JP2015204754A - 緑茶エキスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】殺菌済容器詰緑茶飲料に微量添加することにより、フレッシュでグリーンな香気を付与することができる素材を提供すること。【解決手段】緑茶の製茶工程における、生茶葉の蒸熱処理工程で茶葉から発生する生茶葉香気成分を含む水蒸気を集めて集められた水蒸気を冷却して生茶葉香気成分含有エキスを得、その後に通常の工程で製茶して得られる緑茶を水蒸気蒸留して水蒸気抽出エキスを得、水蒸気蒸留された茶葉残渣を水により抽出して水抽出エキスを得、生茶葉香気成分含有エキス、水蒸気抽出エキスおよび水抽出エキスを混合する緑茶エキスの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、香気および呈味の優れた緑茶エキスの製造方法に関する。さらに詳しくは、緑茶飲料などの殺菌済容器詰緑茶飲料などに配合した場合に、緑茶のフレッシュでグリーンな香気と、円やかでふくよかな香気のバランスを付与および改良し、ならびに、呈味においても旨味、甘味を付与できる緑茶エキス、および、その緑茶エキスの製造方法、ならびに、その緑茶エキスが配合された飲料に関する。
近年、緑茶飲料を缶あるいはペットボトル等に充填した商品が提供されている。無糖の緑茶飲料は、消費者の甘味離れから高い支持を得て、その生産量は1990年〜2010年頃にかけて大幅に増加し、その後も消費者からの安定した支持を受け、飲料市場において、高い水準の割合を占める安定した市場を形成している。
しかしながら、このような殺菌済密閉容器入り緑茶飲料は、加熱殺菌などの加工工程で淹れたての緑茶が本来有している香味、特に、フレッシュでグリーンな香気が消失または変質してしまうという問題点がある。
このような問題点を解決するため種々の検討がなされさまざまな提案がされている。例えば、茶飲料に香料を配合する方法として、特定の香料化合物を添加する方法(特許文献1、2、3参照)、天然香料類、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、酸類、エステル類、ラクトン類、含窒素化合物類、含硫化合物類、フェノール類、フラン類、ピラン類などの様々な香料化合物を調合することにより得られる緑茶様フレーバー組成物を添加する方法(特許文献4)などが提案されている。しかしながら、緑茶飲料は健康志向イメージが強いため、フレーバーを添加した緑茶飲料は一般消費者の支持が得られにくく、それほど多く活用されているとは言い難い。
また、製茶された茶葉から水蒸気蒸留等の方法により回収した香気を飲料に添加する方法も提案されており、例えば、緑茶を水蒸気蒸留して得られる留出液を茶葉と接触させ、留出液中の加熱蒸留臭を除去する緑茶フレーバーの製造方法(特許文献5)、茶類などの嗜好飲料用原料を水蒸気蒸留して得られるフレーバーと、該原料を気−液向流接触装置に供して得られるフレーバーを組み合わせた新規フレーバー(特許文献6)、茶葉から減圧水蒸気蒸留により分画して得られる留出液を除去する工程1、工程1の留出液を除去した後の緑茶葉を常圧水蒸気蒸留により分画して留出液を得る工程2、工程2の水蒸気蒸留後の緑茶葉残渣を水抽出して抽出液を得る工程3、工程2の留出液と工程3の抽出液を混合して緑茶エキスとする工程4、および工程4の緑茶エキスを100℃以下の温度で加熱処理する工程5を含む工程により得られる緑茶エキス(特許文献7)などが提案されている。しかしながら、通常、製茶した茶葉から回収して得られる香気では、その香気抽出量に限界があり、また飲料への香気成分配合量を相対的に増やそうとすると、香気成分の抽出に使用した茶葉の一部のみを水溶性成分の抽出に用いるなどの手法がとられ、コスト面で割高になるなどの問題点があった。
そこで、酵素処理により、茶葉中の配糖体を分解し、香気量を増加させ、それを回収し飲料に添加する方法も提案されており、このような提案として、例えば、55〜75℃の温水を緑茶葉に対して10〜20倍質量添加して3〜5分間抽出した後、茶殻を除去して得られた緑茶抽出液に、緑茶抽出液に対して0.01〜0.05質量%のβ−プリメベロシダーゼを添加し、35〜45℃にて0.5〜3時間酵素処理を行うことを特徴とする緑茶エキスの調製方法(特許文献8)、茶葉をタンナーゼで処理する際および/または処理
した後、茶葉に配糖体分解酵素を作用させることを特徴とする香気が増強された茶類エキスの製法(特許文献9)、茶類エキス、茶類スラリー及び/又は茶葉に、グリーン様香気化合物を生成する酵素及び/又は酵素群より選ばれる少なくとも1種を作用させることを特徴とする酵素処理茶類エキスの製造方法(特許文献10)などが提案されている。しかしながら、これらの提案においても前記同様やはり残渣の茶葉が一部抽出されないため、コスト面で割高になるなどの問題点があった。
また、前記水蒸気蒸留の方法において、さらに香気を捕捉するために、茶などの香気起源物質から水蒸気蒸留によりリカバリーを回収する工程において、排気されるアロマガスを有機合成吸着剤に吸着させ、溶媒で溶出させることを特徴とする、香気成分の捕集方法(特許文献11)が提案されている。しかしながら、この方法は、あくまでも水蒸気の冷却による凝縮では回収しきれない軽い香気成分を捕捉する方法であり、得られる香気量はわずかであり、それほど多くの効果を期待できるとは言い難い。
一方、特にフレッシュでグリーンな香気に着目し、茶生葉を凍結処理し、それを水蒸気蒸留して得られる留出液を、香味として緑茶飲料に添加する方法(特許文献12)が提案されている。この方法は、フレッシュでグリーンな香気を付与する方法としては大変興味深いが、やはり残渣の茶葉が抽出されないため、コスト面で問題点が考えられる。
そこで、製茶工程において飛散する香気を回収する方法も提案されており、例えば、原料茶葉を仕上加工するための火入乾燥時に発生する排気を回収し、当該排気中から茶香気成分を含む水溶液を抽出することを特徴とする茶香気成分含有水溶液の製造方法(特許文献13)、製茶蒸機の処理茶葉排出側の蒸気排出口から排出される蒸気を回収し、冷却して茶生葉の香気成分を捕集することを特徴とする茶生葉の香気成分捕集方法(特許文献14)、製茶プロセスまたは製茶加工プロセスにおける茶葉香気成分の回収方法、および前記方法により回収された茶葉香気成分を用いた茶飲料の製造方法(特許文献15)などが提案されている。これらの方法は、それなりに効果のある方法であるが、まだまだ改良の余地があると考えられる。
特許第3058165号公報 特許第3026437号公報 特許第3026436号公報 特開2005−143467号公報 特開平8−116882号公報 特開2003−33137号公報 特開2012−88号公報 特開2006−109797号公報 特開2006−75112号公報 WO2006/062133国際公開公報 特開2007−321017号公報 特開2005−160416号公報 特開2002−330698号公報 特開2011−250738号公報 特開2012−139215号公報
