次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示のダンパ装置10を含む発進装置1を示す概略構成図であり、図2は、ダンパ装置10を示す断面図である。これらの図面に示す発進装置1は、原動機としてのエンジン(内燃機関)を備えた車両(例えば、前輪駆動車両)に搭載されるものであり、ダンパ装置10に加えて、エンジンのクランクシャフトに連結される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ装置10に連結されると共に自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機の入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、多板油圧式クラッチであるロックアップクラッチ8、ダンパ装置10に連結されるダイナミックダンパ20等を含む。
ポンプインペラ4は、フロントカバー3に密に固定される図示しないポンプシェルと、ポンプシェルの内面に配設された複数のポンプブレード(図示省略)とを有する。タービンランナ5は、図2に示すように、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。本実施形態において、タービンランナ5のタービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6(図1参照)が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレードを有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ60により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ60を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
ロックアップクラッチ8は、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7すなわち変速機の入力軸ISとを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除するものである。ロックアップクラッチ8は、フロントカバー3に固定された図示しないセンターピースにより軸方向に移動自在に支持されるロックアップピストン80と、クラッチドラム81と、ロックアップピストン80と対向するようにフロントカバー3の内面に固定される環状のクラッチハブ82と、クラッチドラム81の内周面に形成されたスプラインに嵌合される複数の第1摩擦係合プレート(両面に摩擦材を有する摩擦板)83と、クラッチハブ82の外周面に形成されたスプラインに嵌合される複数の第2摩擦係合プレート84(セパレータプレート)とを含む。
更に、ロックアップクラッチ8は、ロックアップピストン80を基準としてフロントカバー3とは反対側に位置するように、すなわちロックアップピストン80よりもダンパハブ7およびダンパ装置10側に位置するようにフロントカバー3のセンターピースに取り付けられる環状のフランジ部材(油室画成部材)85と、フロントカバー3とロックアップピストン80との間に配置される複数のリターンスプリング(図示省略)とを含む。ロックアップピストン80とフランジ部材85とは、図示しない係合油室を画成し、当該係合油室には、図示しない油圧制御装置から作動油(係合油圧)が供給される。そして、係合油室への係合油圧を高めることにより、第1および第2摩擦係合プレート83,84をフロントカバー3に向けて押圧するようにロックアップピストン80を軸方向に移動させ、それによりロックアップクラッチ8を係合(完全係合あるいはスリップ係合)させることができる。
ダンパ装置10は、図1および図2に示すように、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11、第1中間部材(中間要素)12、第2中間部材(中間要素)15およびドリブン部材(出力要素)16を含むと共に、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ダンパ装置10の外周に近接して配置される複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング(第1弾性体)SP1と、外側スプリングSP1よりも内側に配置されるそれぞれ複数かつ同数(本実施形態では、例えば3個ずつ)の第1内側スプリング(第3弾性体)SP21および第2内側スプリング(第2弾性体)SP22とを含む。
外側スプリングSP1並びに第1および第2内側スプリングSP21,SP22としては、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心を有するように巻かれた金属材からなるアークコイルスプリングや、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなるストレートコイルスプリングが採用される。また、本実施形態において、第1および第2内側スプリングSP21,SP22として、同一の諸元(剛性すなわちバネ定数等)を有するものが採用される。ただし、第1および第2内側スプリングSP21,SP22の諸元は、互いに異なっていてもよい。また、外側スプリングSP1や第1および第2内側スプリングSP21,SP22として、いわゆる親子バネが採用されてもよい。
ドライブ部材11は、上述のロックアップクラッチ8のクラッチドラム81と、当該クラッチドラム81に複数のリベットを介して連結される環状のドライブプレート91とにより構成され、フロントカバー3やポンプインペラ4のポンプシェルにより画成される流体伝動室9内の外周側領域に配置される。クラッチドラム81は、環状のスプリング支持部811と、図示しない複数(本実施形態では、例えば6個)のスプリング当接部(弾性体当接部)とを有する。スプリング支持部811は、複数の外側スプリングSP1の外周部やフロントカバー3側(エンジン側)の側部(図2における右側の側部)、タービンランナ5側(変速機側)の側部の外周側を支持(ガイド)する。クラッチドラム81の複数のスプリング当接部は、2個ずつ対をなして周方向に間隔をおいて並ぶように配設され、互いに対をなす2個のスプリング当接部は、外側スプリングSP1の自然長に応じた間隔をおいて対向する。
また、ドライブプレート91は、周方向に間隔をおいて並ぶ複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部911と、複数(本実施形態では、例えば6個)のスプリング当接部(弾性体当接部)913とを有する。複数のスプリング支持部911は、それぞれ対応する外側スプリングSP1のタービンランナ5側の側部を内周側から支持(ガイド)する。複数のスプリング当接部(弾性体当接部)913は、2個ずつ対をなして周方向に間隔をおいて並ぶように配設され、互いに対をなす2個のスプリング当接部913は、外側スプリングSP1の自然長に応じた間隔をおいて対向する。
