JP2015208768A - 転造工具の表面処理 - Google Patents

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Abstract

【課題】被加工物の滑りを抑制できる転造工具を提供すること。【解決手段】転造歯形面2にはコーティング素材がPVD処理によりコーティングされることでコーティング層が形成されるので、表面硬さを高くして、耐摩耗性の向上を図ることができる。一方で、かかるコーティング層では摩擦係数が低くなるところ、その表面にはドロップレット4が分散配置されるので、ドロップレット4を被加工物の表面に食い込ませて、被加工物の滑りを抑制できる。【選択図】図1

Description

本発明は、転造工具の表面処理に関するものである。
転造工具の耐摩耗性の向上を図る技術として窒化処理を母材の表面に施すものが知られている(特許文献1)。かかる窒化処理によれば、例えば、高速度鋼やダイス鋼の表面に窒素を拡散させることで、表面硬さを向上させるが、最大1400HV程度の表面硬度であり、耐摩耗性の向上を十分に図ることができなかった。
一方、TiNをCVD処理により母材の表面にコーティングすることで、最大で1700HV程度の表面硬さを確保して、耐摩耗性を向上させることができるが、コーティング温度が高速度鋼やダイス鋼の焼き戻し温度を越えるため、母材の硬度が低下する。そのため、母材とコーティング層との間の硬度の差が大きくなり、コーティング層の剥離が生じやすくなるため、耐久性が十分ではなかった。
これに対し、PVD処理を採用することで、比較的低温でのコーティングが可能となるため、母材の硬度が低下することを抑制でき、コーティング層の剥離を生じ難くできる。
特開2002−192282号公報(例えば、段落0013など)
しかしながら、上述したPVD処理によるコーティングでは、コーティング層の摩擦係数が低いため、被加工物に滑りが生じるという問題点があった。被加工物に滑りが生じる場合には、転造工具を被加工物に押し付けて転造加工を行うことが必要となるため、転造工具の耐久性の低下を招く。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、被加工物の滑りを抑制できる転造工具を提供することを目的とする。
この目的を達成するために請求項1記載の転造工具は、被加工物を塑性変形させて所定形状を転造する転造面を備えた転造工具であって、前記転造面には、コーティング素材がPVD処理によりコーティングされることでコーティング層が形成されると共に、そのコーティング層の表面にドロップレットが分散配置される。
請求項2記載の転造工具は、請求項1記載の転造工具において、前記PVD処理には、アークイオンプレーティング法が用いられると共に、周期律表の第3周期および第4周期のうちの少なくとも一つの金属元素とAlとからなりAl含有量が30wt%以上かつ75wt%以下に設定されるターゲットが使用される。
請求項3記載の転造工具は、請求項2記載の転造工具において、前記コーティング層の厚み寸法が0.5μm以上かつ4μm以下の範囲に設定される。
請求項4記載の転造工具は、請求項1から3のいずれかに記載の転造工具において、前記転造面は、食付き部およびその食付き部の転造方向後端側に連設される仕上げ部を少なくとも備え、前記ドロップレットは、前記転造面のうちの食付き部に分散配置される。
請求項1記載の転造工具によれば、転造面にはコーティング素材がPVD処理によりコーティングされることでコーティング層が形成されるので、表面硬さを高くして、耐摩耗性の向上を図ることができる。
一方で、かかるコーティング層では摩擦係数が低くなるところ、その表面にはドロップレットが分散配置されるので、ドロップレットを被加工物の表面に食い込ませて、被加工物の滑りを抑制できる。特に、ドロップレットは、三角錐形状であるので、被加工物の表面に対する食い込み性および離反性の両立を図ることができ、転造性能の向上を図ることができる。
請求項2記載の転造工具によれば、請求項1記載の転造工具の奏する効果に加え、PVD処理には、アークイオンプレーティング法が用いられると共に、周期律表の第3周期および第4周期のうちの少なくとも一つの金属元素とAlとからなりAl含有量が30wt%以上かつ75wt%以下に設定されるターゲットが使用されるので、コーティング層の表面に三角錐形状のドロップレットを発生させやすくできる。その結果、転造性能の向上を図ることができる。
