JP2015209031A - ランフラットタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ランフラット耐久性を向上する。
【解決手段】サイド補強ゴム部により補強されたサイドウォール部を有するランフラットタイヤにおいて、サイド補強ゴム部は、23℃での50%伸張時の引張応力(M50N)に対する100℃での50%伸張時の引張応力(M50H)の比(M50H/M50N)が1.0以上1.3以下であるゴム組成物からなる。該ゴム組成物は、天然ゴム及びポリブタジエンゴムを含むジエン系ゴムに、フェノール系熱硬化性樹脂とメチレン供与体を配合してなるものであり、メチレン供与体に対するフェノール系熱硬化性樹脂の質量比が1.5倍以上であることが好ましい。また、該ゴム組成物は、キノリン系老化防止剤と、それ以外の少なくとも一種の老化防止剤を配合してなるものが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、ランフラットタイヤに関するものである。
パンク等の障害によりタイヤ内部の空気圧が低下して0kPaになった状態でも、ある程度の距離を走行することのできるランフラットタイヤと呼ばれる空気入りタイヤがある。このような内圧が下がった状態でのランフラット走行を可能にするための技術として、サイドウォール部の内面にサイド補強ゴム部を設けてサイドウォール部を補強することが知られている。
サイド補強ゴム部は、ランフラット走行時におけるタイヤの変形抑制のため、高硬度配合のゴム組成物が用いられることが多い(例えば、特許文献1,2参照)。しかしながら、ランフラット走行時にはサイド補強ゴム部の温度が高くなるため、サイド補強ゴム部の剛性が下がり、ランフラット耐久性が低下してしまう。
特許文献3には、ランフラットタイヤのサイド補強ゴム部に、フェノール系熱硬化性樹脂とメチレン供与体を配合したゴム組成物を用いることが開示されている。しかしながら、ランフラット耐久性を向上するために、一般に高温時に低下するゴムの剛性を常温時と同等以上に設定することは開示されておらず、また、フェノール系熱硬化性樹脂及びメチレン供与体とともに、キノリン系老化防止剤を併用する点についても開示されていない。
特許文献4には、ランフラットタイヤ用ゴム組成物に酸化亜鉛及び窒化アルミニウムを配合する技術において、老化防止剤としてキノリン系老化防止剤を配合する点が開示されている。しかしながら、ランフラット耐久性を向上するために、高温時におけるゴムの剛性を常温時と同等以上に設定することは開示されておらず、また、キノリン系老化防止剤とともに、フェノール系熱硬化性樹脂及びメチレン供与体を併用する点についても開示されていない。
特開2007−070373号公報 特開2010−149632号公報 特開2008−189911号公報 特開2011−190410号公報
本発明は、ランフラット耐久性を向上することができるランフラットタイヤを提供することを目的とする。
本発明に係るランフラットタイヤは、サイド補強ゴム部により補強されたサイドウォール部を有し、前記サイド補強ゴム部が、測定温度23℃での50%伸張時の引張応力(M50N)に対する測定温度100℃での50%伸張時の引張応力(M50H)の比(M50H/M50N)が1.0以上1.3以下であるゴム組成物からなるものである。
本発明によれば、高温時における引張応力が常温時における引張応力と同等以上であるゴム組成物を用いてサイド補強ゴム部を構成することにより、通常走行時における走行性能を維持しつつ、高温になるランフラット走行時におけるサイド補強ゴム部の変形を抑えてランフラット耐久性を向上することができる。
一実施形態に係る空気入りタイヤの半断面図 轍乗り越し性の評価に用いた試験路の断面図
本実施形態に係るランフラットタイヤは、そのサイドウォール部にサイド補強ゴム部を有するものであって、該サイド補強ゴム部が、ランフラット耐久性を向上させる新規な物性を持つゴム組成物を用いて形成されたものである。
該ゴム組成物は、測定温度23℃での50%伸張時の引張応力をM50Nとし、測定温度100℃での50%伸張時の引張応力をM50Hとして、両者の比であるM50H/M50Nが次の関係を満足するものである。
1.0 ≦ M50H/M50N ≦ 1.3
かかる物性を持つゴム組成物を用いることにより、通常走行時における走行性能を維持しつつ、ランフラット走行時におけるサイドウォール部の変形を抑えてランフラット耐久性を向上することができる。
詳細には、一般にランフラットタイヤのサイド補強ゴム部に用いられる高硬度配合のゴム組成物では高温時に弾性率が低下するが、本実施形態では、この関係を反転させて、ランフラット走行時に相当する高温(100℃)時における引張応力が、通常走行時に相当する常温(23℃)時における引張応力と、同等以上であるゴム組成物を用いる。M50H/M50Nが1.0以上であると、ランフラット走行時における剛性低下を抑えて、ランフラット耐久性を向上することができる。より好ましくは、高温時の引張応力が常温時の引張応力よりも高いことであり、即ち、M50H/M50N>1.0であり、更に好ましくはM50H/M50Nは1.1以上である。一方、M50H/M50Nが大きすぎると、高温時での剛性が高くなりすぎてランフラット耐久性が却って損なわれる。M50H/M50Nは、1.3未満であることが好ましく、より好ましくは1.2以下である。
該ゴム組成物の100℃での50%伸張時の引張応力(M50H)は3.5MPa以上であることが、高温時におけるサイドウォール部の剛性を高めて、ランフラット耐久性を向上する上で好ましい。M50Hの下限は、より好ましくは4.0MPa以上である。また、M50Hの上限は、特に限定しないが、5.5MPa以下であることが好ましく、より好ましくは5.3MPa以下であり、このような上限値に設定することにより、高温時に剛性が高くなりすぎてサイドウォール部がしなりにくくなることを抑えて、ランフラット耐久性を向上することができる。
