JP2015205313A - 連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置、連続鋳造設備の鋳型内温度管理方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
Description
熱電対により測定された温度が正確でないと、前述したブレークアウトの予測精度や湯面高さの測定精度等が低下する。したがって、熱電対により測定された温度が信頼性の高いものであるか否かを監視する必要がある。
図7に示す例では、1秒間に数十℃以上温度が変動している時間帯がある。このように、本発明者らは、連続鋳造設備の鋳型内に埋め込まれた熱電対で検出された温度がランダムに大きく変化することがあるという知見を得た。連続鋳造設備の鋳型内の温度は、図7に示すように短時間に大きく変動するものではないので、このような温度の変動は、連続鋳造設備の鋳型内の温度を反映したものではなく、熱電対により正常な測定が行われていない状態であることに起因するものであるといえる。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、このような状態を検出することが容易ではない。前述した熱電対の温度の変動は、熱電対の起電力が0(ゼロ)又は負でない場合(つまり、熱電対の起電力が正(>0)である場合)や、熱電対の起電力の時間変化が0(ゼロ)又は0(ゼロ)と見做す値でない場合(つまり、起電力の時間変化が≠0の場合)であっても生じるからである。
しかしながら、特許文献2には、具体的な手法が開示されていない。ブルーム又はビレットを製造するための小断面鋳型では、鋳型内に埋め込まれる熱電対の位置が規則的でない領域がある。したがって、正常な測定を行っていない熱電対に隣接する熱電対の温度を単に用いるだけでは、当該正常な測定を行っていない熱電対がある位置の温度を正確に導出することが容易でない場合がある。
また、正常な測定を行っていない熱電対がある位置の温度を正確に導出できるようにすることを第2の目的とする。
また、本発明では、非正常熱電対がある位置における温度を導出する際に、鋳型の高さ方向における位置が非正常熱電対に近い正常熱電対を、鋳型の周方向における位置が非正常熱電対に近い正常熱電対よりも優先して選択する。したがって、鋳型内における熱電対の配置が規則的でない場合であっても、非正常熱電対がある位置の温度を正確に導出することができる。
(連続鋳造設備の概要)
図1は、連続鋳造設備の構成の一例を示す断面図である。本実施形態の連続鋳造設備では、ビレット及びブルーム以外にスラブも製造することができるが、本実施形態の手法が適用される鋳型140は、ビレット又はブルーム用の鋳型である。
尚、本実施形態が適用可能な連続鋳造設備は、ビレット及びブルームの少なくとも何れか一方を製造することが可能な連続鋳造設備であれば、図1に示すものに限定されない。また、各図に示すx、y、z座標は、各図における方向の関係を示すものであり、x、y、z座標の原点は、各図に示す位置に限らず、各図において共通の位置に存在するものとする。
図2は、連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置200の機能的な構成の一例を示す図である。連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置200は、鋳型140に埋め込まれた複数の熱電対が正常に温度を検出できているか否かを監視すると共に、正常に温度の検出ができていない熱電対がある位置における温度を、正常に温度の検出ができている他の熱電対で検出された温度を用いて導出する機能を有する。連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置200のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種のインターフェースを備えた情報処理装置(パーソナルコンピュータ等)を用いることにより実現できる。また、専用のハードウェアで連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置200を構成してもよい。以下に、連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置200が有する機能の一例を詳細に説明する。
