インクジェットプリンタで印刷を行う場合、例えば印刷物の耐候性や光沢性を高める目的等で、印刷された画像を覆うオーバーコート層を形成する場合がある。また、オーバーコート層について、透明なクリアインクで印刷を行うことで形成する場合がある。
しかし、例えば印刷の条件によっては、オーバーコート層に凹凸が生じ、印刷の品質が低下する場合がある。より具体的には、例えば、オーバーコート層に凹凸が生じることにより、横すじ等が生じる場合がある。この場合、横すじとは、例えば、インクジェットヘッドの主走査動作時の移動方向へ生じるすじ状の模様のことである。また、凹凸の影響により、クラックや気泡の混入等の問題が生じる場合がある。また、硬化後のクリアインクの状態について、硬化縞(硬化すじ)が発生し、光沢性が低下する場合等がある。この場合、硬化縞とは、例えば、各回の主走査動作を行う領域(主走査領域)の境界位置等に生じるすじ状の模様のことである。
そのため、従来、より適切な方法でオーバーコート層を形成することが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷方法及び印刷装置を提供することを目的とする。
本願の発明者は、オーバーコート層に凹凸等が生じる原因について、鋭意研究を行った。そして、例えばカラーインク等の有色インクで画像を描き、その上にオーバーコート層を形成する場合について、印刷対象の基材の被印刷面に有色インクによる高低差が生じ、クリアインクの塗布量の不均一が生じる場合があることを見出した。また、このことが原因となり、オーバーコート層に意図しない凹凸が生じる場合があることを見出した。
より具体的に、例えば、紫外線硬化型の有色インクで画像を印刷する場合、通常、被印刷面の一部に有色インクのドットを形成することにより、画像を印刷する。そのため、被印刷面には、有色インクが塗布される領域と、有色インクが塗布されない領域とが存在することになる。この場合、有色インクが塗布される領域とは、例えば、有色インクのドットが形成される領域である。また、有色インクが塗布されない領域とは、例えば、有色インクが塗布されずに基材の表面が露出している領域である。そして、この場合、インクの層の厚みの分の高低差が、有色インクが塗布される領域と、有色インクが塗布されない領域との間で生じることになる。
また、例えば紫外線硬化型のクリアインクであるUVクリアインクでオーバーコート層を形成する場合、通常、基材上のインクのドットが十分に平坦化した後に、インクを硬化させる。そのため、この場合、例えば、基材上にUVクリアインクのインク滴が着弾した後、ある程度の時間を待って、紫外線を照射する。
しかし、この場合、例えばオーバーコート層を形成する領域の下地に高低差があると、紫外線を照射する前にUVクリアインクが流れ、UVクリアインクの塗布量が不均一になるおそれがある。そのため、例えば、下地において、有色インクによる高低差がある場合、UVクリアインクの塗布量の不均一が生じる場合がある。また、その結果、硬化後のオーバーコート層に意図しない凹凸が生じる場合がある。
これに対し、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、有色インクが塗布されない領域について、そのまま基材の表面を露出させるのではなく、UVクリアインクを塗布することを考えた。このように構成すれば、例えば、有色インクが塗布されない領域がUVクリアインクで埋められるため、有色インクが塗布される領域と、有色インクが塗布されない領域との間に高低差が生じることを適切に抑え得ると考えられる。また、その後にオーバーコート層を形成することで、硬化後のオーバーコート層に凹凸が生じることを抑え得ると考えられる。また、本願の発明者は、更に、実験等により、このような効果が適切に得られることを確認した。上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)印刷対象の基材の被印刷面へインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、有色の紫外線硬化型インクである有色インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである有色インク用ヘッドと、クリア色の紫外線硬化型インクであるUVクリアインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドであるクリアインク用ヘッドと、紫外線を照射する紫外線照射装置とを用い、基材の被印刷面の少なくとも一部の領域に対し、有色インク用ヘッドによるインク滴の吐出と、紫外線照射装置による紫外線の照射とを行う段階であり、印刷すべき画像である印刷画像に基づいて有色インク用ヘッドによるインク滴の吐出を行うことにより、有色インクで印刷画像を印刷する有色印刷段階と、クリアインク用ヘッドによるインク滴の吐出と、紫外線照射装置による紫外線の照射とを行うことにより、基材の被印刷面のうち、少なくとも有色印刷段階でインク滴が吐出されない領域である非有色領域に対し、UVクリアインクによる印刷を行う非有色領域クリア印刷段階と、非有色領域クリア印刷段階の後に行う段階であり、有色印刷段階で印刷された印刷画像を少なくとも覆う領域に対し、クリアインク用ヘッドによるインク滴の吐出と、紫外線照射装置による紫外線の照射とを行うことにより、UVクリアインクで印刷画像を覆う層であるオーバーコート層を形成するオーバーコート層形成段階とを行う。
このように構成した場合、例えば、基材の被印刷面のうち、有色インクが塗布されない領域について、UVクリアインクで適切に埋めることができる。また、これにより、インクの層の膜厚を制御し、表面をレベリングさせ、例えば、有色インクが塗布される領域と、有色インクが塗布されない領域との間に高低差が生じることを適切に抑えることができる。また、その後にオーバーコート層を形成することで、硬化後のオーバーコート層に凹凸が生じることを抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、オーバーコート層の凹凸等により印刷の品質が低下すること等を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、より適切な方法でオーバーコート層を形成することができる。
尚、オーバーコート層は、印刷画像のみではなく、非有色領域クリア印刷段階で形成されたUVクリアインクの層の一部又は全体を更に覆ってよい。また、この印刷方法は、例えば、印刷物を製造する印刷物の製造方法と考えることもできる。
また、上記の記載等からも自明であるが、非有色領域クリア印刷段階について、少なくとも有色印刷段階でインク滴が吐出されない領域である非有色領域に対し、UVクリアインクによる印刷を行うとは、例えば、基材の被印刷面において予め設定された印刷対象の領域の中で、少なくとも有色印刷段階でインク滴が吐出されない領域である非有色領域に対し、UVクリアインクによる印刷を行うことであってよい。この場合、非有色領域とは、例えば、印刷対象の領域の中で、印刷画像を構成する有色インクのインク滴が吐出されない領域のことである。また、オーバーコート層形成段階について、UVクリアインクで印刷画像を覆うとは、印刷画像においてオーバーコート層を形成することで保護すべき領域をUVクリアインクで覆うことであってよい。そのため、例えば意図的に印刷画像の一部の上にオーバーコート層を形成しない場合、UVクリアインクで印刷画像を覆うとは、印刷画像において意図的に除外した部分以外をUVクリアインクで覆うことであってよい。
(構成2)オーバーコート層形成段階は、少なくとも印刷画像を覆うように予め設定された領域をUVクリアインクで塗りつぶす。予め設定された領域をUVクリアインクで塗りつぶすとは、例えば、所定の領域の全体に対して一定の均一な濃度でインク滴を吐出することである。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層をより適切に形成できる。
(構成3)非有色領域クリア印刷段階は、UVクリアインクをマット状に硬化させ、オーバーコート層形成段階は、UVクリアインクをグロス状に硬化させる。このように構成すれば、例えば、有色インクが塗布される領域と、有色インクが塗布されない領域との間に高低差が生じることをより適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、オーバーコート層をより適切に形成できる。
ここで、インクをマット状に硬化させるとは、例えば、インクのドットが平坦化する前に、インクのドットを硬化させることである。この場合、例えば、基材へのインク滴の着弾直後に紫外線を照射することにより、インクのドットが平坦化する前に、インクのドットを硬化させる。また、より具体的に、例えば、インクジェットヘッドに主走査動作を行わせる場合、主走査方向においてインクジェットヘッドと隣接する位置に紫外線照射装置を配設し、主走査動作を行いながら紫外線を照射する。
また、インクをグロス状に硬化させるとは、例えば、インクのドットが平坦化した後に、インクのドットを硬化させることである。この場合、例えば、基材へのインク滴の着弾後、インクのドットが平坦化するまでの時間を待った後に、紫外線を照射する。また、より具体的に、例えば、インクジェットヘッドに主走査動作を行わせる場合、基材上の各領域に対し、紫外線の照射を行わずに主走査動作を行い、その後に紫外線を照射する。この場合、紫外線の照射は、例えば、基材上の各領域に対し、インクジェットヘッドの主走査動作とタイミングをずらして紫外線照射装置を走査させることで行うことが考えられる。また、例えば、基材の全体に対する主走査動作が終わった後に、紫外線照射装置で紫外線を照射してもよい。
