JP6556845B2 - 金型の表面処理方法及び前記方法で処理された金型 - Google Patents

金型の表面処理方法及び前記方法で処理された金型 Download PDF

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Description

本発明は金型の表面処理方法及び前記方法で表面処理された金型に関し,より詳細には離型性を向上させることのできる金型の表面処理方法,及び前記方法で表面処理された,離型性に優れた金型に関する。
なお,本発明において処理対象とする金型の表面とは,金型のうち離型性の付与が求められる部分の表面,すなわち成型材料と接触する部分の表面をいう。
金属や樹脂の成型に使用する金型において,金型の表面に粗い凹凸が生じている場合,この凹凸が成型品(以下「ワーク」という。)の表面に転写されてしまうために,成型後にワーク表面の仕上げ加工等が必要となるだけでなく,ワークの表面が金型表面の凹凸と噛み合うことにより離型性が低下するため,成型時の作業性が著しく低下すると共に,離型時に強い力を掛ける必要があるためワークを変形,破損させてしまうおそれがあり不良率も増加する。
そのため,金型の表面は通常,手作業による研磨によって平滑に仕上げられており,これによりワークの表面についても平滑に仕上げることができるだけでなく,離型性の確保も図られている。
しかし,複雑な形状の金型が増加すると共に,金型の短納期化が求められる今日において,多大な労力と時間が費やされる手作業による金型表面の研磨は,前記要求に応えるための障害となっていると共に,金型製作費を高める原因となっている。
しかも,金型表面を平滑な面に研磨しても,成型するワークの形状や材質等によっては必ずしも必要な離型性が得られない場合もある。
そのため,ワークの離型性を向上させるために,各種の方法が提案されており,一例として金型のキャビティに設ける抜け勾配の角度を大きくし,また,金型表面に滑りを良くするための表面処理,例えばフッ素コーティングやDLC(Diamond Like Carbon)被膜の形成を行うことも提案されている。
また,金型表面を平滑面にするのとは反対に所定形状の凹凸を形成することも提案されており,一例として,良好な剥離性を維持しつつ湯流れ性を向上させることを目的として,鋳造用金型のキャビティ面に対し鋳造用金型の硬度以上の硬度を有する100〜1000μmの球状の噴射粒体を噴射して,金型のキャビティ面に半球状のディンプルを形成する「鋳造用金型のキャビティ面の加工方法」も提案されている(特許文献1の請求項1及び請求項2)。
日本国特許第4655169号公報
ここで,金型表面を平滑に加工する理由には,金型の表面に生じている凹凸がワークの表面に転写されて不必要な凹凸が形成されることを防止するという理由だけでなく,金型表面の凹凸と,この凹凸形状が転写されたワーク表面の凹凸とが噛み合うことで,ワークを金型より外すことができなくなる(例えば金型の成型面に対して平行にワークを移動することができなくなる)ことを防止するという理由もある。
そのため,特許文献1にも従来技術として記載されているように,湯流れ性を向上させるために金型のキャビティ面に角張った凹凸を形成した構成では,湯流れ性の向上が得られるものの,離型性が低下するとの説明がされている。
これに対し,金型のキャビティ面に半球状のディンプルを形成した特許文献1に記載の構成では,角張った凹凸が存在しないこと,及び,ディンプル内に離型剤が溜まることから,湯流れ性の向上を得つつも,良好な離型性が得られるものと説明されている(前掲の特許文献1[0004]〜[0007]欄)。
しかし,本発明の発明者らによる実験の結果,ただ単に金型の表面にディンプルを形成したというだけでは,離型性に関し得られる効果は限定的であることが確認されており,前掲の特許文献1に記載の方法で表面処理を行った金型では,角張った凹凸がキャビティ面に形成された金型との比較では離型性が向上していたとしても,平滑に仕上げられた一般的な金型と比較した場合においてまで,大幅な離型性の向上を得ることはできない。
また,前掲の特許文献1に記載されているように,金型の母材よりも高い硬度を有する100〜1000μmの噴射粒体を噴射してディンプルの形成を行うと,噴射粒体が衝突した金型の表面には,ディンプルが形成されるだけでなく,図1に示すように,ディンプルの形成に伴う塑性流動によって押し出された金型の母材がディンプルの周縁部分に盛り上がった形状の突起を形成することが確認されている。
このようにして形成された突起は,成型時,成型されたワークの表面内部に食い込んだ状態で存在することとなるため,このような突起の形成によってワークを引き抜く際の抵抗が増大する点も離型性の向上が得られない原因の1つであると考えられる。
しかもこのような突起が形成されれば,離型時,金型の表面と摺接するワークの表面に前述の突起によって微少な引っ掻き傷が付いてしまうおそれがあり,ワーク表面の光沢が失われ,あるいは透明な成型材を使用する場合には透明性が失われる等,製品の見栄えを悪化させることにもなる。