温度取得部201は、鋳型140に埋め込まれた複数の熱電対で検出された温度を取得する。本実施形態では、温度取得部201は、鋳型140に埋め込まれた複数の熱電対で検出された温度を予め決められた順番で繰り返し、所定の周期で取得するものとする。したがって、温度取得部201は、同一の熱電対で検出された温度を、一定の時間間隔(サンプリング期間)で取得する。
温度判定部202は、温度取得部201で取得された熱電対の温度が、所定の範囲内であるか否かを判定する。所定の範囲は、熱電対の能力に基づいて定められる。具体的に所定の範囲は、熱電対で検出することができる温度、又は、熱電対で検出することが想定される温度の上限値と下限値とに基づいて定められる。例えば、0℃以上300℃以下の範囲が所定の範囲として設定される。
温度変化量導出部203は、温度判定部202により、温度取得部201で取得された熱電対の温度が、所定の範囲内であると判定された場合に起動する。温度変化量導出部203は、温度取得部201により今回のサンプリングで取得された最新の熱電対の温度から、1サンプリング前に温度取得部201により取得された当該熱電対の温度を減算した値の絶対値|ΔT|を導出する。以下の説明では、この絶対値を必要に応じて温度変化量|ΔT|と称する。
温度変化判定部204は、温度変化量導出部203により導出された温度変化量|ΔT|が所定値以上であるか否かを判定する。所定値としては、例えば、過去(例えば1年〜3年程度の期間)に拘束性ブレークアウトが発生したときの熱電対の1サンプリング期間における温度の増加量の最大値よりも大きい値を設定することができる。図3は、拘束性ブレークアウトが発生した際の熱電対の温度変化の一例を示す図である。図3では、両矢印線で示しているときに拘束性ブレークアウトが発生したことを示している。このようなデータを採取することにより、所定値を設定することができる。例えば、40℃が所定値として設定される。
このように所定値を設定することにより、温度変化量|ΔT|が所定値以上でないと判定された場合には、拘束性ブレークアウトによる温度の上昇である可能があると判断することができ、そうでない場合には、熱電対が正常でないことに起因する温度の変化であると判断することができる。
非正常熱電対特定部205は、温度判定部202により、温度が所定の範囲内でないと判定された熱電対を、正常な検出ができていない熱電対として特定する。また、非正常熱電対特定部205は、温度変化判定部204により、温度変化量|ΔT|が所定値以上であると判定された熱電対を、正常な検出ができていない熱電対として特定する。一方、非正常熱電対特定部205は、非正常熱電対以外の熱電対を、正常な検出ができている熱電対として特定する。
具体的に本実施形態では、非正常熱電対特定部205は、鋳型140に埋め込まれている熱電対に予め設定されている識別番号のそれぞれに対して、正常な検出ができていない熱電対であるか否かを示す情報を関連付けて記憶する。
BOロジック停止指示部206は、非正常熱電対特定部205により非正常熱電対が特定された場合に起動する。BOロジック停止指示部206は、ブレークアウトの発生を予測するロジックにおいて、当該非正常熱電対で検出された温度を用いてブレークアウトが発生するか否かを判定する処理を行う必要がある期間は、当該非正常熱電対が正常熱電対であると判定されるまで、ブレークアウトが発生するか否かを判定する処理を停止させることを、当該ロジックの実行部に指示する。
尚、ブレークアウトの発生を予測するロジックは、例えば、特開平4−178252号公報に記載されているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
湯面レベル検出停止指示部207は、非正常熱電対特定部205により非正常熱電対が特定された場合であって、鋳型140における溶鋼の湯面レベルの測定に当該非正常熱電対で検出された温度を使用する場合に、鋳型140における溶湯の湯面レベルの測定を中断することを、湯面レベル制御の実行部に指示する。その後、非正常熱電対が正常熱電対に復帰した場合、湯面レベル検出停止指示部207は、鋳型140における溶湯の湯面レベルの測定を再開することを、湯面レベル制御の実行部に指示する。
また、このようにせずに、以下に示す温度導出部208で導出された、非正常熱電対がある位置の温度を用いて、温度を湯面レベルの測定を行うようにしてもよい。湯面レベルの測定の手法は、例えば、特許文献1に記載されているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
温度導出部208の機能の一例を説明する前に、熱電対の配置と、温度の補間方法の決定に際し本発明者らが着目した点について説明する。
