以下、図1〜図11を参照して、本発明の第1実施形態に係る多芯式筆記具について説明する。
最初に、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る多芯式筆記具の構成及び動作について簡単に説明する。
図1(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の第1実施形態に係る多芯式筆記具1aの正面図及び側面図である。図2(a)及び(b)は、それぞれ、図1(b)のB−B線に沿った多芯式筆記具1aの正面断面図と、図1(a)のA−A線に沿った多芯式筆記具1aの側面断面図とである。図3(a)〜(c)は、それぞれ、図2(a)のC−C線、D−D線及びE−E線に沿った多芯式筆記具1aの平面断面図である。
多芯式筆記具1a(以下、単に「筆記具1a」とする)は、軸筒2aと、軸筒2a内に配設された第1筆記体3a及び第2筆記体4aと、第1筆記体3aの後端に配設された第1ノック部材5aと、第2筆記体4aの後端に配設された第2ノック部材6aとを備える。なお、本明細書において、筆記具1aの先端すなわちペン先側を筆記具1aの「前」側と定義し、筆記具1aの軸線方向(長手方向)に沿って筆記具1aのペン先とは反対側を筆記具1aの「後」側と定義する。また、筆記具1aの構成部品についても、筆記具1aの組立状態において、筆記具1aのペン先側を構成部品の「前」側と定義し、筆記具1aの軸線方向に沿って筆記具1aのペン先とは反対側を構成部品の「後」側と定義する。
本実施形態では、第1筆記体3aは一本のボールペンであり、第2筆記体4aは二本のボールペンである。第1筆記体3aは軸筒2aの径方向中心部において軸筒2a内に配設され、第2筆記体4aは第1筆記体3aよりも軸筒2aの径方向外側において軸筒2a内に配設される。第1筆記体3a及び第2筆記体4aは軸筒2aの径方向において同一直線上に位置する。
第1ノック部材5aは、第1筆記体3aを軸筒2aの前端から選択的に突出させるように構成される。第2ノック部材6aは、第2筆記体4aを軸筒2aの前端から選択的に突出させるように構成される。具体的には、第1ノック部材5aを操作すると、第1筆記体3aが突出し、第2ノック部材6aを操作すると、第2筆記体4aが突出する。第2筆記体4aのペン先は、軸筒2aの内面に沿って径方向内側に移動し、軸筒2aの前端から突出する。このことよって、三本の筆記体のうちの一本を選択的に使用して筆記を行うことができる。
第1筆記体3aの突出は第1ノック部材5a又は第2ノック部材6aの操作によって解除される。第2筆記体4aの突出は第1ノック部材5a又は突出していない筆記体の第2ノック部材6aの操作によって解除される。したがって、第1筆記体3a及び第2筆記体4aの突出を任意の一つのノック部材を操作することによって解除できるので、筆記具1aの操作性が大幅に改善される。なお、本明細書において、筆記体の突出が解除されるとは、軸筒2aの前端から突出している筆記体のペン先が軸筒2a内に没入することを意味する。
以下、図1〜図10を参照して、筆記具1aの構成部品について詳細に説明する。
図1に示されるように、軸筒2aは、前軸筒7aと、前軸筒7aよりも後方に配設された後軸筒8aとを備える。前軸筒7aと後軸筒8aとは圧入、接着又は螺合によって連結される。例えば、前軸筒7aと後軸筒8aとは、後軸筒8aの前側の内周面に形成された雌ネジが前軸筒7aの後側の外周面に形成される雄ネジと螺合することによって連結される。
図4(a)〜(c)は、それぞれ、後軸筒8aの正面図、側面図、及び図4(b)のF−F線に沿った後軸筒8aの正面断面図である。後軸筒8aの外周面には、第2ノック部材6aが軸線方向に摺動できるように、二つの摺動孔81aが形成される。摺動孔81aは軸線方向に延在する。後軸筒8aの内周面には、後述するスペーサ18aの凹部183及び内筒15aの凹部151と嵌合する四つの凸部82が形成される。図3(a)及び図4(c)に示されるように、凸部82は径方向内側に突出し且つ略軸線方向に延在する。後軸筒8aの後端には、後述するノック棒が後軸筒8aから突出するための貫通孔83が形成される。
図2(a)に示されるように、第1筆記体3aは、第1インク収容管9a、第1継手10a及び第1チップ11aを備え、第2筆記体4aは、第2インク収容管12a、第2継手13a及び第2チップ14aを備える。第1チップ11aは第1継手10aを介して第1インク収容管9aに連結される。第2チップ14aは第2継手13aを介して第2インク収容管12aに連結される。
第1インク収容管9aと二本の第2インク収容管12aとには、典型的には、それぞれ異なる色のインクが収容される。第1ノック部材5aを第2ノック部材6aよりも後方に配設することで、第1インク収容管9aの長さを第2インク収容管12aよりも長くすることができる。この結果、第1インク収容管9aのインク充填量を第2インク収容管12aの充填量よりも多くすることができる。このため、例えば、第1インク収容管9aに、一般的に使用頻度が高い黒色のインクを収容することで、筆記具1aの寿命を延ばし又は筆記体の交換頻度を少なくすることができる。また、同様の効果を得るために、第1インク収容管9aのインク充填量が第2インク収容管12aの充填量よりも多くなるように、第1インク収容管9aの径方向の長さを第2インク収容管12aよりも長くしてもよい。
第1ノック部材5aは、後軸筒8aに固定された内筒15aと、内筒15a内に配設され且つ内筒15aから後方に突出するノック棒16aと、ノック棒16aの前方に配設された回転子17aとを備える。詳しくは後述するが、ノック棒16aを押圧して回転子17aを回転させることで、第1筆記体3aを軸筒2aの前端から出没させることができる。
図5(a)〜(e)は、それぞれ、内筒15aの正面図、側面図、底面図、斜視図、及び図5(b)のG−G線に沿った内筒15aの正面断面図である。内筒15aは中空の略円筒形状を有する。内筒15aの外周面には、長手方向に延在する四つの凹部151及び二つの摺動溝152が形成される。四つの凹部151は後軸筒8aの四つの凸部82とそれぞれ嵌合する。このことによって、内筒15aは軸筒2aの内周面に固定される。摺動溝152の底面は、第2ノック部材6aが前後に摺動する摺動面153として機能する。また、図5(b)に示されるように、摺動溝152の前端には、第2筆記体4aが軸筒2aから突出するときに第2ノック部材6aの後端と係合する係合面154が形成される。
内筒15aの内周面には四つの外カム155aが形成される。四つの外カム155aは周方向に等間隔に配設される。隣接する外カム155a間には、軸線方向に延在する四つの溝156が形成される。各外カム155aは、軸線方向に延在し且つ周方向に連続して形成された三つの棒状部から成る。真ん中に配設された第2棒状部158は、両端の第1棒状部157及び第3棒状部159よりも薄い径方向の厚みを有する。このことによって、第1棒状部157と第3棒状部159との間、すなわち第2棒状部158の上に収容凹部251が形成される。溝156及び収容凹部251は、後述するノック棒16aの突起を収容する。また、溝156は、第1筆記体3aの没入状態において、後述する回転子17aの内カム179aを収容する。なお、内筒15aは後軸筒8aと一体であってもよい。
図6(a)〜(d)は、それぞれ、ノック棒16aの正面図、底面図、斜視図、及び図6(a)のH−H線に沿ったノック棒16aの断面図である。ノック棒16aは中空の略円筒形状を有する。ノック棒16aの外周面には、主に筆記具1aのデザイン性を高めるために、軸線方向に延在する六つの凹部161が形成される。筆記具1aの使用者はノック棒16aの後端を指で押圧することによって第1ノック部材5aを操作することができる。
ノック棒16aは、外周面に、径方向外側に突出し且つ軸線方向に延在する八つの突起162aを有する。八つの突起162aは周方向に等間隔に配設される。各突起162aは、ノック棒16aが軸線方向に移動するとき、内筒15aの外カム155a内、より具体的には第1棒状部157と第3棒状部159との間の収容凹部251内、又は外カム155a間の溝156内を前後方向に摺動するように構成される。すなわち、ノック棒16a及び内筒15aは、ノック棒16aの周方向の回転を規制するように構成される。また、ノック棒16aの前端にはカム面163aが全周に亘って形成される。カム面163aは複数の斜面から成る。
図7(a)〜(d)は、それぞれ、回転子17aの正面図、平面図、斜視図、及び図7(a)のI−I線に沿った回転子17aの断面図である。回転子17aは、中空の略円筒形状を有し、ノック棒16a内に挿入される挿入部171aと、挿入部171aの前方に配設された第1カム受け部172と、第1カム受け部172の前方に配設された第2カム受け部173とを有する。ノック棒16a及び回転子17aは内筒15a内において軸線方向に移動するように構成される。
図2に示されるように、第1インク収容管9aは第2カム受け部173及び第1カム受け部172内に挿入される。図7(d)に示されるように、第1カム受け部172の内周面には、第1インク収容管9aと嵌合する嵌合突起174が形成される。嵌合突起174は、径方向内側に突出し且つ周方向全周に亘って延在する。第1カム受け部172の内部には、第1インク収容管9aの後端が当接する当接面175が形成される。また、第1インク収容管9aの通気を確保するための通気孔176aが当接面175から回転子17aの後端まで軸線方向に延在する。通気孔176aの直径は当接面175から後端に向かって徐々に減少する。第2カム受け部173の内部には、後述する第1スプリング21aの後端が当接する付勢面177が形成される。