該ゴム組成物の23℃での50%伸張時の引張応力(M50N)は、特に限定されないが、通常走行時における走行性能を良好に維持するため、3.0〜5.0MPaであることが好ましく、より好ましくは下限値が3.5MPa以上であり、上限値が4.5MPa以下である。
上記物性を持つゴム組成物としては、特に限定されないが、以下の配合のゴム組成物が好ましく用いられる。すなわち、一実施形態に係るゴム組成物は、天然ゴム及びポリブタジエンゴムを含むジエン系ゴムに、フェノール系熱硬化性樹脂と、その硬化剤としてのメチレン供与体を配合してなるものであり、前記メチレン供与体に対する前記フェノール系熱硬化性樹脂の配合量の質量比が1.5倍以上である。
該ゴム組成物において、ゴム成分としてのジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)とポリブタジエンゴム(BR)を含む。天然ゴム及びポリブタジエンゴムとしては、特に限定されず、ゴム工業において一般に使用されているものを用いることができる。ゴム成分中における両者の配合比率は、特に限定されず、例えば、天然ゴムは20〜70質量%であってもよく、30〜60質量%であってもよい。ポリブタジエンゴムは30〜80質量%であってもよく、40〜70質量%であってもよい。天然ゴムの含有率を高めることにより、耐引裂性能を向上することができ、ポリブタジエンゴムの含有率を高めることにより耐屈曲疲労性を向上することができる。
ポリブタジエンゴムとしては、例えば、シス−1,4結合含有量が96%以上のブタジエンゴムを用いてもよい。このようなシス含量の高いポリブタジエンゴムを用いることにより、低発熱性能を向上することができ、ランフラット耐久性を向上することができる。シス含量の高いブタジエンゴムとしては、ネオジウム系触媒などの希土類元素系触媒を用いて合成したものが好ましい。ネオジウム系触媒を用いて合成したブタジエンゴムのミクロ構造としては、シス−1,4結合含有量が96%以上かつビニル基(1,2−ビニル結合)含有量が1.0%以下であることが好ましい。ここで、シス−1,4結合含有量及びビニル基含有量は、HNMRスペクトルの積分比により算出される値である。
該ゴム成分は、天然ゴムとポリブタジエンゴムのみで構成してもよいが、その他のジエン系ゴムを配合してもよい。その他のゴムとしては、特に限定されないが、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
フェノール系熱硬化性樹脂としては、フェノール、レゾルシン、及びこれらのアルキル誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のフェノール類化合物を、ホルムアルデヒドなどのアルデヒドで縮合してなる熱硬化性樹脂が用いられ、高硬度化を図ることができる。上記アルキル誘導体には、クレゾール、キシレノールといったメチル基誘導体の他、ノニルフェノール、オクチルフェノールといった比較的長鎖のアルキル基による誘導体が含まれる。フェノール系熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノールとホルムアルデヒドを縮合してなる未変性フェノール樹脂(ストレートフェノール樹脂)、クレゾールやキシレノール、オクチルフェノール等のアルキルフェノールとホルムアルデヒドを縮合してなるアルキル置換フェノール樹脂、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合してなるレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシンとアルキルフェノールとホルムアルデヒドを縮合してなるレゾルシン−アルキルフェノール共縮合ホルムアルデヒド樹脂などの、各種ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。また、例えばカシューナッツ油、トール油、ロジン油、リノール油、オレイン酸及びリノレイン酸よりなる群から選択された少なくとも一種のオイルで変性されたオイル変性ノボラック型フェノール樹脂を用いることもできる。これらのフェノール系熱硬化性樹脂は、いずれか1種を用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
フェノール系熱硬化性樹脂の硬化剤として配合するメチレン供与体としては、ヘキサメチレンテトラミン及び/又はメラミン誘導体が用いられる。メラミン誘導体としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル、及び多価メチロールメラミンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、メチレン供与体としては、ヘキサメトキシメチルメラミン及び/又はヘキサメチレンテトラミンが好ましく、より好ましくはヘキサメトキシメチルメラミンである。
フェノール系熱硬化性樹脂の配合量(A)は、メチレン供与体の配合量(B)との質量比で、A/B≧1.5である。硬化剤としてのメチレン供与体の割合が多すぎると、ゴムの架橋系に悪影響を及ぼすおそれがある。適切な割合で使用することにより、M50H/M50Nの比を上記範囲内に設定しやすくなり、ランフラット走行時の変形抑制効果を高めて、ランフラット耐久性を向上することができる。A/Bは、より好ましくは2.0以上であり、更に好ましくは2.5以上である。A/Bの上限は、5.0以下であることが好ましく、より好ましくは4.0以下である。