前述したように、スラブ用の鋳型では、鋳型内に冷却水を流す流路を形成しても、鋳型の高さ方向及び周方向のそれぞれにおいて熱電対を規則的に配置することができる。これに対して、ブルームやビレット用の鋳型140は、スラブ用の鋳型に比べて小さい。このため、鋳型140内に冷却水を流す流路を形成すると、熱電対を配置するスペースを十分に確保することができないことが多い。したがって、鋳型140には、熱電対が規則的に配置されていない領域が存在する。本実施形態においても、鋳型140の内部に埋め込まれている熱電対が規則的に配置されていない領域が存在するものとする。
<<非正常熱電対と同じ高さにある正常熱電対が1つである場合>>
この場合、温度導出部208は、当該正常熱電対で検出された温度を、当該非正常熱電対がある位置における温度とする。
この場合、温度導出部208は、当該非正常熱電対と同じ高さにある正常熱電対のうち、鋳型140の周方向の一方向(例えば右方向)と他方向(例えば左方向)のそれぞれにおいて当該非正常熱電対に最も近い位置にある正常熱電対で検出された温度を用いて、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出する。本実施形態では、鋳型140の周方向の一方向と他方向のそれぞれにおいて当該非正常熱電対に最も近い位置にある正常熱電対で検出された温度と、当該非正常熱電対と当該正常熱電対との鋳型140の周方向における距離とに基づいて、温度と距離との関係を示す1次関数を導出し、導出した1次関数を用いて線形補間(内挿)を行って、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出する。
<<非正常熱電対が最上段の熱電対(最も高い位置ある熱電対)である場合>>
この場合、温度導出部208は、鋳型140の高さ方向における位置が当該非正常熱電対に最も近い正常熱電対(上から2番目に高い位置にある熱電対)のうち、鋳型140の周方向における位置が当該非正常熱電対に最も近い正常熱電対で検出された温度を、当該非正常熱電対がある位置における温度とする。
この場合、温度導出部208は、鋳型140の高さ方向における位置が当該非正常熱電対に最も近い正常熱電対(下から2番目に高い位置(2番目に低い位置)にある熱電対)と2番目に近い正常熱電対(下から3番目に低い位置(3番目に低い位置)にある熱電対)で検出された温度を用いて、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出する。本実施形態では、鋳型140の高さ方向における位置が当該非正常熱電対に最も近い正常熱電対で検出された温度と、鋳型140の高さ方向における位置が当該非正常熱電対に2番目に近い正常熱電対で検出された温度と、当該非正常熱電対と当該正常熱電対との距離と、に基づいて、温度と距離との関係を示す1次関数を導出し、導出した1次関数を用いて外挿を行って、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出する。
鋳型140の高さ方向における位置が当該非正常熱電対に最も近い正常熱電対で検出された温度に加えて、鋳型140の高さ方向における位置が当該非正常熱電対に2番目に近い正常熱電対で検出された温度を用いるのは、鋳型140の下部では、上部に比べて、高さ方向における温度の分布が小さい(温度が安定している)からである。
この場合、温度導出部208は、鋳型140の高さ方向の一方向(例えば上方向)において当該非正常熱電対に最も近い位置にある正常熱電対で検出された温度と、鋳型140の高さ方向の他方向(例えば下方向)において当該非正常熱電対に最も近い位置にある正常熱電対で検出された温度と、を用いて、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出する。本実施形態では、鋳型140の高さ方向の一方向において当該非正常熱電対に最も近い位置にある正常熱電対で検出された温度と、鋳型140の高さ方向の他方向において当該非正常熱電対に最も近い位置にある正常熱電対で検出された温度と、当該非正常熱電対と当該正常熱電対との鋳型140の高さ方向における距離と、に基づいて、温度と距離との関係を示す1次関数を導出し、導出した1次関数を用いて線形補間(内挿)を行って、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出する。
