JP5508074B2 - ランフラットタイヤ用ゴム組成物及びランフラットタイヤ - Google Patents

ランフラットタイヤ用ゴム組成物及びランフラットタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、ランフラットタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いたランフラットタイヤに関する。
現在、サイドウォール部の内側に配置されている高強度のサイドウォール補強層を有するランフラットタイヤが実用化され、パンクにより空気圧が失われた(内圧ゼロ)状態になっても、タイヤの剛性を維持し、繰り返し屈曲を受けた場合にも、ゴムの破損を軽減し、ある程度の距離を安全に走行できるようになった。これにより、スペアタイヤを常備する必要性がなくなり、車輌全体の重量の軽量化が期待できる。しかし、ランフラットタイヤのパンク時におけるランフラット走行には、速度、距離の制限があり、更なるランフラットタイヤの耐久性の向上が望まれている。
ランフラットタイヤの耐久性を向上させる方法としては、補強層を厚くすることにより変形を抑え、変形による破壊を防ぐ方法が挙げられるが、タイヤの重量が大きくなるため、ランフラットタイヤの当初の目的である軽量化に反する。また、カーボンブラックなどの補強用充填剤を増量することで補強層の硬度を上げ、変形を抑える方法も挙げられるが、混練り、押出し等の工程において、混練機の負荷が大きくなり、また加硫後物性において発熱が大きくなることから、ランフラット耐久性の向上はあまり期待できない。
特許文献1には、ビード部のタイヤ内腔面側に金属粉又はダイヤモンド粉を含む熱伝導性ゴムが設けられたタイヤが開示されているが、窒化アルミニウムを用いることは検討されていないし、ランフラット耐久性には改善の余地がある。
また、特許文献2には、窒化ホウ素や炭化ケイ素等の熱伝導性材料を配合したトレッド用ゴム組成物により、走行中に発生するタイヤ表面と氷雪路面の摩擦熱を除去することにより、水の発生を抑制し、氷雪路面上でのグリップ性能を向上できることが開示されている。しかしながら、窒化アルミニウムを使用することや、ランフラットタイヤ用ゴム組成物への適用について詳細に検討されていない。また、窒化ホウ素や炭化ケイ素をランフラットタイヤ用ゴム組成物に配合した場合であっても、ランフラットタイヤの耐久性には改善の余地がある。
特開2007−182095号公報 特開2005−179617号公報
本発明は、前記課題を解決し、良好な熱伝導性や低発熱性を有するとともに、優れた剛性、ランフラットタイヤの耐久性も有するランフラットタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いて作製したサイドウォール補強層を有するランフラットタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、ゴム成分、酸化亜鉛及び窒化アルミニウムを含有するランフラットタイヤ用ゴム組成物に関する。
上記酸化亜鉛の平均一次粒子径が200nm以下であることが好ましい。
ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量が20〜50質量%、ブタジエンゴムの含有量が20〜50質量%、スチレンブタジエンゴムの含有量が20〜50質量%であることが好ましい。
窒化アルミニウムの含有量がゴム成分100質量部に対して10〜100質量部であることが好ましい。
酸化亜鉛の含有量がゴム成分100質量部に対して0.1〜12質量部であることが好ましい。
下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含むことが好ましい。
Figure 0005508074
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数5〜12のアルキル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、2〜4の整数を示す。mは0〜10の整数を示す。)
上記ランフラットタイヤ用ゴム組成物は、サイドウォール補強層に使用されることが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したサイドウォール補強層を有するランフラットタイヤに関する。
本発明によれば、ゴム成分に酸化亜鉛及び窒化アルミニウムを配合したランフラットタイヤ用ゴム組成物であるので、優れた熱伝導性及び低発熱性を有するとともに、剛性及びランフラット耐久性にも優れたランフラットタイヤを提供できる。
本発明のランフラットタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分、酸化亜鉛、及び窒化アルミニウムを含有する。ランフラットタイヤのゴム部材、特にサイドウォール部における補強ゴム層に、酸化亜鉛及び窒化アルミニウムを配合することにより、当該ゴム部材に、高い熱伝導性、低発熱性を付与できるとともに、ゴムの剛性も高められるため、剛性及びランフラット耐久性にも優れたランフラットタイヤを得ることができる。なお、本明細書において、ランフラット耐久性とは、空気圧が失われた状態(パンク時)でランフラット走行した場合の耐久性を意味する。
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、イソプレンブタジエンゴムなどのジエン系ゴムが挙げられ、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、優れた熱伝導性及び低発熱性が得られると同時に、高いランフラット耐久性が得られることから、NR、IR、BR、SBRを使用することが好ましく、NRとBRとSBRとを併用することが更に好ましい。
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしても一般的なものを使用できる。BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含有量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。SBRとしては、溶液重合法で得られたもの、乳化重合法で得られたものが挙げられるが、特に制限はない。