クラッチドラム81およびドライブプレート91が互いに連結された際、複数の外側スプリングSP1は、クラッチドラム81のスプリング支持部811とドライブプレート91のスプリング支持部911とにより周方向に間隔をおいて支持され、ダンパ装置10の外周に近接するように流体伝動室9内の外周側領域に配設される。また、クラッチドラム81の各スプリング当接部は、ダンパ装置10の取付状態において、対応する外側スプリングSP1の端部と当接する。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、各外側スプリングSP1の両端部は、クラッチドラム81の互いに対をなす2個のスプリング当接部の対応する一方と当接する。更に、ドライブプレート91の各スプリング当接部913は、ダンパ装置10の取付状態において、対応する外側スプリングSP1の端部と当接する。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、各外側スプリングSP1の両端部は、ドライブプレート91の互いに対をなす2個のスプリング当接部913の対応する一方と当接する。
第1中間部材12は、タービンランナ5側に配置される環状の第1プレート部材13と、ダンパハブ7により回転自在に支持されてフロントカバー3側に配置されると共に複数のリベットを介して第1プレート部材13に連結(固定)される環状の第2プレート部材14とを含む。第1中間部材12を構成する第1プレート部材13は、周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部131と、周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶと共にそれぞれ対応するスプリング支持部131と第1プレート部材13の径方向において対向する複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部132と、複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング当接部(弾性体当接部)133とを有する。複数のスプリング支持部131は、それぞれ対応する第1および第2内側スプリングSP21,SP22(各1個)のタービンランナ5側の側部を外周側から支持(ガイド)する。複数のスプリング支持部132は、それぞれ対応する第1および第2内側スプリングSP21,SP22(各1個)のタービンランナ5側の側部を内周側から支持(ガイド)する。複数のスプリング当接部133は、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング支持部131,132の間に1個ずつ設けられる。
第1中間部材12を構成する第2プレート部材14は、周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部141と、周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶと共にそれぞれ対応するスプリング支持部141と第2プレート部材14の径方向において対向する複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部142と、複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング当接部(弾性体当接部)143iと、複数(本実施形態では、例えば6個)の第1外側スプリング当接部(弾性体当接部)143oと、径方向における内側スプリング当接部143iと第1外側スプリング当接部143oとの間で軸方向に延びる短尺の筒状部144とを有する。
複数のスプリング支持部141は、それぞれ対応する第1および第2内側スプリングSP21,SP22(各1個)のフロントカバー3側の側部を外周側から支持(ガイド)する。複数のスプリング支持部142は、それぞれ対応する第1および第2内側スプリングSP21,SP22(各1個)のフロントカバー3側の側部を内周側から支持(ガイド)する。複数の内側スプリング当接部143iは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング支持部141,142の間に1個ずつ設けられる。複数の第1外側スプリング当接部143oは、複数の内側スプリング当接部143iよりも径方向外側かつフロントカバー3側で2個ずつ対をなして周方向に間隔をおいて並ぶように配設され、互いに対をなす2個の第1外側スプリング当接部143oは、外側スプリングSP1の自然長に応じた間隔をおいて対向する。筒状部144(その外周面)は、ドライブ部材11を構成するドライブプレート91の内周面を支持する。これにより、ダンパハブ7により支持される第2プレート部材14(第1中間部材12)によってドライブ部材11を回転自在に支持(調心)することができる。
第2中間部材15は、環状の板体として構成されており、その内周部から径方向内側に延出されて周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング当接部(図示省略)を有する。図2に示すように、第2中間部材15は、第1プレート部材13と第2プレート部材14との間に配置され、ドライブ部材11を構成するドライブプレート91によって回転自在に支持(調心)される。すなわち、ドライブプレート91は、周方向に間隔をおいて並ぶと共にタービンランナ5に向けて軸方向に延びるように形成された複数のプレート支持部914を有しており、各プレート支持部914によって第2中間部材15の外周面が支持される。なお、本実施形態では、ドライブプレート91にフロントカバー3に向けて軸方向に延びるように複数の突出部915が形成されており、当該突出部915により第2プレート部材14の軸方向における移動が規制される。
第1および第2プレート部材13,14が互いに連結された際、第1プレート部材13の各スプリング支持部131は、第2プレート部材14の対応するスプリング支持部141と対向し、第1プレート部材13の各スプリング支持部132は、第2プレート部材14の対応するスプリング支持部142と対向する。そして、第1内側スプリングSP21および第2内側スプリングSP22は、第1中間部材12を構成する第1および第2プレート部材13,14により支持され、複数の外側スプリングSP1よりもタービンランナ5に近接する(径方向からみて部分的に重なる)ように当該複数の外側スプリングSP1の内側に周方向に間隔をおいて交互に配設される。
また、ダンパ装置10の取付状態において、第1中間部材12の第1プレート部材13の各スプリング当接部133と、第2プレート部材14の各内側スプリング当接部143iとは、互いに異なるスプリング支持部131,132,141,142によって支持された第1および第2内側スプリングSP21,SP22の間で両者の端部と当接する。更に、第2中間部材15の各スプリング当接部は、互いに同一のスプリング支持部131,132,141,142により支持されて互いに対をなす第1および第2内側スプリングSP21,SP22の間で両者の端部と当接する。
すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、各第1内側スプリングSP21の一端は、第1中間部材12の対応するスプリング当接部133,143iと当接し、各第1内側スプリングSP21の他端は、第2中間部材15の対応するスプリング当接部と当接する。また、ダンパ装置10の取付状態において、各第2内側スプリングSP22の一端は、第2中間部材15の対応するスプリング当接部と当接し、各第2内側スプリングSP22の他端は、第1中間部材12の対応するスプリング当接部133,143iと当接する。これにより、第2中間部材15のスプリング当接部を介して1組の第1および第2内側スプリングSP21,SP22が直列に連結されることから、外側スプリングSP1の内側に配置されるトルク伝達弾性体をより低剛性化することが可能となる。
