JP2015226109A - 伝送モード変換装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】伝送損失の低減を図ることができる伝送モード変換装置を提供する。【解決手段】中空方形状の導波管2と、平面回路からなる伝送線路3と、伝送線路3と導波管2との間で伝送モードの変換を行うモード変換器4と、モード変換器4と導波管2との間で伝送信号を伝搬させる導波路5と、を備え、導波路5は、伝送信号の伝搬方向に並んで形成された少なくとも1対以上のスロット11a,11bを有し、導波管2は、スロット11a,11bと対向する位置に開口部12aを有して、導波路5と接続されている。【選択図】図1

Description

本発明は、伝送モード変換装置に関する。
近年、ミリ波帯を利用した数Gbpsの高速大容量通信が提案され、その一部が実現されつつある。特に、60GHz帯で動作する無線通信機器は、より重要性を増している。国内においては、59〜66GHzの広い周波数帯域が無免許で利用可能であることから、この周波数帯の民生分野への普及が期待されており、安価で小型のミリ波通信モジュールの実現が急務となっている。
ミリ波帯を利用した通信モジュールでは、中空方形状の導波管と、平面回路からなる伝送線路(マイクロストリップ線路やコプレーナ線路等)との間で伝送モードの変換を行うための伝送モード変換装置(導波管伝送線路変換器)が必要とされる。このため、上述した中空方形状の導波管と平面回路からなる伝送線路とを接続するための様々な接続構造が提案されている(例えば、特許文献1〜4及び非特許文献1を参照。)。
また、基板加工技術に基づく導波路形成技術として、ポスト壁導波路(PWW:Post−wall Waveguide)が知られている(例えば、特許文献5を参照。)。ポスト壁導波路は、誘電体基板の両面に対向した状態で形成された一対の導体層と、誘電体基板を貫通する複数の導体ポストにより一対の導体層の間を接続し、これら複数の導体ポストを互いに平行に並べることによって形成された一対のポスト壁とから方形状の導波路を構成したものである。すなわち、このポスト壁導波路は、従来の中空方形状の導波管が備える一対の広壁と一対の狭壁とを、それぞれ一対の導体層と一対のポスト壁とに置き換えたものと解釈できる。
特開2011−61290号公報 特開平6−140815号公報 特許第2928154号公報 特許第4453696号公報 特許第3672241号公報
榊原久二男、"多層基板を用いたミリ波帯平面アンテナに関する研究"、[online]、電気通信普及財団、研究調査報告書No.23(2008年)、286−296頁、インターネット<URL:http://www.taf.or.jp/publication/kjosei_23/index−1/page/p286.pdf>
しかしながら、従来の伝送モード変換装置は、構造が複雑であり、なお且つ、マイクロストリップ線路等の平面回路と導波管とが直交する(すなわち伝送信号の伝搬方向が直交する)ように導波管と伝送線路とを接続しなければならないという制約があった。また、伝送線路と導波管との間で伝送信号を変換するとき、一般的な変換損失が1dB程度と大きいという問題があった。
本発明の一つの態様は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、伝送損失の低減を図ることができる伝送モード変換装置を提供することを目的の一つとする。
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様に係る伝送モード変換装置は、中空方形状の導波管と、平面回路からなる伝送線路と、前記伝送線路と前記導波管との間に設けられたモード変換器と、前記モード変換器と前記導波管との間に設けられた導波路と、を備える。前記導波路は、伝送信号の伝搬方向に並んで形成された少なくとも1対以上のスロットと、を有する。前記導波管は、前記スロットと対向する位置に開口部を有して、前記導波路と接続されている。
また、本発明の一つの態様に係る別の伝送モード変換装置は、中空方形状の導波管と、前記導波管と接続された導波路と、を備える。前記導波路は、伝送信号の伝搬方向に並んで形成された少なくとも1対以上のスロットを有する。前記導波管は、前記スロットと対向する位置に開口部を有して、前記導波路と接続されている。