(構成4)有色インク用ヘッド及びクリアインク用ヘッドは、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作と、主走査方向と直交する副走査方向へ基材に対して相対的に移動する副走査動作とを行うことにより、基材への印刷を行い、有色印刷段階における有色インク用ヘッドの主走査動作と、非有色領域クリア印刷段階におけるクリアインク用ヘッドの主走査動作とを並行して行う。
このように構成すれば、例えば、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階をより効率的に実行できる。また、これにより、オーバーコート層を形成するまでに要する時間を短縮し、より高速に印刷を行うことができる。
(構成5)非有色領域クリア印刷段階は、印刷画像に対してグレースケール化と階調の反転とを行った画像に基づいてクリアインク用ヘッドによるインク滴の吐出を行う。印刷画像に対してグレースケール化と階調の反転とを行った画像に基づいてクリアインク用ヘッドによるインク滴の吐出を行うとは、例えば、UVクリアインクでこの画像を印刷することである。
印刷画像として、例えば写真等の画像を用いる場合、印刷画像内で位置による階調の差が生じる場合がある。より具体的に、例えば、印刷画像として、黒い部分と白い部分を有する被写体の写真等を用いる場合、両者の間で、階調の差が大きくなる。また、インクジェット方式で印刷を行う場合、階調の差により、基材上に形成されるインクの厚みに差が生じる場合がある。そして、この場合、印刷画像内においても、インクの層の厚みについて、階調の差に応じた高低差が生じるおそれがある。そして、この場合、印刷画像内での高低差に起因して、オーバーコート層に凹凸等が生じるおそれもある。
これに対し、印刷画像に対してグレースケール化と階調の反転とを行った画像に基づいてクリアインク用ヘッドによるインク滴の吐出を行う場合、例えば、印刷画像と重なる位置に対し、印刷画像においてより明るい階調の部分に多くのUVクリアインクを吐出する。また、印刷画像においてより暗い階調の部分により少ないUVクリアインクを吐出する。
そのため、このように構成した場合、例えば、非有色領域クリア印刷段階でのUVクリアインクによる印刷を、印刷画像内での階調の分布に合わせて行うことができる。また、これにより、有色印刷段階の動作のみでは印刷画像内で階調の差に応じた高低差が生じる場合にも、非有色領域クリア印刷段階の動作を行うことにより、高低差を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、より適切な方法でオーバーコート層を形成することができる。
(構成6)非有色領域クリア印刷段階の後に、有色印刷段階で印刷された印刷画像を少なくとも覆う領域をUVクリアインクで塗りつぶし、かつ、UVクリアインクをマット状に硬化させるマット状クリア印刷段階を更に行い、オーバーコート層形成段階は、マット状クリア印刷段階でマット状に硬化したUVクリアインクの上に、オーバーコート層を形成する。
このようなマット状クリア印刷段階を行わずに、例えば、非有色領域クリア印刷段階の直後にオーバーコート層形成段階を行う場合、オーバーコート層の下地として、有色印刷段階で形成された有色インクの層の部分と、非有色領域クリア印刷段階で形成されたUVクリアインクの層の部分とが存在することになる。そして、この場合、有色インクとUVクリアインクとの特性の違いにより、オーバーコート層と下地との間の関係について、位置による差が生じるおそれがある。
より具体的に、例えば、有色インクは顔料等の色材を含むのに対し、UVクリアインクは色材を含まない。そして、この色材の有無の違いにより、その上に重ねるUVクリアインクへの影響に差が生じること等が考えられる。また、このような差として、例えば、UVクリアインクを弾く特性等に差が生じること等が考えられる。そして、このような差が生じた場合、その影響により、UVクリアインクの塗布量が不均一になるおそれもある。
これに対し、このように構成した場合、オーバーコート層の下地として、マット状クリア印刷段階で、マット状に硬化させたUVクリアインクの層を形成する。そのため、このように構成すれば、例えば、オーバーコート層の下地の状態をより適切に均一化できる。また、これにより、例えば、オーバーコート層をより適切に形成できる。
尚、使用する各インクの特性や、求められる印刷の品質によっては、例えば、マット状クリア印刷段階を行わなくても、オーバーコート層を適切に形成できる。この場合、マット状クリア印刷段階を行わずに、例えば、非有色領域クリア印刷段階の直後にオーバーコート層形成段階を行ってもよい。
(構成7)マット状クリア印刷段階は、印刷画像を少なくとも覆う第1の領域をUVクリアインクで塗りつぶし、オーバーコート層形成段階は、第1の領域よりも狭い領域であり、縁部が第1の領域の内部にある第2の領域をUVクリアインクで塗りつぶす。第2の領域は、例えば、第1の領域に対し、縁部の領域を少し細らせた領域であってよい。
紫外線硬化型インクを用いて、一定の領域を塗りつぶした場合、硬化後の状態において、領域の縁部がわずかに盛り上がった状態になる場合がある。そのため、例えば、マット状クリア印刷段階でマット状のUVクリアインクの層を形成する場合にも、領域の縁部がわずかに盛り上がった状態になる場合がある。
そして、この場合、例えばマット状のUVクリアインクの層と全く同じ領域にオーバーコート層を形成すると、縁部が重なることにより、縁部の盛り上がりの影響が大きくなるおそれがある。より具体的には、例えば、縁部におけるUVクリアインクの層が厚くなり、クラックが生じやすくなる場合がある。これに対し、このように構成した場合、例えば、第1の領域よりも狭い第2の領域に対し、両領域の縁部が重ならないようにオーバーコート層を形成することにより、縁部の盛り上がりの影響が大きくなることを適切に防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、より適切な方法でオーバーコート層を形成することができる。
(構成8)基材は、プラスチックのカードである。このプラスチックのカードは、例えば非可撓性のプラスチックのカードである。また、このプラスチックのカードは、例えば、写真付きのIDカード用のカードであってよい。この場合、印刷画像として、例えば、人物の写真を含む画像が印刷される。
基材としてプラスチックのカードを用いる場合、基材の表面のもともとの平坦性が高いため、インクの層の厚みの分の高低差が生じると、高い部分と低い部分との差が明確になりやすい。また、その結果、例えばオーバーコート層の形成時において、硬化前のUVクリアが流れやすくなるおそれがある。また、基材としてプラスチックのカードを用いる場合、このような高低差が生じると、インク厚の薄い部分がUVクリアインクを弾きやすくなる場合がある。また、その結果、UVクリアインクの溜まり等が生じる場合がある。
これに対し、このように構成した場合、例えば、有色インクが塗布される領域と、有色インクが塗布されない領域との間に高低差が生じることを適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、プラスチックのカードを基材として用いる場合にも、より適切な方法でオーバーコート層を形成することができる。
(構成9)印刷対象の基材の被印刷面へインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、有色の紫外線硬化型インクである有色インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである有色インク用ヘッドと、クリア色の紫外線硬化型インクであるUVクリアインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドであるクリアインク用ヘッドと、予め設定された色の紫外線硬化型インクである所定色インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである所定色インク用ヘッドと、紫外線を照射する紫外線照射装置とを用い、基材の被印刷面の少なくとも一部の領域に対し、所定色インク用ヘッドによるインク滴の吐出と、紫外線照射装置による紫外線の照射とを行う所定色印刷段階と、基材の被印刷面の少なくとも一部の領域に対し、有色インク用ヘッドによるインク滴の吐出と、紫外線照射装置による紫外線の照射とを行う段階であり、印刷すべき画像である印刷画像に基づいて有色インク用ヘッドによるインク滴の吐出を行うことにより、有色インクで印刷画像を印刷する有色印刷段階と、有色印刷段階で印刷された印刷画像を少なくとも覆う領域に対し、クリアインク用ヘッドによるインク滴の吐出と、紫外線照射装置による紫外線の照射とを行うことにより、UVクリアインクで印刷画像を覆う層であるオーバーコート層を形成するオーバーコート層形成段階とを行い、所定色印刷段階は、基材の被印刷面のうち、少なくとも有色印刷段階でインク滴が吐出されない領域である非有色領域に対し、所定色インクによる印刷を行う。
本願の発明者は、更なる鋭意研究により、有色インクが塗布される領域と、非有色領域との間に高低差が生じることを防ぐためのインクとして、例えば、UVクリアインク以外のインクを用いることも可能であることを見出した。より具体的には、非有色領域に対し、例えば、UVクリアインク以外の所定の色のインク(所定色インク)を塗布した場合にも、非有色領域が所定色インクで埋められるため、このような高低差を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
尚、この場合、所定色インクは、予め設定された単色(例えば白色)のインクであってよい。所定色インクとしては、例えば、印刷画像の背景となる色のインクを好適に用いることができる。また、所定色インクは、例えば、基材の被印刷面と同じ色のインクであってよい。
(構成10)所定色印刷段階は、有色印刷段階よりも先に、所定色インクによる印刷を行う。このように構成すれば、例えば、有色インクが塗布されない領域を所定色インクでより適切に埋めることができる。