更に、第1中間部材12の第2プレート部材14の各第1外側スプリング当接部143oは、図2に示すように、複数の内側スプリング当接部143iよりもフロントカバー3に近接し、ダンパ装置10の取付状態において、対応する外側スプリングSP1の端部と当接する。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、各外側スプリングSP1の両端部は、第2プレート部材14の互いに対をなす2個の第1外側スプリング当接部143oの対応する一方と当接する。
ドリブン部材16は、図2に示すように、第1中間部材12の第1プレート部材13と第2プレート部材14との間に配置されると共に複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。また、ドリブン部材16は、周方向に間隔をおいて形成されて径方向外側に延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング当接部(弾性体当接部)163を有する。ダンパ装置10の取付状態において、ドリブン部材16の各スプリング当接部163は、互いに異なるスプリング支持部131,132,141,142によって支持された第1および第2内側スプリングSP21,SP22の間で両者の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第2内側スプリングSP22の上記他端は、ドリブン部材16の対応するスプリング当接部163と当接する。この結果、ドリブン部材16は、複数の外側スプリングSP1、第1中間部材12、複数の第1内側スプリングSP21、第2中間部材15、および複数の第2内側スプリングSP22を介してドライブ部材11に連結される。
更に、ダンパ装置10は、ドライブ部材11とドリブン部材16との相対回転を規制する回転規制ストッパとして、ドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転を規制する第1要素間ストッパ17と、第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転を規制する第2要素間ストッパ18とを含む。本実施形態において、第1要素間ストッパ17は、ドライブ部材11を構成するクラッチドラム81とドライブプレート91とを連結する複数のリベットに装着されたカラーと、第1中間部材12の第2プレート部材14に形成された例えば円弧状の複数の開口部とにより構成される。ダンパ装置10の取付状態において、クラッチドラム81とドライブプレート91とを連結するリベットおよびカラーは、第2プレート部材14の対応する開口部内に当該開口部を画成する内壁面と当接しないように配置される。そして、ドライブ部材11と第1中間部材12とが相対回転するのに伴って上述の各カラーが対応する開口部の一方の内壁面と当接すると、ドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転および各外側スプリングSP1の捩れが規制されることになる。
第2要素間ストッパ18は、第1中間部材12の第2プレート部材14の内周部に形成された例えば円弧状の開口部(切欠部)146と、ドリブン部材16の内周部に形成された突起部(ダボ)166とにより構成される。本実施形態では、第2プレート部材14の内周部に開口部146が複数形成され、ドリブン部材16の内周部には、周方向に間隔をおいて開口部146と同数の突起部166が形成される。ダンパ装置10の取付状態において、ドリブン部材16の内周部に形成された突起部166は、第2プレート部材14の対応する開口部146内に当該開口部を画成する内壁面と当接しないように差し込まれる。そして、第1中間部材12とドリブン部材16とが相対回転するのに伴って各突起部166が対応する開口部146の一方の内壁面と当接すると、第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転並びに各第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れが規制されることになる。
これにより、第1要素間ストッパ17によりドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転および各外側スプリングSP1の捩れが規制され、かつ第2要素間ストッパ18により第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転並びに各第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れが規制されると、ドライブ部材11とドリブン部材16との相対回転が規制されることになる。なお、本実施形態において、第1要素間ストッパ17(ドライブ部材11、第1中間部材12および外側スプリングSP1の諸元)および第2要素間ストッパ18(第1中間部材12、ドリブン部材16、第1および第2内側スプリングSP21,SP22の諸元)は、ドライブ部材11への入力トルクの増加に伴って第1要素間ストッパ17によりドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転および各外側スプリングSP1の捩れが規制される前に、第2要素間ストッパ18により第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転並びに各第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れが規制されるように構成(設定)される。この結果、ダンパ装置10は、2段階の捩れ特性を有することになる。
ダイナミックダンパ20は、環状の質量体21と、当該質量体21とダンパ装置10の第1回転要素である第1中間部材12との間に配置されるストレートコイルスプリングまたはアークコイルスプリングである複数(本実施形態では、例えば3個)の吸振用スプリング(吸振用弾性体)SPdとを含む。ここで、「ダイナミックダンパ」は、振動体の共振周波数に一致する周波数(エンジン回転数)で当該振動体に逆位相の振動を付加して振動を減衰する機構であり、振動体(本実施形態では、第1中間部材12)に対してトルクの伝達経路に含まれないようにスプリング(弾性体)と質量体とを連結することにより構成される。すなわち、吸振用スプリングSPdの剛性と質量体21の重量(慣性モーメント)を調整することで、ダイナミックダンパ20により所望の周波数の振動を減衰することが可能となる。
ダイナミックダンパ20の質量体21は、図2に示すように、環状の本体210と、本体210から周方向に間隔をおいて軸方向に延出されると共に当該本体210の径方向に延びる爪部215aを有する複数(本実施形態では、例えば6個)のスプリング当接部(弾性体当接部)215とを含む。複数のスプリング当接部215は、2個(一対)ずつ対をなす(近接する)ように本体210(質量体21)の軸心に関して対称に形成され、互いに対をなす2個のスプリング当接部215は、吸振用スプリングSPdの自然長に応じた間隔をおいて対向する(図3参照)。なお、本体210を周方向に複数に分割して、質量体21を例えば吸振用スプリングSPごとに複数設けてもよい。