また、前記伝送モード変換装置において、前記導波路は、誘電体基板の両面に互いに対向した状態で形成された第1の導体層及び第2の導体層と、前記誘電体基板を貫通する複数の導体ポストにより前記第1の導体層と前記第2の導体層との間を接続し、これら複数の導体ポストを並べることによって形成されたポスト壁と、を有するポスト壁導波路であり、前記スロットは、前記第1の導体層と前記第2の導体層とのうち、前記導波管と接続される側の導体層に形成されている構成であってもよい。
また、前記伝送モード変換装置において、前記スロットは、前記導波路内を伝搬する伝送信号の伝搬方向に2対並んで設けられている構成であってもよい。
また、前記伝送モード変換装置において、前記2対並んで設けられたスロット間の距離が、前記導波管内を伝搬する伝送信号の波長の1/2である構成であってもよい。
また、前記伝送モード変換装置において、前記開口部は、前記導波管の前記導波路と平面視で重なる領域に開口しており、前記開口部の前記モード変換器側の端部から前記モード変換器に最も近い側のスロットに至るまでの距離が、前記導波管内を伝搬する伝送信号の波長の1/3以上1/2以下であり、前記開口部の前記モード変換器とは反対側の端部から前記モード変換器に最も遠い側のスロットに至るまでの距離が、前記導波路内を伝搬する伝送信号の波長の1/15以上である構成であってもよい。
また、前記伝送モード変換装置において、前記ポスト壁導波路は、前記ポスト壁で囲まれた導波路構造の内側に、少なくとも1つ以上の導体ポストを有する構成であってもよい。
また、前記伝送モード変換装置において、前記伝送線路は、前記導波管と接続される側の導体層の面上に誘電体層を介して設けられ、前記モード変換器は、前記伝送線路の一端側と接続された導体ピンを有し、前記導体ピンは、前記導体層とは非接触な状態で、前記ポスト壁で囲まれた導波路構造の内側に向かって突出して設けられている構成であってもよい。
また、前記伝送モード変換装置は、前記誘電体層の面上に、前記伝送線路の他端側と接続された信号パッドと、前記誘電体層を貫通するビアを介して前記第2の導体層と接続された一対の接地パッドとを有する構成であってもよい。
また、前記伝送モード変換装置において、前記ポスト壁導波路は、前記モード変換器側から前記導波管側に向かって、複数の導体ポストが第1の幅で互いに平行に並ぶ一対の第1のポスト壁と、複数の導体ポストが前記第1の幅よりも大きい第2の幅で互いに平行に並ぶ一対の第2のポスト壁とが順次並んで配置されると共に、前記一対の第1のポスト壁の前記モード変換器側の端部の間に複数の導体ポストが並ぶ第3のポスト壁と、前記一対の第1のポスト壁の前記導波管側の端部と前記一対の第2のポスト壁の前記モード変換器側の端部との間に複数の導体ポストが並ぶ一対の第4のポスト壁と、前記一対の第2のポスト壁の前記導波管側の端部の間に複数の導体ポストが並ぶ第5のポスト壁とが配置された導波路構造を有している構成であってもよい。
また、前記伝送モード変換装置において、前記モード変換器は、前記一対の第1のポスト壁と前記第3のポスト壁とで囲まれる領域に配置され、前記スロットは、前記一対の第2のポスト壁と前記一対の第4のポスト壁と前記第5のポスト壁とで囲まれる領域に配置されている構成であってもよい。
また、前記伝送モード変換装置は、前記誘電体基板の前記伝送線路が設けられた側の面上に実装されると共に、前記伝送線路と電気的に接続された半導体素子を備える構成であってもよい。
また、前記伝送モード変換装置は、前記導波路に対して前記導波管を固定する固定機構を備える構成であってもよい。
以上のように、本発明の一つの態様によれば、伝送損失の低減を図ることができる伝送モード変換装置を提供することが可能である。
本発明の一実施形態に係る伝送モード変換装置の透視斜視図である。 図1に示す伝送モード変換装置の透視平面図である。 図1に示す伝送モード変換装置の断面図である。 図1に示す伝送モード変換装置で伝送される信号の強度分布を示す模式図である。 図1に示す伝送モード変換装置の要部を拡大して示す透視斜視図である。 図1に示す伝送モード変換装置において、ポスト壁導波路基板の上に半導体素子が実装された状態を示す断面図である。 固定機構を備えた伝送モード変換装置を示す透視斜視図である。 図7に示す固定機構を備えた伝送モード変換装置を示す断面図である。 本発明の別の実施形態に係る平面アンテナ装置の透視斜視図である。 図9に示す平面アンテナ装置のスロットから放出される電波の強度分布を示す模式図である。 実施例1の伝送モード変換装置を構成する導波管における各部の寸法を示す平面図である。 実施例1の伝送モード変換装置を構成するポスト壁導波路基板における各部の寸法を示す平面図である。 実施例1の伝送モード変換装置について周波数の変化に対する反射係数をシミュレーションにより計算した結果を示すグラフである。 実施例1の伝送モード変換装置について周波数の変化に対する透過係数をシミュレーションにより計算した結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の全ての図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