ここで、非有色領域を埋めるインクとして、UVクリアインクを用いる場合、インクが透明であるため、非有色領域へのインク滴の吐出を有色印刷段階よりも後で行ったとしても、印刷画像の視認性が損なわれることはない。しかし、UVクリアインク以外の所定色インクを用いる場合、非有色領域へのインク滴の吐出を有色印刷段階よりも後で行うと、印刷画像の上に所定色インクが重なり、印刷画像の視認性が損なわれるおそれがある。また、その結果、印刷画像の品質が低下するおそれがある。
これに対し、有色印刷段階よりも先に所定色印刷段階の動作を行えば、所定色インクにより印刷画像の品質が低下することを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、オーバーコート層をより適切に形成することができる。
(構成11)所定色インクは、白色のインクである。このように構成した場合、例えば、印刷画像の付近に不要な着色を行うことなく、非有色領域を所定色インクで適切に埋めることができる。また、これにより、例えば、オーバーコート層をより適切に形成することができる。
尚、上記以外の点に関し、構成9〜11の各動作は、例えば、構成1〜8における各動作と同一又は同様に行ってよい。例えば、基材は、プラスチックのカードであってよい。また、有色印刷段階やオーバーコート層形成段階の動作については、構成1〜8における対応する動作と同一又は同様に行ってよい。より具体的に、オーバーコート層形成段階は、例えば、少なくとも印刷画像を覆うように予め設定された領域をUVクリアインクで塗りつぶす。また、オーバーコート層形成段階は、例えば、UVクリアインクをグロス状に硬化させる。
また、上記以外の点について、所定色印刷段階のより具体的な動作は、例えば、構成1〜8における非有色領域クリア印刷段階と同一又は同様に行うことが考えられる。例えば、所定色印刷段階は、所定色インクをマット状に硬化させてよい。また、所定色印刷段階は、印刷画像に対してグレースケール化と階調の反転とを行った画像に基づいて所定色インク用ヘッドによるインク滴の吐出を行ってよい。
また、例えば、所定色印刷段階及び有色印刷段階の後に、構成6又は7と同一又は同様のマット状クリア印刷段階を更に行ってもよい。この場合、オーバーコート層形成段階は、例えば、マット状クリア印刷段階で形成したマット状のUVクリアインクの層の上に、オーバーコート層を形成してよい。また、この場合、マット状クリア印刷段階は、例えば、印刷画像を少なくとも覆う第1の領域をUVクリアインクで塗りつぶす。そして、オーバーコート層形成段階は、例えば、第1の領域よりも狭い領域であり、縁部が第1の領域の内部にある第2の領域をUVクリアインクで塗りつぶす。また、各インクジェットヘッドに主走査動作を行わせることで印刷を行う場合、例えば、所定色印刷段階における所定色インク用ヘッドの主走査動作と、非有色領域クリア印刷段階におけるクリアインク用ヘッドの主走査動作とを並行して行うことも考えられる。
(構成12)インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、構成1から11のいずれかに記載の印刷方法で印刷を行う。このように構成すれば、例えば、構成1から11と同様の効果を得ることができる。
本発明によれば、例えば、印刷対象の基材の被印刷面へインクジェット方式で印刷を行う場合において、より適切な方法でオーバーコート層を形成することができる。
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷方法を実行する印刷装置10の一例を示す。図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。尚、以下に説明をする点以外について、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を有してよい。また、より具体的に、印刷装置10としては、例えばミマキエンジニアリング社製のUJFシリーズのインクジェットプリンタ等を好適に用いることができる。UJFシリーズのインクジェットプリンタとは、例えば、ミマキエンジニアリング社製のUJF−3042型(例えば、UJF−3042FX又はUJF−3042HG)のインクジェットプリンタや、UJF−6042型のインクジェットプリンタ等である。
印刷装置10は、インクジェットヘッドに主走査動作(スキャン動作)を行わせるシリアル方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。印刷装置10は、マルチパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタであることが好ましい。この場合、マルチパス方式とは、例えば、印刷対象の媒体(メディア)である基材50において印刷が行われる被印刷領域の各位置に対して複数回の主走査動作を行う方式である。また、本例において、印刷装置10は、紫外線硬化型インクを用いて基材50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタ(UVプリンタ)であり、ヘッド部12、キャリッジ14、ガイドレール16、走査駆動部18、テーブル20、及び制御部22を備える。
ヘッド部12は、基材50に対してインク滴を吐出することで印刷を行う部分である。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッドを有しており、制御部22の指示に応じて、印刷する画像の各画素に対応するインクのドットを基材50上に形成する。ヘッド部12のより具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
キャリッジ14は、基材50と対向させてヘッド部12を保持する部材である。ガイドレール16は、主走査方向へのキャリッジ14の移動をガイドするレールである。また、走査駆動部18は、ヘッド部12に主走査動作及び副走査動作を行わせる駆動部である。
ここで、ヘッド部12に主走査動作及び副走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに、主走査動作及び副走査動作を行わせることである。また、インクジェットヘッドに主走査動作を行わせるは、例えば、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつ基材50へインク滴を吐出する動作をインクジェットヘッドに行わせることである。本例の主走査動作時において、走査駆動部18は、ガイドレール16に沿ってキャリッジ14を移動させることにより、Y方向へヘッド部12を移動させる。
また、インクジェットヘッドに副走査動作を行わせるとは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向(X方向)へ、基材50に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させることである。この場合、X方向とは、図中に示したY方向及びZ方向と直交する方向である。また、本例の副走査動作時において、走査駆動部18は、X方向へガイドレール16を移動させることにより、X方向へヘッド部12を移動させる。
尚、印刷装置10の構成としては、例えば、副走査動作時において、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、基材50の側を移動させることも考えられる。この場合、例えば、基材50を支持するテーブル20を移動させることにより、副走査動作を行ってよい。
テーブル20は、基材50を載置する台状部材であり、ヘッド部12と対向させて基材50を支持する。また、本例において、テーブル20は、所定の上下方向(図中のZ方向)へ上面を昇降させる機能を有する。この場合、上下方向とは、例えば、対向しているヘッド部12と基材50とを結ぶ方向である。このように構成すれば、例えば、様々な種類の基材50を用いる場合にも、基材50の厚みに合わせ、ヘッド部12と基材50との間の距離を適切に調整できる。
また、本例において、テーブル20は、複数の基材50を上面に並べて保持する。このように構成すれば、例えば、複数の基材50に対して同時に印刷を行うことができる。また、テーブル20は、例えば、基材50を保持する保持部材を含む部分であってよい。この場合、保持部材とは、例えば、基材50の形状に合わせて作製された治具等であってよい。
制御部22は、例えば印刷装置10のCPUである。制御部22は、例えばホストPCの指示に応じて、印刷装置10の各部の動作を制御する。以上の構成により、印刷装置10は、基材50に対し、印刷を行う。
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、説明をする。図1(b)は、ヘッド部12の具体的な構成の一例を示す。
本例において、ヘッド部12は、例えば、有色インク用ヘッドの一例である複数のカラーインク用ヘッド202と、クリアインク用ヘッド204と、複数の紫外線照射装置206とを有する。有色インク用ヘッドとは、例えば、有色の紫外線硬化型インクである有色インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドのことである。また、本例において、複数のカラーインク用ヘッド202のそれぞれは、紫外線硬化型のCMYKインクの各色のインクのインク滴を吐出する。この場合、CMYKインクの各色のインクは、有色インクの一例である。