また、ダイナミックダンパ20の連結対象である第1中間部材12の第2プレート部材14は、複数(本実施形態では、例えば6個)の第2外側スプリング当接部(弾性体当接部)145を有する。複数の第2外側スプリング当接部145は、外側スプリングSP1を介すことなく互いに隣り合う第1外側スプリング当接部143oの間で、2個(一対)ずつ近接するように第2プレート部材14の軸心に関して対称に形成される。互いに対をなす2個の第2外側スプリング当接部145は、吸振用スプリングSPdの自然長に応じた間隔をおいて対向する。
更に、ドライブ部材11を構成するドライブプレート91は、それぞれ互いに隣り合うスプリング支持部911の間に当該ドライブプレート91の軸心に関して対称に形成された複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部916を有する。複数のスプリング支持部916は、それぞれ対応する吸振用スプリングSPdのタービンランナ5側の側部を内周側から支持(ガイド)する(図3参照)。ダイナミックダンパ20を構成する複数の吸振用スプリングSPdは、それぞれドライブ部材11すなわちクラッチドラム81のスプリング支持部811とドライブプレート91のスプリング支持部916とにより支持されて互いに隣り合う2個の外側スプリングSP1の間に1個ずつダンパ装置10の軸心に関して対称に配置される。
そして、各吸振用スプリングSPdは、外側スプリングSP1と周方向に並ぶと共に発進装置1やダンパ装置10の軸方向および周方向の双方において外側スプリングSP1とオーバーラップする。このように、ダイナミックダンパ20を構成する吸振用スプリングSPdを外側スプリングSP1と周方向に並ぶようにダンパ装置10の外周に近接して配置すれば、吸振用スプリングSPdを外側スプリングSP1や第1および第2内側スプリングSP21,SP22の径方向における外側または内側、あるいは径方向における外側スプリングSP1と第1および第2内側スプリングSP21,SP22との間に配置する場合に比べて、ダンパ装置10の外径の増加を抑制して装置全体をよりコンパクト化することができる。
また、本実施形態において、複数の外側スプリングSP1と複数の吸振用スプリングSPdとは、同一円周上に配列され、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各外側スプリングSP1の軸心との距離と、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各吸振用スプリングSPdの軸心との距離とが等しくなっている。これにより、ダンパ装置10の外径の増加をより良好に抑制することが可能となる。加えて、本実施形態において、各外側スプリングSP1と各吸振用スプリングSPdとは、それぞれの軸心が発進装置1やダンパ装置10の軸心と直交する同一の平面内に含まれるように配置される。これにより、ダンパ装置10の軸長の増加をも抑制することができる。ただし、ダンパ装置10の軸心と外側スプリングSP1の軸心との距離と、ダンパ装置10の軸心と吸振用スプリングSPdの軸心との距離とは、完全に一致している必要はなく、設計公差等により若干相違してもよい。同様に、外側スプリングSP1の軸心と吸振用スプリングSPdの軸心とは、完全に同一の平面内に含まれなくてもよく、設計公差等により軸方向に若干ズレてもよい。
更に、第1中間部材12の第2プレート部材14の各第2外側スプリング当接部145は、ダンパ装置10の取付状態において、当該ダンパ装置10の径方向に延在して対応する吸振用スプリングSPdの端部と当該端部の中央部付近で当接する。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、各吸振用スプリングSPdの両端部は、第2プレート部材14の互いに対をなす2個の第2外側スプリング当接部145の対応する一方と当接する。また、ダイナミックダンパ20の質量体21(本体210)は、第1中間部材12の第1プレート部材13の外周部により回転可能に支持され、タービンランナ5の外周部と外側スプリングSP1および吸振用スプリングSPdとの間でダンパ装置10の外周に近接するように流体伝動室9内の外周側領域に配置される。
質量体21の各スプリング当接部215は、タービンランナ5側からクラッチドラム81のスプリング支持部811内に差し込まれる。そして、各スプリング当接部215の爪部215aは、ダンパ装置10の取付状態において、当該ダンパ装置10の径方向に延在してドライブプレート91のスプリング当接部913と軸方向に(側方からみて)重なり合い、第1中間部材12の第2プレート部材14の第2外側スプリング当接部145と軸方向に並ぶと共に対応する吸振用スプリングSPdの端部と当該端部の中央部付近で当接する。すなわち、ダンパ装置10の取付状態において、各吸振用スプリングSPdの両端部は、質量体21の互いに対をなす2個のスプリング当接部215の対応する一方とも当接する。これにより、質量体21および吸振用スプリングSPd、すなわちダイナミックダンパ20は、ダンパ装置10の第1中間部材12に連結されることになる。なお、各スプリング当接部215(爪部215a)と吸振用スプリングSPdの端部との間には、図3に示すように、スプリングシートSsが配置されてもよい。
また、ダイナミックダンパ20には、質量体21と第1中間部材12の第1プレート部材13との相対回転を規制する第3要素間ストッパ22が設けられている。第3要素間ストッパ22は、質量体21の本体210の内周部にタービンランナ5に向けて軸方向に延びるように形成された突起部(ダボ)916と、第1プレート部材13の外周部に形成された例えば円弧状の切欠部136とにより構成される。本実施形態では、質量体21の本体210の内周部に突起部216が周方向に間隔をおいて複数形成され、第1プレート部材13の外周部には、周方向に間隔をおいて突起部216と同数の切欠部136が形成される。
ダンパ装置10の取付状態において、質量体21の各突起部216は、第1中間部材12の第1プレート部材13の対応する切欠部136内に当該切欠部136の内壁面と当接しないように差し込まれる。そして、第1プレート部材13と質量体21とが相対回転するのに伴って質量体21の各突起部216が対応する切欠部136の一方の内壁面と当接すると、第2プレート部材14(第1中間部材12)と質量体21との相対回転および各吸振用スプリングSPdの捩れが規制されることになる。本実施形態において、第3要素間ストッパ22(第1中間部材12、吸振用スプリングSPdおよび質量体21の諸元)は、各吸振用スプリングSPdが完全に収縮する前に第1プレート部材13(第1中間部材12)と質量体21との相対回転が規制されるように構成(設定)される。
そして、上述のようなダイナミックダンパ20を含むダンパ装置10では、ダイナミックダンパ20が連結されない回転要素であるドライブ部材11(第2回転要素)のドライブプレート91に、第1および第2要素間ストッパ17,18によりドライブ部材11とドリブン部材16との相対回転が規制される前に質量体21のスプリング当接部215(爪部215a)と当接するように付加当接部919が設けられる。すなわち、ドライブ部材11では、少なくとも、ダンパ装置10の取付状態において当該ドライブ部材11がエンジンからの動力により回転する際(駆動時)の回転方向(以下、「正転方向」という)における下流側(進行方向側)の外側スプリングSP1の端部と当接する複数(本実施形態では、3個)のスプリング当接部913が、強度面等から要求される周長よりも長い周長を有するように、正転方向下流側(進行方向側)に向けて周方向に延長されている。本実施形態では、このように周方向に延長されたスプリング当接部913の正転方向における下流側の端部が付加当接部919として用いられる。また、本実施形態において、付加当接部(919)の厚みは、図2に示すように、質量体21のスプリング当接部215すなわち爪部215aの厚みよりも小さく定められる。なお、図3に示すように、すべてのスプリング当接部913を強度面等から要求される周長よりも長い周長を有するように形成し、外側スプリングSP1とは当接しない側の端部を付加当接部919として用いてもよい。