このような問題を解消するためには,噴射粒体の噴射によりディンプルを形成した後,別途研磨作業を行う等して前述の突起を除去することが必要となり,作業工数の増加に伴うコスト増が金型の製作費を高めることとなる。
本発明の発明者らは,上記従来技術が有する問題に鑑み鋭意実験を重ねた結果,従来技術として紹介した前掲の特許文献1に記載の発明と同様,球状の噴射粒体の噴射によって金型表面にディンプルを形成する表面処理を行う場合であっても,ディンプルの径と深さを所定の範囲内に調整し,従来のものに比較して小径のディンプルを形成することにより,好ましくは,小径で,且つ,浅いディンプルを形成することで,離型性の大幅な向上が得られることを見出した。
しかも,前述の実験結果は,このような離型性の大幅な向上が得られるディンプルの径と深さは,金型の母材硬度の変化に伴って変化するという,予想していなかった関係の存在を示しており,その結果,ディンプルの径と深さを単に小さくしたというだけでは離型性の向上を得ることができず,金型の母材硬度との関係に基づいて適切な径と深さでディンプルを形成しなければならないことが確認されている。
更に,上記実験に際し,形成するディンプルの径と深さを変化させる過程で,球状の噴射粒体の噴射と衝突によってディンプルの形成を行う場合であっても,金型母材の塑性流動に伴う盛り上がった突起の生成を抑制しつつ,前述した所定径,及び所定深さのディンプルを形成することができることを見出した。
本発明は,本発明の発明者らによる上記実験の結果得られた知見に基づき為されたものであり,球状の噴射粒体を噴射することによって金型の表面にディンプルを形成する表面処理方法において,金型の母材硬度に関して形成すべきディンプルの径及び深さの範囲を明らかにすることにより,如何なる材質の母材から成る金型に対し適用した場合であっても離型性の向上を得ることのできる金型の表面処理方法を提供する。
また,本発明の別の目的は,金型母材の塑性流動によって生じる盛り上がった形状の突起の発生を抑制しつつ,噴射粒体の噴射と衝突によって金型の表面に所定径,所定深さのディンプルを形成することができる金型の表面処理方法を提供することで,突起を除去するために別途工程を設けることなく,離型性の向上された金型を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための,本発明の金型の表面処理方法は,
金型の表面に対し略球状の噴射材を噴射すると共に衝突させて,前記表面にディンプルを形成する金型の表面処理方法において,
次式,
1+3.3e-H/230 ≦ W ≦ 3+13.4e-H/1060 ・・・(式1)
0.01+0.2e -H/230 ≦ D ≦ 0.01+1.1e -H/500 ・・・(式2)
ここで,
Wは,ディンプルの相当径(μm)
Dは,ディンプルの深さ(μm)
Hは,金型の母材硬度(Hv)
で規定する条件を満たすように前記ディンプルを形成することを特徴とする(請求項1)。
ここで,「相当径」とは,金型表面に形成されたディンプルの投影面積を,円形の投影面積に換算して測定したときの前記円形の径をいう。
前記球状の噴射粒体としては,メディアン径が1〜20μmの噴射粒体を使用すると共に,該噴射粒体を噴射圧力0.01MPa〜0.7MPaで噴射して,ディンプルの形成面積が前記成型面の面積に対し50%以上となるよう前記ディンプルを形成することが好ましい(請求項)。
なお,「メディアン径」とは,粒子群をある粒子径から2つに分けたとき,大きい側の粒子群の積算粒子量と,小さい側の粒子群の積算粒子量が等量となる径をいう。
更に,前記噴射粒体の噴射を,Ra0.3μm以下の表面粗さに調整された金型の表面に対して行うことが好ましい(請求項)。
なお,本発明では,表面に次式で規定するディンプルが形成された金型についても対象とする(請求項)。
1+3.3e -H/230 ≦ W ≦ 3+13.4e -H/1060 ・・・(式1)
0.01+0.2e -H/230 ≦ D ≦ 0.01+1.1e -H/500 ・・・(式2)
ここで,
Wは,ディンプルの相当径(μm)
Dは,ディンプルの深さ(μm)
Hは,金型の母材硬度(Hv)
以上で説明した本発明の構成により,本発明の表面処理方法で表面処理が行われた金型では,以下の顕著な効果を得ることができた。
金型の表面に形成するディンプルの相当径,好ましくはディンプルの相当径及び深さを,前掲の数式によって金型の母材硬度と関連して特定される所定の大きさの範囲内としたことで,金型の母材の種類に拘わらず,従来の方法で金型表面にディンプルを形成した場合に比較して大幅に離型性を向上させることができた。