第1カム受け部172の外周面の後端には、ノック棒16aのカム面163aと相互作用する第1カム受け面178が全周に亘って形成される。第1カム受け面178はカム面163aと同様に複数の斜面から成る。カム面163a及び第1カム受け面178は、ノック棒16aが前進するとき、第1カム受け面178がカム面163aから軸線方向及び周方向の力を受けるように構成される。このため、ノック棒16aの前進によってカム面163aが第1カム受け面178を押圧すると、回転子17aは周方向の力によって周方向に回転する。一方、ノック棒16aは、突起162aが内筒15aの外カム155aの第1棒状部157又は第3棒状部159に当接するので、周方向の回転が規制される。
第1カム受け部172の外周面には、軸線方向に延在する四つの内カム179a及び溝271aが形成される。四つの内カム179aは周方向に等間隔に配設される。内カム179aの前端は第1カム受け面178の一部を構成する。内カム179aは、ノック棒16aの前進によって回転子17aが周方向に回転すると、内筒15aの外カム155aと軸線方向に係合し又は係合が解除されて外カム155a間の溝156内に収容される。内カム179aが外カム155a間の溝156内に収容されるとき、外カム155aは内カム179a間の溝271a内に収容される。すなわち、内筒15a及び回転子17aは、回転子17aがノック棒16aの前進によって周方向に回転すると、軸線方向に互いに係合し又はその係合が解除されるように構成される。
第2カム受け部173の外周面には、径方向外側に突出し且つ軸線方向に延在する四つのカム突起272が形成される。四つのカム突起272は周方向に等間隔に配設される。カム突起272の後端には、後述する第2ノック部材6aのカム面66aと相互作用する第2カム受け面273が形成される。図7(a)から分かるように、カム突起272の周方向位置は内カム179aと等しい。また、カム突起272は内カム179aと同様の形状を有する。
第1カム受け部172と第2カム受け部173との間の外周面には、第2筆記体4aの突出を第1ノック部材5aによって解除するときに第2ノック部材6aの後端と接触する押圧面274が全周に亘って形成される。第2ノック部材6aの後端及び押圧面274は、接触時に互いに軸線方向及び径方向の力を受けるように構成される。
図8(a)〜(c)は、それぞれ、第2ノック部材6aの正面図、側面図及び斜視図である。第2ノック部材6aは細長の形状を有する。なお、二つの第2ノック部材6aは同一の形状を有する。このことによって、部品の共通化が可能となり、ひいては筆記具1aのコストを削減することができる。
第2ノック部材6aは、前後方向に延在する本体部61aと、本体部61aの前方に形成された嵌合部62aと、本体部61aの後部に形成された操作部63aとを有する。図2(a)に示されるように、嵌合部62aは第2インク収容管12aと嵌合する。このことによって、第2インク収容管12aは第2ノック部材6aに固定される。本体部61aには、後述する第2スプリング22aが当接する付勢面64aが形成される。図1(a)に示されるように、操作部63aは、筆記具1aの組立状態において、軸筒2aから径方向外側に突出するので、指で操作されることができる。
本体部61aの底面には押圧突起65aが形成される。図2(a)に示されるように、押圧突起65aは、筆記具1aの組立状態において、軸筒2aの径方向内側に突出する。押圧突起65aの前端には、回転子17aの第2カム受け面273と相互作用するカム面66aが形成される。カム面66a及び第2カム受け面273は、第2ノック部材6aが前進するとき、第2カム受け面273がカム面66aから軸線方向及び周方向の力を受けるように構成される。このため、第2ノック部材6aの前進によってカム面66aが第2カム受け面273を押圧すると、回転子17aは周方向の力によって周方向に回転する。一方、第2ノック部材6aは、操作部63aが後軸筒8aの摺動孔81aの側壁に当接するので、周方向の回転が規制される。
筆記具1aは、さらに、軸筒2aに固定されたスペーサ18aと、スペーサ18aに固定されたパイプ部材19a及び伝達部材20と、第1スプリング21aと、二つの第2スプリング22aとを備える。
図9(a)及び(b)は、それぞれ、スペーサ18aの斜視図である。スペーサ18aは、前側に形成された円柱部181と、円柱部181から後方に延在する四つの嵌合部182とを有する。各嵌合部182には、長手方向に延在する凹部183が形成される。凹部183は後軸筒8aの凸部82とそれぞれ嵌合する。このことによって、スペーサ18aは後軸筒8aの内周面に固定される。
円柱部181は円柱形状を有し、円柱部181には四つの貫通孔が形成される。円柱部181の中心に第1貫通孔184aが形成され、円柱部181の周方向に沿って二つの第2貫通孔185aと第3貫通孔186とが第1貫通孔184aを囲むように形成される。第1貫通孔184a及び二つの第2貫通孔185aは径方向において同一直線上に位置する。円柱部181の後面は第2スプリング22aを支持する。
パイプ部材19aは、中空の円筒形状を有する。パイプ部材19aの前部はスペーサ18aの第1貫通孔184aに圧入される。このことによって、パイプ部材19aはスペーサ18aに固定される。なお、パイプ部材19aは接着によってスペーサ18aに固定されてもよい。図2に示されるように、パイプ部材19aの後端は第1スプリング21aを支持する。
第1インク収容管9aは、スペーサ18aの第1貫通孔184a及びパイプ部材19aを通って延在し、回転子17aに固定される。第2インク収容管12aは、スペーサ18aの第2貫通孔185aを通って延在し、第2ノック部材6aに固定される。
第1スプリング21aは、パイプ部材19aの後端と回転子17aの付勢面177との間に第1インク収容管9aを周方向に囲むように配設され、回転子17aひいては第1筆記体3aを後方に付勢する。第2スプリング22aは、スペーサ18aの円柱部181の後端と第2ノック部材6aの付勢面64aとの間に第2インク収容管12aを周方向に囲むように配設され、第2ノック部材6aひいては第2筆記体4aを後方に付勢する。
図10(a)及び(b)は、それぞれ、伝達部材20の正面図及び斜視図である。伝達部材20は、細長の形状を有し、後端から前端に向かって、取付部201、当接部202、接続部203及び接触部204を有する。取付部201は、円柱形状を有し、スペーサ18aの第3貫通孔186に圧入される。このことによって、伝達部材20はスペーサ18aに固定される。なお、伝達部材20は接着によってスペーサ18aに固定されてもよい。当接部202は、直方体形状を有し、伝達部材20がスペーサ18aに固定されるとき、スペーサ18aの円柱部181に当接する。接続部203は、円柱形状を有し、当接部202と接触部204とを接続する。
図3(a)に示されるように、接触部204は筆記具1aの組立状態において第1筆記体3aを周方向に部分的に囲むように構成される。このことによって、伝達部材20が軸筒2a内の大きな空間を占めることを回避することができる。なお、筆記具が四つの第2筆記体及び第2ノック部材を備える場合、接触部は第1筆記体を周方向全体に亘って囲むように構成されてもよい。第2ノック部材6aのカム面66aと接触する接触部204の接触面205は、接触時にカム面66aから軸線方向及び径方向の力を受けるように構成される。このため、カム面66aが接触面205に接触すると、接触部204は径方向の力によって径方向内側に押圧される。
以下、第1筆記体3a及び第2筆記体4aが軸筒2aの前端から突出する原理と、第1筆記体3a及び第2筆記体4aの突出が第1ノック部材5a又は第2ノック部材6aによって解除される原理とについて詳細に説明する。
図11(a)及び(b)は、それぞれ、第1筆記体3aが突出しているときの図1(b)のB−B線に沿った多芯式筆記具1aの部分正面断面図と、一方の第2筆記体4aが突出しているときの図1(b)のB−B線に沿った多芯式筆記具1aの部分正面断面図とである。
最初に第1筆記体3aが軸筒2aの前端から突出する原理について説明する。
没入状態では、回転子17aの内カム179aは内筒15aの外カム155a間の溝156内に収容される。この状態から第1スプリング21aの付勢力に抗してノック棒16aを前進させると、ノック棒16aのカム面163aが回転子17aの第1カム受け面178に当接し、回転子17aがノック棒16aと共に前進する。このとき、ノック棒16a及び回転子17aはカム面163a及び第1カム受け面178を介して互いに軸線方向及び周方向の力を受ける。その後、内カム179aの後端が外カム155aの第1棒状部157の前端を越えると、回転子17aの周方向の規制が解除されるので、回転子17aは周方向の力によって周方向(前方から見て反時計回り)に回転する。一方、ノック棒16aは、突起162aが外カム155aの第1棒状部157又は第3棒状部159に当接することによって周方向の回転が規制されるので、周方向に回転しない。
この状態でノック棒16aを離すと、ノック棒16a及び回転子17aは第1スプリング21aの付勢力によって後退する。このとき、周方向に回転した回転子17aの内カム179aの後端は内筒15aの外カム155aの第2棒状部158の前端と軸線方向に係合し且つ第3棒状部159と周方向に係合する。この係合によって回転子17aの後退が妨げられるので、回転子17aに固定された第1筆記体3aは、軸筒2aの前端からの突出状態が維持される。