ダンパ装置10の取付状態において、各付加当接部919は、質量体21の対応するスプリング当接部215の爪部215aと当接することはなく、ドライブ部材11が第1中間部材12に対して例えば上記正転方向に回転することで、質量体21の対応するスプリング当接部215の爪部215aに対して吸振用スプリングSPdの端部とは反対側から同径上で当接することになる。そして、本実施形態では、各付加当接部919が、第1要素間ストッパ17によりドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転および各外側スプリングSP1の捩れが規制される前であって、第2要素間ストッパ18により第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転並びに各第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れが規制されるのと同時に対応するスプリング当接部215の爪部215aと当接するように、上記2個のスプリング当接部913の周長(当該周長を規定するダンパ装置10の軸心周りの角度)が定められる。すなわち、各付加当接部919が質量体21の対応するスプリング当接部215の爪部215aと当接するまでのドライブ部材11の第1中間部材12に対する回転角度は、第1および第2要素間ストッパ17,18によって相対回転が規制されるまでのドライブ部材11のドリブン部材16に対する回転角度よりも小さい。
次に、上述のように構成される発進装置1の動作について説明する。
発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが解除されている際には、図1からわかるように、原動機としてのエンジンからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)が、ポンプインペラ4、タービンランナ5、ダンパハブ7という経路を介して変速機の入力軸ISへと伝達される。これに対して、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されると、図4に示すように、エンジンからのトルクが、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、外側スプリングSP1、第1中間部材12、第1内側スプリングSP21、第2中間部材15、第2内側スプリングSP22,ドリブン部材16、ダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。この際、フロントカバー3に入力されるトルクの変動は、主に直列に作用するダンパ装置10の外側スプリングSP1と、第1および第2内側スプリングSP21,SP22とにより減衰(吸収)される。従って、発進装置1では、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際に、フロントカバー3に入力されるトルクの変動をダンパ装置10により良好に減衰(吸収)することが可能となる。
更に、ロックアップの実行時に、エンジンの回転に伴って当該エンジンからのトルクにより第1中間部材12が回転すると、第1中間部材12の第2プレート部材14の第2外側スプリング当接部145の何れか(何れか2個)が対応する吸振用スプリングSPdの一端を押圧し、各吸振用スプリングSPdの他端が質量体21の対応する一対のスプリング当接部215の一方を押圧する。この結果、質量体21および複数の吸振用スプリングSPdを含むダイナミックダンパ20がダンパ装置10の第1中間部材12に連結されることになる。これにより、発進装置1では、ダイナミックダンパ20によっても、エンジンからの振動を減衰(吸収)すること、より詳しくは、振動のピークを2つに分けつつ全体の振動レベルを低下させることが可能となる。加えて、発進装置1では、ダンパ装置10のドリブン部材16にタービンランナ5が連結(固定)されていることから、ロックアップの実行時に、フロントカバー3と変速機の入力軸ISとの間におけるトルクの伝達に関与しないタービンランナ5が、いわゆるタービンダンパとし機能する。従って、ロックアップの実行時には、タービンランナ5により構成されるタービンダンパによりドリブン部材16の振動ひいてはダンパ装置10全体の振動を良好に吸収することが可能となる。
また、ダンパ装置10では、ロックアップの実行時にエンジンからフロントカバー3に伝達されるトルク、すなわちドライブ部材11への入力トルクの大きさに応じて、ドライブ部材11と第1中間部材12とが相対回転すると共に、第1中間部材12とドリブン部材16とが相対回転する。そして、本実施形態では、ドライブ部材11への入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の値)よりも小さい所定値(第1の値)T1に達すると、第2要素間ストッパ18により第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転並びに各第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れが規制され、これとほぼ同時に、ドライブプレート91(ドライブ部材11)の各付加当接部919が質量体21の対応するスプリング当接部215の爪部215aに対して吸振用スプリングSPdの端部とは反対側から同径上で当接する。
なお、取付状態かつドライブ部材11への入力トルクがゼロである状態から各付加当接部919が質量体21の対応するスプリング当接部215の爪部215aと当接するまでのドライブ部材11の第1中間部材12に対する回転角度に対応した外側スプリングSP1の捩れ角を“θd”とし、取付状態かつドライブ部材11への入力トルクがゼロである状態から第2要素間ストッパ18によって相対回転が規制されるまでの第1中間部材12のドリブン部材16に対する回転角度に対応した第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れ角を“θ2”とし、ドライブ部材11と第1中間部材12との間で並列に作用する複数の外側スプリングSP1の合成バネ定数を“k1”とし、第1中間部材12と第2中間部材15との間で並列に作用する複数の第1内側スプリングSP21の合成バネ定数および第2中間部材15とドリブン部材16との間で並列に作用する複数の第2内側スプリングSP22の合成バネ定数を“k2”とすれば、k1×θd=k2/2×θ2、すなわちθd=θ2×k2/k1/2という関係が成立する。