この場合、熱電対aと同じ高さにある正常熱電対はない。また、熱電対aは最上段の熱電対である。最上段の熱電対が位置する鋳型の部分には、タンディッシュ130から浸漬ノズル190を通して溶鋼が供給されるので、鋳型140の高さ方向の温度勾配は小さい。したがって、上から2番目に高い位置にある熱電対b、c、dのうち、鋳型140の周方向における位置が当該非正常熱電対に最も近い正常熱電対cで検出された温度Tcを、熱電対aがある位置における温度Ta´とする。すなわち、熱電対aがある位置における温度Ta´を以下の(1)式のように定める。
Ta´=Tc ・・・(1)
この場合、熱電対bと同じ高さにある正常熱電対は熱電対c、dの2つである。この場合、前述した線形補間(内挿)を行って、熱電対bがある位置における温度Tb´を導出する。すなわち、熱電対bがある位置における温度Tb´を以下の(2)式により導出する。
Tb´=(Tc−Td)÷(x1+x2+x7+x8)×(x7+x8)+Td ・・・(2)
この場合は、熱電対bがある位置における温度Tb´と同様にして、熱電対c、dがある位置における温度Tc´、Td´を導出する。すなわち、熱電対c、dがある位置における温度Tc´、Td´を、それぞれ以下の(3)式、(4)式により導出する。
Tc´=(Td−Tb)÷(x1+x2+x3+x4+x5+x6)×(x1+x2)+Tb ・・・(3)
Td´=(Tb−Tc)÷(x3+x4+x5+x6+x7+x8)×(x3+x4+x5+x6)+Tc ・・・(4)
この場合、熱電対eと同じ高さにある正常熱電対はない。また、熱電対eは、最上段の熱電対でも最下段の熱電対でもない。また、熱電対eよりも鋳型140の上方向において高さ方向における位置が熱電対eに最も近い位置にある正常熱電対のうち、鋳型140の周方向において熱電対eに最も近い位置にある正常熱電対は熱電対cである。さらに、熱電対eよりも鋳型140の下方向において高さ方向における位置が熱電対eに最も近い位置にある正常熱電対は熱電対fである。したがって、前述した線形補間(内挿)を行って、熱電対eがある位置における温度Te´を導出する。すなわち、熱電対eがある位置における温度Te´を以下の(5)式により導出する。
Te´=(Tc−Tf)÷(Hc−Hf)×(He−Hf)+Tf ・・・(5)
この場合、熱電対fと同じ高さにある正常熱電対はない。また、熱電対fは、最上段の熱電対でも最下段の熱電対でもない。また、熱電対fよりも鋳型140の上方向において高さ方向における位置が熱電対fに最も近い位置にある正常熱電対は熱電対eである。さらに、熱電対fよりも鋳型140の下方向において高さ方向における位置が熱電対fに最も近い位置にある正常熱電対は熱電対gである。したがって、前述した線形補間(内挿)を行って、熱電対fがある位置における温度Tf´を導出する。すなわち、熱電対fがある位置における温度Tf´を以下の(6)式により導出する。
Tf´=(Te−Tg)÷(He−Hg)×(Hf−Hg)+Tg ・・・(6)
この場合、熱電対fがある位置における温度Tf´と同様にして、熱電対g、h、iがある位置における温度Tg´、Th´、Ti´を導出する。すなわち、熱電対g、hがある位置における温度Tg´、Th´、Ti´を以下の(7)式、(8)式、(9)式により導出する。
Tg´=(Tf−Th)÷(Hf−Hh)×(Hg−Hh)+Th ・・・(7)
Th´=(Tg−Ti)÷(Hg−Hi)×(Hh−Hi)+Ti ・・・(8)
Ti´=(Th−Tk)÷(Hh−Hk)×(Hi−Hk)+Tk ・・・(9)
この場合、熱電対jと同じ高さにある正常熱電対は熱電対kのみである。したがって、熱電対kで検出された温度Tkを、熱電対jがある位置における温度Tj´とする。同様に、熱電対jで検出された温度Tjを、熱電対kがある位置における温度Tk´とする。すなわち、熱電対j、kがある位置における温度Tj´、Tk´を以下の(10)式、(11)式のように定める。
Tj´=Tk ・・・(10)
Tk´=Tj ・・・(11)
この場合、熱電対lと同じ高さにある正常熱電対はない。また、熱電対lは、最上段の熱電対でも最下段の熱電対でもない。また、熱電対lよりも鋳型140の上方向において熱電対lに最も近い位置にある正常熱電対のうち、熱電対lよりも鋳型140の周方向において熱電対lに最も近い位置にある正常熱電対は熱電対jである。さらに、熱電対lよりも鋳型140の下方向において高さ方向における熱電対lに最も近い位置にある正常熱電対のうち、鋳型140の周方向において熱電対lに最も近い位置にある正常熱電対は熱電対nである。したがって、前述した線形補間(内挿)を行って、熱電対lがある位置における温度Tl´を導出する。すなわち、熱電対lがある位置における温度Tl´を以下の(12)式により導出する。
Tl´=(Tj−Tn)÷(Hj−Hn)×(Hl−Hn)+Tn ・・・(12)
