JP2011036949A - ダイス鋼工具の製造方法および転造ダイス - Google Patents
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Abstract
【課題】硬さが50HRC以上となるように熱処理を行なった後に窒化処理を施して表面硬化させる転造ダイスの製造方法において、転造加工歯の欠損を抑制しつつショットピーニングで白層を適切に除去できるようにする。
【解決手段】表面硬さが1150HV以上となるように窒化処理を行なった後、粒径が20〜90μmの球状で比重が13.8以上、硬さが1400HV以上の超硬合金ショットを用いて、0.2〜0.8MPaの範囲内の投射圧、1秒〜120秒の範囲内の投射時間でショットピーニングが施されることにより、転造加工歯16の欠損を抑制しつつ、窒化処理で生じた白層が適切に除去されるとともに、表面硬さが1300HV以上、圧縮残留応力が600MPa以上とされるため、優れた耐摩耗性や耐疲労強度が得られ、白層が除去されることと相まって耐久性が向上するとともに、転造速度を速くして高能率加工を行なうことが可能となる。
【選択図】図2
【解決手段】表面硬さが1150HV以上となるように窒化処理を行なった後、粒径が20〜90μmの球状で比重が13.8以上、硬さが1400HV以上の超硬合金ショットを用いて、0.2〜0.8MPaの範囲内の投射圧、1秒〜120秒の範囲内の投射時間でショットピーニングが施されることにより、転造加工歯16の欠損を抑制しつつ、窒化処理で生じた白層が適切に除去されるとともに、表面硬さが1300HV以上、圧縮残留応力が600MPa以上とされるため、優れた耐摩耗性や耐疲労強度が得られ、白層が除去されることと相まって耐久性が向上するとともに、転造速度を速くして高能率加工を行なうことが可能となる。
【選択図】図2
Description
本発明はダイス鋼工具の製造方法に係り、特に、硬さが50HRC以上となるように熱処理を行なった後に窒化処理を施して表面に硬質の窒化層を形成するダイス鋼工具の製造方法に関するものである。
ダイス鋼にて工具基材が構成されているとともに、その工具基材に窒化処理が施されて表面に硬質の窒化層が形成されているダイス鋼工具が知られている。特許文献1には、工具基材について具体的な記載はないが、転造平ダイスに関して窒化処理やショットピーニング処理を施すことが提案されている(段落0013参照)。また、特許文献2は、ばねや歯車等の部材に関するものであるが、窒化処理後に超硬合金ショットを用いてショットピーニング処理を施すことにより、窒化層の表層に形成される白層(脆い孔質層)を除去するとともに、表面を加工硬化により更に硬化させ且つ圧縮残留応力により疲労強度を向上させる技術が提案されている(段落0003、0014参照)。
ここで、転造平ダイス等のダイス鋼工具は、予め焼入等の熱処理により硬さが50HRC以上とされ、次に研磨加工で転造加工歯等の加工部を形成した後に窒化処理が施されて硬質の窒化層が形成される。その場合に、表面硬さが1150HV以上になるように窒化処理を行なうと、窒化層の表層に脆い白層が生じることが避けられず、これをショットピーニングで除去するためにはそれよりも高硬度の超硬合金ショットを用いる必要があるが、処理条件によっては転造加工歯等の加工部が欠損することがあった。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、硬さが50HRC以上となるように熱処理を行なった後に窒化処理を施して表面に硬質の窒化層を形成するダイス鋼工具の製造方法において、転造加工歯等の加工部の欠損を抑制しつつショットピーニングで白層を適切に除去できるようにすることにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) ダイス鋼にて構成されている工具基材に熱処理を行なって硬さを50HRC以上とする熱処理工程と、(b) その熱処理後に前記工具基材に窒化処理を施して表面に硬質の窒化層を形成する窒化工程と、を有するダイス鋼工具の製造方法において、(c) 前記窒化工程では、前記窒化層の表面硬さが1150HV以上となるように前記窒化処理を行ない、(d) その窒化工程の後に、粒径が20〜90μmの球状で比重が13.8以上、硬さが1400HV以上の超硬合金ショットを用いて、0.2〜0.8MPaの範囲内の投射圧、1秒〜120秒の範囲内の投射時間で前記工具基材の表面にショットピーニングを行なうことを特徴とする。
