次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るダンパ装置10を含む発進装置1を示す概略構成図であり、図2は、発進装置1を示す断面図である。これらの図面に示す発進装置1は、原動機としてのエンジン(内燃機関)を備えた車両に搭載されるものであり、ダンパ装置10に加えて、エンジンのクランクシャフトに連結される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ装置10に連結されると共に自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機の入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、ロックアップクラッチ8等を含む。
なお、以下の説明において、「軸方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10の中心軸(軸心)の延在方向を示す。また、「径方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の径方向、すなわち発進装置1やダンパ装置10の中心軸から当該中心軸と直交する方向(半径方向)に延びる直線の延在方向を示す。更に、「周方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の周方向、すなわち当該回転要素の回転方向に沿った方向を示す。
ポンプインペラ4は、図2に示すように、フロントカバー3に密に固定されるポンプシェル40と、ポンプシェル40の内面に配設された複数のポンプブレード41とを有する。タービンランナ5は、図2に示すように、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してタービンハブ52に固定される。タービンハブ52は、ダンパハブ7により回転自在に支持され、当該タービンハブ52(タービンランナ5)の発進装置1の軸方向における移動は、ダンパハブ7と、当該ダンパハブ7に装着されるスナップリングにより規制される。
ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレード60を有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
ロックアップクラッチ8は、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除するものである。本実施形態において、ロックアップクラッチ8は、単板油圧式クラッチとして構成されており、フロントカバー3の内部かつ当該フロントカバー3のエンジン側の内壁面近傍に配置されると共にダンパハブ7に対して軸方向に移動自在に嵌合されるロックアップピストン80を有する。図2に示すように、ロックアップピストン80の外周側かつフロントカバー3側の面には、摩擦材81が貼着される。そして、ロックアップピストン80とフロントカバー3との間には、作動油供給路や入力軸ISに形成された油路を介して図示しない油圧制御装置に接続されるロックアップ室85が画成される。
ロックアップ室85内には、入力軸ISに形成された油路等を介してポンプインペラ4およびタービンランナ5の軸心側(ワンウェイクラッチ61の周辺)から径方向外側に向けてポンプインペラ4およびタービンランナ5(トーラス)へと供給される油圧制御装置からの作動油が流入可能である。従って、フロントカバー3とポンプインペラ4のポンプシェルとにより画成される流体伝動室9内とロックアップ室85内とが等圧に保たれれば、ロックアップピストン80は、フロントカバー3側に移動せず、ロックアップピストン80がフロントカバー3と摩擦係合することはない。これに対して、図示しない油圧制御装置によりロックアップ室85内を減圧すれば、ロックアップピストン80は、圧力差によりフロントカバー3に向けて移動してフロントカバー3と摩擦係合する。これにより、フロントカバー3(エンジン)は、ダンパ装置10を介してダンパハブ7に連結される。なお、ロックアップクラッチ8として、少なくとも1枚の摩擦係合プレート(複数の摩擦材)を含む多板油圧式クラッチが採用されてもよい。
ダンパ装置10は、図1および図2に示すように、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11、第1中間部材(第1中間要素)12、第2中間部材(第2中間要素)14、第3中間部材15およびドリブン部材(出力要素)16を含む。更に、ダンパ装置10は、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば2個)の第1スプリング(第1弾性体)SP1、ドライブ部材11と第1中間部材12との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第2スプリング(第2弾性体)SP2、第1中間部材12とドリブン部材16との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第3スプリング(第3弾性体)SP3、ドライブ部材11と第2中間部材14との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば2個)の第4スプリング(第4弾性体)SP4、第2中間部材14と第3中間部材15との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば2個)の第5スプリング(第5弾性体)SP5、および第3中間部材15とドリブン部材16との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば2個)の第6スプリング(第6弾性体)SP6を含む。なお、第5および第6スプリングSP5,SP6は、図2には示されない。