尚、複数のカラーインク用ヘッド202としては、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、図示は省略したが、複数のカラーインク用ヘッド202のそれぞれは、例えば、副走査方向(X方向)へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。そして、複数のカラーインク用ヘッド202は、例えば、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
クリアインク用ヘッド204は、クリア色の紫外線硬化型インクであるUVクリアインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。この場合、クリア色とは、例えば、無色透明な色のことである。また、クリア色のインクとは、例えば、顔料等の着色剤を添加していないインクのことであってよい。また、クリア色のインクは、例えば、印刷物の保護層となるオーバーコート層を形成するために用いられるインクであってよい。
尚、クリアインク用ヘッド204としても、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、図示は省略したが、クリアインク用ヘッド204は、例えば、副走査方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。そして、クリアインク用ヘッド204は、例えば、複数のカラーインク用ヘッド202に対し、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
複数の紫外線照射装置206は、紫外線硬化型インクを硬化させるための紫外線を照射する光源である。紫外線照射装置206としては、例えば、UVLEDを有する光源を好適に用いることができる。また、本例において、複数の紫外線照射装置206のそれぞれは、例えば、主走査方向において、複数のカラーインク用ヘッド202とクリアインク用ヘッド204との並びの一方側及び他方側のそれぞれに配設される。
尚、例えば印刷装置10の構成の変形例において、ヘッド部12の具体的な構成としては、図1(b)に示した構成以外のものを用いることもできる。例えば、図1(b)では、図示の便宜上、全てのインクジェットヘッド(複数のカラーインク用ヘッド202及びクリアインク用ヘッド204)について、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ並ぶ場合の構成を図示した。しかし、ヘッド部12の構成の他の例においては、例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらして配設すること等も考えられる。例えば、クリアインク用ヘッド204について、複数のカラーインク用ヘッド202と副走査方向における位置をずらして配設すること等も考えられる。
また、複数のカラーインク用ヘッド202及びクリアインク用ヘッド204のそれぞれは、例えば、複数のインクジェットヘッドにより構成される複合ヘッドであってもよい。例えば、複数のカラーインク用ヘッド202及びクリアインク用ヘッド204のそれぞれは、複数のインクジェットヘッドをスタガ配置で並べたスタガヘッドであってもよい。
続いて、印刷装置10を用いて行う印刷の動作(印刷方法)について、更に詳しく説明をする。図2は、本例において行う印刷の動作の一例を示すフローチャートである。本例において行う印刷の動作は、印刷対象の基材50の被印刷面へインクジェット方式で印刷を行う動作である。また、基材50としては、例えば、プラスチックのカードが用いられる。
より具体的に、本例における印刷の動作では、先ず、CMYKインクによるカラー印刷と、UVクリアインクをマット調に印刷するクリアマット調印刷とを行う(ステップS102)。このステップS102は、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階を行うステップの一例である。
また、この場合、有色印刷段階とは、例えば、基材50の被印刷面の少なくとも一部の領域に対し、カラーインク用ヘッド202によるインク滴の吐出と、紫外線照射装置206による紫外線の照射とを行う段階である。本例において、有色印刷段階では、例えば、印刷すべき画像である印刷画像に基づいて複数のカラーインク用ヘッド202によるインク滴の吐出を行うことにより、CMYKインクで印刷画像を印刷する。
尚、印刷画像に基づいて複数のカラーインク用ヘッド202によるインク滴の吐出を行うとは、例えば、予め設定された印刷画像を基材50上に描くようにインク滴の吐出を行うことである。この動作は、例えば、印刷画像に対して公知のRIP処理等の画像形成処理を行い、処理後の画像に従ってインク滴を吐出する動作等であってよい。また、本例の有色印刷段階では、紫外線照射装置206による紫外線の照射を行いつつ、複数のカラーインク用ヘッド202に主走査動作を行わせる。
また、非有色領域クリア印刷段階とは、例えば、基材50の被印刷面のうち、少なくとも非有色領域に対し、UVクリアインクによる印刷を行う段階である。この場合、非有色領域とは、例えば、有色印刷段階でインク滴が吐出されない領域のことである。また、非有色領域クリア印刷段階では、例えば、非有色領域に対し、クリアインク用ヘッド204によるインク滴の吐出と、紫外線照射装置206による紫外線の照射とを行う。
より具体的に、本例の非有色領域クリア印刷段階では、印刷画像に対してグレースケール化と階調の反転とを行った画像(以下、反転グレースケール画像という)に基づいて、クリアインク用ヘッド204によるインク滴の吐出を行う。反転グレースケール画像に基づいて、クリアインク用ヘッド204によるインク滴の吐出を行うとは、例えば、UVクリアインクで反転グレースケール画像を印刷することである。
また、上記のとおり、ステップS102では、UVクリアインクについて、クリアマット調印刷を行う。この場合、UVクリアインクについて、クリアマット調印刷を行うとは、例えば、非有色領域クリア印刷段階において、UVクリアインクをマット状に硬化させることである。また、UVクリアインクをマット状に硬化させるとは、例えば、基材50へのインク滴の着弾直後に紫外線を照射することにより、UVクリアインクのドットが平坦化する前に、硬化させることである。また、より具体的に、図1(b)等を用いて説明をしたヘッド部12の構成を用いる場合、紫外線照射装置206による紫外線の照射を行いつつ、クリアインク用ヘッド204に主走査動作を行わせることである。
ここで、本例においては、上記のように、反転グレースケール画像に基づいてUVクリアインクによる印刷を行う。そのため、非有色領域クリア印刷段階において、非有色領域のみではなく、印刷画像と重なる領域に対しても、UVクリアインクのインク滴を吐出する場合がある。例えば、印刷画像において、明るい領域は、反転グレースケール画像において、暗い領域になる。そして、反転グレースケール画像に基づいてUVクリアインクによる印刷を行う場合、暗い領域は、より多くのインク滴が吐出されるべき領域になる。そのため、例えば印刷画像中の明るい領域に対応する基材50上の位置には、UVクリアインクのインク滴が吐出されることになる。
従って、本例の非有色領域クリア印刷段階について、少なくとも非有色領域に対してUVクリアインクによる印刷を行うとは、例えば、非有色領域のみに対してUVクリアインクによる印刷を行う場合に限らず、このような反転グレースケール画像を用いる場合等も含む。より具体的には、例えば、上記のように、印刷画像の各部の明るさに応じて印刷画像と重なる位置へもUVクリアインクによる印刷を行う場合も含んでよい。また、印刷画像及び反転グレースケール画像のより具体的な例や、反転グレースケール画像を用いることが好ましい理由等については、後に更に詳しく説明をする。
また、本例における印刷の動作では、ステップS102に続いて、UVクリアインクをグロス調に印刷するクリアグロス調印刷を行う(ステップS104)。このステップS104は、オーバーコート層形成段階を行うステップの一例であり、基材50の略全面に対してベタ塗りのクリアグロス調印刷を行うことにより、UVクリアインクで印刷画像を覆う層であるオーバーコート層を形成する。この場合、オーバーコート層形成段階とは、例えば、有色印刷段階で印刷された印刷画像を少なくとも覆う領域に対し、クリアインク用ヘッド204によるインク滴の吐出と、紫外線照射装置206による紫外線の照射とを行う段階のことである。また、本例のオーバーコート層形成段階においては、ステップS102での非有色領域クリア印刷段階の動作と紫外線の照射タイミングを異ならせることにより、UVクリアインクをグロス状に硬化させる。UVクリアインクをグロス状に硬化させるとは、例えば、基材50へのインク滴の着弾後、UVクリアインクのドットが平坦化するまでの時間を待った後に、紫外線を照射することである。また、より具体的に、図1(b)等を用いて説明をしたヘッド部12の構成を用いる場合、基材50上の各領域に対し、紫外線の照射を行わずにクリアインク用ヘッド204の主走査動作を行い、その後に紫外線を照射することである。
また、オーバーコート層形成段階は、例えば、少なくとも印刷画像を覆うように予め設定された領域をUVクリアインクで塗りつぶす段階であってよい。この場合、予め設定された領域をUVクリアインクで塗りつぶすとは、例えば、所定の領域の全体に対して一定の均一な濃度でインク滴を吐出することである。また、より具体的に、UVクリアインクで塗りつぶすとは、例えば、ベタ印字の設定で印刷を行うことであってよい。
この場合、ベタ印字とは、例えば、印刷装置において予め設定された100%の濃度で印刷を行うことであってよい。また、オーバーコート層形成段階での塗りつぶしの動作は、例えば、100%より大きな濃度、例えば200%又は300%等の濃度で印刷を行う動作であってよい。この場合、200%又は300%の濃度とは、例えば、オーバーコート層形成段階でUVクリアインクを吐出するための主走査動作を、100%の濃度の設定で基材50の各領域に対して2回又は3回行うことである。