以下、第1筆記体3aの突出が第1ノック部材5aによって解除される原理について説明する。
突出状態では、回転子17aの内カム179aは内筒15aの外カム155aと軸線方向に係合する。この状態から第1スプリング21aの付勢力に抗してノック棒16aを前進させると、ノック棒16aのカム面163aが回転子17aの第1カム受け面178に当接し、回転子17aがノック棒16aと共に前進する。このとき、ノック棒16a及び回転子17aはカム面163a及び第1カム受け面178を介して互いに軸線方向及び周方向の力を受ける。その後、内カム179aの後端が外カム155aの第3棒状部159の前端を越えると、回転子17aの周方向の規制が解除されるので、回転子17aは周方向の力によって周方向(前方から見て反時計回り)に回転する。一方、ノック棒16aは、突起162aが外カム155aの第1棒状部157又は第3棒状部159に当接することによって周方向の回転が規制されるので、周方向に回転しない。
この状態でノック棒16aを離すと、ノック棒16a及び回転子17aは第1スプリング21aの付勢力によって後退し、周方向に回転した内カム179aは外カム155a間の溝156内に収容される。このとき、回転子17aに固定された第1筆記体3aも共に後退するので、第1筆記体3aの突出が解除される。
以下、第1筆記体3aの突出が第2ノック部材6aによって解除される原理について説明する。
突出状態では、回転子17aの内カム179aは内筒15aの外カム155aと軸線方向に係合する。このとき、図11(a)に示されるように、第2ノック部材6aの押圧突起65aは回転子17aのカム突起272よりも後方に位置し、四つのうち二つのカム突起272の周方向位置は押圧突起65aと等しい。
この状態から第2スプリング22aの付勢力に抗して第2ノック部材6aを前進させると、第2ノック部材6aのカム面66aが回転子17aの第2カム受け面273に当接し、回転子17aが第2ノック部材6aと共に前進する。このとき、第2ノック部材6a及び回転子17aはカム面66a及び第2カム受け面273を介して互いに軸線方向及び周方向の力を受ける。その後、内カム179aの後端が外カム155aの第3棒状部159の前端を越えると、回転子17aの周方向の規制が解除されるので、回転子17aは周方向の力によって周方向(前方から見て反時計回り)に回転する。一方、第2ノック部材6aは、操作部63aが後軸筒8aの摺動孔81aの側壁に当接することによって周方向の回転が規制されるので、周方向に回転しない。周方向に回転した内カム179aは第1スプリング21aの付勢力によって外カム155a間の溝156内に収容される。このとき、回転子17a及びノック棒16aが後退するので、回転子17aに固定された第1筆記体3aも共に後退し、第1筆記体3aの突出が解除される。
以下、第2筆記体4aが軸筒2aの前端から突出する原理について説明する。
没入状態では、第2ノック部材6aの操作部63aは内筒15aの摺動面153上に位置する。この状態から第2スプリング22aの付勢力に抗して第2ノック部材6aを前進させる。その後、第2ノック部材6aの後端が内筒15aの摺動面153の前端を越えると、第2ノック部材6aの操作部63aは径方向内側に向かって落ち込む。
この状態で第2ノック部材6aを離すと、図11(b)に示されるように、第2スプリング22aの付勢力によって第2ノック部材6aの後端は内筒15aの係合面154と軸線方向に係合する。この係合によって第2ノック部材6aの後退が妨げられるので、第2ノック部材6aに固定された第2筆記体4aは軸筒2aの前端から突出する。
以下、第2筆記体4aの突出が第1ノック部材5aによって解除される原理について説明する。
突出状態では、第2ノック部材6aは内筒15aと軸線方向に係合する。このとき、図11(b)に示されるように、回転子17aの押圧面274は第2ノック部材6aの後端よりも後方に位置する。
この状態から第1スプリング21aの付勢力に抗してノック棒16aを前進させると、ノック棒16aのカム面163aが回転子17aの第1カム受け面178に当接し、回転子17aがノック棒16aと共に前進する。その後、回転子17aの押圧面274が第2ノック部材6aの後端に接触すると、第2ノック部材6aの後端は、押圧面274から径方向外側の力を受けるので、内筒15aとの係合が解除される。その後、第2ノック部材6aが第2スプリング22aの付勢力によって後退するので、第2ノック部材6aに固定された第2筆記体4aも共に後退し、第2筆記体4aの突出が解除される。
以下、第2筆記体4aの突出が第2ノック部材6aによって解除される原理について説明する。
突出状態では、第2ノック部材6aは内筒15aと軸線方向に係合する。このとき、図11(b)に示されるように、突出していない第2筆記体4aの第2ノック部材6aの押圧突起65aは伝達部材20の接触面205よりも後方に位置する。
この状態から第2スプリング22aの付勢力に抗して、突出していない第2筆記体4aの第2ノック部材6aを前進させると、第2ノック部材6aのカム面66aが伝達部材20の接触面205と接触する。このとき、接触面205がカム面66aから径方向内側の力を受けるので、接触部204は径方向に移動し、反対側の突出している第2筆記体4aの第2ノック部材6aを径方向外側に押圧する。このことによって、第2ノック部材6aの後端と内筒15aとの係合が解除される。その後、第2ノック部材6aが第2スプリング22aの付勢力によって後退するので、第2ノック部材6aに固定された第2筆記体4aも共に後退し、第2筆記体4aの突出が解除される。
以下、図12〜図22を参照して、本発明の第2実施形態に係る多芯式筆記具について説明する。
最初に、図12〜図14を参照して、本発明の第2実施形態に係る多芯式筆記具の構成及び動作について簡単に説明する。
図12(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の第2実施形態に係る多芯式筆記具1bの正面図及び側面図である。図13(a)及び(b)は、それぞれ、図12(b)のK1−K1線に沿った多芯式筆記具1bの正面断面図と、図12(a)のJ1−J1線に沿った多芯式筆記具1bの側面断面図とである。図14(a)〜(c)は、それぞれ、図13(b)のL1−L1線、M1−M1線及びN1−N1線に沿った多芯式筆記具1bの平面断面図である。
多芯式筆記具1b(以下、単に「筆記具1b」とする)は、軸筒2bと、軸筒2b内に配設された第1筆記体3b及び第2筆記体4bと、第1筆記体3bの後端に配設された第1ノック部材5bと、第2筆記体4bの後端に配設された第2ノック部材6bとを備える。なお、本明細書において、筆記具1bの先端すなわちペン先側を筆記具1bの「前」側と定義し、筆記具1bの軸線方向(長手方向)に沿って筆記具1bのペン先とは反対側を筆記具1bの「後」側と定義する。また、筆記具1bの構成部品についても、筆記具1bの組立状態において、筆記具1bのペン先側を構成部品の「前」側と定義し、筆記具1bの軸線方向に沿って筆記具1bのペン先とは反対側を構成部品の「後」側と定義する。
本実施形態では、第1筆記体3bは一本のボールペンであり、第2筆記体4bは二本のボールペンである。第1筆記体3bは軸筒2bの径方向中心部において軸筒2b内に配設され、第2筆記体4bは第1筆記体3bよりも軸筒2bの径方向外側において軸筒2b内に配設される。第1筆記体3b及び第2筆記体4bは軸筒2bの径方向において同一直線上に位置する。
第1ノック部材5bは、第1筆記体3bを軸筒2bの前端から選択的に突出させるように構成される。第2ノック部材6bは、第2筆記体4bを軸筒2bの前端から選択的に突出させるように構成される。具体的には、第1ノック部材5bを操作すると、第1筆記体3bが突出し、第2ノック部材6bを操作すると、第2筆記体4bが突出する。第2筆記体4bのペン先は、軸筒2bの内面に沿って径方向内側に移動し、軸筒2bの前端から突出する。このことよって、三本の筆記体のうちの一本を選択的に使用して筆記を行うことができる。
第1筆記体3bの突出は第1ノック部材5b又は第2ノック部材6bの操作によって解除される。第2筆記体4bの突出は第1ノック部材5b又は突出していない筆記体の第2ノック部材6bの操作によって解除される。したがって、第1筆記体3b及び第2筆記体4bの突出を任意の一つのノック部材を操作することによって解除できるので、筆記具1bの操作性が大幅に改善される。
以下、図12〜図21を参照して、筆記具1bの構成部品について詳細に説明する。
図12に示されるように、軸筒2bは、前軸筒7bと、前軸筒7bよりも後方に配設された後軸筒8bとを備える。前軸筒7bと後軸筒8bとは、後述するスペーサ18bを介して連結される。なお、前軸筒7bと後軸筒8bとは第1実施形態のように圧入等によって直接連結されてもよい。
図15(a)〜(c)は、それぞれ、後軸筒8bの正面図、側面図、及び図15(a)のO−O線に沿った後軸筒8bの側面断面図である。後軸筒8bの外周面には、第2ノック部材6bが軸線方向に摺動できるように、二つの摺動孔81bが形成される。摺動孔81bは軸線方向に延在する。後軸筒8bの後端には、後述する内筒15bと嵌合する嵌合孔84b及び嵌合溝85bが形成される。
図13(a)に示されるように、第1筆記体3bは、第1インク収容管9b、第1継手10b及び第1チップ11bを備え、第2筆記体4bは、第2インク収容管12b、第2継手13b及び第2チップ14bを備える。第1チップ11bは第1継手10bを介して第1インク収容管9bに連結される。第2チップ14bは第2継手13bを介して第2インク収容管12bに連結される。