ゴム成分がNRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、28質量%以上が更に好ましい。20質量%未満であると、ゴム強度が低下し、さらに発熱が大きくなり、ランフラット耐久性が低下する傾向がある。一方、上記NRの含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。50質量%を超えると、充分な耐熱性と硬度が得られず、ランフラット耐久性が低下する傾向がある。
ゴム成分がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、28質量%以上が更に好ましい。20質量%未満であると、ランフラット耐久性が低下する傾向がある。上記BRの含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。50質量%を超えると、ランフラット耐久性が低下する傾向がある。
ゴム成分がSBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上が更に好ましい。20質量%未満であると、ゴムの伸び(EB)が不足し、耐熱性も悪化し、ランフラット耐久性が低下してしまうおそれがある。また、上記SBRの含有量は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、42質量%以下が更に好ましい。50質量%を超えると、ゴムの伸び(EB)が低下し、さらに発熱が大きくなり、ランフラット耐久性が低下する傾向がある。
本発明では、窒化アルミニウムが使用される。これにより、熱伝導性、低発熱性、剛性、耐久性に優れたランフラットタイヤが得られる。例えば、補強ゴム層では、ある限られたスポットに集中して温度上昇が生じ、ゴムの破壊が進行する。本発明では、窒化アルミニウムにより、熱伝導性を高め、ゴム全体に熱を逃がして温度上昇を抑制し、ゴムの破壊進行を抑制できる結果、優れた熱伝導性や低発熱性、ランフラット耐久性が得られると推察される。
窒化アルミニウム(粉末)の酸素濃度は、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.75質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上である。また、上記酸素濃度は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.3質量%以下、特に好ましくは1.1質量%以下である。上記範囲の酸素濃度である(上記範囲の酸素濃度となるように、窒化アルミニウム(粉末)の表面が酸化処理されている(表面に酸化アルミニウム膜が形成されている))と、熱伝導性や低発熱性を向上できるとともに、ランフラット耐久性も高められる。なお、酸素濃度は、燃焼分析法によって測定した値であり、例えば、堀場製作所(株)製「EMGA2800」を使用し、グラファイトるつぼ中での粉末の高温の熱分解法により発生したCOガス量から求められる。また、上記酸化処理は、例えば、窒化アルミニウム(粉末)を酸素の存在下に500〜900℃の温度で処理することにより行うことができる。
窒化アルミニウム(粉末)の陽イオン不純物濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。特に、陽イオン不純物のうち、Fe、Ca及びSiの合計含有量が0.12質量%以下(より好ましくは0.08質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下)のものが好ましい。上記陽イオン不純物濃度(上記合計含有量)の下限は、特に限定されない。陽イオン不純物量(上記合計含有量)が少ないと、熱伝導性や低発熱性を向上できるとともに、ランフラット耐久性も高められる。なお、陽イオン不純物濃度は、粉末をアルカリ溶融後、酸で中和し、溶液のICP発光分光分析により定量でき、例えば、島津製作所(株)製「ICPS−1000」を使用して測定できる。なお、陽イオン不純物とは、窒化アルミニウム(粉末)中に含まれるアルミニウム以外の陽イオン性の物質群を意味する。
窒化アルミニウム(粉末)のカーボン濃度(不純物カーボン量)は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.04質量%以下である。カーボン濃度の下限は、特に限定されない。カーボン量が少ないと、熱伝導性や低発熱性を向上できるとともに、ランフラット耐久性も高められる。なお、不純物カーボン量は、粉末を酸素気流中で焼成させ、発生したCO、COガス量から定量でき、例えば、堀場製作所(株)製「EMIA−110」を使用して測定できる。
窒化アルミニウム(粉末)の平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1.0μm以上である。該平均粒子径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは3.5μm以下、更に好ましくは2.5μm以下、特に好ましくは2.0μm以下である。上記範囲の平均粒子径であると、熱伝導性や低発熱性を向上できるとともに、ランフラット耐久性も高められる。なお、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した窒化アルミニウムの凝集粒子の体積平均粒子径であり、例えば、堀場製作所(株)製「CAPA500」を用いて測定できる。窒化アルミニウム(粉末)は、平均粒子径が上記範囲である窒化アルミニウム(粉末)を単独で使用してもよいし、平均粒子径の異なる2種以上の窒化アルミニウム(粉末)を、平均粒子径が上記範囲となるように混合して使用してもよい。
窒化アルミニウム(粉末)の加圧カサ密度は、好ましくは0.2g/cm以上、より好ましくは0.5g/cm以上、更に好ましくは1.0g/cm以上である。上記加圧カサ密度は、好ましくは7.0g/cm以下、より好ましくは3.0g/cm以下、更に好ましくは2.0g/cm以下である。上記範囲の加圧カサ密度であると、熱伝導性や低発熱性を向上できるとともに、ランフラット耐久性も高められる。なお、加圧カサ密度は、19.6MPaのプレス圧力で、直径20mm×厚み2.0mmのペレットを作製し、そのペレットを測定した値である。