この場合、熱電対mと同じ高さにある正常熱電対は熱電対n、o、pの3つである。また、鋳型140の周方向の一方向(右方向)において熱電対mに最も近い位置にある正常熱電対は熱電対nであり、他方向(左方向)において熱電対mに最も近い位置にある正常熱電対は熱電対pである。尚、ここでは、図4(a)、図4(b)の紙面に向かってみた場合の方向を右方向、左方向としている。この場合、前述した線形補間(内挿)を行って、熱電対mがある位置における温度Tm´を導出する。すなわち、熱電対mがある位置における温度Tm´を以下の(13)式により導出する。
Tm=(Tn−Tp)÷(x1+x2+x3+x8)×(x1+x8)+Tp ・・・(13)
この場合は、熱電対mがある位置における温度Tm´と同様にして、熱電対n、o、pがある位置における温度Tn´、To´、Tp´を導出する。すなわち、熱電対n、o、pがある位置における温度Tn´、To´、Tp´を、それぞれ以下の(14)式、(15)式、(16)式により導出する。
Tn´=(To−Tm)÷(x2+x3+x4+x5)×(x2+x3)+Tm ・・・(14)
To´=(Tp−Tn)÷(x4+x5+x6+x7)×(x4+x5)+Tn ・・・(15)
Tp´=(Tm−To)÷(x1+x6+x7+x8)×(x6+x7)+To ・・・(16)
この場合、熱電対qと同じ高さにある正常熱電対はない。また、熱電対qは最下段の熱電対である。最上段と異なり、最下段は、鋳型140の高さ方向に見ると、下に向かって溶鋼が冷えていくばかりであるので、温度勾配が大きい。従って、鋳型140の高さ方向における位置が2番目に低い位置にある正常熱電対と3番目に低い位置にある正常熱電対とを用いて線形補間を行うことができる。鋳型140の高さ方向における位置が熱電対qに最も近い正常熱電対のうち、鋳型140の周方向において熱電対qに最も近い位置にある熱電対は熱電対oである。また、鋳型140の高さ方向における位置が熱電対qに2番目に近い正常熱電対は、熱電対lである。この場合、前述した外挿を行って、熱電対qがある位置における温度Tq´を導出する。すなわち、熱電対qがある位置における温度Tq´を以下の(17)式により導出する。
Tq´=(Tl−To)÷(Hl−Ho)×(Hq−Ho)+To ・・・(17)
次に、図5のフローチャートを参照しながら、熱電対が正常に温度を検出しているか否かを判定する際の連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置200の処理の一例を説明する。
まず、ステップS501において、温度取得部201は、熱電対で検出された温度Tを取得する。熱電対温度Tを取得する熱電対の順番は予め定められているものとする。
ステップS503に進むと、温度変化量導出部203は、ステップS501で今回取得された熱電対の温度Tから、ステップS501前回取得された当該熱電対の温度Tを減算した値の絶対値を温度変化量|ΔT|として導出する。
次に、ステップS504において、温度変化判定部204は、ステップS503で導出された温度変化量|ΔT|が所定値以上であるか否かを判定する。
一方、ステップS503で導出された温度変化量|ΔT|が所定値以上でない場合には、ステップS506に進む。ステップS506に進むと、非正常熱電対特定部205は、ステップS504で温度変化量|ΔT|が所定値以上でないと判定された熱電対を、正常熱電対として登録する。そして、ステップS507に進む。
この判定の結果、測定を終了しない場合には、ステップS501に戻り、次に温度Tを取得すべき熱電対で検出された温度Tを取得する。
尚、図4に示す例では、熱電対の数が17個であるので、ステップS501〜S507が17回繰り返されることにより各熱電対に対する温度のサンプリングが1回ずつ行われる。
まず、ステップS601において、温度導出部208は、図5のフローチャートによる処理の結果、非正常熱電対があるか否かを判定する。この判定の結果、非正常熱電対がない場合には、図6のフローチャートによる処理を終了する。
次に、ステップS603において、温度導出部208は、ステップS602で選択した非正常熱電対と同じ高さに正常熱電対があるか否かを判定する。この判定の結果、非正常熱電対と同じ高さに正常熱電対がない場合には、後述するステップS607に進む。
ステップS604に進むと、温度導出部208は、ステップS602で選択した非正常熱電対と同じ高さにある正常熱電対の数が1つであるか否かを判定する。この判定の結果、非正常熱電対と同じ高さにある正常熱電対の数が1つである場合には、ステップS605に進む。ステップS605に進むと、温度導出部208は、当該正常熱電対で検出された温度を、当該非正常熱電対がある位置における温度とする。そして、ステップS601に戻る。
