JP2015209772A - 流体噴射弁およびこれを備えた噴霧生成装置並びにエンジン - Google Patents

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Abstract

【課題】噴霧形状が可変であり、噴霧の微粒化と、噴霧形状、噴霧方向、貫徹力、および噴射量分布の設計自由度の向上とを両立させた流体噴射弁を得る。【解決手段】流体の噴射条件として設定される複数のパラメータの少なくとも1つは、スイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧の断面形状の変形が生じる場合と生じない場合とを場合分けすることが可能な閾値を有する。この閾値に基づいて、分割噴射の各噴射における噴射条件が設定される。閾値を有するパラメータは、分割噴射の各噴射における噴射期間、噴射量、噴射圧力等である。【選択図】図15

Description

本発明は、一つあるいは複数の噴孔から流体を噴射し噴霧を生成する流体噴射弁およびこれを備えた噴霧生成装置並びにエンジンに関する。
近年、車両用エンジンにおいては、燃料噴霧の微粒化によるエンジン冷機時の排出ガス低減や、燃焼性改善による燃費向上の研究開発が積極的に進められている。例えば、燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を搭載した火花点火式直噴エンジンにおける成層燃焼コンセプトの研究開発が知られている。このようなエンジンにおける燃料噴霧は、点火プラグ近傍を指向する噴霧と、点火プラグ近傍を指向しない噴霧とで構成されており、前者は特に点火プラグ付近での成層燃焼を実現し、後者は成層燃焼や均質燃焼での燃焼室内全体の混合気形成を実現する役割をもっている。
燃焼室中心部に点火プラグが装着され、吸気弁を跨いだ位置に燃料噴射弁が装着される場合、点火プラグと燃料噴射弁は対向していない。このため、点火プラグ近傍を指向する噴霧の部分と、点火プラグ近傍を指向しない噴霧の部分とに要求される噴霧仕様は異なってくる。つまり、エンジンの低速低負荷で成層燃焼を行う場合と、高速高負荷で均質燃焼を行う場合とでは、要求される噴霧仕様は異なる。また、燃焼室の形状、筒内空気流動や燃料噴射弁取り付け位置や方向が異なれば、燃料噴射弁の噴霧数を含めた噴霧形態への要求仕様は異なるものとなる。
一方、噴霧の微粒化のプロセスにおいて、液滴を小さくするためには、その分裂の前段階である液糸を細くすることが有効である。液糸を細くするためには、液糸の分裂の前段階である液膜を薄くしたり液柱を細くしたりすることが有効であり、液膜の方がより液柱よりも有利であることが分かっている。また、液膜流形成手法として、噴孔に流入する前の燃料流に旋回流を与えて噴孔内に液膜流を形成する方法が知られている。
本願発明者は、これらの液膜流形成手法や微粒化プロセス、さらに、それらをベースとして複数の単噴霧が集合した集合噴霧の噴霧形状、貫徹力、噴射量分布の出来映えの関係を調査検討した結果、単噴霧が集合した集合噴霧において、次の二つの形態に分けられることを見出している。
一つは、各単噴霧が識別可能であり、かつ各単噴霧の特徴がほぼ識別不可能な集合噴霧になる場合である。これは、比較的均質に近い中実構造の集合噴霧であり、各単噴霧を識別可能ではあるが、集合噴霧と共通的な特徴を示す噴霧となっており、中途半端でコントロールし難い噴霧である。もう一つは、各単噴霧の識別さえも不可能となる集合噴霧になる場合である。これは、噴射量分布が中心ピークの円錐形状となるものを代表例とする集合噴霧であり、複数の単噴霧が集合してほぼ元の形態とは異なる新しい一つの集合噴霧に置き換わっており、非常に特徴的で安定した現象である。
これらのどちらの形態になるかは、噴霧挙動がある閾値のどちらにあるかによるところが大きい。単噴霧の集合化が進んだ集合噴霧になるほど噴射量分布は軸対称に近づき、また鋭角な円錐形状となり、全体噴霧としての貫徹力が増大する。上記二つの形態のどちらの場合であっても、複数の単噴霧が集合し、噴霧方向に直角な面内の噴霧形状と噴射量分布がほぼ軸対称になった集合噴霧において、その断面形状を非対象な異形としたり、噴射量分布を非対称にしたり、噴霧の少なくとも一部分を所望の方向に指向させることは難しい。
また、前述したような微粒化手法が燃料噴射弁に適用されつつあるが、微粒化の技術の主流は小噴孔径と多噴孔化であり、隣り合う噴孔からの噴流が互いに干渉して微粒化状態が悪化しないように設計されている。すなわち、噴孔中心軸線あるいは噴流方向が下流になるほど離れていくように、噴孔配置と噴孔径、傾き、および長さ等の噴孔仕様が設定されており、噴霧の微粒化とコンパクトな噴霧は両立しにくい。
噴霧全体の広がりを抑制する手法としては、噴孔中心軸線あるいは噴流方向が噴孔直下で互いに交差するような噴孔配置と噴孔仕様にすることが知られている。しかし、この手法では、噴孔出口から液膜流の破断や分裂を経て実質的に噴霧流と見なせるようになる位置までの長さ(液膜流のブレーク長さ)との関係や微粒化の要件が考慮されていなかった。つまり、噴霧の広がりを抑制するために、ブレーク長さまでの位置で複数の噴流を交差させることによって、微粒化を犠牲にせざるを得なかった。
一方、噴霧全体の広がりを抑制するために、流体噴射弁の動作中心軸線に直角な面に対する噴孔中心軸線の角度を相対的に小さくすると、薄い液膜流を形成するのに不利である。つまり、微粒化プロセスが遅くなり噴流同士が干渉し易く、微粒化レベルを期待値通りに実現できない。また、前述のように、噴流同士の干渉により複数の単噴霧の集合噴霧が生じた場合、単噴霧の時より貫徹力が大きくなる。
さらに、シリンダライナーへの噴霧衝突軽減や空気との混合促進のために、噴霧の貫徹力を所定距離のところで急速に減衰させる手法が望まれるが、噴霧形態を大きく変えずに実現する手法がなかった。このため、各噴霧が貫徹力を急速に減衰するためには、噴孔出口からの噴流を極端な偏平にする等の方法で噴霧の運動量の減衰を早める必要があるが、その場合、各噴霧出口での噴流の干渉を避けるために、各噴流方向をさらに離す必要があった。
例えば、火花点火式直噴エンジンにおいて噴霧貫徹力の確保と噴霧密度の適度な分散を両立させることを目的とした先行技術として、特許文献1では、主噴孔と、噴射中心が主噴孔の噴射中心と異なる方向を指向する副噴孔とを備え、主噴孔の入口と出口の断面積が異なるように設定することで、噴射量を一定にしたままで噴霧角を広げ、噴霧の燃料密度を分散させたマルチホールインジェクタが提示されている。
また、特許文献2では、噴孔内の燃料の流れる方向に縮小する第1テーパ部においてキャビテーション気泡を発生させ、発生したキャビテーション気泡が崩壊することにより燃料を微粒化させると共に、微粒化された燃料を流れ方向に拡大する第2テーパ部により拡散して貫徹力を低下させるようにした燃料噴射弁が提示されている。
また、特許文献3では、複数の噴霧流の少なくとも一つのグループにおいて、噴孔部材の噴霧軸に直交し噴孔部材から噴射方向に所定距離に位置する仮想平面と噴孔の流路軸を燃料噴射方向に延長した仮想直線との交点が、外側に凸状の多角形上または円上に位置する外側交点だけでなく、その内側に少なくとも一つの内側交点が位置するように噴孔から燃料を噴射する燃料噴射弁が提示されている。この先行例では、各噴孔からの噴霧が干渉しないように配置の工夫を行い、微粒化を促進すると共に噴射量分布の偏りを低減することを目的としている。
また、特許文献4では、複数の噴孔の流路軸が噴射方向に向かうにしたがい噴射軸から離れ、且つ燃料噴射方向に向かうにしたがい互いに離れている燃料噴射ノズルが提示されている。この先行例では、各噴孔から噴射される燃料が衝突せず各噴霧が均一に微粒化されること、各噴霧がコアンダ効果により互いに引き合いながら進み噴霧流の進行方向のば
らつきを防止することが記載されている。
さらに、特許文献5では、吸気ポートに設けられた燃料噴射弁において、弁体の中心軸と同軸の二重の円上にそれぞれ複数の噴孔が配置され、内側の円上に配列された噴孔から噴射された噴霧から離れる方向に、外側の円上に配列された噴孔から噴霧を噴射するようにしている。この先行例では、噴霧の安定化、微粒化を図ると共に、噴霧が吸気弁のバルブ傘の中央部には到達せず、バルブ傘の外周部のみに到達するようにしている。
一方、流体工学において、噴孔から噴射された断面形状が長円状のスイッチング噴霧の長軸と短軸との方向が、下流において変化するアクシス−スイッチング(axis−switching)現象が知られている(非特許文献1−6)。このアクシス−スイッチング現象は、噴霧の断面形状が長円形状でなくてもよく、少なくとも短軸に対して長軸がほぼ線対称である形状のものであれば成立する。
特開2007−315276号公報 特開2012−145048号公報 特開2008−169766号公報 特開2000−104647号公報 特開平11−72067号公報
日本機械学会論文集(B編)55巻514号、pp1542−1545、「非円形噴流中の渦構造に関する研究」(豊田他) ILASS−Europe2010、"An experimental investigation of discharge coefficient and cavitation length in the elliptical nozzles"(Sung RyoulKim) 生産研究50巻1号、pp69−72、"Numerical Simulation of Complex Turbulent Jets:Origin of Axis-Switching"(Ayodeji O.DEMUREN) 噴流工学、森北出版、pp41−42 日本機械学会論文集(第2部)25巻156号、pp820−826、「ディーゼル機関燃料噴霧の到達距離に関する研究」(和栗ら) 日本機械学会論文集(B編)62巻599号、pp2867−2873「ディーゼル噴霧構造に与える雰囲気粘性の影響」(段ら)
上記のように、従来技術では、マルチホールインジェクタを搭載した火花点火式直噴エンジンにおいて、点火プラグ近傍を指向する噴霧と点火プラグ近傍を指向せずに全体に拡散する噴霧のそれぞれに要求される噴霧仕様を実現するための設計の自由度が低く、十分に実現することができていなかった。特に、噴霧の微粒化、噴霧形状、および貫徹力は、互いに相関を持つ特性であるが、特許文献1および特許文献2では、それらの影響を考慮していないため、最適な噴霧仕様を実現することはできない。
特許文献1のようなノズルでは、実際には噴孔上流のサック(キャビティ)内部の流れ方によって各噴孔への燃料の流入の仕方が変わることが知られている。すなわち、噴孔入口と出口の断面積を異ならせた場合に、必ずしも噴射量を一定にしたままで噴霧角を広げられるとは限らない。特に、複数の噴孔がインジェクタ中心軸を対称にして配置されていない場合は、各噴孔内の流れパターンは同じとならないことが多いが、特許文献1ではこ
れらのことが考慮されていない。
特許文献2では、燃料圧力や剥離状況等によるキャビテーションへの影響が示されていないため、微粒化のレベルが不明である。微粒化のレベルが異なれば噴霧全体が保有する運動量も異なり貫徹力にも影響する。特に点火プラグ近傍を指向する噴霧としては、噴霧形状や貫徹力等の設計自由度をより確実に向上させる手法が望まれる。
また、特許文献3に記載の燃料噴射弁は、噴霧が干渉するのを避けているに過ぎず、複数の噴霧から形成される噴霧パターンや全体噴霧の形状は、幾何学的に考えれば必然的に拡がり気味となってその設計自由度は小さいものとなり、適用できる吸気ポート形状や吸気弁配置などに制約が生じる。また、微粒化して混合気形成を促進させたり、噴霧貫徹力を小さくして吸気ポート内での噴霧付着を抑制したりするためには、各噴霧を拡げて微粒化させる必要があり、全体噴霧はさらに拡がる。
また、この先行例では、噴孔を内側にも配置して噴射量分布の偏りを低減しているが、内側に噴孔が配置されていない場合に比べて相対的に低減されているだけであり、各々の噴孔からの独立した液柱噴流が干渉を避けながら微粒化して、偏りが低減した噴射量分布になる方策についての説明がないので、適用できる吸気ポート形状や吸気弁配置等が不明である。
すなわち、噴孔を内側にも配置して各噴霧を近接させ、噴射量分布の偏りを低減しようとすると、各噴霧間には自動的にコアンダ効果が作用して各噴霧の集合化が始まり、下流での噴射方向の横断面の噴射量分布は略中心がピークの円錐状となる一つの集合噴霧となってしまい、この全体噴霧としての噴霧角は比較的小さなものになることは、市場で使用されている燃料噴射弁の特性や公知文献から明らかである。逆に、コアンダ効果による各噴霧の集合化を抑制するためには、隣り合う噴霧間に一定の距離(噴射条件や雰囲気条件によって変化する)を確保する必要があり、前述したように拡がった全体噴霧となる。
また、特許文献4に記載の燃料噴射ノズルのように、各噴霧が拡がり過ぎないようにコアンダ効果を作用させ、且つ一方では各噴霧が集まらないようにコアンダ効果を抑制することは、静的な雰囲気条件下であっても噴霧方向のバランス維持が難しい。まして吸気ポート内では、周囲空気圧力、温度、吸気流動、噴霧体積(重量)流量、噴霧速度等の影響を受けるため、過渡運転時の非定常状態の多いガソリンエンジン用の噴射系システムで実現するのは非常に難しい。
すなわち、コアンダ効果の作用が強くなれば各噴霧は集合してコンパクトになり、噴射方向の横断面の噴射量分布は略中心がピークの円錐状となるし、逆にコアンダ効果の抑制が働けば、各噴霧は下流になるにつれて離れてしまい、全体として非常に広角な噴霧流となるのが通常である。その結果、全体噴霧の噴霧形状や噴霧パターン、噴射量分布は、各噴孔の主たる軸の方向あるいは各噴流の主たる噴射方向の設定に応じて成り行きとなっていた。
また、特許文献5では、燃料噴射弁の各噴孔(各噴霧)の方向を設定して、吸気弁の位置における噴霧パターンを吸気弁形状に応じた円環状あるいはC字状とすることが記載されているが、実際には、隣り合う各噴霧同士のコアンダ効果や、全体噴霧が中空状となることによる内外圧力差に伴うすぼみ効果の影響を考慮しなければ、円環状やC字状の噴霧パターンを維持することはできない。
上記のように、引用文献1−5では、噴霧の微粒化向上と、噴霧形状、噴霧方向、貫徹力、および噴射量分布等の設計自由度向上とを両立させることが可能な方策は示されてい
ない。従って、これらの先行例は、エンジン仕様毎に異なる吸気ポート形状あるいは燃焼室形状、およびそれぞれの吸気流動において最適な噴霧仕様を決めるための指針とはなっていない。
また、従来の流体噴射弁において、上述のアクシス−スイッチング現象を利用して、あるいはスイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧を利用して、エンジン仕様毎に異なる吸気ポート形状あるいは燃焼室形状、およびそれぞれの吸気流動に適した可変噴霧を実現したものはなかった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧を利用して、噴霧形状が可変であり、噴霧の微粒化と、噴霧形状、噴霧方向、貫徹力、および噴射量分布の設計自由度の向上とを両立させた流体噴射弁およびこの流体噴射弁を備えた噴霧生成装置を得ることを目的とする。
また、スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧を利用して、吸気ポート形状あるいは燃焼室形状、およびそれぞれの吸気流動に適した可変噴霧を実現し、噴霧の微粒化と、噴霧形状、噴霧方向、貫徹力、および噴射量分布の設計自由度の向上とを両立させたエンジンを提供することを目的とする。
本発明に係る流体噴射弁は、流体が流れる通路の途中に設けられた弁座と、この弁座との当接、離間により通路の開閉を制御する弁体と、弁座の下流に設けられた噴孔体とを備え、噴孔体に配置された噴孔から都度要求される流体噴射量を複数回に分けて噴射する分割噴射により、所望の形態の噴霧を生成する流体噴射弁であって、噴孔は、流体の噴射方向に直角な面内の断面形状において長軸と短軸の長さが異なるスイッチング噴霧を生成するスイッチング噴孔を少なくとも一つ含み、スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、スイッチング噴孔から下流の所定位置において長軸と短軸の方向を変化させることによる断面形状の変形を生じ得るものであり、流体の噴射条件として設定されるパラメータの少なくとも1つは、スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧の断面形状の変形が生じる場合と生じない場合とを場合分けすることが可能な閾値を有し、分割噴射の各噴射における噴射条件が閾値に基づいて設定されるものである。
本発明によれば、スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧の断面形状の変形が生じる場合と生じない場合とを場合分けすることが可能な閾値に基づいて、分割噴射の各噴射における噴射条件を設定することにより、噴霧形状が可変であり、噴霧の微粒化と、噴霧形状、噴霧方向、貫徹力、および噴射量分布の設計自由度の向上とを両立させた流体噴射弁およびこの流体噴射弁を用いた噴霧生成装置並びにエンジンを得ることが可能である。
本発明の実施の形態1に係る燃料噴射弁の全体構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態1に係る燃料噴射弁の先端部を示す拡大断面図および平面図である。 本発明の実施の形態1に係る燃料噴射弁において分割噴射した場合の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態1に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態1に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態1に係る燃料噴射弁において分割噴射した場合の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態1に係る燃料噴射弁において分割噴射した場合の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態1に係る燃料噴射弁において分割噴射した場合の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態3に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態3に係る燃料噴射弁において分割噴射した場合の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態3に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態3に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態3に係る燃料噴射弁において分割噴射した場合の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態4に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態4に係る燃料噴射弁において分割噴射した場合の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態5に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態5に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態6に係る燃料噴射弁の先端部を示す拡大断面図および平面図である。 本発明の実施の形態6に係る燃料噴射弁の先端部を示す拡大断面図である。 本発明の実施の形態6に係る燃料噴射弁の先端部を示す拡大断面図である。 本発明の実施の形態6に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態6に係る燃料噴射弁において分割噴射した場合の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態7に係るエンジンの吸気ポートを示す図である。 本発明の実施の形態7に係るエンジンの吸気ポートを示す図である。 本発明の実施の形態7に係るエンジンの吸気ポートを示す図である。 本発明の実施の形態8および実施の形態10に係る燃料噴射弁の噴孔プレートを示す平面図である。 本発明の実施の形態8および実施の形態10に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態10に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態11に係るエンジンの吸気ポートを示す図である。 本発明の実施の形態11に係るエンジンの吸気ポートを示す図である。 本発明の実施の形態12に係る燃料噴射弁の噴孔プレートを示す平面図である。 本発明の実施の形態12に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態12に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態12に係る燃料噴射弁において分割噴射した場合の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態13に係る火花点火式直噴エンジンを模式的に示す図である。 本発明の実施の形態14に係る燃料噴射弁の噴孔プレートを示す平面図である。 本発明の実施の形態14に係る燃料噴射弁の噴孔プレートの他の例を示す平面図である。 本発明の実施の形態14に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態14に係る燃料噴射弁の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態14に係る燃料噴射弁において分割噴射した場合の噴霧挙動を説明する図である。 本発明の実施の形態15に係る火花点火式直噴エンジンを模式的に示す図である。 本発明の実施の形態16に係る圧縮着火式直噴エンジンを模式的に示す図である。
実施の形態1.