窒化アルミニウム(粉末)の比表面積は、好ましくは0.5m/g以上、より好ましくは1.0m/g以上、更に好ましくは2.0m/g以上である。上記比表面積は、好ましくは10.0m/g以下、より好ましくは5.0m/g以下、更に好ましくは3.0m/g以下である。上記範囲の比表面積であると、熱伝導性や低発熱性を向上できるとともに、ランフラット耐久性も高められる。なお、比表面積は、N吸着によるBET法で求められる値であり、例えば、島津製作所(株)製「フローソーブ2300」を使用して測定できる。
窒化アルミニウム(粉末)の熱伝導率は、好ましくは80W/(m・K)以上、より好ましくは90W/(m・K)以上、更に好ましくは100W/(m・K)以上である。80W/(m・K)未満であると、充分な低燃費性、ランフラット耐久性が得られないおそれがある。窒化アルミニウム(粉末)の熱伝導率の上限は、特に限定されない。
ここで、窒化アルミニウム(粉末)の熱伝導率は、JIS R1611−1997「ファインセラミックスのレーザフラッシュ法による、熱拡散率・比熱容量・熱伝導率試験方法」の熱伝導率試験方法に準じて測定される値である。
窒化アルミニウム(粉末)の製造法は特に限定されず、例えば、還元窒化法(例えば、酸化アルミニウムをカーボンの存在下に、窒素ガス又はアンモニアガスと加熱下に接触させる方法(例えば、特開2006−199541号公報に記載の方法))で得られた窒化アルミニウム(粉末)、直接窒化法(例えば、金属アルミニウムを窒素雰囲気下で窒素処理する方法)で得られた窒化アルミニウム(粉末)、又はこれらの混合物を用いることができる。なかでも、良好な熱伝導率を有する点から、還元窒化法で得られた窒化アルミニウム(粉末)が好ましい。
上記窒化アルミニウム(粉末)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上である。10質量部未満であると、添加による効果が得られないおそれがある。また、該含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、特に好ましくは60質量部以下である。100質量部を超えると、ランフラット耐久性が低下する傾向がある。
本発明では、酸化亜鉛が使用される。酸化亜鉛は、加硫促進助剤として機能する。そのため、酸化亜鉛を配合することにより、架橋効率が向上し、低発熱性、剛性、耐久性に優れたランフラットタイヤが得られる。
酸化亜鉛としては、特に限定されず、従来からゴム工業で使用されるものが挙げられ、具体的には、三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛1号、2号、ハクスイテック(株)製のジンコックスーパーF−2などが挙げられる。
酸化亜鉛の平均一次粒子径は、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは120nm以下、特に好ましくは100nm以下である。200nmを超えると、低発熱性、剛性、ランフラット耐久性の向上効果が充分に得られないおそれがある。酸化亜鉛の平均一次粒子径は、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。20nm未満であると、酸化亜鉛の粒子どうしの凝集により、かえって分散しにくくなり、破壊核となり、低発熱性、剛性、ランフラット耐久性が低下するおそれがある。平均一次粒子径が上記範囲の酸化亜鉛を配合することにより、酸化亜鉛の分散性が向上し、架橋効率が向上するとともに、破壊核となることが少なくなり、通常の酸化亜鉛(上記酸化亜鉛1号等)を配合した場合に比べてより低発熱性、剛性、ランフラット耐久性を向上できる。
なお、酸化亜鉛の平均一次粒子径は、窒素吸着によるBET法により測定した比表面積から換算された平均粒子径(平均一次粒子径)を表す。
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上である。0.1質量部未満では、酸化亜鉛配合による加硫促進助剤としての効果が充分に得られず、低発熱性、剛性、ランフラット耐久性が低下する傾向がある。また、該酸化亜鉛の含有量は、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは9質量部以下である。12質量部を超えると、酸化亜鉛が分散不良となり、破断強度が低下し、ランフラット耐久性が低下する傾向がある。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、シリカ等の充填剤、ステアリン酸、各種老化防止剤、ワックス、硫黄又は硫黄化合物等の加硫剤、加硫促進剤、加硫促進補助剤などを必要に応じて適宜配合することができる。
カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、FEF、GPF、HAF、ISAF、SAFなどを用いることができる。カーボンブラックにより、ゴムの強度を向上させることができる。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、充分な補強性及び耐久性が得られる点から、30m/g以上が好ましく、35m/g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのNSAは、低発熱性に優れる点から、100m/g以下が好ましく、80m/g以下がより好ましく、60m/g以下が更に好ましい。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217のA法によって求められる。
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、充分な補強性が得られる点から、50ml/100g以上が好ましく、80ml/100g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのDBPは、破断時伸びなどの耐疲労特性に優れる点から、300ml/100g以下が好ましく、200ml/100g以下がより好ましい。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217−4の測定方法によって求められる。