尚、オーバーコート層形成段階において、各領域に対して複数回の主走査動作を行う場合、オーバーコート層形成段階での各領域への紫外線の照射は、複数回の主走査動作が行った後に行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層を構成するインクのドットをより適切に平坦化できる。
以上のようにして、本例の印刷の動作では、有色印刷段階、非有色領域クリア印刷段階、及びオーバーコート層形成段階を行う。続いて、印刷画像や反転グレースケール画像等のより具体的な例を用いて、有色印刷段階、非有色領域クリア印刷段階、及びオーバーコート層形成段階で行う動作について、更に詳しく説明をする。
図3は、有色印刷段階、非有色領域クリア印刷段階、及びオーバーコート層形成段階のそれぞれにおいて印刷に用いる画像の一例を示す。尚、以下において説明する印刷の動作の例(以下、本実施例という)において、基材50としては、実寸が86mm×54mmのプラスチックのカードを用いる。このプラスチックのカードは、例えば非可撓性のプラスチックのカードである。また、より具体的に、このカードは、写真付きのIDカード用のカードである。また、このIDカードは、例えば、ICチップ付きのIDカードである。そして、有色印刷段階、非有色領域クリア印刷段階、及びオーバーコート層形成段階の各動作を行うことにより、このカードには、例えば、人物の写真を含む画像が印刷される。
図3(a)は、有色印刷段階で用いる画像である印刷画像の一例を示す。本実施例において、印刷画像としては、例えばカラーデータの画像を用いる。この場合、カラーデータの画像とは、画像の各画素の値として、色と階調値とを有する画像である。印刷画像は、例えばフルカラーの画像であってよい。また、本実施例において、印刷画像としては、基材50となるカードの実寸よりも寸法を大きくした画像を作成する。より具体的に、印刷画像としては、例えば、図3(a)に示すように、91.5mm×60mmの寸法の画像を作成する。
尚、図示の便宜上、図3(a)では、印刷画像として、グレースケール画像を示している。しかし、本実施例で実際に用いる印刷画像は、例えば、CMYKインクで印刷される有彩色の画像であってよい。
図3(b)は、非有色領域クリア印刷段階で用いる反転グレースケール画像の一例を示す。本実施例において、反転グレースケール画像としては、図3(a)に示した印刷画像に対し、グレースケール化と階調の反転を行った画像を用いる。この処理は、例えば、adobe社製のソフトウェアPhotoshop(登録商標)等の画像処理用ソフトウェアを用いて行うことができる。また、本実施例においては、このような方法で反転グレースケール画像を作製するため、反転グレースケール画像の寸法は、印刷画像と同じである。
尚、反転グレースケール画像の階調数は、例えば、印刷画像と同じ階調数とすることが好ましい。また、少なくとも、反転グレースケール画像の階調数は、3段階以上の階調数にすることが望ましい。
図3(c)は、オーバーコート層形成段階で用いる画像の一例を示す。図2等を用いて説明をしたように、オーバーコート層形成段階では、基材50の略全面に対してベタ塗りのクリアグロス調印刷を行う。また、本実施例において、基材50の全面とは、例えば、基材50の被印刷面のうち、ICチップの部分以外の領域のことである。そして、このような印刷を行うため、オーバーコート層形成段階では、印刷装置10にベタ印字をさせるためのデータであるベタ塗りデータで示される画像(ベタ塗り画像)を用いて印刷を行う。より具体的に、本実施例では、ベタ塗り画像として、例えば、図3(c)に示すような、単一色で一定の領域を塗りつぶした画像を作製する。また、ベタ塗り画像の寸法については、基材50となるカードの実寸より少し小さくする。この場合、縦横のそれぞれの寸法において、カードの実寸より少し小さくする量は、例えばカードの縦横のそれぞれの1%未満程度にすることが好ましい。より具体的に、本実施例において、ベタ塗り画像としては、例えば、図3(c)に示すように、85.5mm×53.7mmの寸法の画像を作成する。
また、本実施例においては、以上のような各画像を用いて、以下のようにして、有色印刷段階、非有色領域クリア印刷段階、及びオーバーコート層形成段階の各動作を行う。例えば、図2を用いて説明をしたステップS102の動作において、カラーの印刷画像と、反転グレースケール画像とを順次合成し、出力する。そして、これらの画像に基づき、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階の動作を行う。
より具体的に、本実施例において、有色印刷段階の動作としては、印刷画像に基づき、VDの設定により、印刷のパス数を8にして、720×600(dpi)の解像度で、CMYKインクによる印刷を行う。VDの設定とは、例えば、インク滴のサイズを複数段階で可変(Variable Dot)にすることで、印刷装置10において階調印刷を行うための設定である。また、有色印刷段階では、紫外線照射装置206により紫外線を照射しつつ、カラーインク用ヘッド202による主走査動作を行う。
また、同時に、非有色領域クリア印刷段階の動作として、反転グレースケール画像に基づき、UVクリアインクによる印刷を行う。これにより、カラーインク用ヘッド202による主走査動作と同時に、紫外線照射装置206により紫外線を照射しつつ、クリアインク用ヘッド204による主走査動作を行う。
このように、本実施例においては、有色印刷段階と非有色領域クリア印刷段階とを同時に行う。有色印刷段階と非有色領域クリア印刷段階とを同時に行うとは、より具体的に、例えば、上記のように、有色印刷段階におけるカラーインク用ヘッド202の主走査動作と、非有色領域クリア印刷段階におけるクリアインク用ヘッド204の主走査動作とを並行して行うことである。このように構成すれば、例えば、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階をより効率的に実行できる。これにより、印刷の全工程に要する時間を短縮し、より高速に印刷を行うことができる。
尚、この場合、非有色領域クリア印刷段階での印刷の各種設定(解像度、パス数等)は、有色印刷段階での設定と同じになる。そのため、本実施例では、非有色領域クリア印刷段階での印刷も、VDの設定により、印刷のパス数を8にして、720×600(dpi)の解像度で行う。但し、吐出するインクの量(インク滴のサイズ)について、非有色領域クリア印刷段階でのインクの量は、有色印刷段階でのインクの量の80%に設定した。
また、本実施例において、オーバーコート層形成段階の動作としては、ベタ塗り画像に基づき、NDの設定により、印刷のパス数を4にして、720×600(dpi)の解像度で、UVクリアインクによる印刷を行う。NDの設定とは、例えば、インク滴のサイズを所定のサイズ(Normal Dot)に固定する設定である。また、本実施例において、オーバーコート層形成段階では、紫外線照射装置206による紫外線を照射を行わずに、クリアインク用ヘッド204による主走査動作を行う。そして、基材50の各位置に対するクリアインク用ヘッド204による主走査動作が終わった後に、タイミングをずらして紫外線照射装置206を走査させることにより、紫外線を照射する。
尚、より具体的に、本実施例においては、先ず、紫外線照射装置206に紫外線を照射させずに、基材50の全体に対して、クリアインク用ヘッド204による主走査動作を行う。そして、その後、紫外線照射装置206に紫外線を照射させつつ、基材50上で紫外線照射装置206を走査させる。このように構成すれば、例えば、クリアグロス調印刷を適切に行うことができる。また、これにより、印刷された印刷画像の上に、オーバーコート層を適切に形成できる。
また、本実施例において、オーバーコート層形成段階で照射する紫外線の強度は、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階での紫外線の強度よりも小さくしてもよい。更に、紫外線の照射時には、テーブル20を少し下げることにより、紫外線照射装置206から基材50までの距離を、インク滴の吐出時よりも大きくしてもよい。このように構成すれば、例えば、クリアグロス調印刷をより適切に行うことができる。
また、本実施例において、オーバーコート層形成段階での印刷のパス数は、有色印刷段階と比べて少なくなっている。これは、オーバーコート層形成段階では、UVクリアインクをベタ塗りするため、パス数を多くする必要がないためである。そのため、このように構成すれば、例えば、オーバーコート層の形成に要する時間を適切に短縮できる。
以上のように、本実施例によれば、例えば、基材50に印刷した印刷画像の上に、オーバーコート層を適切に形成できる。また、印刷画像に対して単にオーバーコート層を重ねるのではなく、非有色領域クリア印刷段階の動作を行うことにより、オーバーコート層に凹凸等が生じることを適切に防ぐことができる。
尚、上記においては、有色印刷段階、非有色領域クリア印刷段階、及びオーバーコート層形成段階で行う動作について、具体的な印刷条件の例を示して説明をした。しかし、具体的な印刷の条件については、求められる印刷の精度や、印刷装置の性能等に応じて、適宜変更してよい。例えば、上記及び以下において説明をする具体的な動作に関し、印刷の解像度や、印刷のパス数は、適宜変更可能である。例えば、印刷のパス数については、32等のより大きな数にすること等も考えられる。