本発明の目的は、殺菌済容器詰緑茶飲料とした場合の飲料の殺菌前に微量添加すること
により、香気、特にフレッシュでグリーンな香気が残存し、かつ、緑茶の円やかでふくよかな香気のバランスを付与および改良し、ならびに、呈味においても旨味、甘味を付与できる緑茶エキスおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、特許文献14、15にも記載されている製茶蒸機の処理茶葉排出側の蒸気排出口から排出される蒸気を回収し、冷却して茶生葉の香気成分を捕集することによる茶生葉の香気成分捕集方法に着目し、これらの方法をさらに改良することにより、緑茶飲料に添加した場合に、さらに良好な香味を付与できる素材の製造方法について鋭意研究した。
その結果、生茶葉から荒茶を製造する製茶工程における際の蒸熱処理工程では、フレッシュでグリーンな香気が飛散するが、蒸熱処理以降の製茶工程では茶葉中において再び増加する香気成分も多いことが判明した。そこで、製茶工程における蒸熱処理工程で飛散する蒸気を回収することにより得られた香気と、製茶後の茶葉を水蒸気蒸留して得られた香気の両方を併用することで、緑茶のフレッシュでグリーンな香気と、円やかでふくよかな香気のバランスが極めて良好になることを見いだした。さらに、緑茶のうちでも摘茶前に一定期間遮光処理が施された茶、例えば、かぶせ茶は、青さがマイルドになり、殺菌された緑茶飲料に適したグリーンな香気が付与できることを見いだした。
さらには摘茶前に一定期間遮光処理が施された茶のうちでも、特に碾茶は、青臭すぎずに、フレッシュでグリーン、かつ、円やかでふくよかな香気を有し、碾茶から得られたこれらの香気を飲料、特に殺菌済容器詰飲料に使用した場合の緑茶飲料に対し、緑茶のフレッシュでグリーンな香気と、円やかでふくよかな香気のバランスを付与できることを見いだした。さらにまた、碾茶は蒸熱処理工程以降の一般的な製茶工程のうち、粗揉、揉捻、中揉、精揉といった、茶葉を乾燥させながら撚っていく工程を含んでいないため、茶葉中のエキス分の一部が装置への付着などにより減少せず、製茶後の茶葉に旨味が豊富に残存しており、水により抽出してエキスとした場合に、旨味、甘味を豊富に有するエキスが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
かくして、前記課題は、本発明したがう、次の工程(a)〜(d)を含んでなる緑茶エキスの製造方法を提供することにより解決できる。
(a)生茶葉を蒸熱処理することにより生茶葉から発生する生茶葉香気成分を含む水蒸気を集め、集められた水蒸気を冷却して生茶葉香気成分含有エキスを得る工程、
(b)工程(a)において蒸熱処理された生茶葉から製茶された緑茶を得、こうして得られた緑茶を水蒸気蒸留して水蒸気抽出エキスを得る工程、
(c)工程(b)で水蒸気蒸留後の緑茶を水により抽出して水抽出エキスを得る工程、
(d)工程(a)で得られた生茶葉香気成分含有エキス、工程(b)で得られた水蒸気抽出エキスおよび工程(c)で得られた水抽出エキスを混合する工程。
別の態様の本発明は、生茶葉が摘茶前3日以上に渡り、好ましくは20日間以上に渡り、より好ましくは30日間以上に渡り、遮光処理された生茶葉を出発原料として使用する。
本発明において、より具体的には、工程(b)の水蒸気蒸留が、カラム水蒸気蒸留、または、気−液向流接触法による水蒸気蒸留であり、工程(c)の抽出が、緑茶残渣を、タンナーゼ、プロテアーゼ、ペクチナーゼおよび糖質分解酵素から選ばれる1種または2種以上で酵素処理することを含んでいてもよい。
さらなる別の態様の本発明は、前記緑茶エキスの製造方法により得られる緑茶エキスを
提供する。また、該茶葉エキスを配合した殺菌済容器詰飲料も提供する。
本発明により得られた緑茶エキスは、緑茶のフレッシュでグリーンな香気と、円やかでふくよかな香気のバランスを保った、良好な香気を有し、また、呈味的にも旨味、甘味を豊富に含む。その結果、本発明により得られた緑茶エキスは、緑茶飲料などの殺菌済容器詰緑茶飲料などに配合した場合に、緑茶のフレッシュでグリーンな香気と、円やかでふくよかな香気のバランスを付与および改良することができるという優れた効果を有する。また、呈味においても、本発明により得られた緑茶エキスを添加した殺菌済容器詰緑茶飲料は、旨味および甘味が増強されるという優れた効果を有する。さらにまた、本発明の緑茶エキスの製造においては、本来廃棄される蒸熱処理工程により飛散するアロマを回収し、また、製茶後した茶葉を水蒸気蒸留した後の茶葉も有効に使用するため、コスト面でも有利であるという、産業上極めて優れた効果を有する。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明で使用する出発原料の生茶葉としては、本発明の目的に沿う限り限定されないが、一般的に緑茶を製茶する際に使用される緑茶(Camellia sinensis)の生茶葉を挙げることができる。本発明にいう「生茶葉」は、つみとった茶葉であって、加熱、乾燥処理等の施されていない未加工の茶葉を意味する。
一般的に緑茶を製茶する際には、まず、摘茶後の生茶葉が、蒸熱処理→粗揉→揉捻→中揉→精揉→乾燥の各工程を経て荒茶とされる。さらにこの荒茶が、篩分け→切断→火入れ乾燥→選別→合組→の各工程を経て仕上茶となる。
本発明でいう緑茶とは、Camellia sinensisの生茶葉が前記工程を経た後のものであり、例えば、荒茶、煎茶、玉露、かぶせ茶、てん茶、番茶、ほうじ茶、等の蒸し製の不発酵茶のすべてが包含される。
蒸熱処理では生茶葉に蒸気が当てられ、生茶葉中のポリフェノールオキシダーゼなどの酵素が失活される。この蒸熱処理工程で酵素が失活することにより、その後の工程での緑色が維持されるとともに、フレッシュでグリーンな香気や緑茶としての呈味が維持される。その後、一般的な緑茶、例えば、煎茶では粗揉、揉捻、中揉、精揉の工程により、ゆっくりと揉まれながら乾燥させられ、茶葉中の水分は徐々に葉の中心部から外側へと移動し、乾燥すると共に、茶葉に撚りがかかっていく。精揉後、さらに乾燥工程により保存安定性が高められる。
本発明では、まず、工程(a)として、摘茶された生茶葉に、通常の緑茶の製茶工程に従って、蒸熱処理を施す。この蒸熱処理の本来の目的は、前述の通り、生茶葉中に含まれているポリフェノールオキシダーゼなどの酵素を失活させ、その後の製茶工程においても茶葉の緑色を保持することにあるが、同時に、いわゆる「青臭」といわれる青臭い臭いを除去することにより、緑茶を淹れて飲用とした時にバランスのよい香気とすることにある。本発明では、蒸熱処理により発生する「青臭」を包んでいる生茶葉香気成分を含む水蒸気を集め、集められた水蒸気を冷却して生茶葉香気成分含有エキス(蒸熱時のアロマの回収香)を得る。生茶葉に蒸熱処理を施す際の処理条件は、一般的な処理条件を採用することができ、生茶葉の摘茶時期や葉の質、目標とする品質、装置などによっても異なるが、例えば、回転胴型蒸機または送帯型蒸機を用い、生茶葉を一定量ずつ投入しながら、生茶葉1質量部当たり0.5〜1.8質量部の蒸気を製茶蒸機に供給し、通常30〜60秒間程度蒸熱処理を行う。この生茶葉に接触した蒸気には、生茶葉の香気成分が含まれている
