からなる複合組織を有することを特徴とするピストンリング。
  2. 請求項1に記載のピストンリングにおいて、前記金属MがCo、Ni及びCuから選択された少なくとも1種であることを特徴とするピストンリング。
  3. 請求項1又は2に記載のピストンリングにおいて、前記金属層の厚さが10〜1000 nmであることを特徴とするピストンリング。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記CrN型の窒化クロム層がCrN層及びCrN層にCを固溶したCrCN層の少なくとも一を含むことを特徴とするピストンリング。
  5. 請求項4に記載のピストンリングにおいて、前記CrCN層の炭素濃度が2〜8質量%であることを特徴とするピストンリング。
  6. 請求項4又は5に記載のピストンリングにおいて、前記CrN型の窒化クロム層が前記CrN層と前記CrCN層の交互に積層したCrN/CrCN積層皮膜を含むことを特徴とするピストンリング。
  7. 請求項6に記載のピストンリングにおいて、前記CrN/CrCN積層皮膜の前記CrN層1層と前記CrCN層1層からなる積層単位厚さが30〜100 nmであって、前記CrN/CrCN積層皮膜のX線回折データから得られるCrNの結晶子サイズの2〜6倍の範囲内にあることを特徴とするピストンリング。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記硬質皮膜の被覆面のX線回折強度が、CrN(200)面で最大となることを特徴とするピストンリング
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記外周摺動面の前記最表面の前記CrN型窒化クロム相がCrN相とCrNにCを固溶したCrCN相からなることを特徴とするピストンリング。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記硬質皮膜の硬度が1000 HV0.1以上であることを特徴とするピストンリング。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のピストンリングにおいて、前記硬質皮膜の残留応力が-500 MPa〜-1500 MPaであることを特徴とするピストンリング。
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