しかも,本発明の方法で金型の表面に形成したディンプルは,従来技術として紹介した方法で形成されるディンプルと同様,離型剤溜まり,あるいは空気溜まりとして機能することによる離型性を発揮するだけでなく,本発明において特定するディンプルの径及び深さは,従来の表面処理方法で形成するディンプルに比較して小さなものとなるために,ディンプルにかかる面圧が大きくなることで,離型剤の保持能力が向上して,より高い離型性を得ることができた。
前記ディンプルの形成を,メディアン径が1〜20μmの噴射粒体を使用すると共に,該噴射粒体を噴射圧力0.01MPa〜0.7MPaで噴射して行うことで,前述した相当径及び深さのディンプルを比較的容易に形成することができると共に,上記条件でディンプルを形成する場合,噴射粒体の衝突時に金型母材に大きな塑性流動が生じず,別途研磨加工等を行うことなくディンプルの周縁部に突起が形成されることを抑制できると共に,上記粒径を超える比較的大径の噴射粒体を噴射して表面加工を行った場合に比較して,表面処理後の金型の表面硬度を向上させることができた。
このように,盛り上がった形状の突起の形成が抑制されることで,ディンプルの形成後,別途,突起を除去するための作業工程を設けることなしに,前述した突起のない金型表面を低コストで得ることができ,突起の発生に伴う引き抜き抵抗の増加を防止して離型性の更なる向上を得ることができた。
また,前述した突起の発生を抑制できたことにより,ワークの引き抜き時に突起がワークの表面を傷付けることにより成型品の外観が損なわれる等といった問題の発生についても好適に防止することができた。
更に,金型の表面に応力集中が起こる前述の突起が形成されないこと,及び,金型の表面硬度の向上が得られることで,離型性の向上のみならず,耐久性や耐摩耗性についても向上した金型を提供することができ,また,このような耐久性や耐摩耗性の向上は,金型の表面に形成されたディンプルを長期に亘り理想的な状態に維持することとなるため,金型に,長期に亘って高い離型性を発揮させることも可能となった。
更に,前述した表面処理を,Ra0.3μm以下の表面粗さ(算術平均粗さ)に調整された金型の表面に対し行うことで,金型に対しより好ましい表面状態を付与することができた。
ディンプルの形成に伴い金型表面に生じる突起の説明図。 ダイナミック硬さと噴射圧力の相関図。 試料1〜38のディンプル相当径と金型の母材硬度の分散図。 試料1〜38のディンプル深さと金型の母材硬度の分散図。
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
〔処理対象〕
本発明の表面処理方法は,離型性が要求される金型全般を対象とすることができ,離型性が必要とされる金型であれば,その用途は限定されない。
このような金型としては,金属製品の成型金型の他,樹脂製品,ゴム製品の成型用金型のいずれも含み,一例として金属製品用の金型としてはダイカスト金型,鍛造金型,プレス金型等を挙げることができ,また,樹脂製品やゴム製品の製造用金型としては射出成型用金型等を挙げることができる。
このような金型のうち,成型材料と接触する部分の表面を本発明の表面処理方法による処理面とし,キャビティ(凹型)側の表面,コア(凸型)側の表面のいずれとも本発明の方法による処理対象とすることができる。
金型の材質は特に限定されず,金型の材質として使用され得る各種の材質のものを対象とすることが可能であり,鉄系金属の他,アルミニウム合金等の非鉄系金属の金型を対象とすることもできる。
なお,金型の表面は,後述する球状の噴射粒体の噴射を行う前に予め算術平均粗さ(Ra)で0.3μm以下の表面粗さに調整しておくことが好ましい。
〔ディンプルの形成〕
前述した金型の表面に対するディンプルの形成は,略球状の噴射粒体を噴射して金型の成型面の表面に衝突させることにより行う。
このようなディンプルの形成に使用する噴射粒体,噴射装置,噴射条件を一例として以下に示す。
(1)噴射粒体
本発明の方法で使用する略球状の噴射粒体における「略球状」とは,厳密に「球」である必要はなく,一般に「ショット」として使用される,角のない形状の粒体であれば,例えば楕円形や俵型等の形状のものであっても本発明で使用する「略球状の噴射体」に含まれる。
噴射粒体の材質としては,金属系,セラミックス系のいずれのものも使用可能であり,一例として,金属系の噴射粒体の材質としては,合金鋼,鋳鉄,高速度工具鋼(ハイス鋼)(SKH),タングステン(W),ステンレス鋼(SUS)等を挙げることができ,また,セラミックス系の噴射粒体の材質としては,アルミナ(Al),ジルコニア(ZrO),ジルコン(ZrSiO),硬質ガラス,ガラス,炭化ケイ素(SiC)等を挙げることができる。これらの噴射粒体は,処理対象とする金型の母材に対し同等以上の硬度を有する材質の噴射粒体を使用することが好ましい。
使用する噴射粒体の粒径は,メディアン径(D50)で1〜20μmの範囲のものが使用可能で,鉄系のものであればメディアン径(D50)で1〜20μm,好ましくは5〜20μm,セラミックス系のものであればメディアン径(D50)で1〜20μm,好ましくは4〜16μmの範囲のものを使用し,これらの粒径の噴射粒体の中から,処理対象とする金型の材質等に応じて後述する径及び深さでディンプルを形成し得るものを選択して使用する。