第1インク収容管9bと二本の第2インク収容管12bとには、典型的には、それぞれ異なる色のインクが収容される。第1ノック部材5bを第2ノック部材6bよりも後方に配設することで、第1インク収容管9bの長さを第2インク収容管12bよりも長くすることができる。この結果、第1インク収容管9bのインク充填量を第2インク収容管12bの充填量よりも多くすることができる。このため、例えば、第1インク収容管9bに、一般的に使用頻度が高い黒色のインクを収容することで、筆記具1bの寿命を延ばし又は筆記体の交換頻度を少なくすることができる。また、同様の効果を得るために、第1インク収容管9bのインク充填量が第2インク収容管12bの充填量よりも多くなるように、第1インク収容管9bの径方向の長さを第2インク収容管12bよりも長くしてもよい。
第1ノック部材5bは、後軸筒8bに固定された内筒15bと、内筒15b内に配設され且つ内筒15bから後方に突出するノック棒16bと、ノック棒16bの前方に配設された回転子17bとを備える。詳しくは後述するが、ノック棒16bを押圧して回転子17bを回転させることで、第1筆記体3bを軸筒2bの前端から出没させることができる。
図16(a)〜(d)は、それぞれ、内筒15bの正面図、側面図、斜視図、及び図16(a)のP1−P1線に沿った内筒15bの側面断面図である。内筒15bはクリップ部252bと挿入部253bとを有する。クリップ部252bは、細長の形状を有し、内筒15bが軸筒2bに固定されたとき、軸筒2bの外側で略軸線方向に延在する。クリップ部252bの前部には、軸筒2bの径方向内側に突出する玉部254bが設けられる。クリップ部252bの基部には、後軸筒8bの嵌合溝85bと嵌合する嵌合部255bが設けられる。
挿入部253bは中空の略円筒形状を有する。挿入部253bの後部は、内筒15bが軸筒2bに固定されたとき、軸筒2bから露出する。挿入部253bの後部には、軸線方向に延在する貫通孔256bが形成され、ノック棒16bは貫通孔256bを通って内筒15bから後方に突出する。
挿入部253bの外周面には、後軸筒8bの嵌合孔84bと嵌合する四つのレール257bと、挿入部253bを補強する二つの補強材258とが設けられる。レール257bは挿入部253bの外周面から径方向外側に突出し且つ挿入部253bの後部から前端まで軸線方向に延在する。補強材258は挿入部253bの外周面から径方向外側に突出し且つ挿入部253bの後部から軸線方向に部分的に延在する。補強材258の軸線方向の長さはレール257bよりも短い。
挿入部253bには、第2ノック部材6bが軸線方向に摺動できるように、後部から前端まで軸線方向に延在する二つの摺動孔259bが形成される。内筒15bが軸筒2bに固定されたとき、内筒15bの摺動孔259bの周方向位置は軸筒2bの摺動孔81bと等しい。また、第2ノック部材6bが周方向の力を受けると、第2ノック部材6bは、摺動孔259bの側壁を形成するレール257bに当接する。
図17は、図16(b)のQ−Q線に沿った内筒15bの挿入部253bの拡大断面図である。挿入部253bは内周面に二つの外カム155bを有する。二つの外カム155bは周方向に離間され、径方向において同一直線上に位置する。挿入部253bは内周面にさらに二つの肉厚部351bを有する。二つの肉厚部351bは周方向に離間され、径方向において同一直線上に位置する。外カム155bと肉厚部351bとは周方向に離間されて交互に配設される。また、外カム155b及び肉厚部351bの径方向の厚さは等しい。この結果、外カム155bと肉厚部351bとの間には第1凹部352及び第2凹部353が二つずつ形成される。
第2凹部353の周方向長さは第1凹部352よりも長い。また、第2凹部353は摺動孔259bと連通する。第1凹部352及び第2凹部353は、後述するノック棒16bの突起162bを収容する。また、第1凹部352及び第2凹部353は、図14(a)に示されるように、第1筆記体3bの没入状態において、後述する回転子17bの内カム179bを収容する。
なお、内筒15bは後軸筒8bと一体であってもよい。また、内筒15bは第1実施形態のようにクリップ部252bを有しなくてもよい。
図18(a)〜(d)は、それぞれ、ノック棒16bの正面図、底面図、斜視図、及び図18(a)のR1−R1線に沿ったノック棒16bの断面図である。ノック棒16bは略円柱形状を有する。ノック棒16bの前部には、回転子17bを部分的に収容するための収容空間164bが形成される。筆記具1bの使用者はノック棒16bの後端を指で押圧することによって第1ノック部材5bを操作することができる。
ノック棒16bは、外周面に、径方向外側に突出し且つ軸線方向に延在する四つの突起162bを有する。四つの突起162bは周方向に等間隔に配設される。各突起162bは、ノック棒16bが軸線方向に移動するとき、内筒15bの第1凹部352又は第2凹部353内を軸線方向に摺動するように構成される。すなわち、ノック棒16b及び内筒15bは、ノック棒16bの周方向の回転を規制するように構成される。また、ノック棒16bの前端にはカム面163bが全周に亘って形成される。カム面163bは複数の斜面から成る。
図19(a)〜(d)は、それぞれ、回転子17bの正面図、平面図、斜視図、及び図19(a)のS1−S1線に沿った回転子17bの断面図である。回転子17bは、中空の略円筒形状を有し、ノック棒16bの収容空間164bに挿入される挿入部171bと、挿入部171bの前方に配設されたカム受け部275bとを有する。ノック棒16b及び回転子17bは内筒15b内において軸線方向に移動するように構成される。
図13に示されるように、第1インク収容管9bはカム受け部275b内に圧入される。このことによって、第1インク収容管9bは回転子17bに固定される。カム受け部275bの内部には、第1インク収容管9bの後端が当接する第1当接面276bが形成される。また、第1インク収容管9bの通気を確保するための通気孔176bが第1当接面276bから回転子17bの後端まで軸線方向に延在する。また、図13に示されるように、後述するパイプ部材19bもカム受け部275b内に圧入される。このことによって、パイプ部材19bは回転子17bに固定される。カム受け部275bの内部には、パイプ部材19bの後端が当接する第2当接面277bが形成される。
カム受け部275bの外周面には、軸線方向に延在する四つの内カム179b及び溝271bが形成される。四つの内カム179bは周方向に等間隔に配設される。内カム179bの前端には、ノック棒16bのカム面163bと相互作用するカム受け面278bが形成される。カム面163b及びカム受け面278bは、ノック棒16bが前進するとき、カム受け面278bがカム面163bから軸線方向及び周方向の力を受けるように構成される。このため、ノック棒16bの前進によってカム面163bがカム受け面278bを押圧すると、回転子17bは周方向の力によって周方向に回転する。一方、ノック棒16bは、突起162bが内筒15bの外カム155b又は肉厚部351bに当接するので、周方向の回転が規制される。
内カム179bは、図14(a)に示されるように内筒15bの第1凹部352又は第2凹部353内に収容されているとき、ノック棒16bの前進によって回転子17bが周方向に回転すると、内筒15bの肉厚部351bと軸線方向に係合する。また、内カム179bは、肉厚部351bと軸線方向に係合しているとき、ノック棒16bの前進によって回転子17bが周方向に回転すると、外カム155bから更なる周方向の力を受けることで肉厚部351bとの係合が解除されて第1凹部352又は第2凹部353内に収容される。内カム179bが第1凹部352又は第2凹部353内に収容されるとき、外カム155b及び肉厚部351bは内カム179b間の溝271b内に収容される。すなわち、内筒15b及び回転子17bは、回転子17bがノック棒16bの前進によって周方向に回転すると、軸線方向に互いに係合し又はその係合が解除されるように構成される。
図20(a)〜(c)は、それぞれ、第2ノック部材6bの正面図、右側面図及び斜視図である。第2ノック部材6bは細長の形状を有する。なお、二つの第2ノック部材6bは同一の形状を有する。このことによって、部品の共通化が可能となり、ひいては筆記具1bのコストを削減することができる。
第2ノック部材6bは、前後方向に延在する本体部61bと、本体部61bの前方に形成された嵌合部62bと、本体部61bの後部に形成された操作部63bと、本体部61bの両側に形成された接触部67bとを有する。図13(a)に示されるように、嵌合部62bは第2インク収容管12bと嵌合する。このことによって、第2インク収容管12bは第2ノック部材6bに固定される。図12(a)に示されるように、操作部63bは、筆記具1bの組立状態において、軸筒2bから径方向外側に突出するので、指で操作されることができる。
本体部61bには、後述する第2スプリング22bが当接する付勢面64bが形成される。また、本体部61bの後端には、第2ノック部材6bの突出を第1ノック部材5bの操作によって解除するときに回転子17bの前面によって押圧される第1接触面68bが形成される。第1接触面68bは、接触時に回転子17bの前面から軸線方向及び径方向の力を受けるように構成される。