が、この蒸気をフードなどを用いて集め、その先に冷媒により冷却された冷却管(冷却管の先にはさらに吸気機構を設ける)を設置し、凝縮水を回収する。この操作により生茶葉1Kg当たり0.01〜1.5質量部、好ましくは0.05〜1.2質量部の生茶葉香気成分含有エキスを得る。得られた生茶葉香気成分含有エキスはすぐに使用しない場合は、使用まで、窒素封入し冷凍保存しておくことにより香気の劣化を防ぐことができる。
本発明の、工程(b)では、工程(a)における蒸熱処理された生茶葉を、前述の一般的な製茶工程に供し、製茶を行い、緑茶を製造する。前記生茶葉1Kgからは、通常、0.15〜0.25質量部の緑茶(製茶された緑茶)が得られる。次いで、こうして得られる緑茶を水蒸気蒸留し、水蒸気抽出エキス(水蒸気蒸留留出液)を得る。蒸熱処理以降の製茶工程では、先の蒸熱処理により、一旦、減少した香気成分の一部が再び増加することが知られており、本工程により新たに増加した香気成分を含めた、製茶された「緑茶」の香気成分が採取される。水蒸気蒸留の方法としては、例えば、茶類原料を適当な粒度に粉砕して水と混合してスラリーとし、そのスラリーを気−液向流接触法により処理して香気回収する方法;茶類原料をそのまま、あるいは粉砕してから、カラムなどの容器に充填し、カラムに水蒸気を送り込み、茶類原料を水蒸気と接触させ、接触後の水蒸気を凝縮させ回収する方法などを採用することができる。特に、気−液向流接触抽出法が好適である。
気−液向流接触抽出法は、それ自体既知の各種の方法で実施することができ、例えば、特公平7−22646号公報に記載の装置を用いて抽出する方法を採用することができる。この装置を用いて香気を回収する方法を具体的に説明すると、回転円錐と固定円錐が交互に組み合わせられた構造を有する気−液向流接触抽出装置の回転円錐上に、液状またはペースト状の茶類原料を上部から流下させると共に、下部から蒸気を上昇させ、緑茶原料が本来的に存在している香気成分を回収する方法を例示することができる。この気−液向流接触抽出装置の操作条件は、該装置の処理能力、原料の種類および濃度、香気の強度その他によって任意に選択することができる。緑茶原料スラリーにおける緑茶原料と水の比率は、緑茶原料スラリーが流動性をもつ状態となる量であればいかなる比率も採用することができるが、緑茶原料1質量部に対し通常水5倍量〜30倍量、好ましくは水8倍量〜20倍量の範囲内を例示することができる。水が、この範囲より下回る場合、流動性が出にくくなり、また、水がこの範囲を上回る場合、得られる水蒸気抽出エキスの香気が弱くなる傾向がある。
気−液向流接触抽出装置の操作条件の一例を示せば、下記のとおりである。
原料供給速度:300〜700L/hr
蒸気流量:5〜50kg/hr
蒸発量:3〜35kg/hr
カラム底部温度:40〜100℃
カラム上部温度:40〜100℃
真空度:1.3KPa〜大気圧。
他方、カラムによる水蒸気蒸留法は、カラムに充填した緑茶原料に水蒸気を通気し、水蒸気に伴われて留出してくる香気成分を水蒸気とともに凝縮させる方法であり、加圧水蒸気蒸留、常圧水蒸気蒸留、減圧水蒸気蒸留、過熱水蒸気蒸留のいずれかの蒸留手段を採用することができる。具体的には、例えば、緑茶原料を仕込んだ水蒸気蒸留釜の底部から水蒸気を吹き込み、上部の留出側に接続した冷却器で留出蒸気を冷却することにより、凝縮物として揮発性香気成分を含有する水蒸気抽出エキスを捕集することができる。必要に応じて、この香気捕集装置の先に冷媒を用いたコールドトラップを接続することにより、より低沸点の揮発性香気成分をも確実に捕集することができる。また、香気成分の加熱による劣化を効果的に防止することができるので、窒素ガスなどの不活性ガス及び/又はビタミンCなどの抗酸化剤の存在下で水蒸気蒸留することが好ましい。
このようにして緑茶質量部当たり0.2〜2質量部の水蒸気抽出エキスを得る。得られた水蒸気抽出エキスはすぐに使用しない場合は、使用まで、窒素封入し冷凍保存しておくことにより香気の劣化を防ぐことができる。
本発明の工程(c)では、工程(b)で水蒸気蒸留後の緑茶を水により抽出し、水抽出エキスを得る。緑茶を抽出する方法は、カラム抽出、ニーダー抽出、攪拌抽出など従来の方法により行う。また抽出時の水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。また煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつついわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法も併用してもよい。
抽出方法としては、例えば、前記緑茶残渣1質量部あたり水約1〜約100質量部を加え、静置もしくは攪拌条件下に、室温〜約100℃にて、使用温度に応じて約2分〜約5時間抽出を行い、冷却後、遠心分離、圧搾、濾過などのそれ自体既知の方法で固液分離することによって不溶物を除去することにより得ることができる。また、例えば、茶葉残渣をガラス、または、ステンレスなど適宜な材質のカラムに充填し、カラムの上部もしくは下部より、室温〜約100℃の熱水を、重力による自然通液、または、定量ポンプなどを用いて流し、カラム抽出することによって得ることができる。かかるカラム抽出は所望により複数のカラムを直列に接続して行うことができる。このようにして得られる抽出エキスは所望により濃縮して濃縮エキスとすることもできる。抽出エキスの濃度には特に制限はないが、一般的には、Brix約0.5°〜約50°の範囲内が適している。
また、工程(c)の水抽出においては、水蒸気蒸留後の緑茶を、タンナーゼ、プロテアーゼ、ペクチナーゼおよび糖質分解酵素から選ばれる1種または2種以上で酵素処理して酵素処理エキスを得ることもできる。酵素処理は、例えば、緑茶残渣と水の混合物に酵素を添加して行うことができ、具体的には以下の様にして得ることができる。
例えば、水蒸気蒸留法として気−液向流接触抽出法により香気を回収する場合には、緑茶残渣がすでに水抽出エキスを含むスラリー状となっているため、酵素処理に適当な温度まで冷却し、そのまま酵素を添加することができる。また、カラム水蒸気蒸留の残渣の場合には、酵素処理に必要な量の水として残渣原料1質量部あたり通常1質量部〜100質量部、好ましくは5質量部〜50質量部の水をカラムに加え、攪拌または静置条件下にて酵素反応を行うことができる。次いで、水と茶葉残渣の混合物に酵素を添加し、酵素処理を行う。本発明では酵素処理を、緑茶原料自体を含めた系で行うため、茶葉残渣の組織が分解し、呈味成分が多量に生成し、甘味、旨味などの呈味の強い水抽出エキスを得ることができる。