(2)噴射装置
前述した噴射粒体を金型の表面に向けて噴射する噴射装置としては,圧縮気体と共に研磨材の噴射を行う既知のブラスト加工装置を使用することができる。
このようなブラスト加工装置としては,圧縮気体の噴射により生じた負圧を利用して研磨材を噴射するサクション式のブラスト加工装置,研磨材タンクから落下した研磨材を圧縮気体に乗せて噴射する重力式のブラスト加工装置,研磨材が投入されたタンク内に圧縮気体を導入し,別途与えられた圧縮気体供給源からの圧縮気体流に研磨材タンクからの研磨材流を合流させて噴射する直圧式のブラスト加工装置,及び,上記直圧式の圧縮気体流を,ブロワーユニットで発生させた気体流に乗せて噴射するブロワー式ブラスト加工装置等が市販されているが,これらはいずれも前述した噴射粒体の噴射に使用可能である。
(3)処理条件
前述したブラスト加工装置を使用して行う噴射粒体の噴射は,一例として噴射圧力0.01MPa〜0.7MPa,好ましくは0.05〜0.5MPaの範囲で行うことができ,処理を行う部分の金型表面の面積に対し,ディンプルの形成面積(投影面積)が50%以上となるように行う。
噴射粒体の噴射は,処理対象とする金型の材質等との関係で,後掲の式1によって求められるディンプル相当径(W)のディンプルを形成することができるよう,噴射粒体の材質や粒径と,使用するブラスト加工装置の種類や噴射圧力等の組み合わせを選択して行う。
1+3.3e-H/230 ≦ W ≦ 3+13.4e-H/1060 ・・・(式1)
なお,上記の式1において,
Wは,ディンプルの相当径(μm)
Hは,母材硬度(Hv) である。
噴射粒体の噴射は,好ましくは更に,後掲の式2によって求められるディンプル深さ(D)でディンプルを形成可能な条件の組み合わせとして行う。
0.01+0.2e-H/230 ≦ D ≦ 0.01+1.1e-H/500 ・・・(式2)
なお,上記の式2において,
Dは,ディンプルの深さ(μm)
Hは,母材硬度(Hv) である。
(4)作用等
以上で説明した本発明の表面処理方法で表面処理が行われた金型では,離型性が大幅に向上することが確認されており,後述する実施例において,一例として手磨きによって平坦に仕上げた金型(研磨品)との比較において5倍以上,本発明で規定する径及び深さを上回るディンプルを形成した金型に比較して3.5倍以上という高い離型性の向上が得られると共に,研磨品に対し最大6.5倍,本発明で規定する径及び深さを上回るディンプルを形成した金型に対し最大2.5倍という,耐久性の向上が得られるものとなっている。
このような大幅な離型性の向上は,金型表面にディンプルを形成する従来の表面処理方法と同様,本発明の方法でもディンプルが形成されることによりディンプル内に離型剤が保持され,または,空気が保持されることで成型材料と金型表面との接触面積が減少して離型性の向上が得られるだけでなく,本発明の方法では,これに加えて更に,従来の方法でディンプルを形成した場合には得られない以下の作用によって離型性の更なる向上が得られたものと考えられる。
前述した式1で規定した径,好ましくは前述の式1で規定した径及び式2で規定した深さでディンプルを形成する本発明では,形成されたディンプルは,従来技術の方法で金型表面に形成されたディンプルに比較して,その径及び深さ共に小さなものとなる。
そのため,ディンプルにかかる面圧が従来のものに比較して大きくなる結果,反力も大きくなることで,ディンプル内に離型剤や空気を保持する能力が向上して,離型性が向上するものと考えられる。
また,このような小さなディンプルを形成する場合,噴射粒体の衝突に伴う塑性流動によって押し出される金型母材の量も少なくなる結果,ディンプルの周縁部に離型時の引き抜き抵抗を増大させる盛り上がった形状の突起が形成され難くなることも離型性の向上に貢献しているものと考えられる。
更に,コア(凸型)に対する表面処理では,比較的大きなディンプルを形成していた従来の表面処理では,ディンプルが転写されてワークの表面に生じた凸部が冷却による成型材の収縮によってディンプル内に食い込むことで引き抜き抵抗を増大させていた。
しかし,本発明の方法によって比較的小さなディンプルが形成された金型を使用した場合には,ディンプル及びディンプルの転写によって形成されたワーク表面の凸部のいずれも小さなものとなるために,引っ掛かり抵抗が元々小さいだけでなく,ディンプルが小さいことで,成型材料が長手方向に収縮することによって生じるワーク表面の凸部とディンプルとのわずかな位置ずれで,凸部がディンプル内から脱した状態となることも離型性を向上させている一因になっているものと考えられる。