以下に、本発明の実施の形態1に係る流体噴射弁について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態1に係る燃料噴射弁を示す断面図、図2は、本実施の形態1に係る燃料噴射弁の先端部を示し、(a)は拡大断面図、(b)は(a)中、矢印イで示す方向から見た噴孔プレートの平面図である。なお、各図において、図中、同一、相当部分には同一符号を付している。
本実施の形態1に係る噴霧生成装置は、流体噴射弁である燃料噴射弁1と、燃料噴射弁1に燃料を供給する燃料供給手段(図示省略)、および燃料噴射弁1の動作を制御する制御手段である制御装置(図示省略)とを備えている。以下の説明では、エンジンに取り付けられ、燃料を噴射する燃料噴射弁1を例に挙げて説明する。
燃料噴射弁1は、電磁力を発生するソレノイド装置2と、ソレノイド装置2への通電により作動する弁装置3を備えている。ソレノイド装置2は、磁気回路のヨーク部分をなすハウジング21と、このハウジング21の内側に設けられた固定鉄心であるコア22と、コア22を囲うように設けられたコイル23と、コイル23の内側に設けられ往復移動する可動鉄心であるアマチュア24を備えている。
弁装置3は、円筒形状であってコア22の先端部の外径部に圧入、溶接された弁本体31と、弁本体31の内部の燃料が流れる通路の途中に設けられた弁座32を備えている。弁座32の下流には、燃料を噴射する噴孔39を有する噴孔体である噴孔プレート33と、弁本体31の内側に設けられ、弁座32との当接、離間により通路の開閉を制御する弁体35と、弁体35の上流に設けられた圧縮バネ36を備えている。
弁体35は、アマチュア24の内面に圧入、溶接された中空のロッド37と、ロッド37の先端部に溶接で固定されたボール38を有している。図2に示すように、ボール38は、燃料噴射弁1のZ軸(図1中、矢印で示す)に平行な面取部38aと、噴孔プレート33と対向する平面部38bと、弁座32と線接触する曲面部38cとを有している。なお、噴孔プレート33は、弁座32と一体的に形成されていても良い。
噴孔プレート33は、周縁部が下側に折曲されており、弁座32の先端面および弁本体31の内周側面に溶接されている。噴孔プレート33には、板厚方向に貫通するスイッチング噴孔391が形成されている。スイッチング噴孔391は、噴孔プレート33の板厚方向すなわち噴孔軸に直角な断面形状が長軸と短軸を有する例えば長円形の噴孔である。なお、以下の説明において、噴孔39とは、スイッチング噴孔391と非スイッチング噴孔392(後述)の総称であり、それらを特に区別する必要のない場合に用いるものである。
スイッチング噴孔391は、流体噴射方向に直角な面内の断面形状において長軸と短軸の長さが異なるスイッチング噴霧を生成するものである。なお、スイッチング噴孔391は、短軸に対して長軸が線対称なスイッチング噴霧を生成するように、その噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様が設定されている。スイッチング噴霧は、スイッチング噴孔391から下流の所定位置において長軸と短軸の方向を変化させることにより、その断面形状を変形させることができる。本実施の形態1では、噴孔プレート33は、1つのスイッチング噴孔391を有するものであるが、複数の噴孔39を有する場合には、その中に少なくとも一つのスイッチング噴孔391を含んでいれば良い。
燃料噴射弁1の動作について説明する。エンジンの制御装置より燃料噴射弁1の駆動回路に動作信号が送られると、燃料噴射弁1のコイル23に電流が通電され、アマチュア24はコア22側へ吸引される。この結果、アマチュア24と一体構造であるロッド37およびボール38は、圧縮バネ36の弾性力に逆らって上方向に移動し、ボール38の曲面部38cが弁座面32aから離間し、両者に間隙が形成されて通路が形成され、燃料噴射が開始される。
一方、エンジンの制御装置より燃料噴射弁1の駆動回路に動作の停止信号が送られると、コイル23への通電が停止し、アマチュア24がコア22側に吸引される力は消失し、ロッド37は、圧縮バネ36の弾性力によって弁座32側に押され、ボール38の曲面部38cと弁座面32aとは閉状態となり、燃料噴射はこの時点で終了する。
本実施の形態1に係る燃料噴射弁1においては、噴孔プレート33に配置された噴孔39から、都度要求される燃料(流体)噴射量を複数回に分けて噴射する分割噴射が行われる。分割噴射では、分割しない場合の本来の所定噴射期間よりも短い噴射期間で各噴射が行われる。要求される噴射量は、エンジンの回転数や負荷に応じて決まり、その時の運転条件と噴射量において要求される混合気形成形態に応じた噴霧形態を実現する必要がある。
なお、分割噴射は、噴射率形状を変化させたり、噴霧形態の自由度を向上させたりすることができるため、ディーゼルエンジンにおいては以前から行われている。分割噴射を行うことにより、混合気形成の状況を改善してPM(Particulate Mattar)やNO発生を抑制する可能性や、均質燃焼や成層燃焼に適した噴霧形態の形成を実現できる可能性がある。
前述のように、スイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧は、スイッチング噴孔391から下流の所定位置において長軸と短軸の方向を変化させることによる断面形状の変形を生じ得るものである。さらに、流体の噴射条件として設定される複数のパラメータの少なくとも1つは、スイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧の断面形状の変形が生じる場合と生じない場合とを場合分けすることが可能な閾値を有するものであり、この閾値に基づいて分割噴射の各噴射における噴射条件が設定あるいは調整される。
このような閾値を有するパラメータとしては、分割噴射の各噴射における噴射期間、噴射量、噴射圧力等がある。複数のパラメータを設定した場合、実現することができる噴霧形態の種類は、分割噴射回数とパラメータの組み合わせの積となる。
例えば上記3つのパラメータを設定する場合、パラメータの組み合わせは(1)噴射期間、(2)噴射量、(3)噴射圧力、(4)噴射期間と噴射量、(5)噴射期間と噴射圧力、(6)噴射量と噴射圧力、(7)噴射期間と噴射量と噴射圧力、の7通りが考えられる。分割噴射回数が2回の場合、設定可能な噴射条件は14種類となり、それぞれの噴射条件による噴霧形態を実現することができる。実際には、噴射期間、噴射量、噴射圧力ともに、その数値を含めた組合せがあるので、さらに多くの噴霧形態を実現可能である。
また、本実施の形態1では、噴孔プレート33は1つのスイッチング噴孔391を有しているが、複数のスイッチング噴孔391を有する場合、噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様(諸元)が同等のスイッチング噴孔391の閾値は同等である。言い換えると、異なる噴孔仕様の場合、同じ噴射の機会において閾値に対し異なる結果が得られる。例えば、あるスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧は変形を生じ、別のスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧は変形を生じないようにすることができる。このような場合、それぞれのスイッチング噴孔391に関して、予め噴射期間、噴射量、噴射圧力等のパラメータの影響を調査し、三次元マップのデータを作成しておくとよい。
本実施の形態1に係る燃料噴射弁1において、アクシス−スイッチング現象および分割噴射を利用し、噴霧形状、濃度分布等の噴霧構造、貫徹力、噴射量分布および噴霧方向を制御する手法について説明する。本実施の形態1において、全体噴霧は、閾値に基づいて設定された噴射条件により長軸と短軸の方向を変化させ断面形状の変形を生じさせるスイッチング噴霧を含んで構成される。また、閾値に基づいて設定された噴射条件により長軸と短軸の方向を変化させない噴霧を含んで構成することもできる。
図3および図4は、本実施の形態1に係る燃料噴射弁1の噴孔プレート33におけるスイッチング噴孔391からの噴流および噴霧の挙動を説明する図であり、図3は、図2(b)中、矢印ロで示す方向から見たスイッチング噴霧を示す側面図である。また、図4は、図3中、E−E、F−F、・・・、L−Lで示す部分における断面図である。なお、図3中、ΔL1、ΔL2は、貫徹力の差を示し、図4中、矢印Lは長軸の方向、矢印Sは短軸の方向を示している。
図3および図4において、(a)は、噴射条件がアクシス−スイッチング現象を生じる閾値に達していないスイッチング噴霧5Aの場合、(b)は、噴射条件がアクシス−スイッチング現象を生じる閾値に達しているスイッチング噴霧5Aの場合、(c)は、二分割噴射において前段のスイッチング噴霧5A−1の噴射条件がアクシス−スイッチング現象を生じる閾値に達している場合の挙動をそれぞれ示している。なお、(c)に示す二分割噴射では、(a)、(b)に示す本来の所定噴射期間よりも短い噴射期間で各噴射がなされている。
スイッチング噴孔391から噴射された燃料の噴流は、所定の距離a(ブレーク長さ)下流に進むと、噴射方向に直角な面内の断面形状において長軸Lと短軸Sの長さが異なるスイッチング噴霧5Aを生成する。スイッチング噴孔391より生成されるスイッチング噴霧5Aは、該スイッチング噴孔391から所定の距離でアクシス−スイッチング現象を生じて長軸Lと短軸Sの方向を変化させて変形するように制御することが可能である。
図3(a)の例では、スイッチング噴孔391からの噴流および噴霧の諸条件がアクシス−スイッチング現象を生じる閾値に到達せず、アクシス−スイッチング現象を生じないままとなっている。この場合、図4(a)に示すように、長軸Lと短軸Sが逆転するような変化はしない。
図3(b)の例では、スイッチング噴孔391からの噴流および噴霧の諸条件がアクシス−スイッチング現象を生じる閾値に到達し、アクシス−スイッチング現象を生じている。この場合、図4(b)に示すように、長軸Lと短軸Sの方向が変化して逆転し、断面形状が変形している。また、この際、長軸Lと短軸Sの変化や変形は非対称性に伴う周囲空気との大きな運動量交換に起因していることから、噴霧が持つ運動量が大幅に周囲空気に移動し、スイッチング噴霧5Aの貫徹力は途中から急速に低下し、図3(a)よりも貫徹力が小さくなる。
さらに、図3(c)の例では、前段のスイッチング噴霧5A−1は、スイッチング噴孔391からの噴流および噴霧の諸条件がアクシス−スイッチング現象を生じる閾値に到達している。ただし、後段のスイッチング噴霧5A−2は、アクシス−スイッチング現象を生じるようにしても、生じないようにしても、どちらでも構わない。
前段のスイッチング噴霧5A−1は、アクシス−スイッチング現象を生じて大きな運動量を失った上に、噴射期間が短いために分断された噴霧となっている。このような場合は、後続流からの運動量の補充がなくなるため、噴霧が持つ運動量に比べて周囲空気と干渉して移動する運動量の比率が大きくなり、噴霧の断面形状が変化して変形することによる運動量移動に加え、噴霧が持つ運動量が低下する。この結果、図3(b)よりもさらに貫徹力が小さくなる。
図5(a)は、図3(a)に示す噴霧の時間経過に伴う全体噴霧の変化の様子を示し、図5(b)は、図3(b)に示す噴霧の時間経過に伴う全体噴霧の変化の様子を示している。図5(a)に示すように、アクシス−スイッチング現象を生じないスイッチング噴霧5Aの場合、時刻t1に対し、時刻t5における全体噴霧(貫徹力L1)は、基本的な形態を維持したままで、周囲空気との混合(運動量移動)による若干の拡がりを持って下流に移動している。この様子は、従来の噴霧に関する通常の知見から容易に推測できるものである。
また、図5(b)に示すように、アクシス−スイッチング現象を生じたスイッチング噴霧5Aの場合、図5(a)に比べてt1における噴霧形態が拡がり気味であり、さらに時刻t5においては全体噴霧(貫徹力L2)の拡がり率が大きくなる傾向がある。ただし、図5(a)と同様に基本的な形態を維持しており、やはり従来の噴霧に関する通常の知見から容易に推測できるものである。
また、図6(a)は、図3(c)に示す二分割噴射における各噴霧の時間経過に伴う全体噴霧の変化の様子を示し、図6(b)は、図6(a)中、時刻t5において矢印イで示す方向から見た全体噴霧を示している。図6(a)に示すように、前段のスイッチング噴霧5A−1は、貫徹力が極めて低下しているので、噴射方向への拡がりが抑制され、噴射方向に直角な方向への拡がりが大きくなっている。一方、後段のスイッチング噴霧5A−2は、アクシス−スイッチング現象を生じさせない場合、貫徹力の大きな低下はなく、次第に前段の噴霧に接近して近接化、集合化させることが可能である(貫徹力L3<L2<L1)。
この場合、例えば噴射方向に直角なある断面の形状、あるいは噴射方向に直角な面内の投影形状や噴射量分布(積分値)を、図6(b)に示すような略十字形とすることが可能である。条件的には、例えば前段のスイッチング噴霧5A−1は所定燃圧での少し長めの噴射期間の分割噴射として噴霧が保有する運動量を確保し、後段のスイッチング噴霧5A−2は前段噴霧5A−1による噴射燃圧低下が回復しきらないうちに少し短めの噴射期間の分割噴射とする。これにより、各スイッチング噴霧5A−1、5A−2が保有する運動量に差をつけることができ、前述の挙動が実現可能となる。
図6(a)に示すように、長軸と短軸の方向を変化させて変形するスイッチング噴霧5A−1と、長軸と短軸の方向を変化させないスイッチング噴霧5A−2とは、分割噴射の各噴射後の所定時刻における貫徹力が異なることを利用し、分割噴射の休止時間間隔を所定値に設定することにより、下流の所定位置において各噴射による噴霧を近接化あるいは集合化させ、全体噴霧を形成することができる。また、この全体噴霧は、流体噴射方向に直角な面内の断面形状あるいは投影形状が、略十字状または略菱形または略四角形となる時刻が存在する。
また、図7は、二分割噴射において、図6とは異なるアクシス−スイッチング現象を設定した場合の各噴霧の時間経過に伴う全体噴霧の変化の様子を示している。図7の例では、偏平な形状のスイッチング噴霧5A−1、5A−2を縦に積み重ねたような全体噴霧を形成する(貫徹力L4<L2<L1)。また、分割噴射の条件や噴霧同士の干渉レベルを考慮することにより、積み重なり方、すなわち近接化あるいは集合化のレベルを変更することができる。
また、図8は、三分割噴射における各噴霧の時間経過に伴う全体噴霧の変化の様子を示している。この例では、各段のスイッチング噴霧5A−1、5A−2、5A−3において、アクシス−スイッチング現象による長軸と短軸の変化による変形を小さくし、分割噴射数を増やしている。このように、分割噴射の各噴射による噴霧が近接化あるいは集合化した全体噴霧は、分割噴射による合計噴射量を1回の噴射で行った時の全体噴霧に比べて拡がりが抑制され、貫徹力が減少する(貫徹力L5<L2<L1)。
このように、アクシス−スイッチング現象の利用有無、利用有無の順序、分割回数、分割休止時間、閾値(噴射期間、噴射量、噴射圧力等)の組み合わせにより、図6(b)に示すような三次元的な全体噴霧形状および噴霧濃度分布等の構造の種類や、全体噴霧の貫徹力のレベル等を自在に実現し、また、変更することが可能となる。
なお、噴霧の長軸と短軸の方向を変化させ断面形状を変形させる方法としては、アクシス−スイッチング現象の利用以外に、燃料粒子に電荷を帯びさせて、下流の所定位置でその電荷を利用して燃料粒子の飛翔方向をコントロールする方法がある。例えば、図3(a)に示すスイッチング噴霧5Aの粒子に電荷を帯びさせ、紙面の右側あるいは左側から電荷を帯びた燃料粒子を誘引あるいは反発させることにより、図3(b)のように長軸と短軸の方向を変化させて断面形状を変形させることができる。
以上のことから、本実施の形態1によれば、スイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aの断面形状の変形が生じる場合と生じない場合とを場合分けすることが可能な閾値に基づいて、分割噴射の各噴射における噴射条件を設定することにより、噴霧形状が可変であり、噴霧の微粒化と、噴霧形状、噴霧方向、貫徹力、および噴射量分布の設計自由度の向上とを両立させた燃料噴射弁1および噴霧生成装置を得ることが可能である。
実施の形態2.