請求項3記載の転造工具によれば、請求項2記載の転造工具の奏する効果に加え、コーティング層の厚み寸法が0.5μm以上かつ4μm以下の範囲に設定されるので、ドロップレットを転造加工に適した大きさとして、転造性能の向上を図ることができる。
即ち、コーティング層の厚み寸法が0.5μmよりも小さい場合には、ドロップレットを十分に分散配置させることができず、被加工物の滑りを十分に抑制することができない一方、コーティング層の厚み寸法が4μmよりも大きい場合には、ドロップレットの数が過大となり、転造抵抗が増加する。
請求項4記載の転造工具によれば、請求項1から3のいずれかに記載の転造工具の奏する効果に加え、ドロップレットは、転造面のうちの食付き部に分散配置されるので、食付き部を転動される被加工物の滑りを抑制して、転造精度の向上を図ることができる。一方、仕上げ部には、ドロップレットが非形成とされるので、PVD処理によるコーティング層の表面が平滑であるという特性を活かして、転造抵抗の低減を図ると共に、被加工物の転造面の平滑化を得ることができる。
(a)は、本発明の一実施形態である転造工具の正面図であり、(b)は、転造工具の側面図である。 (a)は、食付き部の正面図であり、(b)は、図2(a)のIIb部を拡大して示した転造工具の部分拡大正面図である。 転造工具の食付き部を拡大視した部分拡大正面斜視図である。 工具寿命試験の試験結果を示した表である。
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態である転造工具1の正面図であり、図1(b)は、転造工具1の側面図である。
転造工具1は、円柱状の軸状素材(以下、被加工物と称す。)の外周面を塑性変形させることにより複数条の歯形を転造する為の工具であり、この転造加工は、被加工物を一対の転造工具1の対向面間に挟持した状態で行われる。なお、図1では、転造加工を行う一対の転造工具1のうち、転造盤(図示せず)に固定される一方の転造工具1を図示しており、かかる一方の転造工具1に対して平行移動される他方の転造工具1の図示を省略している。
転造工具1は、転造に適した合金工具鋼、冷間ダイス鋼または高速度工具鋼等の金属材料から略直方体状に形成されており、その一面(図1(a)紙面手前側、(b)上側)には、被加工物の外周面に複数条の歯形の転造を行う転造歯形面2が設けられている。この転造歯形面2には、後述するPVD処理によりコーティング層が形成され、転造工具1の転造方向始端側(図1(a),(b)右側)から終端側(図1(a),(b)左側)へ向けて、食付き部2a、仕上げ部2bおよび逃げ部2cが順に連続して設けられている。
食付き部2aは、転造工具1の転造歯形面2を被加工物の外周面に食い付かせる為の部位である。この食付き部2aは、転造工具1の転造方向始端側(図1(a),(b)右側)から仕上げ部2b側(図1(a),(b)左側)へ向けて所定の傾斜角κ1で上昇傾斜して形成されており、また、この食付き部2aの表面には、後述するドロップレット4(図3参照)が形成されることによる滑り止め加工が施されている。よって、食付き部2aは、被加工物を滑動させることなく、その食付き部2aに刻設された複数の加工歯3を被加工物の外周面へ徐々に食い付かせることができる。
仕上げ部2bは、食付き部2aによって被加工物に転造された複数条の歯形を仕上げるための部位であり、転造工具1の下端面(図1(b)下側)に対して略平行に形成されている。また、逃げ部2cは、仕上げ部2bにより仕上げられた被加工物を転造工具1の転造歯形面2から排出するための部位である。この逃げ部2cは、仕上げ部2bの終端から転造工具1の転造方向終端側(図1(b)左側)へ向けて所定の傾斜角κ2で下降傾斜して形成されている。
次に、図2及び図3を参照して転造歯形面2の食付き部2aについて説明する。図2(a)は、食付き部2aの正面図である。なお、図2(a)では、転造工具1の長手方向の一部が省略して図示されている。
食付き部2aには、図2(a)に示すように、複数の加工歯3が刻設されている。この加工歯3は、被加工物の外周寸法に対応した一定のピッチを有しつつ転造方向(図2(a)左右方向)へ向けて連続して刻設されており、また、転造方向に対して略直交する方向(図2(a)上下方向)へ列設された状態で刻設されている。被加工物は、かかる食付き部2a(仕上げ部2b及び逃げ部2c)上を転造方向始端側から終端側へ向けて相対的に転動移動することにより、その外周面に複数条の歯形が転造される。