すなわち、ダンパ装置10は、図1に示すように、互いに並列に設けられる第1トルク伝達経路P1、第2トルク伝達経路P2および第3トルク伝達経路P3を有する。第1トルク伝達経路P1は、ドライブ部材11とドリブン部材16との間に配置される要素として、第1スプリングSP1のみを含み、複数の第1スプリングSP1を介してドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクを伝達する。また、第2トルク伝達経路P2は、ドライブ部材11とドリブン部材16との間に配置される要素として、第1中間部材12、第2および第3スプリングSP2,SP3を含み、複数の第2スプリングSP2、第1中間部材12および複数の第3スプリングSP3を介してドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクを伝達する。更に、第2トルク伝達経路P2は、ドライブ部材11とドリブン部材16との間に配置される要素として、第2および第3中間部材14,15、第4、第5および第6スプリングSP4,SP5,SP6を含み、複数の第4スプリングSP4、第2中間部材14、複数の第5スプリングSP5、第3中間部材15および複数の第6スプリングSP6を介してドライブ部材11とドリブン部材16との間でトルクを伝達する。
本実施形態では、第1から第6スプリングSP1〜SP6として、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなる直線型コイルスプリングが採用される。これにより、例えばアークコイルスプリングを用いた場合に比べて、第1から第6スプリングSP1〜SP6を軸心に沿ってより適正に伸縮させて、いわゆるヒステリシス(ドライブ部材11への入力トルクが増加していく際にドリブン部材16から出力されるトルクと、当該入力トルクが減少していく際にドリブン部材16から出力されるトルクとの差)を低減化することができる。
図2に示すように、ダンパ装置10のドライブ部材11は、ロックアップクラッチ8のロックアップピストン80に固定される環状の第1プレート部材111と、ダンパハブ7により回転自在に支持(調心)されると共に第1プレート部材111に一体回転するように連結される環状の第2プレート部材112と、タービンランナ5に近接するように配置されると共に複数のリベットを介して第2プレート部材112に連結(固定)される環状の第3プレート部材113とを含む。これにより、ドライブ部材11、すなわち第1から第3プレート部材111〜113は、ロックアップピストン80と一体回転し、ロックアップクラッチ8の係合によりフロントカバー3(エンジン)とダンパ装置10のドライブ部材11とが連結されることになる。
第1プレート部材111は、複数のリベットを介してロックアップピストン80の外周側の内面(摩擦材81が貼着されない面)に固定されると共に軸方向に延びる短尺筒状の外周部を有する環状の固定部111aと、固定部111aの外周部の遊端部から周方向に間隔をおいて径方向外側に延出された複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング当接部(弾性体当接部)111cとを有する。複数のスプリング当接部111cは、2個(一対)ずつ近接するように第1プレート部材111の軸心に関して対称に形成され、互いに対をなす2個のスプリング当接部111cは、例えば第1スプリングSP1の自然長に応じた間隔をおいて対向する。また、固定部111aの外周部の遊端部には、第2プレート部材112の外周部に形成された対応する凹部に嵌合される複数の係合凸部が形成されている。
第2プレート部材112は、その内周縁に沿って周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部112aと、複数のスプリング支持部112aよりも外周側で周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶと共にそれぞれ対応するスプリング支持部112aと第2プレート部材112の径方向において対向する複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部112bと、複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング当接部(弾性体当接部)112cとを有する。また、第3プレート部材113は、その内周縁に沿って周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部113aと、複数のスプリング支持部113aよりも外周側で周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶと共にそれぞれ対応するスプリング支持部113aと第3プレート部材113の径方向において対向する複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部113bと、複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング当接部(弾性体当接部)113cとを有する。
第2プレート部材112の複数のスプリング支持部112aは、それぞれ対応する第2および第3スプリングSP2,SP3(各1個)のロックアップピストン80側の側部を内周側から支持(ガイド)する。複数のスプリング支持部112bは、それぞれ対応する第2および第3スプリングSP2,SP3(各1個)のロックアップピストン80側の側部を外周側から支持(ガイド)する。また、第3プレート部材113の複数のスプリング支持部113aは、それぞれ対応する第2および第3スプリングSP2,SP3(各1個)のタービンランナ5側の側部を内周側から支持(ガイド)する。複数のスプリング支持部113bは、それぞれ対応する第2および第3スプリングSP2,SP3(各1個)のタービンランナ5側の側部を外周側から支持(ガイド)する。第2および第3スプリングSP2,SP3は、1個ずつ対をなす(直列に作用する)と共に周方向(第1中間部材12の周方向)に交互に並ぶように、ドライブ部材11を構成する第2プレート部材112のスプリング支持部112a,112bと第3プレート部材113のスプリング支持部113a,113bとにより支持される。