上記実施の形態1と同様の燃料噴射弁1において、分割噴射により微少噴射量を噴射して、巧妙な混合気形成や燃焼に寄与するためには、微少噴射期間の噴射動作を安定して実現することが必要である。噴射期間を小さくしていくと、弁体35が全閉状態から全開状態までのフルリフトをしない領域になる。本実施の形態2では、分割噴射において弁全開に至らずに閉弁する場合において、上記実施の形態1と同様に、スイッチング噴霧の断面形状の変形が生じる場合と生じない場合の場合分けが可能な閾値を見出し、分割噴射の各噴射における噴射条件をこの閾値に基づいて設定する。
具体的な方策としては、フルリフトをしない領域についても弁体動作を検出することにより、噴射量を推測することが可能である。この領域の噴射を組み合わせることで、より巧妙な噴射制御が可能となる。さらに、フルリフトしない領域の噴射条件を絞り込むことによって、アクシス−スイッチング現象による長軸と短軸の方向の変化による変形を生じさせることが可能である。例えば、噴射時間が短く噴射量が少なくなると噴霧が持つ運動量が小さくなる。これを補うためには、噴射期間をさらに短縮して噴射圧力を上げることにより噴射速度を増大させればよい。
実施の形態3.
上記実施の形態1および実施の形態2では、1つのスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aの挙動について説明したが、本実施の形態3では、隣接して配置された二つの非スイッチング噴孔392により生成される各噴霧の干渉、集合化に関する基本的な挙動について、図9〜図13を用いて説明する。なお、本実施の形態3に係る燃料噴射弁1の全体構成は上記実施の形態1と同様であるので、図1を流用して説明を省略する。
図9〜図11は、二つの非スイッチング噴霧4A、4Bにコアンダ効果が作用し集合噴霧を形成するまでの挙動を示している。なお、コアンダ効果とは、雰囲気圧力の低下に伴い、隣接する噴霧との近接化を誘起する効果である。
図9において、(a)は二つの非スイッチング噴孔392から1回の噴射で生成された非スイッチング噴霧の時刻t1における側面図、(b)は(a)中、E−E、F−F、G−G、H−Hで示す部分における断面図である。図9(a)に示すように、間隔x1で配置された二つの非スイッチング噴孔392から噴射された噴流4a、4bは、それぞれ非スイッチング噴霧4A、4Bとなる。噴流4a、4bは、液膜流の破断や分裂を経て実質的に噴霧流と見なせるようになる状態のブレークが生じたとき、断面E−Eに示す噴流断面形状である。
この時の非スイッチング噴孔392と断面E−Eとの距離をブレーク長さaとする。このブレーク長さaの位置ではすでに、両噴流4a、4bの隙間c1はコアンダ効果が作用する閾値よりも小さくなっている。続いて、断面F−Fでは、噴流4a、4bは、分散して単一の非スイッチング噴霧4A、4Bとなり、非スイッチング噴孔392から距離bの位置で、二つの非スイッチング噴霧4A、4Bは、その外径が接し始める。
さらに、断面F−Fから、圧力分布に起因して二つの単一の非スイッチング噴霧4A、4Bの間にコアンダ効果が作用し、単一の非スイッチング噴霧4A、4Bは接近して断面G−Gのように集合化が進む。それと同時に、非スイッチング噴霧4A、4Bの周囲空気の巻き込みと、それによる非スイッチング噴霧4A、4B内の略中心部分の下流への流れ方向に沿った空気流の誘起を生じさせる。
なお、仮に噴流4aと噴流4b、あるいは非スイッチング噴霧4Aと非スイッチング噴霧4Bとが、各々アクシス−スイッチング現象を生じる素性を保有していた場合でも、アクシス−スイッチング現象が生じる前に、断面E−Eの位置において両噴流4a、4bの隙間c1はコアンダ効果が作用する閾値よりも小さくなっているため、コアンダ効果が作用して接近し始める。
ここで、周囲空気の巻き込みレベルは、単一の非スイッチング噴霧4A、4Bを集合した集合噴霧40全体の形状を大きく変化させるレベルではない。さらに、条件が整えば、断面G−Gの集合噴霧40の状態からさらに集合化が進み、断面H−Hのように実質的にほぼ一つの中実の集合噴霧40とみなされるようになる。図9(a)において、時刻t1における集合噴霧40の貫徹力をL6とする。
図10は、図9に示す二つの非スイッチング噴霧4A、4Bを分割噴射した場合の時間経過に伴う全体噴霧の変化の様子を示している。図10に示すように、分割噴射を行った場合も、両者の間隔はコアンダ効果が作用する閾値よりも小さいため、基本的には各噴射のたびに両噴霧が近接して集合化する傾向となる。また、分割噴射の休止時間が短い場合には、前段噴霧が周囲空気を巻き込んで進むために生じる噴射方向への空気の流れが残った状態で後段噴霧を行うので、相対的に後段噴霧の方が貫徹力の低下が抑制され、後段噴霧が前段噴霧に追いつく傾向が生じる(時刻t1における貫徹力はL7<L6)。
図11は、二つの非スイッチング噴霧がコアンダ効果により集合噴霧を形成するまでの挙動を、周囲空気の巻き込み状況を示す矢印で説明した図であり、(a)は二つの非スイッチング噴孔から噴射された非スイッチング噴霧を示す側面図、(b)は(a)中、F−F、G1−G1、G2−G2、H−Hで示す部分における断面図である。
図11(a)に示すように、周囲空気の巻き込みにより、噴霧内に下流への流れ方向に沿った空気流Vが誘起されている。その結果、図11(b)に示すように、F−F、G1−G1、G2−G2、H−Hにおける各噴霧の噴射量分布は、集合噴霧40の略中心にピークができる。このように、複数の非スイッチング噴霧4A、4Bがコアンダ効果の作用により集合噴霧40を形成した場合、周囲空気の巻き込みによって噴霧内に下流への流れ方向に沿った空気流が誘起され、貫徹力の抑制が困難となり、噴霧の微粒化や噴霧形状に関しても設計自由度は低くなる。
また、図12は、1回の噴射で生成された二つの非スイッチング噴霧4Aにコアンダ効果が作用せず、独立した噴霧を形成するまでの挙動を説明する図である。図12において、(a)は二つの非スイッチング噴孔から噴射された非スイッチング噴霧の時刻t1における側面図、(b)は(a)中、E−E、F−F、G−Gで示す部分における断面図である。図12(a)に示すように、間隔x2(x2>x1)で配置された二つの非スイッチング噴孔392から噴射された噴流4a、4cは、それぞれ非スイッチング噴霧4A、4Cとなる。
この例では、断面E−Eにおけるブレーク長さaの位置では、両噴流4a、4cの隙間はコアンダ効果が作用する閾値よりも大きい。さらに、断面G−Gにおける両噴霧4A、4Cの隙間c2も、コアンダ効果が作用する閾値より大きく、両噴霧4A、4Cにはコアンダ効果は作用しない。その結果、両噴霧4A、4Cは独立したままでほぼ初期の進行方向に進んでいく(時刻t1における貫徹力をL8とする)。
図13は、図12に示す二つの非スイッチング噴霧4A、4Cを分割噴射した場合の時間経過に伴う全体噴霧の変化の様子を示している。この場合は、両噴霧の間にコアンダ効果は作用していないので、単純に分割された短い噴霧の塊が間隔をあけて並ぶ傾向となる。また、分割噴射の休止時間が短い場合には、前述と同様の傾向となる。時刻t1における貫徹力はL9<L8である。
本実施の形態3では、二つの非スイッチング噴孔392を例に挙げて説明したが、非スイッチング噴孔392とスイッチング噴孔391の組み合わせであっても、両噴霧の間にコアンダ効果が作用せず、それぞれが独立した噴霧を形成するように設計することは可能である。
実施の形態4.
本実施の形態4では、噴孔プレート33に隣接して配置された非スイッチング噴孔392とスイッチング噴孔391により生成される各噴霧の干渉、集合化に関する基本的な挙動について、図14および図15を用いて説明する。なお、本実施の形態4では、図36に示す噴孔プレート33が用いられており、複数の噴孔群393を有し、その各々は、互いに近接して配置された複数の噴孔39を有する。図14および図15における符号は図36を参照する。
図14は、同じ噴孔群393aに属し互いに隣接する非スイッチング噴孔392aとスイッチング噴孔391aにより生成される非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Aが、コアンダ効果により集合噴霧50を形成するまでの挙動を示している。図9において、(a)は各噴霧の側面図、(b)は(a)中、E−E、F−F、・・、M−Mで示す部分における断面図である。
非スイッチング噴孔392aとスイッチング噴孔391aは、間隔x3で配置されている。断面形状が長円形のスイッチング噴霧5Aは、アクシス−スイッチング現象が生じる前は、その長軸方向が非スイッチング噴霧4Aと対向している。スイッチング噴霧5Aは、非スイッチング噴霧4Aと対向しつつ、その断面形状が長軸および短軸の両方向に若干拡大しながら、ほぼスイッチング噴孔391a直下での初期の流れ方向を維持して下流に流れる。
その後、スイッチング噴孔391aから所定の距離においてアクシス−スイッチング現象が生じ、断面J−Jに示すように、スイッチング噴霧5Aの長軸と短軸の方向が変化し始める。なお、この位置では、スイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aとの隙間c3は、コアンダ効果が作用する閾値よりも大きく、コアンダ効果は生じていない。
断面J−Jから断面K−Kへと下流になるにつれて、スイッチング噴霧5Aの長軸と短軸の方向が変化する変形が進み、スイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aが近接してくる。これは、スイッチング噴霧5Aにアクシス−スイッチング現象が生じたことにより、スイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aの隙間が小さくなり、それに伴いスイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aとの間にコアンダ効果が作用したことによる。
断面K−Kにおいて、スイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aの隙間c4は、コアンダ効果が作用する閾値よりも小さくなっている。断面L−Lでは、スイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aの向かい合う端部が変形、移動して干渉し始める。その結果、断面M−Mにおいて、燃料噴射後の所定時間経過後に、非スイッチング噴孔392aおよびスイッチング噴孔391aから所定の距離において、スイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aが集合した集合噴霧50が形成される。
この集合噴霧50の形状、大きさ、方向、貫徹力、および噴射量分布や、各集合噴霧50の配置などは、スイッチング噴霧5Aおよび非スイッチング噴霧4Aの各特性や各配置を変更することにより、変更することができる。
また、スイッチング噴霧5Aは、長軸と短軸の方向が変化して変形することによって周囲空気との運動量交換が大きく進み、貫徹力が小さくなる。そのため、非スイッチング噴霧4Aと干渉することで、非スイッチング噴霧4Aの各粒子や各粒子に引きずられている空気流の動きに抑制がかかり、非スイッチング噴霧4Aの貫徹力も抑制される。
図14(a)の一点鎖線dは、非スイッチング噴霧4Aが単独の場合の噴霧形状を示している。このように、非スイッチング噴霧4Aは、スイッチング噴霧5Aとの干渉によって貫徹力が低下し、その先端の伸びが単独の場合よりも短縮される(時刻t1における貫徹力をL10とする)。
さらに、スイッチング噴霧5Aは、貫徹力が低下し周囲空気との混合が大幅に進むことにより微粒化が向上し、非スイッチング噴霧4Aの微粒化レベルとの差が小さくなる。すなわち、非スイッチング噴孔392aおよびスイッチング噴孔391aから下流の所定距離において微粒化され、断面が非対称な非円形形状の集合噴霧50を形成することができる。
図14において、スイッチング噴孔391aを利用しなかった場合、隣り合う噴霧の近接化はさらに下流にならないと始まらず、場合によっては集合化には至らない。従って、各噴霧は拡がり続けるとともに、貫徹力は低下しない。その結果、噴霧が保有する運動量は空気流に移動しにくく微粒化も不十分となる。
このように、同じ噴孔群393に属する噴孔39により生成される噴霧群(非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5A)は、所定距離においてスイッチング噴霧5Aの変形によりコアンダ効果が作用し近接化または集合化することにより、貫徹力を急速に減衰させることが可能である。また、貫徹力が低下することにより周囲空気との混合が進み、微粒化が向上する。さらに、噴射量分布および噴霧方向は、各噴孔仕様によって設定することができる。
図15(a)は、図14に示すスイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aを分割噴射した場合の時間経過に伴う全体噴霧の変化の様子を示し、図15(b)は、図15(a)中、時刻t3において矢印イで示す方向から見た全体噴霧を示している。なお、図15に示す例では、前段のスイッチング噴霧5A−1はアクシス−スイッチング現象を生じ、後段のスイッチング噴霧5A−2はアクシス−スイッチング現象を生じないように、閾値に基づいて噴射条件を設定している。この場合、上記実施の形態1で説明したように、分割噴射しない場合に比べて貫徹力を抑制することができる(時刻t1における貫徹力L11<L10)。
なお、図15では、非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Aを各一つ組み合わせで断面が非対象な集合噴霧50を形成しているが、集合噴霧が形成されるのはこの組み合わせに限定されるものではなく、噴霧の数および配置も限定されるものではない。例えば、二つの非スイッチング噴霧4Aと一つのスイッチング噴霧5Aとの組み合わせでもよいし、二つのスイッチング噴霧5Aであってもよい。すなわち、各噴孔群393の中に、スイッチング噴孔391が少なくとも一つ含まれていればよい。
本実施の形態4によれば、アクシス−スイッチング現象の利用有無、利用有無の順序、分割回数、分割休止時間、閾値(噴射期間、噴射量、噴射圧力等)の設定方法の組み合わせにより、例えば図15(b)に示すような三次元的な全体噴霧形状および噴霧濃度分布等の構造の種類や、全体噴霧の貫徹力のレベル等を自在に実現することが可能である。
実施の形態5.