図2(b)は、図2(a)のIIb部を拡大して示した転造工具1の部分拡大正面図であり、図3は、転造工具1の食付き部2aを拡大視した部分拡大正面斜視図である。なお、図3では、拡大視されたドロップレット4が模式図で図示される。食付き部2aの表面には、図2(b)及び図3に示すように、多数のドロップレット4が形成される。
ドロップレット4は、転造工具1に施されたコーティング層の表面から三角錐形状に凸設される粒子である。このドロップレット4は、PVD処理によりコーティングを施す際の副産物として形成されるものであり、コーティング層の厚み寸法が増大するほど形成頻度が高くなると共に、個々の外形も大きくなる。ここで、コーティング層の厚み寸法は、0.5μm以上かつ4μm以下に設定されることが好ましい。これにより、ドロップレット4が転造加工に適した大きさ及び頻度で形成され、転造工具1の転造性能の向上を図ることができる。
即ち、コーティング層の厚み寸法が0.5μmよりも小さい場合には、ドロップレット4が小さく、かつ十分に分散配置させることができないために、被加工物の滑りを十分に抑制することができない。一方、コーティング層の厚み寸法が4μmよりも大きい場合には、ドロップレットの数が過大となり、転造抵抗が増加する。
本実施形態では、コーティング層の厚み寸法が2.2μmに設定される。この場合、転造工具1の食付き部2aの表面に形成される多数のドロップレット4は、食付き部2aの面積に対して15%〜40%程度の面積率(ドロップレット4の底面積の総和と食付き部2aの面積とを比較)で形成されると共に、転造工具1の表面に略均一に形成される(図2(b)参照)。
また、ドロップレット4は、最大のもので、底面の大きさが外接円直径で8μm、高さが4μmであり、大多数は底面の大きさが外接円直径で約3μm、高さが1.5μmに形成される(図3参照)。このように、ドロップレット4は小さいため、ドロップレット4により被加工物の延性が低下することを抑制できる。なお、後述するドロップレット4の形成メカニズムから、コーティング層の厚み寸法が増加すれば、それに比例してドロップレットの底面の大きさ及び高さが増加する。
ここで、転造工具1に窪みを形成することで滑り止め加工を行うことも考えられる。しかし、この場合、窪み部分で応力集中が生じ、転造工具1に亀裂が生じやすいという問題点があった。一方、本実施形態における滑り止め加工は、転造工具1に凸部を形成するものであるので、転造工具1に加えられる応力が過多となる場合でも滑り止め加工部分(本実施形態におけるドロップレット4)がクラックの起点となることを抑制することができる。
次いで、ドロップレット4の製造方法について説明する。ドロップレット4の製造方法は、アークイオンプレーディング法でPVD処理を行う際に使用するターゲットを製造する準備工程と、製造されたターゲットを用いてPVD処理を行う処理工程と、を主に備える。
まず、準備工程では、周期律表の第3周期および第4周期のうちの少なくとも一つの金属元素とAlとからなるターゲットがHIP製法(熱間等方圧加圧法)で形成される。なお、HIP製法とは、高温と等方的な圧力とを被処理体に同時に加えて処理するプロセスであって、本実施形態ではArガスを圧力媒体として等方的な圧力をTi及びAlを含む粉体に加えることで、TiAl合金から形成されるターゲットが製造される。
なお、ターゲットは、Al含有量が30wt%以上かつ75wt%以下に設定されることが好ましく、特に40wt%以上かつ60wt%以下に設定されることが好ましい。これにより、Alと他の金属元素との間にアークを集中させることができるので、後述するPVD処理において、転造工具1の表面にドロップレット4が形成されやすくすることができる。本実施形態では、ターゲットはAl含有量が50wt%かつTi含有量が50wt%に設定される。次いで、準備工程に引き続いて行われる処理工程について説明する。
処理工程は、アークイオンプレーディング装置の内部で行われる。そのアークイオンプレーディング装置は、装置内を真空状態に形成可能な箱状の装置であって、アーク放電により金属イオンを発生させるターゲットと、転造工具1を回転させると共に負に帯電させる回転テーブルと、内部に導入される反応ガスの通路である反応ガス導入孔と、を主に備える。