第2プレート部材112の複数のスプリング当接部112cは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング支持部112a,112bの間に1個ずつ設けられる。各スプリング当接部112cは、ダンパ装置10の取付状態において、互いに異なるスプリング支持部112a,112b,113a,113bにより支持されて対をなさない(直列に作用しない)第2および第3スプリングSP2,SP3の間で両者の端部と当接する。第3プレート部材113の複数のスプリング当接部113cは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング支持部113a,113bの間に1個ずつ設けられる。各スプリング当接部113cは、ダンパ装置10の取付状態において、互いに異なるスプリング支持部112a,112b,113a,113bにより支持された(対をなさない)第2および第3スプリングSP2,SP3の間で両者の端部と当接する。
第1中間部材12は、板状の環状部材として構成されており、ドリブン部材16の内周部に形成された複数の軸方向延出部により回転自在に支持(調心)される。第1中間部材12は、それぞれ互いに対をなす(直列に作用する)第2および第3スプリングSP2,SP3が配置される複数(本実施形態では、例えば3個)の図示しないスプリング収容部(開口部)と、複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング当接部12cを有する。複数のスプリング当接部12cは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング収容部の間に1個ずつ設けられる。各スプリング当接部12cは、同一のスプリング支持部112a,112b,113a,113bにより支持されて互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第2スプリングSP2の一端は、ドライブ部材11の対応するスプリング当接部112c,113cと当接し、各第2スプリングSP2の他端は、第1中間部材12の対応するスプリング当接部12cと当接する。また、ダンパ装置10の取付状態において、各第3スプリングSP3の一端は、第1中間部材12の対応するスプリング当接部12cと当接し、各第3スプリングSP3の他端は、ドライブ部材11の対応するスプリング当接部112c,113cと当接する。
第2中間部材14は、それぞれ複数の第1スプリングSP1、第4スプリングSP4、第5スプリングSP5および第6スプリングSP6の外周部やロックアップピストン80側の側部(図2における右側の側部)等を支持(ガイド)するように環状に形成されている。第2中間部材14は、図2に示すように、ドライブ部材11の第1プレート部材111の固定部111a(支持部としての外周部)により回転自在に支持(調心)され、流体伝動室9内の外周側領域に配置される。このように第2中間部材14を流体伝動室9内の外周側領域に配置することで、当該第2中間部材14の慣性モーメント(イナーシャ)をより大きくすることが可能となる。
また、第2中間部材14は、第1スプリングSP1、第4スプリングSP4、第5スプリングSP5および第6スプリングSP6を例えば第1、第4、第5、第6、第1、第4、第5、第6という順番で当該第2中間部材14の周方向に沿って並ぶように支持する。これにより、第1スプリングSP1、第4スプリングSP4、第5スプリングSP5および第6スプリングSP6は、ドライブ部材11(第2および第3プレート部材112,113)により支持される第2および第3スプリングSP2,SP3の径方向外側に配置される。このように、第2および第3スプリングSP2,SP3を囲むように第1スプリングSP1、第4スプリングSP4、第5スプリングSP5および第6スプリングSP6を流体伝動室9内の外周側領域に配置することで、ダンパ装置10ひいては発進装置1の軸長をより短縮化することが可能となる。更に、第2中間部材14は、複数(本実施形態では、例えば2個)の第1スプリング当接部(弾性体当接部)141cと、それぞれ対応する第1スプリング当接部141cと軸方向において対向する複数(本実施形態では、例えば2個)の第2スプリング当接部(弾性体当接部)142cとを有する。第1および第2スプリング当接部141c,142cは、互いに隣り合う第4および第5スプリングSP4,SP5の間で両者の端部と当接する。
第3中間部材15は、板状の環状部材として構成されており、当該第3中間部材15の内周面は、ドライブ部材11を構成する第3プレート部材113に形成された環状の支持面により回転自在に支持(調心)される。また、第3中間部材15は、その外周面から径方向外側に延びる複数(本実施形態では、例えば2個)のスプリング当接部(弾性体当接部)15cを有する。第3中間部材15の各スプリング当接部15cは、互いに隣り合う第5および第6スプリングSP5,SP6の間で両者の端部と当接する。
また、ダンパ装置10の取付状態において、各第1スプリングSP1は、ドライブ部材11の一対のスプリング当接部111cにより両側から支持される。そして、ダンパ装置10の取付状態において、一対のスプリング当接部111cのうち、第4スプリングSP4側の一方は、当該第4スプリングSP4の端部と当接し、第6スプリングSP6側の他方は、当該第6スプリングSP6の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第4スプリングSP4の一端は、ドライブ部材11の対応するスプリング当接部111cと当接し、各第4スプリングSP4の他端は、第2中間部材14の対応する第1および第2スプリング当接部141c,142cと当接する。また、ダンパ装置10の取付状態において、各第5スプリングSP5の一端は、第2中間部材14の対応する第1および第2スプリング当接部141c,142cと当接し、各第5スプリングSP5の他端は、第3中間部材15の対応するスプリング当接部15cと当接する。更に、ダンパ装置10の取付状態において、第6スプリングSP6の一端は、第3中間部材15の対応するスプリング当接部15cと当接し、各第6スプリングSP6の他端は、ドライブ部材11の対応するスプリング当接部111cと当接する。