本体部61bの底面には押圧突起65bが形成される。図13(a)に示されるように、押圧突起65bは、筆記具1bの組立状態において、軸筒2bの径方向内側に突出し且つ軸線方向に延在する。押圧突起65bの前端には、回転子17bのカム受け面278bと相互作用するカム面66bが形成される。カム面66b及びカム受け面278bは、第2ノック部材6bが前進するとき、カム受け面278bがカム面66bから軸線方向及び周方向の力を受けるように構成される。このため、第2ノック部材6bの前進によってカム面66bがカム受け面278bを押圧すると、回転子17bは周方向の力によって周方向に回転する。一方、第2ノック部材6bは、操作部63bが内筒15bのレール257bに当接するので、周方向の回転が規制される。
図14(a)に示されるように、筆記具1bの組立状態において、接触部67bは軸筒2bの略周方向に延在し、二つの第2ノック部材6bの接触部67bは周方向に隣接する。言い換えれば、各第2ノック部材6bの本体部61b及び接触部67bは軸筒2bの全周(360°)のうちの約180°の範囲に延在する。
接触部67bの前端には、突出していない第2筆記体4bの第2ノック部材6bの操作によって第2筆記体4bの突出を解除するときに、突出している第2筆記体4bの第2ノック部材6bを押圧する二つの押圧面69bが形成される。接触部67bの後端には、突出していない第2筆記体4bの第2ノック部材6bの操作によって第2筆記体4bの突出を解除するときに、突出していない第2筆記体4bの第2ノック部材6bによって押圧される二つの第2接触面70bが形成される。押圧面69b及び第2接触面70bは、接触時に互いに軸線方向及び径方向の力を受けるように構成される。
筆記具1bは、さらに、回転子17bに圧入されたパイプ部材19bと、第1スプリング21bと、第2スプリング22bと、第1スプリング21b及び第2スプリング22bを支持するスペーサ18bとを備える。
パイプ部材19bは、中空の円筒形状を有する。パイプ部材19bの前部は回転子17bに圧入される。このことによって、パイプ部材19bは回転子17bに固定される。なお、パイプ部材19bは接着によって回転子17bに固定されてもよい。図13に示されるように、パイプ部材19bの前端は第1スプリング21bによって付勢される。
図21(a)〜(d)は、それぞれ、スペーサ18bの正面図、側面図、斜視図及び底面図である。スペーサ18bは、前軸筒7bに圧入される第1圧入部187bと、後軸筒8bに圧入される第2圧入部188bと、第1圧入部187bと第2圧入部188bとの間に形成された露出部189bと、第2圧入部188bから後方に延在する三つのスプリングガイド(第1スプリングガイド281b及び第2スプリングガイド282b)とを有する。なお、第1圧入部187b及び第2圧入部188bはそれぞれ接着又は螺合によって前軸筒7b及び後軸筒8bに固定されてもよい。
第1圧入部187bは中空の略円筒形状を有し、第2圧入部188bは略円柱形状を有する。第2圧入部188bの後面は第1スプリング21b及び第2スプリング22bを支持する。露出部189bは、軸筒2bと等しい直径を有し、図12に示されるように、前軸筒7b及び後軸筒8bと共に筆記具1bの外周面を構成する。
露出部189b及び第2圧入部188bには三つの貫通孔が形成される。径方向の中心に第1貫通孔184bが形成され、第1貫通孔184bよりも径方向外側に二つの第2貫通孔185bが形成される。第1貫通孔184b及び二つの第2貫通孔185bは径方向において同一直線上に位置する。第1スプリングガイド281bは第1貫通孔184bを周方向に部分的に囲むように形成される。第2スプリングガイド282bは第2貫通孔185bを周方向に部分的に囲むように形成される。第1スプリングガイド281bの軸線方向の長さは第2スプリングガイド282bよりも長い。
第1インク収容管9bは、第1貫通孔184b、パイプ部材19b及び第1スプリングガイド281bを通って延在し、回転子17bに固定される。第2インク収容管12bは、第2貫通孔185b及び第2スプリングガイド282bを通って延在し、第2ノック部材6bに固定される。
第1スプリング21bは、スペーサ18bの第2圧入部188bの後面とパイプ部材19bの前端との間に第1インク収容管9bを周方向に囲むように配設され、パイプ部材19bひいては回転子17b及び第1筆記体3bを後方に付勢する。第2スプリング22bは、スペーサ18bの第2圧入部188bの後面と第2ノック部材6bの付勢面64bとの間に第2インク収容管12bを周方向に囲むように配設され、第2ノック部材6bひいては第2筆記体4bを後方に付勢する。第1スプリング21b及び第2スプリング22bの設置は第1スプリングガイド281b及び第2スプリングガイド282bによって補助される。
以下、第1筆記体3b及び第2筆記体4bが軸筒2bの前端から突出する原理と、第1筆記体3b及び第2筆記体4bの突出が第1ノック部材5b又は第2ノック部材6bによって解除される原理とについて詳細に説明する。
図22(a)及び(b)は、それぞれ、第1筆記体3bが突出しているときの図12(b)のK2−K2線に沿った多芯式筆記具1bの部分正面断面図と、一方の第2筆記体4bが突出しているときの図12(b)のK2−K2線に沿った多芯式筆記具1bの部分正面断面図とである。
最初に第1筆記体3bが軸筒2bの前端から突出する原理について説明する。
没入状態では、図14(a)に示されるように、回転子17bの内カム179bは内筒15bの第1凹部352又は第2凹部353内に収容される。この状態から第1スプリング21bの付勢力に抗してノック棒16bを前進させると、ノック棒16bのカム面163bが回転子17bのカム受け面278bに当接し、回転子17bがノック棒16bと共に前進する。このとき、ノック棒16b及び回転子17bはカム面163b及びカム受け面278bを介して互いに軸線方向及び周方向の力を受ける。その後、内カム179bの後端が肉厚部351bの前端を越えると、回転子17bの周方向の規制が解除されるので、回転子17bは周方向の力によって周方向(前方から見て反時計回り)に回転する。一方、ノック棒16bは、突起162bが内筒15bの外カム155b又は肉厚部351bに当接することによって周方向の回転が規制されるので、周方向に回転しない。
この状態でノック棒16bを離すと、ノック棒16b及び回転子17bは第1スプリング21bの付勢力によって後退する。このとき、周方向に回転した回転子17bの内カム179bの後端は内筒15bの肉厚部351bの前端と軸線方向に係合する。この係合によって回転子17bの後退が妨げられるので、回転子17bに固定された第1筆記体3bは、軸筒2bの前端からの突出状態が維持される。
以下、第1筆記体3bの突出が第1ノック部材5bによって解除される原理について説明する。
突出状態では、回転子17bの内カム179bは内筒15bの肉厚部351bと軸線方向に係合する。この状態から第1スプリング21bの付勢力に抗してノック棒16bを前進させると、ノック棒16bのカム面163bが回転子17bのカム受け面278bに当接し、回転子17bがノック棒16bと共に前進する。このとき、ノック棒16b及び回転子17bはカム面163b及びカム受け面278bを介して互いに軸線方向及び周方向の力を受ける。この結果、回転子17bの内カム179bと内筒15bの肉厚部351bとの軸線方向の係合が解除されるので、回転子17bは周方向の力によって周方向(前方から見て反時計回り)に回転する。一方、ノック棒16bは、突起162bが内筒15bの外カム155b又は肉厚部351bに当接することによって周方向の回転が規制されるので、周方向に回転しない。
この状態でノック棒16bを離すと、ノック棒16b及び回転子17bは第1スプリング21bの付勢力によって後退し、周方向に回転した内カム179bは、内筒15bの外カム155bから更なる周方向の力を受けて、内筒15bの第1凹部352又は第2凹部353内に収容される。このとき、回転子17bに固定された第1筆記体3bも共に後退するので、第1筆記体3bの突出が解除される。
以下、第1筆記体3bの突出が第2ノック部材6bによって解除される原理について説明する。
突出状態では、回転子17bの内カム179bは内筒15bの肉厚部351bと軸線方向に係合する。このとき、図22(a)に示されるように、第2ノック部材6bの押圧突起65bは回転子17bの内カム179bよりも後方に位置し、四つのうち二つの内カム179bの周方向位置は押圧突起65bと等しい。
この状態から第2スプリング22bの付勢力に抗して第2ノック部材6bを前進させると、第2ノック部材6bのカム面66bが回転子17bのカム受け面278bに当接し、回転子17bが第2ノック部材6bと共に前進する。このとき、第2ノック部材6b及び回転子17bはカム面66b及びカム受け面278bを介して互いに軸線方向及び周方向の力を受ける。この結果、回転子17bの内カム179bと内筒15bの肉厚部351bとの軸線方向の係合が解除されるので、回転子17bは周方向の力によって周方向(前方から見て反時計回り)に回転する。一方、第2ノック部材6bは、操作部63bが内筒15bのレール257bに当接することによって周方向の回転が規制されるので、周方向に回転しない。周方向に回転した内カム179bは、内筒15bの外カム155bから更なる周方向の力を受けて、内筒15bの第1凹部352又は第2凹部353内に収容される。このとき、回転子17b及びノック棒16bが後退するので、回転子17bに固定された第1筆記体3bも共に後退し、第1筆記体3bの突出が解除される。