(伝送モード変換装置)
先ず、本発明の一実施形態として図1、図2及び図3示す伝送モード変換装置(導波管伝送線路変換器)1について説明する。なお、図1は、伝送モード変換装置1の透視斜視図である。図2は、伝送モード変換装置1の透視平面図である。図3は、伝送モード変換装置1の断面図である。また、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。具体的には、各図中における伝送モード変換装置1の長さ方向(前後方向)をX軸方向とし、各図中における伝送モード変換装置1の幅方向(左右方向)をY軸方向とし、各図中における伝送モード変換装置1の高さ方向(上下方向)をZ軸方向とする。
伝送モード変換装置1は、図1,図2及び図3に示すように、中空方形状の導波管2と、平面回路からなる伝送線路3と、伝送線路3と導波管2との間に設けられたモード変換器4と、モード変換器4と導波管2との間に設けられたポスト壁導波路5とを備えている。このうち、ポスト壁導波路5は、ポスト壁導波路基板5Aにより構成されている。また、伝送線路3及びモード変換器4は、ポスト壁導波路基板5Aと一体に形成されている。
具体的に、このポスト壁導波路基板5Aは、誘電体基板6の両面に互いに対向した状態で形成された第1の導体層7及び第2の導体層8と、誘電体基板6を貫通する複数の導体ポスト9により第1の導体層7と第2の導体層8との間を接続し、これら複数の導体ポスト9を並べることによって形成されたポスト壁10とを有している。ポスト壁導波路5は、広壁としての第1の導体層7及び第2の導体層8と、狭壁としてのポスト壁10とから方形状の導波路を構成している。なお、図示を省略するものの、第1の導体層7及び第2の導体層8は、接地(グランド)電位となるように外部と接続可能とされている。
誘電体基板6としては、例えば、樹脂、ガラス、セラミックス、又はこれらの複合体等の誘電体からなるものを用いることができるが、これらに必ずしも限定されるものではない。第1の導体層7及び第2の導体層8としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属、又はこれらの合金等の導電体からなるものを用いることができるが、これらに必ずしも限定されるものではない。導体ポスト9は、誘電体基板6を厚み方向(Z軸方向)に貫通する孔部(スルーホール)に例えば銅等の金属めっきを施すことによって形成することができる。また、ポスト壁導波路5は、プリント回路基板(PCB:Print Circuit Board)のような両面銅張積層板を加工して作製することもできる。
ポスト壁導波路5は、ポスト壁10で囲まれた導波路構造を有している。ポスト壁10は、このポスト壁導波路5の長さ方向(X軸方向)に平行な一対の第1のポスト壁10a,10a及び一対の第2のポスト壁10b,10bと、このポスト壁導波路5の幅方向(Y軸方向)に平行な第3のポスト壁10c、一対の第4のポスト壁10d,10d及び第5のポスト壁10eとを有して構成されている。
このうち、一対の第1のポスト壁10a,10aと一対の第2のポスト壁10b,10bとは、モード変換器4側から導波管2側に向かって、互いの幅方向の中心を一致させた状態で、この順で並んで配置されている。一対の第1のポスト壁10a,10aは、複数の導体ポスト9が第1の幅Wで互いに平行に並ぶことによって形成されている。一対の第2のポスト壁10b,10bは、複数の導体ポスト9が第1の幅Wよりも大きい第2の幅Wで互いに平行に並ぶことによって形成されている。
一方、第3のポスト壁10cと一対の第4のポスト壁10d,10dと第5のポスト壁10eとは、モード変換器4側から導波管2側に向かって、互いに平行な状態で、この順で並んで配置されている。第3のポスト壁10cは、一対の第1のポスト壁10a,10aのモード変換器4側の端部の間に複数の導体ポスト9が並ぶことによって形成されている。一対の第4のポスト壁10d,10dは、一対の第1のポスト壁10a,10aの導波管2側の端部と一対の第2のポスト壁10b,10bのモード変換器4側の端部との間に複数の導体ポスト9が並ぶことによって形成されている。第5のポスト壁10eは、一対の第2のポスト壁10b,10bの導波管2側の端部の間に複数の導体ポスト9が並ぶことによって形成されている。