この酵素処理に使用することのできる酵素としては、特に制限はなく、例えば、糖質分解酵素、プロテアーゼ、リパーゼ、タンナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼなどを例示することができる。さらに、糖質分解酵素としては、具体的には、例えば、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、アラバナーゼ、デキストラナーゼ、グルカナーゼ、マンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼなどを例示することができる。これらの酵素は適宜組み合わせて使用することにより、酵素処理エキスの甘味や旨味を増強することができる。特に、旨味増強、甘味増強の観点から、(1)プロテアーゼおよびタンナーゼの組み合わせ、(2)グルコアミラーゼおよびヘミセルラーゼの組み合わせ、(3)グルコアミラーゼおよびペクチナーゼの組み合わせ、または(4)グルコアミラーゼおよびセルラーゼの組み合わせが好適である。
茶葉中には約25%のタンパク質が含まれており(5訂食品成分表参照)、この組成は水蒸気蒸留後の茶葉残渣においてもそれほど変化せず同程度と推定される。このタンパク
質をプロテアーゼで分解すれば、旨味の強い緑茶エキスが得られると考えられるが、茶葉中のタンパク質はタンニンと結合しているため、茶葉残渣にプロテアーゼを単独で作用させても、ほとんどアミノ酸は生成しない。しかしながら、茶葉残渣にプロテアーゼおよびタンナーゼを作用させることにより蒸留残渣中のタンパク質の一部が分解し、旨味やコク味が強く、渋味の少ない緑茶エキスを得ることができる。
糖質分解酵素の組み合わせのうち、前記の(2)グルコアミラーゼおよびヘミセルラーゼの組み合わせ、(3)グルコアミラーゼおよびペクチナーゼの組み合わせ、または(4)グルコアミラーゼおよびセルラーゼの組み合わせを用いて緑茶残渣を処理することにより得られる緑茶エキスは、理由は明らかではないが、他の糖質分解酵素の組み合わせを用いて得られる緑茶エキスから予想されるよりも、遥かに甘味が強く生成するため、特に好適である。
タンナーゼは、タンニン中の水酸基に没食子酸がエステル結合しているデプシド結合を加水分解する酵素、例えば、エピガロカテキンガレートをエピガロカテキンと没食子酸に加水分解する酵素である。本発明で使用することのできるタンナーゼとしては、具体的には、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属、リゾムコール属、ラクトバシラス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、ロネピネラ属などに属するタンナーゼ生産菌を、これら糸状菌の培養に通常用いられる培地で常法に従って固体培養または液体培養し、得られる培養物またはその処理物を常法により精製処理することにより得られるものを挙げることができる。また、市販されているタンナーゼ、例えば、タンナーゼ(500U/g;キッコーマン社製)、タンナーゼ(5,000U/g;キッコーマン社製)、タンナーゼ(500U/g;三菱化学フーズ社製)などを用いることもできる。タンナーゼの使用量は、力価などにより一概には言えないが、通常、緑茶残渣の元の緑茶原料の質量を基準として通常約0.1〜約50U/g、好ましくは約0.5〜約20U/gの範囲内を例示することができる。
プロテアーゼは、蛋白質やペプチドのペプチド結合を加水分解する酵素である。本発明で使用可能なプロテアーゼとしては、例えば、プロテアーゼA、プロテアーゼM、プロテアーゼP、ウマミザイム、ペプチダーゼR、ニューラーゼ(登録商標)A、ニューラーゼ(登録商標)F(以上、天野エンザイム社製の麹菌由来プロテアーゼ);スミチーム(登録商標)AP、スミチーム(登録商標)LP、スミチーム(登録商標)MP、スミチーム(登録商標)FP、スミチーム(登録商標)LPL(以上、新日本化学工業社製の麹菌由来プロテアーゼ);プロチン(登録商標)FN(大和化成社製の麹菌由来プロテアーゼ);デナプシン2P、デナチーム(登録商標)AP、XP−415(以上、ナガセケムテックス社製の麹菌由来プロテアーゼ);オリエンターゼ(登録商標)20A、オリエンターゼ(登録商標)ONS、テトラーゼ(登録商標)S(以上、エイチビィアイ社製の麹菌由来プロテアーゼ);モルシン(登録商標)F、PD酵素、IP酵素、AO−プロテアーゼ(以上、キッコーマン社製の麹菌由来プロテアーゼ);サカナーゼ(科研ファルマ社製の麹菌由来プロテアーゼ);パンチダーゼ(登録商標)YP−SS、パンチダーゼ(登録商標)NP−2、パンチダーゼ(登録商標)P(以上、ヤクルト薬品工業社製の麹菌由来プロテアーゼ);フレーバザイム(登録商標)(ノボザイムズジャパン社製の麹菌由来プロテアーゼ);コクラーゼ(登録商標)SS、コクラーゼ(登録商標)P(以上、三共ライフテック社製の麹菌由来プロテアーゼ);VERON PS、COROLASE PN−L(以上、ABエンザイム社製の麹菌由来プロテアーゼ);プロテアーゼN、プロテアーゼNL、プロテアーゼS、プロレザー(登録商標)FG−F(以上、アマノエンザイム社製の細菌由来プロテアーゼ);プロチンP、デスキン、デピレイス、プロチンA、サモアーゼ(登録商標)(以上、大和化成社製の細菌由来プロテアーゼ);ビオプラーゼ(登録商標)XL−416F、ビオプラーゼ(登録商標)SP−4FG、ビオプラーゼ(登録商標)SP−15FG(以上、ナガセケムテックス社製の細菌由来プロテアーゼ);オリエ
ンターゼ(登録商標)90N、ヌクレイシン(登録商標)、オリエンターゼ(登録商標)10NL、オリエンターゼ(登録商標)22BF(以上、エイチビィアイ社製の細菌由来プロテアーゼ);アロアーゼ(登録商標)AP−10(ヤクルト薬品工業社製の細菌由来プロテアーゼ);プロタメックス(登録商標)、ニュートラーゼ(登録商標)、アルカラーゼ(登録商標)(以上、ノボザイムズ社製の細菌由来プロテアーゼ);COROLASE N、COROLASE 7089、VERON W、VERON P(以上、ABエンザイム社製の細菌由来プロテアーゼ);エンチロンNBS(洛東化成工業社製の細菌由来プロテアーゼ);アルカリプロテアーゼGL440、ピュラフェクト(登録商標)4000L、プロテアーゼ899、プロテックス6L(以上、ジェネコン協和社製の細菌由来プロテアーゼ);アクチナーゼ(登録商標)AS、アクチナーゼ(登録商標)AF(以上、科研ファルマ社製の放線菌由来プロテアーゼ);タシナーゼ(登録商標)(ジェネンコア協和社製の放線菌由来プロテアーゼ);パパインW−40(アマノエンザイム社製の植物由来プロテアーゼ);食品用精製パパイン(ナガセケムテックス社製の植物由来プロテアーゼ);その他、動物由来のペプシン、トリプシンなどを挙げることができる。これらのプロテアーゼの使用量は、力価などにより異なり一概には言えないが、通常、茶葉残渣の元の緑茶の質量を基準として通常、約0.01U/g〜約100U/g、好ましくは約1U/g〜約80U/gの範囲内を例示することができる。