ドライブ部材11の各付加当接部919が質量体21の対応するスプリング当接部215の爪部215aと当接するようになると、各吸振用スプリングSPdは、対応する外側スプリングSP1と並列に作用してドライブ部材11と第1中間部材12との間でトルクを伝達する弾性体として機能する。これにより、第2要素間ストッパ18により第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転並びに各第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れが規制された後には、原動機としてのエンジンからのトルクが、図5に示すように、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、並列に作用する外側スプリングSP1および吸振用スプリングSPd、第1中間部材12、撓みが規制された第1および第2内側スプリングSP21,SP22並びに第2中間部材15、これらと並列に並ぶ第2要素間ストッパ18、ドリブン部材16、ダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。そして、この際には、フロントカバー3に入力されるトルクの変動が、並列に作用するダンパ装置10の外側スプリングSP1および吸振用スプリングSPdにより減衰(吸収)される。
この結果、エンジンからのトルクがフロントカバー3に伝達され始めてから、ドライブ部材11への入力トルクが所定値T1に達してダンパ装置10の捩れ角が所定角度(閾値)θrefになると共に第2要素間ストッパ18によりドライブ部材11とドリブン部材16との相対回転が規制されるまでの間(第1ステージ)におけるダンパ装置10全体の剛性すなわちバネ定数Kは、K=Kf=k1・k2/(2×k1+k2)となる。また、第2要素間ストッパ18によりドライブ部材11とドリブン部材16との相対回転が規制された後、ドライブ部材11への入力トルクが値T2に達してダンパ装置10の捩れ角が予め定められた最大捩れ角θmaxになると共に第1要素間ストッパ17によりドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転が規制されるまでの間(第2ステージ)におけるダンパ装置10全体の剛性すなわちバネ定数Kは、ドライブ部材11と第1中間部材12との間で並列に作用する複数の吸振用スプリングSPdの合成バネ定数を“kd”とすれば、K=Ks=k1+kd>Kfとなる。なお、例えばダンパ装置10に第1および第2内側スプリングSP21,SP22の何れか一方の捩れを規制するストッパを更に設けて、3段階の捩れ特性を有するように当該ダンパ装置10を構成してもよい。この場合、吸振用スプリングSPdと外側スプリングSP1とを並列に作用させて第3ステージを構成してもよい。
上述のように、ダンパ装置10では、複数の回転要素の何れかである第1回転要素にとしての第1中間部材12に対して、質量体21および吸振用スプリングSPdを含むダイナミックダンパ20が連結される。そして、複数の回転要素のうちのダイナミックダンパ20が連結されない第2回転要素であるドライブ部材11(ドライブプレート91)は、回転規制ストッパとしての第1および第2要素間ストッパ17,18によりドライブ部材11とドリブン部材16との相対回転が規制される前にダイナミックダンパ20の質量体21のスプリング当接部215と当接するように構成された付加当接部919を有する。そして、ドライブ部材11の各付加当接部919が質量体21のスプリング当接部215と当接するようになると、吸振用スプリングSPdは、ドライブ部材11と第1中間部材12との間でトルクを伝達する弾性体として機能する。これにより、ダンパ装置10では、ドライブ部材11と第1中間部材12との間でトルクを伝達する外側スプリングSP1が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化することが可能となり、少なくとも外側スプリングSP1の剛性をより低下させることができる。
また、ダンパ装置10では、ダイナミックダンパ20の吸振用スプリングSPdが流体伝動室9内の外周側領域でダンパ装置10の外側スプリングSP1と周方向に並ぶようにドライブ部材11等により支持される。更に、ドライブ部材11の付加当接部919は、質量体21のスプリング当接部215の爪部215aに対して吸振用スプリングSPdの端部とは反対側から同径上で当接する。これにより、質量体21のスプリング当接部215と吸振用スプリングSPdとの当接位置と、質量体21のスプリング当接部215と付加当接部919との当接位置とをダンパ装置10の径方向においてより近接させる(概ね一致させる)ことができる。従って、吸振用スプリングSPdがドライブ部材11と第1中間部材12との間でトルクを伝達するスプリングとして機能する際に、質量体21に加えられる曲げモーメントを非常に小さくすることが可能となり、質量体21の変形等を抑制してダンパ装置10全体の耐久性をより向上させることができる。この結果、ダイナミックダンパ20を有するダンパ装置10をより低剛性化すると共に、当該ダンパ装置10の耐久性をより向上させることが可能となる。
更に、吸振用スプリングSPdと外側スプリングSP1とを周方向に並ぶように配置することで、ダイナミックダンパ20の質量体21と吸振用スプリングSPdとをダンパ装置10の径方向および軸方向において近接させることができる。これにより、ダンパ装置10やダイナミックダンパ20の振動減衰性能を良好に確保しつつダイナミックダンパ20の占有スペースを削減することが可能となる。また、かかる構成を採用することで、コイル径を大きくして吸振用スプリングSPdを低剛性化(バネ定数を小さく)すると共に、質量体21をダンパ装置10の外周に近接するように配置して当該質量体21のイナーシャをより増加させ、ダイナミックダンパ20の振動減衰性能をより向上させることができる。更に、デッドスペースとなりがちなタービンランナ5の外周部近傍の領域を質量体21の配置スペースとして有効に利用し、装置全体のスペース効率を向上させることが可能となる。
また、ダンパ装置10において、付加当接部919はダンパ装置10の径方向に延在し、質量体21のスプリング当接部215の爪部215aは、径方向に延在すると共に付加当接部919とダンパ装置10の軸方向に少なくとも部分的に重なり合う。これにより、質量体21の爪部215aを吸振用スプリングSPdの端部に対して当該端部の中央部付近で当接させると共に、ドライブ部材11の付加当接部919によりスプリング当接部215の爪部215aを介して吸振用スプリングSPdの端部の中央部付近を押圧することが可能となる。この結果、吸振用スプリングSPdを軸心に沿ってより適正に伸縮させてヒステリシス(ドライブ部材11への入力トルクが増加していく際にドリブン部材16から出力されるトルクと、当該入力トルクが減少していく際にドリブン部材16から出力されるトルクとの差)を低減化することができる。加えて、爪部215aの厚みは、付加当接部919の厚みよりも大きく定められる。これにより、質量体21の爪部215aと付加当接部919との接触面積を増加させると共に、質量体21の重量(慣性モーメント)を増加させてダイナミックダンパ20の振動減衰性能をより向上させることができる。