なお、ポスト壁10を構成する各導体ポスト9の間隔については、高周波信号(伝送信号)がポスト壁導波路5の外部に漏洩しない間隔となるように設定されている。例えば、互いに隣接する導体ポスト9の間隔(中心間距離)については、導体ポスト9の直径の2倍以下とすることが望ましい。また、本実施形態の伝送モード変換装置1では、導波路として、上記ポスト壁導波路5からなるものに限らず、方形状の導波路の内側に誘電体を充填したものを用いてもよい。
第2の導体層8には、少なくとも1対(2つ)以上のスロット11a,11bが伝送信号の伝搬方向(−X軸方向)に並んで設けられている。各スロット11a,11bは、第2の導体層8の一部を除去することによって、一定の幅でポスト壁導波路5の幅方向(Y軸方向)に延在する矩形状の開口部を形成している。これらのスロット11a,11bは、一対の第2のポスト壁10b,10bと一対の第4のポスト壁10d,10dと第5のポスト壁10eとで囲まれる領域に配置されている。なお、本実施形態では、特性調整のため、2対(4つ)のスロット11a,11b,11a,11bが交互に並んで設けられた構成となっている。また、2対並んで設けられたスロット11a,11bとスロット11a,11bとの間の距離は、導波管2内を伝搬する伝送信号の管内波長の1/2程度となるように設定されている。
また、互いに一対を為すスロット11a,11bの間隔(中心間距離)は、ポスト壁導波路5内を伝搬する伝送信号の波長(以下、管内波長という。)の1/4程度であるため、一対のスロット11a,11b間の給電位相差はおよそ90°(正確には72°〜86°)に設定されている。これにより、一対のスロット11a,11bから放出された電波は、伝送信号の伝搬方向(−X軸方向)において互いに強調し合い、伝送信号の伝搬方向とは逆方向(X軸方向)において互いに打ち消し合うことで、いわゆるエンドファイアアレイとして、伝送信号の伝搬方向(−X軸方向)と同じ方向に向けて伝搬することになる。
ここで、伝送モード変換装置1において伝送される信号(電波)の強度分布を図4に示す。上述したエンドファイアアレイによる電波放射方向は、図1中の−X軸方向であるが、導波管2を構成する上部広壁2bのうち、スロット11bよりも−X軸方向側の上部広壁2bがリフレクタとして作用する。このため、本実施形態において、一対のスロット11a,11bからの電波放射方向は、−X軸方向よりも上方(+Z方向)側に傾いた状態(斜め上方)となる。したがって、一対のスロット11a,11bから放射された電波は、後述するポスト壁導波路5の上部広壁(第2の導体層8)上に接続された導波管2に対して斜め上方に向けて入射することになる。この場合、導波管2に入射した電波は、上方向(+Z軸方向)成分を持つため、導波管モード(TE10モード)を励起することが可能である。さらに、ポスト壁導波路基板5Aは、伝送線路3やモード変換器4などのTEM(Transverse Electromagnetic mode)線路を備えることで、後述する半導体素子17との接続が可能となり、結果として半導体素子17からの高周波信号(伝送信号)を導波管2へと導くことが可能となる。
また、導波管2の特性インピーダンスを伝送線路3の特性インピーダンスと整合させるため、ポスト壁導波路5は、ポスト壁10で囲まれた導波路構造の内側に、インピーダンス整合用の導体ポスト9aを少なくとも1つ以上配置した構成とすることも可能である。本実施形態では、モード変換器4に最も近い側のスロット11a付近において、2つの導体ポスト9aがポスト壁導波路5の幅方向に並んで配置されている。なお、インピーダンス整合用の導体ポスト9aは、必ずしも必要なものではなく、場合によって省略することも可能である。
導波管2は、上下一対の広壁2a,2bと、前後一対の狭壁2c,2d及び左右一対の狭壁2e,2fとを有して、全体として方形筒状に形成されている。導波管2の幅は、ポスト壁導波路基板5A(誘電体基板6)の幅と一致している。導波管2は、ポスト壁導波路5の第2の導体層8側の面上に設けられている。また、導波管2は、ポスト壁導波路5の第2のポスト壁10b,10bが並ぶ間の領域と、第1のポスト壁10a,10aが並ぶ間の領域の一部とに亘って平面視で重なるように配置されている。