処理工程では、まず転造工具1を回転テーブルに乗せ、アークイオンプレーディング装置の内部を真空状態にした後で、転造工具1を加熱すると共に、転造工具1を負に帯電させる。次いで、回転テーブルを回転させることで転造工具1を回転させながら、反応ガス導入孔から窒素ガスを導入させると共に、ターゲットをアーク放電によって蒸発させることでTiやAlの金属イオンを発生させる。そして、正に帯電した窒素ガスや金属イオンが、負に帯電している転造工具1に引き寄せられ、転造工具1から電子を受け取ることで転造工具1にTiAlNから形成されるコーティング層(以下「TiAlNコーティング」と称す)が形成される。
本実施形態では、TiAlNコーティングが2段階で形成される。まず、第1段階で、転造工具1の食付き部2aにマスクを貼り付けた状態で転造工具1の仕上げ部2b及び逃げ部2cにPVD処理が施されることでTiAlNコーティングが形成される。このTiAlNコーティングが形成されることで、転造工具1の表面硬さ及び対摩耗性は向上するが、転造工具1の摩擦係数が低下する。それに対応する滑り止め加工を行うために、続く第2段階で、食付き部2aに貼り付けられたマスクは剥がされると共に仕上げ部2b及び逃げ部2cにマスクが貼り付けられ、その状態でPVD処理が施されることで、TiAlNコーティング及びドロップレット4が食付き部2aに形成される。なお、上述した第1段階と第2段階とは、順番が逆転しても良い。
次いで、ドロップレット4の形成メカニズムについて説明する。上述した処理工程において、ターゲットをアーク放電によって加熱する際に、TiとAlとの境界にアークが集中することで、蒸発前のAlが塊のまま噴出され、その噴出されたAlの塊が転造工具1に付着する。その付着したAlの塊に、新たにAlやTiAlが付着することで、三角錐形状のドロップレット4が形成される。
ドロップレット4の大きさは、ドロップレット4の核となるAlの塊がどの段階で転造工具1に付着するかにより変化する。即ち、上述した処理工程の初期段階で転造工具1に付着したAlの塊を核として成長したドロップレット4は大きく成長し、処理工程の終盤で転造工具1に付着したAlの塊を核として成長したドロップレット4は小さなものとなる。そのため、処理工程においてAlの塊を転造工具1に付着させるタイミングを調整することで、ドロップレット4の大きさ(底面の大きさ、高さ)を調整することができる。
ここで、本実施形態における処理工程の第2段階では、アーク放電の条件がターゲットからAlを塊として噴出させやすい条件に設定される。一方、処理工程の第1段階では、アーク放電の条件がターゲットからAlを塊として噴出させにくい(蒸発させやすい)条件に設定される。
これにより、転造歯形面2の食付き部2aにドロップレット4が形成されやすくすることができるので、滑り止め機能を向上させることができる。また、仕上げ部2b及び逃げ部2cにドロップレット4が形成されることを抑制できるので、TiAlNコーティングが平滑であるという特性を活かして、転造抵抗の低減を図ると共に、被加工物の転造面を平滑化することができる。即ち、滑り止め機能の向上と転造抵抗の抑制とを両立することができる。
なお、ドロップレット4と同一形状かつ同一姿勢(高さ方向に先細りした三角錐形状)の凸部を他の方法で形成することは困難である。例えば、三角錐形状の粒子を転造工具1に打ち付けて凸部を形成する場合、三角錐形状の粒子の姿勢を操作することは困難なので(例えば、高さ方向に先端を向ける姿勢や、高さ方向に底面を向ける姿勢を取り得る)、転造工具1に形成される凸部の形状がまばらになる。一方で、本実施形態によれば、ドロップレット4は、転造工具1に付着されたAlの塊を核として高さ方向(図2(b)紙面手前方向)に成長するため、ドロップレット4の形状を高さ方向に先細りした三角錐形状にしやすくすることができる。
次いで、図4を参照して、上述のように構成された転造工具1を用いて行った工具寿命試験の結果について説明する。図4は、工具寿命試験の試験結果を示した表である。この工具寿命試験は、転造工具1の寿命を計測する試験であり、被加工物に転造したスプラインのオーバーピン径のばらつきが予め定めた基準値を越えた場合に寿命と判定するものである。ここで、転造工具1は、上述のように、食付き部2aに施された滑り止め加工が摩耗すると、被加工物を転造加工時に滑動させてしまい、かかる被加工物に転造されるスプラインのオーバーピン径が悪化する。よって、以下に説明する工具寿命試験は、転造工具1に施された滑り止め加工の耐久試験と言い替えることができる。