なお、上記「HRC」は、Cスケールのロックウェル硬さ(JIS Z 2245)で、「HV」はビッカース硬さ(JIS Z 2244)である。
第2発明は、第1発明のダイス鋼工具の製造方法において、前記窒化工程では前記窒化層の表層に白層が形成され、前記ショットピーニング処理が施されることによりその白層が除去されることを特徴とする。
第3発明は、第1発明または第2発明のダイス鋼工具の製造方法において、前記ショットピーニング処理が施された後の前記工具基材の表面硬さは1300HV以上で、圧縮残留応力は600MPa以上であることを特徴とする。
第4発明は、熱処理によって硬さが50HRC以上とされたダイス鋼にて工具基材が構成されているとともに、その熱処理後にその工具基材に窒化処理が施されて表面に硬質の窒化層が形成されている転造ダイスにおいて、前記窒化処理後にショットピーニングが施されることにより、その窒化処理で形成された白層が除去されるとともに、表面硬さが1300HV以上、圧縮残留応力が600MPa以上とされ、且つ、表面には十点平均粗さRzJIS で4〜15μmの範囲内の凹凸が設けられていることを特徴とする。
なお、「十点平均粗さRzJIS 」は、JIS B 0601の附属書1に記載の規格によるものである。
なお、「十点平均粗さRzJIS 」は、JIS B 0601の附属書1に記載の規格によるものである。
第1発明のダイス鋼工具の製造方法においては、窒化層の表面硬さが1150HV以上となるように窒化処理を行なわれるため、その窒化層の表層に白層が生じることが避けられないが、窒化工程の後に粒径が20〜90μmの球状で比重が13.8以上、硬さが1400HV以上の超硬合金ショットを用いて、0.2〜0.8MPaの範囲内の投射圧、1秒〜120秒の範囲内の投射時間でショットピーニングが施されることにより、転造加工歯等の加工部の欠損を抑制しつつ白層が適切に除去されるとともに、加工硬化により表面が更に硬化させられ且つ圧縮残留応力により疲労強度が向上する。また、粒径が20〜90μmの超硬合金ショットを用いて所定の投射圧でショットピーニングが施されることにより、工具基材の表面には所定の凹凸(例えば十点平均粗さRzJIS で4〜15μm程度)が形成されるが、転造加工等の加工面精度を損なう程ではないとともに、転造ダイスのように滑り止めが必要な場合、滑り止めのための後処理(ショットブラストによる粗面化処理など)を省略できる。
第3発明では、ショットピーニング後の工具基材の表面硬さが1300HV以上であり、圧縮残留応力が600MPa以上であるため、優れた耐摩耗性や耐疲労強度が得られ、白層が除去されることと相まって工具の耐久性が向上するとともに、転造速度等の加工速度を速くするなどして高能率加工を行なうことが可能となる。これにより、安価なダイス鋼工具においても、ハイス(高速度工具鋼)製工具と同等の耐久性や加工性能が得られるようになる。
第4発明の転造ダイスは、第1発明〜第3発明の製造方法に従って好適に製造されるもので、ショットピーニングが施されることにより白層が除去されるとともに、表面硬さが1300HV以上、圧縮残留応力が600MPa以上とされ、且つ、表面には十点平均粗さRzJIS で4〜15μmの範囲内の凹凸が設けられているため、上記第3発明と同様に優れた耐摩耗性や耐疲労強度が得られ、白層が除去されることと相まって耐久性が向上するとともに、転造速度を速くするなどして高能率加工を行なうことが可能となる。これにより、安価なダイス鋼製の転造ダイスにおいても、ハイス(高速度工具鋼)製転造ダイスと同等の耐久性や加工性能が得られるようになる。また、表面には十点平均粗さRzJIS で4〜15μmの範囲内の凹凸が設けられるため、転造加工の加工面精度を損なうことなく適度な滑り止め作用が得られるようになり、滑り止めのための後処理(ショットブラストによる粗面化処理など)が不要で、安価に構成されるとともに生産性が向上する。
本発明は、丸ダイスや平ダイス、プラネタリ式ダイスなど種々の転造ダイスに好適に適用されるが、転造タップ(盛上げタップ)やゲージ、プレス型などの他のダイス鋼工具にも適用され得る。転造ダイスとしては、ねじ転造ダイスが広く知られているが、歯車等のねじ以外の部品を転造加工する転造ダイスにも適用され得る。ダイス鋼は、合金工具鋼(JIS G 4404)の中の「SKD」の記号で示されるもので、例えばSKD11、SKD12などであるが、JIS以外の規格のSKD相当品であっても良い。