更に,前述したように比較的小さなディンプルを形成するために,使用する球状の噴射粒体としてメディアン径で1〜20μmという比較的小さな粒径のものを使用することで,これよりも大きな粒径の噴射粒体を使用する従来の表面処理方法に比較して,処理後の表面硬度が上昇していることも大幅な離型性の向上が得られた一因となっているものと考えられる。
ここで,処理対象とする金属製品の表面にショットを噴射して衝突させるショットピーニングを行うと,ワークの表面組織が微細化して硬度が上昇することは公知であり,この原理による金型の表面硬度の上昇は,本発明の表面処理方法のみならず,同様に球状の噴射粒体を金型表面に噴射する処理を行っている従来の金型の表面処理方法においても得られているものと考えられる。
しかし,金型の表面に粒径の異なる噴射粒体を噴射する処理を行った後の被加工物の表面硬度を測定する試験を行ったところ,比較的低い噴射圧力の範囲では,粒径の小さな噴射粒体を使用した方がより高い硬度上昇が得られることが確認されている。
図2は,NAK80製の金型(Hv430)に対する上記試験を行った結果を示したもので,噴射圧力0.5MPa以下の範囲では,メディアン径40μmの噴射粒体(材質:ハイス鋼)を噴射した場合(図2中の破線参照)に比較して,メディアン径20μmの噴射粒体(材質:合金鋼)を噴射した場合(図2中の実線参照)の方が,金型表面のダイナミック硬さがより高められていることが判る。
このように,使用する噴射粒体の粒径の相違に伴う効果の相違は,噴射粒体として粒径の小さなものを使用すると,噴射粒体の飛翔速度が上昇し,金型表面に衝突した際の衝突エネルギーが上昇すると共に,衝突位置における単位面積あたりの衝突エネルギーの上昇をもたらすことで,低圧の圧縮気体で噴射した場合であっても,より高い鍛造効果が得られたものと考えられ,このような硬度上昇が得られることも離型性と耐久性の向上に貢献しているものと考えられる。
なお,「ダイナミック硬さ」とは,三角錐の圧子を押し込んでいく過程の試験力と押し込み深さから得られる硬さのことで,試験力P[mN],圧子の押し込み深さD[μm]に対するダイナミック硬さは,次式
DH=α×P÷(D
によって求めることができる。
ここで,αは圧子形状係数で,上記の測定では,「島津ダイナミック超微小硬度計DUH-W201」(島津製作所製)を使用し,115°三角錐圧子を使用してα=3.8584として測定した。
以下に,本発明で規定する処理条件を導き出すに際し行った試験,及び効果確認試験ついて説明する。
〔離型性を向上させるディンプルの径(相当径)及び深さ特定のための試験〕
(1)試験目的
金型の離型性を大幅に向上させることのできるディンプルの形成条件(径と深さ)を求める。
(2)試験方法
(2-1) 概要
母材の材質が異なる複数種類の金型に対し,使用する噴射粒体の材質及び粒径と,噴射方法(噴射装置,噴射圧力等)の組み合わせを変化させてディンプルを形成し,形成されたディンプルの径と深さを測定した。
ディンプル形成後の金型をそれぞれ使用して成型を行って離型性を評価し,手磨きにより表面を平滑に仕上げた金型(以下,「研磨品」という。)の離型性と比較した。
比較の結果,研磨品と同等以下の離型性を示したものと,研磨品に対し大幅な離型性の向上が見られたものとが区別できるよう,縦軸をディンプル径,横軸を金型の母材硬度としたグラフ(図3),及び縦軸をディンプル深さ,横軸を金型の母材硬度としたグラフ(図4)中にプロットを記入して分散図を作成し,作成した分散図中,離型性の向上が見られた試料群の上下限に近似曲線を当てはめ,この近似曲線の式を求めて,離型性の向上が得られるディンプルの径と深さの範囲を特定する関係式とした。
(2-2) 金型の種類と処理条件
処理対象とした金型の材質と,各金型に対して行った表面処理の処理条件を下記の表1及び表2に示す。
Figure 0006556845
Figure 0006556845
比較対象として各金型の研磨品を用意した。なお,研磨後の表面粗さは,「STAVAX」(キャビティ),SKD61(コアピン)でRa0.1μm以下,S50C(コアピン),GM241(ダイ),SKD61(パンチ),SKH51(パンチ),A7075(キャビティ),SKD11(プラスチック成型用)において,Ra0.2μm以下,NAK80(キャビティ)においてRa0.15μm以下である。
(2-3) ディンプルの径(相当径)と深さの測定方法
ディンプルの径(相当径)と深さは,形状解析レーザー顕微鏡(キーエンス社製「VK−X250」)を使用して測定した。
金型の表面を直接測定可能な場合には直接,直接測定できない場合には,アセチルセルロースフィルムに酢酸メチルを滴下して金型の表面に馴染ませた後,乾燥後剥離して,アセチルセルロースフィルムに反転転写させたディンプルに基づいて測定した。測定は,形状解析レーザー顕微鏡で撮影した表面画像のデータ(但し,アセチルセルロースフィルムを使用した測定では撮影した画像を反転処理した画像データ)を「マルチファイル解析アプリケーション(キーエンス社製 VK-H1XM)」を使用して解析することにより行った。