カーボンブラックの含有量は、充分なゴム強度を得られる点から、ゴム成分100質量部に対して20質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、混練り時の粘度を適正に保ち、加工性に優れる点から、80質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましい。
加硫促進剤としては、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、ジフェニルグアニジン(DPG)などが挙げられる。なかでも、加硫特性に優れ、加硫後の低発熱性、ランフラット耐久性が良好である点で、TBBS、CBS、DZなどのスルフェンアミド系加硫促進剤が好ましく、TBBSが特に好ましい。
加硫促進補助剤としては、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を好適に使用できる。これにより、高硬度のゴム組成物を得ることができ、剛性、ランフラット耐久性を向上できる。アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物としては、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
Figure 0005508074
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数5〜12のアルキル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、2〜4の整数を示す。mは0〜10の整数を示す。)
mは、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、0〜10の整数であり、1〜9の整数が好ましい。x及びyは、高硬度が効率良く得られる点から、2〜4の整数であり、ともに2が好ましい。x、yが4を超えると、熱的に不安定となる傾向があり、x、yが1であるとアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物中の硫黄含有率(硫黄の重量)が少なくなる。R〜Rは、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良い点から、炭素数5〜12のアルキル基であり、炭素数6〜9のアルキル基が好ましい。
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物は、公知の方法で調製することができ、特に制限されないが、例えば、アルキルフェノールと塩化硫黄とを、モル比1:0.9〜1.25などで反応させる方法などが挙げられる。
アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の具体例として、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(下記式(2))などが挙げられる。
Figure 0005508074
(式中、mは0〜10の整数を表す。)
なお、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の硫黄含有率は、燃焼炉で800〜1000℃に加熱し、SOガス又はSOガスに変換後、ガス発生量から光学的に定量し、求めた割合をいう。
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。0.2質量部未満であると、発熱が大きくなるおそれがある。また、該含有量は、3.0質量部以下、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは2.2質量部以下である。3.0質量部を超えると、架橋密度が高くなり過ぎて、ランフラット耐久性が悪化する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
本発明のゴム組成物は、ランフラットタイヤのゴム部材として用いられ、なかでも、サイドウォール部の補強ゴム層(サイドウォール補強層)として好適に用いられる。補強ゴム層が存在することで、空気圧が失われた状態でも車輌を支えることができ、優れたランフラット耐久性を付与することができる。ここで、サイドウォール部の補強ゴム層とは、ランフラットタイヤのサイドウォール部の内側に配置されたライニングストリップ層のことをいう。具体的には、特開2004−330822号公報の図面に示されてる補強ゴム層(カーカスプライの内側でビード部からショルダー部にわたって配置され、両端方向に厚さを漸減する三日月状の補強ゴム層)等が挙げられる。
本発明のランフラットタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、必要に応じて前記配合剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのサイドウォール補強層等の各部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりランフラットタイヤを得る。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
天然ゴム(NR):RSS#3
ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製のBR150B
スチレンブタジエンゴム(SBR):住友化学(株)製のSBR1502
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックE(FEF、NSA:41m/g、DBP吸油量:115ml/100g)