なお、導波管2については、上述した方形筒状のものに限らず、モード変換器4とは反対側において、導波管2の長さ方向(X軸方向)に対して例えば90°で曲げられたベンド構造とすることも可能である。
導波管2は、スロット11a,11bと対向する位置に開口部12aを有している。開口部12aは、上述した導波管2のポスト壁導波路5と平面視で重なる領域に矩形状に開口している。また、後方の狭壁2dには、電波を放射する矩形状の開口部12b(図7を参照。)が設けられている。
ここで、開口部12aのモード変換器4側の端部からモード変換器4に最も近い側のスロット11aに至るまでの距離Mは、導波管2の管内波長の1/3以上1/2以下であることが好ましい。距離Mが1/3未満になると、使用可能な周波数範囲が高周波側にシフトすると共に、反射損失が使用可能な周波数範囲内で大きくなる傾向にある。一方、距離Mが1/2を超えると、大部分の周波数範囲に亘って反射損失が大きくなる傾向にある。
また、開口部12aのモード変換器4とは反対側の端部からモード変換器4に最も遠い側のスロット11bに至るまでの距離Lは、ポスト壁導波路5の管内波長の1/15以上であることが好ましい。距離Lが1/15未満になると、反射損失が大きくなると共に、使用周波数範囲(帯域)が狭くなる傾向にある。なお、距離Lの下限値については特に規定しないものの、5GHz以上の周波数帯域を確保するためには、1/15以上の距離Lを確保することが望ましい。
伝送線路3は、例えば、マイクロストリップ線路(MSL:Micro-Strip Line)や、コンプレーナ線路(CPW:CoPlanar Waveguide)、ストリップ線路等の平面回路により構成されている。なお、本実施形態では、伝送線路3としてMSLが形成されているが、CPW等の他のTEM線路であってもよい。伝送線路3は、第2の導体層8の面上に誘電体層13を介して設けられている。また、伝送線路3は、上述したポスト壁導波路5の導波管2が重なる位置とは反対側に位置して、第3のポスト壁10cの上を跨ぐように配置されている。
モード変換器4は、伝送線路3の一端(先端)側と接続された導体ピン14を有している。導体ピン14は、ポスト壁10で囲まれた導波路構造の内側(下方)に向かって突出して設けられている。導体ピン14は、一対の第1のポスト壁10a,10aと第3のポスト壁10cとで囲まれる領域のうち、第3のポスト壁10c側の幅方向の中心に位置している。導体ピン14は、誘電体基板6の深さ方向(−Z軸方向)の中途部まで埋め込まれた下部導体14aと、誘電体層13を貫通する上部導体14bとを有して、全体として円柱状に形成されている。導体ピン14(上部導体14b)は、第2の導体層8に形成された孔部8aの内側を通ることによって、第2の導体層8とは誘電体層13を介して非接触とされている。
なお、導体ピン14としては、例えば銅、銀、金等の金属、又はこれらの合金等の導電体からなるものを用いることができるが、これらに必ずしも限定されるものではない。また、導体ピン14は、下部導体14aと上部導体14bとの2層構造に限らず、1層の導体により形成してもよい。また、導体ピン14は、円柱状に形成されたものに限らず、円筒状に形成されたものであってもよい。円筒状に形成された場合、その内側に誘電体が充填されていてもよい。
また、導体ピン14は、誘電体基板6を貫通していてもよい。導体ピン14が誘電体基板6を貫通する場合、第1の導体層7に形成された孔部(図示せず。)の内側を導体ピン14が通るようにする。これにより、導体ピン14と第1の導体層7との間を電気的に絶縁することができる。また、導体ピン14と第1の導体層7との間には、必要に応じて絶縁体を設けることも可能である。
伝送線路3の他端(基端)側には、図5に示すように、いわゆる接地−信号−接地(GSG)構造が設けられている。なお、図5は、伝送モード変換装置1の要部を拡大して示す透視斜視図である。GSG構造は、誘電体層13の面上に、信号パッド15と、一対の接地パッド16a,16bとを有している。信号パッド15は、伝送線路3の他端側の面上に形成されている。一対の接地パッド16a,16bは、信号パッド15を挟んだ幅方向の両側に位置している。一対の接地パッド16a,16bは、誘電体層13を貫通するビア16a,16bを介して第2の導体層8と接続されている。