本実施の形態5では、噴孔プレート33に隣接して配置された非スイッチング噴孔392とスイッチング噴孔391により生成される各噴霧が、コアンダ効果により集合化しない場合の挙動について、図16および図17を用いて説明する。なお、本実施の形態5では、図36に示す噴孔プレート33が用いられており、複数の噴孔群393を有し、その各々は、互いに近接して配置された複数の噴孔39を有する。図16および図17における符号は図361を参照する。
図16は、非スイッチング噴孔392cとスイッチング噴孔391dにより生成される非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Aの挙動を示している。図16において、(a)は各噴霧の側面図、(b)は(a)中、E−E、F−F、・・、L−Lで示す部分における断面図である。非スイッチング噴孔392cとスイッチング噴孔391dは、スイッチング噴孔391dの長軸が非スイッチング噴孔392cに対向するように、間隔x4(x4>x3)で配置されている。
スイッチング噴霧5Bは、アクシス−スイッチング現象が生じる前は、その長軸方向が非スイッチング噴霧4Aと対向しているが、スイッチング噴孔391dから所定距離において、断面J−Jに示すようにその長軸と短軸の方向が変化し始める。しかし、非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Aが最も接近する断面L−Lにおいても、それらの隙間c5はコアンダ効果が作用する閾値よりも大きい。このため、両噴霧4A、5Bにはコアンダ効果は作用せず、独立したままで、ほぼ初期の進行方向に進んでいく。この時、スイッチング噴霧5Bが非スイッチング噴霧4Aに干渉しないため、非スイッチング噴霧4Aの貫徹力は抑制されない。
また、複数のスイッチング噴霧5Aを含む場合、複数のスイッチング噴霧5Aにアクシス−スイッチング現象が生じた後も、非スイッチング噴霧4Aから近接化や変形等の影響を受けないようにすることで、複数のスイッチング噴霧5Aの変形後の形状を安定に保つことができる。
図17は、非スイッチング噴孔392aとスイッチング噴孔391eにより生成される非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Cの挙動を示している。図17において、(a)は各噴霧の側面図、(b)は(a)中、E−E、F−F、・・、L−Lで示す部分における断面図である。非スイッチング噴孔392aとスイッチング噴孔391eは、スイッチング噴孔391eの短軸が非スイッチング噴孔392aに対向するように、間隔x5で配置されている。
スイッチング噴霧5Cは、アクシス−スイッチング現象が生じる前は、その短軸方向が非スイッチング噴霧4Aと対向しているが、スイッチング噴孔391eから所定距離において、断面J−Jに示すようにその長軸と短軸の方向が変化し始める。しかし、非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Cが最も接近する断面H−Hにおいても、それらの隙間はコアンダ効果が作用する閾値よりも大きく、コアンダ効果は生じていない。
さらに、断面J−Jから断面K−Kへと下流になるにつれて、スイッチング噴霧5Cの長軸と短軸の方向が変化する変形が進み、スイッチング噴霧5Cと非スイッチング噴霧4Aの隙間はさらに大きくなる。このため、両噴霧4A、5Cにはコアンダ効果は作用せず、両噴霧4A、5Cは独立したまま、ほぼ初期の進行方向に進んでいく。この時、スイッチング噴霧5Cが非スイッチング噴霧4Aに干渉しないため、非スイッチング噴霧4Aの貫徹力は抑制されない。
なお、隣接する非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Aとの間でコアンダ効果が作用することを抑制する方法として、スイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aの特性に差を設けて、コアンダ効果が生じるタイミングを遅らせる方法がある。具体的には、非スイッチング噴孔392およびスイッチング噴孔391から同じ距離におけるスイッチング噴霧5Aの平均粒径を非スイッチング噴霧4Aの平均粒径よりも大きくする方法、あるいはスイッチング噴霧5Aのブレーク長さを非スイッチング噴霧4Aのブレーク長さよりも長くする方法、さらにはスイッチング噴霧5Aの貫徹力を非スイッチング噴霧4Aの貫徹力よりも大きく設定する方法等がある。
これらの方法を実現するにあたっては、非スイッチング噴孔392とスイッチング噴孔391との噴孔形状の違いによって、縮流のレベルや方向が変わることを利用することができる。例えば縮流のレベルや方向を異ならせた場合、噴孔39内での圧力損失(噴流速度)、噴流の断面積、断面形状、配置、および方向等を異ならせることができ、コアンダ効果が作用する隙間の閾値を変更することが可能となる。また、コアンダ効果が作用する隙間の閾値は、各噴霧の流速、微粒化レベル、粒子数密度、雰囲気圧力等によっても変わるため、これらを調整することにより所望の閾値に設定することができる。
なお、図16および図17に示す噴霧を分割噴射する場合は、上記実施の形態1で説明した噴霧挙動(図3〜図8)の組合せにより全体噴霧の挙動が決まるため、ここでは説明を省略する。
なお、図16および図17では、スイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5A(5C)は、アクシス−スイッチング現象により変形した後も、別の噴霧群393に属する非スイッチング噴孔392により生成される非スイッチング噴霧4Aとの間でコアンダ効果が作用せず、近接化または集合化しない例について説明した。ただし、スイッチング噴霧5A、5Cがアクシス−スイッチング現象により変形した後、別の噴霧群393に属する噴孔39により生成される噴霧との間で近接化または集合化することにより、所望の全体噴霧仕様が実現される場合には、コアンダ効果が作用するようにしても良い。
以上のように、上記実施の形態1〜実施の形態5では、本発明に係る基本の噴霧パターンとして、以下の(ア)〜(カ)の噴霧について説明した。(ア)噴射条件がアクシス−スイッチング現象を生じる閾値に達していないスイッチング噴霧(図3(a))、(イ)噴射条件がアクシス−スイッチング現象を生じる閾値に達しているスイッチング噴霧(図3(b))、(ウ)二つの非スイッチング噴霧にコアンダ効果が作用し集合した噴霧(図9)、(エ)二つの非スイッチング噴霧にコアンダ効果が作用せず独立したままの噴霧(図12)、(オ)非スイッチング噴霧とスイッチング噴霧にコアンダ効果が作用し集合した噴霧(図14)、(カ)非スイッチング噴霧とスイッチング噴霧にコアンダ効果が作用せず独立したままの噴霧(図16)。
これらの(ア)〜(カ)の基本の噴霧パターンにおいて、噴霧の数、種類、および配置を任意に組み合わせて配列し、さらに、分割噴射における分割数、噴射期間、噴射休止時間、噴射量、噴射圧力等の仕様を任意に組み合わせることにより、従来は実現できなかった任意の三次元的な全体噴霧形状や噴霧濃度分布等の構造、噴霧貫徹力(分割噴射毎の貫徹力設定を含む)、噴射量分布等を時間経過による変化設定も含めて実現することが可能となる。
なお、噴霧パターンについては、1スプレーのみならず、2スプレーや、3スプレー等のマルチスプレーにおいて、全体噴霧の形状がそれぞれ異なる仕様の燃料噴射弁を提供することができる。また、上記実施の形態1では、電磁式の燃料噴射弁1について説明したが、駆動源は他の方式でもよく、ピエゾ式、機械式等の他の方式でもよく、また間欠噴射弁ではなく連続噴射弁にも適用できる。
また、本発明に係る流体噴射弁は、燃料噴射弁1以外にも、塗装、コーティング、農薬散布、洗浄、加湿、スプリンクラー、殺菌、冷却等の各種スプレーとして、一般産業用、農業用、設備用、家庭用、個人用等の用途があり、それぞれに要求される噴霧形態を実現することができる。本発明に係る流体噴射弁を組み入れることにより、駆動源やノズル形態、噴霧流体に関わらず、従来にない噴霧形態を実現することが可能な噴霧生成装置が得られる。
以下に示す実施の形態6〜実施の形態16では、上記実施の形態1〜実施の形態5で説明した基本の噴霧パターンを応用し様々な噴霧形態を実現した例について説明する。
実施の形態6.
図18は、本発明の実施の形態6に係る燃料噴射弁1の先端部を示し、(a)は拡大断面図、(b)は図18(a)中、矢印ハで示す方向から見た噴孔プレートの平面図である。なお、本実施の形態6に係る燃料噴射弁1の全体構成は、上記実施の形態1と同様であるので、図1を流用し説明を省略する。
本実施の形態6に係る燃料噴射弁1は、内燃機関の吸気管に取り付けられ、その先端部が内燃機関の吸気ポート内に臨んでおり、下方に向けて燃料を噴射する。また、噴孔プレート33には、燃料噴射弁1の中心軸であるZ軸に沿って下流に向けて外側に向かう集合噴孔390、スイッチング噴孔391が周方向に等間隔をおいて配置されている。
集合噴孔390、スイッチング噴孔391は、この中心軸線、すなわち噴流方向がエンジンの吸気弁を指向し、図18(b)に示すように、左右で互いに交差する2方向に向かう噴孔群に分かれている。断面が長円形状のスイッチング噴孔391は対向しており、このスイッチング噴孔391の両側に、それぞれ断面が円形状の複数の集合噴孔390が配置されている。
ここで、例えば縮流によって噴孔39内の流れを液膜流とする噴孔プレート33とカバープレート34、および弁座32、ボール38の詳細な構造と位置について、図18〜図20を用いて説明する。ここで説明する噴孔39は、非スイッチング噴孔392、スイッチング噴孔391、また集合噴孔390のどれであってもよい。なお、図19において、Xは噴孔39の径、Yは噴孔39の長さを示している。
燃料は、弁体35の開弁時においてボール38の面取部38aと弁座32の内面との間のZ軸に平行な通路から、ボール38の曲面部38cと弁座面32aとの間を下流へ向かい、弁座シート部R1に至る。弁座シート部R1の上流では燃料がZ軸に平行に流れるため、燃料は、弁座シート部R1を通過した後においては慣性により弁座面32aに沿う流れが主流となり、弁座面32aの下流端の点P1に達する。
点P1は弁座面32aの終端であり、弁座32は、点P1から下流側は垂直方向に延びた面を有している。従って、燃料の主流は、点P1から剥離する。弁座面32aの延長線は、カバープレート34の周側面と点P2で交わっており、点P1から剥離した燃料は、点P2に向かい環状通路C(弁座32の内周壁面とカバープレート34の大径部34dの周側面との間)を通過して、径方向に大幅な進路変更を伴わずに径方向通路B(弁座32の内周壁面とカバープレート34の小径部34cの周側面との間)に流入する。
なお、弁座シート部R1を通過する燃料の主流は、環状通路Cに流入するため、隙間通路A(ボール38の底面とカバープレート34の天面34aとの間)への流入は抑制される。シート部R1と噴孔39の入口の点P3とを直線で結んだ線は、カバープレート34の大径部である薄肉部34bで交叉している。すなわち薄肉部34bは、弁座シート部R1から噴孔39の入口への燃料の直線的な流入を遮っている。
このため、噴孔39に流入する燃料の少なくとも一部は、径方向通路Bに沿う流れとなる。カバープレート34は、その小径部34cが噴孔39よりも内径側で噴孔39に近接して配置されている。従って、径方向通路Bに沿って内径側に向かう燃料の正面流れF1は、燃料噴射弁1のZ軸から噴孔39に流入する戻り流れF2の流路を閉塞させ、戻り流れF2の速度を低下させる。戻り流れF2が抑制されることで、弁座シート部R1側から噴孔39に流入する正面流れF1の速度が相対的に強められる。
正面流れF1の少なくとも一部が、径方向通路Bに沿って進行した後に噴孔39内で大幅な方向変化を強制されること、および正面流れF1が高速であることから、燃料は、噴孔39の断面において、燃料噴射弁1のZ軸側の噴孔39の壁面に強く押し付けられる。その後、図20に示すように、噴孔39の入口では、低速な戻り流れF2は、噴孔39の壁面に沿って流れF3を形成し、高速な正面流れF1は、燃料を壁面に押し付ける燃料流F4を形成する。
また、噴孔39の出口から導入される空気の流れF5が燃料流F4に作用し、点P4(噴孔39の燃料入口の外側の縁部)を起点とした燃料流F4の剥離を生じさせる。燃料流F4は、噴孔39内を進行するに伴い壁面に押し付けられ、液膜の方向は、噴孔39の壁面の円周方向に広がりつつ噴孔39の壁面に沿う方向に変化していく。
この液膜が薄いほど液糸が細くなり、液滴の微粒化に有効であるため、本実施の形態6では、隙間通路Aの高さh(図19参照)に対する噴孔39の長さYを最適化し、燃料流F4が噴孔39内で薄い液膜流30の状態まで押し付けられるようにしている。これにより、噴射された燃料の液膜流30は、所定の距離を経て分裂を開始し、液糸の状態を経て微粒化された液滴が生成される。
図21は、図18(b)に示す噴孔プレート33に配置された断面が円形状の複数の集合噴孔390とスイッチング噴孔391により生成される各噴霧の干渉、集合化に関する挙動を説明する図である。図21において、(a)は各噴霧の側面図、(b)は(a)中、E−E、F−F、・・、M−Mで示す部分における断面図である。なお、(a)の側面図では、紙面方向に2つの非スイッチング噴霧4Dが重なっており、手前側の噴霧のみを示している。
スイッチング噴孔391からの噴流5dにブレークが生じ、断面F−Fにおける長円状のスイッチング噴霧5Dは、その長軸が一対の単噴霧4D、4Dと対向して配置される。その後、断面G−Gにおけるスイッチング噴霧5Dは、単噴霧4D、4Dが集合した集合噴霧40と対向しつつ、その断面形状が若干拡大(長軸及び短軸の両方向)していきながら、ほぼスイッチング噴孔391の直下での流れ方向を維持してそのまま下流に流れる。
断面J−Jにおいて単噴霧4D、4Dの集合化が進み、コアンダ効果が弱まったタイミングで、スイッチング噴霧5Dは、その長軸Lと短軸Sの方向が変化する変形が生じ始める。なお、単噴霧4D、4Dの集合化が進む前であって、単噴霧4D、4D間のコアンダ効果が強い時に、スイッチング噴霧5Dの長軸Lと短軸Sの方向が変化する変形が生じた場合には、スイッチング噴霧5Dと単噴霧4D、4Dとの距離が接近することで、スイッチング噴霧5Dと単噴霧4D、4Dとは急速に一体化してしまう。
断面J−Jから断面K−Kへと下流になるにつれて、スイッチング噴霧5Dの長軸Lと短軸Sの方向が変化する変形が進み、スイッチング噴霧5Dと単噴霧4D、4Dで構成された集合噴霧40が近接化する。この現象は、スイッチング噴霧5Dの長軸Lと短軸Sの方向が変化したためにスイッチング噴霧5Dと集合噴霧40の隙間が小さくなっていくこと、それに伴ってスイッチング噴霧5Dと集合噴霧40との間でのコアンダ効果が生じることによる。
さらに、断面L−Lにおいてスイッチング噴霧5Dと集合噴霧40との向かい合う端部は、変形して干渉し始める。その結果、断面M−Mにおいて、燃料噴射後の所定時期、集合噴孔390、スイッチング噴孔391から所定距離の位置において、スイッチング噴霧5Dと集合噴霧40とからなる集合噴霧50が形成される。なお、集合噴霧50の仕様に応じて、スイッチング噴霧5Dと集合噴霧40との相互影響を所定レベルに設定することが可能となり、断面M−Mにおける集合噴霧50の形状や貫徹力、噴射量分布の設定の自由度が向上する。
図22(a)は、図21に示す噴霧を分割噴射した場合の時間経過に伴う全体噴霧の変化の様子を示し、図22(b)は、図22(a)中、時刻t3において矢印イで示す方向から見た全体噴霧を示している。なお、図22に示す例では、前段のスイッチング噴霧5D−1はアクシス−スイッチング現象を生じ、後段のスイッチング噴霧5D−2はアクシス−スイッチング現象を生じないように、閾値に基づいて噴射条件を設定している。
時刻t1において後段の2つの非スイッチング噴霧4D−2、4D−2は、時刻t2において集合噴霧40―2となり、時刻t3において前段の集合噴霧40−1に追い付き、集合噴霧50を形成する。この場合、上記実施の形態1で説明したように、分割噴射しない場合(図21)に比べて貫徹力を抑制することができる。なお、スイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Dは、その貫徹力が集合噴孔390からの単噴霧の貫徹力よりも大きいものであってもよい。
本実施の形態6では、スイッチング噴孔391を除く他の複数の集合噴孔390は、各噴流が破断、分裂を経て単噴霧にブレークされたブレーク部位よりも下流側の各単噴霧が単噴霧間で作用するコアンダ効果で近接化あるいは集合化した部分全体噴霧である集合噴霧40を形成することができる。さらに、近接化あるいは集合化した各単噴霧の噴射量分布の中心あるいは重心が集合噴霧50の中心あるいは重心に収束する前の集合噴霧40と、スイッチング噴孔からのスイッチング噴霧5Dとがコアンダ効果により集合した集合噴霧50を形成し得るものであり、分割噴射の各噴射における噴射条件を閾値に基づいて調整することにより全体噴霧の仕様を可変とした。
スイッチング噴孔391と集合噴孔390とは、スイッチング噴霧5Dがアクシス−スイッチング現象により長軸と短軸の方向を変化させる所定位置より下流においてスイッチング噴霧5Dと集合噴霧40とがコアンダ効果により集合して集合噴霧50を形成するように間隔をあけて配置される。集合噴霧50の噴霧形状、貫徹力、噴射量分布および噴霧方向の各特性のうち少なくとも一つの特性は、スイッチング噴霧5Dがアクシス−スイッチング現象により長軸と短軸の方向を変化させる所定位置より下流において定められる。
本実施の形態6によれば、アクシス−スイッチング現象の利用有無、利用有無の順序、分割回数、分割休止時間、閾値(噴射期間、噴射量、噴射圧力等)の設定方法の組み合わせにより、例えば図22(b)に示すような三次元的な全体噴霧形状および噴霧濃度分布等の構造の種類や、全体噴霧の貫徹力のレベル等を自在に実現することが可能である。
実施の形態7.