プロテアーゼおよびタンナーゼの組み合わせによる酵素処理条件としては、例えば、(1)緑茶のスラリーを気‐液向流接触処理した後の緑茶残渣スラリーに対し、あるいは(2)カラムで水蒸気蒸留した後に生じる緑茶残渣1質量部あたり水を通常8〜50質量部、好ましくは10〜20質量部添加し、約60〜約121℃で約2秒〜約20分間殺菌した後冷却したものに対し、プロテアーゼおよびタンナーゼを添加し、約20〜約60℃で約30分〜約24時間酵素処理を行う。酵素処理後、約60〜約121℃で約2秒〜約20分間加熱して酵素を失活させた後冷却し、固液分離、濾過することにより、酵素処理エキスを得ることができる。
アミラーゼは、グリコシド結合を加水分解することによりデンプン中のアミロースやアミロペクチンをグルコース、マルトースおよびオリゴ糖などに変換する酵素であり、アミラーゼにはα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼが包含される。
α−アミラーゼは、デンプンやグリコーゲンのα−1,4結合を不規則に切断し、多糖ないしオリゴ糖を生み出す酵素である。β−アミラーゼは、デンプンやグリコーゲンを麦芽糖に分解する酵素である。グルコアミラーゼは、糖鎖の非還元末端のα−1,4結合を分解してブドウ糖を産生する酵素である。
グルコアミラーゼには、市販品として、例えば、グルク(登録商標)SG、グルクザイム(登録商標)AF6、グルクザイム(登録商標)NL4.2、酒造用グルコアミラーゼ「アマノ」SD(以上、天野エンザイム社製);GODO−ANGH(合同酒精社製);コクラーゼ(登録商標)G2、コクラーゼ(登録商標)M(以上、三菱化学フーズ社製);オプチデックスL(ジェネンコア協和社製);スミチーム(登録商標)、スミチーム(登録商標)SG(以上、新日本化学工業社製);グルコチーム(登録商標)#20000(ナガセケムテックス社製);AMG、サンスーパー(以上、ノボザイムズジャパン社製);グルターゼAN(エイチビィアイ社製);ユニアーゼ(登録商標)K、ユニアーゼ(登録商標)2K、ユニアーゼ(登録商標)30、ユニアーゼ(登録商標)60F(以上、ヤクルト薬品工業社製);マグナックス(登録商標)JW−201(洛東化成工業社製);グリンドアミル(登録商標)AG(ダニスコジャパン社製)などが挙げられる。グルコアミラーゼの使用量は、蒸留残渣の元の緑茶原料の質量を基準として通常約0.1U/g〜約1,000U/g、好ましくは約1U/g〜約100U/gの範囲内を例示することができる。
ペクチナーゼは、ポリガラクツロナーゼ、ペクチックエンザイム、ポリメチルガラクツロナーゼ、ペクチンデポリメラーゼとも呼ばれ、ペクリニン酸、ペクチン、ペクチン酸などのα−1,4結合を加水分解する酵素である。ペクチナーゼは、細菌、カビ、酵母、高等植物、カタツムリなどに含まれていることが知られており、本発明ではこれらをはじめとする生物から採取したペクチナーゼを広く使用することができる。また、市販のペクチナーゼ製剤を使用することもできる。市販のペクチナーゼ製剤としては、例えば、スクラーゼ(登録商標)A、スクラーゼ(登録商標)N、スクラーゼ(登録商標)S(以上、三菱化学フーズ社製)、ペクチネックスウルトラ(登録商標)SP−L(ノボノルディクスA/S社製)、メイセラーゼ(登録商標)(明治製菓(株)社製)、ウルトラザイム(登録商標)(ノボノルディクスA/S社製)、ニューラーゼF(登録商標)(天野エンザイム(株)社製)などを例示することができる。ペクチナーゼの使用量は、ペクチナーゼ製剤には通常複数種類の酵素が含まれているため活性単位では表しにくく、緑茶残渣の元の緑茶に対して通常、約0.01質量%〜約5質量%、好ましくは約0.1質量%〜約2質量%の範囲内を例示することができる。
セルラーゼは、β−1,4−グルカン(例えば、セルロース)のグリコシド結合を加水分解する酵素である。セルロースは、D−グルコースがβ−1,4結合で分枝なく連結された多糖類の一種で、グルコースの数はおよそ5,000個であると言われている。セルロースは植物の細胞壁の主要な構成成分で、親水性は強いが水に不溶である。セルラーゼには、セルロースを分子内部から切断するエンドグルカナーゼと、糖鎖の還元末端と非還元末端のいずれかから分解し、セロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ(セロビオヒドロラーゼ)が存在する。また、市販のセルラーゼ類には、βーグルコシダーゼが混在し、グルコースを遊離するものも多い。本発明で用いることのできるセルラーゼとしては、セルロースを分解する活性を有するものであれば特に制限はなく、任意のものを使用することができ、市販のセルラーゼ製剤としては、例えば、セルラーゼT「アマノ」、セルラーゼA「アマノ」(以上、天野エンザイム社製);ドリセラーゼ(登録商標)KSM、マルチフェクト(登録商標)A40、セルラーゼGC220(以上、ジェネンコア協和社製);セルラーゼGODO−TCL、セルラーゼGODO TCD−H、ベッセレックス(登録商標)、セルラーゼGODO−ACD(以上、合同酒精社製);Cellulase(東洋紡績社製);セルライザー(登録商標)、セルラーゼXL−522(以上、ナガセケムテックス社製);セルソフト(登録商標)、デニマックス(登録商標)(以上、ノボザイムズ社製);セルロシン(登録商標)AC40、セルロシン(登録商標)AL、セルロシン(登録商標)T2(以上、エイチビィアイ社製);セルラーゼ“オノズカ”3S、セルラーゼY−NC(以上、ヤクルト薬品工業社製);スミチーム(登録商標)AC、スミチーム(登録商標)C(以上、新日本化学工業社製);エンチロンCM、エンチロンMCH、バイオヒット(洛東化成工業社製)などが挙げられる。セルラーゼの使用量は、市販のセルラーゼ製剤には通常複数種類の酵素が含まれているため活性単位では表しにくく、緑茶残渣の元の緑茶に対して通常、約0.01質量%〜約5質量%、好ましくは約0.1質量%〜約2質量%の範囲内を例示することができる。
ヘミセルラーゼは、ヘミセルロースを分解する酵素である。ヘミセルロースは、陸上植物細胞の細胞壁を構成する多糖類のうち、セルロースおよびペクチン以外のものであり、構成する糖が多様であり、結合様式も複雑である。さらに、セルロースと水素結合、リグニンと共有結合などを形成し、細胞壁を補強する役割をしている。骨格となる主鎖の糖に側鎖の糖などが結合した構造をしており、それを分解するヘミセルラーゼは、非常に種類が多い。ヘミセルラーゼとしては、例えば、グルカナーゼ、マンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、アラビナーゼ、ポリガラクツロナーゼなどを挙げることができるが、これらの多種類の糖結合を分解する活性を複数併せもった酵素ととらえることもできる。市販のヘミセルラーゼとしては、例えば、ヘミセルラーゼ「アマ
ノ」(天野製薬社製)ベイクザイム(登録商標)HS2000、ベイクザイム(登録商標)IConc(以上、日本シイベルヘグナー社製)、エンチロンLQ(洛東化成工業社製)、セルロシン(登録商標)HC100、セルロシン(登録商標)HC、セルロシン(登録商標)TP25、セルロシン(登録商標)B、ヘミセルラーゼM(以上、エイチビィアイ社製)、スミチーム(登録商標)X(新日本化学工業社製)、VERON191、VERON393(以上、レーム・エンザイム社製)などが挙げられる。ヘミセルラーゼの使用量は、市販のヘミセルラーゼ製剤には通常複数種類の酵素が含まれているため活性単位では表しにくく、緑茶残渣の元の緑茶に対して通常、約0.01質量%〜約5質量%、好ましくは約0.1質量%〜約2質量%の範囲内を例示することができる。