伝送モード変換装置1は、図6に示すように、半導体素子17を備えている。なお、図6は、ポスト壁導波路基板5Aの上に半導体素子17が実装された状態を示す断面図である。半導体素子17は、例えば、高周波回路を構成する半導体集積回路(ICチップ)等からなる。半導体素子17は、誘電体基板6の第2の導体層8側の面上にフリップチップ実装されている。具体的に、誘電体層13の面上には、複数のパッド18が並んで設けられている。半導体素子17は、上述した信号パッド15、一対の接地パッド16a,16b及び、複数のパッド18の上に形成されたバンプ19を介して各パッド15,16a,16b,18と接続されている。これにより、半導体素子17は、伝送線路3と電気的に接続されると共に、この伝送線路3を介して高周波信号(伝送信号)を送受することが可能となっている。
なお、高周波信号としては、ミリ波を挙げることができるが、伝送信号として伝搬可能な信号であれば、例えばテラヘルツ波(サブミリ波)等の更に高い周波数を有する信号であってもよい。
以上のような構成を有する伝送モード変換装置1では、半導体素子17から伝送線路3を介してモード変換器4へと送られた高周波信号(伝送信号)がモード変換器4によりTEモードに変換された後、ポスト壁導波路5の内部を伝搬しながら、スロット11a,11bから開口部12aを通して導波管2の内側へと放射される。そして、導波管2に入射した電波は、導波管2の内部を伝搬することになる。
以上のように、本実施形態の伝送モード変換装置1では、中空方形状の導波管2と平面回路からなる伝送線路3とを、上述した接続構造により接続することによって、これら伝送線路3と導波管2との間で伝送モードの変換を行うときの伝送損失の低減を図ることが可能である。
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
具体的に、上記伝送モード変換装置1は、例えば図7及び図8に示すような固定機構20を備えた構成であってもよい。なお、図7は、固定機構20を備えた伝送モード変換装置1を示す透視斜視図である。図8は、固定機構20を備えた伝送モード変換装置1を示す断面図である。
固定機構20は、ポスト壁導波路5を形成するポスト壁導波路基板5A(誘電体基板6)に対して導波管2を固定するためのものであり、導波管2に設けられた一対のフランジ部2g,2hと、一対のフランジ部2g,2hと対向する支持板21と、一対のフランジ部2g,2hと支持板21との間でポスト壁導波路基板5Aを挟み込んだ状態でフランジ部2g,2hと支持板21とを固定する固定具22とを有している。
一対のフランジ部2g,2hは、一対の狭壁2c,2dのポスト壁導波路基板5Aと対向する側の端縁部(下端部)に沿った位置から幅方向(Y軸方向)に突出して設けられている。また、ポスト壁導波路基板5Aは、一対の第2のポスト壁10b,10bよりも外側に、一対のフランジ部2g,2hと支持板21との間で挟み込まれる一対の余白部分5B,5Bを有している。一対の余白部分5B,5Bは、一対のフランジ部2g,2hに一致した幅及び長さを有している。なお、上記図1及び図3に示すポスト壁導波路基板5Aでは、一対の余白部分5B,5Bの図示を省略している。支持板21は、ポスト壁導波路基板5Aに一致した幅及び長さを有して平行平板状に形成されている。
一対のフランジ部2g,2hと支持板21との間でポスト壁導波路基板5Aを挟み込んだ部分(固定部分という。)は、例えばリベットやネジ、ボルト及びナット等の固定具22を用いて固定される。本実施形態では、このような固定具22が固定部分の四隅に4つ配置されている。なお、固定具22の種類や配置、数等については、上述した構成に限らず、適宜変更して実施することが可能である。また、固定機構20についても、上述した構成に必ずしも限定されるものではなく、ポスト壁導波路基板5A(誘電体基板6)に対して導波管2を固定可能な構造であればよい。
(平面アンテナ装置)
次に、本発明の別の実施形態として、図9に示す平面アンテナ装置50について説明する。なお、図9は、平面アンテナ装置50の透視斜視図である。また、上記伝送モード変換装置1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
平面アンテナ装置50は、図9に示すように、一対のポスト壁導波路5a,5bが設けられたポスト壁導波路基板51を備えている。一対のポスト壁導波路5a,5bは、上記ポスト壁導波路5と同じ導波路構造を有し、ポスト壁導波路基板51の長さ方向(X軸方向)の中央部を挟んで対称に配置されている。すなわち、一対のポスト壁導波路5a,5bは、第5のポスト壁10eを省略し、一対の第1のポスト壁10a,10aを互いに一致させた状態で互いに逆向きに接続した導波路構造を有している。