本実施の形態7では、上記実施の形態6に係る噴孔プレート33(図18(b))を備えた燃料噴射弁1をエンジンの吸気ポートに取り付けた例について、図23〜図25を用いて説明する。
図23に示す例では、燃料噴射弁1は、吸気ポート8のスロットルボディ15に設けられ、その先端部はスロットル弁16に指向して取り付けられている。この燃料噴射弁1から燃料が噴射されて生じた集合噴霧40およびスイッチング噴霧5Dは、最後は集合噴霧50(ここでは全体噴霧)となり、この全体噴霧の貫徹力はスロットル弁16およびスロットルボディ15の壁面の手前で抑制される。従って、一旦上流に燃料を噴射して、燃料と空気とで混合気が生じる空間的余裕、すなわち吸気弁11と全体噴霧との間の空間的余裕を持たせることができる。
その結果、吸気ポート8が極端に短い場合等で吸気流の下流方向に燃料を噴射すると気筒間の噴射量分配がアンバランスになったり、吸気ポート8の内壁面への噴霧付着割合が増加したりすることで混合気形成状態が悪くなり、エンジンの性能が向上しないといった不都合を解消することができる。この例において分割噴射した場合、図22のような挙動の噴霧が形成され、分割噴射しない場合よりもさらに貫徹力を抑制させることができる。また、全体噴霧の形状、構造等についても実現できる自由度が大きく向上する。
また、図24は、燃料噴射弁1が吸気ポート8の吸気管集合部17に取り付けられた例を示し、(a)は構成図、(b)は平面図である。吸気管集合部17は、下流が分岐部18と接続され、各分岐部18にはそれぞれ気筒(図示せず)が接続されている。各分岐部18にはそれぞれ吸気弁11が取り付けられている。燃料噴射弁1は、その先端部が吸気弁11に指向して取り付けられており、各吸気弁11に向かって燃料噴射する。
この燃料噴射弁1から燃料が噴射されて生じた集合噴霧40およびスイッチング噴霧5Dは、最後は全体噴霧となる。全体噴霧の貫徹力は、吸気弁11および分岐部18の内壁面の手前で急に抑制される。また、集合噴霧40とスイッチング噴霧5Dとの間でのコアンダ効果により噴霧が集合するので、図24(b)の点線で示すように吸気ポート8の内壁面に噴霧が直接付着するのを抑制することができる。また、全体噴霧は、その形状が分岐部18の内壁面および吸気弁11と直接干渉しないようになっている。
この例では、吸気管集合部17に燃料噴射弁1を一本だけ配置して、各気筒の吸気弁11の付近までの吸気ポート8への噴霧付着を抑制しつつ、吸気弁11付近で全体噴霧の貫徹力を抑制し、且つ広角な噴霧を行うことが可能である。この例において分割噴射した場合、さらに貫徹力を抑制することが可能となる。また、全体噴霧の形状、構造等についても実現できる自由度が大きく向上する。
図24に示すような多気筒エンジンで燃料噴射弁1を1本だけ使用するようなシステム(シングルポイントインジェクション)は、エンジンのコストパーフォーマンスを向上するものである。すなわち、汎用エンジン、小型エンジンにおいては、現在のキャブレタから燃料噴射システムへの転換が進んでいるが、大幅なコストアップは難しいため、図24に示すシングルポイントインジェクションを用いることは非常に有用である。
また、図25は、燃料噴射弁1が吸気ポート8の吸気管集合部17に取り付けられた他の例を示し、(a)は構成図、(b)は平面図である。この例では、燃料噴射弁1の先端部は、吸気弁11に指向して取り付けられ、集合噴霧50(ここでは全体噴霧)がその指向方向に曲率を有し、吸気ポート8の壁面に直接的に衝突するのを回避している。
この燃料噴射弁1から燃料が噴射されて生じた集合噴霧40およびスイッチング噴霧5Dは、最後は全体噴霧となる。この全体噴霧は、その指向方向に曲率を有しており、吸気ポート8の壁面に直接的に衝突するのを回避することができる。また、集合噴霧40とスイッチング噴霧5Dとの間でのコアンダ効果により噴霧が集合するので、図25(b)の点線で示すように吸気ポート8の内壁面に噴霧が直接付着するのを抑制することができる。
また、この噴霧を分割噴射した場合、さらに吸気ポート8の形状に適合する噴霧仕様を実現することができる。特に、通常流体通路の断面が三次元的に異形形状である吸気弁11近傍の吸気ポート8において、燃料噴霧が吸気ポート8に直接付着するのを抑制することができる。
なお、図23〜図25に示す例では、一気筒に対して一吸気弁11であって、1つの燃料噴射弁1で2つの気筒を賄う場合を示しているが、一気筒に対して2つの吸気弁11であって、1つの燃料噴射弁1で1つの気筒を賄う場合であっても、本発明は適用可能である。吸気弁11が2つあるガソリンエンジンの場合、夫々の吸気弁11に対応する2つの集合噴霧50を構成すれば、2スプレーの各噴霧の設定自由度が大幅に向上することになる。その上で、噴霧の吸気ポート8の内壁面への付着抑制、噴霧と空気流動とのマッチングによる均質混合気形成、噴霧の吸気流動への追随による筒内直入など、目的に応じて全体噴霧の仕様を決めればよい。
実施の形態8.
図26は、本発明の実施の形態8に係る燃料噴射弁1の噴孔プレート33を示す平面図である。また、図27は、本実施の形態8に係る燃料噴射弁1により生成される噴霧の挙動を示している。なお、本実施の形態8に係る燃料噴射弁1の全体構成は、上記実施の形態1と同様であるので、図1を流用し説明を省略する。
本実施の形態8に係る燃料噴射弁1の噴孔プレート33は、図26に示すように、複数の噴孔39が周方向に沿って等間隔で円形状に配設されている。各噴孔39は、燃料噴射弁1の中心軸線、即ち噴流方向がエンジンの吸気弁を指向し、且つ図26中、左右で互いに交差する2方向に向かう噴孔群に分かれている。各噴孔39は、非スイッチング噴孔392と、長円形状のスイッチング噴孔391との2種類で構成されている。
スイッチング噴孔391は、長円の長軸が、各非スイッチング噴孔392の中心を結ぶピッチ円に対して直交する方向にあり、非スイッチング噴孔392及びスイッチング噴孔391は、スイッチング噴孔391からの噴霧と、非スイッチング噴孔392からの噴霧とが、後述するアクシス−スイッチング現象が生じる前にはコアンダ効果により集合しない範囲の距離にそれぞれ設定されている。隣接する非スイッチング噴孔392から生成される非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴孔391から生成されるスイッチング噴霧5Aは、図26中、矢印ニで示す方向から見ると、上記実施の形態1で説明した図14に示す噴霧挙動を示す。
本実施の形態8では、複数の噴孔39により生成された各噴霧が噴孔39から下流の所定位置において、中空状の全体噴霧60を形成する。各噴霧は、スイッチング噴霧が長軸と短軸の方向を変化させた後に、このスイッチング噴霧とコアンダ効果により集合化して各々が集合噴霧を形成し、さらにこれらの集合噴霧がそれぞれ連鎖して全体噴霧60を形成し得るものである。
図27は、図26に示す噴孔プレート33の非スイッチング噴孔392およびスイッチング噴孔391から噴射されて形成された各集合噴霧50−1〜50−10を示すものであり、この燃料噴射弁1では、集合噴霧50−1〜50−5が互いに連鎖し、また集合噴霧50−6〜50−10が互いに連鎖することにより、一対の中空円環状の全体噴霧60が形成される。また、分割噴射の各噴射における噴射条件を閾値に基づいて調整することにより、全体噴霧60の仕様は可変である。
各噴孔39は、周方向に間隔をおいて円形状に配設されていると共に隣接した噴孔39同士は等分間隔で配設されているので、中空状の全体噴霧60がより簡単に形成される。また、スイッチング噴霧5Aは、短軸に対して長軸が線対称である長円形状であるので、アクシス−スイッチング現象が生じた後、隣接する非スイッチング噴霧4Aとの間の距離が急接近し、コアンダ効果を迅速に生じさせることができる。さらに、スイッチング噴霧5Aは、非スイッチング噴霧4Aと対向しているので、コアンダ効果をより迅速に生じさせることができる。なお、スイッチング噴霧5Aは、長円形状以外の形状、例えば扁平状であってもよい。
なお、スイッチング噴霧と非スイッチング噴霧の個別仕様の設定と、これらの噴霧の組み合わせや配置によって、略中空状の全体噴霧60の仕様を、例えばC字状、コの字状、馬蹄形状等にすることが可能となる。このように、噴流工学における特徴的な現象を巧妙に利用することにより、従来の円形噴孔をベースとした噴孔径、噴孔テーパ度合い、噴孔長さ/噴孔径の比等の組み合わせでは実現できない噴霧を形成することが可能である。
また、この噴霧を分割噴射することにより、図27に示す全体噴霧60の貫徹力をさらに抑制することが可能となる。さらに、上記実施の形態1で説明した図10に示すように、分割噴射した噴霧を近接させて存在させる等により、全体噴霧60の形状、構造の自由度も大幅に向上する。
実施の形態9.
本実施の形態9では、上記実施の形態8に係る噴孔プレート33(図26)を備えた燃料噴射弁1を吸気ポートに取り付けた例について説明する。なお、燃料噴射弁1の吸気ポートへの取り付け方は上記実施の形態7と同様であるので、図23〜図25を流用し、図23〜図25に示す集合噴霧50を全体噴霧60に置き換えて説明する。
燃料噴射弁1は、図23に示すように、吸気ポート8のスロットルボディ15に設けられ、その先端部はスロットル弁16に指向して取り付けられ、全体噴霧60の貫徹力がスロットル弁16の手前で抑制されるように噴射条件が調整される。また、別の例として、図24および図25に示すように、吸気ポート8の吸気管集合部17に、その先端部が吸気弁11に指向して取り付けられ、全体噴霧60の貫徹力が吸気弁11の手前で抑制されるように噴射条件が調整される。または、全体噴霧60がその指向方向に曲率を有し、吸気ポート8の壁面に直接衝突するのを回避するようにしても良い。
また、この全体噴霧60を分割噴射により形成した場合、全体噴霧60の貫徹力をさらに抑制することができ、下流での全体噴霧60の吸気弁11や吸気ポート8壁面への衝突を従来に比べて大幅に抑制することが可能となる。なお、全体噴霧60の形状だけでは吸気弁11や吸気ポート8壁面への噴霧の衝突を回避できない場合は、全体噴霧60における運動量に分布を設けることで、全体噴霧60の方向を途中で変化させることができる。さらに、吸気弁11が閉じた状態での吸気ポート8内の空気流動にマッチさせて均質混合気形成を促進させるような全体噴霧60の形状、貫徹力、噴射量分布、方向を設定することも容易となる。
また、例えば吸気行程噴射では、吸気弁11から筒内へ流入する吸気流動に、さらに追随し易くなり、全体噴霧60が吸気弁11やその近傍の吸気ポート8壁面に干渉せずに筒内へ流入することが可能となり、筒内での吸気冷却効果による充填効率向上を実現できる。この場合においても、全体噴霧60の方向が途中で変化するように設定し、吸気流動に追随させることが可能となる。このように、非スイッチング噴孔392の広角化を伴わずに貫徹力をコントロールすることにより噴射系システム全体の自由度が高くなり、またエンジン性能が向上する。
実施の形態10.
本発明の実施の形態10に係る燃料噴射弁1は、上記実施の形態8と同様の噴孔プレート33(図26参照)を備え、その噴射条件を閾値に基づいて調整することにより、図27および図28に示す噴霧を生成するものである。なお、本実施の形態10に係る燃料噴射弁1の全体構成は、上記実施の形態1と同様であるので、図1を流用し説明を省略する。
本実施の形態10では、図26に示す噴孔プレート33において、複数のスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aの少なくとも一つは、長軸と短軸の方向を変化させる時間的タイミングと噴孔391からの距離が、他のスイッチング噴霧5Aと異なるように制御される。他のスイッチング噴霧5Aが長軸と短軸の方向を変化させた後に、隣接する噴霧とコアンダ効果により集合化して各集合噴霧50−1〜50−5、および各集合噴霧50−6〜50−10を形成し、これらの集合噴霧が連鎖して図27に示す一対の全体噴霧60を形成する。
また、上記実施の形態8と同様に、各噴孔39は、周方向に間隔をおいて円形状に配設されていると共に隣接した噴孔39同士は等分間隔で配設されているので、中空状の全体噴霧60がより簡単に形成される。スイッチング噴霧5Aは、短軸に対して長軸が線対称である長円形状であるので、アクシス−スイッチング現象が生じた後、隣接する非スイッチング噴霧4Aとの間の距離が急接近し、コアンダ効果を迅速に生じさせることができる。さらに、スイッチング噴霧5Aは、非スイッチング噴霧4Aと対向しているので、コアンダ効果をより迅速に生じさせることができる。なお、スイッチング噴霧5Aは、長円形状以外の形状、例えば扁平状であってもよい。
例えば、図27の右側に示す全体噴霧60は、スイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aの組み合わせで形成された各集合噴霧50−6〜50−10が互いに連鎖して形成される。各集合噴霧50−6〜50−10を形成するにあたり、各スイッチング噴霧5Aおよび非スイッチング噴霧4Aそれぞれの噴射量、断面積、噴射方向および微粒化レベルを調整することで、各スイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じて非スイッチング噴霧4Aとのコアンダ効果により集合するタイミングをずらしている。
また、スイッチング噴霧5Aは、その長軸と短軸の方向が変化して変形することによって周囲空気との運動量交換が大きく進み、貫徹力が小さくなり、非スイッチング噴霧4Aと干渉する。また、非スイッチング噴霧4Aも、各粒子や各粒子に引きずられている空気流の動きに抑制がかかり、貫徹力が抑制される。これにより、各集合噴霧50−6〜50−10の貫徹力に分布が生じる。その結果、各集合噴霧50−6〜50−10は、下流に進むに従って漸次あるいは段階的に偏向される。
これらの集合噴霧50−6〜50−10の流れ方向や形状変化は、それぞれの運動量の分布によって決定される。集合噴霧50−6〜50−10の流れに直角方向の断面において運動量分布に差があれば、断面内において貫徹力に差が生じ、その結果、貫徹力の低下が小さい部位は、集合噴霧を牽引してその方向を変化させ、貫徹力の低下が大きい部位は、貫徹力の低下が小さい部位に引きずられる形で追随する。
図28は、集合噴霧50−6〜50−10が全体噴霧60に至るまでの様子を時系列で示す側面図であり、図27の噴霧を矢印ホの方向から燃料噴射弁1のZ軸に対して垂直方向に見たときの前方の集合噴霧50−8、50−9、50−10だけを示している。図28(a)では、スイッチング噴孔391から所定の位置で、最初に左端のスイッチング噴霧5Aにアクシス−スイッチング現象が生じた後、一番近接している非スイッチング噴霧4Aとの間にコアンダ効果が作用し、両噴霧5A、4Aはさらに接近し干渉して集合噴霧50−10が形成される。
続いて、図28(b)では、別のスイッチング噴霧5Aにアクシス−スイッチング現象が生じ、一番近接している非スイッチング噴霧4Aとの間にコアンダ効果が作用して、同様に集合噴霧50−9が形成される。この間に、運動量のかなりの割合が空気に移動して貫徹力が大きく低下した集合噴霧50−10は、運動量を保持して貫徹力があまり低下していない集合噴霧50−9に引きずられて進み、やがて集合噴霧50−10と集合噴霧50−9とは連結される。なお、紙面厚さ方向において集合噴霧50−9と重なって見えていない集合噴霧50−6についても集合噴霧50−9と同様にして形成される。
同様に、図28(c)において集合噴霧50−8(50−7)が形成され、最終的には各集合噴霧50−6〜50−10が連鎖して全体噴霧60を形成する。なお、図27の左側の集合噴霧50−1〜50−5が全体噴霧60に至るまでの様子もこれと同様である。
このように、各スイッチング噴霧5Aを、アクシス−スイッチング現象が生じるタイミングおよびスイッチング噴孔391からの距離が異なるように調整することにより、各集合噴霧50−6〜50−10(50−1〜50−5)を、時間的ずれを生じさせながら各噴孔39からの距離および方向が異なるように形成することができる。従って、スイッチング噴霧5Aおよび非スイッチング噴霧4Aの個別仕様の設定と、これらの噴霧5A、4Aの組み合わせや配置によって、種々の略中空状の全体噴霧60の仕様を実現することが可能となる。
さらに、この全体噴霧60を分割噴射により形成した場合、全体噴霧60の貫徹力をさらに抑制することができる。また、分割噴霧における各噴射の噴射条件を閾値に基づいて調整することにより、全体噴霧60の仕様を変化させることが可能である。従って、通常の多噴孔噴霧で形成される全体噴霧では得られない噴霧形状、貫徹力、噴射量分布、噴霧方向を実現することが可能となり、噴霧仕様の設計自由度を大幅に向上させることができる。
なお、本実施の形態10では、スイッチング噴霧5Aと非スイッチング噴霧4Aが一つずつペアになった組み合わせで5つの集合噴霧50を形成する場合を示したが、両噴霧4A、5Aの組み合わせとその中の噴霧数、および全体噴霧を形成する集合噴霧の総数は、限定されるものではない。例えば、非スイッチング噴霧4Aが一つとその両側にスイッチング噴霧5Aが一つずつ配置された組み合わせで集合噴霧50を形成するようにしてもよい。また、これらの組み合わせの一つ一つで実現できる集合噴霧50の特性を所望の通りに設定することにより、各集合噴霧50の運動量分布すなわち貫徹力分布を形成することができるので、全体噴霧60を3次元的に偏向させることも可能である。
本実施の形態10によれば、中空状の全体噴霧60に限らず、中実状、C字状、コの字状等、様々な噴霧パターンを自在に形成することができる。従来の燃料噴射弁においても、各噴霧の方向を設定して、吸気弁の位置における噴霧パターンを吸気弁形状に応じた円環状あるいはC字状としたものはあった。しかし実際には、隣り合う各噴霧同士のコアンダ効果や、噴霧内外の圧力差により噴霧が萎む等の形状変化が発生し、円環状やC字状の噴霧パターンを維持することは難しかった。これに対し、本実施の形態10では、スイッチング噴霧5Aにアクシス−スイッチング現象が生じるまでは、隣り合う噴霧にコアンダ効果が作用しない配置としているので、中空状の全体噴霧を形成しても各噴霧の隙間によって内外は連通しており圧力差が生じないため、所望の噴霧パターンを維持することが可能である。
実施の形態11.