ドリブン部材16は、図2に示すように、ドライブ部材11の第2プレート部材112と第3プレート部材113との軸方向における間に配置されると共にダンパハブ7に例えば溶接により固定される。ドリブン部材16は、その内周縁に近接するように周方向に間隔をおいて形成された複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング当接部(弾性体当接部)16ciと、複数の内側スプリング当接部16ciよりも径方向外側に周方向に間隔をおいて形成された複数(本実施形態では、例えば4個)の外側スプリング当接部(弾性体当接部)16coとを有する。複数の外側スプリング当接部16coは、2個(一対)ずつ近接するようにドリブン部材16の軸心に関して対称に形成され、互いに対をなす2個の外側スプリング当接部16coは、例えば第1スプリングSP1の自然長に応じた間隔をおいて対向する。
ダンパ装置10の取付状態において、ドリブン部材16の各内側スプリング当接部16ciは、ドライブ部材11のスプリング当接部112c,113cと同様に、互いに異なるスプリング支持部112a,112b,113a,113bにより支持された(対をなさない)第2および第3スプリングSP2,SP3の間で両者の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第2スプリングSP2の上記一端は、ドリブン部材16の対応する内側スプリング当接部16ciとも当接し、各第3スプリングSP3の上記他端は、ドリブン部材16の対応する内側スプリング当接部16ciとも当接する。
また、ダンパ装置10の取付状態において、各第1スプリングSP1は、ドリブン部材16の一対の外側スプリング当接部16coにより両側から支持される。そして、ダンパ装置10の取付状態において、一対の外側スプリング当接部16coのうち、第4スプリングSP4側の一方は、当該第4スプリングSP4の端部と当接し、第6スプリングSP6側の他方は、当該第6スプリングSP6の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第4スプリングSP4の上記一端は、ドリブン部材16の対応する外側スプリング当接部16coとも当接し、各第6スプリングSP6の上記他端は、ドリブン部材16の対応する外側スプリング当接部16coとも当接する。この結果、ドリブン部材16は、複数の第1スプリング、すなわち第1トルク伝達経路P1と、複数の第2スプリングSP2、第1中間部材12および複数の第3スプリングSP3、すなわち第2トルク伝達経路P2と、複数の第4スプリングSP4、第2中間部材14、複数の第5スプリングSP5、第3中間部材15および複数の第6スプリングSP6、すなわち第3トルク伝達経路P3を介してドライブ部材11に連結される。
図2に示すように、本実施形態では、タービンランナ5のタービンシェル50に環状のタービン連結部材55が例えば溶接により固定されている。タービン連結部材55の外周部には、周方向に間隔をおいて軸方向に延びる複数(本実施形態では、例えば2個)のスプリング当接部55cが形成されている。タービン連結部材55の各スプリング当接部55cは、互いに隣り合う(直列に作用する)第4および第5スプリングSP4,SP5の間で両者の端部と当接する。これにより、第2中間部材14とタービンランナ5とは、一体回転するように連結されることになり、タービンランナ5(およびタービンハブ52)を第2中間部材14に連結することで、当該第2中間部材14の実質的な慣性モーメント(第2中間部材14やタービンランナ5等の慣性モーメントの合計値)をより一層大きくすることが可能となる。また、タービンランナ5と、第2および第3スプリングSP2,SP3の径方向外側すなわち流体伝動室9内の外周側領域に配置される第2中間部材14とを連結することで、タービン連結部材55がドライブ部材11の第3プレート部材113や第2および第3スプリングSP2,SP3とタービンランナ5との軸方向における間を通過しないようにすることができる。これにより、ダンパ装置10ひいては発進装置1の軸長の増加をより良好に抑制することが可能となる。
更に、ダンパ装置10は、図1に示すように、第1スプリングSP1の撓みを規制する第1ストッパ21と、第2スプリングSP2の撓みを規制する第2ストッパ22と、第3スプリングSP3の撓みを規制する第3ストッパ23と、第4スプリングSP4の撓みを規制する第4ストッパ24と、第5スプリングSP5の撓みを規制する第5ストッパ25と、第6スプリングSP6の撓みを規制する第6ストッパ26とを含む。本実施形態において、第1ストッパ21は、ドライブ部材11とドリブン部材16との相対回転を規制するように構成される。第2ストッパ22は、ドライブ部材11と第1中間部材12との相対回転を規制するように構成される。第3ストッパ23は、第1中間部材12とドリブン部材16との相対回転を規制するように構成される。第4ストッパ24は、ドライブ部材11と第2中間部材14との相対回転を規制するように構成される。第5ストッパ25は、第2中間部材14と第3中間部材15との相対回転を規制するように構成される。第6ストッパ26は、第3中間部材15とドリブン部材16との相対回転を規制するように構成される。これらの第1から第6ストッパ21〜26は、ドライブ部材11への入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の閾値)よりも小さい予め定められたトルク(第1の閾値)T1に達した以降に対応するスプリングの撓みを規制するように構成される。