また、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階における動作は、例えば印刷条件の設定等に応じて、同時に行ってもよく、それぞれ別に行ってもよい。この場合、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階における動作を同時に行うとは、例えば、印刷画像と反転グレースケール画像とを合成した画像を印刷すること(合成印刷)であってよい。また、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階における動作をそれぞれ別に行うとは、例えば、印刷画像と反転グレースケール画像とを合成せずに、それぞれの画像を個別に印刷すること(非合成印刷)であってよい。また、有色印刷段階の動作及び非有色領域クリア印刷段階の動作のそれぞれを行う順番については、いずれの条件で印刷を行う場合においても、任意である。すなわち、どちらの動作を先に行ってもよい。
また、上記において説明した実施例では、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階における動作を同時に行うため、非有色領域クリア印刷段階において、UVクリアインクをマット状に硬化させる。このように構成すれば、例えば、その上に形成するオーバーコート層との接着性を適切に高めることができる。また、印刷の条件等によっては、例えば、非有色領域クリア印刷段階において、UVクリアインクをグロス状に硬化させること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、有色インクが塗布されない領域について、UVクリアインクでより均一に平坦化できる。
続いて、以下、本実施例によりオーバーコート層の凹凸等を防ぐことができる点について、更に詳しく説明をする。紫外線硬化型インクで印刷を行う場合、通常、インクは、ある程度の厚みがある状態で硬化する。そのため、例えば基材50に単に印刷画像を印刷した場合、カラーインクの層の厚みにより、基材50の被印刷面に高低差が生じることになる。
しかし、このような高低差が生じた場合、その上にオーバーコート層を形成すると、オーバーコート層に凹凸が生じ、印刷の品質が低下する場合がある。また、例えば、オーバーコート層に凹凸が生じることにより、横すじ等が生じる場合がある。更には、凹凸の影響により、クラックや気泡の混入等の問題が生じる場合がある。また、硬化後のクリアインクの状態について、硬化縞が発生し、光沢性が低下する場合等がある。
また、例えば本実施例のように、基材50としてプラスチックのカードを用いる場合、基材50の表面のもともとの平坦性が高いため、インクの層の厚みの分の高低差が生じると、高い部分と低い部分との差が明確になりやすい。また、その結果、例えばオーバーコート層の形成時において、硬化前のUVクリアが流れやすくなるおそれがある。更に、基材50としてプラスチックのカードを用いる場合、このような高低差が生じると、インク厚の薄い部分がUVクリアインクを弾きやすくなる場合がある。また、その結果、UVクリアインクの溜まり等が生じる場合がある。
これに対し、本実施例のように、非有色領域クリア印刷段階を行う場合、例えば、基材50の被印刷面のうち、印刷画像用の有色インク(CMYKインク)が塗布されない領域について、UVクリアインクで適切に埋めることができる。また、これにより、例えば、有色インクが塗布される領域と、有色インクが塗布されない領域との間に高低差が生じることを適切に抑えることができる。また、その後にオーバーコート層を形成することで、硬化後のオーバーコート層に凹凸が生じることを適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、オーバーコート層の凹凸等により印刷の品質が低下すること等を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、より適切な方法でオーバーコート層を形成することができる。
また、本実施例のように、印刷画像として、例えば写真等の画像を用いる場合、印刷画像内で位置による階調の差が生じる場合がある。より具体的に、例えば、印刷画像として、黒い部分と白い部分を有する被写体の写真等を用いる場合、両者の間で、階調の差が大きくなる。また、インクジェット方式で印刷を行う場合、階調の差により、基材上に形成されるインクの厚みに差が生じる場合がある。そして、この場合、印刷画像内においても、インクの層の厚みについて、階調の差に応じた高低差が生じるおそれがある。
これに対し、本実施例のように、反転グレースケール画像を用いて非有色領域クリア印刷段階を行う場合、印刷画像と重なる位置に対しても、反転グレースケール画像の各画素の階調に応じた量のUVクリアインクを吐出する構成になる。そのため、このように構成した場合、例えば、非有色領域クリア印刷段階でのUVクリアインクによる印刷を、印刷画像内での階調の分布に合わせて行うことができる。また、これにより、印刷画像内で階調の差に応じた高低差が生じた場合にも、非有色領域クリア印刷段階において、高低差を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、より適切な方法でオーバーコート層を形成することができる。
続いて、本発明に係る印刷方法について、図1〜3を用いて説明をした場合以外の変形例を説明する。図4は、印刷方法の変形例を示す。図4(a)は、本変形例において行う印刷の動作の一例を示すフローチャートである。
尚、以下に説明をする点を除き、本変形例における動作は、図1〜3を用いて説明をした動作と同一又は同様である。より具体的に、例えば、以下に説明をする点を除き、図4におけるステップS102及びS104は、図2を用いて説明をしたステップS102及びS104と、同一又は同様のステップである。また、本変形例における印刷は、例えば図1を用いて説明をした印刷装置10を用いて行うことができる。
本変形の印刷の動作においても、先ず、図2を用いて説明をした場合と同様に、CMYKインクによるカラー印刷と、UVクリアインクをマット調に印刷するクリアマット調印刷とを行う(ステップS102)。また、これにより、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階の動作を行う。
続いて、本変形例では、UVクリアインクをマット調に印刷するクリアマット調印刷を行う(ステップS103)。このステップS103は、マット状クリア印刷段階を行うステップの一例であり、基材50の全面に対してベタ塗りのクリアマット調印刷を行う。この場合、マット状クリア印刷段階とは、例えば、非有色領域クリア印刷段階の後に、有色印刷段階で印刷された印刷画像を少なくとも覆う領域をUVクリアインクで塗りつぶし、かつ、UVクリアインクをマット状に硬化させる段階である。本変形例において、マット状クリア印刷段階では、基材50の全面に対し、クリアインク用ヘッド204によるインク滴の吐出と、紫外線照射装置206による紫外線の照射とを行う。また、クリアインク用ヘッド204による主走査動作について、紫外線照射装置206により紫外線を照射しつつ行うことにより、UVクリアインクをマット状に硬化させる。
また、本変形例では、ステップS103の後に、ステップS104の動作を行う。これにより、マット状クリア印刷段階の動作の後にオーバーコート層形成段階の動作を行う。また、オーバーコート層形成段階では、マット状クリア印刷段階でマット状に硬化したUVクリアインクの上に、オーバーコート層を形成する。
ここで、例えば、マット状クリア印刷段階を行わずに、例えば、非有色領域クリア印刷段階の直後にオーバーコート層形成段階を行う場合、オーバーコート層の下地としては、有色印刷段階で形成された有色インク(CMYKインク)の層の部分と、非有色領域クリア印刷段階で形成されたUVクリアインクの層の部分とが存在することになる。そして、この場合、有色インクとUVクリアインクとの特性の違いにより、オーバーコート層と下地との間の関係について、位置による差が生じるおそれがある。また、その結果、例えば、インクの特性や、求められる印刷の精度によっては、印刷の品質に問題が生じる場合もあると考えられる。
より具体的に、例えば、有色インクは顔料等の色材を含むのに対し、UVクリアインクは色材を含まない。そして、この色材の有無の違いにより、その上に重ねるUVクリアインクへの影響に差が生じること等が考えられる。また、このような差として、例えば、UVクリアインクを弾く特性等に差が生じること等が考えられる。そして、このような差が生じた場合、UVクリアインクの塗布量が不均一になるおそれもある。
これに対し、本変形例のようにした場合、オーバーコート層の下地として、マット状クリア印刷段階で、マット状に硬化させたUVクリアインクの層を形成する。そのため、このように構成すれば、例えば、オーバーコート層の下地の状態をより適切に均一化できる。また、これにより、例えば、オーバーコート層をより適切に形成できる。
尚、使用する各インクの特性や、求められる印刷の品質によっては、例えば、マット状クリア印刷段階を行わなくても、オーバーコート層を適切に形成できる場合もある。この場合、例えば図2等を用いて説明をしたように、マット状クリア印刷段階を行わずに、例えば、非有色領域クリア印刷段階の直後にオーバーコート層形成段階を行ってもよい。このように構成すれば、例えば、より簡略な動作により、オーバーコート層を適切に形成できる。
また、上記のように、本変形例においては、マット状クリア印刷段階で基材50の全面に形成したUVクリアインクの層の上に、オーバーコート層を重ねる構成になる。そのため、オーバーコート層を形成する領域では、UVクリアインクの層が2層重なることになる。
しかし、紫外線硬化型インクを用いて、一定の領域を塗りつぶした場合、硬化後の状態において、領域の縁部がわずかに盛り上がった状態になる場合がある。そのため、例えば、マット状クリア印刷段階でマット状のUVクリアインクの層を形成する場合にも、領域の縁部がわずかに盛り上がった状態になる場合がある。そして、この場合、例えばマット状のUVクリアインクの層と全く同じ領域にオーバーコート層を形成すると、縁部が重なることにより、縁部の盛り上がりの影響が大きくなるおそれがある。より具体的には、例えば、縁部におけるUVクリアインクの層が厚くなり、クラックが生じやすくなる場合がある。