フェノール系熱硬化性樹脂の配合量は、特に限定しないが、上記ジエン系ゴム100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。また、メラミン供与体の配合量は、特に限定しないが、上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.2〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
実施形態に係るゴム組成物には、キノリン系老化防止剤と、キノリン系老化防止剤以外の少なくとも一種の老化防止剤を配合することが好ましい。これらの2種以上の老化防止剤を配合することにより、ランフラット耐久性を向上することができる。
キノリン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、及び、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロ−キノリン(ETMDQ)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
キノリン系老化防止剤と併用する他の老化防止剤としては、例えば、芳香族第2級アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、及び亜リン酸エステル系老化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の老化防止剤が挙げられる。
芳香族第2級アミン系老化防止剤としては、例えば、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどのp−フェニレンジアミン系老化防止剤; p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(CD)、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、スチレン化ジフェニルアミンなどのジフェニルアミン系老化防止剤; N−フェニル−1−ナフチルアミン(PAN)、N−フェニル−2−ナフチルアミン(PBN)等のナフチルアミン系老化防止剤などが挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
フェノール系老化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(DTBMP)、スチレン化フェノール(SP)などのモノフェノール系老化防止剤; 2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBMBP)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBETB)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BBMTBP)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(TBMTBP)などのビスフェノール系老化防止剤; 2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン(DBHQ)、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン(DAHQ)などのハイドロキノン系老化防止剤などが挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
硫黄系老化防止剤としては、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩などのベンズイミダゾール系老化防止剤; ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルなどのジチオカルバミン酸塩系老化防止剤; 1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素、トリブチルチオ尿素などのチオウレア系老化防止剤; チオジプロピオン酸ジラウリルなどの有機チオ酸系などが挙げられる。亜リン酸エステル系老化防止剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。これらについてもいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
キノリン系老化防止剤と併用する他の老化防止剤としては、上記の中でも、芳香族第2級アミン系老化防止剤が好ましく、より好ましくはp−フェニレンジアミン系老化防止剤である。
キノリン系老化防止剤の配合量は、老化防止剤の全配合量に対して20質量%以上であることが好ましく、ランフラット耐久性の向上効果を高めることができる。より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上である。この比率の上限は、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは75質量%以下である。老化防止剤の全配合量、すなわちキノリン系老化防止剤とそれ以外の老化防止剤の配合量の合計は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは1.5〜7質量部であり、更に好ましくは2〜5質量部である。キノリン系老化防止剤の配合量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.2〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4質量部である。