この判定の結果、非正常熱電対が最上段の熱電対である場合には、ステップS608に進む。ステップS608に進むと、温度導出部208は、上から2番目に高い位置にある熱電対のうち、鋳型140の周方向における位置が当該非正常熱電対に最も近い正常熱電対で検出された温度を、当該非正常熱電対がある位置における温度とする。そして、ステップS601に戻る。
この判定の結果、非正常熱電対が最下段の熱電対である場合には、ステップS610に進み、温度導出部208は、鋳型140の高さ方向における位置が当該非正常熱電対に最も近い正常熱電対と2番目に近い正常熱電対で検出された温度を用いて、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出する。そして、ステップS601に戻る。
以上のように本実施形態では、鋳型140に埋め込まれた熱電対で検出された温度が所定の温度内である場合、当該熱電対で検出された温度の単位時間(1サンプリング期間)当たりの変化量である温度変化量|ΔT|が所定値以上であるか否かを判定し、温度変化量|ΔT|が所定値以上である場合、当該熱電対を非正常熱電対であるとした。したがって、鋳型140の内部の温度そのものに加えて、温度の時間変化からも、熱電対により正常な測定を行えているか否かを判定することができる。これにより、熱電対により正常な測定が行われていないことを確実に検出することができる。また、所定値として、拘束性ブレークアウトが発生した場合に相当する熱電対の温度の時間変化の絶対値の最大値よりも大きい値を設定するので、ブレークアウトによる温度の上昇と、熱電対が正常でないことに起因する温度の上昇とを判別することができる。これにより、ブレークアウトの発生を見逃すことを抑制することができる。
本実施形態では、非正常熱電対と同じ高さにある正常熱電対が2つ以上ある場合、線形補間を行って、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、当該非正常熱電対と同じ高さにある正常熱電対のうち、鋳型140の周方向の一方向(例えば右方向)において当該非正常熱電対に最も近い位置にある正常熱電対で検出された温度と、鋳型140の周方向の他方向(例えば左方向)において当該非正常熱電対に最も近い位置にある正常熱電対で検出された温度と、の算術平均値を、当該非正常熱電対がある位置における温度として導出してもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (9)
- 連続鋳造設備でビレット又はブルームを製造するための鋳型の内部に配置された複数の熱電対の温度を管理する連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置であって、
前記熱電対で検出された温度が所定の範囲内であるか否かを判定する温度判定手段と、
前記温度判定手段により、前記熱電対で検出された温度が所定の範囲内であると判定されると、当該熱電対で検出された温度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値以上であるか否かを判定する温度変化判定手段と、
前記温度変化判定手段により、前記熱電対で検出された温度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値以上であると判定されると、当該熱電対を、正常に温度の検出を行っていない非正常熱電対として特定する特定手段と、
を有することを特徴とする連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置。 - 前記所定値は、前記連続鋳造設備でブレークアウトが発生した場合に相当する前記熱電対で検出される温度の単位時間当たりの変化量の絶対値の最大値を上回る値であることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置。
- 前記特定手段により特定された前記非正常熱電対がある位置における温度を導出する温度導出手段を更に有し、
前記温度導出手段は、
前記複数の熱電対のうち、正常に温度の検出を行っている熱電対である正常熱電対の中から、前記鋳型の高さ方向における位置が前記非正常熱電対に近い正常熱電対を、前記鋳型の周方向における位置が前記非正常熱電対に近い正常熱電対よりも優先して選択し、選択した正常熱電対で検出された温度を用いて、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出することを特徴とする請求項1又は2に記載の連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置。 - 前記温度導出手段は、