熱処理工程では、ダイス鋼にて構成されている工具基材に対して、例えば焼入・焼戻し処理を施すことにより、50HRC以上の硬さとする。次に研磨加工を行なって転造加工歯等を形成した後、窒化処理を施して表面硬さが1150HV以上となる硬質の窒化層を形成する。窒化処理としては、イオン窒化が好適に用いられるが、塩浴窒化等の他の窒化手段を採用することもできる。窒化処理後の表面硬さが例えば1200HV以上となるようにすることも可能である。窒化層の深さは例えば30μm程度以上が望ましく、30〜60μm程度の範囲内が適当である。
上記窒化処理では、窒化層の表層部分に白層が形成されるが、この白層は脆くて欠け易いため、ショットピーニングによって除去する。白層は、窒素とダイス鋼の鉄との化合物から成る多孔質の部分で、白っぽく見える部分であるが、非常に硬いため、硬さが1400HV以上で比重が13.8以上の超硬合金ショットを用いてショットピーニングを行なう。硬さや比重の上限については、現状の超硬合金ショットで可能な範囲で特に制約はない。超硬合金ショットは、例えばWC−Co系が適当であるが、他の超硬合金を用いることもできる。
また、転造加工歯等の加工部の欠損を回避するため、粒径が20〜90μmの超硬合金ショットを0.2〜0.8MPaの範囲内の投射圧で投射する。粒径が20μmよりも小さい場合や投射圧が0.2MPaよりも低い場合には、白層の除去効果が十分に得られないとともに、圧縮残留応力も600MPaに達せず、クラックの発生を抑制する効果が少ない。粒径が90μmよりも大きい場合や投射圧が0.8MPaよりも高い場合には、転造加工歯等の加工部に欠け等の損傷が発生し易くなる。また、投射時間が120秒を超えると窒化層が削られて表面硬さが下がり、耐摩耗性が劣ることになる。このショットピーニングにより白層が完全に除去されることが望ましいが、白層が多少(例えば0.5μm以下で更に望ましくは0.3μm以下)残存していても差し支えない。ショットピーニングの投射圧は、超硬合金ショットを圧力エアによりノズルから噴射する際のエア圧で、そのエア圧を調圧弁等により変更することによって調整できる。粒径は、メッシュによって篩分けられたもので、100%20〜90μmの範囲内であることが望ましいが、20%以下の範囲で他の粒径のショットが混ざっていても差し支えない。この超硬合金ショットの粒径は、30〜70μm程度の範囲内が一層望ましく、投射時間は1秒〜120秒の範囲内で、窒化層を残しつつ白層のみを除去するように投射圧等に応じて適宜設定される。
粒径が20〜90μmの超硬合金ショットが用いられることにより、表面には十点平均粗さRzJIS で4〜15μm程度の凹凸が形成されるが、転造ダイスの場合、加工面精度を損なう程ではないとともに適度な滑り止め作用が得られるため、滑り止めのための後処理(ショットブラストによる粗面化処理など)が必ずしも必要ない。
第3発明では、ショットピーニング後の工具基材の表面硬さが1300HV以上、圧縮残留応力が600MPa以上であるが、第1発明、第2発明の実施に際しては、必ずしも1300HV以上、600MPa以上である必要はない。圧縮残留応力は、800MPa以上、更には1000MPa以上が望ましい。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるねじ転造用の転造平ダイス10を示す図で、(a) は正面図、(b) は転造成形面(ねじ面)14側から見た平面図、(c) は転造成形面14の表層部分の断面模式図である。この転造平ダイス10は、固定側および移動側の2個1組で使用されるもので、工具基材12はSKD11、SKD12等のダイス鋼にて構成されているとともに、転造成形面14にはねじ溝に対応する断面形状の多数の転造加工歯16が設けられており、その転造加工歯16が円柱形状の被転造部材(ねじ素材)の表面に食い込むことによってねじを転造加工する。転造成形面14は、転造加工歯16の高さが直線的に低くなる前端側(図1(a) 、(b) における左方向)の食付き部と、転造加工歯16の高さが一定の平行部と、後端側の逃げ部とを備えている。この転造平ダイス10は転造ダイスの一例で、ダイス鋼工具に相当する。