実施形態に係るゴム組成物には、カーボンブラック及び/又はシリカなどの充填剤を配合することができる。充填剤の配合量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して20〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜80質量部であり、更に好ましくは50〜70質量部である。充填剤としては、カーボンブラック単独、又はカーボンブラックとシリカのブレンドが好ましく、より好ましくはカーボンブラックである。なお、充填剤の種類及び配合量により、ゴム組成物の引張応力の値を調整することができる。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)、GPF級(N600番台)(ともにASTMグレード)のものを用いることができ、より好ましくはFEF級のものである。
実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、オイル、亜鉛華、ステアリン酸、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。ここで、加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量は上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8質量部であり、更に好ましくは1〜5質量部である。また、加硫促進剤の配合量としては、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。なお、オイルは、その配合量が多いと、高温(100℃)時の引張応力が低くなり、M50H/M50Nの比が小さくなる傾向になるので、その配合量は少ないことが好ましく、特に限定するものではないが、例えば、オイルはジエン系ゴム100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
該ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。
以上よりなる実施形態に係るゴム組成物であると、フェノール系熱硬化性樹脂とメチレン供与体を上記の質量比で配合するとともに、キノリン系老化防止剤を含む2種以上の老化防止剤を配合したことにより、高温時における引張応力を高めてM50H/M50Nの比を上記範囲内に設定しやすく、ランフラット耐久性を顕著に改善することができる。
実施形態に係るランフラットタイヤでは、そのサイド補強ゴム部に上記ゴム組成物を用いる。図1は、ランフラットタイヤの一例を示すタイヤの概略半断面図である。このタイヤは、トレッド部1と、その両端から半径方向内側に延びる左右一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2の内側端に設けられた左右一対のビード部3とからなる。一対のビード部3にはビードコア4が埋設され、この一対のビードコア4により両端が係止されるようにカーカスプライ5が埋設されている。カーカスプライ5は、ビードコア4の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されており、カーカスプライ5の本体とその折返し部との間には、ビードコア4の径方向外周側に断面三角形状をなす硬質ゴム製のビードフィラー6が配されている。トレッド部1におけるカーカスプライ5の半径方向外側にはベルト7が埋設されており、ベルト7の外周にはベルト補強層8が設けられている。そして、サイドウォール部2には、その剛性を上げるために、サイドパッドとも称されるサイド補強ゴム部9が設けられている。サイド補強ゴム部9は、サイドウォール部2におけるカーカスプライ5のタイヤ内面側に配設されており、タイヤ子午線断面において三日月状の断面形状にて設けられている。
本実施形態では、サイド補強ゴム部9が上記実施形態のゴム組成物により形成されており、常法に従い、例えば140〜180℃で加硫成形することにより、ランフラットタイヤが得られる。得られたランフラットタイヤは、上記実施形態のゴム組成物からなるサイド補強ゴム部9を有するため、通常走行時における走行性能(例えば、轍乗り越し性)を維持しつつ、ランフラット走行時におけるサイド補強ゴム部の変形を抑えてランフラット耐久性を向上することができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第1工程(ノンプロ混合工程)で、硫黄と加硫促進剤とメチレン供与体を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混合物に、第2工程(ファイナル混合工程)で硫黄と加硫促進剤とメチレン供与体を添加混合して(排出温度=100℃)、サイド補強ゴム部用ゴム組成物を調製した。
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・NR:天然ゴム、RSS3号
・BR:JSR(株)製「BR01」(シス−1,4結合含有量=95%)
・Nd−BR:ネオジウム系触媒で重合されたポリブタジエンゴム、KUNHO PETROCHEMICAL社製「BR40」(シス−1,4結合含有量=98%)
・オイル:JX日鉱日石サンエナジー(株)製「JOMOプロセスNC140」
・カーボンブラック:N550、東海カーボン(株)製「シーストSO」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・フェノール系樹脂:オイル変性ノボラック型フェノール樹脂、住友ベークライト(株)製「スミライトレジンPR13349」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
・老化防止剤1:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・老化防止剤2:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、川口化学工業(株)製「アンテージRD」