寿命試験では、本発明のTiAlNコーティングが厚み寸法2.2μmで形成された転造工具1(以下「本発明品A」と称す。)と、コーティングが施されていない従来の転造工具(以下、「従来品B」と称す。)とを用いて行った。なお、本発明品Aと従来品Bとの差異は、TiAlNコーティングが形成されているか否かのみであり、その他の形状や寸法、材質などは同一である。また、被加工物は、ステンレス(SUS301)から形成される円柱状の軸状素材であって、転造加工によりM10×1.5のボルト形状が形成される。
なお、寿命試験では、被加工物3000本の連続転造加工が終了する毎に最終転造品10本を抜き取り、かかる最終転造品10本を測定したオーバーピン径のばらつきの平均値が基準値を満たしているか否かにより寿命を判定した。
まず、転造加工本数15000本の時点では、本発明品A及び従来品Bともに、良好な精度でスプラインを被加工物に転造しており、転造加工本数18000本の時点においてもほぼ同様の結果であった。
次いで、転造加工本数21000本の時点では、従来品Bにより転造された転造品の測定結果が基準値を越えており、従来品Bが寿命に達した。なお、従来品Bは、転造加工本数24000本まで試験を続行したが、転造品の測定結果が大幅に悪化しており、また、その食付き部の表面は、目視により確認できるほど摩耗が進行していた。
一方、本発明品Aは、転造加工本数が36000本に達した時点においても、転造品の測定結果は基準値を満たしており、その後、転造加工本数39000本の時点で、その寿命が確認された。また、この時点においても、PVD処理により形成されたコーティングに剥離は認められず、ドロップレット4が食付き部2aの表面へ強固に密着して形成されていることも確認された。
試験結果から、本発明品Aは、従来品Bに比較して工具寿命が180%向上した。ここで、本発明品Aは、食付き部2aの表面にPVD処理によりTiAlNコーティングが形成されることで転造工具1の耐摩耗性が向上される。更に、TiAlNコーティングに多数のドロップレット4が形成されることで、食付き部2aの滑り止め機能が向上される。これらTiAlNコーティングとドロップレット4とが相乗効果を生じ、工具寿命が大幅に向上されたと考えられる。
即ち、例えば、転造工具1にTiAlNコーティングが形成されるのみで、ドロップレット4のような滑り止め機能を有する部分が形成されないと、転造時に被加工物と転造工具1との間に滑りが生じる。この場合、被加工物の滑りを抑えるために、食付き部2aにおいて転造工具1から被加工物へ与えられる圧力を増強させる必要が生じ(例えば、傾斜角κ1を小さくする)、転造時に転造工具1に与えられる負荷が過大となる。そのため、TiAlNコーティングが早期に剥がれることとなり、転造工具1の工具寿命を短くしていた。
一方、本発明品Aは、ドロップレット4が三角錐形状に凸設されるため、被加工物に食付きやすく、かつ被加工物から抜け(剥がれ)やすい。即ち、ドロップレット4が先端へ行くにつれて先細りする形状となるため、被加工物の表面に転造歯形面2を容易に食付かせることができると共に、被加工物から転造歯形面2を離間させる際の抵抗を抑制することができる。これにより、転造加工時の被加工物の滑りを抑制することができると共に、被加工物の離反性を向上させることができる。よって、転造加工時に被加工物が食付き部2a上を滑動してしまうことがないので、転造工具1と被加工物との間に生じる圧力を適正に保つことができる。従って、TiAlNコーティングの剥離を抑制できるため、転造工具1の工具寿命を向上させることができる。
また、溶射などで転造工具1に塊を配設することで滑り止め加工を施す場合、溶射により配設される塊と被加工物との離反性が低いため、転造抵抗を大きくしたり、被加工物の表面を粗くしたりするという問題点があった。一方、本実施形態のドロップレット4は、上述したように被加工物の離反性が高いため、滑り止め機能を確保しながら、転造抵抗を小さくしたり、被加工物の表面が粗くなることを抑制したりすることができる。