本実施の形態11では、上記実施の形態10に係る噴孔プレート33(図26)を備えた燃料噴射弁1を吸気ポートに取り付けた例について、図29〜図30を用いて説明する。なお、燃料噴射弁1は、図27に示す一対の全体噴霧60を形成するが、図29および図30(a)では、左側の全体噴霧60については図示を省略し、右側の全体噴霧60の前方の集合噴霧50−8、50−9、50−10だけを示している。
図29に示す例では、燃料噴射弁1は、吸気ポート8のスロットルボディ15に設けられ、その先端部はスロットル弁16に指向して取り付けられ、吸気流の上流に向かって燃料噴射する。燃料噴射弁1から燃料が噴射されて生じた非スイッチング噴霧4Aおよび各スイッチング噴霧5Aは、各集合噴霧50−1〜50−10を経て、一対の全体噴霧60が形成される。全体噴霧60の貫徹力は、スロットル弁16およびスロットルボディ15の壁面の直前で急に抑制される。このため、一旦上流方向にスロットル弁16に向けて燃料を噴射させ、吸気弁11と全体噴霧60との間で混合気が生じる空間を大きくとることができる。
その結果、吸気ポート8が極端に短い場合等で吸気流の下流方向に燃料を噴射すると気筒間の噴射量分配がアンバランスになったり、吸気ポート8の内壁面への噴霧付着割合が増加したりすることで混合気形成状態が悪くなり、エンジンの性能が向上しないといった不都合を解消することができる。
特に、燃料噴射弁1は吸気ポート8の中心軸に対して角度をもって取り付けざるを得ないので、噴孔39からスロットル弁16までの距離が不均等である。従って、軸に対称な噴孔39から燃料が噴出される燃料噴射弁1の場合は、混合気形成に適した噴射方向の設定とスロットル弁16への噴霧の付着防止とを両立させることが難しかったが、本実施の形態10に係る燃料噴射弁1によれば両立を図ることができる。
また、図30は、燃料噴射弁1が吸気ポート8の吸気管集合部17に取り付けられた例を示し、(a)は構成図、(b)は平面図である。吸気管集合部17は、下流が分岐部18と接続され、各分岐部18はそれぞれ気筒(図示省略)に接続されている。燃料噴射弁1の先端部は、各分岐部18の各吸気弁11に指向して取り付けられている。
燃料噴射弁1から燃料が噴射されて生じた非スイッチング噴霧4Aおよびスイッチング噴霧5Aは、最後は全体噴霧60となり、全体噴霧60の貫徹力を吸気弁11および分岐部18の内壁面の直前で急に抑制される。また、非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Aとの間でのコアンダ効果により噴霧が集合するので、図30の点線で示すように吸気ポート8の内壁面に噴霧が直接付着するのを抑制している。また、全体噴霧60が分岐部18の内壁面および吸気弁11に直接衝突するのを回避するように、指向方向に曲率を有するようにしても良い。
この例では、吸気管集合部17に燃料噴射弁1を一本だけ配置して、各気筒の吸気弁11の付近までの吸気ポート8への噴霧付着を抑制しつつ、吸気弁11付近で全体噴霧60の貫徹力を抑制し、且つ広角な噴霧を行うことが可能である。また、この噴霧を分割噴射した場合、分割噴射しない場合よりもさらに貫徹力を抑制することができると共に、噴霧仕様の設計自由度を大幅に向上させることができ、吸気ポート8の形状に適合する噴霧仕様を実現することができる。
図30に示すような多気筒エンジンで燃料噴射弁1を1本だけ使用するようなシステム(シングルポイントインジェクション)は、エンジンのコストパーフォーマンスを向上するものである。すなわち、汎用エンジン、小型エンジンにおいては、現在のキャブレタから燃料噴射システムへの転換が進んでいるが、大幅なコストアップは難しいため、図30に示すシングルポイントインジェクションを用いることは非常に有用である。
また、吸気弁11が閉じた状態での吸気ポート8内の空気流動にマッチさせて均質混合気形成を促進させるに適した全体噴霧60の形状、貫徹力、噴射量分布、方向を容易に設定することができる。また、例えば吸気行程噴射では吸気弁から筒内へ流入する吸気流動に、さらに追随し易くなり、全体噴霧60が吸気弁11やその近傍の吸気ポート8壁面に干渉せずに筒内へ流入することが可能となり、筒内での吸気冷却効果による充填効率向上を実現できる。
さらに、全体噴霧60の形状等だけでは吸気弁11やその近傍の吸気ポート8壁面への干渉を回避できない場合は、全体噴霧60の方向が途中で変化するように噴射条件を設定し、吸気流動に追随させることが可能である。このように、非スイッチング噴霧4Aの広角化を伴わずに貫徹力をコントロールすることにより、噴射系システム全体の自由度が高くなり、またエンジン性能が向上する。
なお、本実施の形態11では、2方向に向かう噴孔群に分れている、いわゆる2スプレーの噴霧形態について説明したが、この燃料噴射弁1は、四輪自動車用エンジンで多く用いられている二つの吸気弁に対応することができる。また、いわゆる1スプレーの噴霧形態で二つの吸気弁に対応する場合に、各燃料噴射弁1は各吸気ポートに傾斜して取り付けられ、燃料噴射弁1の各噴孔と吸気弁との距離が同一でない場合がある。そのような場合には、それぞれの吸気ポートに最適な噴霧形態を有する燃料噴射弁1を取り付ければよい。また、三つの吸気弁に対応する場合についても同様である。
実施の形態12.
図31は、本発明の実施の形態12に係る燃料噴射弁1の噴孔プレート33を示す平面図である。本実施の形態12に係る燃料噴射弁1の全体構成は、上記実施の形態1と同様であるので、図1を流用し説明を省略する。噴孔プレート33には、周方向に複数の噴孔39が配置され、一つのスイッチング噴孔391を含んでいる。噴孔プレート33の板厚方向に直角な断面形状が長円形であるスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aは、該噴孔391から所定の距離でアクシス−スイッチング現象を生じ、噴射方向に垂直な面内の断面形状において長軸と短軸の方向を変化させる。
複数の噴孔39は、少なくともスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧との近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない間隔で配置されると共に、それらの噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様が設定される。また、各噴霧4A、5Aは、少なくともスイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧4A、5Aとの近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない流速、粒径、および粒子数密度に設定される。
これにより、全体噴霧60を形成する各噴霧4A、5Aのうち、少なくとも一つのスイッチング噴霧5Aの噴射方向に垂直な面内の断面形状を変化させることができ、所望の方向を指向するように制御することが可能となる。また、スイッチング噴霧5Aは、変形によって周囲空気との運動量交換が進み、貫徹力が低下することを利用し、所定距離において噴霧の貫徹力を急速に減衰させることが可能であり、貫徹力が低下することにより周囲空気との混合が進み、微粒化が向上する。さらに、噴射量分布および噴霧方向は、各噴孔仕様によって設定することができる。
図31に示す噴孔プレート33を備えた燃料噴射弁1により形成される全体噴霧の形状例について、図32〜図34を用いて説明する。図32において、(a)はスイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じる前、(b)はスイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じた後、の噴射方向に垂直な面内の断面形状をそれぞれ示している。図33は、各噴霧4A、5Aが全体噴霧60に至るまでの様子を時系列で示す側面図であり、図32の噴霧を矢印ヘの方向から燃料噴射弁1のZ軸に対して垂直方向に見たときの前方の噴霧だけを示している。また、図34は、この噴霧を分割噴射した場合の噴射方向に垂直な面内の断面形状を示している。
図33に示すように、スイッチング噴孔391から所定の距離でスイッチング噴霧5Aにアクシス−スイッチング現象が生じ、噴射方向に垂直な面内の断面形状における長軸と短軸の方向が変化する。この時、スイッチング噴霧5Aは、運動量のかなりの割合が空気に移動し、貫徹力が大きく低下する。一方、各非スイッチング噴霧4Aは、隣接する非スイッチング噴霧4Aまたはスイッチング噴霧5Aと互いに干渉しないため、その貫徹力は抑制されない。このため、各非スイッチング噴霧4Aは、独立したまま、変形することなく、ほぼ初期の進行方向に進んでいく。最終的には、図33(d)に示すように、スイッチング噴霧5Aよりも長い距離まで到達する。
また、図34に示す例では、分割噴射による前段のスイッチング噴霧5A−1はアクシス−スイッチング現象を生じ、後段のスイッチング噴霧5A−2は生じないように各噴射の噴射条件が閾値に基づいて調整されており、下流の所定位置において各噴射による噴霧が集合化して、噴射方向に直角な面内の断面形状が略十字状(略菱形)となっている。
なお、本実施の形態12では、複数の噴孔39の中にスイッチング噴孔391を一つ含む場合について説明したが、スイッチング噴孔391は、二つ以上であってもよい。また、スイッチング噴霧5Aの長軸と短軸の方向が90度変化する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の角度に設定することができる。さらに、スイッチング噴霧5Aの形状は、断面形状がより偏平であってもよい。長軸と短軸の比が大きい噴霧を生成しようとする場合、長軸方向が分断しない範囲で長軸と短軸の方向が変化するように噴孔仕様を設定すればよい。また、全体噴霧60の形状は、中空円錐形状のみならず、中実円錐形状、三角形状等、種々のバリエーションを実現することが可能である。
本実施の形態12によれば、複数の噴孔39により生成される各噴霧のうち、少なくとも一つをスイッチング噴霧5Aとすることにより、アクシス−スイッチング現象を利用して噴霧方向を制御することが可能となり、噴霧の微粒化と、噴霧形状、貫徹力、および噴射量分布の設計自由度の向上を両立させることが可能となる。
また、全体噴霧60を分割噴射により形成するようにし、各噴射の噴射条件を閾値に基づいて調整することにより、全体噴霧60の仕様を変化させることが可能である。従って、通常の多噴孔噴霧で形成される全体噴霧では得られない噴霧形状、貫徹力、噴射量分布、噴霧方向を実現することが可能となり、噴霧仕様の設計自由度を大幅に向上させることができる。
実施の形態13.
図35は、本発明の実施の形態13に係る火花点火式直噴エンジンを模式的に示す図であり、(a)は成層燃焼時(ピストン上昇中)、(b)は均質燃焼時(ピストン下降中)の状態を示している。本実施の形態13に係る火花点火式直噴エンジン6は、燃焼室7に燃料を噴射する燃料噴射弁として、上記実施の形態12に係る燃料噴射弁1を備えたものである。
火花点火式直噴エンジン6の燃焼室7には、吸気ポート8と排気ポート9が連通しており、各々の燃焼室7側の開口部には、ピストン10と連動して開閉する吸気弁11と排気弁12が設けられている。また、燃焼室7の天井の略中央部には燃料噴射弁1が配置され、その側方には点火プラグ13が配置される。なお、燃料噴射弁1および点火プラグ13の配置は、これに限定されるものではない。
本実施の形態13では、燃料噴射弁1のスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aは、アクシス−スイッチング現象により点火プラグ13近傍を指向する噴霧となるように制御される。また、スイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じるか否かは、燃焼室7内の圧力または空気流動により制御される。
また、スイッチング噴孔391は、短軸に対して長軸が線対称なスイッチング噴霧5Aを生成するように、その噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様が設定される。これにより、アクシス−スイッチング現象を生じた後も線対称な形状となり、点火プラグ13近傍に安定して噴霧を停滞させるのに好都合である。
また、複数の噴孔39は、少なくともスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧との近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない間隔で配置されると共に、それらの噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様が設定される。
さらに、複数の噴孔39により生成される各噴霧は、少なくともスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧との近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない流速、粒径、および粒子数密度に設定される。なお、本実施の形態13では、各噴霧は、スイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じた後も、隣接する噴霧との間でコアンダ効果が作用しないようにしている。
本発明の実施の形態13に係る火花点火式直噴エンジン6における成層燃焼時と均質燃焼時の全体噴霧の状態について、図35を用いて説明する。図35(a)に示す成層燃焼時においては、ピストン10の上昇により燃焼室7の空気が圧縮され、燃焼室7内の圧力が上昇する。このため、各非スイッチング噴霧4Aおよびスイッチング噴霧5Aの貫徹力は均質燃焼時よりも小さくなる。スイッチング噴霧5Aは、点火プラグ13近傍を通過する過程でアクシス−スイッチング現象を生じ、点火プラグ13近傍を指向する。同時に貫徹力が大幅に低下し、点火プラグ13近傍を通過した時点で貫徹力を失い、点火プラグ13近傍で滞留する。
すなわち、噴射位置から点火プラグ13近傍までの所望の距離で、スイッチング噴霧5Aの貫徹力を急減衰させ、点火プラグ13近傍において所望の濃い混合気を形成することができる。このことは、成層燃焼を成立させるのに好都合である。
また、各非スイッチング噴霧4Aは、成層燃焼に適した混合燃焼状態となるように指向させると共に、シリンダライナー14やピストン10表面への衝突が抑制されるように貫徹力を設定される。これにより、全体噴霧60は、シリンダライナー14やピストン10表面への衝突を抑制され、且つ、点火プラグ13近傍に成層燃焼に適した濃い混合気を形成する。
また、図35(b)に示す均質燃焼時においては、ピストン10の下降と共に吸気弁11が開となるため、タンブル流等の強い空気流動が燃焼室7内に生じる。スイッチング噴霧5Aは、点火プラグ13近傍を通過する過程で燃焼室7内の空気流動に追随し、アクシス−スイッチング現象を生じず、燃焼室7内全体に拡散する。
このように、本実施の形態13に係る火花点火式直噴エンジン6は、成層燃焼時において、点火プラグ13近傍を指向する噴霧と指向しない噴霧との間に、大きな特性差を設けることができる。点火プラグ13近傍を指向する噴霧としてスイッチング噴霧5Aを適用することにより、点火プラグ13との衝突を避けつつ、点火プラグ13近傍で成層燃焼に適した混合気を形成することが可能である。また、均質燃焼時においては、点火プラグ13近傍を通過する過程で空気流動に追随させ、アクシス−スイッチング現象を生じず、燃焼室7全体に拡散させることが可能である。
本実施の形態13によれば、複数の噴孔39により生成される各噴霧のうち、少なくとも一つをスイッチング噴霧5Aとすることにより、アクシス−スイッチング現象を利用して点火プラグ13近傍を指向する噴霧を生成することが可能となり、噴霧の微粒化と、噴霧形状、貫徹力、および噴射量分布の設計自由度の向上を両立させることが可能となる。また、この噴霧を分割噴射することにより、特に成層燃焼時において上記設計自由度をさらに向上させることができる。
実施の形態14.