以下、第2筆記体4bが軸筒2bの前端から突出する原理について説明する。
没入状態では、第2ノック部材6bの操作部63bは内筒15bの摺動孔259b及び後軸筒8bの摺動孔81bの後端に位置する。この状態から第2スプリング22bの付勢力に抗して第2ノック部材6bを前進させる。その後、第2ノック部材6bの後端が内筒15bの前端を越えると、第2ノック部材6bの操作部63bは径方向内側に向かって落ち込む。
この状態で第2ノック部材6bを離すと、図22(b)に示されるように、第2スプリング22bの付勢力によって第2ノック部材6bの後端は内筒15bの前端と軸線方向に係合する。この係合によって第2ノック部材6bの後退が妨げられるので、第2ノック部材6bに固定された第2筆記体4bは軸筒2bの前端から突出する。
以下、第2筆記体4bの突出が第1ノック部材5bによって解除される原理について説明する。
突出状態では、第2ノック部材6bは内筒15bと軸線方向に係合する。このとき、図22(b)に示されるように、回転子17bの前面は、第2ノック部材6bの第1接触面68bよりも後方に位置する。
この状態から第1スプリング21bの付勢力に抗してノック棒16bを前進させると、ノック棒16bのカム面163bが回転子17bのカム受け面278bに当接し、回転子17bがノック棒16bと共に前進する。その後、回転子17bの前面が第2ノック部材6bの第1接触面68bに接触すると、第2ノック部材6bの第1接触面68bは、回転子17bの前面から径方向外側の力を受けるので、第2ノック部材6bと内筒15bとの係合が解除される。その後、第2ノック部材6bが第2スプリング22bの付勢力によって後退するので、第2ノック部材6bに固定された第2筆記体4bも共に後退し、第2筆記体4bの突出が解除される。
以下、第2筆記体4bの突出が第2ノック部材6bによって解除される原理について説明する。
突出状態では、第2ノック部材6bは内筒15bと軸線方向に係合する。このとき、突出していない第2筆記体4bの第2ノック部材6bの押圧面69bは、突出している第2筆記体4bの第2ノック部材6bの第2接触面70bよりも後方に位置する。また、押圧面69b及び第2接触面70bは周方向において部分的に重なる。
この状態から第2スプリング22bの付勢力に抗して、突出していない第2筆記体4bの第2ノック部材6bを前進させると、突出していない第2筆記体4bの第2ノック部材6bの押圧面69bが、突出している第2筆記体4bの第2ノック部材6bの第2接触面70bと接触する。このとき、第2接触面70bが押圧面69bから径方向外側の力を受けるので第2ノック部材6bと内筒15bとの係合が解除される。その後、第2ノック部材6bが第2スプリング22bの付勢力によって後退するので、第2ノック部材6bに固定された第2筆記体4bも共に後退し、第2筆記体4bの突出が解除される。
以下、図23〜図33を参照して、本発明の第3実施形態に係る多芯式筆記具について説明する。第3実施形態は、第2筆記体が三本である点で第2実施形態と異なり、構成部品の機能及び構成は第2実施形態と同様である。
最初に、図23〜図25を参照して、本発明の第3実施形態に係る多芯式筆記具の構成及び動作について簡単に説明する。
図23(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の第3実施形態に係る多芯式筆記具1cの正面図及び側面図である。図24(a)及び(b)は、それぞれ、図23(b)のK2−K2線に沿った多芯式筆記具1cの正面断面図と、図23(a)のJ2−J2線に沿った多芯式筆記具1cの側面断面図とである。図25(a)〜(c)は、それぞれ、図24(b)のL2−L2線、M2−M2線及びN2−N2線に沿った多芯式筆記具1cの平面断面図である。
多芯式筆記具1c(以下、単に「筆記具1c」とする)は、軸筒2cと、軸筒2c内に配設された第1筆記体3c及び第2筆記体4cと、第1筆記体3cの後端に配設された第1ノック部材5cと、第2筆記体4cの後端に配設された第2ノック部材6cとを備える。なお、本明細書において、筆記具1cの先端すなわちペン先側を筆記具1cの「前」側と定義し、筆記具1cの軸線方向(長手方向)に沿って筆記具1cのペン先とは反対側を筆記具1cの「後」側と定義する。また、筆記具1cの構成部品についても、筆記具1cの組立状態において、筆記具1cのペン先側を構成部品の「前」側と定義し、筆記具1cの軸線方向に沿って筆記具1cのペン先とは反対側を構成部品の「後」側と定義する。
本実施形態では、第1筆記体3cは一本のボールペンであり、第2筆記体4cは三本のボールペンである。第1筆記体3cは軸筒2cの径方向中心部において軸筒2c内に配設され、第2筆記体4cは第1筆記体3cよりも軸筒2cの径方向外側において軸筒2c内に配設される。三本の第2筆記体4cは、第1筆記体3cを周方向に囲むように、周方向に等間隔に配設される。
第1ノック部材5cは、第1筆記体3cを軸筒2cの前端から選択的に突出させるように構成される。第2ノック部材6cは、第2筆記体4cを軸筒2cの前端から選択的に突出させるように構成される。具体的には、第1ノック部材5cを操作すると、第1筆記体3cが突出し、第2ノック部材6cを操作すると、第2筆記体4cが突出する。第2筆記体4cのペン先は、軸筒2cの内面に沿って径方向内側に移動し、軸筒2cの前端から突出する。このことよって、四本の筆記体のうちの一本を選択的に使用して筆記を行うことができる。
第1筆記体3cの突出は第1ノック部材5c又は第2ノック部材6cの操作によって解除される。第2筆記体4cの突出は第1ノック部材5c又は突出していない筆記体の第2ノック部材6cの操作によって解除される。したがって、第1筆記体3c及び第2筆記体4cの突出を任意の一つのノック部材を操作することによって解除できるので、筆記具1cの操作性が大幅に改善される。
以下、図23〜図32を参照して、筆記具1cの構成部品について詳細に説明する。
図23に示されるように、軸筒2cは、前軸筒7cと、前軸筒7cよりも後方に配設された後軸筒8cとを備える。前軸筒7cと後軸筒8cとは、後述するスペーサ18cを介して連結される。なお、前軸筒7cと後軸筒8cとは第1実施形態のように圧入等によって直接連結されてもよい。
図26(a)〜(c)は、それぞれ、後軸筒8cの正面図、側面図、及び図26(a)のO2−O2線に沿った後軸筒8cの側面断面図である。後軸筒8cの外周面には、第2ノック部材6cが軸線方向に摺動できるように、三つの摺動孔81cが形成される。摺動孔81cは軸線方向に延在する。後軸筒8cの後端には、後述する内筒15cと嵌合する嵌合孔84c及び嵌合溝85cが形成される。
図24(a)に示されるように、第1筆記体3cは、第1インク収容管9c、第1継手10c及び第1チップ11cを備え、第2筆記体4cは、第2インク収容管12c、第2継手13c及び第2チップ14cを備える。第1チップ11cは第1継手10cを介して第1インク収容管9cに連結される。第2チップ14cは第2継手13cを介して第2インク収容管12cに連結される。
第1インク収容管9cと三本の第2インク収容管12cとには、典型的には、それぞれ異なる色のインクが収容される。第1ノック部材5cを第2ノック部材6cよりも後方に配設することで、第1インク収容管9cの長さを第2インク収容管12cよりも長くすることができる。この結果、第1インク収容管9cのインク充填量を第2インク収容管12cの充填量よりも多くすることができる。このため、例えば、第1インク収容管9cに、一般的に使用頻度が高い黒色のインクを収容することで、筆記具1cの寿命を延ばし又は筆記体の交換頻度を少なくすることができる。また、同様の効果を得るために、第1インク収容管9cのインク充填量が第2インク収容管12cの充填量よりも多くなるように、第1インク収容管9cの径方向の長さを第2インク収容管12cよりも長くしてもよい。
第1ノック部材5cは、後軸筒8cに固定された内筒15cと、内筒15c内に配設され且つ内筒15cから後方に突出するノック棒16cと、ノック棒16cの前方に配設された回転子17cとを備える。詳しくは後述するが、ノック棒16cを押圧して回転子17cを回転させることで、第1筆記体3cを軸筒2cの前端から出没させることができる。
図27(a)〜(d)は、それぞれ、内筒15cの正面図、側面図、斜視図、及び図27(a)のP2−P2線に沿った内筒15cの側面断面図である。内筒15cはクリップ部252cと挿入部253cとを有する。クリップ部252cは、細長の形状を有し、内筒15cが軸筒2cに固定されたとき、軸筒2cの外側で略軸線方向に延在する。クリップ部252cの前部には、軸筒2cの径方向内側に突出する玉部254cが設けられる。クリップ部252cの基部には、後軸筒8cの嵌合溝85cと嵌合する嵌合部255cが設けられる。
挿入部253cは中空の略円筒形状を有する。挿入部253cの後部は、内筒15cが軸筒2cに固定されたとき、軸筒2cから露出する。挿入部253cの後部には、軸線方向に延在する貫通孔256cが形成され、ノック棒16cは貫通孔256cを通って内筒15cから後方に突出する。
挿入部253cの外周面には、後軸筒8cの嵌合孔84cと嵌合する六つのレール257cが設けられる。レール257cは挿入部253cの外周面から径方向外側に突出し且つ挿入部253cの後部から前端まで軸線方向に延在する。