本発明では、さらに、使用する糖質分解酵素の活性中に実質的にインベルターゼ活性を有しないことが好ましい。緑茶原料中には一般的にある程度の量のショ糖が含まれていることが多い。また、糖質分解酵素を組み合わせて作用させた場合に多糖から分解してわずかにショ糖が遊離してくる可能性も否定できない。本発明では、前記のとおり、糖質分解酵素の組み合わせにより緑茶エキス中にグルコースが多量に増加するが、この際、ショ糖を分解してしまうと、甘味がやや低減し、さらに酸味や雑味が生成してしまうというマイナスの作用があることが見出された。したがって、本発明で使用する酵素は、その活性中に実質的にインベルターゼ活性を有しないことが好ましい。使用する酵素製剤中に実質的にインベルターゼ活性が存在するかどうかは、スクロースを基質として酵素を作用させ、グルコースの生成を確認して判断することができる。なお、グルコースの生成は市販のグルコース試験紙等を用いて確認することができる。
酵素処理条件としては、使用する酵素に応じた通常の酵素処理条件を採用することができる。例えば、(1)緑茶のスラリーを気‐液向流接触処理した後の水蒸気蒸留残渣スラリーに対し、あるいは(2)カラムで水蒸気蒸留した後に生じる蒸留残渣1質量部あたり水を通常8質量部〜50質量部、好ましくは10質量部〜20質量部添加し、約60℃〜約121℃で約2秒〜約20分間殺菌した後冷却したものに対し、必要な酵素を所定量添加し、一般にpH3〜6、好ましくはpH4〜5.5で攪拌しまたは静置することにより酵素反応を行うことができる。酵素反応中の酸化劣化防止のため、アスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムをスラリー全量に対して10ppm〜500ppm程度添加してもよい。酵素は、酵素の至適温度で反応させる必要はなく、やや低めで反応させることが好ましい場合もあり、酵素反応の温度は、一般に約20℃〜約70℃、好ましくは約25℃〜約60℃、特に好ましくは約30℃〜約50℃の範囲内を挙げることができる。また、反応時間は通常、5分〜24時間、好ましくは1時間〜20時間、より好ましくは4時間〜18時間とすることができる。本発明では、緑茶エキスに雑味を発生させないように酵素をやや低めの温度で反応させているため、反応時間として比較的長時間を要する場合があるが、グルコースの生成量をHPLC分析などにより測定し反応の進行を確認しながら反応時間を決定したり、酵素の追加添加などを行うこともできる。酵素処理後、約60℃〜約121℃で約2秒〜約20分間加熱することにより酵素失活させた後冷却し、さらに固液分離、濾過することにより、酵素処理エキスを得ることができる。
かくして得られる酵素処理エキスは、必要に応じて濃縮することができる。濃縮方法としては、例えば、減圧濃縮、逆浸透膜(RO膜)濃縮、凍結濃縮など適宜な濃縮手段をあげることができ、濃縮することにより、本発明に従う酵素処理エキスの濃縮物を得ることができる。濃縮の程度は特に制限されないが、一般にはBx3°〜Bx80°、好ましくはBx8°〜Bx60°、より好ましくはBx10°〜Bx50°の範囲内とすることができる。
本発明では、次いで、工程(d)として、工程(a)で得られる生茶葉香気成分含有エキス、工程(b)で得られる水蒸気抽出エキスおよび工程(c)で得られる水抽出エキス
を混合し、緑茶エキスとする。その際の生茶葉香気成分含有エキス、水蒸気抽出エキスおよび水抽出エキスの混合割合は、一種又は複数種の出発原料の生茶葉から、順次得られる生茶葉香気成分含有エキス、水蒸気抽出エキスおよび水抽出エキスを全量混合しても良いが、本発明のエキスが添加される飲料の風味や、目標とする風味に合わせて自由に選択することもできる。また、必要に応じて、異なる出発原料または異なる処理工程から得られるいずれかのエキスを混合することもできる。工程(d)における、水蒸気抽出エキス:生茶葉香気成分含有エキス:水抽出エキスの混合割合は、例えば、1:0.01〜1000:0.1〜1000、好ましくは1:0.02〜200:0.2〜200、より好ましくは1:0.03〜50:0.5〜50、さらに好ましくは、1:0.05〜10:0.8〜20、特に好ましくは1:0.1〜2:1〜5、最も好ましくは1:0.1〜0.5:1〜5などを挙げることができる。水蒸気抽出エキスが多い場合は緑茶のマイルドで厚みのある香気が強くなり、生茶葉香気成分含有エキスの割合が多い場合はフレッシュなトップのグリーンな香気が強くなり、水抽出エキスの割合が多い場合は旨味、甘味などの呈味が強くなり、嗜好性に応じたバランスに調製することが可能である。
本発明では、また、原料の生茶葉の選択、製茶工程によってもその効果が大きく変化する。緑茶は通常、茶葉の摘茶時期により、一番茶、二番茶、三番茶、四番茶、秋冬番茶に分けられ、また、摘茶前の遮光処理およびその日数や強度により、通常の緑茶、玉露、かぶせ茶、碾茶に分けられる。本発明では、摘茶前に遮光処理を行った生茶葉を用いて緑茶エキスを調製することにより、緑茶飲料などの殺菌済容器詰緑茶飲料などに配合した場合に、緑茶のフレッシュでグリーンな香気と、円やかでふくよかな香気のバランスを付与および改良し、ならびに、呈味においても旨味、甘味を付与できる緑茶エキスが調製できる。
一番茶は、その年の最初に生育した新芽を摘茶し製茶した緑茶で、芽が柔らかく、アミノ酸やカフェインが豊富でカテキンは比較的少ない。静岡、埼玉などの主なお茶の産地では、立春(2月4日頃)から数えて八十八夜の時期、すなわち4月下旬から5月上旬にかけての頃に、新茶摘みの最盛期となるところが多く、特に質が良く香味豊かで美味しいと言われている。
二番茶は、一番茶を摘茶した後に再び生えてくる芽を摘茶し製茶した緑茶で、6月中旬から下旬に生産され、一番茶に次いで品質がよいとされている。二番茶の特徴としては、一番茶に比べアミノ酸量はかなり少なく、カテキン量は比較的多く、やや赤身がかかっていて、苦みが強い傾向がある。
三番茶および四番茶は、二番茶または三番茶を摘茶した後、再び生えてくる芽を摘茶して製茶した緑茶で、7月終わりから8月上旬にかけて生産される緑茶であるが、茶園の樹勢によっては、三番茶、四番茶を摘茶すると、翌年の一番茶の品質や収量に悪影響を与えるため、あまり生産されていない。
秋冬番茶は、二番茶または三番茶を摘茶した後に伸びた芽を三番茶や四番茶を摘茶せずに、9月中旬以降に刈り取って製造するものである。秋冬番茶の時期になると、茶樹はすでに冬に備え安定化してくるため、摘茶しても翌年の一番茶の品質や収量に悪影響を与えることはない。しかしながら、従来は茶としての品質としてはあまり良いとはされていなかったため、あまり収穫されていなかった。一方、最近ではポリサッカライドが多く含まれていることが判明し、その健康効果が着目され、生産量は増加している。