図36は、本発明の実施の形態14に係る燃料噴射弁1の噴孔プレート33を示す平面図である。本実施の形態14に係る燃料噴射弁1の全体構成は、上記実施の形態1と同様であるので、図1を流用し説明を省略する。噴孔プレート33には、4つの噴孔群393a、393b、393c、393d(総称して噴孔群393)と、単独で設けられた一つのスイッチング噴孔391eが配置されている。複数の噴孔群393の各々は、互いに近接して配置された複数の噴孔39を有し、複数の噴孔群393の少なくとも一つは、スイッチング噴孔391を少なくとも一つ含んでいる。
図36に示す例では、噴孔群393aは、非スイッチング噴孔392aとスイッチング噴孔391aを有し、噴孔群393bは、非スイッチング噴孔392bとスイッチング噴孔391bを有している。同様に、噴孔群393cは、非スイッチング噴孔392cとスイッチング噴孔391cを有し、噴孔群393dは、非スイッチング噴孔392dとスイッチング噴孔391dを有している。各噴孔群393において、スイッチング噴孔391の長軸は、同じ噴孔群393に含まれる非スイッチング噴孔392に対向するように配置されている。
非スイッチング噴孔392から噴射された燃料の噴流は、所定の距離(ブレーク長さ)下流に進むと、噴射方向に直角な面内の断面形状が略円形の非スイッチング噴霧を生成する。また、スイッチング噴孔391から噴射された噴流は、所定の距離(ブレーク長さ)下流に進むと、噴射方向に直角な面内の断面形状において長軸と短軸の長さが異なるスイッチング噴霧を生成する。
スイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧は、該スイッチング噴孔391から所定の距離でアクシス−スイッチング現象を生じるように制御され、長軸と短軸の方向を変化させる。同じ噴孔群393aに属し互いに隣接する非スイッチング噴孔392aとスイッチング噴孔391aにより生成される非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Aは、コアンダ効果により集合噴霧50を形成する。
また、図37は、本実施の形態14に係る噴孔プレート33における噴孔39および噴孔群393の他の配置例を示している。図37(a)に示す例では、噴孔群393f(393g)は、二つのスイッチング噴孔391f(391g)を含んでいる。この例のように、二つのスイッチング噴孔391を、それらの長軸が略平行に対向するように配置することにより、アクシス−スイッチング現象によって長軸同士が繋がった集合噴霧が形成される。
また、図37(b)に示す例では、噴孔群393h(393m)は、一つの非スイッチング噴孔392h(392m)と、二つのスイッチング噴孔391h(391m)を含んでいる。噴孔群393hは、長軸が略平行に対向する二つのスイッチング噴孔391hと、それらの間に配置された非スイッチング噴孔392hからなる。また、噴孔群393jは、長軸が略平行に対向する二つのスイッチング噴孔3911jと、それらの間に長軸が直交するように配置されたスイッチング噴孔3912jからなる。
噴孔群393h、393jにより形成される集合噴霧は、図37(a)に示す噴孔群393fにより形成される集合噴霧よりもさらに長手方向に細長く、中央部が膨らんだ断面形状となる。このように、各噴孔群393に含まれる噴孔39の数を増やすことで、より複雑な形状の集合噴霧を形成することができる。
本実施の形態14において、別の噴霧群393に属し、互いに隣接する非スイッチング噴孔392とスイッチング噴孔391により生成される非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Aは、図16および図17に示すように、互いに干渉せず近接化または集合化しない挙動を示す。
図36に示す噴孔プレート33を備えた燃料噴射弁1により形成される全体噴霧の形状例について、図38〜図40を用いて説明する。図38において、(a)はスイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じる前、(b)はスイッチング噴霧5Aがアクシス−スイッチング現象を生じた後、の噴射方向に垂直な面内の断面形状をそれぞれ示している。図39は、各噴霧4A、5Aが全体噴霧60に至るまでの様子を時系列で示す側面図であり、図38の噴霧を矢印ホの方向から燃料噴射弁1のZ軸に対して垂直方向に見たときの前方の噴霧だけを示している。また、図40は、この噴霧を分割噴射した場合の噴射方向に垂直な面内の断面形状を示している。
図39に示すように、噴孔プレート33に設けられた5つのスイッチング噴孔391から噴射されたスイッチング噴霧5Aは、各噴孔391から所定の距離でアクシス−スイッチング現象が生じ、噴射方向に直角な面内の断面形状における長軸と短軸の方向が変化する。この時、スイッチング噴霧5Aは、運動量のかなりの割合が空気に移動し、貫徹力が大きく低下する。
また、噴孔群393に属するスイッチング噴孔391c、391dから噴射されたスイッチング噴霧5Aは、アクシス−スイッチング現象が生じた後、同じ噴孔群393に属する非スイッチング噴孔392c、392dから噴射された非スイッチング噴霧4Aとの間でコアンダ効果が作用し、それぞれ集合噴霧50を形成する。すなわち、全体噴霧60は、単独で設けられたスイッチング噴孔391eにより生成される一つのスイッチング噴霧5Aと、非スイッチング噴孔392とスイッチング噴孔391を各一つ含む4つの噴孔群393a、393b、393c、393dにより生成される4つの集合噴霧50を含んでいる。
また、図40に示す例では、分割噴射による前段のスイッチング噴霧5A−1はアクシス−スイッチング現象を生じ、後段のスイッチング噴霧5A−2は生じないように各噴射の噴射条件が閾値に基づいて調整されている。単独で設けられたスイッチング噴孔391eから噴射された前段のスイッチング噴霧5A−1と後段のスイッチング噴霧5A−2は、下流の所定位置において各噴射による噴霧が集合化して、噴射方向に直角な面内の断面形状が略十字状(略菱形)となっている。
一方、噴孔群393に属するスイッチング噴孔391c、391dから噴射された前段のスイッチング噴霧5A−1は、アクシス−スイッチング現象が生じた後、同じ噴孔群393に属する非スイッチング噴孔392c、392dから噴射された前段の非スイッチング噴霧4A−1との間でコアンダ効果が作用し、貫徹力が急速に減衰する。これにより、下流の所定位置において、各噴射による噴霧が集合化して、噴射方向に直角な面内の断面形状が非対象な集合噴霧50を形成する(図15参照)。
なお、本実施の形態14では、スイッチング噴霧5Aの長軸と短軸の方向が90度変化する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の角度に設定することができる。さらに、スイッチング噴霧5Aの形状は、断面形状がより偏平であってもよい。長軸と短軸の比が大きい噴霧を生成しようとする場合、長軸方向が分断しない範囲で長軸と短軸の方向が変化するように噴孔仕様を設定すればよい。また、全体噴霧60の形状は、集合噴霧50の配置によって、中空円錐形状のみならず、中実円錐形状、三角形状等、種々のバリエーションを実現することが可能である。
以上のことから、本実施の形態14に係る燃料噴射弁1およびこれを備えた噴霧生成装置によれば、複数の噴孔群393により生成される各噴霧群の中に、少なくとも一つのスイッチング噴霧5Aを含むことにより、アクシス−スイッチング現象を利用して噴霧の噴射方向に直角な面内の断面形状を制御することが可能である。
また、噴孔群393に属するスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aは、アクシス−スイッチング現象を生じた後、該スイッチング噴孔391と同じ噴孔群393に属する別の噴孔39により生成される噴霧との間で、コアンダ効果による近接化または集合化を生じるように制御される。これにより、各噴孔群393により生成される各噴霧群の噴霧形状および全体噴霧形状を制御することが可能となり、噴霧の微粒化と、噴霧方向、貫徹力、および噴射量分布の設計自由度の向上とを両立させることが可能となる。
また、全体噴霧60を分割噴射により形成するようにし、各噴射の噴射条件を閾値に基づいて調整することにより、全体噴霧60の仕様を変化させることが可能である。従って、通常の多噴孔噴霧で形成される全体噴霧では得られない噴霧形状、貫徹力、噴射量分布、噴霧方向を実現することが可能となり、噴霧仕様の設計自由度を大幅に向上させることができる。
実施の形態15.
図41は、本発明の実施の形態15に係る火花点火式直噴エンジンを模式的に示す図であり、(a)は成層燃焼時(ピストン上昇中)、(b)は均質燃焼時(ピストン下降中)の状態を示している。本実施の形態15に係る火花点火式直噴エンジン6は、燃焼室7に燃料を噴射する燃料噴射弁として、上記実施の形態14に係る燃料噴射弁1を備えたものである。
火花点火式直噴エンジン6の燃焼室7には、吸気ポート8と排気ポート9が連通しており、各々の燃焼室7側の開口部には、ピストン10と連動して開閉する吸気弁11と排気弁12が設けられている。また、燃焼室7の天井の略中央部には燃料噴射弁1が配置され、その側方には点火プラグ13が配置される。なお、燃料噴射弁1および点火プラグ13の配置は、これに限定されるものではない。
本実施の形態15に係る火花点火式直噴エンジン6の燃料噴射弁1の構成は、上記実施の形態14と同様であるので詳細な説明は省略するが、要約すれば、アクシス−スイッチング現象を生じた後、該スイッチング噴孔391と同じ噴孔群393に属する別の噴孔39により生成される噴霧との間で、コアンダ効果による近接化または集合化を生じさせることにより、各噴孔群393により生成される各噴霧群および全体噴霧60の形状を、燃焼室7内での混合気形成または燃焼に適した形状に制御するものである。
本実施の形態15に係る火花点火式直噴エンジンには、図36または図37に示す噴孔プレート33を用いることができる。噴孔群393に属さず単独で設けられたスイッチング噴孔391eは、アクシス−スイッチング現象により点火プラグ13近傍を指向するスイッチング噴霧5Aを生成する。
本実施の形態15に係る火花点火式直噴エンジン6における成層燃焼時と均質燃焼時の全体噴霧の状態について、図41を用いて説明する。図41(a)に示す成層燃焼時においては、ピストン10の上昇により燃焼室7の空気が圧縮され、燃焼室7内の圧力が上昇する。このため、非スイッチング噴霧4Aおよびスイッチング噴霧5Aを含む各噴霧群の貫徹力は均質燃焼時よりも小さくなる。
噴霧群393に属するスイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aは、筒内を通過する過程でアクシス−スイッチング現象が生じ、該スイッチング噴孔391と同じ噴孔群393に属する別の噴孔39により生成される噴霧との間でコアンダ効果による近接化または集合化を生じる。
また、単独で設けられたスイッチング噴孔391eにより生成されるスイッチング噴霧5Aは、点火プラグ13近傍を通過する過程でアクシス−スイッチング現象を生じ、点火プラグ13近傍を指向する。同時に貫徹力が大幅に低下し、点火プラグ13近傍を通過した時点で貫徹力を失い、点火プラグ13近傍で滞留する。すなわち、噴射位置から点火プラグ13近傍までの所望の距離で、スイッチング噴霧5Aの貫徹力を急減衰させ、点火プラグ13近傍において所望の断面形状の濃い混合気を形成することができる。このことは、成層燃焼を成立させるのに好都合である。
また、各噴霧群は、成層燃焼に適した混合燃焼状態となるように指向させると共に、シリンダライナー14やピストン10表面への衝突が抑制されるように貫徹力を設定される。これにより、全体噴霧60は、シリンダライナー14やピストン10表面への衝突を抑制され、且つ、点火プラグ13近傍に成層燃焼に適した濃い混合気を形成する。
一方、図41(b)に示す均質燃焼時においては、ピストン10の下降と共に吸気弁11が開となるため、タンブル流等の強い空気流動が燃焼室7内に生じる。このため、各噴霧群のスイッチング噴霧5Aは、点火プラグ13近傍を通過する過程で燃焼室7内の空気流動に追随し、アクシス−スイッチング現象を生じず、燃焼室7内全体に拡散する。また、同じ噴孔群393に属する噴孔39により生成された非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Aは、コアンダ効果による近接化または集合化を生じない。
このように、本実施の形態15に係る火花点火式直噴エンジン6は、成層燃焼時において、点火プラグ13近傍を指向する噴霧と指向しない噴霧との間に大きな特性差を設けることができる。点火プラグ13近傍を指向する噴霧としてスイッチング噴霧5Aを適用することにより、点火プラグ13との衝突を避けつつ、点火プラグ13近傍で成層燃焼に適した混合気を形成することが可能である。また、均質燃焼時においては、点火プラグ13近傍を通過する過程で空気流動に追随させ、アクシス−スイッチング現象を生じず、燃焼室7全体に拡散させることが可能である。
本実施の形態15によれば、複数の噴孔群393により生成される噴霧群において、各噴霧群に含まれる噴霧の少なくとも一つをスイッチング噴霧5Aとすることにより、アクシス−スイッチング現象を利用して噴霧の噴射方向に直角な面内の断面形状を制御することが可能となり、噴霧の微粒化と、噴霧方向、貫徹力、および噴射量分布の設計自由度の向上とを両立させることが可能な火花点火式直噴エンジン6が得られる。また、この噴霧を分割噴射することにより、特に成層燃焼時において上記設計自由度をさらに向上させることができる。
実施の形態16.
図42は、本発明の実施の形態16に係る圧縮着火式直噴エンジンを模式的に示す図であり、(a)はピストン上昇時、(b)はピストン下降時の状態を示している。本実施の形態16に係る圧縮着火式直噴エンジン6Aは、燃焼室7に燃料を噴射する燃料噴射弁として、上記実施の形態14に係る燃料噴射弁1を備えたものである。
圧縮着火式直噴エンジン6Aの燃焼室7には、吸気ポート8と排気ポート9が連通しており、各々の燃焼室7側の開口部には、ピストン10と連動して開閉する吸気弁11と排気弁12が設けられている。また、燃焼室7の天井の略中央部には燃料噴射弁1が配置される。なお、燃料噴射弁1の配置は、これに限定されるものではない。
本実施の形態16に係る圧縮着火式直噴エンジン6Aの燃料噴射弁1の構成は、上記実施の形態14と同様であるので詳細な説明は省略するが、アクシス−スイッチング現象を生じた後、該スイッチング噴孔391と同じ噴孔群393に属する別の噴孔39により生成される噴霧との間で、コアンダ効果による近接化または集合化を生じさせることにより、各噴孔群393により生成される各噴霧群および全体噴霧60の形状を、燃焼室7内での混合気形成または燃焼に適した形状に制御するものである。
本実施の形態16に係る圧縮着火式直噴エンジン6Aにおけるピストン上昇時とピストン下降時の全体噴霧の状態について、図42を用いて説明する。図42(a)に示すピストン上昇時において燃料噴射を行う場合、ピストン10の上昇により燃焼室7の空気が圧縮され、燃焼室7内の圧力が上昇する。このため、各非スイッチング噴霧4Aおよびスイッチング噴霧5Aの貫徹力は大気圧下よりも小さくなる。
スイッチング噴孔391により生成されるスイッチング噴霧5Aは、筒内を通過する過程でアクシス−スイッチング現象が生じ、該スイッチング噴孔391と同じ噴孔群393に属する別の噴孔39により生成される噴霧との間でコアンダ効果による近接化または集合化を生じる。これにより、各噴霧群の貫徹力は大幅に低下し、圧縮上死点付近の燃焼室7内において、コンパクトな全体噴霧60を形成する。
なお、圧縮着火式直噴エンジンは、圧縮上死点付近における圧縮温度及び圧力が非常に高くなり、この状態で燃料が噴射された場合、適切な混合気が形成される前に着火し、局所的で不均一な燃焼が起こることがある。これに対し、本実施の形態16に係る圧縮着火式直噴エンジン6Aは、噴射位置からシリンダ内面までの所望の距離でスイッチング噴霧5Aの貫徹力を急減衰させ、所望の断面形状の濃い混合気を形成することができ、筒内に噴霧を拡げて圧縮着火燃焼を成立させるのに好都合である。
また、各噴霧群は、圧縮着火燃焼に適した混合状態となるように指向されると共に、シリンダライナー14やピストン10表面への衝突が抑制されるように貫徹力を設定される。これにより、全体噴霧60は、シリンダライナー14やピストン10表面への衝突を抑制され、且つ、圧縮着火燃焼に適した混合気を形成する。
一方、図42(b)に示すピストン下降時においては、ピストン10の下降と共に吸気弁11が開となるため、タンブル流等の強い空気流動が燃焼室7内に生じる。スイッチング噴霧5Aは、燃焼室7内を通過する過程で空気流動に追随し、アクシス−スイッチング現象を生じず、燃焼室7内全体に拡散する。また、同じ噴孔群393に属する噴孔39により生成された非スイッチング噴霧4Aとスイッチング噴霧5Aは、コアンダ効果による近接化または集合化を生じない。
このように、本実施の形態16に係る圧縮着火式直噴エンジン6Aは、ピストン上昇時においてはスイッチング噴霧5Aのアクシス−スイッチング現象を利用して、圧縮着火燃焼に適した混合気を形成することが可能である。また、ピストン下降時においては、燃焼室7内を通過する過程で空気流動に追随させ、アクシス−スイッチング現象を生じず、燃
焼室7全体に拡散させることが可能である。
本実施の形態16によれば、複数の噴孔群393により生成される噴霧群において、各噴霧群に含まれる噴霧の少なくとも一つをスイッチング噴霧5Aとすることにより、アクシス−スイッチング現象を利用して噴霧の噴射方向に直角な面内の断面形状を制御することが可能となり、噴霧の微粒化と、噴霧方向、貫徹力、および噴射量分布の設計自由度の向上とを両立させることが可能な圧縮着火式直噴エンジン6Aが得られる。また、この噴霧を分割噴射することにより、特にピストン上昇時において上記設計自由度をさらに向上させることができる。
本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。本発明に係る燃料噴射弁1が適用されるエンジンは、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン、複合燃料エンジン等を問わず、また点火(着火)方式も問わない。また、燃料噴射弁1の駆動源は、電磁式以外の方式でもよく、ピエゾ式、機械式等であっても良い。また、間欠噴射弁、連続噴射弁どちらであっても良い。
本発明は、流体噴射弁、特にエンジンに搭載される燃料噴射弁、およびこれを備えた噴霧生成装置並びにエンジンとして利用することができる。
1 燃料噴射弁、2 ソレノイド装置、3 弁装置、
4a、4b、4c、5a、5b、5c 噴流、
4A、4B、4C 非スイッチング噴霧、5A、5B、5C スイッチング噴霧、
6 火花点火式直噴エンジン、6A 圧縮着火式直噴エンジン、7 燃焼室、
8 吸気ポート、9 排気ポート、10 ピストン、11 吸気弁、12 排気弁、
13 点火プラグ、14 シリンダライナー、15 スロットルボディ、
16 スロットル弁、17 吸気管集合部、18 分岐部、21 ハウジング、
22 コア、23 コイル、24 アマチュア、30 液膜流、31 弁本体、
32 弁座、32a 弁座面、33 噴孔プレート、34 カバープレート、
34a 天面、34b 薄肉部、34c 小径部、34d 大径部、35 弁体、
36 圧縮バネ、37 ロッド、38 ボール、38a 面取部、38b 平面部、
38c 曲面部、39 噴孔、40、50 集合噴霧、60全体噴霧、
390 集合噴孔、391 スイッチング噴孔、392 非スイッチング噴孔、
393 噴孔群。

Claims (67)

  1. 流体が流れる通路の途中に設けられた弁座と、この弁座との当接、離間により前記通路の開閉を制御する弁体と、前記弁座の下流に設けられた噴孔体とを備え、前記噴孔体に配置された噴孔から都度要求される流体噴射量を複数回に分けて噴射する分割噴射により、所望の形態の噴霧を生成する流体噴射弁であって、
    前記噴孔は、流体の噴射方向に直角な面内の断面形状において長軸と短軸の長さが異なるスイッチング噴霧を生成するスイッチング噴孔を少なくとも一つ含み、前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、前記スイッチング噴孔から下流の所定位置において前記長軸と前記短軸の方向を変化させることによる前記断面形状の変形を生じ得るものであり、流体の噴射条件として設定されるパラメータの少なくとも1つは、前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧の前記断面形状の変形が生じる場合と生じない場合とを場合分けすることが可能な閾値を有し、前記分割噴射の各噴射における噴射条件が前記閾値に基づいて設定されることを特徴とする流体噴射弁。
  2. 前記閾値を有する前記パラメータは、前記分割噴射の各噴射における噴射期間、噴射量、および噴射圧力の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の流体噴射弁。
  3. 前記閾値に基づいて前記断面形状の変形を生じるように場合分けされたスイッチング噴霧を含むように、全体噴霧を構成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体噴射弁。
  4. 前記閾値に基づいて前記断面形状の変形を生じないように場合分けされたスイッチング噴霧を含むように、全体噴霧を構成することを特徴とする請求項3記載の流体噴射弁。
  5. 前記断面形状の変形を生じる場合と生じない場合とで、スイッチング噴霧の噴射後の所定時刻における貫徹力が異なることを利用して、前記分割噴射の休止時間間隔を所定値に設定することにより、前記噴孔から下流の所定位置において前記分割噴射の各噴射による噴霧を近接化あるいは集合化させることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の流体噴射弁。
  6. 前記分割噴射の各噴射による噴霧が近接化あるいは集合化した全体噴霧は、流体噴射方向に直角な面内の断面形状あるいは投影形状が、略十字状または略菱形または略四角形となる時刻が存在することを特徴とする請求項5記載の流体噴射弁。
  7. 前記分割噴射の各噴射による噴霧が近接化あるいは集合化した全体噴霧は、前記分割噴射による合計噴射量を1回の噴射で行った時の全体噴霧に比べて拡がりが抑制され、貫徹力が減少することを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  8. 前記弁体は、前記分割噴射において弁全開に至らずに閉弁する場合があることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  9. 前記弁体が弁全開に至らずに閉弁する場合における前記パラメータの前記閾値を求め、前記弁体が弁全開に至らずに閉弁する噴射における噴射条件を前記閾値に基づいて設定することを特徴とする請求項8記載の流体噴射弁。