前記鋳型の高さ方向における位置が前記非正常熱電対と同じである前記正常熱電対がある場合には、当該正常熱電対で検出された温度のみを用いて、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出し、
前記鋳型の高さ方向における位置が前記非正常熱電対と同じである前記正常熱電対がない場合には、前記鋳型の高さ方向の一方向において当該非正常熱電対に最も近い位置にある前記正常熱電対で検出された温度と、前記鋳型の高さ方向の他方向において当該非正常熱電対に最も近い位置にある前記正常熱電対で検出された温度とを用いて、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出することを特徴とする請求項3に記載の連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置。 - 前記温度導出手段は、
前記鋳型の高さ方向における位置が前記非正常熱電対と同じである前記正常熱電対が1つである場合には、当該正常熱電対で検出された温度を、当該非正常熱電対がある位置における温度とし、
前記鋳型の高さ方向における位置が前記非正常熱電対と同じである前記正常熱電対が2つ以上である場合には、当該正常熱電対のうち、前記鋳型の周方向の一方向において当該非正常熱電対に最も近い位置にある正常熱電対で検出された温度と、前記鋳型の周方向の他方向において当該非正常熱電対に最も近い位置にある正常熱電対で検出された温度のみを用いて、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出することを特徴とする請求項3又は4に記載の連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置。 - 前記温度導出手段は、
前記鋳型の高さ方向における位置が前記非正常熱電対と同じである前記正常熱電対がない場合であって、当該非正常熱電対が、前記複数の熱電対のうち最も高い位置にある熱電対である場合には、2番目に高い位置にある前記正常熱電対のうち、前記鋳型の周方向における位置が当該非正常熱電対に最も近い正常熱電対で検出された温度を、当該非正常熱電対がある位置における温度とすることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置。 - 前記温度導出手段は、
前記鋳型の高さ方向における位置が前記非正常熱電対と同じである前記正常熱電対がない場合であって、当該非正常熱電対が、前記複数の熱電対のうち最も低い位置にある熱電対である場合には、前記鋳型の高さ方向における位置が2番目に低い位置にある前記正常熱電対で検出された温度と、3番目に低い前記正常熱電対で検出された温度とを用いて、当該非正常熱電対がある位置における温度を導出することを特徴とする請求項3〜6の何れか1項に記載の連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置。 - 連続鋳造設備でビレット又はブルームを製造するための鋳型の内部に配置された複数の熱電対の温度を管理する連続鋳造設備の鋳型内温度管理方法であって、
前記熱電対で検出された温度が所定の範囲内であるか否かを判定する温度判定工程と、
前記温度判定工程により、前記熱電対で検出された温度が所定の範囲内であると判定されると、当該熱電対で検出された温度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値以上であるか否かを判定する温度変化判定工程と、
前記温度変化判定工程により、前記熱電対で検出された温度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値以上であると判定されると、当該熱電対を、正常に温度の検出を行っていない非正常熱電対として特定する特定工程と、
を有することを特徴とする連続鋳造設備の鋳型内温度管理方法。 - 請求項1〜7の何れか1項に記載の連続鋳造設備の鋳型内温度管理装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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