更に、ダンパ装置10は、第1要素間ストッパ17が作動してドライブ部材11とドリブン部材16との相対回転が規制される前、かつ少なくとも付加当接部919が質量体21のスプリング当接部215に当接する時点までに、第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れを規制する第2要素間ストッパ18を含む。すなわち、ダンパ装置10では、各ドライブ部材11への入力トルクが所定値T1以上になると、第2要素間ストッパ18により第1および第2内側スプリングSP21,SP22の捩れが規制されると共に、付加当接部919が質量体21の対応するスプリング当接部215と当接する。そして、付加当接部919が質量体21のスプリング当接部215に当接した以降には、吸振用スプリングSPdと外側スプリングSP1とが、ドライブ部材11とドリブン部材16との間で並列に作用してトルクを伝達する。これにより、付加当接部919が質量体21のスプリング当接部215に当接した以降にトルクを伝達しなくなる第1および第2内側スプリングSP21,SP22をより低剛性化すると共に、吸振用スプリングSPdと並列に作用する外側スプリングSP1が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、外側スプリングSP1の剛性(バネ定数)をより低下させることができる。この結果、ダイナミックダンパ20を有するダンパ装置10をより一層低剛性化することが可能となる。加えて、各付加当接部919が質量体21の対応するスプリング当接部215と当接した後に、ドライブ部材11に対するより高いトルクの入力を許容することができる。
また、ダンパ装置10は、第1および第2中間部材12,15と、ドライブ部材11と第1中間部材12との間でトルクを伝達する外側スプリングSP1と、第1中間部材12と第2中間部材15との間でトルクを伝達する第1内側スプリングSP21と、第2中間部材15とドリブン部材16との間でトルクを伝達する第2内側スプリングSP22とを含む。これにより、少なくとも付加当接部919が質量体21のスプリング当接部215に当接する時点まで、外側スプリングSP1、第1および第2内側スプリングSP21,SP22を直列に作用させることができるので、ダンパ装置10をより一層低剛性化することが可能となる。
なお、上記実施形態において、付加当接部919や第2要素間ストッパ18は、各付加当接部919が質量体21の対応するスプリング当接部215と当接した後に、第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転を規制するように構成されてもよい。また、付加当接部919は、スプリング当接部913と周方向に並ぶように当該スプリング当接部913から分離されてもよい。また、第1要素間ストッパ17によりドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転が規制された後に、第2要素間ストッパ18により第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転が規制されるようにし、第1要素間ストッパ17の作動後かつ第2要素間ストッパ18の作動前に第1および第2内側スプリングSP21,SP22とトルクを伝達する弾性体としての吸振用スプリングSPdとを直列に作用させてもよい。
図6は、変形態様のダンパ装置10Bを示す断面図である。なお、ダンパ装置10Bの構成要素のうち、上記ダンパ装置10と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図6に示すダンパ装置10Bでは、上述の質量体21が同図に示す連結部材55で置き換えられており、当該ダンパ装置10Bは、タービンランナ5および連結部材55を質量体として含むダイナミックダンパ20Bを有する。連結部材55は、環状のフランジ部550と、フランジ部550の外周部から周方向に間隔をおいて軸方向に延出されると共に当該フランジ部550の径方向に延びる爪部555aを有する複数(図6の例では、例えば6個)のスプリング当接部(弾性体当接部)555とを含む。フランジ部550は、タービンランナ5(タービンシェル50)と概ね同程度の内径および外径を有し、タービンランナ5と第1中間部材12の第1プレート部材13との間に配置される。また、フランジ部550の内周部は、タービンシェル50の内周部と共にリベットを介してタービンハブ52に固定され、タービンハブ52は、図示するように、ダンパハブ7により回転自在に支持される。爪部555aを有するスプリング当接部555は、質量体21のスプリング当接部215と同様の構成を有するものである。更に、ダイナミックダンパ20Bでは、連結部材55と例えば第1プレート部材13(第1中間部材12)とに対して、各吸振用スプリングSPdが完全に収縮する前に両者の相対回転を規制する図示しない第3要素間ストッパが設けられる。
このようなタービンランナ5を質量体として含むダイナミックダンパ20Bでは、質量体のイナーシャを良好に確保することが可能となる。また、連結部材55のフランジ部550を径方向内側に延ばすことで、タービンシェル50をタービンハブ52に固定するためのリベットを利用して連結部材55をタービンランナ5に一体に回転するように連結することが可能となり、当該連結部材55を溶接によりタービンランナ5に固定する必要がなくなる。これにより、溶接工程を削減してダンパ装置10Bの製造コストを低下させることが可能となる。
図7は、吸振用スプリングSPd周辺の構造の変形態様を示す要部拡大断面図である。なお、図7に示す要素のうち、上記ダンパ装置10,10Bと同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図7に示す構成においても、ドリブン部材(第1回転要素)の付加当接部919は、ダンパ装置の径方向に延在し、吸振用スプリングSPdの端部に当接する第1中間部材(第2プレート部材)の第2外側スプリング当接部145Cも、ダンパ装置の径方向に延在する。一方、ダイナミックダンパ20Cの質量体21Cは、環状の本体210から周方向に間隔をおいてダンパ装置の軸方向に延出された複数のスプリング当接部215Cを含む。質量体21Cの各スプリング当接部215Cは、タービンランナ5側からクラッチドラム81のスプリング支持部811内に差し込まれ、図7に示すように、径方向(側方)からみてドリブン部材の付加当接部919と交差する。更に、各スプリング当接部215Cは、第1中間部材の第2外側スプリング当接部145Cに形成されたスリット145sに差し込まれ、ダンパ装置の取付状態において、対応する吸振用スプリングSPdの端部に当接する。スリット145sは、第2外側スプリング当接部145Cの吸振用スプリングSPdとの当接面のみで開口する有端スリットであり、当該当接面からダンパ装置の回転軸を中心とする円周に沿って延びる。また、スリット145sの周長は、スプリング当接部215Cの周方向における幅よりも長く定められる。
図7に示すような構成を採用しても、質量体21Cのスプリング当接部215Cを吸振用スプリングSPdの端部に対して当該端部の中央部付近で当接させると共に、ドライブ部材の付加当接部919によりスプリング当接部215Cを介して吸振用スプリングSPdの端部の中央部付近を押圧することが可能となる。この結果、吸振用スプリングSPdを軸心に沿ってより適正に伸縮させてヒステリシスを低減化することができる。また、質量体21Cと第1中間部材とが相対回転する際には、スプリング当接部215Cが第2外側スプリング当接部145Cのスリット145s内を移動することで、吸振用スプリングSPdの伸縮が許容される。