窒化アルミニウム:(株)トクヤマ製の高純度窒化アルミニウム粉末 Hグレード(還元窒化法で得られた窒化アルミニウム、比表面積2.59m/g、平均粒子径1.13μm、加圧かさ密度1.68g/cm、酸素含有量0.83質量%、カーボン含有量210ppm、Ca含有量230ppm、Si含有量43ppm、Fe含有量12ppm、陽イオン不純物含有量:0.15質量%、熱伝導率180W/(m・K))
老化防止剤6C:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤FR:住友化学(株)製のアンチゲンFR(アミンとケトンの反応品を精製したものでアミンの残留がないもの、キノリン系老化防止剤)
酸化亜鉛1:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種(平均一次粒子径:400nm)
酸化亜鉛2:ハクスイテック(株)製のジンコックスーパーF−2(平均一次粒子径:65nm)
ステアリン酸:日油(株)製の椿
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進補助剤:田岡化学工業(株)製のタッキロールV200
実施例又は参考例1〜14及び比較例1〜2
表1に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサーを用いて、硫黄、加硫促進剤及び加硫促進補助剤以外の薬品を150℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤及び加硫促進補助剤を添加し、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。更に、得られた未加硫ゴム組成物を160℃の条件下で20分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を作製した。
サイドウォール補強層として、上記で得られた各未加硫ゴム組成物を用いてタイヤのサイドウォール部の補強ゴム層(ライニングストリップ層)の形状に成形し、他の部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、160℃の条件下で120分間プレス加硫し、各試験用ランフラットタイヤ(サイズ:215/45ZR17)を製造した。
作製した加硫ゴム組成物、試験用ランフラットタイヤについて、以下の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所粘弾性スペクトロメータを用いて、測定温度70℃、初期歪み10%、動歪み±1%、周波数10Hzの条件で、複素弾性率(E)及び損失正接(tanδ)を測定し、測定したE及びtanδを比較例1を100(基準)として指数で表した。Eの指数が大きいほど剛性が高く、良好である。また、tanδの指数が大きいほど発熱が少なく、好ましい。
(熱伝導率)
熱伝導率測定機(京都電子工業社製QTM−D3)を用いて、測定温度25℃、測定時間60秒の条件で、加硫ゴム組成物の試験片(縦100mm×横50mm×厚さ10mm、サンプルは均質、測定面は平滑)の熱伝導率(W/m・K)を測定した。
(ランフラット耐久性)
製造した試験用ランフラットタイヤを、空気内圧0kPaにてドラム上を80km/hで走行させ、タイヤが破壊するまでの走行距離を測定し、比較例1のランフラット耐久性指数を100とし、下記計算式により、各配合の走行距離を指数表示をした。なお、ランフラット耐久性指数が大きいほど、ランフラット耐久性に優れることを示す。
(ランフラット耐久性指数)=(各配合の走行距離)/(比較例1の走行距離)×100
Figure 0005508074
ゴム成分としてNR、BR及びSBRを用い、窒化アルミニウム及び酸化亜鉛を配合した実施例では、熱伝導率が高く、低発熱性が良好であり、剛性、ランフラット耐久性も優れていた。窒化アルミニウムを配合していない比較例では、これらの性能が大きく劣っていた。また、酸化亜鉛2を配合した実施例では、酸化亜鉛1を配合した対応する実施例に比べて、低発熱性が良好であり、剛性、ランフラット耐久性も優れていた。

Claims (8)

  1. ゴム成分、酸化亜鉛及び窒化アルミニウムを含有するランフラットタイヤのサイドウォール補強層用ゴム組成物であって、
    該酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して5質量部以上であるランフラットタイヤのサイドウォール補強層用ゴム組成物。
  2. 酸化亜鉛の平均一次粒子径が200nm以下である請求項1記載のランフラットタイヤのサイドウォール補強層用ゴム組成物。
  3. ゴム成分100質量%中の天然ゴムの含有量が20〜50質量%、ブタジエンゴムの含有量が20〜50質量%、スチレンブタジエンゴムの含有量が20〜50質量%である請求項1又は2記載のランフラットタイヤのサイドウォール補強層用ゴム組成物。
  4. 窒化アルミニウムの含有量がゴム成分100質量部に対して10〜100質量部である請求項1〜3のいずれかに記載のランフラットタイヤのサイドウォール補強層用ゴム組成物。
  5. 酸化亜鉛の含有量がゴム成分100質量部に対して12質量部以下である請求項1〜4のいずれかに記載のランフラットタイヤのサイドウォール補強層用ゴム組成物。
  6. 下記式(1)で示されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含む請求項1〜5のいずれかに記載のランフラットタイヤのサイドウォール補強層用ゴム組成物。
    Figure 0005508074
    (式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数5〜12のアルキル基を示す。x及びyは、同一若しくは異なって、2〜4の整数を示す。mは0〜10の整数を示す。)
  7. 前記窒化アルミニウムの酸素濃度は、0.4〜5質量%である請求項1〜6のいずれかに記載のランフラットタイヤのサイドウォール補強層用ゴム組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したサイドウォール補強層を有するランフラットタイヤ。
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