ここで,「マルチファイル解析アプリケーション」とは,レーザー顕微鏡で測定したデータを用いて,表面粗さ,線粗さ,高さや幅などの計測,円相当径や深さなどの解析や基準面設定,高さ反転などの画像処理を行うことのできるアプリケーションである。
測定は,先ず「画像処理」機能を使用して基準面設定を行い(但し,表面形状が曲面の場合には面形状補正を用いて曲面を平面に補正した後に基準面設定を行う),次いで,アプリケーションの「体積・面積計測」の機能から計測モードを凹部に設定して,設定された「基準面」に対する凹部を計測させ,凹部の計測結果から「平均深さ」,「円相当径」の結果の平均値をディンプルの深さ,及び相当径とした。
なお,前述の基準面は,高さデータから最小二乗法を用いて算出した。
また,前述の「円相当径」又は「相当径」は,凹部(ディンプル)として測定された投影面積を,円形の投影面積に換算して測定したときの前記円形の径として測定した。
なお,前述の「基準面」とは,高さデータの中で,計測のゼロ点(基準)とする平面を指し,深さや高さなど主に垂直方向の計測に使用される。
(3)測定結果
上記各試料におけるディンプル相当径とディンプル深さの測定結果,及び離型性の評価結果を表3及び表4に,各試料におけるディンプル相当径と金型の母材硬度の分散図を図3に,ディンプル深さと金型の母材硬度の分散図を図4にそれぞれ示す。
Figure 0006556845
Figure 0006556845
(4)考察
図3及び図4に示す分散図において,丸数字の番号はそれぞれ試料番号を示し,白地の丸に数字を記載したものが研磨品に対し大幅な離型性の向上が確認された試料の試料番号であり,黒色の丸に白抜きで数字を記載したものが,研磨品と同等以下の離型性しか示さなかった試料の試料番号である。
図3及び図4として示した分散図より明らかなように,ディンプルの相当径及び深さのいずれ共に,離型性の向上が得られた試料は分散図の下側に,研磨品と同等以下の離型性しか示さなかった試料は分散図の上側に集中していることが判り,形成するディンプルの相当径及び深さをいずれとも小さくした方が,離型性が向上することが確認された。
このような結果から,比較的大きなディンプルの形成は,ワーク表面の凹凸と金型表面の凹凸が噛み合うことによる離型抵抗の増大や,ディンプルの塑性流動によってディンプルの周縁部に比較的大きな突起が生じることにより大幅な離型性の向上が得られないものと推察される。
一方,形成するディンプルの相当径及び深さには下限があり,あまりに小さくし過ぎると,離型性の向上が確認できなくなった。このような現象は,形成するディンプルが小さくなるに従い,ディンプル形成後の金型の表面状態は,ディンプル形成前の状態である研磨面に近付くため,研磨面の持つ性質が支配的となるためであると考えられる。
また,図3及び図4より,母材硬度が約194HvであるS50C製のコアピンに対し表面処理を行った試料(試料10)では,ディンプル相当径13.72μm,ディンプル深さ0.74μmで離型性の向上が得られているのに対し,母材硬度が750Hvである「SKD11」製の金型に対し表面処理を行った試料(試料38)では,ディンプル相当径が12.30μm,ディンプル深さが0.30μmと,離型性の向上が確認された試料10よりも径及び深さ共に小さなディンプルが形成されているにも拘わらず,離型性の向上が得られていないことが確認された。
この結果から,処理対象とする金型の母材硬度が変化すると,離型性の向上を得るために必要なディンプルの相当径及び深さが変化し,且つ,金型の母材硬度が高くなる程,ディンプルの相当径及び深さを小さくしなければ離型性の向上が得られなくなるものと合理的に推察される。
ここで,図3及び図4の分散図中に「境界(上限)」として表示した曲線は,離型性の向上が確認された試料群の上側の境界にあてはめた近似曲線であることから,この曲線は,金型の母材硬度の変化に対し,離型性の向上が得られるディンプルの相当径及び深さの上限値がどのように変化するかを近似的に表している。
また,図3及び図4の分散図中に「境界(下限)」として表示した曲線は,離型性の向上が確認された試料群の下側の境界にあてはめた近似曲線であることから,この曲線は,金型の母材硬度の変化に対し,離型性の向上が得られるディンプルの相当径及び深さの下限値がどのように変化するかを近似的に表している。
従って,ディンプル相当径(W)と金型の母材硬度(H)の分散図である図3中に記載した,上限値の近似曲線を表す数式〔W≦3+13.4e-H/1060〕と,下限値の近似曲線を表す数式〔W≧1+3.3e-H/230〕によって,離型性の向上が得られるディンプル相当径(W)の範囲は,次式,
1+3.3e-H/230≦ W ≦ 3+13.4e-H/1060・・・(式1)
によって特定することができ,形成されたディンプル相当径がこの範囲内に含まれるものは,いずれも離型性の大幅な向上が得られるものとなっている。