そのため、本変形例において、オーバーコート層形成段階で塗りつぶしを行う領域は、マット状クリア印刷段階で塗りつぶしを行う領域よりも小さくすることが好ましい。より具体的に、マット状クリア印刷段階では、例えば、印刷画像を少なくとも覆う第1の領域をUVクリアインクで塗りつぶす。そして、オーバーコート層形成段階では、例えば、第1の領域よりも狭い領域であり、縁部が第1の領域の内部にある第2の領域をUVクリアインクで塗りつぶす。第2の領域は、例えば、第1の領域に対し、縁部の領域を少し細らせた領域であってよい。
このように構成すれば、例えば、マット状のUVクリアインクの層と、オーバーコート層とを、縁部が重ならないように適切に形成できる。また、これにより、例えば、縁部の盛り上がりの影響が大きくなることを適切に防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、より適切な方法でオーバーコート層を形成することができる。
図4(b)は、マット状クリア印刷段階で用いる画像の一例を示す。上記のように、本変形例において、マット状クリア印刷段階では、基材50の全面に対してベタ塗りのクリアマット調印刷を行う。そして、このような印刷を行うため、マット状クリア印刷段階では、オーバーコート層形成段階と同様に、ベタ塗り画像を用いて印刷を行う。
但し、マット状クリア印刷段階で用いるベタ塗り画像の寸法については、オーバーコート層形成段階の場合と異なり、基材50となるカードの実寸よりも大きくする。より具体的に、例えば、有色印刷段階、非有色領域クリア印刷段階、及びオーバーコート層形成段階の動作を図3を用いて説明をした実施例と同一の条件で行う場合、印刷画像と同じ寸法のベタ塗り画像を用いることができる。この場合、ベタ塗り画像としては、例えば、図4(b)に示すように、91.5mm×60mmの寸法の画像を作成する。
また、この場合、マット状クリア印刷段階の動作としては、例えば、ベタ塗り画像に基づき、VDの設定により、印刷のパス数を8にして、720×600(dpi)の解像度で、UVクリアインクによる印刷を行う。また、この場合、マット調での印刷を行うために、紫外線照射装置206により紫外線を照射しつつ、クリアインク用ヘッド204による主走査動作を行う。また、紫外線の強度は、例えば、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階での紫外線の強度よりも小さく、例えば80%程度に設定する。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層の下地となる領域に、ベタ塗りのクリアマット調印刷を適切に行うことができる。また、これにより、オーバーコート層の下地の状態をより適切に均一化できる。更には、下地の状態を均一化することにより、オーバーコート層をより適切に形成できる。
尚、オーバーコート層の下地を均一化するためには、マット状に硬化させたUVクリアインクの層に限らず、例えば、グロス状に硬化させたUVクリアインクの層を形成してもよいようにも思われる。しかし、例えばオーバーコート層の下地の層として、グロス状に硬化させたUVクリアインクの層を形成した場合、下地の層とオーバーコート層との接着性が不十分になるおそれがある。また、その結果、オーバーコート層を適切に形成できなくなるおそれがある。
また、下地の層とオーバーコート層との接着性を高めるためには、例えば、下地の層として、UVクリアインクを半硬化(仮硬化)の状態にまで硬化させた層を形成すればよいようにも思われる。この場合、半硬化の状態とは、例えば、ゲル状の状態にまで硬化が進み、インクのドットの表面が粘着性を有する状態である。
しかし、下地の層となるUVクリアインクを半硬化の状態にまで硬化させた場合、完全に硬化させた場合と比べ、溶剤等に対する耐性(耐薬性)が低くなる場合がある。そのため、下地の層が半硬化の状態である場合、例えば、オーバーコート層用のUVクリアインクに含まれる溶剤等の影響により、下地の層に変質が生じる場合がある。また、その結果、オーバーコート層を適切に形成できなくなるおそれがある。
これに対し、本変形例においては、下地の層となるUVクリアインクをマット状に硬化させることにより、オーバーコート層に対し、十分な接着性を持たせることができる。また、UVクリアインクを適切かつ十分に硬化させることにより、下地の層の変質等についても、適切に抑えることができる。また、これにより、オーバーコート層をより適切に形成できる。
続いて、本発明に係る印刷方法について、更なる変形例を説明する。図1〜4を用いて説明をした印刷の動作においては、有色印刷段階と非有色領域クリア印刷段階とを同時に行う場合の動作を説明した。しかし、印刷の動作の更なる変形例においては、例えば、有色印刷段階と非有色領域クリア印刷段階とを同時に行わず、別のステップとして実行してもよい。この場合、例えば、基材50の全体に対して先ず有色印刷段階を行うことが考えられる。そして、例えば、印刷画像の全体が印刷された後に、非有色領域クリア印刷段階を行い、クリアマット調印刷を行う。このように構成した場合も、例えば、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階を適切に実行できる。また、その後、マット状クリア印刷段階及びオーバーコート層形成段階等についても、適切に行うことができる。そのため、このように構成した場合も、オーバーコート層を適切に形成できる。
また、例えばオーバーコート層形成段階において、紫外線の照射は、紫外線照射装置206を走査させる方法ではなく、基材50の全体に対して一括して行うこと等も考えられる。また、この場合、紫外線照射装置206とは別の紫外線光源を用いることも考えられる。より具体的には、例えば、UVクリアインクのインク滴の吐出後、十分な時間が経過した後に、UVランプ等の強い光源で基材50の全体に紫外線を照射すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、オーバーコート層をより適切に平坦化できる。
また、更に、例えば、ヘッド部12の具体的な構成や、非有色領域クリア印刷段階で用いる画像等についても、変形例が考えられる。そこで、以下、このような更なる変形例について、説明をする。図5は、印刷方法の更なる変形例を示す。図5(a)は、ヘッド部12の構成の変形例を示す。
図1に関連しても説明をしたように、ヘッド部12の具体的な構成としては、例えば、図1(b)に示した構成以外のものを用いることもできる。例えば、図5(a)に示すように、クリアインク用ヘッド204について、複数のカラーインク用ヘッド202と副走査方向における位置をずらして配設すること等も考えられる。
このように構成した場合も、例えば、上記において説明をした動作と同一又は同様にして、有色印刷段階、非有色領域クリア印刷段階、マット状クリア印刷段階、及びオーバーコート層形成段階等の各動作を適切に行うことができる。また、これにより、このように構成した場合も、オーバーコート層を適切に形成できる。
図5(b)は、非有色領域クリア印刷段階で用いる画像の変形例を示す。図1〜4においては、非有色領域クリア印刷段階で反転グレースケール画像を用いる場合の動作を説明した。しかし、求められる印刷の精度や品質等によっては、必ずしもグレースケールの画像ではなく、2値画像を用いること等も考えられる。この場合、非有色領域クリア印刷段階では、反転グレースケール画像に代えて、例えば、図5(b)に示すような、印刷画像の階調反転と、予め設定された閾値での2値化とを行った画像(以下、反転2値画像という)を用いる。
また、この場合、反転2値画像を印刷するための好ましい条件について、有色印刷段階で印刷画像を印刷する条件と異なる場合がある。そのため、印刷の条件によっては、非有色領域クリア印刷段階で反転2値画像を用いる場合、有色印刷段階と非有色領域クリア印刷段階とを同時には行わず、有色印刷段階の後又は先に非有色領域クリア印刷段階の動作を行うことが好ましい。より具体的に、例えば、印刷画像及び反転2値画像について、同じ解像度で印刷を行う場合には、例えば合成印刷を行う動作により、有色印刷段階と非有色領域クリア印刷段階とを同時に行うことが考えられる。一方、印刷画像及び反転2値画像について、異なる解像度で印刷を行う場合、例えば非合成印刷を行う動作により、有色印刷段階及び非有色領域クリア印刷段階における動作をそれぞれ別に行うことが考えられる。
また、図5に示す動作において、より具体的に、例えば、有色印刷段階等での動作を図3を用いて説明をした印刷の条件で行う場合、反転2値画像を用いる非有色領域クリア印刷段階の動作としては、例えば、NDの設定により、印刷のパス数を4にして、720×600(dpi)の解像度で、UVクリアインクによる印刷を行うことが考えられる。また、この場合、例えば、マット調での印刷を行うために、紫外線照射装置206により紫外線を照射しつつ、クリアインク用ヘッド204による主走査動作を行う。また、この場合、紫外線の強度は、例えば、有色印刷段階での紫外線の強度と同じ(100%)に設定してよい。このように構成した場合も、例えば、求められる印刷の精度や品質等に応じて、有色インク(CMYKインク)が塗布される領域と、有色インクが塗布されない領域との間に高低差が生じることを適切に抑えることができる。また、その後にオーバーコート層を形成することで、硬化後のオーバーコート層に凹凸等が生じることを抑えることができる。
また、上記においては、UVクリアインクを用いて非有色領域クリア印刷段階の動作を行うことで硬化後のオーバーコート層の凹凸を抑えることについて、説明をした。しかし、硬化後のオーバーコート層の凹凸を抑えるためには、例えば、UVインクに限らず、他の色のインクを用いることも考えられる。そこで、続いて、このような変形例について、説明をする。