  10. 複数の前記噴孔を有し、その中に噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様が同等の前記スイッチング噴孔を複数含む場合、それらの前記閾値は同等であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  11. 前記スイッチング噴孔は、前記短軸に対して前記長軸が線対称なスイッチング噴霧を生成するように、その噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様が設定されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  12. 前記スイッチング噴孔は、スイッチング噴霧にアクシス−スイッチング現象を生じさせることにより前記長軸と前記短軸の方向を変化させることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  13. 複数の前記噴孔により生成された各噴霧が近接化あるいは集合化した全体噴霧が形成され、前記スイッチング噴孔を除く他の複数の前記噴孔は、各噴流が破断、分裂を経て単噴霧にブレークされたブレーク部位よりも下流側の各単噴霧が単噴霧間で作用するコアンダ効果で近接化あるいは集合化した部分全体噴霧を形成することができる集合噴孔であり、近接化あるいは集合化した各単噴霧の噴射量分布の中心あるいは重心が全体噴霧の中心あるいは重心に収束する前の部分全体噴霧と、前記スイッチング噴孔からのスイッチング噴霧とがコアンダ効果により集合した全体噴霧を形成し得るものであり、前記分割噴射の各噴射における噴射条件を前記閾値に基づいて調整することにより全体噴霧の仕様が可変であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  14. 前記スイッチング噴孔は、スイッチング噴霧にアクシス−スイッチング現象を生じさせることにより前記長軸と前記短軸の方向を変化させることを特徴とする請求項13記載の流体噴射弁。
  15. 全体噴霧の噴霧形状、貫徹力、噴射量分布および噴霧方向の各特性のうち少なくとも一つの特性は、スイッチング噴霧がアクシス−スイッチング現象により前記長軸と前記短軸の方向を変化させる所定位置より下流において定められることを特徴とする請求項14記載の流体噴射弁。
  16. 前記スイッチング噴孔と前記集合噴孔とは、スイッチング噴霧がアクシス−スイッチング現象により前記長軸と前記短軸の方向を変化させる所定位置より下流においてスイッチング噴霧と部分全体噴霧とがコアンダ効果により集合して全体噴霧を形成するように間隔をあけて配置されることを特徴とする請求項14記載の流体噴射弁。
  17. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、その貫徹力が前記集合噴孔からの単噴霧の貫徹力よりも大きいことを特徴とする請求項14から請求項16のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  18. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、前記長軸が単噴霧と対向していることを特徴とする請求項14から請求項17のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  19. 吸気ポートに、スロットル弁の吸気流の下流側であって、且つ先端部が前記スロットル弁に指向して取り付けられ、全体噴霧の貫徹力が前記スロットル弁の手前で抑制されることを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  20. 吸気ポートに、先端部が吸気弁に指向して取り付けられ、全体噴霧の貫徹力が前記吸気弁の手前で抑制されることを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  21. 吸気ポートに、先端部が吸気弁に指向して取り付けられ、指向方向に曲率を有する全体噴霧を形成し、全体噴霧が前記吸気ポートの壁面に直接的に衝突するのを回避することを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  22. 複数の前記噴孔により生成された各噴霧が前記噴孔から下流の所定位置において中空状の全体噴霧を形成し、前記各噴霧は、スイッチング噴霧が前記長軸と前記短軸の方向を変化させた後にスイッチング噴霧とコアンダ効果により集合化して集合噴霧を形成し、これらの集合噴霧が連鎖して全体噴霧を形成し得るものであり、前記分割噴射の各噴射における噴射条件を前記閾値に基づいて調整することにより全体噴霧の仕様が可変であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  23. 前記スイッチング噴孔は、スイッチング噴霧にアクシス−スイッチング現象を生じさせることにより前記長軸と前記短軸の方向を変化させることを特徴とする請求項22記載の流体噴射弁。
  24. 複数の前記噴孔は、周方向に間隔をおいて円形状に配設されていることを特徴とする請求項23記載の流体噴射弁。
  25. 複数の前記噴孔は、隣接した前記噴孔が互いに等分間隔で配設されていることを特徴とする請求項24記載の流体噴射弁。
  26. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、非スイッチング噴霧と対向していることを特徴とする請求項23から請求項25のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  27. 吸気ポートに、スロットル弁の吸気流の下流側であって、且つ先端部が前記スロットル弁に指向して取り付けられ、全体噴霧の貫徹力が前記スロットル弁の手前で抑制されることを特徴とする請求項23から請求項26のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  28. 吸気ポートに、先端部が吸気弁に指向して取り付けられ、全体噴霧の貫徹力が前記吸気弁の手前で抑制されることを特徴とする請求項23から請求項26のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  29. 吸気ポートに、先端部が吸気弁に指向して取り付けられ、指向方向に曲率を有する全体噴霧を形成し、全体噴霧が前記吸気ポートの壁面に直接衝突するのを回避するようにしたことを特徴とする請求項23から請求項26のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  30. 複数の前記噴孔により生成された各噴霧が前記噴孔から下流の所定位置において全体噴霧を形成し、前記噴孔は前記スイッチング噴孔を少なくとも二つ含み、前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧の少なくとも一つは、前記長軸と前記短軸の方向を変化させる時間的タイミングと前記噴孔からの距離が他のスイッチング噴霧と異なっており、各スイッチング噴霧が前記長軸と前記短軸の方向を変化させて隣接する噴霧とコアンダ効果により集合化して各集合噴霧を形成し、これらの集合噴霧が連鎖して全体噴霧を形成し得るものであり、前記分割噴射の各噴射における噴射条件を前記閾値に基づいて調整することにより全体噴霧の仕様が可変であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  31. 前記スイッチング噴孔は、スイッチング噴霧にアクシス−スイッチング現象を生じさせることにより前記長軸と前記短軸の方向を変化させることを特徴とする請求項30記載の流体噴射弁。
  32. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、非スイッチング噴霧と対向していることを特徴とする請求項31記載の流体噴射弁。
  33. 吸気ポートに、スロットル弁の吸気流の下流側であって、且つ先端部が前記スロットル弁に指向して取り付けられ、全体噴霧の貫徹力が前記スロットル弁の手前で抑制され、前記スロットル弁への噴霧の付着が抑制されることを特徴とする請求項31または請求項32に記載の流体噴射弁。
  34. 吸気ポートに、先端部が吸気弁の方向に指向して取り付けられ、全体噴霧は、その進行方向に直角な面内で貫徹力の分布が形成され、指向方向が偏向することにより前記吸気ポートの内壁面および前記吸気弁への噴霧の付着が抑制されることを特徴とする請求項31または請求項32に記載の流体噴射弁。
  35. 前記噴孔体に複数の前記噴孔を有し、前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、前記スイッチング噴孔から所定の距離で前記長軸と前記短軸の方向を変化させ前記断面形状を変形し得るものであり、前記分割噴射の各噴射における噴射条件を前記閾値に基づいて調整することにより全体噴霧の仕様が可変であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  36. 前記スイッチング噴孔は、スイッチング噴霧にアクシス−スイッチング現象を生じさせることにより前記長軸と前記短軸の方向を変化させることを特徴とする請求項35記載の流体噴射弁。
  37. 前記スイッチング噴孔は、前記噴孔体の板厚方向に直角な断面形状が長円形であることを特徴とする請求項36記載の流体噴射弁。
  38. 前記複数の噴孔は、少なくとも前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧がアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧との近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない間隔で配置されると共に、それらの噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様が設定されることを特徴とする請求項36または請求項37に記載の流体噴射弁。
  39. 前記複数の噴孔により生成される各噴霧は、少なくとも前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧がアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧との近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない流速、粒径、および粒子数密度に設定されることを特徴とする請求項36から請求項38のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  40. 前記噴孔体に配置された複数の噴孔群から流体を噴射し複数の噴霧群を生成し、前記複数の噴孔群の各々は、互いに近接して配置された複数の噴孔を有し、前記複数の噴孔群の少なくとも一つは、前記スイッチング噴孔を少なくとも一つ含み、
    前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、該スイッチング噴孔から所定の距離で前記長軸と前記短軸の方向を変化させ、該変化を生じた後は、該スイッチング噴孔と同じ前記噴孔群に属する別の前記噴孔により生成される噴霧との間でコアンダ効果による近接化または集合化を生じ得るものであり、前記分割噴射の各噴射における噴射条件を前記閾値に基づいて調整することにより全体噴霧の仕様が可変であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  41. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、該スイッチング噴孔から所定の距離でアクシス−スイッチング現象を生じるように制御され、前記長軸と前記短軸の方向を変化させることを特徴とする請求項40記載の流体噴射弁。
  42. 前記噴孔体は、前記弁座と一体的に形成されており、前記スイッチング噴孔は、流体噴射方向に相当する噴孔軸に直角な断面形状が長軸と短軸を有する形状であることを特徴とする請求項40または請求項41に記載の流体噴射弁。
  43. 前記スイッチング噴孔は、前記噴孔体の板厚方向に直角な断面形状が長軸と短軸を有する形状であることを特徴とする請求項40から請求項42のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  44. 前記スイッチング噴孔を含む前記噴孔群において、該噴孔群に属する前記複数の噴孔は、少なくとも前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧がアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧との近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない間隔で配置されると共に、それらの噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様が設定されることを特徴とする請求項41記載の流体噴射弁。
  45. 前記スイッチング噴孔を含む前記噴孔群において、該噴孔群に属する前記複数の噴孔により生成される各噴霧は、少なくとも前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧がアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧との近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない流速、粒径、および粒子数密度に設定されることを特徴とする請求項41または請求項44に記載の流体噴射弁。
  46. 前記スイッチング噴孔を含む前記噴孔群とこの噴孔群に隣接する別の前記噴孔群は、少なくとも前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧がアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧との近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない間隔で配置されると共に、それらの噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様が設定されることを特徴とする請求項44または請求項45に記載の流体噴射弁。
  47. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、同じ前記噴孔群に属する別の前記噴孔により生成される噴霧との近接化または集合化により、複数の噴霧群からなる全体噴霧の噴霧方向に直角な断面形状、または全体噴霧の貫徹力分布、または全体噴霧の噴霧方向に直角な噴射量分布を制御されることを特徴とする請求項40から請求項46のいずれか一項に記載の流体噴射弁。
  48. 請求項1から請求項47のいずれか一項に記載の流体噴射弁と、前記流体噴射弁に流体を供給する流体供給手段と、前記流体噴射弁の動作を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする噴霧生成装置。
  49. 燃焼室に配置される点火プラグと、前記燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁として請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の流体噴射弁を備え、前記点火プラグにより火花を発生させ、前記燃焼室内の混合気に着火する火花点火式を採用したエンジンであって、
    前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、該スイッチング噴孔から所定の距離で前記長軸と前記短軸の方向を変化させ前記断面形状を変形するように制御されると共に、前記分割噴射の各噴射における前記噴射条件を前記閾値に基づいて調整することにより全体噴霧の仕様が可変であることを特徴とするエンジン。
  50. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、アクシス−スイッチング現象により前記点火プラグの近傍を指向する噴霧となるように制御されることを特徴とする請求項49記載のエンジン。
  51. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、前記燃焼室内の圧力または空気流動により、アクシス−スイッチング現象を生じるか否かを制御されることを特徴とする請求項50記載のエンジン。
  52. 複数の前記噴孔は、少なくとも前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧がアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧との近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない間隔で配置されると共に、それらの噴孔径、長さ、および傾きを含む噴孔仕様が設定されることを特徴とする請求項50または請求項51に記載のエンジン。
  53. 複数の前記噴孔により生成される各噴霧は、少なくとも前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧がアクシス−スイッチング現象を生じるまでは、隣接する噴霧との近接化を誘起するコアンダ効果が互いに作用しない流速、粒径、および粒子数密度に設定されることを特徴とする請求項50から請求項52のいずれか一項に記載のエンジン。
  54. 前記燃焼室において成層燃焼を行う場合、前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、前記点火プラグの近傍を通過する過程でアクシス−スイッチング現象を生じて前記点火プラグの近傍を指向すると共に貫徹力が低下し、前記点火プラグの近傍を通過した時点で貫徹力を失い前記点火プラグの近傍で滞留するように制御されることを特徴とする請求項50から請求項53のいずれか一項に記載のエンジン。
  55. 前記燃焼室において均質燃焼を行う場合、前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、前記点火プラグの近傍を通過する過程で前記燃焼室の内部の空気流動に追随し、アクシス−スイッチング現象を生じず前記燃焼室の全体に拡散するように制御されることを特徴とする請求項50から請求項54のいずれか一項に記載のエンジン。
  56. 燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁として請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の流体噴射弁を備えたエンジンであって、
    前記噴孔体に配置された複数の噴孔群から流体を噴射し複数の噴霧群を生成し、前記複数の噴孔群の各々は、互いに近接して配置された複数の噴孔を有し、前記複数の噴孔群の少なくとも一つは、前記スイッチング噴孔を少なくとも一つ含み、
    前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、該スイッチング噴孔から所定の距離で前記長軸と前記短軸の方向を変化させ、該変化を生じた後は、該スイッチング噴孔と同じ前記噴孔群に属する別の前記噴孔により生成される噴霧との間でコアンダ効果による近接化または集合化が生じるように制御されると共に、前記分割噴射の前記各噴射における前記噴射条件を前記閾値に基づいて調整することにより全体噴霧の仕様が可変であることを特徴とするエンジン。
  57. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、該スイッチング噴孔から所定の距離でアクシス−スイッチング現象を生じるように制御され、前記長軸と前記短軸の方向を変化させることを特徴とする請求項56記載のエンジン。
  58. 前記噴孔体は、前記弁座と一体的に形成されており、前記スイッチング噴孔は、燃料噴射方向に相当する噴孔軸に直角な断面形状が長軸と短軸を有する形状であることを特徴とする請求項56または請求項57に記載のエンジン。
  59. 前記スイッチング噴孔は、前記噴孔体の板厚方向に直角な断面形状が長軸と短軸を有する形状であることを特徴とする請求項56から請求項58のいずれか一項に記載のエンジン。
  60. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、前記燃料噴射弁の燃料噴射圧力、または前記燃焼室の内部の圧力、または前記燃焼室の内部の空気流動の少なくとも一つの要因により、アクシス−スイッチング現象を生じるか否かを制御されることを特徴とする請求項57記載のエンジン。
  61. 前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、同じ前記噴孔群に属する別の前記噴孔により生成される噴霧との近接化または集合化により、複数の噴霧群からなる全体噴霧の噴霧方向に直角な断面形状、または全体噴霧の貫徹力分布、または全体噴霧の噴霧方向に直角な噴射量分布を制御されることを特徴とする請求項56から請求項60のいずれか一項に記載のエンジン。
  62. 着火方式として、前記燃焼室に備えられた点火プラグにより火花を発生させ、前記燃焼室内の混合気に着火する火花点火式を採用したことを特徴とする請求項57記載のエンジン。
  63. 前記燃焼室において成層燃焼を行う場合、前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、前記点火プラグの近傍を通過する過程でアクシス−スイッチング現象を生じて前記点火プラグの近傍を指向すると共に貫徹力が低下し、前記点火プラグの近傍を通過した時点で貫徹力を失い前記点火プラグの近傍で滞留するように制御されることを特徴とする請求項62記載のエンジン。
  64. 前記燃焼室において均質燃焼を行う場合、前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、前記点火プラグの近傍を通過する過程で前記燃焼室内の空気流動に追随し、アクシス−スイッチング現象を生じず前記燃焼室内の全体に拡散するように制御されることを特徴とする請求項62または請求項63に記載のエンジン。
  65. 着火方式として、前記燃焼室内の混合気をピストンで圧縮し自着火を行わせる圧縮着火式を採用したことを特徴とする請求項57記載のエンジン。
  66. 前記燃焼室において前記ピストンの上昇時に燃料噴射を行う場合、前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、アクシス−スイッチング現象を生じて貫徹力が低下し、圧縮上死点付近の前記燃焼室内においてコンパクトな全体噴霧を形成するように制御されることを特徴とする請求項65記載のエンジン。
  67. 前記燃焼室において前記ピストンの下降時に燃料噴射を行う場合、前記スイッチング噴孔により生成されるスイッチング噴霧は、前記燃焼室内の空気流動に追随し、アクシス−スイッチング現象を生じず前記燃焼室内の全体に拡散するように制御されることを特徴とする請求項65または請求項66に記載のエンジン。
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