また、平面アンテナ装置50は、上記伝送モード変換装置1の構成のうち、伝送線路3及び半導体素子17を含むGSG構造を省略した構成となっている。さらに、平面アンテナ装置50は、一方のポスト壁導波路5aの上部広壁(第2の導体層8)上にのみ導波管2が配置された構成となっている。逆に、他方のポスト壁導波路5bの上部広壁(第2の導体層8)上には、導波管2が配置されておらず、スロット11a,11bが外部に露出している。
以上のような構成を有する平面アンテナ装置50について、スロット11a,11bから放出される電波の強度分布(電界ベクトル)を図10に示す。本実施形態の平面アンテナ装置50では、ポスト壁導波路5の第1の導体層7に設けられた一対のスロット11a,11bが、いわゆるエンドファイアアレイとして機能する。すなわち、一対のスロット11a,11bの間隔(中心間距離)は、ポスト壁導波路5内を伝搬する伝送信号の波長(以下、管内波長という。)の1/4程度であるため、一対のスロット11a,11b間の給電位相差はおよそ90°である。スロット11a,11bの長さ(以下、スロット長という。)は、少なくとも管内波長の1/2以上であることが望ましい。また、スロット長が給電側から遠ざかるほど短くなる構成としてもよい。
エンドファイアアレイによる電波放射方向は、図9中の−X軸方向であるが、ポスト壁導波路5bを構成する上部広壁(第2の導体層8)がリフレクタとして作用する。このため、本実施形態において、一対のスロット11a,11bからの電波放射方向は、−X軸方向よりも上方(+Z方向)側に傾いた状態(斜め上方)となる。したがって、スロット11a,11bから放射された電波は、空間に対して斜め上方に向けて放射されることになる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例1)
実施例1において、上記伝送モード変換装置1を構成する導波管2の各部の寸法を図11に示し、ポスト壁導波路基板5Aの各部の寸法を図12に示す。実施例1では、導波管2としてWR−15(内側寸法が広壁側で3.76mm、狭壁側で1.88mmの方形導波管)を用い、ポスト壁導波路5の誘電体基板6として厚さ0.85mm、幅3.76mmの石英を用いた。なお、図11に示す導波管2には、円形状のフランジ部が図示されているが、上記伝送モード変換装置1の構成に特に影響を与えるものではない。
そして、実施例1の伝送モード変換装置1について、周波数[GHz]の変化に対する反射係数(S11)[dB]をシミュレーションにより計算した結果を図13に示す。また、周波数[GHz]の変化に対する透過係数(S21)[dB]をシミュレーションにより計算した結果を図14に示す。
図13に示すシミュレーション結果から、9GHz程度の広い帯域に亘って、−10dBより小さい反射損失が実現できることがわかった。一方、図14に示すシミュレーション結果から、9GHz程度の広い帯域に亘って、−1dBより小さい透過損失が実現できることがわかった。さらに、図14に示す周波数の範囲のうち、多くの範囲で−0.5dBより小さい透過損失が実現された。これは、伝送線路と導波管との間で伝送信号を変換するときの変換損失が従来よりも小さいことを示している。
1…伝送モード変換装置 2…導波管 3…伝送線路 4…モード変換器 5,5a,5b…ポスト壁導波路(導波路) 5A…ポスト壁導波路基板 5B…余白部分 6…誘電体基板 7…第1の導体層 8…第2の導体層 9…導体ポスト 10…ポスト壁 10a…第1のポスト壁 10b…第2のポスト壁 10c…第3のポスト壁 10d…第4のポスト壁 10e…第5のポスト壁 11a,11b…スロット 12a…開口部 13…誘電体層 14…導体ピン 15a…信号パッド 15b,15c…接地パッド 15…パッド 16a,16b…ビア 17…半導体素子 18…パッド 19…バンプ 20…固定機構 21…支持板 22…固定具 50…平面アンテナ装置 51…ポスト壁導波路基板

Claims (13)

  1. 中空方形状の導波管と、
    平面回路からなる伝送線路と、
    前記伝送線路と前記導波管との間に設けられたモード変換器と、
    前記モード変換器と前記導波管との間に設けられた導波路と、を備え、
    前記導波路は、伝送信号の伝搬方向に並んで形成された少なくとも1対以上のスロットと、を有し、
    前記導波管は、前記スロットと対向する位置に開口部を有して、前記導波路と接続されていることを特徴とする伝送モード変換装置。
  2. 中空方形状の導波管と、