図6及び図7は、印刷方法の更なる変形例について説明をする図である。尚、以下に説明をする点を除き、本変形例における印刷方法は、図1〜5を用いて説明をした印刷方法と同一又は同様である。
図6は、本変形例において用いるヘッド部12の構成の例を示す。図6(a)は、ヘッド部12の構成の一例を示す。図6(b)は、ヘッド部12の構成の他の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図6において、図1〜5と同じ符号を付した構成は、図1〜5における構成と同一又は同様の特徴を有する。また、ヘッド部12は、例えば図1(a)に示した印刷装置10と同一又は同様の印刷装置において使用する。
図6(a)に示した構成において、ヘッド部12は、図1(b)に示したヘッド部12の構成に加え、白インク用ヘッド208を更に有する。また、白インク用ヘッド208は、複数のカラーインク用ヘッド202及びクリアインク用ヘッド204に対し、副走査方向(X方向)における位置を揃えて、主走査方向(Y方向)へ並べて配設される。
また、図6(b)に示した構成において、ヘッド部12は、図5(a)に示したヘッド部12の構成に加え、白インク用ヘッド208を更に有する。また、白インク用ヘッド208は、クリアインク用ヘッド204に対し、副走査方向(X方向)における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
また、本変形例において、白インク用ヘッド208は、予め設定された色の紫外線硬化型インクである所定色インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである所定色インク用ヘッドの一例であり、所定色インクの一例である白色のインクのインク滴を吐出する。また、使用するインク以外の点において、白インク用ヘッド208は、カラーインク用ヘッド202又はクリアインク用ヘッド204と同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、白インク用ヘッド208は、副走査方向(X方向)へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、このような構成により、本変形例において、ヘッド部12は、複数のカラーインク用ヘッド202によるCMYKインクのインク滴の吐出と、クリアインク用ヘッド204によるUVクリアインクのインク滴の吐出とに加え、白インク用ヘッド208による白色のインク滴の吐出を行う。
ここで、上記のように、本変形例において、白インク用ヘッド208は、所定色インク用ヘッドの一例である。また、更なる変形例においては、所定色インク用ヘッドとして、例えば、白色以外の所定色インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドを用いることも考えられる。例えば、印刷対象の基材の被印刷面の色が白以外の場合、所定色インクとして、基材の被印刷面と同じ色のインクを用いること等も考えられる。また、所定色インクとして、例えば印刷画像の背景となる様々な色のインクを用いることも考えられる。また、ヘッド部12の具体的な構成については、上記以外の構成を用いることも考えられる。
また、図1〜5を用いて説明をした印刷方法においては、印刷画像の隙間をUVクリアインクで埋めることにより、オーバーコート層の下地となる領域に高低差が生じることを防いでいた。また、これにより、上層に積層するオーバーコート層に凹凸が生じることを抑え、オーバーコート層の平坦化を実現していた。
これに対し、本変形においては、印刷画像の隙間を埋めるインクとして、UVクリアインクではなく、白色のインクを用いる。そこで、以下、本変形例において行う印刷方法の動作について、更に詳しく説明をする。
図7は、本変形例において行う印刷の動作の一例を示すフローチャートである。尚、以下に説明をする点を除き、本変形例における動作は、図1〜5を用いて説明をした動作と同一又は同様である。
本変形例の印刷の動作では、カラーインク用ヘッド202による印刷画像の印刷よりも先に、先ず、白インク用ヘッド208を用いて、白色のインクでの印刷を行う(ステップS202)。このステップS202は、所定色印刷段階を行うステップの一例である。より具体的に、ステップS202では、例えば、基材の被印刷面の少なくとも一部の領域に対し、白インク用ヘッド208によるインク滴の吐出と、紫外線照射装置206による紫外線の照射とを行う。
ここで、ステップS202において白インク用ヘッド208により行う印刷の動作は、使用するインク以外の点において、例えば、図2に示したステップS102においてクリアインク用ヘッド204により行う印刷の動作と同一又は同様である。より具体的に、ステップ202において、白インク用ヘッド208は、印刷画像に対してグレースケール化と階調の反転を行った反転グレースケール画像に基づき、インク滴を吐出する。また、これにより、白色のインクで、反転グレースケール画像を印刷する。また、より一般化して示した場合、ステップS202において、白インク用ヘッド208は、少なくとも、後に行うステップS204でCMYKインクのインク滴が吐出されない領域である非有色領域に対し、白色のインクによる印刷を行う。この場合、白インク用ヘッド208は、例えば、CMYKインクのみで印刷を行った場合には生じる凹凸において隙間となる箇所に白色のインクのインク滴を吐出する。また、これにより、CMYKインクのみで印刷を行った場合に生じる凹凸の隙間を、予め白色のインクにより埋める。
続いて、本変形例の印刷の動作では、複数のカラーインク用ヘッド202を用いて、CMYKインクによるカラー印刷を行う(ステップS204)。このステップS204は、有色印刷段階を行うステップの一例である。より具体的に、ステップS204では、例えば、基材の被印刷面の少なくとも一部の領域に対し、複数のカラーインク用ヘッド202によるインク滴の吐出と、紫外線照射装置206による紫外線の照射とを行う。また、これにより、CMYKインクにより、基材に対し、印刷画像を印刷する。ステップS204において複数のカラーインク用ヘッド202により行う印刷の動作は、例えば、図2に示したステップS102において複数のカラーインク用ヘッド202により行う印刷の動作と同一又は同様である。
続いて、本変形例の印刷の動作では、クリアインク用ヘッド204を用いて、UVクリアインクによるクリアグロス調印刷を行い、オーバーコート層を形成する(ステップS206)。このステップS206は、オーバーコート層形成段階を行うステップの一例である。より具体的に、ステップS206では、ステップS204で印刷された印刷画像を少なくとも覆う領域に対し、クリアインク用ヘッド204によるインク滴の吐出と、紫外線照射装置206による紫外線の照射とを行う。また、これにより、UVクリアインクにより、印刷画像を覆うオーバーコート層を形成する。ステップS206においてクリアインク用ヘッド204により行う印刷の動作は、例えば、図2に示したステップS104においてクリアインク用ヘッド204により行う印刷の動作と同一又は同様である。
以上のように、本変形例においては、ステップS202において、白インク用ヘッド208により、反転グレースケール画像を印刷する。また、その後、ステップS204において、複数のカラーインク用ヘッド202により、印刷画像を印刷する。このように構成すれば、例えば、基材上においてCMYKインクが塗布されない領域にできる隙間を白色のインクで適切に埋めることができる。また、ステップS202において反転グレースケール画像に基づく印刷を行うことにより、例えば、基材上の各位置におけるCMYKインクの塗布量に応じて、白色のインクの塗布量を適切に調整できる。そのため、本変形例においても、例えば、CMYKインクが塗布される領域と、CMYKインクが塗布されない領域との間に高低差が生じることを適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、オーバーコート層に凹凸が生じることを抑え、オーバーコート層を適切に平坦化できる。また、本変形例のように、白色のインクにより印刷画像の隙間を埋める場合、例えば、印刷画像の付近に不要な着色を行うことなく、隙間を適切に埋めることができる。そのため、本変形例によれば、例えば、オーバーコート層をより適切に形成できる。
ここで、例えば図1〜5を用いて説明をした場合のように、印刷画像の隙間を無色透明のUVクリアインクで埋める場合、例えば印刷画像の上からUVクリアインクの吐出を行ったとしても、印刷画像の視認性が損なわれることはない。しかし、本変形例のように、無色透明のインクではない白色のインク等で隙間を埋める場合、印刷画像の上から白色のインク等の吐出を行うと、印刷画像の上に白色等のインクが重なり、印刷画像の視認性が損なわれるおそれがある。また、その結果、印刷画像の品質が低下するおそれがある。
そのため、無色透明のインク以外で印刷画像の隙間を埋める場合には、例えば図7に示した場合のように、CMYKインクによる印刷画像の印刷よりも先に、隙間を埋めるために行う白色のインク等による印刷を行うことが好ましい。このように構成すれば、例えば、印刷画像の品質低下をより適切に防ぐことができる。
また、本変形例における印刷の動作については、例えば、図1〜5に関連して説明をした場合と同様に、更に変形をすることも考えられる。例えば、本変形例においても、例えば図4(a)のステップS103の動作と同様に、オーバーコート層を形成する前に、クリアマット調印刷を行ってもよい。この場合、例えば、図7におけるステップS204とステップS206との間に、例えば図4(a)のステップS103の動作と同様にして、クリアインク用ヘッド204によるマット状の印刷を行う。このように構成した場合も、オーバーコート層を適切に平坦化できる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。