なお、上述したように、ドロップレット4は三角錐形状に凸設されるため、加工歯3のドライブサイド(転造時の被加工物に対する向かい面側)に形成されるドロップレット4を特に被加工物に食付きやすくすることができる。そのため、加工歯3のコーストサイド(転造時の被加工物に対する追い面側)に形成されるドロップレット4に比較してドライブサイドに形成されるドロップレット4の形成頻度を高くしたり、ドロップレット4を大きくしたりすることにより、転造時の滑り止め機能を向上させることができる。
また、加工歯3のコーストサイドに形成されるドロップレット4を特に被加工物から抜け(剥がれ)やすくすることができる。これは、ドロップレット4が先細りする形状(三角錐形状)に形成されること及びドロップレット4の高さが4μm以下に設定されることによる。そのため、加工歯3のコーストサイドにおいて、ドロップレット4の剥離が抑制され、ドロップレット4による滑り止め機能の耐久性を向上させることができると共に被加工物の表面が粗くなることを抑制することができる。
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施形態では、Ti及びAlを含むターゲットを使用する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、Ti、Al、Cr、B及びSiのいずれか一種または二種以上を含むターゲットを使用しても良い。
上記実施形態では、ドロップレット4が食付き部2aに均一に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、転造方向に沿って、ドロップレット4の形成される頻度や、ドロップレット4の大きさを変化させても良い。この場合、例えば、食付き部2aの終端側(仕上げ部2b側)に形成されるドロップレット4に比較して、始端側に形成されるドロップレット4の形成頻度を高くしたり、ドロップレット4を大きくしたりすることで、転造の初期における滑り止め機能を向上させることができる。また、例えば、食付き部2aの一部にドロップレット4が形成されても良い。この場合、例えば、ドロップレット4が食付き部2aの転造方向始端側(例えば、食付き部2aを3分割した各領域の始端側の領域)のみに形成されることで、被加工物が転造歯形面2の内の平滑な領域(ドロップレット4が形成されていない領域)を転動する期間を長くすることができる。そのため、転造品の表面をより平滑化することができる。
上記実施形態では、ドロップレット4が食付き部2aのみに形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ドロップレット4が仕上げ部2bや逃げ部2cに形成されても良いし、転造歯形面2の全面に形成されても良い。この場合、被加工物が特に摩擦抵抗の低い素材であったとしても良好に転造することができるので、被加工物の選択の自由度を向上させることができる。
1 転造工具
2 転造歯形面(転造面)
2a 食付き部
2b 仕上げ部
4 ドロップレット

Claims (4)

  1. 被加工物を塑性変形させて所定形状を転造する転造面を備えた転造工具において、
    前記転造面には、コーティング素材がPVD処理によりコーティングされることでコーティング層が形成されると共に、そのコーティング層の表面にドロップレットが分散配置されることを特徴とする転造工具。
  2. 前記PVD処理には、アークイオンプレーティング法が用いられると共に、周期律表の第3周期および第4周期のうちの少なくとも一つの金属元素とAlとからなりAl含有量が30wt%以上かつ75wt%以下に設定されるターゲットが使用されることを特徴とする請求項1記載の転造工具。
  3. 前記コーティング層の厚み寸法が0.5μm以上かつ4μm以下の範囲に設定されることを特徴とする請求項2記載の転造工具。
  4. 前記転造面は、食付き部およびその食付き部の転造方向後端側に連設される仕上げ部を少なくとも備え、
    前記ドロップレットは、前記転造面のうちの食付き部に分散配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の転造工具。
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