そして、第1から第6ストッパ21〜26の作動タイミングを適宜設定することで、ダンパ装置10に複数段階(2ステージ以上)の減衰特性をもたせることができる。本実施形態において、第1から第6スプリングSP1〜SP6のうち、ばね定数が最大であるもの(本実施形態では、例えば第5スプリングSP5)以外に対応した第1から第6ストッパ21〜26の中の5つは、ドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT1に達した段階で対応するスプリングの撓みを規制するように構成される。また、第1から第6スプリングSP1〜SP6のうちのばね定数が最大であるものに対応した第1から第6ストッパ21〜26の中の何れか(本実施形態では、第5ストッパ25)は、ドライブ部材11への入力トルクが最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2に達した段階で作動するように構成される。これにより、ダンパ装置10は、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。
上述のように構成される発進装置1のロックアップクラッチ8によるロックアップが解除されている際には、図1からわかるように、エンジンからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)が、ポンプインペラ4、タービンランナ5、第2中間部材14、第5スプリングSP5、第3中間部材15、第6スプリングSP6、ドリブン部材16、ダンパハブ7という経路を介して変速機の入力軸ISへと伝達される。これに対して、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されると、エンジンからフロントカバー3およびロックアップクラッチ8を介してドライブ部材11に伝達されたトルクは、複数の第1スプリングSP1を含む第1トルク伝達経路P1と、複数の第2スプリングSP2、第1中間部材12および複数の第3スプリングSP3を含む第2トルク伝達経路P2と、複数の第4スプリングSP4、第2中間部材14、複数の第5スプリングSP5、第3中間部材15、複数の第6スプリングSP6を含む第3トルク伝達経路P3とを介してドリブン部材16およびダンパハブ7にトルクが伝達される。そして、ドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT1に達するまで、第1スプリングSP1と、第2および第3スプリングSP2,SP3と、第4から第6スプリングSP4〜SP6とが並列に作用してドライブ部材11に伝達されるトルクの変動を減衰(吸収)する。
次に、ダンパ装置10の設計手順について説明する。
上述のように、ダンパ装置10では、ドライブ部材11に伝達される入力トルクが上記トルクT1に達するまで、第1スプリングSP1と、第2および第3スプリングSP2,SP3と、第4スプリングから第6スプリングSP4〜SP6とが並列に作用する。このように第1から第6スプリングSP1〜SP6が並列に作用する際、第1中間部材12を含む第2トルク伝達経路P2や第2および第3中間部材14,15を含む第3トルク伝達経路P3で、エンジンからドライブ部材11に伝達される振動の周波数に応じて、主に第2および第3中間部材14,15並びに第5スプリングSP5が一体となって振動することに起因した共振や、主に第1中間部材12が振動することに起因した共振、第2および第3中間部材14,15が互いに逆位相で振動することに起因した共振が発生する。そして、これらの共振が発生するたびに、第1トルク伝達経路P1を経由してドライブ部材11からドリブン部材16に伝達される振動の位相と、共振が発生した第2または第3トルク伝達経路P2,P3を経由してドライブ部材11からドリブン部材16に伝達される振動の位相とが180度ずれる。これにより、ダンパ装置10では、このような第1、第2および第3トルク伝達経路P1,P2,P3間における振動の位相ずれを利用してドリブン部材16での振動を減衰させることができる。
本発明者らは、このような特性を有するダンパ装置10の振動減衰性能をより向上させるべく鋭意研究・解析を行い、ロックアップの実行によりエンジンからドライブ部材11にトルクが伝達された状態にあるダンパ装置10を含む振動系について、次式(1)のような運動方程式を構築した。ただし、式(1)において、“J1”は、ドライブ部材11の慣性モーメントであり、“J21”は、第1中間部材12の慣性モーメントであり、J22”は、第2中間部材14の慣性モーメントであり、J23”は、第3中間部材15の慣性モーメントであり、“J3”は、ドリブン部材16の慣性モーメントである。また、“θ1”は、ドライブ部材11の捩れ角であり、“θ21”は、第1中間部材12の捩れ角であり、“θ22”は、第2中間部材14の捩れ角であり、“θ23”は、第3中間部材15の捩れ角であり、“θ3”は、ドリブン部材16の捩れ角である。更に、k1”は、ドライブ部材11とドリブン部材16との間で並列に作用する複数の第1スプリングSP1の合成ばね定数であり、“k2”は、ドライブ部材11と第1中間部材12との間で並列に作用する複数の第2スプリングSP2の合成ばね定数であり、“k3”は、第1中間部材12とドリブン部材16との間で並列に作用する複数の第3スプリングSP3の合成ばね定数であり、k4”は、ドライブ部材11と第2中間部材14との間で並列に作用する複数の第4スプリングSP4の合成ばね定数であり、k5”は、第2中間部材14と第3中間部材15との間で並列に作用する複数の第5スプリングSP5の合成ばね定数であり、“k6”は、第3中間部材15とドリブン部材16との間で並列に作用する複数の第6スプリングSP6の合成ばね定数であり、“kR”は、ドリブン部材16から車両の車輪までの間に配置される変速機やドライブシャフト等における剛性すなわちばね定数であり、Tは、エンジンからドライブ部材11に伝達される入力トルクである。