また,ディンプルの深さ(D)と金型の母材硬度(H)の分散図である図4中に記載した,上限値の近似曲線を表す数式〔D≦0.01+1.1e-H/500〕と,下限値の近似曲線を表す数式〔D≧0.01+0.2e-H/230〕によって,離型性の向上が得られるディンプル深さ(D)の範囲は,次式,
0.01+0.2e-H/230 ≦D≦0.01+1.1e-H/500・・・(式2)
によって特定することができ,形成されたディンプルの深さがこの範囲内に含まれるものは,いずれも離型性の大幅な向上が得られるものとなっている。
〔離型抵抗力の測定試験〕
(1)試験の目的
本発明の表面処理方法による離型性向上の程度を数値的に明らかにする。
(2)試験方法
略球状の噴射粒体を噴射して表面処理を行った試料5〜8のSKD61製コアピン,及び表面粗さRa0.1μm未満に研磨したSKD61製コアピン(研磨品)をそれぞれ備えたプラスチック成型金型を使用して,ポリアセタール(POM:ポリオキシメチレン樹脂を成型した際の離型抵抗力を測定して比較した。
コアピンは,径30mm,長さ70mmの円柱形〔抜き勾配0(ゼロ)〕であり,このコアピン(凸型)とキャビティ(凹型)を組み合わせて,内径30mm,外径34mm,長さ28mmの円筒状のポリアセタール樹脂成型品を成型した。
なお,本試験例において離型抵抗力とは,金型に設けたストリッパープレートの押し出しに要した力(N)を水晶式圧電センサによって測定した値であり,比較は,研磨品の離型抵抗力を100%とした場合の,試料番号5〜8の離型抵抗力のパーセンテージを求めて比較した。
(3)試験結果
離型抵抗力の比較結果を表5に示す。
Figure 0006556845
(4)試験結果の考察
形成されたディンプルの相当径及び深さが,前掲の式1及び式2の範囲内にある試料5〜7のコアピン(実施例)では,研磨品の離型抵抗100%に対し,離型抵抗が20〜30%まで低下するという優れた効果が得られることが確認された。
一方,形成されたディンプルの相当径及び深さが,前掲の式1及び式2の範囲を超えている試料8のコアピン(比較例)では,離型抵抗は20%しか低下しておらず,実施例に比較して効果は限定的である。
このように,本発明の表面処理方法によれば,離型性の大幅な改善が得られるものであることが数値においても明らかとなっている。
〔金型の耐久試験1〕
(1)試験の目的
本発明の表面処理方法で処理を行った金型の耐久性を確認する。
(2)試験方法
略球状の噴射粒体を噴射して表面処理を行った試料15〜18のGM241製ダイと,試料19〜22のSKD61製パンチとの組み合わせから成るプレス金型と,表面粗さRa0.2μm以下に仕上げたGM241製ダイとSKD61製パンチの組み合わせから成るプレス金型を使用してプレス成形を継続して行い,プレス金型のダイに凝着が生じ,成型品(ワーク)の表面に傷が生じた時点の成型品の製造個数をカウントし,この製造個数によって各金型の耐久性を評価した。
評価は,研磨品のプレス金型の製造個数100%に対する比として評価した。
(3)試験結果
金型の耐久性の試験結果を,下記の表6に示す。
Figure 0006556845
(4)試験結果の考察
以上の結果,形成されたディンプルの相当径及び深さが,前掲の式1及び式2の範囲内にある試料15〜17のダイと,試料19〜21のピンチとの組み合わせから成るプレス金型(実施例)を使用した場合には,研磨品のプレス金型を使用した場合に比較して耐久性が最も低いものでも5.3倍向上し,最大6.5倍の向上が確認された。
これに対し,形成されたディンプルの相当径及び深さが,前掲の式1及び式2の範囲から外れている試料18のダイと試料22のパンチの組み合わせから成るプレス金型(比較例)では,研磨品のプレス金型を使用した場合に比較して2.6倍の耐久性の向上が得られるものの,実施例における耐久性程,高い向上を示すものではなかった。
以上の結果から,本発明の表面処理方法によれば,より長期に亘り,離型性能の持続が得られる加工を行うことができることが確認された。
このような高い耐久性は,ディンプルの形成により成型材料との接触面積が減少するだけでなく,先に規定した径と深さの範囲内となる比較的小さなディンプルを形成することで,球状の噴射粒体との衝突時に塑性流動によって押し出される母材が少なく,ディンプルの周縁部に盛り上がった突起の形成が抑制されたことで,滑り性が向上されたことによってもダイ及びパンチの耐久性が向上されたものと考えられる。
従って,前掲の式1及び式2で示した相当径及び深さの範囲外となる大きなディンプルが形成された比較例のプレス金型では,球状の噴射粒体と衝突した際の塑性流動によって押し出される金型の母材量が多く,この押し出された母材がディンプルの周縁部に盛り上がった突起を形成することで,この突起の存在により耐久性が劣ったものと考えられる。
事実,比較例のプレス金型のエッジ部を観察した結果,プレス加工に使用した後の比較例の金型ではエッジ部の形状が大きく変化していることが確認されており,球状の噴射粒体との衝突によってエッジ部に形成された比較的大きなディンプルが,エッジ部に「欠け」が生じた状態と同様の状態を作ってしまい,この部分を起点してエッジ部に変形が広がったことも耐久性の差を生じた一因であると考えられる。