図1は、本発明の一実施例であるねじ転造用の転造平ダイス10を示す図で、(a) は正面図、(b) は転造成形面(ねじ面)14側から見た平面図、(c) は転造成形面14の表層部分の断面模式図である。この転造平ダイス10は、固定側および移動側の2個1組で使用されるもので、工具基材12はSKD11、SKD12等のダイス鋼にて構成されているとともに、転造成形面14にはねじ溝に対応する断面形状の多数の転造加工歯16が設けられており、その転造加工歯16が円柱形状の被転造部材(ねじ素材)の表面に食い込むことによってねじを転造加工する。転造成形面14は、転造加工歯16の高さが直線的に低くなる前端側(図1(a) 、(b) における左方向)の食付き部と、転造加工歯16の高さが一定の平行部と、後端側の逃げ部とを備えている。この転造平ダイス10は転造ダイスの一例で、ダイス鋼工具に相当する。
上記転造平ダイス10は、図2に示す製造工程に従って製造されたもので、ステップS1の熱処理工程では、ダイス鋼から成る工具基材12に焼入・焼戻し処理が施されることにより、硬さが50HRC以上(実施例では58HRC程度)とされる。ステップS2は研磨工程で、熱処理された工具基材12に対して研削砥石等による研磨加工で前記転造加工歯16を形成する。ステップS3は窒化工程で、工具基材12にイオン窒化処理を施すことにより、その工具基材12の表面に硬質の窒化層12nを形成する。この窒化処理では、窒化層12nの表面硬さが1150HV以上(実施例では1150HV程度)となるように処理条件が定められ、窒化層12nの深さは30μm程度である。この状態では、窒化層12nの表層部(例えば1〜数μmの範囲で、実施例では2.1μm程度)に、窒素とダイス鋼の鉄との化合物から成る多孔質で白っぽく見える白層が形成される。また、このときの圧縮残留応力は400MPa程度(実施例では465MPa)である。
ステップS4はショットピーニング工程で、粒径が20〜90μmの球状で比重が13.8以上、硬さが1400HV以上の超硬合金ショットを用いて、0.2〜0.8MPaの範囲内の投射圧、1秒〜120秒の範囲内の投射時間で工具基材12の表面、具体的には転造成形面14に対して略垂直に投射するショットピーニング処理を行なう。このショットピーニング処理により、転造加工歯16を損傷することなく前記白層が除去されるとともに、加工硬化で表面硬さが1300HV以上となり、且つ600MPa以上の圧縮残留応力が生じるようにすることができる。また、表面には十点平均粗さRzJIS で4〜15μmの範囲内の凹凸を設けることができる。
図3は、種々の処理条件で超硬合金ショットを投射してショットピーニング処理を行なった場合の、処理後の品質特性を調べた結果を示す図である。使用した超硬合金ショットの比重は13.9程度で、硬さは1430HV程度である。また、投射時間は1秒〜120秒の範囲内で、窒化層12nを残しつつ白層のみを除去するように投射圧等に応じて適宜設定される。試験品No1〜No3は、何れも粒径が20〜90μmの範囲内で投射圧が0.2〜0.8MPaの範囲内の本実施例の場合であり、何れの場合も処理後の表面硬さは1300HV以上、圧縮残留応力は600MPa以上、表面粗さは十点平均粗さRzJIS で4〜15μmの範囲内であった。また、外観に変化はなく、転造加工歯16の形状が良好に維持された。
これに対し、試験品No4は、ショットピーニング処理を行なわない場合で、品質特性はステップS3の窒化処理後のままである。試験品No5は、投射圧が0.1MPaと低い場合で、処理後の表面硬さは1300HV未満、圧縮残留応力は600MPa未満、表面粗さは十点平均粗さRzJIS で2.2程度であった。また、試験品No6は、ショットの粒径が100μmと大きく、投射圧が1.0MPaと高い場合で、処理後の表面硬さは1300HV以上、圧縮残留応力は600MPa以上であるが、表面粗さは十点平均粗さRzJIS で15.8程度と大き過ぎるとともに、転造加工歯16が欠損した。
このように、本実施例では、表面硬さが1300HV以上となるように窒化処理が行なわれるため、窒化層12nの表層に白層が生じることが避けられないが、窒化工程の後に粒径が20〜90μmの球状で比重が13.8以上、硬さが1400HV以上の超硬合金ショットを用いて、0.2〜0.8MPaの範囲内の投射圧、1秒〜120秒の範囲内の投射時間でショットピーニングが施されることにより、転造加工歯16の欠損を抑制しつつ白層が適切に除去されるとともに、加工硬化により表面硬さが1300HV以上、圧縮残留応力が600MPa以上とされるため、優れた耐摩耗性や耐疲労強度が得られ、白層が除去されることと相まって耐久性が向上するとともに、転造速度を速くするなどして高能率加工を行なうことが可能となる。これにより、安価なダイス鋼製の転造平ダイス10においても、ハイス(高速度工具鋼)製転造ダイスと同等の耐久性や加工性能が得られるようになる。