更に、本発明者らは、入力トルクTが次式(2)に示すように周期的に振動していると仮定すると共に、ドライブ部材11の捻れ角θ1、第1中間部材12の捩れ角θ21、第2中間部材14の捩れ角θ22、第3中間部材15の捩れ角θ23、およびドリブン部材16の捩れ角θ3が次式(3)に示すように周期的に応答(振動)すると仮定した。ただし、式(2)および(3)における“ω”は、入力トルクTの周期的な変動(振動)における角振動数であり、式(3)において、“Θ1”は、エンジンからのトルクの伝達に伴って生じるドライブ部材11の振動の振幅(振動振幅、すなわち最大捩れ角)であり、“Θ21”は、ドライブ部材11にエンジンからのトルクが伝達されるのに伴って生じる第1中間部材12の振動の振幅(振動振幅)であり、“Θ22”は、ドライブ部材11にエンジンからのトルクが伝達されるのに伴って生じる第2中間部材14の振動の振幅(振動振幅)であり、“Θ23”は、ドライブ部材11にエンジンからのトルクが伝達されるのに伴って生じる第3中間部材15の振動の振幅(振動振幅)であり、“Θ3”は、ドライブ部材11にエンジンからのトルクが伝達されるのに伴って生じるドリブン部材16の振動の振幅(振動振幅)である。かかる仮定のもと、式(2)および(3)を式(1)に代入して両辺から“sinωt”を払うことで、次式(4)の恒等式を得ることができる。
そして、本発明者らは、式(4)におけるドリブン部材16の振動振幅Θ3がゼロになれば、ダンパ装置10によりエンジンからの振動が理論上完全に減衰されてドリブン部材16よりも後段側の変速機やドライブシャフト等には理論上振動が伝達されなくなることに着目した。そこで、本発明者らは、かかる観点から、式(4)の恒等式を振動振幅Θ3について解くと共に、Θ3=0とすることで、次式(5)に示す条件式を得た。ただし、式(5)において、“Z0”は、次式(6)に示すとおりであり、“Z1”は、次式(7)に示すとおりであり、“Z2”は、次式(8)に示すとおりであり、“Z3”は、次式(9)に示すとおりである。
式(5)は、入力トルクTの周期的な変動における角振動数の二乗値ω2についての3次方程式である。当該角振動数の二乗値ω2が式(5)の3つの解の何れかである場合、ドライブ部材11から第1トルク伝達経路P1を介してドリブン部材16に伝達されるエンジンからの振動と、ドライブ部材11から第2トルク伝達経路P2を介してドリブン部材16に伝達される振動と、ドライブ部材11から第3トルク伝達経路P3を介してドリブン部材16に伝達されるエンジンからの振動とが互いに打ち消し合い、ドリブン部材16の振動振幅Θ3が理論上ゼロになる。かかる解析結果より、上述のような構成を有するダンパ装置10では、第1、第2および第3トルク伝達経路P1,P2,P3を介してドリブン部材16に伝達される振動が互いに打ち消し合うことで当該ドリブン部材16の振動振幅Θ3が理論上ゼロになる反共振点を合計3つ設定し得ることが理解されよう。
ここで、走行用動力の発生源としてのエンジンを搭載する車両では、ロックアップクラッチのロックアップ回転数Nlupをより低下させて早期にエンジンからのトルクを変速機に機械的に伝達することで、エンジンと変速機との間の動力伝達効率を向上させ、それによりエンジンの燃費をより向上させることができる。ただし、ロックアップ回転数Nlupの設定範囲となり得る500rpm〜1500rpm程度の低回転数域では、エンジンからロックアップクラッチを介してドライブ部材11に伝達される振動が大きくなり、特に3気筒あるいは4気筒エンジンといった省気筒エンジンを搭載した車両において振動レベルの増加が顕著となる。従って、ロックアップの実行時や実行直後に大きな振動が変速機等に伝達されないようにするためには、ロックアップが実行された状態でエンジンからのトルク(振動)を変速機へと伝達するダンパ装置10全体(ドリブン部材16)のロックアップ回転数Nlup付近の回転数域における振動レベルをより低下させる必要がある。
これを踏まえて、本発明者らは、ロックアップクラッチ8に対して定められたロックアップ回転数Nlupに基づいて、エンジンの回転数が500rpmから1500rpmの範囲(ロックアップ回転数Nlupの想定設定範囲)内にある際に最も低回転側(低周波側)の反共振点A1が形成されるようにダンパ装置10を構成することとした。反共振点A1の振動数(以下、「最小振動数」という)を“fa1”とし、上記式(5)の3次方程式の解の最小値を“ωmin”とすれば、fa1=ωmin/2πが成立し、最小振動数fa1に対応したエンジンの回転数Nea1は、“n”をエンジンの気筒数とすれば、Nea1=(120/n)・fa1と表される。従って、ダンパ装置10では、式(5)の解の最小値ωminに基づく最小振動数fa1が次式(10)を満たすように、例えばニュートン法といった数値解法を用いて、第1から第6スプリングSP1〜SP6のばね定数k1,k2,k3,k4,k5,k6と、第1から第3中間部材12,14,15の慣性モーメントJ21,J22,J23とが選択される。すなわち、ダンパ装置10では、上記最小振動数fa1(およびロックアップ回転数Nlup)に基づいて、複数の第1スプリングSP1の合成ばね定数k1、複数の第2スプリングSP2の合成ばね定数k2、複数の第3スプリングSP3の合成ばね定数k3、複数の第4スプリングSP4の合成ばね定数k4、複数の第5スプリングSP5の合成ばね定数k5、複数の第6スプリングSP6の合成ばね定数k6、第1中間部材12の慣性モーメントJ21、第2中間部材14の慣性モーメントJ22(一体回転するように連結されるタービンランナ5等の慣性モーメントを考慮(合算)したもの)、第3中間部材15の慣性モーメントJ23が選択・設定される。
このように、ドリブン部材16の振動振幅Θ3を理論上ゼロにし得る(より低下させ得る)3つの反共振点のうち、最も低回転側の反共振点A1を500rpmから1500rpmまでの低回転数域(ロックアップ回転数Nlupの想定設定範囲)内に設定することで、図3に示すように、反共振点A1を生じさせる共振(反共振点A1を形成するために生じさせざるを得ない共振、図3における共振点R1参照)をロックアップクラッチ8の非ロックアップ領域(図3における二点鎖線参照)に含まれるように、より低回転側(低周波側)にシフトさせることができる。これにより、より低い回転数でのロックアップ(エンジンとドライブ部材11との連結)を許容すると共に、エンジンからの振動が大きくなりがちな低回転数域におけるダンパ装置10の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