〔金型の耐久試験2〕
(1)試験の目的
前掲の「金型の耐久試験1」で処理対象とした金型〔GM241(Hv280)製ダイ,SKD61(Hv450)製パンチ〕よりも高硬度の金型〔SKH51(Hv870)製パンチ〕に対し本発明の表面処理方法で処理を行った場合においても,耐久性の向上が得られることを確認する。
(2)試験方法
略球状の噴射粒体を噴射して表面処理を行った試料23〜26のSKH51製プレス金型(パンチ)と,表面粗さRa0.2μm以下に仕上げたSKH51製プレス金型(パンチ)(研磨品)を使用してプレス成形を継続して行い,ワークのかじり発生を目視で観察し,かじりが発生したショット数によって各金型の耐久性を評価した。
評価は,研磨品のプレス金型のショット数100%に対する比として評価した。
(3)試験結果
金型の耐久性の試験結果を,下記の表7に示す。
Figure 0006556845
(4)試験結果の考察
以上の結果,形成されたディンプルの相当径及び深さが,前掲の式1及び式2の範囲内にある試料23〜25のプレス金型(パンチ)を使用した場合(実施例)では,研磨品のプレス金型を使用した場合に比較して耐久性が最も低いものでも2.7倍向上し,最大3.2倍の向上が確認された。
これに対し,形成されたディンプルの相当径及び深さが,前掲の式1及び式2の範囲から外れている試料26のプレス金型(比較例)では,研磨品のプレス金型を使用した場合に比較して1.8倍の耐久性の向上が得られるものの,実施例における耐久性程,高い向上を示すものではなかった。
このように,本発明の表面処理を行った金型では,かじりが発生し難くなっており,離型性が大幅に向上していることが確認されると共に,このような離型性の向上や耐久性の向上という効果は,母材の異なる金型に対し本発明の表面処理を適用した場合であっても同様に得られるものであることが確認された。
〔金型の耐久試験3〕
(1)試験の目的
超硬合金(Hv1400)製のパンチに対し本発明の表面処理方法で処理が有効であることを確認する。
(2)試験方法
球状の噴射粒体を噴射して表面処理を行った超硬合金製のプレス金型(パンチ)と,表面粗さRa0.2μm以下に仕上げた超硬合金製プレス金型(パンチ)(研磨品)を使用してプレス成形を継続して行い,ワークに対するスジの発生を目視で観察し,スジが顕著に発生したショット数によって金型の耐久性を評価した。
評価は,研磨品のプレス金型のショット数100%に対する比として評価した。
(3)試験結果
金型の耐久性の試験結果を,下記の表8に示す。
Figure 0006556845
(4)試験結果の考察
以上の結果,試料27の超硬合金製のプレス金型(パンチ)においても,286%の耐久性の向上が得られることが確認された。
この試料27の金型の母材である超硬合金の硬度(Hv1400)は,金型に使用する母材の硬度としては略上限にあたる硬度であり,上記の結果より,本発明の表面処理方法が,略全ての材質の金型に対し有効であることが確認された。

Claims (4)

  1. 金型の表面に対し略球状の噴射粒体を噴射すると共に衝突させて,前記表面にディンプルを形成する金型の表面処理方法において,
    次式
    1+3.3e-H/230 ≦ W ≦ 3+13.4e-H/1060 ・・・(式1)
    0.01+0.2e -H/230 ≦ D ≦ 0.01+1.1e -H/500 ・・・(式2)
    ここで,
    Wは,ディンプルの相当径(μm)
    Dは,ディンプルの深さ(μm)
    Hは,金型の母材硬度(Hv)
    で規定する条件を満たすように前記ディンプルを形成することを特徴とする金型の表面処理方法。
  2. 前記略球状の噴射粒体としてメディアン径が1〜20μmの噴射粒体を使用すると共に,該噴射粒体を噴射圧力0.01MPa〜0.7MPaで噴射して,ディンプルの形成面積が前記成型面の面積に対し50%以上となるよう前記ディンプルを形成することを特徴とする請求項1記載の金型の表面処理方法。
  3. 前記噴射粒体の噴射を,Ra0.3μm以下の表面粗さに調整された金型の表面に対して行うことを特徴とする請求項1又は2記載の金型の表面処理方法。
  4. 表面に,次式で規定するディンプルが形成されていることを特徴とする金型。
    1+3.3e -H/230 ≦ W ≦ 3+13.4e -H/1060 ・・・(式1)
    0.01+0.2e -H/230 ≦ D ≦ 0.01+1.1e -H/500 ・・・(式2)
    ここで,
    Wは,ディンプルの相当径(μm)
    Dは,ディンプルの深さ(μm)
    Hは,金型の母材硬度(Hv)
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