秋冬番茶は一般に葉が固く、アミノ酸が少ないため、緑茶としてのグレードは必ずしも上級品ではないが、前述の通り、多量の収穫量が確保できるため安価であり、工業的に有用性が期待できる素材である。
一方、かぶせ茶は、摘茶前に3日〜2週間程度遮光処理をしてから摘茶した生茶葉を原料として製茶された緑茶で、遮光処理により、日光照射でテアニンがカテキンに変換されるのが阻害されるため、アミノ酸が豊富で、カテキンが少ない点が特徴である。
玉露は、かぶせ茶のうち最高級のものであり、通常は一番茶を用い、また、遮光条件も長期間の条件を採用することが多い。
碾茶は本来抹茶の原料であり、抹茶は碾茶を茶臼で碾いたものである。碾茶は玉露と同様に、収穫前に約20日以上被覆した後に摘茶し、生茶葉を蒸した後、碾茶炉を用いて乾燥して製造する。碾茶の乾燥では玉露、かぶせ茶、煎茶の乾燥と異なり、揉捻工程を行わないため、エキス分が茶葉の中に残存し、青海苔のような形状となる。
これらの遮光処理された茶葉、すなわち、かぶせ茶、玉露、碾茶は独特のかぶせ香があり、フレッシュでグリーンな香気とともに適度な香ばしさがある。
本発明では、摘茶前に遮光処理を行った生茶葉を用いて緑茶エキスを調製することにより、特に、緑茶飲料などの殺菌済容器詰緑茶飲料などに配合した場合に、緑茶のフレッシュでグリーンな香気と、円やかでふくよかな香気のバランスを付与および改良し、ならびに、呈味においても旨味、甘味を付与できる緑茶エキスが調製できる。
摘茶前の遮光条件としては、摘茶前3日以上に渡り遮光処理をすることにより、いわゆるかぶせ香が発生するとされているが、好ましくは、摘茶前20日間以上、さらに好ましくは、摘茶前30日間以上に渡り遮光処理をすることにより、良好なかぶせ香を有するようになることが知られている。
このような遮光処理を行うことは、一般的には最上級の茶を得るために、一番茶にて行うことが多く行われているが、本発明では、二番茶、三番茶、四番茶、春秋番茶のいずれにおいても遮光処理を行ってもよい。特に、価格が安価で、かつ、収穫量に制限のない春秋番茶を用いることで、茶樹に悪影響をおよぼさずに、かぶせ香を有する生茶葉を、工業的に使用し得る規模で収穫することができるので、工業生産には有利である。
また、本発明方法では、特に、春秋番茶を用いると、三番茶を収穫することなく、収穫した生茶を効率よく処理できるので、茶葉の一層の有効利用が図れる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
(生茶葉の収穫)
静岡県の茶畑にて一番茶および二番茶を摘んだ後、その後生えてきた芽をそのまま生育させ9月まで放置した後、茶樹を9月1日から9月30日まで遮光し(30日間)、その後速やかに摘茶した。
(工程a)
蒸熱機において100Kg/hrの速度で送り込み、それと同時に130Kg/hrの速度で蒸気を送り込む蒸熱処理条件を想定したモデル実験として、以下の実験を行った。
生茶葉100gを3リットルカラム(直径約13cm、高さ約23cm)に仕込み、カラム下部より水蒸気を勢いよく(約375g/分の速度)吹き込み、20秒間水蒸気を接
触させ、その後、素早く茶葉を回収し、回収した茶葉は約1.2mの高さから、床面に敷いたシートに落下させる工程を10回繰り返し行い、冷却と水切りを行った。一方、カラムの上部は解放状態としておき、カラムの上端から約20cm離れたところにフードを設置し、カラム上部から立ち上がる水蒸気をフードを用いて回収できる構造とした。さらにフードの先には冷却管(水冷式)と留出液回収トラップを設け、さらにその先には気体吸引ポンプを接続し、凝縮液が得られるようにした。先の蒸熱工程における20秒間の水蒸気の吹き込みにより、生茶葉の香気を含んだ凝縮液として、生茶葉香気成分含有エキス100gが得られた。
この操作を20回繰り返し、生茶葉2000gから生茶葉香気成分含有エキス2000gを得た。生茶葉香気成分含有エキスは使用時まで−20℃にて冷凍保存した。
(工程b−1)
工程aで得られた蒸熱された生茶葉は、次いで、熱風乾燥機になるべく重ならないように平らに広く敷き詰め、180℃で送風しながら5分間乾燥し、さらに170℃で送風しながら25分間乾燥および加熱を行い碾茶の荒茶を得た。生茶葉2Kgより、碾茶の荒茶400gが得られた。
(工程b−2)
工程b−1で得られた碾茶の荒茶400gを3Lカラムに充填し、アスコルビン酸ナトリウム0.05%水溶液200g(対碾茶の荒茶50%)を散布して湿潤した後、大気圧下にてカラム下部より窒素混合した水蒸気(100℃)を送り込んで水蒸気蒸留を行い、カラム上部より得られる香気を含む水蒸気を冷却管にて凝縮させ、香気成分を含有する水溶液200g(水蒸気抽出エキス:対碾茶の荒茶50%)を得た。
(工程c)
水蒸気蒸留を行った残渣(碾茶400gに相当)にカラム上部より40℃温水(アスコルビン酸ナトリウム0.05%水溶液)3.2Kgを流速40ml/分で送り込み、カラム底部よりBx3°の抽出液2000gを抜き取った。抜き取った抽出液は20℃に冷却し、3000rpm、10分遠心分離し沈殿物を除去し、水抽出エキスを得た。
(工程d)
工程aで得られた生茶葉香気成分含有エキス1質量部、工程b−2で得られた水蒸気抽出エキス10質量部および工程cで得られた水抽出エキス30質量部を混合し、90℃1分間殺菌した後、20℃まで冷却、充填し、緑茶エキス(本発明品1)を得た(水蒸気抽出エキス:生茶葉香気成分含有エキス:水抽出エキスの混合割合=1:0.1:3)。
実施例2
実施例1の工程dにおいて、工程aで得られた生茶葉香気成分含有エキス5質量部、工程b−2で得られた水蒸気抽出エキス10質量部および工程cで得られた水抽出エキス10質量部を混合し、90℃1分間殺菌した後、20℃まで冷却、充填し、緑茶エキス(本発明品2)を得た(水蒸気抽出エキス:生茶葉香気成分含有エキス:水抽出エキスの混合割合=1:0.5:1)。
実施例3
実施例1の工程dにおいて、工程aで得られた生茶葉香気成分含有エキス0.1質量部、工程b−2で得られた水蒸気抽出エキス10質量部および工程cで得られた水抽出エキス50質量部を混合し、90℃1分間殺菌した後、20℃まで冷却、充填し、緑茶エキス(本発明品3)を得た(水蒸気抽出エキス:生茶葉香気成分含有エキス:水抽出エキスの混合割合=1:0.01:1)。
実施例4
実施例1の工程dにおいて、工程aで得られた生茶葉香気成分含有エキス100質量部、工程b−2で得られた水蒸気抽出エキス10質量部および工程cで得られた水抽出エキス100質量部を混合し、90℃1分間殺菌した後、20℃まで冷却、充填し、緑茶エキス(本発明品4)を得た(水蒸気抽出エキス:生茶葉香気成分含有エキス:水抽出エキスの混合割合=1:10:10)。
実施例5
実施例1の工程dにおいて、工程aで得られた生茶葉香気成分含有エキス100質量部、工程b−2で得られた水蒸気抽出エキス10質量部および工程cで得られた水抽出エキス10質量部を混合し、90℃1分間殺菌した後、20℃まで冷却、充填し、緑茶エキス(本発明品5)を得た(水蒸気抽出エキス:生茶葉香気成分含有エキス:水抽出エキスの混合割合=1:10:1)。