なお、上記式(5)の解は、カルダノの解法や、ビエタの解法、ラグランジュの解法といった代数的解法によって得ることもできる。例えばカルダノの解法を用いれば、式(5)の3つの解に応じた反共振点の振動数f1,f2,f3は、次式(11),(12)および(13)に示すように表される。ただし、次式(12)および(13)における“i”は、虚数単位(i2=−1)であり、次式(11),(12)および(13)における“a”は、次式(14)に示すとおりであり、“b”は、次式(15)に示すとおりであり、“u”は、次式(16)に示すとおりであり、“v”は、次式(17)に示すとおりであり、式(16)および(17)における“R”は、次式(18)に示すとおりである。従って、カルダノの解法によって得られる式(5)の3つの解に応じた振動数f1,f2,f3の最小値(最小振動数)が上記式(10)を満たすように、第1から第6スプリングSP1〜SP6のばね定数k1,k2,k3,k4,k5,k6と、第1から第3中間部材12,14,15の慣性モーメントJ21,J22,J23とを定めてもよい。
更に、式(10)を満たすようにダンパ装置10を構成するに際しては、最も低回転側の反共振点A1を生じさせる共振(共振点R1)の振動数が上記最小振動数fa1よりも小さく、かつできるだけ小さい値になるように(更に、主たる共振の中で振幅が最大になるように)、ばね定数k1,k2,k3,k4,k5,k6と、慣性モーメントJ21,J22,J23とを選択・設定すると好ましい。これにより、最小振動数fa1をより小さくし、より一層低い回転数でのロックアップを許容することができる。そして、主に第2および第3中間部材14,15並びに第5スプリングSP5が一体となって振動することに起因した共振の発生により最も低回転側の反共振点A1が形成されるように、ばね定数k1,k2,k3,k4,k5,k6と、慣性モーメントJ21,J22,J23とを選択・設定するとよい。
また、上述のように構成されるダンパ装置10では、図3に示すように、反共振点A1が発生してからエンジンの回転数が高まるのに伴って次の共振(図3における共振点R2参照、例えば、主に第1中間部材12が振動することに起因した共振)が発生し、当該共振の発生に伴って第2の反共振点A2が形成される。更に、反共振点A2が発生してからエンジンの回転数が高まるのに伴って次の共振(図3における共振点R3参照、例えば、主に第2および第3中間部材14,15が互いに逆位相で振動することに起因した共振)が発生し、当該共振の発生に伴って第3の反共振点A3が形成される。従って、ダンパ装置10では、反共振点A1よりも高回転側(高周波側)の第2の反共振点A2(振動数fa2)を例えば変速機の入力軸ISの共振点(の周波数)に一致させたり(より近づけたり)、反共振点A2よりも高回転側(高周波側)の第3の反共振点A3(振動数fa3)を例えばドライブシャフトの共振点(の周波数)に一致させたり(より近づけたり)することで、これらの共振の発生を良好に抑制することができる。
更に、上述のように構成されるダンパ装置10においてロックアップ回転数Nlup付近での振動減衰性能をより向上させるためには、当該ロックアップ回転数Nlupと共振点R2に対応したエンジンの回転数とをできるだけ離間させる必要がある。従って、式(10)を満たすようにダンパ装置10を構成するに際しては、Nlup≦(120/n)・fa1(=Nea1)を満たすように、ばね定数k1,k2,k3,k4,k5,k6と、慣性モーメントJ21,J22,J23とを選択・設定すると好ましい。これにより、変速機の入力軸ISへの振動の伝達を良好に抑制しながらロックアップクラッチ8によるロックアップを実行すると共に、ロックアップの実行直後に、エンジンからの振動をダンパ装置10により極めて良好に減衰することが可能となる。
また、式(10)を満たすようにダンパ装置10を構成するに際して、第1スプリングSP1のばね定数k1を第2から第6スプリングSP2〜SP6のばね定数k2〜k6よりも小さくすることで、ダンパ装置10全体の剛性をより低下させて、当該ダンパ装置10の最大捩れ角θmaxをより大きくすることが可能となる。
更に、式(10)を満たすようにダンパ装置10を構成するに際して、第5スプリングSP5のばね定数k5を第1〜第4および第6スプリングSP1〜SP4およびSP6のばね定数k1〜k4およびk6よりも大きくするとよい。これにより、最も低回転側の反共振点A1よりも低回転側(低周波側)で第2および第3中間部材14,15および第5スプリングSP5を一体に共振させ、当該反共振点A1をより低回転側に設定することが可能となる。加えて、第2中間部材14をタービンランナ5に一体回転するように連結すれば、当該第2中間部材14の実質的な慣性モーメントJ22(第2中間部材14やタービンランナ5等の慣性モーメントの合計値)をより大きくすることができるので、反共振点A1の振動数fa1をより一層小さくして当該反共振点A1をより低回転側(低周波側)に設定することが可能となる。ただし、第2中間部材14の代わりに、第1中間部材12および第3中間部材15の何れかがタービンランナ5に一体回転するように連結されてもよい。
上述のように、反共振点A1の振動数(最小振動数)fa1に基づいてダンパ装置10を設計することにより、当該ダンパ装置10の振動減衰性能を極めて良好に向上させることが可能となる。そして、本発明者らの研究・解析によれば、ロックアップ回転数Nlupが例えば1000rpm前後の値に定められる場合、例えば900rpm≦(120/n)・fa1≦1200rpmを満たすようにダンパ装置10を構成することで、実用上極めて良好な結果が得られることが確認されている。更に、本発明者らの解析によれば、ダンパ装置10の等価ばね定数ktotal(=k1+(1/k2+1/k3)-1+(1/k4+1/k5+1/k6)-1)に対する第1から第6スプリングSP1〜SP6のばね定数k1,k2,k3,k4,k5,k6の比が、
0.01≦k1/ktotal≦0.40
0.75≦k2/ktotal≦1.35