挿入部253cには、第2ノック部材6cが軸線方向に摺動できるように、後部から前端まで軸線方向に延在する三つの摺動孔259cが形成される。内筒15cが軸筒2cに固定されたとき、内筒15cの摺動孔259cの周方向位置は軸筒2cの摺動孔81cと等しい。また、第2ノック部材6cが周方向の力を受けると、第2ノック部材6cは、摺動孔259cの側壁を形成するレール257cに当接する。
図28は、図27(b)のQ2−Q2線に沿った内筒15bの挿入部253cの拡大断面図である。挿入部253cは内周面に三つの外カム155cを有する。三つの外カム155cは周方向に等間隔に配設される。挿入部253cは内周面にさらに三つの肉厚部351cを有する。二つの肉厚部351cは周方向に等間隔に配設される。外カム155cと肉厚部351cとは周方向に離間されて交互に配設される。また、外カム155c及び肉厚部351cの径方向の厚さは等しい。外カム155cと肉厚部351cとの間には三つの凹部354が形成される。
凹部354は、後述するノック棒16cの突起162cを収容する。また、凹部354は、図25(a)に示されるように、第1筆記体3cの没入状態において、後述する回転子17cの内カム179cを収容する。
なお、内筒15cは後軸筒8cと一体であってもよい。また、内筒15cは第1実施形態のようにクリップ部252cを有しなくてもよい。
図29(a)〜(d)は、それぞれ、ノック棒16cの正面図、底面図、斜視図、及び図29(a)のR2−R2線に沿ったノック棒16cの断面図である。ノック棒16cは略円柱形状を有する。ノック棒16cの内部には、回転子17cを部分的に収容するための収容空間164cが形成される。筆記具1cの使用者はノック棒16cの後端を指で押圧することによって第1ノック部材5cを操作することができる。
ノック棒16cは、外周面に、径方向外側に突出し且つ軸線方向に延在する三つの突起162cを有する。三つの突起162cは周方向に等間隔に配設される。各突起162cは、ノック棒16cが軸線方向に移動するとき、内筒15cの凹部354内を軸線方向に摺動するように構成される。すなわち、ノック棒16c及び内筒15cは、ノック棒16cの周方向の回転を規制するように構成される。また、ノック棒16cの前端にはカム面163cが全周に亘って形成される。カム面163cは複数の斜面から成る。
図30(a)〜(d)は、それぞれ、回転子17cの正面図、平面図、斜視図、及び図30(a)のS2−S2線に沿った回転子17cの断面図である。回転子17cは、中空の略円筒形状を有し、ノック棒16cの収容空間164cに挿入される挿入部171cと、挿入部171cの前方に配設されたカム受け部275cとを有する。ノック棒16c及び回転子17cは内筒15c内において軸線方向に移動するように構成される。
図24に示されるように、第1インク収容管9cはカム受け部275c内に圧入される。このことによって、第1インク収容管9cは回転子17cに固定される。カム受け部275cの内部には、第1インク収容管9cの後端が当接する第1当接面276cが形成される。また、第1インク収容管9cの通気を確保するための通気孔176cが第1当接面276cから回転子17cの後端まで軸線方向に延在する。また、図24に示されるように、後述するパイプ部材19cもカム受け部275c内に圧入される。このことによって、パイプ部材19cは回転子17cに固定される。カム受け部275cの内部には、パイプ部材19cの後端が当接する第2当接面277cが形成される。
カム受け部275cの外周面には、軸線方向に延在する三つの内カム179c及び溝271cが形成される。三つの内カム179cは周方向に等間隔に配設される。内カム179cの前端には、ノック棒16cのカム面163cと相互作用するカム受け面278cが形成される。カム面163c及びカム受け面278cは、ノック棒16cが前進するとき、カム受け面278cがカム面163cから軸線方向及び周方向の力を受けるように構成される。このため、ノック棒16cの前進によってカム面163cがカム受け面278cを押圧すると、回転子17cは周方向の力によって周方向に回転する。一方、ノック棒16cは、突起162cが内筒15cの外カム155cに当接するので、周方向の回転が規制される。
内カム179cは、図25(a)に示されるように内筒15cの凹部354内に収容されているとき、ノック棒16cの前進によって回転子17cが周方向に回転すると、内筒15cの肉厚部351cと軸線方向に係合する。また、内カム179cは、肉厚部351cと軸線方向に係合しているとき、ノック棒16cの前進によって回転子17cが周方向に回転すると、肉厚部351cとの係合が解除され、その後、外カム155cから更なる周方向の力を受けて凹部354内に収容される。内カム179cが凹部354内に収容されるとき、外カム155c及び肉厚部351cは内カム179c間の溝271c内に収容される。すなわち、内筒15c及び回転子17cは、回転子17cがノック棒16cの前進によって周方向に回転すると、軸線方向に互いに係合し又はその係合が解除されるように構成される。
図31(a)〜(c)は、それぞれ、第2ノック部材6cの正面図、右側面図及び斜視図である。第2ノック部材6cは細長の形状を有する。なお、三つの第2ノック部材6cは同一の形状を有する。このことによって、部品の共通化が可能となり、ひいては筆記具1cのコストを削減することができる。
第2ノック部材6cは、前後方向に延在する本体部61cと、本体部61cの前方に形成された嵌合部62cと、本体部61bの後部に形成された操作部63cと、本体部61cの両側に形成された接触部67cとを有する。図24(b)に示されるように、嵌合部62cは第2インク収容管12cと嵌合する。このことによって、第2インク収容管12cは第2ノック部材6cに固定される。図23に示されるように、操作部63cは、筆記具1cの組立状態において、軸筒2cから径方向外側に突出するので、指で操作されることができる。
本体部61cには、後述する第2スプリング22cが当接する付勢面64cが形成される。また、本体部61cの後端には、第2ノック部材6cの突出を第1ノック部材5cの操作によって解除するときに回転子17cの前面によって押圧される第1接触面68cが形成される。第1接触面68cは、接触時に回転子17cの前面から軸線方向及び径方向の力を受けるように構成される。
本体部61cの底面には押圧突起65cが形成される。図24(b)に示されるように、押圧突起65cは、筆記具1cの組立状態において、軸筒2cの径方向内側に突出し且つ軸線方向に延在する。押圧突起65cの前端には、回転子17cのカム受け面278cと相互作用するカム面66cが形成される。カム面66c及びカム受け面278cは、第2ノック部材6cが前進するとき、カム受け面278cがカム面66cから軸線方向及び周方向の力を受けるように構成される。このため、第2ノック部材6cの前進によってカム面66cがカム受け面278cを押圧すると、回転子17cは周方向の力によって周方向に回転する。一方、第2ノック部材6cは、操作部63cが内筒15cのレール257cに当接するので、周方向の回転が規制される。
図25(a)に示されるように、筆記具1cの組立状態において、接触部67cは軸筒2cの略周方向に延在し、三つの第2ノック部材6cの接触部67cは周方向に互いに隣接する。言い換えれば、各第2ノック部材6cの本体部61c及び接触部67cは軸筒2cの全周(360°)のうちの約120°の範囲に延在する。
接触部67cの前端には、突出していない第2筆記体4cの第2ノック部材6cの操作によって第2筆記体4cの突出を解除するときに、突出している第2筆記体4cの第2ノック部材6cを押圧する二つの押圧面69cが形成される。接触部67cの後端には、突出していない第2筆記体4cの第2ノック部材6cの操作によって第2筆記体4cの突出を解除するときに、突出していない第2筆記体4cの第2ノック部材6cによって押圧される二つの第2接触面70cが形成される。押圧面69c及び第2接触面70cは、接触時に互いに軸線方向及び径方向の力を受けるように構成される。
筆記具1cは、さらに、回転子17cに圧入されたパイプ部材19cと、第1スプリング21cと、第2スプリング22cと、第1スプリング21c及び第2スプリング22cを支持するスペーサ18cとを備える。
パイプ部材19cは、中空の円筒形状を有する。パイプ部材19cの前部は回転子17cに圧入される。このことによって、パイプ部材19cは回転子17cに固定される。なお、パイプ部材19cは接着によって回転子17cに固定されてもよい。図24に示されるように、パイプ部材19cの前端は第1スプリング21cによって付勢される。
図32(a)〜(d)は、それぞれ、スペーサ18cの正面図、側面図、斜視図及び底面図である。スペーサ18cは、前軸筒7cに圧入される第1圧入部187cと、後軸筒8cに圧入される第2圧入部188cと、第1圧入部187cと第2圧入部188cとの間に形成された露出部189cと、第2圧入部188cから後方に延在する四つのスプリングガイド(第1スプリングガイド281c及び第2スプリングガイド282c)とを有する。なお、第1圧入部187c及び第2圧入部188cはそれぞれ接着又は螺合によって前軸筒7c及び後軸筒8cに固定されてもよい。
第1圧入部187cは中空の略円筒形状を有し、第2圧入部188cは円柱形状を有する。第2圧入部188cの後面は第1スプリング21c及び第2スプリング22cを支持する。露出部189cは、軸筒2cと等しい直径を有し、図23に示されるように、前軸筒7c及び後軸筒8cと共に筆記具1cの外周面を構成する。