更に、図7に示す構成では、質量体21Cのスプリング当接部215Cと、第1中間部材の第2外側スプリング当接部145Cのスリット145sとにより、質量体21Cと第1中間部材との相対回転を規制する第3要素間ストッパを構成することができる。この場合、ダンパ装置の取付状態において、質量体21Cの各スプリング当接部215Cは、第2外側スプリング当接部145Cの対応するスリット145s内に当該スリット145sの閉鎖端の内壁面と当接しないように差し込まれる。そして、第1中間部材と質量体21とが相対回転するのに伴ってスプリング当接部215Cがスリット145sの閉鎖端の内壁面に当接すると、第1中間部材と質量体21Cとの相対回転および各吸振用スプリングSPdの捩れが規制されることになる。なお、質量体21Cのスプリング当接部215Cの構成や、スリット145sを有する第2外側スプリング当接部145Cは、ダンパ装置10Bの連結部材55に適用されてもよい。すなわち、図7に示す構成は、ダンパ装置10および10Bのいずれにも適用され得る。
以上説明したように、本開示のダンパ装置は、少なくとも入力要素(11)および出力要素(16)を含む複数の回転要素と、前記複数の回転要素間でトルクを伝達するトルク伝達弾性体(SP1)と、質量体(21,5,55)および前記質量体と前記複数の回転要素の何れかである第1回転要素(12)とを連結する吸振用弾性体(SPd)を含むと共に前記第1回転要素(12)に対して逆位相の振動を付与するダイナミックダンパ(20)とを備えるダンパ装置(10,10B)において、前記質量体(21,5,55)は、前記吸振用弾性体(SPd)の端部と当接する弾性体当接部(215、555)を有し、前記複数の回転要素のうちの前記ダイナミックダンパ(20)が連結されない第2回転要素(11)は、前記質量体(21,5,55)の前記弾性体当接部(215、555)に対して前記吸振用弾性体(SPd)の前記端部とは反対側から同径上で当接するように構成された付加当接部(919)を有することを特徴とする。
すなわち、本開示のダンパ装置では、複数の回転要素の何れかである第1回転要素に対して、質量体および当該質量体と第1回転要素との間に配置される吸振用弾性体を含むダイナミックダンパが連結される。そして、複数の回転要素のうちのダイナミックダンパが連結されない第2回転要素は、質量体の弾性体当接部に対して吸振用弾性体の端部とは反対側から同径上で当接するように構成される。これにより、質量体の弾性体当接部と吸振用弾性体との当接位置と、質量体の弾性体当接部と付加当接部との当接位置とをダンパ装置の径方向においてより近接させることができる。従って、吸振用弾性体が第1回転要素と第2回転要素との間でトルクを伝達する弾性体として機能する際に、質量体に加えられる曲げモーメントをより小さくして当該質量体の変形等を抑制することが可能となる。この結果、ダイナミックダンパを有するダンパ装置の耐久性をより向上させることが可能となる。
また、前記吸振用弾性体は、前記トルク伝達弾性体と周方向に並ぶように配置されてもよい。これにより、ダンパ装置の軸長や外径の増加を抑制すると共に、質量体の弾性体当接部と吸振用弾性体との当接位置と、質量体の弾性体当接部と付加当接部との当接位置とをダンパ装置の径方向においてより一層近接させることが可能となる。
更に、前記付加当接部(919)は、前記ダンパ装置(10,10B)の径方向に延在してもよく、前記質量体(21,5,55)の前記弾性体当接部(215、555)は、前記径方向に延在すると共に前記付加当接部(919)と前記ダンパ装置(10,10B)の軸方向に少なくとも部分的に重なるように配置される爪部(215a,555a)を有してもよい。これにより、質量体の爪部を吸振用弾性体の端部に対して当該端部の中央部付近で当接させると共に、第2回転要素の付加当接部により弾性体当接部の爪部を介して吸振用弾性体の端部の中央部付近を押圧することが可能となる。
また、前記爪部(215a,555a)の厚みは、前記付加当接部(919)の厚みよりも大きくてもよい。これにより、質量体の爪部と付加当接部との接触面積を増加させると共に、質量体の重量(慣性モーメント)を増加させてダイナミックダンパの振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
更に、前記付加当接部(919)は、前記ダンパ装置の径方向に延在してもよく、前記第1回転要素(12)は、前記径方向に延在すると共に前記吸振用弾性体(SPd)の端部と当接する当接部(145C)を有してもよく、前記質量体(21C)の前記弾性体当接部(215C)は、前記ダンパ装置(10,10B)の軸方向に延在して前記付加当接部(919)と交差すると共に前記第1回転要素(12)の前記当接部(145C)に形成されたスリット(145s)に差し込まれてもよい。このような構成を採用しても、質量体の爪部を吸振用弾性体の端部に対して当該端部の中央部付近で当接させると共に、第2回転要素の付加当接部により質量体の弾性体当接部を介して吸振用弾性体の端部の中央部付近を押圧することが可能となる。
また、前記ダンパ装置(10,10B)は、前記入力要素(11)と前記出力要素(16)との間で直列に作用してトルクを伝達する第1および第2弾性体(SP1,SP22)と、前記入力要素(11)と前記出力要素(16)との相対回転を規制する回転規制ストッパ(17,18)と、前記回転規制ストッパ(17,18)により前記入力要素(11)と前記出力要素(16)との相対回転が規制される前、かつ少なくとも前記付加当接部(919)が前記質量体(21,5,55)の前記弾性体当接部(215、555)に当接する時点までに、前記第1および第2弾性体の一方(SP22)の捩れを規制する弾性体ストッパ(18)とを備えてもよく、前記付加当接部(919)が前記質量体(21,5,55)の前記弾性体当接部(215、555)に当接した以降には、前記吸振用弾性体(SPd)と前記第1および第2弾性体の他方(SP1)とが、前記入力要素(11)と前記出力要素(16)との間で並列に作用してトルクを伝達してもよい。これにより、少なくとも付加当接部が質量体の弾性体当接部に当接した以降にトルクを伝達しなくなる第1および第2弾性体の一方をより低剛性化すると共に、吸振用弾性体と並列に作用する第1および第2弾性体の他方が受け持つべきトルク(分担トルク)を低減化して、当該第1および第2弾性体の他方の剛性をより低下させることができる。この結果、ダイナミックダンパを有するダンパ装置をより一層低剛性化することが可能となる。
更に、前記複数の回転要素は、第1および第2中間要素(12,15)を含んでもよく、前記トルク伝達弾性体は、前記入力要素(11)と前記第1中間要素(12)との間でトルクを伝達する前記第1弾性体(SP1)と、前記第2中間要素(15)と前記出力要素(16)との間でトルクを伝達する前記第2弾性体(SP22)と、前記第1中間要素(11)と前記第2中間要素(15)との間でトルクを伝達する第3弾性体(SP21)とを含んでもよく、前記第1回転要素は、前記第1中間要素(12)であってもよく、前記第2回転要素は、前記入力要素(11)であってもよい。これにより、少なくとも付加当接部が質量体の弾性体当接部に当接する時点まで、第1、第2および第3弾性体を直列に作用させることができるので、ダンパ装置をより一層低剛性化することが可能となる。
また、前記弾性体ストッパ(18)は、前記入力要素(11)への入力トルクが予め定められた第1の値(T1)以上になると前記第2および第3弾性体(SP21,SP22)の捩れを規制してもよく、前記回転規制ストッパ(17,18)は、前記入力要素(11)への入力トルクが予め定められた前記第1の値(T1)よりも大きい第2の値(T2)に達すると前記入力要素(11)と前記出力要素(16)との相対回転を規制してもよい。
更に、前記ダイナミックダンパ(20)の前記質量体は、ポンプインペラ(4)と共に流体伝動装置を構成するタービンランナ(5)を含んでもよい。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。