また、粒径が20〜90μmの超硬合金ショットを用いて所定の投射圧でショットピーニングが施されることにより、工具基材12の表面には十点平均粗さRzJIS で4〜15μmの範囲内の凹凸が設けられるため、転造加工の加工面精度を損なうことなく適度な滑り止め作用が得られるようになり、滑り止めのための後処理(ショットブラストによる粗面化処理など)が不要で、安価に構成されるとともに生産性が向上する。
因に、図4は、超硬合金ショットを用いてショットピーニングを行なった本発明品(前記転造平ダイス10)、ハイス(高速度工具鋼)製ショットを用いてショットピーニングを行なった比較品I、および前記窒化処理を行なったまま(ショットピーニングなし)の比較品IIを用意し、表面硬さ、圧縮残留応力、面粗さ、白層の厚さを測定するとともに、以下の加工条件で転造加工を行なった場合の寿命までの加工本数を調べた結果を比較して示す図である。寿命は、転造加工歯16の損傷またはゲージアウトで判定した。なお、本発明品は、図3の試験品No1で、ショットピーニングなしの比較品IIは試験品No4である。
《加工条件》
・形状 :208×190×40×50
(移動側長×固定側長×厚み×高さ)
・呼び :M10×1.25×40L
・被転造材:SCM(40HRC)
・転造速度:120本/分
・切削油剤:油性切削油剤
《加工条件》
・形状 :208×190×40×50
(移動側長×固定側長×厚み×高さ)
・呼び :M10×1.25×40L
・被転造材:SCM(40HRC)
・転造速度:120本/分
・切削油剤:油性切削油剤
図4の結果から明らかなように、本発明品は、比較品IIは勿論比較品Iと比べても表面硬さや圧縮残留応力が高いとともに、白層が略完全に除去され、優れた耐久性が得られる。また、面粗さについても、十点平均粗さRzJIS で7.4μm程度と大きいため、滑り止めのための粗面化処理が必ずしも必要ない。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
10:転造平ダイス(転造ダイス、ダイス鋼工具) 12:工具基材 12n:窒化層 14:転造成形面 16:転造加工歯
ステップS1:熱処理工程
ステップS3:窒化工程
ステップS4:ショットピーニング工程
ステップS1:熱処理工程
ステップS3:窒化工程
ステップS4:ショットピーニング工程
Claims (4)
- ダイス鋼にて構成されている工具基材に熱処理を行なって硬さを50HRC以上とする熱処理工程と、
該熱処理後に前記工具基材に窒化処理を施して表面に硬質の窒化層を形成する窒化工程と、
を有するダイス鋼工具の製造方法において、
前記窒化工程では、前記窒化層の表面硬さが1150HV以上となるように前記窒化処理を行ない、
該窒化工程の後に、粒径が20〜90μmの球状で比重が13.8以上、硬さが1400HV以上の超硬合金ショットを用いて、0.2〜0.8MPaの範囲内の投射圧、1秒〜120秒の範囲内の投射時間で前記工具基材の表面にショットピーニングを行なう
ことを特徴とするダイス鋼工具の製造方法。 - 前記窒化工程では前記窒化層の表層に白層が形成され、前記ショットピーニングが施されることにより該白層が除去される
ことを特徴とする請求項1に記載のダイス鋼工具の製造方法。 - 前記ショットピーニングが施された後の前記工具基材の表面硬さは1300HV以上で、圧縮残留応力は600MPa以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のダイス鋼工具の製造方法。 - 熱処理によって硬さが50HRC以上とされたダイス鋼にて工具基材が構成されているとともに、該熱処理後に該工具基材に窒化処理が施されて表面に硬質の窒化層が形成されている転造ダイスにおいて、
前記窒化処理後にショットピーニングが施されることにより、該窒化処理で形成された白層が除去されるとともに、表面硬さが1300HV以上、圧縮残留応力が600MPa以上とされ、且つ、表面には十点平均粗さRzJIS で4〜15μmの範囲内の凹凸が設けられている
ことを特徴とする転造ダイス。
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