0.75≦k3/ktotal≦1.35
0.65≦k4/ktotal≦1.25
9.00≦k5/ktotal≦9.60
0.65≦k6/ktotal≦1.25
を満たすようにすることで、ダンパ装置10の振動減衰性能を実用上極めて良好に確保し得ることが判明している。
以上説明したように、本発明によるダンパ装置は、内燃機関からの動力が伝達される入力要素と、出力要素とを含むダンパ装置において、前記入力要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する第1弾性体を含む第1トルク伝達経路と、第1中間要素、前記入力要素と前記第1中間要素との間でトルクを伝達する第2弾性体、および前記第1中間要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する第3弾性体を含み、前記第1トルク伝達経路と並列に設けられる第2トルク伝達経路と、第2および第3中間要素、前記入力要素と前記第2中間要素との間でトルクを伝達する第4弾性体、前記第2中間要素と前記第3中間要素との間でトルクを伝達する第5弾性体、および前記第3中間要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する第6弾性体を含み、前記第1および第2トルク伝達経路と並列に設けられる第3トルク伝達経路とを備えることを特徴とする。
このダンパ装置では、第1弾性体と、第2および第3弾性体と、第4から第6弾性体とが並列に作用する間に、第1、第2および第3トルク伝達経路を介して出力要素に伝達される振動が互いに打ち消し合うことで当該出力要素の振動の振幅が理論上ゼロとなる反共振点を3つ設定することができる。従って、このダンパ装置では、3つの反共振点の振動数を減衰すべき振動(共振)の周波数に一致させる(より近づける)ことで、振動減衰性能を極めて良好に向上させることが可能となる。
また、前記第1、第2、第3、第4、第5および第6弾性体のばね定数と、前記第1、第2および第3中間要素の慣性モーメントとは、前記出力要素の振動振幅がゼロになる反共振点の振動数のうちの最小振動数に基づいて定められてもよい。これにより、内燃機関からの振動が大きくなりがちな低回転数域におけるダンパ装置の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
更に、前記第1、第2、第3、第4、第5および第6弾性体のばね定数と、前記第1、第2および第3中間要素の慣性モーメントとは、前記反共振点の最小振動数と前記内燃機関の気筒数とに基づいて定められてもよい。これにより、内燃機関から入力要素に伝達される振動をより良好に減衰することが可能となる。
また、前記ダンパ装置は、前記反共振点の前記最小振動数を“fa1”とし、前記内燃機関の気筒数を“n”としたときに、
500rpm≦(120/n)・fa1≦1500rpm
を満たすように構成されてもよい。
このように、出力要素の振動振幅をより低下させ得る反共振点のうち、最も低回転側(低周波側)の反共振点を500rpmから1500rpmまでの低回転数域内に設定することで、より低い回転数での内燃機関と入力要素との連結を許容すると共に、内燃機関からの振動が大きくなりがちな低回転数域におけるダンパ装置の振動減衰効果をより向上させることが可能となる。また、最も低回転側の反共振点を生じさせる共振(当該反共振点を形成するために生じさせざるを得ない共振)の振動数が最小振動数fa1よりも小さく、かつできるだけ小さい値になるようにダンパ装置を構成することで、最小振動数fa1をより小さくし、より一層低い回転数での内燃機関と入力要素との連結を許容することができる。また、最も低回転側の反共振点よりも高回転側(高周波側)の反共振点の振動数を減衰すべき振動(共振)の周波数に一致させる(より近づける)ことで、振動減衰性能を極めて良好に向上させることが可能となる。
更に、前記ダンパ装置は、前記内燃機関と前記入力要素とを連結するロックアップクラッチのロックアップ回転数を“Nlup”としたときに、
Nlup≦(120/n)・fa1
を満たすように構成されてもよい。これにより、ロックアップクラッチにより内燃機関と入力要素とを連結する際や両者の連結直後に、内燃機関からの振動をダンパ装置により極めて良好に減衰することが可能となる。
また、前記ダンパ装置は、900rpm≦(120/n)・fa1≦1200rpmを満たすように構成されてもよい。
更に、前記反共振点の最小振動数fa1は、上記式(5)の3次方程式の解の最小値を“ωmin”としたときに、fa1=ωmin/2πと表されてもよい。
また、前記第1弾性体のばね定数は、前記第2、第3、第4、第5および第6弾性体のばね定数よりも小さくてもよい。これにより、ダンパ装置全体の剛性をより低下させて、当該ダンパ装置の捩れ角をより大きくすることが可能となる。
更に、前記第5弾性体のばね定数は、前記第1、第2、第3、第4および第6弾性体のばね定数よりも大きくてもよい。これにより、最も低回転側(低周波側)の反共振点よりも低回転側で第2および第3中間要素および第5弾性体を一体に共振させ、当該反共振点をより低回転側に設定することが可能となる。
また、前記第1、第2および第3中間要素の何れかは、ポンプインペラと流体伝動装置を構成するタービンランナに一体回転するように連結されてもよい。これにより、第1、第2および第3中間要素の何れかの実質的な慣性モーメント(慣性モーメントの合計値)をより大きくすることができる。
更に、前記第2および第3弾性体は、前記ダンパ装置の周方向に沿って並ぶように配置されてもよく、前記第1、第4、第5および第6弾性体は、前記周方向に沿って並ぶように前記第2および第3弾性体の径方向外側に配置されてもよい。これにより、ダンパ装置の軸長をより短縮化することが可能となる。
また、前記ダンパ装置は、前記内燃機関から前記入力要素に伝達される入力トルクが予め定められた閾値以上になるまで、前記第1から第6弾性体の撓みが規制されないように構成されてもよい。
なお、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。