    前記導波管と接続された導波路と、を備え、
    前記導波路は、伝送信号の伝搬方向に並んで形成された少なくとも1対以上のスロットを有し、
    前記導波管は、前記スロットと対向する位置に開口部を有して、前記導波路と接続されていることを特徴とする伝送モード変換装置。
  3. 前記導波路は、誘電体基板の両面に互いに対向した状態で形成された第1の導体層及び第2の導体層と、前記誘電体基板を貫通する複数の導体ポストにより前記第1の導体層と前記第2の導体層との間を接続し、これら複数の導体ポストを並べることによって形成されたポスト壁と、を有するポスト壁導波路であり、
    前記スロットは、前記第1の導体層と前記第2の導体層とのうち、前記導波管と接続される側の導体層に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の伝送モード変換装置。
  4. 前記スロットは、前記導波路内を伝搬する伝送信号の伝搬方向に2対並んで設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の伝送モード変換装置。
  5. 前記2対並んで設けられたスロット間の距離が、前記導波管内を伝搬する伝送信号の波長の1/2であることを特徴とする請求項4に記載の伝送モード変換装置。
  6. 前記開口部は、前記導波管の前記導波路と平面視で重なる領域に開口しており、
    前記開口部の前記モード変換器側の端部から前記モード変換器に最も近い側のスロットに至るまでの距離が、前記導波管内を伝搬する伝送信号の波長の1/3以上1/2以下であり、
    前記開口部の前記モード変換器とは反対側の端部から前記モード変換器に最も遠い側のスロットに至るまでの距離が、前記導波路内を伝搬する伝送信号の波長の1/15以上であることを特徴とする請求項1に記載の伝送モード変換装置。
  7. 前記ポスト壁導波路は、前記ポスト壁で囲まれた導波路構造の内側に、少なくとも1つ以上の導体ポストを有することを特徴とする請求項3に記載の伝送モード変換装置。
  8. 前記伝送線路は、前記導波管と接続される側の導体層の面上に誘電体層を介して設けられ、
    前記モード変換器は、前記伝送線路の一端側と接続された導体ピンを有し、
    前記導体ピンは、前記導体層とは非接触な状態で、前記ポスト壁で囲まれた導波路構造の内側に向かって突出して設けられていることを特徴とする請求項3又は7に記載の伝送モード変換装置。
  9. 前記誘電体層の面上に、前記伝送線路の他端側と接続された信号パッドと、前記誘電体層を貫通するビアを介して前記第2の導体層と接続された一対の接地パッドとを有することを特徴とする請求項8に記載の伝送モード変換装置。
  10. 前記ポスト壁導波路は、前記モード変換器側から前記導波管側に向かって、複数の導体ポストが第1の幅で互いに平行に並ぶ一対の第1のポスト壁と、複数の導体ポストが前記第1の幅よりも大きい第2の幅で互いに平行に並ぶ一対の第2のポスト壁とが順次並んで配置されると共に、前記一対の第1のポスト壁の前記モード変換器側の端部の間に複数の導体ポストが並ぶ第3のポスト壁と、前記一対の第1のポスト壁の前記導波管側の端部と前記一対の第2のポスト壁の前記モード変換器側の端部との間に複数の導体ポストが並ぶ一対の第4のポスト壁と、前記一対の第2のポスト壁の前記導波管側の端部の間に複数の導体ポストが並ぶ第5のポスト壁とが配置された導波路構造を有していることを特徴とする請求項3,7〜9の何れか一項に記載の伝送モード変換装置。
  11. 前記モード変換器は、前記一対の第1のポスト壁と前記第3のポスト壁とで囲まれる領域に配置され、
    前記スロットは、前記一対の第2のポスト壁と前記一対の第4のポスト壁と前記第5のポスト壁とで囲まれる領域に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の伝送モード変換装置。
  12. 前記誘電体基板の前記伝送線路が設けられた側の面上に実装されると共に、前記伝送線路と電気的に接続された半導体素子を備えることを特徴とする請求項3,7〜11の何れか一項に記載の伝送モード変換装置。
  13. 前記導波路に対して前記導波管を固定する固定機構を備えることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の伝送モード変換装置。
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