比較例1
実施例1の工程dにおいて、生茶葉香気成分含有エキスを混合しない以外は実施例1の工程dと同様の操作を行った。すなわち、実施例1の工程b−2で得られた水蒸気抽出エキス10質量部および工程cで得られた水抽出エキス30質量部を混合し、90℃1分間殺菌した後、20℃まで冷却、充填し、緑茶エキス(比較品1)を得た(水蒸気抽出エキス:生茶葉香気成分含有エキス:水抽出エキスの混合割合=0:10:1)を得た。
実施例6(緑茶エキスを添加した殺菌済容器詰緑茶飲料の官能評価)
80℃に加熱したイオン交換水20kgに静岡県産緑茶(一番茶)1kgを投入し、5分間ゆっくり攪拌した後、40メッシュ金網を用いて、茶葉を分離し、分離した液を20℃に冷却し、抽出液14kgを得、アスコルビン酸ナトリウム7.0g(500ppm)を加え、No.2濾紙(ADVANTEC社製:保留粒子径5μ)にて濾過し、緑茶飲料原液を得た(緑茶飲料原液の分析値;Bx:2.22°、pH:6.4、タンニン含量(酒石酸鉄法):0.44%、アミノ酸含量:0.071%)。これを小分けし、イオン交換水にて10倍(質量比)に希釈し、その希釈液に本発明品1〜5、参考品1および比較品1をそれぞれ0.3%添加したものを調製し、137℃、30秒間加熱殺菌後、88℃まで冷却して500mlペットボトルに充填し、2分間保持後、室温(25℃)まで冷却し、ペットボトル入り緑茶飲料とした。それぞれの緑茶飲料は茶類エキス無添加品をコントロールとして10名のパネラーにて評価した。評価基準は、無添加品を5点とした場合に、フレッシュ感、グリーン感、青臭さ、バランス、旨味および甘味について、非常によい:10点、良い:8点、やや良い:6点、やや悪い:4点、悪い:2点、非常に悪い0点とした。
官能評価を下記表1に示す。
Figure 2015204754
表1に示したとおり、本発明品1〜5を添加した飲料は、無添加に比べて、フレッシュ感、グリーン感、バランス、旨味および甘味のいずれの評価の点数についても大幅に高くなっており、青臭さについてもやや良好な評価であった。それに対し、参考品1(生茶葉香気成分含有エキスのみ)を添加した飲料は、グリーン感は強くなるものの、青臭さも強まってしまい、また、旨味、甘味などは無添加よりも評価の点数が悪くなってしまった。比較品1(本発明品1から生茶葉香気成分含有エキスを除いたもの)を添加した飲料は、フレッシュ感、グリーン感、青臭さ、バランス、旨味および甘味のいずれの評価の点数についても無添加品に比べて高くなっていたが、いずれも本発明品1〜5の添加による点数と比べ小さかった。
本発明品のうちでは、水蒸気抽出エキス:生茶葉香気成分含有エキス:水抽出エキスの混合割合が1:0.1〜0.5:1〜5の範囲にある本発明品1および2はフレッシュ感、グリーン感が強く、青臭さがあまり感じられず、旨味、甘味も付与されており、全体としてのバランスが極めて良好であった。本発明品のうち、比較的生茶葉香気成分含有エキスの配合量の割合が多い本発明品4および5は、グリーン感は本発明品1および2に次いで強いが、フレッシュ感は無添加に比べると強いものの本発明品1または2程強くはなく、青臭さがやや目立つ傾向があった。本発明品3は比較品1に対し、水抽出エキスをやや増やし、生茶葉香気成分含有エキスを微量に添加したものであるが、比較品1と比べ、フレッシュ感、グリーン感は大幅にアップしており、青臭さについても改善されており、良好な結果であった。
上記表1から、水蒸気抽出エキスが多い場合は緑茶のマイルドで厚みのある香気が強くなり、生茶葉香気成分含有エキスの割合が多い場合はフレッシュなトップのグリーンな香気が強くなり、水抽出エキスの割合が多い場合は旨味、甘味などの呈味が強くなる傾向があることが判明した。
以上の結果から、本発明品の添加により、フレッシュ感、グリーン感、バランス、旨味および甘味について特に大幅に高めることができるが、特に飲料製造時の加熱殺菌により劣化しやすい、緑茶の好ましいフレッシュ感、グリーン感を顕著に改善できることが認められた。
実施例7(香気分析)
実施例1の工程aにおいて得られた生茶葉香気成分含有エキス10mlに対し、内部標準として10ppbのエチルベンゾエート溶液を10μl添加した。塩化ナトリウムを3g添加したあと、固相マイクロ抽出(SPME)法を用いて抽出し、GC/MSにて分析を行った。抽出条件:60℃、30分;脱着温度:240℃;GC:Agilent6890N;検出器:Agilent5973;カラム:TC−WAX 60m×0.25μm×I.D.0.25mm;温度:70℃(1分)→240℃ 昇温 4℃/分
結果を、表2に示す。
Figure 2015204754
香気成分の分析結果より、生茶葉香気成分含エキスには、緑茶のグリーンな香気に寄与するとされるシス−3−ヘキセノールが極めて多く含まれており、それが、本発明品の有するフレッシュ感、グリーン感の増強効果に大きく寄与しているものと考えられる。

Claims (8)

  1. 次の工程(a)〜(d)を含んでなる緑茶エキスの製造方法:
    (a)生茶葉を蒸熱処理することにより生茶葉から発生する生茶葉香気成分を含む水蒸気を集め、集められた水蒸気を冷却して生茶葉香気成分含有エキスを得る工程、
    (b)工程(a)において蒸熱処理された生茶葉から製茶された緑茶を得、こうして得られた緑茶を水蒸気蒸留して水蒸気抽出エキスを得る工程、
    (c)工程(b)で水蒸気蒸留後の緑茶を水により抽出して水抽出エキスを得る工程、
    (d)工程(a)で得られた生茶葉香気成分含有エキス、工程(b)で得られた水蒸気抽出エキスおよび工程(c)で得られた水抽出エキスを混合する工程。
  2. 生茶葉が摘茶前3日以上に渡り、遮光処理された生茶葉であることを特徴とする、請求項1に記載の緑茶エキスの製造方法。
  3. 生茶葉が摘茶前20日間以上に渡り、遮光処理された生茶葉であり、製茶された緑茶が碾茶であることを特徴とする、請求項1に記載の緑茶エキスの製造方法。
  4. 生茶葉が摘茶前30日間以上に渡り、遮光処理された生茶葉であり、製茶された緑茶が碾茶であることを特徴とする、請求項1に記載の緑茶エキスの製造方法。
  5. 工程(b)の水蒸気蒸留が、カラム水蒸気蒸留、または、気−液向流接触法による水蒸気蒸留であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の緑茶エキスの製造方法。
  6. 工程(c)の抽出において、緑茶残渣を、タンナーゼ、プロテアーゼ、ペクチナーゼおよび糖質分解酵素から選ばれる1種または2種以上で酵素処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の緑茶エキスの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる緑茶エキス。
  8. 請求項7に記載の緑茶エキスを配合した殺菌済容器詰飲料。
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