・加硫促進剤:スルフェンアミド系、大内新興化学工業(株)製「ノクセラーNS−P」
・メチレン供与体:ヘキサメトキシメチルメラミン、三井サイテック(株)製「CYREZ 964RPC」
・硫黄:四国化成工業(株)「ミュークロンOT−20」
各ゴム組成物について、160℃で25分間加硫した厚さ2mmの試験片を用いて、23℃での50%伸張時の引張応力(M50N)と、100℃での50%伸張時の引張応力(M50H)を測定し、両者の比(M50H/M50N)を求めた。また、各ゴム組成物をサイド補強ゴム部に用いて、タイヤサイズ:225/45ZR18の乗用車用ラジアルタイヤ(ランフラットタイヤ)を常法により製造して、ランフラット耐久性及び轍乗り越し性を評価した。各測定・評価方法は以下の通りである。
・M50N:JIS K6251に準拠し、ダンベル状3号形の試験片につき、室温23℃にて引張試験を実施し、50%伸長時の引張応力を求めた。
・M50H:JIS K6251に準拠し、試験片(ダンベル状3号形)を1時間以上100℃の恒温槽で保持した後、恒温槽つきの引っ張り試験機にて、100℃の雰囲気下で引張試験を実施し、50%伸長時の引張応力を求めた。
・ランフラット耐久性:表面が平滑な鋼製で、直径1700mmのドラム試験機を用いた。タイヤ内圧0kPaで、荷重はロードインデックスに対応する負荷能力の65%とした。試験開始から5分で80km/hまで速度を上昇させた後、80km/hで故障が発生するまで走行させた。故障が発生するまでの走行距離を、比較例1のタイヤを100として指数表示した。数字大きいほどランフラット耐久性が良好である。
・轍乗り越し性:試験車両の前輪に試験タイヤを装着し、一般道の轍を模した図2に示す断面形状を持つ試験路(轍の高低差h=20mm)にて、タイヤの乗り越し性を官能評価した。轍をスムーズに乗り越せるものを○、やや乗り越しにくいものを△、非常に乗り越しにくいものを×とした。
Figure 2015209031
結果は、表1に示す通りである。コントロールである比較例1では、常温と高温の引張応力の比であるM50H/M50Nが0.9であり、高温時に剛性が下がるものであったため、ランフラット耐久性に劣るものであった。比較例2では、比較例1に対し、カーボンブラックを増量しかつフェノール系樹脂及びメチレン供与体を添加したことにより、高温時における引張応力の低下はなくなったものの、剛性上昇が大きすぎ、M50H/M50Nが1.3を超えたため、ランフラット耐久性の改良効果はほとんど見られなかった。比較例3では、フェノール系樹脂とメチレン供与体を所定量配合したものの、オイルの添加量が多すぎたため、高温時の剛性が低下してM50H/M50Nが0.9となり、ランフラット耐久性の向上はほとんど見られなかった。比較例4では、フェノール系樹脂に対するメチレン供与体の量が多すぎて、M50H/M50Nが1.3を超えたため、ランフラット耐久性の改良効果は得られなかった。
これに対し、フェノール系樹脂とメチレン供与体を所定量配合するとともに、キノリン系老化防止剤を含む2種以上の老化防止剤を配合した実施例1〜7では、高温時における引張応力を高めてM50H/M50Nの比を1.1〜1.2の範囲内にすることができ、通常走行時の走行性能である轍乗り越し性を損なうことなく、ランフラット耐久性を顕著に改善することができた。詳細には、実施例1に対してフェノール系樹脂及びメチレン供与体を増量した実施例2では、高硬度化によりランフラット耐久性の更なる改善が見られた。実施例3では、ポリブタジエンゴムとしてネオジウム系触媒で合成したものを用いたことにより、実施例1に対してランフラット耐久性の更なる改善が見られた。実施例4は、実施例1に対してキノリン系老化防止剤の配合量を減らしたものであり、実施例1に対してはランフラット耐久性の低下が見られたが、比較例1に対してはランフラット耐久性に優れていた。実施例5では、実施例1に対してカーボンブラックとキノリン系老化防止剤を増量したものであり、M50H/M50Nが高くなって、ランフラット耐久性の更なる改善が見られた。実施例6は、実施例1に対して少量のオイルを添加したものであり、オイルの添加により剛性が低下したものの、M50H/M50Nは所定範囲内であり、ランフラット耐久性に優れていた。
1…トレッド部、2…サイドウォール部、3…ビード部、4…ビードコア、5…カーカスプライ、6…ビードフィラー、7…ベルト、8…ベルト補強層、9…サイド補強ゴム部

Claims (5)

  1. サイド補強ゴム部により補強されたサイドウォール部を有し、
    前記サイド補強ゴム部は、測定温度23℃での50%伸張時の引張応力(M50N)に対する測定温度100℃での50%伸張時の引張応力(M50H)の比(M50H/M50N)が1.0以上1.3以下であるゴム組成物からなるランフラットタイヤ。
  2. 前記ゴム組成物が、天然ゴム及びポリブタジエンゴムを含むジエン系ゴムに、フェノール系熱硬化性樹脂と、メチレン供与体を配合してなるものであり、前記メチレン供与体に対する前記フェノール系熱硬化性樹脂の配合量の質量比が1.5倍以上である、請求項1記載のランフラットタイヤ。
  3. 前記ゴム組成物が、キノリン系老化防止剤と、キノリン系老化防止剤以外の少なくとも一種の老化防止剤を配合してなるものである、請求項2記載のランフラットタイヤ。
  4. 前記キノリン系老化防止剤の配合量が、老化防止剤の全配合量に対して20質量%以上である、請求項3記載のランフラットタイヤ。
  5. 前記ゴム組成物の測定温度100℃での50%伸張時の引張応力(M50H)が3.5MPa以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ。
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