露出部189c及び第2圧入部188cには四つの貫通孔が形成される。径方向の中心に第1貫通孔184cが形成され、第1貫通孔184cよりも径方向外側に三つの第2貫通孔185cが形成される。三つの第2貫通孔185cは、第1貫通孔184cを周方向に囲むように、周方向に等間隔に配設される。第1スプリングガイド281cは第1貫通孔184cを周方向に部分的に囲むように形成される。第2スプリングガイド282cは第2貫通孔185cを周方向に部分的に囲むように形成される。第1スプリングガイド281cの軸線方向の長さは第2スプリングガイド282cよりも長い。
第1インク収容管9cは、第1貫通孔184c、パイプ部材19c及び第1スプリングガイド281cを通って延在し、回転子17cに固定される。第2インク収容管12cは、第2貫通孔185c及び第2スプリングガイド282cを通って延在し、第2ノック部材6cに固定される。
第1スプリング21cは、スペーサ18cの第2圧入部188cの後面とパイプ部材19cの前端との間に第1インク収容管9cを周方向に囲むように配設され、パイプ部材19cひいては回転子17c及び第1筆記体3cを後方に付勢する。第2スプリング22cは、スペーサ18cの第2圧入部188cの後面と第2ノック部材6cの付勢面64cとの間に第2インク収容管12cを周方向に囲むように配設され、第2ノック部材6cひいては第2筆記体4cを後方に付勢する。第1スプリング21c及び第2スプリング22cの設置は第1スプリングガイド281c及び第2スプリングガイド282cによって補助される。
以下、第1筆記体3c及び第2筆記体4cが軸筒2cの前端から突出する原理と、第1筆記体3c及び第2筆記体4cの突出が第1ノック部材5c又は第2ノック部材6cによって解除される原理とについて詳細に説明する。
図33(a)及び(b)は、それぞれ、第1筆記体3bが突出しているときの図23(a)のJ2−J2線に沿った多芯式筆記具1cの部分側面断面図と、一つの第2筆記体4cが突出しているときの図23(a)のJ2−J2線に沿った多芯式筆記具1cの部分側面断面図とである。
最初に第1筆記体3cが軸筒2cの前端から突出する原理について説明する。
没入状態では、図25(a)に示されるように、回転子17cの内カム179cは内筒15cの凹部354内に収容される。この状態から第1スプリング21cの付勢力に抗してノック棒16cを前進させると、ノック棒16cのカム面163cが回転子17cのカム受け面278cに当接し、回転子17cがノック棒16cと共に前進する。このとき、ノック棒16c及び回転子17cはカム面163c及びカム受け面278cを介して互いに軸線方向及び周方向の力を受ける。その後、内カム179cの後端が肉厚部351cの前端を越えると、回転子17cの周方向の規制が解除されるので、回転子17cは周方向の力によって周方向(前方から見て反時計回り)に回転する。一方、ノック棒16cは、突起162cが内筒15cの外カム155cに当接することによって周方向の回転が規制されるので、周方向に回転しない。
この状態でノック棒16cを離すと、ノック棒16c及び回転子17cは第1スプリング21cの付勢力によって後退する。このとき、周方向に回転した回転子17cの内カム179cの後端の一部は内筒15cの肉厚部351cの前端と軸線方向に係合する。この係合によって回転子17cの後退が妨げられるので、回転子17cに固定された第1筆記体3cは、軸筒2cの前端からの突出状態が維持される。
以下、第1筆記体3cの突出が第1ノック部材5cによって解除される原理について説明する。
突出状態では、回転子17cの内カム179cは内筒15cの肉厚部351cと軸線方向に係合する。この状態から第1スプリング21cの付勢力に抗してノック棒16cを前進させると、ノック棒16cのカム面163cが回転子17cのカム受け面278cに当接し、回転子17cがノック棒16cと共に前進する。このとき、ノック棒16c及び回転子17cはカム面163c及びカム受け面278cを介して互いに軸線方向及び周方向の力を受ける。この結果、回転子17cの内カム179cと内筒15cの肉厚部351cとの軸線方向の係合が解除されるので、回転子17cは周方向の力によって周方向(前方から見て反時計回り)に回転する。一方、ノック棒16cは、突起162cが内筒15cの外カム155cに当接することによって周方向の回転が規制されるので、周方向に回転しない。
この状態でノック棒16cを離すと、ノック棒16c及び回転子17cは第1スプリング21cの付勢力によって後退し、周方向に回転した内カム179cは、内筒15cの外カム155cから更なる周方向の力を受けて、内筒15cの凹部354内に収容される。このとき、回転子17cに固定された第1筆記体3cも共に後退するので、第1筆記体3cの突出が解除される。
以下、第1筆記体3cの突出が第2ノック部材6cによって解除される原理について説明する。
突出状態では、回転子17cの内カム179cの一部は内筒15cの肉厚部351cと軸線方向に係合する。このとき、図33(a)に示されるように、第2ノック部材6cの押圧突起65cは回転子17cの内カム179cよりも後方に位置する。また、内カム179cは周方向において押圧突起65cと部分的に重なる。
この状態から第2スプリング22cの付勢力に抗して第2ノック部材6cを前進させると、第2ノック部材6cのカム面66cが回転子17cのカム受け面278cに当接し、回転子17cが第2ノック部材6cと共に前進する。このとき、第2ノック部材6c及び回転子17cはカム面66c及びカム受け面278cを介して互いに軸線方向及び周方向の力を受ける。この結果、回転子17cの内カム179cと内筒15cの肉厚部351cとの軸線方向の係合が解除されるので、回転子17cは周方向の力によって周方向(前方から見て反時計回り)に回転する。一方、第2ノック部材6cは、操作部63cが内筒15cのレール257cに当接することによって周方向の回転が規制されるので、周方向に回転しない。周方向に回転した内カム179cは、内筒15cの外カム155cから更なる周方向の力を受けて、内筒15cの凹部354内に収容される。このとき、回転子17c及びノック棒16cが後退するので、回転子17cに固定された第1筆記体3cも共に後退し、第1筆記体3cの突出が解除される。
以下、第2筆記体4cが軸筒2cの前端から突出する原理について説明する。
没入状態では、第2ノック部材6cの操作部63cは内筒15cの摺動孔259c及び後軸筒8cの摺動孔81cの後端に位置する。この状態から第2スプリング22cの付勢力に抗して第2ノック部材6cを前進させる。その後、第2ノック部材6cの後端が内筒15cの前端を越えると、第2ノック部材6cの操作部63cは径方向内側に向かって落ち込む。
この状態で第2ノック部材6cを離すと、第2スプリング22cの付勢力によって第2ノック部材6cの後端は内筒15cの前端と軸線方向に係合する。この係合によって第2ノック部材6cの後退が妨げられるので、第2ノック部材6cに固定された第2筆記体4cは軸筒2cの前端から突出する。
以下、第2筆記体4cの突出が第1ノック部材5cによって解除される原理について説明する。
突出状態では、第2ノック部材6cは内筒15cと軸線方向に係合する。このとき、回転子17cの前面は、第2ノック部材6cの第1接触面68cよりも後方に位置する。
この状態から第1スプリング21cの付勢力に抗してノック棒16cを前進させると、ノック棒16cのカム面163cが回転子17cのカム受け面278cに当接し、回転子17cがノック棒16cと共に前進する。その後、回転子17cの前面が第2ノック部材6cの第1接触面68cに接触すると、第2ノック部材6cの第1接触面68cは、回転子17cの前面から径方向外側の力を受けるので、第2ノック部材6cと内筒15cとの係合が解除される。その後、第2ノック部材6cが第2スプリング22cの付勢力によって後退するので、第2ノック部材6cに固定された第2筆記体4cも共に後退し、第2筆記体4cの突出が解除される。
以下、第2筆記体4cの突出が第2ノック部材6cによって解除される原理について説明する。
突出状態では、第2ノック部材6cは内筒15cと軸線方向に係合する。このとき、突出していない第2筆記体4cの第2ノック部材6cの押圧面69cは、突出している第2筆記体4cの第2ノック部材6cの第2接触面70cよりも後方に位置する。また、押圧面69c及び第2接触面70cは周方向において部分的に重なる。
この状態から第2スプリング22cの付勢力に抗して、突出していない第2筆記体4cの第2ノック部材6cを前進させると、突出していない第2筆記体4cの第2ノック部材6cの押圧面69cが、突出している第2筆記体4cの第2ノック部材6cの第2接触面70cと接触する。このとき、第2接触面70cが押圧面69cから径方向外側の力を受けるので第2ノック部材6cと内筒15cとの係合が解除される。その後、第2ノック部材6cが第2スプリング22cの付勢力によって後退するので、第2ノック部材6cに固定された第2筆記体4cも共に後退し、第2筆記体4bの突出が解除される。
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、第1筆記体はボールペンの代わりにシャープペンシルであってもよい。この場合、弾性力の異なる二種類のスプリングで第1筆記体を付勢することによって、シャープペンシルの芯の繰り出しを可能としつつ、第1筆記体の突出を第1ノック部材で解除することができる。また、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態の各特徴は、任意に組み合わせて実施可能である。